説明

圧電共振器およびその製造方法

【課題】 空隙内に犠牲層が残留することが殆どなく、優れた共振特性を有する圧電共振器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 基板16と、基板表面上に形成される共振器本体17と、基板16および共振器本体17で囲まれる空隙15と、共振器本体17を貫通し空隙15と連通する貫通孔14とを含む圧電共振器1である。そして、空隙15を形成する共振器本体17の内壁面は、中央部において基板表面に対して平行な平坦面であり、周縁端部において基板表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となるように構成される。さらに、貫通孔14は、共振器本体17を、基板16表面に直交する方向に貫通し、共振器本体17の傾斜面に開口するように設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電共振器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信および電気回路に用いられる電気信号の周波数の高周波化に伴い、高周波化された電気信号に対して用いられるフィルタについても高周波数に対応したものが開発されている。特に、無線通信においては2GHz近傍のマイクロ波が主流になりつつあり、また既に数GHz以上の規格策定の動きもあることから、それらの周波数に対応した高性能なフィルタが求められている。このようなフィルタとして、圧電性を示す圧電膜の厚み縦振動モードを用いた圧電共振器を用いたものが提案されている。
【0003】
圧電共振器は、SiやGaAsなどからなる基板と、基板表面上に形成される共振器本体と、基板および共振器本体で囲まれる空隙と、共振器本体を貫通し空隙と連通する貫通孔とを含んで構成される。そして、共振器本体は、圧電膜と、厚み方向の両側から圧電膜を挟む上部電極および下部電極とを含んで構成される。ここで、圧電共振器では、共振器本体を構成する圧電膜と上部電極と下部電極とが重なる部分のうち、空隙を臨む部分の内壁面によって共振部が形成されており、空隙が圧電膜の振動を可能にする共振領域であるキャビティとなっている。
【0004】
また、圧電共振器は、半導体製造技術を利用して製造することができる。圧電共振器を製造するときには、まず、基板上に犠牲層を堆積させる。その後、表面研磨を行って鏡面仕上げとし、圧電膜、上部電極および下部電極で構成される積層体である共振器本体を犠牲層上に形成する。そして、共振器本体に貫通孔を開けて、その貫通孔を介してエッチング剤によって犠牲層を除去して空隙を形成し、圧電共振器を製造する。
【0005】
このような圧電共振器は、構造上、共振領域となる空隙に起因する表面起伏が特徴的である。つまり、空隙を構成する共振器本体の内壁面のうち、周縁端部における内壁面には段差が形成され、この段差に応じて、共振器本体を構成する圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれの表面に起伏が形成される。このため、圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれには、表面起伏に対応した部分に過大な応力の蓄積と集中が発生し、破損が発生する場合がある。
【0006】
このような問題点を解決する圧電共振器として、特許文献1には、空隙を構成する共振器本体の内壁面が、中央部において基板表面に対して平行な平坦面であり、周縁端部において基板表面とのなす角が異なる複数の傾斜面となる構成が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示される圧電共振器によれば、空隙を構成する共振器本体の内壁面の周縁端部における内壁面が、基板表面とのなす角が異なる複数の傾斜面となるように構成され、この複数の傾斜面に応じて、共振器本体を構成する圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれの周縁端部表面に複数の表面起伏が形成される。このため、圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれの周縁端部表面における応力の蓄積が分散されて、破損の発生を抑制することができる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−45694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示される圧電共振器では、共振器本体を貫通し、内壁面に開口する貫通孔は、共振器本体を基板表面に直交する方向に貫通し、空隙を構成する共振器本体の内壁面のうち中央部の平坦面に開口するように設けられている。このような圧電共振器は、空隙に対応する部分に形成される犠牲層を、貫通孔を介してエッチング剤によって除去して製造するが、エッチング剤が供給される通路となる貫通孔は、犠牲層の表面中央部の平坦面に貫通するように形成されることになる。
【0010】
圧電共振器においては、前述したように、共振器本体が空隙を臨む部分の内壁面によって共振部が形成されて、空隙が圧電膜の振動を可能にする共振領域となっている。このため、空隙に連通する貫通孔の開口径は、それほど大きくすることができない。そのため、貫通孔が犠牲層の表面中央部の平坦面に貫通するように形成される構成では、貫通孔の開口面積を十分に大きくすることができず、貫通孔を介してエッチング剤によって犠牲層を除去するときの犠牲層除去効率を向上させることができない。そして、犠牲層を完全にエッチング除去できない場合があり、空隙内に犠牲層の一部が残留してしまい、圧電共振器としての共振特性が損なわれる場合がある。
【0011】
したがって本発明の目的は、空隙内に犠牲層が残留することが殆どなく、優れた共振特性を有する圧電共振器を提供すること、および該圧電共振器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、基板と、
圧電膜と、前記圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、前記圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とを含んで構成され、前記基板の厚み方向一表面上に形成される共振器本体と、
前記基板および前記共振器本体で囲まれる空隙と、を含む圧電共振器であって、
前記共振器本体の周縁端部における前記空隙を臨む部分の内壁面は、前記基板の厚み方向一表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となっており、
前記共振器本体には、前記内壁面の前記傾斜面に開口し、前記基板表面に直交する方向に伸びる貫通孔が設けられている圧電共振器である。
【0013】
また本発明は、前記傾斜面は、前記基板の厚み方向一表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有していることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第1傾斜面は前記第2傾斜面より前記基板の厚み方向一表面側に位置し、前記第1傾斜面が前記基板の厚み方向一表面となす角度は、前記第2傾斜面が前記基板の厚み方向一表面となす角度よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記貫通孔は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界部を跨ぐように形成されていることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、基板と、
前記基板の厚み方向一表面上に形成され、前記基板表面に対して平行な平坦面を有する中央部及び前記基板表面とのなす角が鋭角となる傾斜面を有する周縁端部から構成される犠牲層と、
圧電膜と、前記圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、前記圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とで構成され、前記犠牲層上に前記中央部及び前記周縁部を覆うように形成される積層体と、を含む共振器形成用基板を準備する基板準備工程と、
前記犠牲層の前記傾斜面まで到達し、前記基板表面に直交する方向に伸びる貫通孔を前記積層体に形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔を介してエッチング剤によって前記犠牲層を除去し、前記基板および前記積層体で囲まれる空隙を形成する犠牲層エッチング工程と、
を含む圧電共振器の製造方法である。
【0017】
また本発明は、前記基板準備工程では、前記犠牲層の前記傾斜面が、前記基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する共振器形成用基板を準備することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記基板準備工程では、前記犠牲層の前記第1傾斜面は前記第2傾斜面より前記基板の厚み方向一表面側に位置し、前記第1傾斜面が前記基板表面となす角度は、前記第2傾斜面が前記基板表面となす角度よりも小さく設定される共振器形成用基板を準備することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記基板準備工程では、前記犠牲層が、前記第1傾斜面を有しかつ二酸化珪素からなる第1犠牲層と、前記第2傾斜面を有しかつリンドープガラスからなる第2犠牲層とを含んで構成される共振器形成用基板を準備することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記貫通孔形成工程では、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界部を跨ぐようにして前記貫通孔が形成されることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記犠牲層エッチング工程では、前記境界部において顕在化する干渉縞を、前記貫通孔を介して検出し、その検出結果に基づいて前記干渉縞が消滅するまでエッチング剤によって犠牲層を除去し、基板および積層体で囲まれる空隙を形成することを特徴とする。
【0022】
また本発明は、前記犠牲層エッチング工程の後、前記空隙内に残存する前記エッチング剤を前記貫通孔を介して除去するエッチング剤除去工程をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、基板と、基板表面上に形成される共振器本体と、基板および共振器本体で囲まれる空隙と、共振器本体を貫通し空隙と連通する貫通孔とを含む圧電共振器である。そして、共振器本体は、圧電膜と、圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とを含んで構成されている。
【0024】
そして、共振器本体の周縁端部における空隙を臨む部分の内壁面は、基板の厚み方向一表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となるように構成されている。このように、空隙を構成する共振器本体の内壁面がその周縁端部において、基板表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となるように構成されているので、周縁端部において基板表面に対して垂直となるように構成されている場合に比べて、周縁端部に対応する共振器本体の圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれには、過大な応力の蓄積と集中が発生するのが防止され、破損の発生を抑制することができる。
【0025】
さらに、共振器本体には、内壁面の傾斜面に開口し、基板表面に直交する方向に伸びる貫通孔が設けられている。このように、貫通孔が傾斜面に開口するように設けられているので、平坦面に開口するように設けられる場合に比べて、貫通孔が共振部に与える影響が小さい。それ故、共振特性に優れた圧電共振器となすことができる。また貫通孔を平坦面に開口するように設けた場合と比べて、貫通孔の孔径は同じでも、貫通孔の空隙側の開口面積が大きなものとなる。圧電共振器は、空隙に対応する部分に形成される犠牲層を、貫通孔を介してエッチング剤によって除去して製造されるが、本発明の圧電共振器は、貫通孔の空隙側の開口面積が大きいので、空隙内に犠牲層が残留することが殆どない。そのため、残留した犠牲層に起因する共振特性の劣化が抑制され、優れた共振特性を有する圧電共振器となる。
【0026】
また本発明によれば、傾斜面は、基板の厚み方向一表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する。これによって、内壁面の第1傾斜面および第2傾斜面に対応する共振器本体の圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれには、過大な応力の蓄積と集中が発生するのがさらに防止され、破損の発生をさらに抑制することができる。
【0027】
また本発明によれば、第1傾斜面は第2傾斜面より基板の厚み方向一表面側に位置し、第1傾斜面が基板の厚み方向一表面となす角度は、第2傾斜面が基板の厚み方向一表面となす角度よりも小さく設定される。これによって、内壁面の第1傾斜面および第2傾斜面に対応する共振器本体の圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれには、過大な応力の蓄積と集中が発生するのがさらに防止され、破損の発生をさらに抑制することができる。
【0028】
また本発明によれば、第1傾斜面と第2傾斜面との境界部を跨ぐように形成される貫通孔を有した圧電共振器を実現できる。
【0029】
また本発明によれば、基板準備工程では、共振器形成用基板を準備する。準備する共振器形成用基板は、基板表面上に、犠牲層と積層体とが積層されたものである。犠牲層は、中央部が基板表面に対して平行な平坦面であり、周縁端部が基板表面とのなす角が鋭角となる傾斜面である。積層体は、圧電膜と、圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とで構成されている。そして、貫通孔形成工程では、共振器形成用基板を構成する積層体を、基板表面に直交する方向に、犠牲層の傾斜面まで貫通する貫通孔を形成する。このとき、犠牲層の傾斜面まで貫通する貫通孔を形成するので、形成された貫通孔は、犠牲層の平坦面まで貫通するように形成されたものよりも、貫通孔の犠牲層側の開口面積が大きなものとなる。
【0030】
そして、犠牲層エッチング工程では、貫通孔を介してエッチング剤によって犠牲層を除去し、基板および積層体で囲まれる空隙を形成する。このとき、貫通孔の犠牲層側の開口面積が大きいので、貫通孔を介してエッチング剤によって犠牲層を除去するときの犠牲層除去効率を向上させることができる。そのため、犠牲層を、効率よく完全にエッチング除去することができ、形成する空隙内に犠牲層の一部が残留することが殆どない。そのため、圧電共振器としての共振特性が損なわれるのが防止され、優れた共振特性を有する圧電共振器を製造することができる。
【0031】
また本発明によれば、基板準備工程では、犠牲層の傾斜面が、基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する共振器形成用基板を準備する。このような、基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面を有する共振器形成用基板を用いて、その犠牲層をエッチング除去することによって、基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する内壁面によって囲まれた空隙を備えた圧電共振器を製造することができ、第1,2傾斜面に対応する圧電膜、上部電極および下部電極のそれぞれには、過大な応力の蓄積と集中が発生するのが防止され、破損の発生を抑制可能な圧電共振器を製造することができる。
【0032】
また本発明によれば、基板準備工程では、犠牲層の第1傾斜面は第2傾斜面より基板の厚み方向一表面側に位置し、第1傾斜面が基板表面となす角度は、第2傾斜面が基板表面となす角度よりも小さく設定される共振器形成用基板を準備する。このような共振器形成用基板を用いて、その犠牲層をエッチング除去することによって、周縁端部において角度が小さく設定された第1傾斜面を有する内壁面によって囲まれた空隙を備えた圧電共振器を製造することができる。
【0033】
また本発明によれば、基板準備工程では、犠牲層が、第1傾斜面を有しかつ二酸化珪素からなる第1犠牲層と、第2傾斜面を有しかつリンドープガラスからなる第2犠牲層とを含んで構成される共振器形成用基板を準備する。このような、第1傾斜面を有しかつ二酸化珪素からなる第1犠牲層と、第2傾斜面を有しかつリンドープガラスからなる第2犠牲層とを含んで構成される犠牲層を有する共振器形成用基板を用いて、その犠牲層をエッチング除去することによって、基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する内壁面によって囲まれた空隙を備えた圧電共振器を製造することができる。
【0034】
また本発明によれば、貫通孔形成工程では、積層体を、基板表面に直交する方向に、犠牲層の傾斜面における第1傾斜面と第2傾斜面との境界部を跨ぐようにして貫通孔が形成されている。これにより貫通孔が犠牲層まで到達したときに顕在化される干渉縞を目視等により確認することが可能となる。これにより、貫通孔が犠牲層まで到達したことを簡単に確認することができる。
【0035】
また本発明によれば、犠牲層エッチング工程では、前記境界部において顕在化する干渉縞を、貫通孔を介して検出し、その検出結果に基づいて干渉縞が消滅するまでエッチング剤によって犠牲層を除去し、基板および積層体で囲まれる空隙を形成する。このように、前記境界部において顕在化する干渉縞を、貫通孔を介してモニタしながら犠牲層をエッチング除去し、干渉縞が消滅するまで犠牲層のエッチングを行うことにより犠牲層が除去されたかどうかの目安を簡単に行うことができる。
【0036】
また本発明によれば、エッチング剤除去工程では、犠牲層エッチング工程の後、空隙内に残存するエッチング剤を貫通孔を介して除去する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態である圧電共振器1の構成を示す断面図である。圧電共振器1は、基板16と、基板16の厚み方向一表面上に形成される共振器本体17と、基板16および共振器本体17で囲まれる空隙15と、共振器本体17を貫通し、空隙15と連通する貫通孔14とを含んで構成される。基板16は、圧電共振器1のベース部材である。基板16は、略直方体形状を有し、厚みが0.05〜1.0mm程度に選ばれる。基板16は、Si(シリコン)、GaAs(ガリウムヒ素)などによって形成される。
【0038】
共振器本体17は、圧電膜11と、圧電膜11の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極13と、圧電膜11の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極12とを含んで構成される積層体である。
【0039】
圧電膜11は、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)およびPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料からなり、上部電極13および下部電極12によって印加される高周波電圧に応じて伸縮し、電気的な信号を機械的な振動に変換する機能を有する。圧電共振器1が必要な共振特性を発揮するために、圧電膜11の厚みは、圧電膜11を形成する材料の固有音響インピーダンスおよび密度、圧電膜11を伝播する音響波の音速および波長などを考慮して、精密に選ぶ必要がある。圧電膜11の最適な厚みは、圧電共振器1を用いて構成される電子回路で使用する信号の周波数、後述する共振部18の設計寸法、圧電膜材料、電極材料によって異なるが、例えば、0.2〜3.0μm程度に選ばれる。
【0040】
下部電極12は、圧電膜11の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される。つまり、下部電極12は、積層体である共振器本体17において最下層となり、基板16の厚み方向一表面上に形成される。下部電極12は、圧電膜11に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Au(金)、Al(アルミニウム)およびCu(銅)などの金属材料を用いて形成される。また下部電極12は、電極としての機能と同時に、後述する共振部18を構成する機能も有するので、圧電共振器1が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、下部電極12を形成する材料の固有音響インピーダンスおよび密度、下部電極12を伝播する音響波の音速および波長などを考慮して、精密に選ぶ必要がある。下部電極12の最適な厚みは、圧電共振器1を用いて構成される電子回路で使用する信号の周波数、共振部18の設計寸法、圧電膜材料、電極材料によって異なるが、0.03〜1.0μm程度に選ばれる。上部電極13は、下部電極12とともに、圧電膜11に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、下部電極12と同様に構成される。
【0041】
空隙15は、基板16と共振器本体17とで囲まれる空洞であり、圧電膜11の振動を可能にする共振領域であるキャビティとなっている。空隙15を構成する共振器本体17の内壁面は、中央部において基板16の厚み方向一表面に対して間隙を有して平行な面となる空隙平坦面15aであり、周縁端部において基板16の厚み方向一表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となるように構成されている。共振器本体17を構成する圧電膜11、上部電極13および下部電極12のそれぞれの表面は、前述した空隙15を形成する内壁面の形状に応じて、起伏が形成される。たとえば、圧電膜11は、空隙15を形成する共振器本体17の空隙平坦面15aに対応して第1圧電膜平坦面11aを有し、共振器本体17の第1空隙傾斜面15bに対応して第1圧電膜傾斜面11dを有し、共振器本体17の第2空隙傾斜面15cに対応して第2圧電膜傾斜面11cを有する。そして、圧電膜11は、空隙15に対応しない部分についてはベース部材である基板16に対応して形成されており、圧電膜11の周縁端部には、基板16表面に対応した平坦面である第2圧電膜平坦面11bが形成されている。
【0042】
空隙15を形成する共振器本体17の内壁面がその周縁端部において、基板16表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となるように構成されることによって、周縁端部において基板16表面に対して垂直となるように構成されている場合に比べて、周縁端部に対応する共振器本体17の圧電膜11、上部電極13および下部電極12のそれぞれには、過大な応力の蓄積と集中が発生するのが防止され、破損の発生を抑制することができる。
【0043】
また、共振器本体17の構成部材に対する応力集中を防止し、破損の発生を抑制するという観点からは、共振器本体17の内壁面の周縁端部における傾斜面は、基板16の厚み方向一表面とのなす角が異なる複数の傾斜面を有することが好ましく、本実施の形態では、2つの傾斜面である第1空隙傾斜面15bと第2空隙傾斜面15cとを有する。第1空隙傾斜面15bは、第2空隙傾斜面15cよりも基板16の厚み方向一表面側に位置し、第1空隙傾斜面15bが基板16表面となす角度θ1は、第2空隙傾斜面15cが基板16表面となす角度θ2よりも小さく設定されている。
【0044】
また、本実施の形態では、空隙15を形成する共振器本体17の内壁面において、空隙平坦面15aと基板16の厚み方向一表面との間隙は、2.6〜4.0μm程度に設定され、第1空隙傾斜面15bと基板16表面とのなす角度θ1は、1.14°以上26.5°未満に設定され、第2空隙傾斜面15cと基板16表面とのなす角度θ2は、26.5°以上56.3°以下に設定される。
【0045】
圧電共振器1では、共振器本体17を構成する圧電膜11と上部電極13と下部電極12とが重なる部分のうち、空隙15に臨む部分の内壁面によって共振部18が形成される。共振部18の厚みは、おおむねλ/2(λは使用する信号の周波数での音響波の波長)となるように設計される。共振部18の厚み方向から見た形状、すなわち平面形状は、略矩形状である。なおスプリアス抑制のために共振部18の平面形状を非対称の形状にしてもよい。本実施の形態では、共振部18は直方体形状に形成される。また共振部18の厚み方向に垂直な断面における面積は、圧電共振器1のインピーダンスを決定する要素となるので、厚みと同様に精密に設計する必要がある。50Ωのインピーダンス系で圧電共振器1を使用する場合は、共振部18の電気的なキャパシタンスが、使用する信号の周波数でおおむね50Ωのリアクタンスを持つように選ばれる。本実施の形態では、共振部18の厚み方向に垂直な断面における面積は、たとえば2GHzの圧電共振器1の場合であれば、200μm×200μm程度に選ばれる。
【0046】
圧電共振器1に設けられる貫通孔14は、共振器本体17を、基板16表面に直交する方向に貫通し、空隙15を形成する共振器本体17の傾斜面である第1空隙傾斜面15bおよび第2空隙傾斜面15cに開口して形成される。そして、本実施の形態では、貫通孔14は、第1空隙傾斜面15bと第2空隙傾斜面15cとの境界部を跨ぐように形成されており、その孔径は、例えば10μm程度である。このように、貫通孔14が共振器本体17の第1空隙傾斜面15bおよび第2空隙傾斜面15cに開口するように設けられているので、共振器本体17の空隙平坦面15aに開口するように設けられる場合に比べて、孔径は同じでも、貫通孔14の空隙15側の開口面積が大きなものとなる。圧電共振器1は、詳細は後述するが、空隙15に対応する部分に形成される犠牲層を、貫通孔14を介してエッチング剤によって除去して製造されるが、本発明の圧電共振器1は、貫通孔14の空隙15側の開口面積が大きいので、エッチング剤による犠牲層除去効率が向上し、空隙15内に犠牲層の一部が残留するのが防止されたものとなる。そのため、圧電共振器1としての共振特性が損なわれるのが防止され、優れた共振特性を有する圧電共振器1となる。
【0047】
次に、本発明における圧電共振器1の製造方法について説明する。図2A〜図2Cは、本発明の実施の一形態である圧電共振器1の製造方法を示す工程図である。本発明における圧電共振器1の製造方法は、半導体製造技術を利用するものであり、大きくは以下のように4つの工程からなる。
【0048】
[基板準備工程]
基板準備工程では、共振器形成用基板を準備する。準備する共振器形成用基板は、基板16表面上に、犠牲層と共振器本体17とが積層されたものである。
【0049】
(a)基板16の準備および犠牲層の形成工程
圧電共振器1に用いられる基板16は、Si(シリコン)やGaAs(ガリウムヒ素)などからなる板状部材であり、本実施の形態では、シリコン基板を用いた例について説明する。また、犠牲層は、製造する圧電共振器1の空隙15に対応する部分であり、本実施の形態では、共振器本体17の内壁面である空隙平坦面15a、第1空隙傾斜面15b、第2空隙傾斜面15cおよび基板16によって囲まれて形成される空隙15に対応して、2つの犠牲層である第1犠牲層21および第2犠牲層22を基板16表面上に形成する。
【0050】
まず、図2A−(a)に示すように、基板16の厚み方向一表面の全面にわたって、SiO(二酸化珪素)からなる第1犠牲層21を形成する。SiOからなる第1犠牲層21は、シリコン基板16の表面を加熱処理し、熱酸化させることで形成することができる。第1犠牲層21の厚みは、加熱処理の処理条件、加熱温度、加熱時間などにより制御することが可能であり、本実施の形態では0.1〜1.0μmに設定される。
【0051】
次に、図2A−(b)に示すように、第1犠牲層21上に、PSG(リンドープガラス)からなる第2犠牲層22を形成する。第2犠牲層22は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって形成することができる。第2犠牲層22の厚みは、CVD処理時の温度や時間などの処理条件により制御することが可能であり、本実施の形態では2.5〜3.0μmに設定される。このように第2犠牲層22は比較的厚く形成されるが、PSGはエッチング速度が速いため後述する犠牲層エッチング工程において比較的短時間でエッチングを行うことができる。また、第2犠牲層22とシリコンからなる基板16との間にSiOからなる第1犠牲層21を介在させることによって、第1犠牲層21が拡散バリアとして機能し、PSGのリンが基板16に拡散するのを抑制することができる。第1犠牲層21上に形成された第2犠牲層22の表面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置を用いて表面平滑化される。
【0052】
(b)犠牲層のパターニング工程
図2B−(c)に示すように、基板16の一表面の全面にわたって形成した第1犠牲層21および第2犠牲層22を、パターニングにより空隙15に対応した形状にする。つまり、空隙15を形成する共振器本体17の第1空隙傾斜面15bに対応して、第1犠牲層21が、中央部が基板16表面に対して平行な平坦面となる第1犠牲層平坦面21aであり、周縁端部が基板16表面とのなす角度がθ1となる傾斜面である第1犠牲層傾斜面21bとなるように、パターニングする。そして、空隙15を形成する共振器本体17の第2空隙傾斜面15cに対応して、第2犠牲層22が、中央部が基板16表面に対して平行な平坦面となる第2犠牲層平坦面22aであり、周縁端部が基板16表面とのなす角度がθ2となる傾斜面である第2犠牲層傾斜面22bとなるように、パターニングする。
【0053】
第1犠牲層21および第2犠牲層22のパターニングは、半導体製造プロセスにおける酸化絶縁膜の公知のパターニング技術を利用することができ、たとえばフォトリソグラフィ技術により、容易に設けることができる。パターニングの一例としては、第2犠牲層22上にポジレジストをスピンコートなどにより塗布し、露光、現像してレジストをパターンニングしてマスクを形成する。そののちフッ酸水溶液に浸漬して、空隙15に対応した形状を有する第1犠牲層21および第2犠牲層22を得る。
【0054】
また第1犠牲層傾斜面21bが基板16の表面となす角度θ1と第2犠牲層傾斜面22bが基板16の表面となす角度θ2とを異ならせるには、選択比の異なる犠牲層を使用すればよい。例えば、図2B−(c)に示すように、θ1<θ2の関係を満たすようにしたい場合には、第1犠牲層21よりもエッチング速度の速い第2犠牲層22を選択すればよい。本実施形態では、第1犠牲層21がSiOからなり、第2犠牲層22がSiOよりエッチング速度が速いPSGを用いているため、θ1<θ2の関係を満たす傾斜面となっている。
【0055】
(c)積層体である共振器本体17の形成工程
図2B−(d)に示すように、空隙15に対応した形状を有する第1犠牲層21および第2犠牲層22の上に、下部電極12、圧電膜11および上部電極13からなる共振器本体17を形成する。
【0056】
まず、基板16表面および第2犠牲層22表面の少なくとも一部に下部電極12を形成する。下部電極12は、スパッタリング法やCVD法などによって形成することができる。次に、基板16の厚み方向から平面視したときの全面、すなわち下部電極12表面、下部電極12が積層されていない第2犠牲層22b表面、下部電極12および第2犠牲層22が積層されていない基板16表面のそれぞれを覆うように圧電膜11を形成する。圧電膜11は、スパッタリング法やCVD法などによって形成することができる。次に、圧電膜11表面の少なくとも一部に上部電極13を形成する。このとき、上部電極13は、少なくとも一部が、圧電膜11および下部電極12を介して第2犠牲層22と対向するように形成される。
【0057】
以上のようにして、基板準備工程では、基板16表面上に、第1犠牲層21、第2犠牲層22、下部電極12、圧電膜11および上部電極13が積層された共振器形成用基板を準備する。
【0058】
[貫通孔形成工程]
貫通孔形成工程では、図2C−(e)に示すように、基板準備工程で準備した共振器形成用基板を構成する共振器本体17を、基板16表面に直交する方向に、第1犠牲層21の第1犠牲層傾斜面21bおよび第2犠牲層22の第2犠牲層傾斜面22bまで到達する貫通孔14を形成する。貫通孔14の形成方法は、半導体製造プロセスにおけるビア形成技術を利用することができ、たとえばフォトリソグラフィ技術により、容易に設けることができる。貫通孔14は、たとえば第1犠牲層21および第2犠牲層22の平面形状が略正方形をなしている場合は、正方形の各頂点の近傍に、4箇所設けるようにすればよい。
【0059】
このとき、第1犠牲層21の第1犠牲層傾斜面21bおよび第2犠牲層22の第2犠牲層傾斜面22bまで到達する貫通孔14を形成するので、形成された貫通孔14は、第2犠牲層22の第2犠牲層平坦面22aまで貫通するように形成されたものよりも、孔径は同じでも、貫通孔14の犠牲層側の開口面積が大きなものとなる。また、貫通孔14は、第1犠牲層傾斜面21bと第2犠牲層傾斜面22bとの境界部31を含む領域まで到達するように形成するのが好ましい。
【0060】
図3は、貫通孔14が第1、第2犠牲層21,22に到達した状態において、第1犠牲層21および第2犠牲層22を上方から見たときの様子を示す図である。基板16表面とのなす角度が異なる傾斜面である第1犠牲層傾斜面21bと第2犠牲層傾斜面22bとの境界部31を含む領域まで貫通するように形成された貫通孔14からは、境界部31において第1犠牲層傾斜面21b側に顕在化する干渉縞32を視認することができる。すなわち、貫通孔14が第1犠牲層21および第2犠牲層22に到達したときに干渉縞が顕在化される。これにより貫通孔14の底面に現れる干渉縞を確認することによって、貫通孔14が第1犠牲層21および第2犠牲層22まで到達したことを簡単に確認することができる。従来のように平坦部分に貫通孔14を設けた場合、犠牲層に角度の異なる傾斜面がないため干渉縞が現れないか、現れたとしてもほとんど見えないため、貫通孔を目視や金属顕微鏡等により観察していても貫通孔14が犠牲層まで到達する前後でほとんど状態が変わらない。そのため、従来は貫通孔14が犠牲層まで到達したことを確認するには、大がかりな装置を用いたり、貫通孔14が犠牲層に到達する際の条件出しを行う必要があるなど圧電共振器の製造工程が複雑化し生産性向上の妨げとなっていた。また貫通孔14が犠牲層まで到達したか否かの確認作業を省いた場合や、貫通孔を形成する際の条件が変わった場合などは、貫通孔14が犠牲層まで到達していない状態でこの後に続く犠牲層のエッチングを行うことがあり、この場合は、犠牲層がうまく除去されないといった問題や犠牲層を完全に除去するのに非常に時間がかるといった問題が生じることとなる。
【0061】
これに対し本実施形態にかかる圧電共振器の製造方法によれば、角度の異なる第1犠牲層傾斜面21bおよび第2犠牲層傾斜面22bを有する第1犠牲層21および第2犠牲層22を設け、第1犠牲層傾斜面21bと第2犠牲層傾斜面22bとの境界部を跨ぐ位置に貫通孔14を設けるようにしたことで、貫通孔14が犠牲層に到達した際に干渉縞32を生じさせることができ、この干渉縞を利用することによって簡単かつ確実に貫通孔14を第1、第2犠牲層21、22まで到達させることが可能となる。
【0062】
さらに境界部31において顕在化する干渉縞32は、後述する犠牲層エッチング工程において、犠牲層エッチング終点をモニタする指標として利用することができる。
【0063】
[犠牲層エッチング工程]
犠牲層エッチング工程では、貫通孔14を介してエッチング剤によって第1犠牲層21および第2犠牲層22を除去し、基板16と共振器本体17とで囲まれる空隙15を形成する。第1犠牲層21および第2犠牲層22のエッチング除去は、半導体製造プロセスにおけるエッチング技術を利用することができ、犠牲層の材質に応じたエッチング剤を用いて容易に行うことができる。エッチング剤は、エッチング液またはエッチングガスで、種々のエッチング条件に応じてウェットエッチング、ドライエッチングのいずれかを選択すればよい。本実施の形態では、第1犠牲層21および第2犠牲層22をウェットエッチングにより除去する。エッチング剤としてフッ酸水溶液をエッチング液として用い、所定の温度条件でエッチングを行う。
【0064】
このとき、前述したように、第1犠牲層傾斜面21bおよび第2犠牲層傾斜面22bまで貫通するように形成された貫通孔14の犠牲層側の開口面積は、第2犠牲層平坦面22aまで貫通するように形成された場合に比べて、孔径は同じでも、大きな開口面積となるので、貫通孔14を介してエッチング剤によって第1犠牲層21および第2犠牲層22を除去するときの犠牲層除去効率が向上されている。そのため、第1犠牲層21および第2犠牲層22を効率よく完全にエッチング除去することができ、形成する空隙15内に犠牲層の一部が残留するのを防止することができる。また、貫通孔14は、共振器本体17における周縁端部側に形成されているので、貫通孔14を流過して空隙15内に進入してきたエッチング剤には流れが生じる。このエッチング剤の空隙15内での流れによって、エッチング速度も向上する。
【0065】
また、本実施の形態では、第1犠牲層傾斜面21bと第2犠牲層傾斜面22bとの境界部31において顕在化する干渉縞32を、貫通孔14を介して検出し、その検出結果に基づいて干渉縞32が消滅するまでエッチング剤によって第1犠牲層21および第2犠牲層22を除去し、基板16および共振器本体17で囲まれる空隙15を形成する。境界部31において顕在化する干渉縞32を検出する方法としては、目視でもよいし、金属顕微鏡などの光学検出装置を用いて検出することもできる。
【0066】
このように、境界部31において顕在化する干渉縞32を、貫通孔14を介してモニタしながら第1犠牲層21および第2犠牲層22をエッチング除去し、干渉縞32が消滅するまでエッチングを継続することにより、空隙15内に犠牲層が残留していないか否かの目安とすることができる。
【0067】
また、エッチング剤によって第1犠牲層21および第2犠牲層22を、所定時間エッチング除去した後、貫通孔14を介して干渉縞32が消滅したか否かを観察し、干渉縞32が消滅していなければエッチング除去作業を繰り返し、干渉縞32が消滅した時点でエッチング終点とするようにしてもよい。
【0068】
[エッチング剤除去工程]
エッチング剤除去工程では、犠牲層エッチング工程において形成した空隙15内に残留するエッチング剤を、貫通孔14を介して除去する。まず、エッチング剤が残留する空隙15内に、貫通孔14を介して純水やIPA(イソプロパノール)などのリンス溶剤を充填し、これらのリンス溶剤で空隙15内部を洗浄する。空隙15内の洗浄が終了すると、乾燥機を用いてリンス溶剤を揮発させる。
【0069】
なお、犠牲層エッチング工程において、ドライエッチング法によって犠牲層をエッチング除去した場合には、エッチング剤であるエッチングガスが空隙15内から完全に排気されるように、真空排気を繰り返すようにすればよい。
【0070】
以上のように、基板準備工程で基板16表面上に第1犠牲層21、第2犠牲層22および共振器本体17が積層された共振器形成用基板を準備し、貫通孔形成工程で共振器形成用基板を構成する共振器本体17を、基板16表面に直交する方向に、第1犠牲層傾斜面21bおよび第2犠牲層傾斜面22bまで貫通する貫通孔14を形成し、犠牲層エッチング工程で貫通孔14を介してエッチング剤によって第1犠牲層21および第2犠牲層22を除去して空隙15を形成し、エッチング剤除去工程で空隙15内に残留するエッチング剤を、貫通孔14を介してリンス溶剤によって除去し、リンス溶剤を揮発乾燥させて、圧電共振器1を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の一形態である圧電共振器1の構成を示す断面図である。
【図2A】本発明の実施の一形態である圧電共振器1の製造方法を示す工程図である。
【図2B】本発明の実施の一形態である圧電共振器1の製造方法を示す工程図である。
【図2C】本発明の実施の一形態である圧電共振器1の製造方法を示す工程図である。
【図3】貫通孔14を形成したあとに第1犠牲層21および第2犠牲層22を上方から見たときの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 圧電共振器
11 圧電膜
11a 第1圧電膜平坦面
11b 第2圧電膜平坦面
11c 第2圧電膜傾斜面
11d 第1圧電膜傾斜面
12 下部電極
13 上部電極
14 貫通孔
15 空隙
15a 空隙平坦面
15b 第1空隙傾斜面
15c 第2空隙傾斜面
16 基板
17 共振器本体
18 共振部
21 第1犠牲層
21a 第1犠牲層平坦面
21b 第1犠牲層傾斜面
22 第2犠牲層
22a 第2犠牲層平坦面
22b 第2犠牲層傾斜面
31 境界部
32 干渉縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
圧電膜と、前記圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、前記圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とを含んで構成され、前記基板の厚み方向一表面上に形成される共振器本体と、
前記基板および前記共振器本体で囲まれる空隙と、を含む圧電共振器であって、
前記共振器本体の周縁端部における前記空隙を臨む部分の内壁面は、前記基板の厚み方向一表面とのなす角が鋭角となる傾斜面となっており、
前記共振器本体には、前記内壁面の前記傾斜面に開口し、前記基板表面に直交する方向に伸びる貫通孔が設けられている圧電共振器。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記基板の厚み方向一表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有している請求項1記載の圧電共振器。
【請求項3】
前記第1傾斜面は前記第2傾斜面より前記基板の厚み方向一表面側に位置し、前記第1傾斜面が前記基板の厚み方向一表面となす角度は、前記第2傾斜面が前記基板の厚み方向一表面となす角度よりも小さく設定されている請求項2記載の圧電共振器。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界部を跨ぐように形成されている請求項2または3記載の圧電共振器。
【請求項5】
基板と、
前記基板の厚み方向一表面上に形成され、前記基板表面に対して平行な平坦面を有する中央部及び前記基板表面とのなす角が鋭角となる傾斜面を有する周縁端部から構成される犠牲層と、
圧電膜と、前記圧電膜の厚み方向一表面上に少なくとも一部が積層される上部電極と、前記圧電膜の厚み方向他表面上に少なくとも一部が積層される下部電極とで構成され、前記犠牲層上に前記中央部及び前記周縁部を覆うように形成される積層体と、を含む共振器形成用基板を準備する基板準備工程と、
前記犠牲層の前記傾斜面まで到達し、前記基板表面に直交する方向に伸びる貫通孔を前記積層体に形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔を介してエッチング剤によって前記犠牲層を除去し、前記基板および前記積層体で囲まれる空隙を形成する犠牲層エッチング工程と、
を含む圧電共振器の製造方法。
【請求項6】
前記基板準備工程では、前記犠牲層の前記傾斜面が、前記基板表面とのなす角が異なる第1傾斜面と第2傾斜面とを有する共振器形成用基板を準備する請求項5記載の圧電共振器の製造方法。
【請求項7】
前記基板準備工程では、前記犠牲層の前記第1傾斜面は前記第2傾斜面より前記基板の厚み方向一表面側に位置し、前記第1傾斜面が前記基板表面となす角度は、前記第2傾斜面が前記基板表面となす角度よりも小さく設定される共振器形成用基板を準備する請求項6記載の圧電共振器の製造方法。
【請求項8】
前記基板準備工程では、前記犠牲層が、前記第1傾斜面を有しかつ二酸化珪素からなる第1犠牲層と、前記第2傾斜面を有しかつリンドープガラスからなる第2犠牲層とを含んで構成される共振器形成用基板を準備する請求項6または7に記載の圧電共振器の製造方法。
【請求項9】
前記貫通孔形成工程では、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面との境界部を跨ぐようにして前記貫通孔が形成される請求項6〜8のいずれか1つに記載の圧電発振器の製造方法。
【請求項10】
前記犠牲層エッチング工程では、前記境界部において顕在化する干渉縞を、前記貫通孔を介して検出し、その検出結果に基づいて前記干渉縞が消滅するまでエッチング剤によって犠牲層を除去し、基板および積層体で囲まれる空隙を形成する請求項6〜9に記載の圧電共振器の製造方法。
【請求項11】
前記犠牲層エッチング工程の後、前記空隙内に残存する前記エッチング剤を前記貫通孔を介して除去するエッチング剤除去工程をさらに含む請求項5〜10のいずれか1つに記載の圧電発振器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−41153(P2010−41153A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199074(P2008−199074)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】