説明

圧電共振子を含むフィルタ構造および構成

【課題】複数の圧電共振子を利用し優れたパワーハンドリングキャパシティ及び電気応答性を有するフィルタ構造を提供する。
【解決手段】圧電共振子のチェーンを備え、該チェーンは第1の圧電共振子に直列接続された少なくとも2個の圧電共振子からなりかつ第1の圧電共振子と共に直列接続された圧電共振子の群(1020、1110)を形成し、圧電共振子のチェーンに属する各圧電共振子は、第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、圧電共振子の群(1020、1110)は、フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の群の一端において直列接続された第1の圧電共振子(1021a)および圧電共振子の群の他端において直列接続された第2の圧電共振子(1021b)を介してのみ接続され、直列接続された圧電共振子の群のインピーダンスをフィルタ構造のインピーダンスと整合させ、フィルタ構造を梯子型フィルタ構造(1090、1100)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に無線周波数フィルタに関する。とりわけ本発明は、圧電共振子、典型的には薄膜バルク音響波(BAW)または表面音響波(SAW)共振子を含むフィルタ構造に関する。
【0002】
移動通信の開発は、より小さく、ますます複雑なハンドヘルド型ユニットに向かって進み続けている。この開発により、移動通信手段で用いられる部品および構造の小型化に対する要求が高まっている。この開発は、小型化の進展にもかかわらず、高いパワーレベルに耐え、通過帯域エッジの勾配が急であり、かつ損失が少ない無線周波数(RF)フィルタ構造にも関連している。
【背景技術】
【0003】
従来技術の移動電話において用いられるRFフィルタは通常、別個の表面音響波(SAW)またはセラミックのフィルタである。表面音響波(SAW)共振子は、図1に示される構造と同様な構造を一般に有している。表面音響波共振子は固体表面の表面音響振動モードを利用するものであり、そのモードでは振動は固体表面に限定され、表面から離れると速やかに減衰する。SAW共振子は、一般に1つの圧電層100および2つの電極122、124からなる。これらの電極はインターデジタルトランスデューサ(IDT)を形成する。電極122、124の形状は、一般にEの字すなわち櫛の形に似ており、電極は、第1の電極のフィンガが第2の電極のフィンガと平行でありかつそれらの間隔も平行になるように配置される。SAW共振子の周波数は、主にフィンガ間の幅に依存し、さらにフィンガの幅にも依存する。SAW共振子のインピーダンスは、主にフィンガの数およびフィンガの長さに依存する。IDTに加え、SAW共振子は一般に、IDTの両側に1つずつ2つの反射器を有し、IDTにより引き起こされた表面音響波を反射し、IDTのフィンガの方向に垂直な方向へ横切る。
【0004】
フィルタのような様々な共振子構造がSAW共振子を用いて製造されている。SAW共振子には、サイズが非常に小さいという利点があるが、残念ながらSAW共振子は高いパワーレベルに耐えることができない。
【0005】
シリコン(Si)またはガリウムヒ素(GaAs)ウェーハなどの半導体ウェーハ上に薄膜バルク音響波共振子を構成することが知られている。例えば、「バルク音響波複合共振子」と題された論文(Applied Physics Letters,Vol.38,No.3,pp.125−127,Feb.1,1981,by K.M.Lakin and J.S.Wang)には、シリコン(Si)薄膜上にスパッタリングされた酸化亜鉛(ZnO)の薄膜圧電層からなるバルク音響波共振子が開示されている。さらに、「エアギャップ型圧電複合薄膜共振子」と題された論文(15 Proc.39th Annual Symp.Freq.Control,pp.361−366,1985,by Hiroaki Satoh,Yasuo Ebata,Hitoshi Suzuki,and Choji Narahara)には、ブリッジ構造を有するバルク音響波共振子が開示されている。
【0006】
図2には、ブリッジ構造を有するバルク音響波共振子の1例を示してある。この構造は、基板200上に堆積された膜130からなる。共振子は、膜上の底部電極110、圧電層100、および頂部電極120からさらになる。エッチングによって頂部側から基板のいくらかを除去することにより、膜と基板との間に空隙210が作られている。この空隙は音響アイソレータとして働き、本質的に、振動する共振子構造を基板から絶縁する。
【0007】
以下では、特定タイプのBAW共振子を最初に説明する。バルク音響波共振子は一般に、シリコン(Si)、ガリウムヒ素(GaAs)、ガラス、またはセラミック基板上に作られる。用いられるもう1種類のセラミック基板タイプはアルミナである。BAW素子は一般に、例えば、スパッタリング、真空蒸着または化学蒸着などの種々の薄膜製造技術を用いて製造される。バルク音響波を生成するため、BAW素子は圧電薄膜層を利用している。典型的なBAW素子の共振周波数は、素子のサイズおよび材料に応じて、0.5GHz〜5GHzの範囲である。BAW共振子は、水晶共振子の典型的な直列および並列共振を示す。共振周波数は、主に共振子の材料および共振子の層の寸法によって決まる。
【0008】
典型的なBAW共振子は3つの基本要素、すなわち、音響的に活性な圧電層、この圧電層の両側の電極、および基板からの音響的絶縁から成る。
【0009】
圧電層は、例えば、ZnO、AlN、ZnSまたは薄膜として作ることができる任意のその他の圧電材料である。さらなる例として、強誘電性セラミックスも圧電材料として用いることができる。例えば、PbTiO3およびPb(ZrxTil-x)O3ならびにその他のいわゆるチタン酸ジルコン酸ランタン鉛の族に属するものを用いることができる。
【0010】
電極層の形成に用いられる材料は、電気伝導材料である。電極は、例えば、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、銀(Ag)、金(Au)、およびタンタル(Ta)などの任意の適切な金属で構成し得る。基板は一般に、例えばSi、SiO2、ガラス、またはセラミック材料から構成される。
【0011】
音響的絶縁は、例えば下記の手法、すなわち基板バイアホール、マイクロメカニカルブリッジ構造、または音響ミラー構造で作り出すことができる。
【0012】
バイアホールおよびブリッジ構造では、音響反射面は素子の上下の空気界面である。ブリッジ構造は一般に犠牲層を用いて作られ、この層は自立構造を作るためにエッチングにより除去される。犠牲層を用いることにより、バイアホール構造におけるように、基板を大きく加工する必要がないので、多様な基板材料の使用が可能になる。ブリッジ構造は、エッチピット構造を用いて製造することもでき、その場合は、自立ブリッジ構造を作るために、BAW共振子の下の基板または材料層にエッチングによりピットが形成される必要がある。
【0013】
図3には、ブリッジ構造の多くの形成方法の中の1例を示してある。BAW構造の他の層を堆積する前に、最初に犠牲層135が堆積され、パターン形成される。BAW構造の残りが犠牲層135の頂部の一部に堆積され、パターン形成される。BAW構造の残りが完成された後、犠牲層135がエッチングで除去される。図3には、基板200、膜層130、底部電極110、圧電層100、および頂部電極120も示してある。犠牲層は、例えばセラミックス、金属またはポリマー材料を用いて実現できる。
【0014】
バイアホール構造においては、BAW共振子構造の主要部分の下部からエッチングで基板を除去することにより、共振子は基板から音響的に絶縁される。図4には、BAW共振子のバイアホール構造を示してある。図4には、基板200、膜層130、底部電極110、圧電層100、および頂部電極120を示してある。バイアホール211は基板全体を通してエッチングされている。エッチングが必要なため、バイアホール構造は一般にはSiまたはGaAs基板でのみ実現されている。
【0015】
BAW共振子を基板から絶縁するさらなる方法は、音響ミラー構造の利用によるものである。音響ミラー構造は、音波を共振子構造へ反射することにより絶縁を行なう。音響ミラーは一般に、中心周波数の4分の1波長の厚さを有するいくつかの層からなり、交互の層が異なる音響インピーダンスを有している。音響ミラーにおける層数は、一般に3〜9の範囲である。BAW共振子に対して、基板材料の比較的高いインピーダンスではなく、できるだけ低い音響インピーダンスをもたらすように、連続する2層の音響インピーダンスの比率は大きくすべきである。4分の1波長の厚さの圧電層の場合、ミラー層は、共振子に対して極力高いインピーダンスをもたらすように選択される。このことは、米国特許第US5,373,268号に開示されている。高インピーダンス層の材料は、例えば金(Au)、モリブデン(Mo)、またはタングステン(W)とすることができ、さらに低インピーダンス層の材料は、例えばシリコン(Si)、ポリシリコン(poly−Si)、酸化シリコン(SiO2)、アルミニウム(Al)、またはポリマーとすることができる。音響ミラー構造を利用した構造では、共振子は基板から絶縁され、また基板は大きく加工されないので、基板として多様な材料を使用できる。ポリマー層は損失特性が低くかつ音響インピーダンスが低い任意のポリマー材料で構成できる。音響ミラー構造のその他の層およびその他の構造の堆積中に比較的高温が必要とされることがあるので、ポリマー材料は少なくとも350℃の温度に耐え得るものであることが好ましい。ポリマー層は、例えば、ポリイミド、シクロテン、炭素ベース材料、シリコンベース材料またはその他の任意の適切な材料で構成できる。
【0016】
図5には、音響ミラー構造頂部上のBAW共振子の1例を示してある。図5には、基板200、底部電極110、圧電層100、および頂部電極120を示してある。この例では、音響ミラー構造150は、3つの層150a、150bからなる。これらの層のうちの2つの層150aは第1の材料で形成されており、これら2層間にある第3の層150bは第2の材料で形成されている。第1および第2の層は、前述のように異なる音響インピーダンスを有している。材料の順番は変え得る。例えば、音響インピーダンスが高い材料を中間に置き、インピーダンスが低い材料をその両側に置くことができ、あるいはその逆もできる。底部電極も音響ミラーの1つの層として用い得る。
【0017】
図6には、BAW共振子構造のさらなる例を示してある。図6に例示されたBAW共振子は、2つの圧電層100を有する積み重ね共振子構造である。底部電極110および頂部電極120に加え、積み重ね構造は中間電極115を必要とし、これは大地電位に接続されている。図6にはさらに、膜層130、基板200および前記構造を基板から絶縁するエッチピット210が示してある。
【0018】
無線周波数フィルタは、例えば、圧電共振子を用いて構成し得る。SAW共振子および薄膜BAW共振子の共振周波数は、これらの共振子をフィルタとして用いるのが有利になるようなものであり、そのフィルタは、約1GHz〜数GHzの周波数範囲の特定の周波数帯で動作するように設計されている。図7aには、直列接続された共振子701と並列接続された第2の共振子702とから成る梯子型フィルタブロック700の1例が示してある。共振子701の直列共振周波数は一般に、梯子型フィルタブロック700の中心周波数である、共振子702の並列周波数と同じかそれに近い。梯子型フィルタは一般に、所望のフィルタ特性を達成するため、一定数の梯子型フィルタブロック700を直列接続して構成される。図8には、格子型フィルタ構造710の1例が示してあり、共振子701a、701bは直列接続され、共振子702a、702bは並列接続されている。
【0019】
圧電共振子の製造には、基板上に圧電材料層を積層する段階を伴う。例えば、適切なマスクを用いることにより、圧電共振子の領域のみをカバーするように圧電層をパターン形成することが可能である。多くの圧電材料は吸湿性なので、圧電層を被覆するために保護層が通常用いられる。底部電極を露出するバイア(via)は一般に、パターン形成されていない圧電層および保護層に作られる。もし圧電層が適切にパターン形成されているなら、保護層にバイアを作れば十分であり得る。バイアにより、所望の部位での底部および頂部電極の接続が可能になる。すなわち、底部電極に接続された伝導片が露出され、圧電共振子を他の電気回路と容易に接続できる。
【0020】
米国特許第US5,231,327号および同5,404,628号には、BAW共振子を含む回路中のバイアの数を最小にする方法が記載されている。すなわち、回路中のBAW共振子は、共用電極を有する1対のBAW共振子で代替できる。こうすることにより、BAW共振子の対を他の回路に接続する電極が、パターン形成されていない圧電層と同じ側にあり、同じ基板上の他の回路への圧電共振子の接続が、圧電層までのバイア形成、または圧電層のパターン形成なしでも可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
一般に、回路設計の1つの目的は、共振子の数ならびに他の構成要素の数も極力小さく保つことである。こうすることにより、製造コストは通常、極力低く保つことができる。さらに、一般には、回路中、例えばフィルタ中の構成要素の数がより大きくなれば、減衰もより大きくなる。フィルタ構造にパターン形成した圧電層の使用が容認できるフィルタにおいて(すなわち、フィルタの製造が圧電層のパターン形成も含んでいる)、単独の共振子の代わりに、例えば共振子対を用いることは非効率的であると思われる。
【0022】
無線周波数フィルタおよび他の回路においてSAWまたはBAW共振子を使用することが望ましくはあっても、残念なことに、SAW共振子もBAW共振子も高いパワーレベルに耐えることができない。無線周波数フィルタのパワーハンドリングキャパシティは、例えば、移動通信装置のトランスミッタについては決定的である。高すぎるパワーレベルが回路に働く場合、一般にBAW共振子は非常に速く壊れ、破損の原因を分析することが困難である。破損時にこのようなBAW共振子がひどく破壊され、破損後に底部電極のみが基板上に残るということがしばしばある。
【0023】
さらなる問題は、フィルタの圧電共振子を損わないパワーレベルにおいて、熱負荷が圧電共振子の温度上昇を引き起こし得ることである。これにより、今度は、圧電共振子の共振周波数の変化とフィルタ特性の変化とが一般に引き起こされる。例えば、温度上昇によりフィルタの通過域のシフトが引き起こされることがある。
【0024】
本発明の1つの目的は、圧電共振子からなりかつ優れたパワーハンドリングキャパシティおよび優れた電気応答性を有するフィルタ構造を提示することである。本発明の第2の目的は、優れたパワーハンドリングキャパシティを有する伝送配置を提示することである。さらなる目的は、圧電共振子からなりかつ優れたパワーハンドリングキャパシティおよび優れた電気応答性を有するそのような電気回路を設計するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、フィルタ構造において、圧電共振子がすべて一定の共振子周波数を有し、互いに直列接続されておりかつフィルタ構造の入力導線と接続されている少なくとも1グループの圧電共振子を用いることにより達成される。
【0026】
本発明によれば、一定のインピーダンス(インピーダンスレベル)を有しかつ第1の圧電共振子を備えるフィルタ構造であって、前記圧電共振子の共振周波数が第1の共振周波数であり、前記圧電共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、圧電共振子のチェーンをさらに備え、該チェーンは前記第1の圧電共振子に直列接続された少なくとも2個の圧電共振子からなりかつ前記第1の圧電共振子と共に直列接続された圧電共振子の群を形成すること、圧電共振子の前記チェーンに属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続された前記第1の圧電共振子および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンス(インピーダンスレベル)と整合するようにしてあり、さらに、前記フィルタ構造が梯子型フィルタ構造であることを特徴とするフィルタ構造が提供される。
【0027】
本発明は、一定のインピーダンスレベルを有しかつ第1の表面音響波共振子からなるフィルタ構造であって、その共振子の共振周波数が第1の共振周波数でありその共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、第2の表面音響波共振子からさらになり、前記第1の表面音響波共振子の第1の電極は前記第2の表面音響波共振子の第1の電極に接続され、かつ前記第2の表面音響波共振子は前記第1の表面音響波共振子と共に直列接続された圧電共振子の群を形成すること、および
− 圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、
− 圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、前記第1の表面音響波共振子の第2の電極および前記第2の表面音響波共振子の第2の電極を介してのみ接続されており、さらに
− 直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること、を特徴とするフィルタ構造にも関する。
【0028】
本発明は、一定のインピーダンスレベルを有しかつ第1のバルク音響波共振子を備えるフィルタ構造であって、その共振子の共振周波数が第1の共振周波数でありその共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、第2のバルク音響波共振子からさらになり、前記第1のバルク音響波共振子の第1の電極は前記第2のバルク音響波共振子の第1の電極に接続され、かつ前記第2のバルク音響波共振子は前記第1のバルク音響波共振子と共に直列接続された圧電共振子の群を形成すること、および
− 圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、
− 圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、前記第1のバルク音響波共振子の第2の電極および前記第2のバルク音響波共振子の第2の電極を介してのみ接続されており、
− 前記第1のバルク音響波共振子および前記第2のバルク音響波共振子は、パターン形成されていない単一の圧電層を用いて形成されておらず、さらに
− 直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること、を特徴とするフィルタ構造にさらに関する。
【0029】
本発明は、第1の信号を濾波するための第1のフィルタブランチと第2の信号を濾波するための第2のフィルタブランチとからなるフィルタ構造であって、前記第1のフィルタブランチは第1の入力導線と第1の出力導線とを備え、前記第2のフィルタブランチは第2の入力導線と第2の出力導線とを備え、前記第1の出力導線は前記第2の入力導線に接続してあるフィルタ構造において、前記第1のフィルタブランチは直列接続された圧電共振子の群を含み、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
− 圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、実質的に同じ共振周波数を有し、
− 圧電共振子の前記群は、第1フィルタブランチの残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され、前記第1の入力導線と接続された前記第1の圧電共振子および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
− 直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが第1フィルタブランチのインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とするフィルタ構造にさらに関する。
【0030】
本発明は、無線周波数信号を送信および受信するための配置であって、前記配置は、
− 第1の信号を増幅するための第1の増幅手段と、
− 第2の信号を増幅するための第2の増幅手段と、
− 前記第1の信号を濾波するための第1のフィルタブランチおよび前記第2の信号を濾波するための第2のフィルタブランチとからなり、前記第1のフィルタブランチは第1の入力導線と第1の出力導線とを有し、前記第2のフィルタブランチは第2の入力導線と第2の出力導線とを有し、前記第1出力導線は前記第2入力導線に接続されており、前記第1の入力導線は前記第1の増幅手段の出力に連結されかつ前記第2の出力導線は前記第2の増幅手段の入力に連結されるフィルタ構造と
からなり、さらに、
前記第1のフィルタブランチは直列接続された圧電共振子の群からなり、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
− 圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、実質的に同じ共振周波数を有し、
− 圧電共振子の前記群は、前記第1のフィルタブランチの残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され、前記第1の入力導線に接続された第1の圧電共振子および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
− 直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記第1のフィルタブランチのインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする配置にも関する。
【0031】
本発明は、無線周波数信号を送信するための配置であって、
− 無線周波数信号を増幅するための増幅手段と、
− 増幅された前記無線周波数信号を濾波するためのフィルタ構造とを含む配置において、
前記フィルタ構造は直列接続された圧電共振子の群からなり、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
− 圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、
− 圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され、前記第1のフィルタ構造の入力導線に接続された第1の圧電共振子および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
− 直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする配置にさらに関する。
【0032】
本発明による方法はフィルタを設計するための方法であって、
− 圧電共振子からなり目標周波数応答を達成するフィルタ構成を特定する段階であってその方法は、
− 前記フィルタ構成において、第1の共振周波数を有する本来の1つの圧電共振子を圧電共振子の群で代替する段階であって、前記群の各々は前記第1の共振周波数と実質的に等しい共振周波数を有し、かつ直列接続された共振子の前記群のインピーダンスが前記本来の圧電共振子のインピーダンスと等しい段階と
−圧電共振子の前記群における圧電共振子の数を選択する段階と
からさらになることを特徴とする方法である。
【0033】
添付される独立請求項は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を説明するものである。
【0034】
圧電BAW共振子の破損は、高電圧により引き起こされた電気的破損および/または共振子の圧電的に励振された機械的振動の振幅により生じることがある。この電気的破損および超過すべきでない機械的振動の振幅は、共振子を損うことなく圧電共振子にかけることができる電圧に上限があることを示唆している。単一の圧電共振子の代わりに、直列接続されたいくつかの圧電共振子が使用される場合、個々の圧電共振子上にかかる電圧は減少する。従って、電圧についての上限は、単一の圧電共振子が使用される時よりも高いパワーに達する。
【0035】
圧電SAW共振子においては、SAW共振子にかけられる電圧は、SAW共振子への損傷の重要な要因である。従って、いくつかの圧電SAW共振子が直列接続されているフィルタ構造は、対応する単一のSAW共振子を有するフィルタ構造よりも優れたパワーハンドリングキャパシティを有している。
【0036】
直列接続されたいくつかの圧電共振子のインピーダンスは、一般に、フィルタ回路の共振と整合させる必要があるので、圧電共振子の直列に属する個々の圧電共振子の静電容量は、単一の圧電共振子の静電容量よりも大きい。例えば、圧電BAW共振子の静電容量は、共振子の面積に比例する。従って、インピーダンス整合により、直列接続された圧電BAW共振子の全面積は、単一の圧電BAW共振子の面積よりもかなり大きくなる。SAW共振子のインピーダンスは主にフィンガ数およびフィンガ長さに依存する。同様に、直列接続されかつ適切なインピーダンスを有する圧電SAW共振子の群の面積は、単一のSAW共振子の面積よりも一般に大きい。面積が増大すると、圧電共振子から基板への熱伝達が向上し、直列接続されたいくつかの圧電共振子の温度の上がり方は、同じ状況の単一の圧電共振子の温度の上がり方よりも一般に少ない。このことは、フィルタまたは他の回路の特徴を変えずに維持するのに役立つ。さらに、温度が高すぎることにより、圧電共振子の破損が、少なくとも部分的に、引き起こされる可能性がある。従って、熱伝達能の増大により、圧電共振子からなる回路のパワーハンドリングキャパシティーも直接的に向上され得る。
【0037】
直列接続されたいくつかの圧電BAW共振子からなるフィルタの減衰は、対応する単一の圧電BAW共振子からなるフィルタと比較すると、一般にあまり増大しない。これは、圧電BAW共振子の面積が増大するにつれ、圧電BAW共振子の有効圧電結合係数が増大するという事実に起因する。これは主に、浮遊容量の減少効果のためである。有効圧電結合係数は、圧電共振子にかけられた電圧が、圧電共振子において機械的振動にどれほど効率的に変えられたかの指標であり、かけられた電圧の周波数に強く依存する。従って、たとえ各圧電BAW共振子がフィルタの減衰を増大させても、フィルタのバンドパスは若干広く(増大した有効結合係数によりこれが可能になる)設計でき、かつ減衰の増大は少なくとも部分的に補償し得る。
【0038】
フィルタのパワーハンドリングキャパシティが問題になる時には、直列接続されたいくつかの圧電共振子の使用は、従って、圧電層のパターン形成を伴うまたは伴わない圧電共振子の製造にかかわりなく、フィルタ構造において有利である。圧電共振子の数と面積とが増加するにつれ、フィルタ構造の面積が一般に増大する。しかしながら、直列接続されたいくつかの圧電共振子を用いることの利点は、多くの状況において非常に大きく、フィルタ面積の増加は容認できる。例えば、直列接続された薄膜圧電共振子からなるフィルタに適合するために必要な面積は、セラミックフィルタ中に適合させるために必要な面積よりもかなり小さい。例えば、セラミックフィルタは今日、セルラー電話において使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
例としての好ましい実施形態および添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
以上において、従来技術の説明と共に図1〜図8を参照した。図中の対応する部材については、同じ参照番号が用いられている。
【実施例】
【0041】
最初に、有効圧電結合係数keffに関するBAW共振子の電極面積Aのサイズの影響を簡単に論じることにする。有効圧電結合係数についての上限は真の圧電結合係数であり、これはBAW共振子において用いられた圧電材料に主に依存する。
【0042】
共振子の並列共振周波数および直列共振周波数を測定することにより、共振子の有効圧電結合係数を求めることが可能である。すなわち、有効圧電結合係数は、これらの共振周波数の差を用いて計算できる。図9は、2組のBAW共振子それぞれについて、2GHzでの有効圧電結合係数を白丸と黒丸で示すもので、圧電材料はZnOである。検討するBAW共振子の電極部分は正方形で、この正方形の幅は横軸上に表してある。検討するBAW共振子のサイズは約50×50μm2〜約600×600μm2である。
【0043】
BAW共振子の並列静電容量はC0=CPL+CSである。CPLは、BAW共振子の電極面積の平板容量CPL=ε0εrA/tであり、ε0は自由空間の誘電率、εrは圧電材料の比誘電率、AはBAW共振子の電極面積、tは圧電層の厚さである。CSは、BAW共振子の電極間からの電界リークを生じさせる有限の電極面積に関連する浮遊容量である。浮遊容量は、公知の公式を用いて推定し得る。
【0044】
共振子の機械キャパシタンスCmは、平板容量および真の圧電結合係数kから、Cm=CPL/(k-2−1)を用いて導き出し得る。次に、有効結合係数は、
【数1】

であり、これは電極面積Aの関数である。この関数に有効圧電結合係数の測定値を当てはめて真の圧電結合係数kの推定値を得ることが可能である。図9には、実線および破線でこの測定値を通るように調整した結果を示してある。白丸で示した共振子については、真の圧電結合係数としてk=0.271の値が得られる。黒丸で示した共振子については、k=0.266の値が得られる。図9に見られるように、面積が約250×250μm2以上である検討対象BAW共振子については、有効圧電結合係数が真の圧電結合係数に極めて近い。面積が200×200μm2未満である検討対象BAW共振子については、浮遊キャパシタンスCsの影響が明らかに見られる。すなわち、有効圧電結合係数は真の圧電結合係数よりもかなり小さい。
【0045】
フィルタのインピーダンスは一般に、特定のインピーダンスレベル、しばしば50Ωインピーダンス、に整合される。圧電BAW共振子のインピーダンスは主に並列静電容量C0に起因し、従って、インピーダンス整合の結果、直列接続された個々のBAW共振子の静電容量は、該BAW共振子を組み合せた場合の静電容量よりも大きい。従って、同じインピーダンスを有する単一のBAW共振子に替えて1群のBAW共振子が直列接続される場合、BAW共振子群の面積は単一のBAW共振子の面積よりもかなり大きい。例えば、200×200μm2のサイズを有する単一のBAW共振子は、282×282μm2の直列接続されたBAW共振子2個、または346×346μm2の直列接続されたBAW共振子3個と代替し得る。直列接続された共振子の面積は同じである必要はないが、通常は同じサイズである。特定の面積aを有しかつ直列接続されたn個のBAW共振子で、面積Aを有する単一のBAW共振子を代替するとすれば、インピーダンスマッチングを達成するためには各BAW共振子の面積aは実質的にnAとなる。上記で論じたように、個々のBAW共振子の有効圧電結合係数は、BAW共振子の面積と共に増大する。従って、フィルタ構造中の共振子数が増大したことによる減衰損失は、多少より広い周波数帯で動作するようにフィルタを設計することにより少なくとも部分的に補償できる。
【0046】
SAW共振子が用いられているフィルタにおいては、SAW共振子の数が増加するにつれて減衰が増大することがある。他方では、SAW共振子の結合係数は、少なくともBAW共振子の結合係数と比較する場合には、非常に良好であり、従って、多くのケースでは減衰の若干の増加は許容できる。
【0047】
図10には、圧電共振子からなるフィルタを設計するための本発明の第1の好ましい実施形態による方法900のフローチャートが示してある。ステップ901では、フィルタについての目標周波数応答が定義される。例えば、フィルタは、1805〜1880MHzまたは925〜960MHzに通過帯域を有するバンドパスフィルタとし得る。ステップ902では、定義された目標周波数応答を達成する第1のフィルタ構成が特定される。このフィルタ構成は、バイアを介してフィルタ回路に接続された圧電共振子の数ができる限り低く保たれている、典型的な従来技術のフィルタ構成とし得る。ステップ901および902は、事実上すべてのフィルタ設計手順中に存在する。
【0048】
ステップ903では、フィルタについての目標パワーハンドリングキャパシティが定義され、ステップ904では、第1のフィルタ構成のパワーハンドリングキャパシティが決定される。フィルタのパワーハンドリングキャパシティは、例えば、フィルタ構造および動作中のフィルタ挙動を理論的またはシミュレーションを用いることにより、あるいは、製造されたフィルタをパワーレベルが増加していく入力信号により試験することにより求め得る。
【0049】
第1のフィルタ構成のパワーハンドリングキャパシティが目標パワーハンドリングキャパシティ以下であれば(ステップ905)、ステップ908において、第1の共振周波数を有する本来の1つの圧電共振子を、第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を各々が有している圧電共振子の群と代替することにより、第2のフィルタ構成が特定される。圧電共振子の前記群は直列接続されており、かつ直列接続された共振子の群のインピーダンスは、第1のフィルタ構成における、本来の圧電共振子または本来の共振配置(前記群が一定数の本来の圧電共振子を代替する場合)のインピーダンスと同じである。第2のフィルタ構成中に、直列接続された圧電共振子の1群または2群以上を配置することが可能である。例えば、理論的にシミュレーションを用いて、あるいは試験により、高パワーレベルの存在下で、第1のフィルタ構成のどの圧電共振子が最も破損しやすいかを決定すること(ステップ906で)が可能である。最も損傷を受けやすい圧電共振子は、入力信号の周波数およびフィルタの構造に依存し得る。例えば、最高電圧にさらされている圧電共振子(または共振配置)は、一般に第1の(入力に向かって)圧電共振子(共振配置)である。バンドパスの低位エッジ近くの周波数においては、並列の第1の圧電共振子が一般に最も損傷を受けやすい。バンドパスの高位エッジ近くの周波数においては、直列の第1の圧電共振子が一般に最も損傷を受けやすい。従って、直列接続された圧電共振子の第1の群を第2のフィルタ構造において直列の第1の圧電共振配置として置き、さらに直列接続された圧電共振子の第2の群を第2のフィルタ構造において並列の第1の圧電共振配置として置くことが適切なことがある。これらの第1および第2の群における圧電共振子の数は等しくすることも異ならせることもできる。代わりに、直列および並列の第1の圧電共振子(圧電共振配置)の1つのみを、直列接続された圧電共振子の群と代替すれば十分なことがある。さらに、第1のフィルタ構成中の他の圧電共振子も、直列接続された圧電共振子の複数の群で代替する必要があることがある。
【0050】
上記で論じたように、第1のフィルタ構成における本来の圧電共振子を代替する直列接続された圧電共振子の数は、第2のフィルタ構成の減衰と周波数応答に影響する。圧電共振子の群中の圧電共振子の数を増やすと第2のフィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティが一般に増大するが、第2のフィルタ構造の減衰も増大し、かつ第2のフィルタ構造の周波数応答も変わることがある。減衰が増大しても一般に問題を引き起こさない高いパワー領域で使用するようにフィルタが特に設計されていることをパワーハンドリング要件が指定している時には、減衰が多少大きくなってもいくつかのケースでは無視できる。従って、少なくとも第2のフィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティーと第2のフィルタ構成の周波数応答との間の適切なバランスを、直列接続された圧電共振子の数を選択することにより、見い出す必要が一般にある。代わりに、パワーハンドリングキャパシティを優先することも可能である。
【0051】
方法900において、1例として、n=2から始めて(ステップ907)いくつかの可能性を試し、直列接続された圧電共振子の数nが選択される。最初に、直列接続されかつ本来の圧電共振子と同じ結合インピーダンスを有するn個の圧電共振子により代替されるべき、第1のフィルタ構造中の1個の圧電共振子がステップ906において定義され、ステップ908において共振子の群と代替される。その後、現在の第2のフィルタ構成のパワーハンドリングキャパシティおよび周波数応答がステップ909において定義される。前記群における圧電共振子の個数nはステップ910で増加され、ステップ908〜910がある程度の回数繰り返される。nの上限は、例えば、フィルタ構成について利用可能なスペースに依存し得る。その後、パワーハンドリングキャパシティと周波数応答との適切な(通常は、最も可能性の高い)組合せをもたらすnの値がステップ911において選択される。
【0052】
方法900は、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを調節する方法の単なる1例である。第1のフィルタ構成中の種々の圧電共振子が、直列接続された圧電共振子の複数の群で代替される、より精巧な方法を使うことはもちろん可能である。代わりに、種々の周波数について方法900を独立して使い(すなわち、ステップ906において種々の圧電共振子を選択する)、その結果を用いて、次に最も適切なフィルタ構造を決定することもできる。
【0053】
方法900または他の同様な方法を用いて、圧電共振子を含む従来技術のフィルタ構造をより優れたパワーハンドリングキャパシティを持つように修正することが可能である。
【0054】
図11には、本発明の第2の好ましい実施形態による梯子型フィルタブロック1090に対応する回路が1例として例示してある。この梯子型フィルタブロック1090は、ある第1の共振周波数を有しかつ直列接続された圧電共振子の第1の群1010と、ある第2の共振周波数(一般には、第1の共振周波数とは異なる)を有しかつ直列接続された圧電共振子の第2の群1020とからなる。梯子型フィルタブロック1090において、入力導線1030a、1030bと出力導線1040a、1040bとの間で、圧電共振子の第1の群1010は直列接続され、圧電共振子の第2の群1020は並列接続されている。図11において、群1010および1020における3つの点は、図11中の最も離れた圧電共振子1011a、1011b、1021a、1021bの間の直列接続された数個(数≧0)の圧電共振子を指す。圧電共振子のこの数は、任意の正の整数または0とし得る。図11において、群1010は従って、少なくとも2つの圧電共振子からなり、群1020は少なくとも3つの圧電共振子からなる。これは1例であり、例えば、本発明によるフィルタ構造において、入力および出力導線の間で並列接続された圧電共振子の群(すなわち、ブロック1090中の群1020に対応する群)が少なくとも2つの圧電共振子からなりおよび/または入力および出力導線の間で直列接続された圧電共振子の群(すなわち、ブロック1090中の群1010に対応する群)が少なくとも3つの共振子からなることも可能である。
【0055】
直列接続された圧電共振子の群1010、1020は、直列接続された圧電共振子の該群の一端として第1の圧電共振子1011a、1021aからなり、前記群の他端として第2の圧電共振子1011b、1021bからなる。直列接続された圧電共振子の群1010、1020は、第1の圧電共振子1011a、1021aおよび第2の圧電共振子1011b、1021bを介してのみ、他の梯子型フィルタブロック1090と接続される。圧電共振子の群1010、1020のインピーダンスは、それぞれ梯子型フィルタブロック1090の目標インピーダンスと整合させられる。
【0056】
図12には、本発明の第3の好ましい実施形態による、梯子型フィルタ1100に対応する回路の1例が例示してある。この梯子型フィルタ1100は3つの梯子型フィルタブロックからなる。その最初のもの、すなわち梯子型フィルタブロック1190は圧電共振子の群1110及び1191からなり、該群1110の圧電共振子は、直列接続され同じ共振周波数を有し、入力導線1030a、1030bと出力導線1040a、1040bとの間で直列接続されており、圧電共振子1191は圧電共振子および入力導線入力と出力導線との間で並列接続されている。1例として、図12の群1110は2つの圧電共振子から構成されているが、その数は本発明による他の梯子型フィルタにおいてはより大きくし得る。梯子型フィルタブロック1180a、1180bは、梯子型フィルタブロック1190と直列接続されている。梯子型フィルタブロック1180a、1180bはそれぞれ、直列接続された圧電共振子1181a、1181bならびに入力および出力導線の間で並列接続された圧電共振子1182a、1182bからなる。
【0057】
圧電共振子の群1110は、梯子型フィルタ1100において、直列の第1の圧電共振配置として働く。方法900に関して上記で論じたように、第1の圧電共振配置として複数の圧電共振子を置くことが望ましいことがしばしばある。さらなる例として、梯子型フィルタブロック1190は、例えば、図11のフィルタブロック1090で代替できる。入力および出力導線の間で並列接続されかつ入力導線に直接に接続された圧電共振子の群は、フィルタのパワーハンドリングキャパシティをさらに向上する。
【0058】
梯子型フィルタ1100と同じ構造を有し、圧電共振子が、圧電材料としてZnOを有する圧電BAW共振子であり、群1110が2つの圧電BAW共振子で構成され、かつその梯子型フィルタの中心周波数が942.5MHzである梯子型フィルタが、33dBmのパワーに耐えることが分っている。対応する単一の圧電BAW共振子により群1110が置き換えられた対応する梯子型フィルタは、30dBmのパワーを扱うことができる。2つを超えた圧電共振子を有する群1110を用いることにより、この例の梯子型フィルタのパワーハンドリングキャパシティをよりいっそう増大させることが可能である。
【0059】
図13には、本発明の第4の好ましい実施形態による格子型フィルタ構造1200に対応する回路が1例として例示してある。格子型フィルタ構造1200は、圧電共振子の4つの群からなる。この格子型フィルタ構造1200において、入力導線1030a、1030bと出力導線1040a、1040bとの間に、群1210a、1210bが直列接続され、さらに入力導線と出力導線との間で群1220a、1220bが並列接続されている。群1210aおよび1210bは一般に同一であり(または、製造可能な程度に同一)、群1220aおよび1220bも同様である。従来技術の格子型フィルタと比較すると、格子型フィルタ構造1200においては、直列の第1の共振子および並列の第1の共振子が、圧電共振子の群により代替されている。フィルタ構造を対称的にしておくため、従来技術の格子型フィルタの残りの共振子も、圧電共振子の群と代替される。フィルタ構造1200においては、1例として、群1210a、1210bは2つの圧電共振子から構成され、群1220a、1220bは3つの圧電共振子から構成される。
【0060】
前記群1210a、1210b、1220a、1220bに属する圧電共振子は、例えば、圧電BAW共振子とすることができ、これらは圧電材料の別個のブロックへ圧電層をパターン形成することにより形成され、従って、各BAW共振子は圧電材料のそのような別個のブロックからなる。これらの圧電BAW共振子は一般にバイアを用いて相互に接続されており、このバイアは保護層を通って設けてある。代わりに、BAW共振子を相互におよび/または他のフィルタ回路と接続するために必要な数のバイアが設けられた単一の圧電層を用いてBAW共振子を形成することも可能である。代わりに、前記群1210a、1210b、1220a、1220bに属する圧電共振子は、例えば、圧電SAW共振子としてもよい。一般的に、フィルタが圧電共振子からなる場合、BAWまたはSAW共振子のどちらかのみがフィルタ構造に用いられる。
【0061】
図11〜図13におけるフィルタ構造は、本発明によるフィルタ構造の例として提示されている。特許請求の範囲に含まれる種々のその他のフィルタ構造を構成することが可能である。特に、本発明によるフィルタ構造は、直列接続された圧電共振子の2つ以上の群を有することができる。
【0062】
直列接続されたBAW共振子は、パターン形成したまたはパターン形成しない圧電層を用いて構成し得る。図14、図15には、フィルタ構造1100を構成する2つの例が示してあり、これらの例ではパターン形成された圧電層が用いられている。例えば、BAW共振子の底部電極ならびに入力および出力導線を形成している導電性材料は交差したハッチング線で表してある。BAW共振子の頂部電極および接続回路の部分を形成している導電性材料は無地の白色である。圧電層は斜線ハッチングで表してある。BAW共振子1110aおよび1110bは、図12において1110と記された圧電共振子を形成する。図14においては、圧電層は、前記フィルタ構造に属する各BAW共振子が圧電材料の別個のブロックで形成されるようにパターン形成されている。図15には第2の例が示してあり、そこではフィルタ構造のBAW共振子の少なくとも1つをフィルタ回路に接続するためのいくつかのバイアが形成されている。この目的のために、1つのバイアのみが必要とされることがある。パターン形成されていない圧電層(図14、図15には図示せず)の使用は、事実上フィルタ回路の全面積が圧電層により被覆されていることを意味する。
【0063】
SAW共振子からなるフィルタは一般に、圧電結晶で形成されたディスク(基板)上に構成されている。SAW共振子の電極は一般に、圧電結晶の1方の表面上に堆積されている。SAW共振子は一般に、電極が形成されているのと同じ導電性層を用いて、および/または結合線を用いて互いに接続されている。
【0064】
多くのセルラーシステムにおいては、例えば、信号の送信および受信は異なる周波数で行われる。もし送信が第1の周波数帯において行われ、受信が第2の周波数帯において行われるならば、送信信号および受信信号を互いに分離するために二重フィルタが用いられる。二重フィルタは2つのフィルタブランチを有し、これらのフィルタブランチの通過域は異なる。従って、アンテナと接続された二重のフィルタにより、第1の周波数帯での信号送信および第2の周波数帯での信号受信が可能になる。さらに、1つの周波数帯のみを用いるのでなく、信号の送信および/または受信が種々の周波数帯で行われることが可能である。この場合においても、信号の送信および受信を可能にするフィルタを設計することが可能である。
【0065】
図16には、本発明によるさらなるフィルタ構造1400が例示してある。このフィルタ構造1400は一般に無線トランシーバにおいて用いられ、図16には、フィルタ構造がアンテナとどのように接続されるかが示してある。フィルタ構造1400は、送信されるべき信号を濾波するための第1のフィルタブランチ1401および受信された信号を濾波するための第2のフィルタブランチ1402からなる。第1のフィルタ構造の出力は一般に第2のフィルタ構造の入力と共通であり、これは通常アンテナポートと呼ばれる。フィルタ構造1400は、例えば、二重フィルタであり得る。
【0066】
第1のフィルタブランチの1つまたは複数の通過帯域は、第2のフィルタブランチの通過帯域とは異なり、従って、フィルタ構造1400は、受信された信号から送信された信号を分離する。受信信号の周波数帯とは周波数帯が異なっている送信信号は、高インピーダンスとして第2のフィルタブランチ1402を感じ、この第2のフィルタブランチには入らない。セルラーシステムにおいては、送信信号のパワーは、例えば、最大2Wになり得る。他方、受信信号のパワーは、ほぼ−100dBm程度になり得る。同様に、受信された信号は、高インピーダンスとして第1のフィルタブランチを感じ、第2のフィルタブランチに入る。この方法で事実上すべての受信信号のパワーが受信機回路に入る。
【0067】
フィルタ構造1400においては、第1のフィルタブランチは、本発明による直列接続された圧電フィルタの群からなる。第1のフィルタブランチは、例えば、梯子型フィルタ構造1100または格子型フィルタ構造1200からなり得る。一般に、受信信号のパワーレベルが非常に小さく、そこではパワーハンドリングキャパシティは問題を起こさないので、フィルタ構造1400中の第2のフィルタブランチ1402の構造については何の制限も課されない。フィルタ構造1400は移動通信機器において用いられるのに有利である。
【0068】
図17には、無線周波数信号の送信および受信のための構成1500の1例が例示してある。この構成は、フィルタ構造1400に加え、送信されるべきデータを搬送する信号を生成する局部発振器1502ならびに変調器1501からなる。局部発振器からの搬送波信号と変調器からの信号とが混合され、生じた信号はその後パワー増幅器1503で増幅される。増幅された信号は、フィルタ構造1400の第1のフィルタブランチ1401において濾波され、例えば、送信周波数の倍数の周波数が、濾波により取り除かれる。パワー増幅器1503と第1のフィルタブランチ1401との間に、インピーダンス整合要素1504が一般に必要とされる。
【0069】
構成におけるフィルタ構造1400の第2のフィルタブランチ1402の出力は一般に、受信された信号をさらなる処理の前に増幅する低ノイズ増幅器1505に接続されている。
【0070】
図18には、無線周波数信号を送信するための構成1600が例示してある。そのような構成は、例えば、移動通信機器の一部であり得る。これは、1つのフィルタ構造1601がパワー増幅器1503をアンテナに連結している以外の点では配置1500と同様である。このフィルタ構造は、例えば、フィルタ構造1100または1200、あるいは優れたパワーハンドリングキャパシティを有する本発明による任意の他のフィルタ構造とすることができる。
【0071】
請求項中のバルク音響共振子という用語は、圧電層および該圧電層の片方の面上に第1の電極ならびに前記圧電層の反対側の面上に第2の電極を有する構造を指す。この構造は、例えば、付加的な圧電層および付加的な電極をさらに有し得る。
【0072】
請求項中およびこの詳細な説明中の表面音響波共振子という用語は、圧電材料の表面上に少なくとも2つの電極を有する構造を指し、前記圧電材料は一般に単一の圧電結晶である。
【0073】
請求項中およびこの詳細な説明中の接続という用語およびそれからの派生語は、ガルバニック接続を指す。連結という用語およびそれからの派生語は、請求項中およびこの詳細な説明中において、電気的(必ずしも、ガルバニック的ではない)連結を指す。例えば、一緒に連結された2つの構成要素は、中間的電気部品にガルバニック的にそれぞれ接続され得る。
(付記1) 一定のインピーダンスレベルを有しかつ第1の圧電共振子(1021a)からなるフィルタ構造(1090、1100、1200)であって、前記圧電共振子の共振周波数が第1の共振周波数であり、前記圧電共振子が前記フィルタ構造の入力導線(1030a、1030b)に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、圧電共振子のチェーンからさらになり、該チェーンは前記第1の圧電共振子に直列接続された少なくとも2個の圧電共振子からなりかつ前記第1の圧電共振子と共に直列接続された圧電共振子の群(1020、1110、1220)を形成すること、
圧電共振子の前記チェーンに属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群(1020、1110、1220)は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続された前記第1の圧電共振子(1021a)および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子(1021b)を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とするフィルタ構造。
(付記2) 直列接続された圧電共振子の第2の群(1010、1210)からさらになり、該群は少なくとも2つの圧電共振子からなり、
圧電共振子の前記第2の群に属する各圧電共振子は、第2の共振周波数に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記第2の群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記第2の群の一端において直列接続された第3の圧電共振子(1011a)および圧電共振子の前記第2の群の他端において直列接続された第4の圧電共振子(1011b)を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記第2の群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする付記1に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記3) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と実質的に等しいことを特徴とする付記2に記載のフィルタ構造。
(付記4) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と異なることを特徴とする付記2に記載のフィルタ構造。
(付記5) 前記第3の圧電共振子(1011a)は前記フィルタ構造の第2の入力導線(1030a)に接続されていることを特徴とする付記2に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記6) 前記フィルタ構造は梯子型フィルタ構造(1100)であることを特徴とする付記1に記載のフィルタ構造。
(付記7) 前記フィルタ構造は格子型フィルタ構造(1200)であることを特徴とする付記1に記載のフィルタ構造。
(付記8) 前記第1の圧電共振子および前記第2の圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする付記1に記載のフィルタ構造。
(付記9) 圧電共振子の前記群を形成する前記圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする付記8に記載のフィルタ構造。
(付記10) 前記バルク音響波共振子はパターン形成されていない圧電材料層上に形成されていることを特徴とする付記9に記載のフィルタ構造。
(付記11) 前記バルク音響波共振子はパターン形成された圧電材料層上に形成されていることを特徴とする付記9に記載のフィルタ構造。
(付記12) 前記バルク音響波共振子は圧電材料の個別のブロック上に形成されていることを特徴とする付記11に記載のフィルタ構造。
(付記13) 前記第1の圧電共振子および前記第2の圧電共振子は表面音響波共振子であることを特徴とする付記1に記載のフィルタ構造。
(付記14) 一定のインピーダンスレベルを有しかつ第1の表面音響波共振子(1021a)からなるフィルタ構造(1090、1100、1200)であって、前記共振子の共振周波数が第1の共振周波数であり前記共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、第2の表面音響波共振子(1021b)からさらになり、前記第1の表面音響波共振子の第1の電極は前記第2の表面音響波共振子の第1の電極に接続され、かつ前記第2の表面音響波共振子は前記第1の表面音響波共振子と共に直列接続された圧電共振子の群(1020)を形成すること、および
圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数と実質的に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、前記第1の表面弾性波共振子の第2の電極および前記第2の表面音響波共振子の第2の電極を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とするフィルタ構造。
(付記15) 直列接続された圧電共振子の第2の群(1010、1210)からさらになり、該群は少なくとも2つの圧電共振子からなり、
圧電共振子の前記第2の群に属する各圧電共振子は、第2の共振周波数と等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記第2の群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記第2の群の一端において直列接続された第3の圧電共振子(1011a)および圧電共振子の前記第2の群の他端において直列接続された第4の圧電共振子(1011b)を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記第2の群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする付記14に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記16) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と実質的に等しいことを特徴とする付記15に記載のフィルタ構造。
(付記17) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と異なることを特徴とする付記15に記載のフィルタ構造。
(付記18) 前記第3の圧電共振子(1011a)は、前記フィルタ構造の第2の入力導線(1030a)と接続されていることを特徴とする付記15に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記19) 前記フィルタ構造は梯子型フィルタ構造(1100)であることを特徴とする付記14に記載のフィルタ構造。
(付記20) 前記フィルタ構造は格子型フィルタ構造(1200)であることを特徴とする付記14に記載のフィルタ構造。
(付記21) 一定のインピーダンスレベルを有しかつ第1のバルク音響波共振子(1021a)を備えるフィルタ構造(1090、1100、1200)であって、前記共振子の共振周波数が第1の共振周波数であり、前記共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、第2のバルク音響波共振子(1021b)からさらになり、前記第1のバルク音響波共振子の第1の電極は前記第2のバルク音響波共振子の第1の電極に接続され、かつ前記第2のバルク音響波共振子は前記第1のバルク音響波共振子と共に直列接続された圧電共振子の群(1020)を形成すること、および
圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数と実質的に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、前記第1のバルク音響波共振子の第2の電極および前記第2のバルク音響波共振子の第2の電極を介してのみ接続されており、
前記第1のバルク音響波共振子および前記第2のバルク音響波共振子は、パターン形成されていない単一の圧電層を用いて形成されておらず、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とするフィルタ構造。
(付記22) 直列接続された圧電共振子の第2の群(1010、1210)からさらになり、該群は少なくとも2つの圧電共振子からなり、
圧電共振子の前記第2の群に属する各圧電共振子は、第2の共振周波数と等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記第2の群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記第2の群の一端において直列接続された第3の圧電共振子(1011a)および圧電共振子の前記第2の群の他端において直列接続された第4の圧電共振子(1011b)を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記第2の群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする付記21に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記23) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と実質的に等しいことを特徴とする付記22に記載のフィルタ構造。
(付記24) 前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と異なることを特徴とする付記22に記載のフィルタ構造。
(付記25) 前記第3の圧電共振子(1011a)は、前記フィルタ構造の第2の入力導線(1030a)と接続されていることを特徴とする付記22に記載のフィルタ構造(1090、1200)。
(付記26) 前記フィルタ構造が梯子型フィルタ構造(1100)であることを特徴とする付記21に記載のフィルタ構造。
(付記27) 前記フィルタ構造が格子型フィルタ構造(1200)であることを特徴とする付記21に記載のフィルタ構造。
(付記28) 前記第1および第2のバルク音響波共振子は、パターン形成された圧電材料層上に形成されかつバイアを用いて共に接続されていることを特徴とする付記21に記載のフィルタ構造。
(付記29) 前記第1および第2のバルク音響波共振子は、圧電材料の別個のブロック上に形成されていることを特徴とする付記21に記載のフィルタ構造。
(付記30) 第1の信号を濾波するための第1のフィルタブランチ(1401)と第2の信号を濾波するための第2のフィルタブランチ(1402)とからなるフィルタ構造(1400)であって、前記第1のフィルタブランチは第1の入力導線と第1の出力導線とを有し、前記第2のフィルタブランチは第2の入力導線と第2の出力導線とを有し、前記第1の出力導線は前記第2の入力導線に接続しているフィルタ構造において、前記第1のフィルタブランチは直列接続された圧電共振子の群からなり、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、実質的に同じ共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記フィルタブランチの残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され前記第1の入力導体に接続された第1の圧電共振子を介しておよび圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とするフィルタ構造。
(付記31) 前記第1のフィルタブランチの通過域は前記第2のフィルタブランチの通過域と異なることを特徴とする付記30に記載のフィルタ構造。
(付記32) 前記第1および第2の圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする付記30に記載のフィルタ構造。
(付記33) 前記第1および第2の圧電共振子は表面音響波共振子であることを特徴とする付記30に記載のフィルタ構造。
(付記34) 無線周波数信号を送信および受信するための構成(1500)であって、
第1の信号を増幅するための第1の増幅手段(1503)と、
第2の信号を増幅するための第2の増幅手段(1505)と、
前記第1の信号を濾波するための第1のフィルタブランチ(1401)および前記第2の信号を濾波するための第2のフィルタブランチ(1402)とからなり、前記第1のフィルタブランチは第1の入力導線と第1の出力導線とを有し、前記第2のフィルタブランチは第2の入力導線と第2の出力導線とを有し、第1の出力導線は第2の入力導線に接続され、前記第1の入力導線は前記第1の増幅手段の出力に連結されかつ前記第2の出力導線は前記第2の増幅手段の入力に連結されるフィルタ構造と(1400)からなるフィルタ構成において、
前記第1のフィルタブランチは直列接続された圧電共振子の群からなり、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、実質的に同じ共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記第1のフィルタブランチの残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され前記第1の入力導線に接続された第1の圧電共振子を介しておよび圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記第1のフィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする構成。
(付記35) 前記第1のフィルタブランチの通過域は前記第2のフィルタブランチの通過域と異なることを特徴とする付記34に記載の構成。
(付記36) 前記第1および第2の圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする付記34に記載の構成。
(付記37) 前記第1および第2の圧電共振子は表面音響波共振子であることを特徴とする付記34に記載の構成。
(付記38) 無線周波数信号を送信するための構成(1600)であって、
無線周波数信号を増幅するための増幅手段(1503)と、
増幅された前記無線周波数信号を濾波するためのフィルタ構造(1090、1100、1200、1601)からなる構成において、
前記フィルタ構造は直列接続された圧電共振子の群からなり、該群は少なくとも2つの圧電共振子を有すること、および
圧電共振子の前記群に属する各圧電共振子は、実質的に同じ共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続され前記第1のフィルタ構造の入力導線に接続された第1の圧電共振子を介しておよび圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスレベルと整合するようにしてあること
を特徴とする構成。
(付記39) 前記第1のフィルタブランチの通過域は前記第2のフィルタブランチの通過域と異なることを特徴とする付記38に記載の構成。
(付記40) 前記第1および第2の圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする付記38に記載の構成。
(付記41) 前記第1および第2の圧電共振子は表面音響波共振子であることを特徴とする付記38に記載の構成。
(付記42) フィルタを設計するための方法であって、
圧電共振子からなり、目標周波数応答を達成するフィルタ構成を特定する段階からなる方法において、
前記フィルタ構成において、第1の共振周波数を有する本来の1つの圧電共振子を圧電共振子の群で代替する段階であって、前記群の各々は前記第1の共振周波数と実質的に等しい共振周波数を有し、かつ直列接続された共振子の前記群のインピーダンスが前記本来の圧電共振子のインピーダンスと等しい段階と
前記複数の圧電共振子における圧電共振子の数を選択する段階とからなることを特徴とする方法。
(付記43) 目標パワーハンドリングキャパシティを定義する段階と、
圧電共振子の群を有する前記フィルタ構成のパワーハンドリングキャパシティを決定する段階と、
圧電共振子の前記群を有する前記フィルタ構成の周波数応答を決定する段階とからなり、
圧電共振子の前記群中の圧電共振子の数を選択する前記段階において、前記フィルタ構造の前記パワーハンドリングキャパシティと前記フィルタ構成の前記周波数応答との間のバランスが達成されるように前記選択が実行されること
を特徴とする付記42に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】従来技術による表面音響共振子を例示する図である。
【図2】従来技術によるバルク音響波共振子を例示する図である。
【図3】ブリッジ構造を有する別のバルク音響波共振子構造を示す図である。
【図4】バイアホール構造を有するバルク音響波共振子を例示する図である。
【図5】音響ミラー構造により基板から絶縁されたバルク音響波共振子を例示する図である。
【図6】積み重ねられたバルク音響波共振子を例示する図である。
【図7】従来技術の梯子型フィルタブロックの例を示す図である。
【図8】従来技術の格子型フィルタ構造の例を示す図である。
【図9】BAW共振子の電極幅の関数としての有効圧電結合係数を例示するグラフである。
【図10】本発明の第1の好ましい実施形態によるフィルタ構造を設計する方法を例示するフローチャートである。
【図11】本発明の第2の好ましい実施形態による梯子型フィルタブロックを1つの例として例示する図である。
【図12】本発明の第3の好ましい実施形態による梯子型フィルタを1つの例として例示する図である。
【図13】本発明の第4の好ましい実施形態による格子型フィルタ構造を1つの例として例示する図である。
【図14】図12において提示されたフィルタ構造を実装する第1の例を例示する図である。
【図15】図12において提示されたフィルタ構造を実装する第2の例を例示する図である。
【図16】本発明による二重フィルタ構造を1つの例として例示する図である。
【図17】本発明による、無線周波数信号を送信および受信するための構成を1つの例として例示する図である。
【図18】本発明による、無線周波数信号を送信するための構成を1つの例として例示する図である。
【符号の説明】
【0075】
100 圧電層
110 底部電極
120 頂部電極
122、124 電極
130 膜
135 犠牲層
150 音響ミラー
200 基板
210 空隙
211 バイアホール
700 梯子型フィルタブロック
701、702 共振子
1090 梯子型フィルタブロック
1010、1020、1110、1180、1190、1210、1220 圧電共振子の群
1011、1021、1181、1182、1191 圧電共振子
1030 入力導線
1040 出力導線
1400 フィルタ構造
1401 第1フィルタブランチ
1402 第2フィルタブランチ
1501 変調器
1502 局部発振器
1503 パワー増幅器
1504 インピーダンス整合要素
1505 低ノイズ増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定のインピーダンスを有しかつ第1の圧電共振子を備えるフィルタ構造であって、前記圧電共振子の共振周波数が第1の共振周波数であり、前記圧電共振子が前記フィルタ構造の入力導線に接続されてなるフィルタ構造において、フィルタ構造のパワーハンドリングキャパシティを増大するため、圧電共振子のチェーンをさらに備え、該チェーンは前記第1の圧電共振子に直列接続された少なくとも2個の圧電共振子からなりかつ前記第1の圧電共振子と共に直列接続された圧電共振子の群を形成すること、
圧電共振子の前記チェーンに属する各圧電共振子は、前記第1の共振周波数に実質的に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記群の一端において直列接続された前記第1の圧電共振子および圧電共振子の前記群の他端において直列接続された第2の圧電共振子を介してのみ接続されており、
直列接続された圧電共振子の前記群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスと整合するようにしてあり、さらに、
前記フィルタ構造が梯子型フィルタ構造であることを特徴とするフィルタ構造。
【請求項2】
直列接続された圧電共振子の第2の群をさらに備え、該群は少なくとも2つの圧電共振子からなり、
圧電共振子の前記第2の群に属する各圧電共振子は、第2の共振周波数に等しい共振周波数を有し、
圧電共振子の前記第2の群は、前記フィルタ構造の残りの圧電共振子に、圧電共振子の前記第2の群の一端において直列接続された第3の圧電共振子および圧電共振子の前記第2の群の他端において直列接続された第4の圧電共振子を介してのみ接続されており、さらに
直列接続された圧電共振子の前記第2の群のインピーダンスが前記フィルタ構造のインピーダンスと整合するようにしてあること
を特徴とする請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項3】
前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と実質的に等しいことを特徴とする請求項2に記載のフィルタ構造。
【請求項4】
前記第1の共振周波数は前記第2の共振周波数と異なることを特徴とする請求項2に記載のフィルタ構造。
【請求項5】
前記第3の圧電共振子は前記フィルタ構造の第2の入力導線に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のフィルタ構造。
【請求項6】
前記第1の圧電共振子および前記第2の圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする請求項1に記載のフィルタ構造。
【請求項7】
圧電共振子の前記群を形成する前記圧電共振子はバルク音響波共振子であることを特徴とする請求項に記載のフィルタ構造。
【請求項8】
前記バルク音響波共振子はパターン形成されていない圧電材料層上に形成されていることを特徴とする請求項に記載のフィルタ構造。
【請求項9】
前記バルク音響波共振子はパターン形成された圧電材料層上に形成されていることを特徴とする請求項に記載のフィルタ構造。
【請求項10】
前記バルク音響波共振子は圧電材料の個別のブロック上に形成されていることを特徴とする請求項に記載のフィルタ構造。
【請求項11】
前記第1の圧電共振子および前記第2の圧電共振子は表面音響波共振子であることを特徴とする請求項に記載のフィルタ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−267405(P2007−267405A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128094(P2007−128094)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2001−359859(P2001−359859)の分割
【原出願日】平成13年11月26日(2001.11.26)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】