説明

圧電型アクチュエータ、圧電型アクチュエータの製造方法、ヘッドカートリッジ、液滴吐出装置およびマイクロポンプ

【課題】圧電素子を含む振動板の破壊に起因する動作不良を解消して安定した滴吐出特性が得られる圧電型アクチュエータなどの提供。
【解決手段】ノズル開口(41)に連通する流路形成基板(30)に形成された圧力発生室(33)と、圧力発生室に対応する領域に振動板として機能する剛性調整膜(24)、上部電極(23a)、上部電極下に設けられた圧電体層(22)及び圧電体層の裏面側に設けられた固定電極(12)の積層膜からなる圧電素子(20)とを備える圧電型アクチュエータにおいて、圧力発生室側と振動室側の少なくとも一方に振動板過度変形止め部(27)を有し、駆動時には圧電素子は、過度変形止め部には接触しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部に振動板を介して圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインク滴を吐出させる圧電アクチュエータ及びその製造方法に関する。
更に、前記圧電型アクチュエータ及びその製造方法で製造した圧電型アクチュエータを用いたヘッドカートリッジ、液滴吐出装置およびマイクロポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置(以下、インクジェットプリンタ)は、記録ヘッド(インクジェットヘッド)に設けた吐出口(ノズル)からインクを吐出させて紙等の被記録材に付着させることにより各種情報を記録するものである。前記インクジェットプリンタは騒音の発生が少なく、かつ高速記録が可能で、被記録材の選択範囲が広い等の多くの利点を有している。
前記インクジェットヘッドの中で、圧電効果のエネルギーで振動板を駆動しインクに作用させて吐出口からインクを吐出させるタイプの記録ヘッドは、省エネルギーで記録信号に対する応答性が良く、またノズルの高密度マルチ化が容易である等の利点を有している。
また、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
ところで、近年の電子機器の小型化に伴って、圧電素子に対しても小型化が強く要求されるようになってきた。また、同時に、より高い印字品質を求めての高精細化が必要となってきている。従来から多く使用されてきた焼結体を圧電振動子として用いるのではなく、焼結体に比べて著しく体積を小さくすることができる薄膜圧電振動子を用いることでこれら要求を満足させることが可能となる。
その理由は、焼結体で作製された圧電素子の膜厚は数十μmと薄膜圧電素子の2μm程度と比べて厚いため、フォトリソグラフィ技術を用いてのエッチングの精度に限界があるからである。所定のエッチングを精度良く行うには、線幅はその膜厚以下にしなければならず、膜厚の薄い薄膜圧電素子を用いることで精度の高い微細加工が可能となる。薄膜圧電素子、例えば、PZT膜を形成する方法としては、スパッタ法やCVD法、ゾルゲル法などがあり、成膜条件の調節や熱処理条件の工夫によって高性能の薄膜圧電素子が得られるようになってきた。
【0004】
しかしながら、振動板の厚みが薄いたわみ振動モードの圧電アクチュエータではできる限り薄くした場合、振動板の割れが発生しやすくなることが課題となってくる。特に製造中における静電気による駆動電圧より高い電圧が印加することで設計(振動板のたわみ許容値)より大きいたわみが発生し、割れが発生する。振動板の構造上、振動板端部で曲がりの曲率が最も大きくなるため、その箇所で割れが発生しやすい。
そこで、振動板端部の変形を抑制させる構造をもつ方法が多く提案されている。例えば、特許文献1では、圧力発生室を幅狭部及び幅広部で構成し、幅広部の端部に対応する領域に不連続圧電体層を設けるようにした。これにより、不連続圧電体層の端部の位置によって振動板の実質的な振動領域が規制されるため、幅広部の寸法精度が比較的低くてもインク吐出特性のばらつき等が抑えられる特徴を有する。従って、クロストークを防止して良好なインク吐出特性を確保したインクジェット式記録ヘッドを比較的容易に形成することができるとしている。
【0005】
また、特許文献2では、圧力発生室の長手方向の両端において振動板を支持する基体が凸部として突出することで、振動板の長手方向両端に発生するツノ状の二山の変位を凸部によって抑制することができる。これも前記従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、振動板の割れを防止して寿命を延ばし、高解像度で充分な吐出寿命を有する液体吐出ヘッドおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
更に、特許文献3では、流路形成基板の振動板側に流路形成層を設け、この流路形成層の開口部の外縁が、圧力発生室の少なくとも長手方向の端部を規定しているので、圧電素子の駆動によって振動板に掛かる応力の均一化が図られる。これにより、振動板のクラックの発生、変形、破壊等を防止することができ、信頼性を向上することができる。また、圧電素子と圧力発生室との相対的な位置精度を向上して、インク吐出特性を向上することができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、製造過程及び長期信頼性に関して十分なインクジェットヘッドを提供できるとは言い難い。その理由は、静電気による振動板過変形による振動板のクラックの発生、変形、破壊等を防止できないからである。
特許文献1〜3では、圧力室側振動規制層を設けることで振動板の連続振動の耐久性特性は向上するが、過振幅による振動板のクラックの発生、変形、破壊等防止は十分でない。静電気による振動板の過変形は、電圧の極性により圧力室側へも振動室側へも起こるため、両側への過変形防止構造が有効である。ちなみに製造過程でのドライエッチャー等の製造装置でのプロセス中のチャージアップ及びアクチュエータ取り扱い時の人的な静電気などにより静電破壊する。
【0007】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、圧電素子を含む振動板の破壊に起因する動作不良を解消して安定した滴吐出特性が得られる圧電型アクチュエータ及びその製造方法、圧電型アクチュエータを備えたヘッドカートリッジ、液滴吐出装置およびマイクロポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために請求項1記載の発明は、ノズル開口(図1の41)に連通する流路形成基板(液室基板30)に形成された圧力発生室(33)と、前記圧力発生室に対応する領域に、振動板として機能する剛性調整膜(図2の24)、上部電極(23a)、該上部電極下に設けられた圧電体層(22)及び該圧電体層の裏面側に設けられた固定電極(12)の積層膜からなる圧電素子(積層振動板20)と、
前記圧力発生室(33)側と振動室(14a)側の少なくとも一方に、前記圧電素子の過度変形を防止する振動板過度変形止め部(図2の27)とを具備し、駆動時には前記圧電素子は、前記振動板過度変形止め部には接触しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
圧電素子を含む振動板の破壊に起因する動作不良を解消して安定した滴吐出特性が得られる圧電型アクチュエータ、該圧電型アクチュエータを備えたヘッドカートリッジ、液滴吐出装置およびマイクロポンプを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る液体吐出ヘッド(ノズル基板、液室基板、アクチュエータ基板)の分解斜視図である。
【図2】同液体吐出ヘッドの圧力発生室を示す図であって、(a)は断面構造図、(b)はx1−x1線に沿う断面図である。
【図3(a)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図1である。
【図3(b)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図2である。
【図3(c)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図3である。
【図3(d)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図4である。
【図3(e)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図5である。
【図3(f)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図6である。
【図3(g)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図7である。
【図3(h)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図8である。
【図3(i)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図9である。
【図3(j)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図10である。
【図3(k)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図11である。
【図3(l)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図12である。
【図3(m)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図13である。
【図3(n)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図14である。
【図3(o)】同実施例1に係る液体吐出ヘッドの製造方法を示す工程図15である。
【図4】印加電圧と振動板変位の関係を数値シミュレーションにより求めた特性図である。
【図5】本発明の実施例2に係る圧電型アクチュエータ(ノズル基板、液室基板、アクチュエータ基板)の透視状態平面図である。
【図6】本発明の実施例3に係る液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図7】本発明の実施例4に係る液体カートリッジの斜視図である。
【図8】本発明の実施例5に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。
【図9】同インクジェット式記録装置の機構部の側断面図である。
【図10】本発明の実施例6に係るマイクロポンプの動作原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
<実施例1>
本実施例は、本発明の圧電型アクチュエータを圧力発生手段として使用した液滴吐出ヘッドである。
図1、図2(a),(b)に示すように、液体吐出ヘッドETは、ノズル板40、液室基板(流路形成基板とも呼ぶ)30、アクチュエータ基板10、および図示されていない、フレーム、FPC(Flexible Printed Circuit)、ドライバーICから構成されている。
ノズル板40は、例えば、紙面側(図2の上面側)に撥水膜をコーティングしたポリイミドフィルムであり、ノズル孔41は、ノズル板40を液室基板30に接着したのち、レーザ加工にて開口したものである。
液室基板30には、結晶軸が<110>のシリコン基板(400um厚)を用い、ノズルと反対側の面に圧力発生室(加圧液室とも呼ぶ)33、流体抵抗部32、共通液室31が形成されていて、また、ノズル孔41と加圧液室33を連通させるための連通管34が液室基板30を貫通させて形成されている。
【0013】
前記構成とすることにより、基板厚みよりも加圧液室高さを低くすることができ、ハンドリングの容易な厚さの基板を用いたまま、加圧液室33の高さを吐出特性面から最適化することが可能となっている。
また、<110>のシリコン基板を用いているので、公知のごとく、加圧液室等を異方性エッチングにて高精度に加工することが可能となっている。また、加圧液室33その他を形成後、熱酸化により表面に酸化膜を形成し、濡れ性の向上とインクによる基材であるシリコンの腐食防止を図っている。このとき、図示は省略したが、液室基板30のノズル接着面側には、ダミーパターンを設けておくことで、熱酸化後に酸化膜の内部応力により基板が反ることを防止している。
【0014】
アクチュエータ基板10には、結晶軸が<100>のシリコン基板(400um厚)を用い、アクチュエータは低消費電力でMEMS加工技術を用いて高集積加工が可能な、薄膜圧電素子、その両端に固定電極12aと上部電極23aを含む積層振動板20、振動室14a、からなる圧電型アクチュエータが形成されている。
また図の場合、アクチュエータ基板10にはノズル並び方向に、各振動室を相互に連通する連通路28が形成されていて、連通路28の他端部は振動室・連通路内を大気に開放するための大気開放部29に連通されている。この大気開放部29はアクチュエータ基板を形成した後は封止剤によって封止される。もちろん連通路の形成無しで各振動室毎に負圧封止しても構わない。
また、アクチュエータ基板のノズル・液室側と反対の面(以後裏面とする)側から吐出液を供給するため、液供給路57が基板を貫通して形成されている。
【0015】
本実施例においては、積層振動板20は積層膜で形成されていて、振動室側から、以下の6層からなっている。その積層振動板20の圧力発生室側に振動板過度変形止め絶縁膜27を形成している。
・振動室側絶縁膜21(酸化シリコン膜):圧電素子の保護膜になる。あるいは振動室となる犠牲層エッチングの時のストップ層の役目になる。
・固定電極層12(白金/チタン)
・圧電体層22(PZT):電圧印加により振動板をたわみ振動させる。圧力を発生させる。
・上部電極層23a(白金)
・剛性調整膜24(窒化シリコン膜):振動板を全体として引っ張り応力とすることで、撓まず張った状態にすることおよび駆動時の反発力確保。
・犠牲層除去孔封止膜25(酸化シリコン膜):犠牲層除去孔の封止。引っ張り応力膜(窒化シリコン膜)の割れ防止も兼ねている。接液膜としての機能もある。
なお、本実施例では省略したが、公知のごとく、上部電極層(白金)と引っ張り応力膜24の間に振動板内部応力調整膜として酸化シリコン膜を設ける場合もある。
【0016】
また、固定電極層12と基板9の間にも基板絶縁膜11として酸化シリコン膜が形成され、固定電極層12とシリコン基板9間の絶縁を確保している。
振動室14aおよび連通路28は、ポリシリコンを犠牲層に用いた犠牲層プロセスにて形成した。犠牲層除去孔やその周囲の詳細構造については図示していない。
なお、犠牲層はポリシリコンにて形成されているが、先に述べたように、振動室空隙(となる部分)に面している部分は絶縁膜として設けたシリコン酸化膜で覆われているので、ポリシリコンとシリコン酸化膜で十分な選択性を有するエッチャント、例えばTMAH(Tetra methyl ammonium hydroxide(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド))水溶液を用いて犠牲層除去を行うことにより、犠牲層除去時にエッチングされることは無い。
【0017】
また、上部電極23aと固定電極12aのどちらか一方をノズル(チャネル)毎に分離した個別電極、他方を複数ノズル(チャネル)、例えば全ノズル(チャネル)、で共通の共通電極とすることで、吐出させるノズル(チャネル)の選択が可能であるが、上部電極23a側を共通電極、固定電極12a側を個別電極としてもよい。
【0018】
次に、圧電型アクチュエータの製造方法を、図3(a)〜(o)を参照しつつ説明する。
なお、図3(a)〜(o)は、圧電型アクチュエータの長手方向の断面図である。
本発明の一態様に係る圧電型アクチュエータは、以下のような製造方法を備える。
先ず、振動室側の振動板過度変形止め構造を形成する製造方法について、図3(a)〜図3(e)を用いて説明する。
図3(a)に示すように、アクチュエータ基板にはシリコン単結晶基板(例えば<100>)を用い、熱酸化膜11(約1100℃、0.5um)を形成する。その上に第1犠牲層膜14b(例えばLPCVDポリシリコン、0.5〜5um)を形成する。第1犠牲層膜14bの材料は、特に限定されないが、本実施例では、犠牲層膜14bを除去する際に周囲の絶縁膜(酸化シリコン)とのエッチング選択比の大きな材料が好適である。できるだけ圧電体層22、電極材料に影響を及ぼさない薬液で除去できる犠牲層膜がよい。圧電素子が振動したときに対面壁に当接することの無いように、またダンパー効果の影響が無いような第1犠牲層膜14bの厚さを形成する。
【0019】
次に図3(b)に示すように、個別の振動領域を確保する振動室空隙に合わせて犠牲層膜を溝エッチング(溝幅約0.5um、ドライエッチ)する。この時溝断面形状はY(ワイ)型となるようエッチングプロファイルをガス種で調整する。または、等方エッチングで上部をエッチングした後に、ドライエッチしても良い。このとき形成する溝上部の傾斜形状が振動板過度変形止め部の形状を決定する。
振動室側絶縁膜21aを成膜(LPCVD、シリコン酸化膜)し溝を埋め込む。振動室側絶縁膜21aの材料は、後の犠牲層を除去する工程で除去に耐えられる材料であれば特に限定されず、例えば、有機膜、酸化膜又は窒化膜を用いることができる。
【0020】
次に図3(c)に示すように、圧電素子の下部領域の振動室側絶縁膜21aをレジストパターニング後にエッチングする。その上に第2犠牲層膜14c(例えばLPCVDポリシリコン、0.5〜5um)を形成する。第2犠牲層膜14cの材料は、第1犠牲層膜14bの材料と同様がよい。
次に図3(d)に示すように、上面からエッチバック法あるいはCMP加工法で表面凹凸をフラットにしながら振動室側絶縁膜21aの表面が現れるまで加工する。
次に図3(e)に示すように、上面に振動室側絶縁膜21bを成膜(LPCVD、シリコン酸化膜)を形成する。
【0021】
次に図3(f)に示すように、スパッタリングで固定電極膜12を形成すると共にパターニングする。この時、パターニングにより配線用電極膜(図示しない)を形成する。この電極膜の材料としては、白金等が好適である。これは、ゾル−ゲル法やMOD法で成膜する後述の圧電体層70(図6参照)は、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、固定電極膜12の材料は、前記高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体層22としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から白金が好適である。
【0022】
次に図3(g)に示すように、圧電体層22及び上部電極層23aを順次積層して形成する。圧電体層22は、ペロブスカイト型結晶構造の酸化物であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用い、例えば、ゾル−ゲル法又はMOD法(有機金属熱塗布分解法)等のスピンコート法により成膜する。本実施例では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層22を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて形成した。圧電体層22の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料がインクジェット式記録ヘッドに使用する場合には好適である。なお、この圧電体層22の成膜方法は、特に限定されず、例えば、スパッタリング法等を用いてもよい。
また、上部電極膜23aは、導電性の高い材料であればよく、アルミニウム、金、ニッケル、白金等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施例では、白金をスパッタリングにより成膜している。
次に、圧電体層22及び上部電極膜23aのみを、例えば、イオンミリング等でエッチングして圧電体能動部22のパターニングを行う。
【0023】
次に図3(h)に示すように、剛性調整膜24(LPCVD、窒化シリコン膜)を成膜する。膜厚については圧電素子の振動特性(圧電定数、変位量)との兼ね合いで決定する。
次に図3(i)に示すように、犠牲層膜14を除去する。ここで、犠牲層膜14の除去は、積層振動板に貫通エッチング孔を設け、この貫通エッチング孔からTMAH等のエッチャントを浸透させることにより行った。
次に、図3(j)に示すように、その後、貫通孔を、犠牲層除去孔封止膜25(LPCVD、酸化シリコン膜)を減圧で成膜し埋める。この時積層振動板は若干振動室方向へ引っ張られるが特性に大きく影響しない。なお、不活性ガスを導入する場合もあるが、その時には成膜時にプロセスガスに混入すると封止時点で減圧により封入される。不活性ガスの材料は、例えば、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)等の不活性ガスを使用できる。
一方同時にアクチュエータ基板を貫通する液供給路の犠牲層より上部を貫通エッチング孔を設けエッチングする。
【0024】
次に圧力発生室側の振動板過度変形止め構造を形成する製造方法について、図3(k)〜図3(n)を用いて説明する。
図3(k)に示すように、第3犠牲層膜15(例えばLPCVDポリシリコン、0.5〜5um)を形成する。第3犠牲層膜15の材料は、第1犠牲層膜14bの材料と同様がよい。
振動板20が駆動電圧で振動したときに、対向する振動板過度変形止め構造面壁に当接することの無いような第3犠牲層15の厚さを形成する。
次に、図3(l)に示すように、第3犠牲層15のパターンエッチングし上面に振動板過度変形止め絶縁膜27を形成する。この時エッチング後の断面プロファイルが振動板20へ駆動電圧より高い電圧を掛けた時の振動板プロファイルと概略同じになるようにエッチングする。振動領域は島状に第3犠牲層15のパターンエッチングするので、特に振動板端部の形状プロファイルに着目してエッチングすればよい。例えばレジストのグラデーションプロファイルを用いてもよい。
【0025】
振動板の断面プロファイルは、例えば図4を参照して設定した。
印加電圧と振動板変位の関係を数値シミュレーションにより求めると、その結果は図4に示すようになる。同図における各グラフは、振動板をその短辺に平行に切った断面で、電圧毎にプロットしている。従って、同図の横軸は振動板の短辺に沿った位置で、縦軸は振動板原点からの変位に相当する。
ここで、結果は静的解であり、モデルは、振動板の長辺長:無限大、振動板の短辺長:60μm、振動板の厚さ:2μm、振動板の材質:金属シリコン、とした。
一例として振動変位量が0.8um近辺から振動板端部に亀裂が生じ、あるいは破断することが実験的に分かっている。もちろん破断変位量は、振動板構成のディメンジョン、膜の物理常数によって変わってくるので、その兼ね合いで決定する。
【0026】
振動板が振動板過度変形止め部に接触すると振動板短辺幅が小さくなり振動板変位が小さくなるため、破断限界変形を超えることがない。過度変形止めがない場合でも振動板短辺幅が20%短くなれば、その他の条件(印加電圧、振動板厚等)が同じであれば、変位量は元の約40%に減少する。
次に、図3(m)に示すように、振動板過度変形止め絶縁膜27を振動板端部に対向するエリアを残すようにパターンエッチングし、第3犠牲層15をウェッチエッチ等で除去する。この時、図のように同時に液供給路57の積層膜部分の犠牲層15を除去しておく。
次に、図3(n)に示すように、一方では、裏面側からパターニングされたレジストをマスクパターンとしてシリコン単結晶基板(流路形成基板)10の異方性ドライエッチングを行いシリコン基板側の液供給路57を形成し、最後に熱酸化膜11をエッチングし、液供給路57が基板を貫通して形成されている。
アクチュエータ基板に<110>シリコン基板を使用した場合は、シリコン酸化膜をマスクとしてKOH等のアルカリ溶液によるシリコンの異方性エッチングを施してもよい。
【0027】
図3(o)に示すように、圧電型アクチュエータの上に流路形成基板及びノズルプレートを接合する。
以上説明した一連の膜形成及びエッチングでは、一枚のウェハ上に多数のチップを同時に形成し、プロセス終了後、図1に示すような一つのチップサイズの圧電アクチュエータ10毎に分割する。また、液室基板30の開口面とは反対側の面にフレーム、FPC及びコンプライアンス基板(図示なし)を順次接着して一体化し、インクジェット式記録ヘッドとする。
このように本実施例では、振動板過度変形止め部を設けているため、製造過程でのサージによる高電界が電極配線にかかった場合等の電気的外乱に対して、振動板の変形が振動板過度変形止め部に当り、振動板に掛かる応力が均一化されるため、変位が抑制され振動板のクラック発生、破壊を防止することができる。また、極性の異なるサージに対しても圧力室側、振動室側への過度変形止め部を適用することで可能となる。
振動板過度変形止め絶縁膜層の開口部の外縁によって圧力発生室の長手方向端部が規定されるため、圧力発生室と圧電素子との相対的な位置精度が向上する。
【0028】
また振動室(空隙部)14aが隔壁で隔てられているため、隣接する圧電素子及び弾性膜50(積層振動板(25、24、23a、22、12、21の積層膜))の変形を阻害しないので、吐出特性の安定及び向上を図ることができる。
さらに、振動室(空隙部)14aを犠牲層工程で形成しているため、振動室(空隙部)14aを流路形成基板10上に接着剤等で張り付ける必要がなく、製造工程を簡略化できると共に、接着剤等の流出による弾性膜50の変形の阻害を防止できる。
このように構成した液滴吐出ヘッドは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、リザーバからノズル孔41に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない外部の駆動回路からの記録信号に従い、固定電極膜12と上部電極膜23aとの間に電圧を印加し、弾性膜50、両端電極膜12及び圧電体層22をたわみ変形させることにより、圧力発生室33内の圧力が高まりノズル孔41からインク滴が吐出する。
<実施例2>
【0029】
本実施例は、図5に示すように、複数の振動室(空隙部)14aを、連通路53を設けて繋ぎ、連通路53の他端部は振動室・連通路内を大気に開放するための大気開放部52に連通されている。この大気開放部52はアクチュエータ基板を形成した後は封止剤によって封止される。複数の圧電素子に亘って形成した以外は実施例1と同様である。
この場合、振動室(空隙部)14aがその自重、圧力によりたわまないように、犠牲層を所望の形状に除去して連通路を形成するものであり、各振動室(空隙部)14aは少なくとも1箇所以上の連通路を有する。また大気開放部52を設ければ密封工程をヘッド形成の後に行うことができ、前記構成では、製造工程の自由度を増すことができる。封止材には水分透湿率の低い樹脂等を用いる。
<実施例3>
【0030】
本実施例では、実施例2のアクチュエータにインク供給を主目的としたフレームが加工、接合されている。
図6に示すように、フレーム側から供給されたインクは基板貫通孔を通り共通液室31を通り、流体抵抗32で圧力制御され圧力発生室33まで配液される。
一方FPC70が配線接合され、圧電素子の両端の電極に電圧波形形成された信号を所望のビットに印加できるようになっている。
圧電素子に電圧印加すると振動板がたわみ圧力発生しノズル孔からインクが吐出する。
また、これら各実施例の液滴吐出ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される(図8および図9参照)。
<実施例4>
【0031】
次に、本実施例の液体カートリッジについて図7を参照して説明する。
このインクカートリッジ一体型ヘッド100は、ノズル孔101等を有する前記各実施例の何れかの液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッド102と、このインクジェットヘッド101に対してインクを供給するインクタンク103とを一体化したものである。
このように本実施例に係る液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンク(液体タンク)を一体化することにより、滴吐出特性のバラツキが少なく、信頼性の高い液滴吐出ヘッドを一体化した液体カートリッジ(インクタンク一体型ヘッド)が低コストで得られる。
<実施例5>
【0032】
次に、本実施例に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載した画像形成装置であるインクジェット式記録装置の機構の一例について図8及び図9を参照して説明する。
図8、図9に示すように、インクジェット式記録装置は、記録装置本体111の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部112等を収納し、装置本体111の下方部には前方側から多数枚の用紙113を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)114を抜き差し自在に装着することができ、また、用紙113を手差しで給紙するための手差しトレイ115を開倒することができ、給紙カセット114或いは手差しトレイ115から給送される用紙113を取り込み、印字機構部112によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ116に排紙する。
【0033】
印字機構部112は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド121と従ガイドロッド122とでキャリッジ123を主走査方向(紙面垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ123にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドからなるヘッド124を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ123にはヘッド124に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ125を交換可能に装着している。なお、本発明に係るインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
インクカートリッジ125は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド124を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0034】
ここで、キャリッジ123は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド121に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド122に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ123を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ127で回転駆動される駆動プーリ128と従動プーリ129との間にタイミングベルト130を張装し、このタイミングベルト130をキャリッジ123に固定しており、主走査モータ127の正逆回転によりキャリッジ123が往復駆動される。
一方、給紙カセット114にセットした用紙113をヘッド124の下方側に搬送するために、給紙カセット114から用紙113を分離給装する給紙ローラ131及びフリクションパッド132と、用紙113を案内するガイド部材133と、給紙された用紙113を反転させて搬送する搬送ローラ134と、この搬送ローラ134の周面に押し付けられる搬送コロ135及び搬送ローラ134からの用紙113の送り出し角度を規定する先端コロ136とを設けている。搬送ローラ134は副走査モータ137によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0035】
そして、キャリッジ123の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ134から送り出された用紙113を記録ヘッド124の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材139を設けている。この印写受け部材139の用紙搬送方向下流側には、用紙113を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ141、拍車142を設け、さらに用紙113を排紙トレイ116に送り出す排紙ローラ143及び拍車144と、排紙経路を形成するガイド部材145,146とを配設している。
記録時には、キャリッジ123を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド124を駆動することにより、停止している用紙113にインクを吐出して1行分を記録し、用紙113を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、用紙113の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙113を排紙する。
【0036】
また、キャリッジ123の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド124の吐出不良を回復するための回復装置147を配置している。回復装置147はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ123は印字待機中にはこの回復装置147側に移動されてキャッピング手段でヘッド124をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド124の吐出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0037】
このように、このインクジェット式記録装置においては本発明に係る液滴吐出ヘッドであるインクジェットヘッドを搭載しているので、インク滴の吐出特性のバラツキが少なく、高い画像品質の画像を記録できる画像形成装置が得られる。
ここまで述べてきたように、本発明の液滴吐出ヘッドを挙げてきたが、本発明による静電アクチュエータは光学走査ミラーや光学バルブなどの光学デバイスとしても利用できるものである。
<実施例6>
【0038】
本実施例では本発明の構成をマイクロポンプに応用したものである。本実施例では動作原理を、図10をもとに説明する。
図10に示すように、圧力発生室と空隙部が電極に挟まれた圧電素子を含む振動板5を挟んで対峙しており、この組み合わせが複数設けられており流路33の中を流体が流れる構造となっている。図では省略しているが振動板5は圧電材料を電極が挟み絶縁膜に挟まれた積層構造になっている。
圧電素子を含む振動板5を図中右側から順次駆動することによって流路33内の流体は矢印方向へ流れが生じ、流体の輸送が可能となる。本実施例では振動板を複数設けた例を示したが、振動板5は一つでも良く、また個別電極4は本発明の分割された個別電極4が高抵抗部材25により接続された構成であるため、振動板が脈動動作を行い、輸送効率を上げる構成になっている。
本実施例では動作原理を簡単に述べたが、実施例1に示した製造方法、構成を本実施例に適用することで大流量の液体を効率よく送液できる駆動力(輸送力)の高いマイクロポンプとすることが出来る。
本発明の構成は液滴吐出ヘッド、マイクロポンプを例としてあげたが、これ以外の液体輸送デバイスにも応用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…アクチュエータ基板
12a…固定電極
14a…振動室
20…積層振動板
21a…振動室側絶縁膜
21b…振動室側絶縁膜
22…圧電体層
23a…上部電極
24…剛性調整膜
25…犠牲層除去孔封止膜
27…振動板過度変形止め絶縁膜
29…大気開放部
30…液室基板
31…共通液室
32…流体抵抗部
33…圧力発生室
40…ノズル板
41…ノズル孔
50…弾性膜(25、24、23a、22、12a、21bの積層膜)
57…液供給路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2001−287360号公報
【特許文献2】特開2007−216669号公報
【特許文献3】特開2002−059555号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口に連通する流路形成基板に形成された圧力発生室と、
前記圧力発生室に対応する領域に、振動板として機能する剛性調整膜、上部電極、該上部電極下に設けられた圧電体層及び該圧電体層の裏面側に設けられた固定電極の積層膜からなる圧電素子と、
前記圧力発生室側と振動室側の少なくとも一方に、前記圧電素子の過度変形を防止する振動板過度変形止め部とを具備し、
駆動時には前記圧電素子は、前記振動板過度変形止め部には接触しないことを特徴とする圧電型アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載の圧電型アクチュエータにおいて、
前記圧力発生室及び振動室は、該圧力発生室及び振動室の夫々に隣り合う前記圧電素子を隔壁として隔てられており、且つ前記振動室側の隔壁と圧力発生室側の隔壁とのエッジの位置関係が一致するか、または振動室側の隔壁エッジが圧力発生室側の隔壁エッジより外側に位置することを特徴とする圧電型アクチュエータ。
【請求項3】
請求項1記載の圧電型アクチュエータにおいて、
前記振動板過度変形止め部は、隔壁エッジに対して傾斜を持たせたことを特徴とする圧電型アクチュエータ。
【請求項4】
ノズル開口に連通する流路形成基板に形成された圧力発生室と、該圧力発生室に対応する領域に振動板として機能する剛性調整膜、上部電極、該上部電極下に設けられた圧電体層及び該圧電体層の裏面側に設けられた固定電極の積層膜からなる圧電素子とを備え、
前記圧力発生室側と振動室側の少なくとも一方に、前記圧電素子の過度変形を防止する振動板過度変形止め部を有し、駆動時には前記圧電素子が、前記振動板過度変形止め部には接触しないようにすると共に、前記振動室側の振動板過度変形止め部を、前記圧電素子がなす隔壁のエッジに対して傾斜を持たせてなる圧電型アクチュエータの製造方法であって、
基板上にベースとなる第1の酸化膜を形成し、その上に第1の犠牲層を形成する工程と、
前記第1の犠牲層を所望の形状にエッチングした溝に第2の酸化膜を埋め込む工程と、
前記振動室の領域の前記第2の酸化膜を除去する工程と、
全面に第2の犠牲層を形成する工程と、
前記第2の酸化膜との面が略同じになるまで第2の犠牲層を削る工程と、
その上に重ねて第3の酸化膜を形成する工程とを有し、
少なくともその後の圧電素子形成以降の工程で、犠牲層エッチングホールを形成し、前記犠牲層を除去して振動過度変形止め部を形成していくことを特徴とする圧電型アクチュエータの製造方法。
【請求項5】
ノズル開口に連通する流路形成基板に形成された圧力発生室と、該圧力発生室に対応する領域に振動板として機能する剛性調整膜、上部電極、該上部電極下に設けられた圧電体層及び該圧電体層の裏面側に設けられた固定電極の積層膜からなる圧電素子とを備え、
前記圧力発生室側と振動室側の少なくとも一方に、前記圧電素子の過度変形を防止する振動板過度変形止め部を有し、駆動時には前記圧電素子が、前記振動板過度変形止め部には接触しないようにすると共に、前記圧力発生室側の振動板過度変形止め部を、前記圧電素子がなす隔壁のエッジに対して傾斜を持たせてなる圧電型アクチュエータの製造方法であって、
前記圧電素子上に犠牲層を形成する工程と、
前記犠牲層を駆動電圧での圧電素子振幅プロファイルより大きく加工する工程と、
前記振動板過度変形止め部となる膜を成膜する工程と、
前記膜を部分的に除去する工程と、
前記犠牲層をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする圧電型アクチュエータの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の圧電型アクチュエータの製造方法において、
前記犠牲層に多結晶シリコンを用いたことを特徴とする圧電型アクチュエータの製造方法。
【請求項7】
液滴吐出ヘッドと該液滴吐出ヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したヘッドカートリッジにおいて、
前記液滴吐出ヘッドは、請求項1〜請求項3の何れかに記載の圧電型アクチュエータを具備することを特徴とするヘッドカートリッジ。
【請求項8】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載した液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドは、請求項1〜請求項3の何れかに記載の圧電型アクチュエータを具備することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
圧電素子の変形によって液体を輸送するマイクロポンプにおいて、
請求項1〜請求項3の何れかに記載の圧電型アクチュエータを具備することを特徴とするマイクロポンプ。

【図1】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図3(e)】
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【図3(f)】
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【図3(g)】
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【図3(h)】
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【図3(i)】
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【図3(j)】
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【図3(k)】
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【図3(l)】
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【図3(m)】
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【図3(n)】
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【図3(o)】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5774(P2011−5774A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152509(P2009−152509)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】