圧電型電気音響変換器
【課題】振動板の縁部近傍と支持体の環状の支持部とを均一に接着することが可能な圧電型電気音響変換器を提供する。
【解決手段】 一方の主面に外部電極14,17を備えた一対の圧電素子10と、これらの間に配設され絶縁基板25の両主面に貼着された圧電振動板20と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部21を備えた支持体22と、を備えた圧電型電気音響変換器30であって、振動板には、環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体24Bが設けられて振動板の接続電極24が互いに接続されており、接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部24Aが他方の主面の縁部近傍に形成されている。従って、振動板の縁部近傍と支持部との接着面に接続電極の引き出し部を設ける必要がなく、振動板の縁部近傍を全周にわたって支持体の環状の支持部に均一に接着することができ、所定の音響特性を有する圧電型電気音響変換器を安定して得ることができる。
【解決手段】 一方の主面に外部電極14,17を備えた一対の圧電素子10と、これらの間に配設され絶縁基板25の両主面に貼着された圧電振動板20と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部21を備えた支持体22と、を備えた圧電型電気音響変換器30であって、振動板には、環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体24Bが設けられて振動板の接続電極24が互いに接続されており、接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部24Aが他方の主面の縁部近傍に形成されている。従って、振動板の縁部近傍と支持部との接着面に接続電極の引き出し部を設ける必要がなく、振動板の縁部近傍を全周にわたって支持体の環状の支持部に均一に接着することができ、所定の音響特性を有する圧電型電気音響変換器を安定して得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電レシーバ、圧電サウンダ、圧電スピーカ、圧電マイクロホンなどの圧電型電気音響変換器に関し、さらに具体的には、バイモルフ型の圧電振動板と支持体との接着の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電型のスピーカやマイクロホン等の圧電型電気音響変換器は、簡易な電気音響変換手段として広く利用されており、特に近年は、携帯電話や携帯情報端末などの分野でスピーカ等として多用されている。
圧電型電気音響変換器1は、図13(特許文献1)に一例が示されるように、圧電素子7が貼着された圧電振動板5の縁部近傍をケース4bの環状の段部4eに重ねて接着支持されるとともに、圧電振動板5から引き出されるリード9がケース4bの環状の段部4eと重なる面から引き出されている。
【0003】
具体的には、略円形の金属板6の一方の主面に圧電素子7の一方の電極が貼着され、前記金属板6から延出されたリード8により引き出されるとともに、圧電素子7の他方の主面の電極と接続するためのリード9ケース4bの内周面に設けられた環状の段部4eと重なる面から引き出されている。
【特許文献1】 特開平9−163497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような背景技術では、圧電素子7が貼着された圧電振動板5の縁部近傍を支持体としてのケース4bの環状の段部4eに重ねて接着支持する圧電型電気音響変換器において、圧電振動板5からのリード9の引き出しのために、圧電振動板5の縁部近傍が全周にわたって前記ケース4bの環状の段部4eと均一に接着することができず、音響特性にばらつきが生じやすいという課題があった。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、振動板の縁部近傍と支持体の環状の支持部とを均一に接着することが可能な圧電型電気音響変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、
(1)少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極を備えた板状の第1及び第2の圧電素子と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極に対応して接続する一組以上の接続電極を備えた板状の振動板における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極を備えた主面が貼着された圧電振動板と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部を備えるとともに該環状の支持部に前記振動板の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記振動板を振動可能に支持する支持体と、を備えた圧電型電気音響変換器において、
前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されていることを特徴とする。(・・・以下、第1の課題解決手段と称する。)
【0007】
また、主要な形態の一つは、
(2)前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられていることを特徴とする。(・・・以下、第2の課題解決手段と称する。)
【0008】
また、他の主要な形態の一つは、
(3)前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されていることを特徴とする。(・・・以下、第3の課題解決手段と称する。)
【0009】
また、他の主要な形態の一つは、
(4)前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられていることを特徴とする。(・・・以下、第4の課題解決手段と称する。)
【0010】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されているので、両主面に圧電素子が貼着されたバイモルフ型の圧電振動板であっても、前記振動板の一方の主面の縁部近傍と前記支持体の環状の支持部との接着面に前記接続電極の引き出し部を設ける必要がないので、振動板の縁部近傍が全周にわたって均一に接着することができる。
【0011】
また、上記第2の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられているので、接続電極とスルーホール導体とが連続して形成され、接続の信頼性が高まる。
【0012】
また、上記第3の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されているので、複数のスルーホール導体のうちの1つに接続不良が発生しても、接続電極間の接続状態を維持することができる。
【0013】
また、上記第4の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられているので、接続電極とスルーホール導体とが連続して形成され、接続の信頼性が高まる。
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、両主面に圧電素子が貼着されたバイモルフ型の圧電振動板であっても、前記振動板の一方の主面の縁部近傍と前記支持体の環状の支持部との接着面に前記電極の引き出し部を設ける必要がないので、振動板の縁部近傍が全周にわたって均一に接着することができる。このため、所定の音響特性をばらつきなく得ることが可能な圧電型電気音響変換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1は第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30の全体を示す外観斜視図であり、図2は前記実施形態の圧電型電気音響変換器30の内部構造を説明するための分解斜視図である。図3は前記圧電型電気音響変換器30に用いる振動板23の内部構造を説明するための分解斜視図であり、図4は前記振動板23のスルーホール導体24bの部分拡大断面図である。
【0016】
本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態は、図1及び図2に示すように、両主面にそれぞれ一対の外部電極14,17が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子10と、絶縁基板25の両主面にそれぞれ前記圧電素子10の外部電極14,17に接続するための接続電極24が設けられた略円板状の振動板23と、該振動板23の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部21を備えた支持体22とを有する圧電型電気音響変換器30であって、前記絶縁基板25には外周方向に延出された突部25Aを備え、前記振動板23の他方の主面には前記一対の接続電極24から前記絶縁基板25の凸部25Aに延出された引き出し部24Aが形成されている。
【0017】
具体的には、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極14,17を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子10と、これらの圧電素子10間に配設され、絶縁基板25の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子10の前記外部電極14,17に対応して接続する一組以上の接続電極24を備えた略円板状の振動板23における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子10の前記外部電極14,17を備えた主面が貼着された圧電振動板20と、この圧電振動板20の縁部近傍に沿う環状の支持部21を備えるとともに該環状の支持部21に前記振動板23の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板20を振動可能に支持する支持体22と、を備えた圧電型電気音響変換器30であって、
前記振動板23には、前記支持体22の環状の支持部21に囲まれた内側の領域にスルーホール導体24Bが設けられて前記振動板23の一方及び他方の主面の接続電極24が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極24にそれぞれ接続された一組の引き出し部24Aが前記振動板23の他方の主面の縁部近傍に形成されているものである。
【0018】
また、上記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる振動板23は、図3及び図4に示されるように、略円形の絶縁基板25の所定の位置にすり鉢状のスルーホール26が設けられ、該絶縁基板25の両主面に設けられた接続電極24がスルーホール26の内部に設けられたスルーホール導体24Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板25の前記支持体22の環状の支持部21と重ならない他方の主面には、圧電素子10の外部電極14,17と接続するための略半円形の一対の接続電極24が設けられており、前記絶縁基板25の外周方向に延出された凸部25Aには前記接続電極24の引き出し部24Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板25の前記支持体22の環状の支持部21と重なる側の主面には、前記引き出し部24Aを有さない接続電極24が一対設けられており、前記絶縁基板25の一方の主面の接続電極24と他方の主面の接続電極24とが前記絶縁基板25に設けられた厚み方向の断面がすり鉢状のスルーホール26の内部に形成されたスルーホール導体24Bにより相互に導電接続されている。
【0019】
上記絶縁基板25としては、絶縁性であって屈曲性に優れた材料、例えばPET(PolyEthylene Terephtalate)などの絶縁フィルムが好ましいが、PETに限定するものではなく、PEN,ポリイミド、アミド、等耐熱性を有する絶縁性樹脂フィルムの中から適宜選択して用いることができる。また、上記振動板の厚みは25μm〜100μmが好ましい。
【0020】
上記振動板23の接続電極24及びスルーホール導体24Bとしては、Ag、Ni,Cu,Al等の導電性を有する金属粉末と、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の絶縁性樹脂と、を主成分とする導電性樹脂が好ましく、特に、Ag粉末を含有するポリマー性導電ペーストが好ましい。前記導電性を有する金属粉末と前記絶縁性樹脂と溶剤とを混合した導電性樹脂ペーストを塗布し、乾燥した後、必要により紫外線照射や加熱し、硬化させることにより形成することができる。また、上記接続電極の厚みは、4〜20μmが好ましい。
【0021】
上記振動板23の絶縁基板25に設けられるスルーホール26としては、前記振動板23の前記支持体22の環状の支持部21に囲まれた内側に設けられていればよい。
また、上記絶縁基板25へのスルーホール26の形成は、打ち抜きプレスを用いた前記絶縁基板25の打ち抜きと同時に打ち抜き形成、またはこの工程に前後してフライス盤等を用いた切削加工により形成することができる。また、前記に限らず、前記絶縁基板25の表面にレーザ光を照射してスルーホール26を形成することもできる。
スルーホール26の形状は、特に制限はなく、円形、矩形、長孔状等、適宜選択して用いることができ、また、スルーホール26の絶縁基板25の厚み方向の断面形状は、円筒状に限らず、すり鉢状、鼓状等、各種断面を有するものであってもよく、さらに、スルーホール26の開口の縁に面取りやR付けを施したものであってもよい。
【0022】
上記スルーホール導体24Bの寸法は、前記スルーホール導体24Bの振動板23の厚み方向の最小断面積部分における開口径が前記振動板23の厚み寸法の0.5〜100倍であることが好ましい。これによれば、接続不良や共振周波数における音圧の低下を防止することができる。0.5倍より小さいと、スルーホール導体に電荷が集中して発熱が生じ、接続不良が生じる場合がある。また、100倍より大きい場合には、振動板の剛性が低下し、共振周波数の音圧が低下しやすい。
【0023】
上記振動板23と圧電素子10との接着に用いる接着剤としては、非導電性の接着剤が好ましく、UV硬化型嫌気性接着剤が好ましい。
【0024】
また、上記振動板23の縁部近傍と上記支持体22の環状の支持部21との接着に用いる接着剤としては、上記振動板23と圧電素子10との接着に用いる接着剤と同様であってもよいが、これに限定するものではなく各種の接着剤を用いることができ、また、接着剤の塗布に限らず両面接着テープ等を用いて接着してもよい。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30の製造プロセスの一例について、図2及び図3を参照しながら説明する。
まず、厚み50μmのPETフィルムを直径20mmの円の一部に外周に向けて延出された凸部25Aを有する形状に打ち抜きプレスで打ち抜き加工を施す工程と前後して、レーザ光照射により振動板の厚み方向の最小断面積部分における開口径が80μmのスルーホール26が形成された絶縁基板25を得る。
次に、図3に示されるように、得られた絶縁基板25の主面上に、Ag粉末を含有するポリマー性導電性ペーストを印刷膜厚の少なくとも一部が前記スルーホール26内に充填されるようにスクリーン印刷により塗布し、100℃で10分間乾燥した後、得られた絶縁基板25の他方の主面に前記と同様に導電性樹脂ペーストを塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後、150℃で10分間加熱硬化して、前記絶縁基板25の表裏にそれぞれ一対の接続電極24を有する振動板23を得る。
次に、図2に示されるように、振動板23の縁部近傍とリング状の支持体22の環状の支持部21とを図示省略した両面接着テープにより接着したのち、前記振動板23の両主面にそれぞれ圧電素子10を接着して、本実施形態の圧電型電気音響変換器30を得る。
【0026】
次に本実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる圧電素子10の一例について、図5〜図7を参照して説明する。
図5は前記実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる圧電素子10の一例の全体を示す外観斜視図であり、図6は上記図5に示す圧電素子10の断面図である。そして、図6(A)は上記図5におけるA−A線断面図であり、図6(B)は上記図5におけるB−B線断面図である。また、図7は上記圧電素子10の内部構造を説明するための分解斜視図である。
図5〜図7に示すように、少なくとも一方の主面に少なくとも一組の外部電極14,17を備えた略円板状の圧電素子10であって、略円板状の積層体12の積層方向に3つの圧電体層12A,12B,12Cを備えており、そのうちの少なくとも一つの圧電体層12Aの第1の主面上には第1の電極14A及び第2の電極17Aが間隙11を挟んで設けられており、前記圧電体層12Aの第2の主面上には前記第1の電極14Aと対向する第3の電極17B及び前記第2の電極17Aと対向する第4の電極14Bが同様に間隙を挟んで設けられている。そして、前記第1の電極14Aと前記第4の電極14Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体15A、該接続導体15Aと前記第1の電極14Aとを接続するスルーホール導体16A、及び前記接続導体15Aと前記第4の電極14Bとを接続するスルーホール導体16Bを経由して接続されるとともに、前記第2の電極17Aと前記第3の電極17Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体18A、該接続導体18Aと前記第2の電極17Aとを接続するスルーホール導体19A、及び前記接続導体18Aと前記第3の電極17Bとを接続するスルーホール導体19Bを経由して接続されている。
このため、前記圧電体層12Aの一方の主面の第1の電極14Aと第2の電極17Aとにそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加されると、スルーホール導体16A、前記接続導体15A,及びスルーホール導体16Bを経由して、前記圧電体層12Aを挟んで前記第2の電極17Aに対向する第4の電極14Bにも前記第1の電極14Aと同じ信号電圧が印加され、同様に、スルーホール導体19A、前記接続導体18A,及びスルーホール導体19Bを経由して、前記圧電体層12Aを挟んで前記第1の電極14Aに対向する第3の電極17Bにも前記第2の電極17Aと同じ信号電圧が印加される。これにより、各電極間に挟まれる圧電体層12Aが厚み方向/面方向に変位する。
【0027】
圧電素子10は、上記のように少なくとも一つの圧電体層12Aを備えた積層体12を有し、説明は省略するが残りの2つの圧電体層12B,12Cについても上記の圧電体層12Aと同様に電極、接続導体、及びスルーホールが形成され、接続されている。
このため、圧電素子10は、積層体12の表面の前記電極14A,17Aにそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加されると、接続導体15A,15B、15C、及びスルーホール導体16A,16B,16C、16Dを経由して,電極14B,14C,14Dに前記電極14Aと同じ電圧が印加されるとともに、接続導体18A,18B,18C、及びスルーホール導体19A,19B,19C,19Dを経由して、電極17B,17C,17Dに前記電極17Aと同じ電圧が印加される。
この結果、圧電素子10は、積層体12の各圧電体層12A,12B,12Cが厚み方向/面方向に変位する。
【0028】
上記圧電素子10の圧電体層12A,12B,12Cとしては、セラミックス圧電体、有機圧電体、もしくはこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
上記圧電素子10の電極14A〜14D,17A〜17D、接続導体15A〜15C,18A〜18C、スルーホール導体16A〜16D,19A〜19Dとしては、Ag,Ag−Pd,Pd等の電極材料、もしくは前記電極材料に少量の前記圧電体材料を共生地として混合したものが好適である。上記圧電素子の積層体12としては、少なくとも一つの圧電体層を備えるものであって、複数の圧電体層を備えるもののほうがより大きな変位を得られるために好適である。また、上記積層体は、上記少なくとも一つの圧電体層と他の絶縁体層とを積層したものであっても良いことは勿論である。
【0029】
次に、圧電体層としてセラミックス圧電体を用いた積層型の圧電素子10について、シート積層法を用いた製造プロセスの一例について概要を説明する。
まず、PZT系セラミック圧電体材料の粉末を準備し、バインダー、溶剤とともに混合してセラミックススラリーを作成し、得られたスラリーを用いて、PET(PolyEthylene Terephtalate)等からなるキャリアフィルム上にドクターブレード法、グラビア印刷法等公知の手段により塗工し、乾燥して厚さ10〜100μmの長尺の圧電体材料を主成分とするセラミックグリーンシートを形成した後、所定の寸法にカットし、複数枚のセラミックグリーンシートを作成する。次に得られたセラミックグリーンシートの所定の位置に打ち抜きプレス、レーザ光照射等によりスルーホールを穿孔する。次に、Ag,Ag−Pd,Pd等の電極材料粉末を準備し、バインダーと溶剤とともに混合して電極材料ペーストを作成し、得られた電極材料ペーストを用いて、上記セラミックグリーンシート上に所定のパターンで電極、接続導体を印刷するとともに、前記スルーホールにスルーホール導体を充填する。上記で得られたセラミックグリーンシートを前記電極及び前記接続導体と前記スルーホール導体とが接するように所定の順序で積層・圧着してセラミック積層体を作成し、400〜800℃で脱バインダー処理した後、850℃〜1100℃で1〜3時間焼成して積層体からなる圧電素子を得る。以上がシート積層法を用いた製造プロセスの概要であるが、本発明の圧電素子を得るための製造プロセスは上記のシート積層法に限定するものではなく、公知のスラリービルド法のほか、有機圧電体材料を用いてプリント配線基板と同様のプロセスを用いて形成することもできる。
【0030】
次に、上記圧電素子10について、シート積層法を例にして製造プロセスの一例を説明する。
まず、公知のPZT系セラミック圧電体材料の粉末を準備し、バインダー、溶剤とともに混合してセラミックスラリーを作成し、得られたスラリーを用いて、PETフィルム上にドクターブレード法により厚さ30μmの長尺のセラミックグリーンシートを作成する。得られたセラミックグリーンシートを所定の寸法に切断して複数枚のセラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2を作成する。尚、説明の都合上、圧電素子1個分について図示する(以下同様)。
次に、上記で得られたセラミックグリーンシート12A1の所定の位置にスルーホール16A1,19A1を、セラミックグリーンシート12A2の所定の位置にスルーホール16B1,19B1を、セラミックグリーンシート12B1の所定の位置にスルーホール16B2,19B2を、セラミックグリーンシート12B2の所定の位置にスルーホール16C1,19C1を、セラミックグリーンシート12C1の所定の位置にスルーホール16C2,19C2を、セラミックグリーンシート12C2の所定の位置にスルーホール16D1,19D1を、レーザ光照射によりそれぞれ穿孔する。
次に、Pd電極材料粉末とバインダーと溶剤とを混合した電極材料ペーストを準備し、スクリーン印刷法によりそれぞれのグリーンシートの所定の位置に電極、接続導体の印刷を行うとともに、スルーホール導体の充填を行う。まず、前記セラミックグリーンシート12A2の一方の主面に一対の接続導体15A,18Aを印刷するとともに前記スルーホール16B1,19B1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12B2の一方の主面に一対の接続導体15B,18Bを印刷するとともに前記スルーホール16C1,19C1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12C2の一方の主面に一対の接続導体15C,18Cを印刷するとともに前記スルーホール16D1,19D1にスルーホール導体を充填する。また、前記セラミックグリーンシート12A1の一方の主面に一対の電極14A,17Aを印刷するとともに前記スルーホール16A1,19A1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12B1の一方の主面に一対の電極14B,17Bを印刷するとともに前記スルーホール16B2,19B2にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12C1の一方の主面に一対の電極14C,17Cを印刷するとともに前記スルーホール16C2,19C2にスルーホール導体を充填する。また、前記セラミックグリーンシート12C2の他方の主面に一対の電極14D、17Dを印刷する。
前記電極と前記スルーホール導体、及び前記接続導体と前記スルーホール導体がそれぞれ接するように上記で得られたセラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2を順次積層・圧着し、所定の温度で脱バインダー処理した後、所定の温度で3時間焼成して積層体12を得る。次に、上記積層体12の表面の前記電極14A,17Aにそれぞれ異なる極性の分極電圧が印加されると、接続導体15A,15B、15C、及びスルーホール導体16A,16B,16C、16Dを経由して,電極14B,14C,14Dに前記電極14Aと同じ電圧が印加されるとともに、接続導体18A,18B,18C、及びスルーホール導体19A,19B,19C,19Dを経由して、電極17B,17C,17Dに前記電極17Aと同じ電圧が印加される。
この結果、圧電素子10は、積層体12の各圧電体層12A,12B,12Cが厚み方向に分極される。
【0031】
上記圧電素子10は、少なくとも一つの圧電体層12Aを備えた積層体12を有するとともに、前記圧電体層12Aの第1の主面上には第1の電極14A及び第2の電極17Aが間隙11を挟んで設けられており、前記圧電体層12Aの第2の主面上には前記第1の電極14Aと対向する第3の電極17B及び前記第2の電極17Aと対向する第4の電極14Bが同様に間隙を挟んで設けられている。そして、前記第1の電極14Aと前記第4の電極14Bとが前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体15Aを経由して接続されるとともに、前記第2の電極17Aと前記第3の電極17Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体18Aを経由して接続されている。
尚、上記に示した圧電素子10、振動板23及び圧電振動板20はそれぞれ略円板状に形成されているが、一例であって本発明はこれに限定するものではなく、少なくとも板状であればよい。また、支持部21及び支持体22はそれぞれ略円環状に形成されているが、一例であって本発明はこれに限定するものではなく、圧電振動板の外周に沿う環状であればよい。
【0032】
次に、本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。図8は第2の実施形態の圧電型電気音響変換器の全体を説明するための外観斜視図であり、図9は前記実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。図10は、本実施形態の圧電型電気音響変換器に用いられる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【0033】
本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態は、両主面にそれぞれ略半円形の一対の外部電極44,47が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子40と、可撓性の絶縁基板55の両主面にそれぞれ前記圧電素子40の外部電極に接続するための接続電極54Cが設けられた略円板状の振動板53と、該振動板53の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部51を備えた支持体52とを有する圧電型電気音響変換器60であって、前記絶縁基板55には外周方向に延出された一対の突部55Aを備え、前記振動板53の他方の主面には前記一対の接続電極54Cから前記絶縁基板55の凸部55Aに延出された引き出し部54Aが形成されている。
【0034】
具体的には、図8及び図9に示されるように、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極44,47を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子40と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板55の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子40の前記外部電極44,47に対応して接続する一組以上の接続電極54Cを備えた略円板状の振動板53における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子40の前記外部電極44,47を備えた主面が貼着された圧電振動板50と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部51を備えるとともに該環状の支持部51に前記振動板53の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板50を振動可能に支持する支持体52と、を備えた圧電型電気音響変換器60であって、
前記振動板53には、前記支持体52の環状の支持部51に囲まれた内側の領域にスルーホール導体54Bが設けられて前記振動板53の一方及び他方の主面の接続電極54Cが互いに導電接続されているとともに、前記接続電極54Cにそれぞれ接続された一組の引き出し部54Aが前記振動板53の他方の主面の縁部近傍に形成されている。
【0035】
上記第2の実施形態の圧電型電気音響変換器60に用いられる振動板53は、図10に示されるように、略円形の絶縁基板55の所定の位置にすり鉢状の複数のスルーホール56が設けられ、該絶縁基板55の両主面に設けられた接続電極54Cがスルーホール56の内部に設けられたスルーホール導体54Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板55の前記支持体52の環状の支持部51と重ならない側の主面には、圧電素子40の外部電極44,47と接続するための舌状の一対の接続電極54Cが設けられており、前記絶縁基板55の外周方向に延出された凸部55Aには前記接続電極54Cの引き出し部54Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板55の前記支持体52の環状の支持部51と重なる側の主面には、前記引き出し部54Aを有さない舌状の接続電極54Cが一対設けられており、前記絶縁基板55の一方の主面の接続電極54Cと他方の主面の接続電極54Cとが前記絶縁基板55に設けられた厚み方向の断面がすり鉢状の一対のスルーホール56の内部に形成されたスルーホール導体54Bにより相互に導電接続されている。
【0036】
また、本実施形態においては、前記振動板53の両主面の接続電極54Cが複数のスルーホール導体56で互いに導電接続されている。
【0037】
次に、本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は第3の実施形態の圧電型電気音響変換器90の内部構造を説明するための分解斜視図であり、図12は本実施形態の圧電型電気音響変換器90に用いる振動板83の内部構造を説明するための分解斜視図である。尚、本実施形態の圧電型電気音響変換器90の外観は、前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30と同様であるため、図示省略する。
【0038】
本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態は、両主面にそれぞれ一対の外部電極74,77が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子70と、絶縁基板85の両主面にそれぞれ前記圧電素子70の外部電極74,77に接続するための接続電極84が設けられた略円板状の振動板83と、該振動板83の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部81を備えた支持体82とを有する圧電型電気音響変換器90であって、前記絶縁基板85には外周方向に延出された突部85Aを備え、前記振動板83の他方の主面には前記一対の接続電極84から前記絶縁基板85の凸部85Aに延出された引き出し部84Aが形成されている。
【0039】
具体的には、図11に示されるように、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極74,77を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子70と、これらの圧電素子70間に配設され、絶縁基板85の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子70の前記外部電極74,77に対応して接続する一組以上の接続電極84を備えた略円板状の振動板83における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子70の前記外部電極74,77を備えた主面が貼着された圧電振動板80と、この圧電震動板80の縁部近傍に沿う環状の支持部81を備えるとともに該環状の支持部81に前記振動板83の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板80を振動可能に支持する支持体82と、を備えた圧電型電気音響変換器90であって、
前記振動板83には、前記支持体82の環状の支持部81に囲まれた内側の領域にスルーホール導体84Bが設けられて前記振動板83の一方及び他方の主面の接続電極84が互いに導電接続されているとともに、
前記接続電極84にそれぞれ接続された一組の引き出し部84Aが前記振動板83の他方の主面の縁部近傍に形成されているものである。
【0040】
上記第3の実施形態の圧電型電気音響変換器90に用いられる振動板83は、図12に示されるように、略円形の絶縁基板85の所定の位置に長孔状のスルーホール86が設けられ、該絶縁基板85の両主面に設けられた接続電極84がスルーホール86の内部に設けられたスルーホール導体84Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板85の前記支持体82の環状の支持部82と重ならない側の主面には、圧電素子70の外部電極74,77と接続するための略半円形の一対の接続電極84が設けられており、前記絶縁基板85の外周方向に延出された凸部85Aには前記接続電極84の引き出し部84Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板85の前記支持体82の環状の支持部81と重なる側の主面には、前記引き出し部84Aを有さない接続電極84が一対設けられており、前記絶縁基板85の一方の主面の接続電極84と他方の主面の接続電極84とが前記絶縁基板85に設けられた長孔状のスルーホール86の内部に形成されたスルーホール導体84Bにより相互に導電接続されている。
【0041】
尚、上記第1及び第3の実施形態においては板状の振動板の外形寸法は支持体の外形寸法よりも小さく形成されていたが、これに限定するものではなく、例えば、上記第2の実施形態に示されるように板状の振動板の外形寸法と支持体の外形寸法とを同じにしてもよく、また振動板の外形寸法が支持体の外形寸法よりも大きいものであってもよい。
【0042】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、圧電型電気音響変換器の一例として圧電型スピーカに好適な振動板の実施例を示したが、本発明は、これに限定するものではなく、圧電レシーバ、圧電サウンダ、圧電マイクロホンなどの各種の圧電型電気音響変換器に適用することができる。また、これらの圧電型電気音響変換器は、公知の各種の電子機器に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、薄型化が要求される電子機器用の圧電型電気音響変換器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態の全体を示す外観斜視図である。
【図2】前記第1の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図3】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板のスルーホール導体の拡大断面図である。
【図5】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる圧電素子の一例の全体を示す外観斜視図である。
【図6】前記圧電素子の内部構造を説明するための断面図である。
【図7】前記圧電素子の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図8】本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態の全体を示す外観斜視図である。
【図9】前記第2の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図10】前記第2の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図11】本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図12】前記第3の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図13】背景技術の圧電型電気音響変換器を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10:圧電素子
14,14A,14D:外部電極
17,17A,17D:外部電極
20:圧電振動板
21:支持部
22:支持体
23:振動板
24:接続電極
24A:引き出し部
24B:スルーホール導体
25:絶縁基板
25A:凸部
26:スルーホール
30:圧電型電気音響変換器
40:圧電素子
44,44A,44D:外部電極
47,47A,47D:外部電極
50:圧電振動板
51:支持部
52:支持体
53:振動板
54:振動板の電極
54A:引き出し部
54B:スルーホール導体
54C:接続電極
55:絶縁基板
55A:凸部
56:スルーホール
60:圧電型電気音響変換器
70:圧電素子
74,74A,74D:外部電極
77,77A,77D:外部電極
80:圧電振動板
81:支持部
82:支持体
83:振動板
84:接続電極
84A:引き出し部
84B:スルーホール導体
85:絶縁基板
85A:凸部
86:スルーホール
90:圧電型電気音響変換器
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電レシーバ、圧電サウンダ、圧電スピーカ、圧電マイクロホンなどの圧電型電気音響変換器に関し、さらに具体的には、バイモルフ型の圧電振動板と支持体との接着の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧電型のスピーカやマイクロホン等の圧電型電気音響変換器は、簡易な電気音響変換手段として広く利用されており、特に近年は、携帯電話や携帯情報端末などの分野でスピーカ等として多用されている。
圧電型電気音響変換器1は、図13(特許文献1)に一例が示されるように、圧電素子7が貼着された圧電振動板5の縁部近傍をケース4bの環状の段部4eに重ねて接着支持されるとともに、圧電振動板5から引き出されるリード9がケース4bの環状の段部4eと重なる面から引き出されている。
【0003】
具体的には、略円形の金属板6の一方の主面に圧電素子7の一方の電極が貼着され、前記金属板6から延出されたリード8により引き出されるとともに、圧電素子7の他方の主面の電極と接続するためのリード9ケース4bの内周面に設けられた環状の段部4eと重なる面から引き出されている。
【特許文献1】 特開平9−163497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような背景技術では、圧電素子7が貼着された圧電振動板5の縁部近傍を支持体としてのケース4bの環状の段部4eに重ねて接着支持する圧電型電気音響変換器において、圧電振動板5からのリード9の引き出しのために、圧電振動板5の縁部近傍が全周にわたって前記ケース4bの環状の段部4eと均一に接着することができず、音響特性にばらつきが生じやすいという課題があった。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、振動板の縁部近傍と支持体の環状の支持部とを均一に接着することが可能な圧電型電気音響変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、
(1)少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極を備えた板状の第1及び第2の圧電素子と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極に対応して接続する一組以上の接続電極を備えた板状の振動板における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極を備えた主面が貼着された圧電振動板と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部を備えるとともに該環状の支持部に前記振動板の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記振動板を振動可能に支持する支持体と、を備えた圧電型電気音響変換器において、
前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されていることを特徴とする。(・・・以下、第1の課題解決手段と称する。)
【0007】
また、主要な形態の一つは、
(2)前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられていることを特徴とする。(・・・以下、第2の課題解決手段と称する。)
【0008】
また、他の主要な形態の一つは、
(3)前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されていることを特徴とする。(・・・以下、第3の課題解決手段と称する。)
【0009】
また、他の主要な形態の一つは、
(4)前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられていることを特徴とする。(・・・以下、第4の課題解決手段と称する。)
【0010】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されているので、両主面に圧電素子が貼着されたバイモルフ型の圧電振動板であっても、前記振動板の一方の主面の縁部近傍と前記支持体の環状の支持部との接着面に前記接続電極の引き出し部を設ける必要がないので、振動板の縁部近傍が全周にわたって均一に接着することができる。
【0011】
また、上記第2の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられているので、接続電極とスルーホール導体とが連続して形成され、接続の信頼性が高まる。
【0012】
また、上記第3の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されているので、複数のスルーホール導体のうちの1つに接続不良が発生しても、接続電極間の接続状態を維持することができる。
【0013】
また、上記第4の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられているので、接続電極とスルーホール導体とが連続して形成され、接続の信頼性が高まる。
本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、両主面に圧電素子が貼着されたバイモルフ型の圧電振動板であっても、前記振動板の一方の主面の縁部近傍と前記支持体の環状の支持部との接着面に前記電極の引き出し部を設ける必要がないので、振動板の縁部近傍が全周にわたって均一に接着することができる。このため、所定の音響特性をばらつきなく得ることが可能な圧電型電気音響変換器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1は第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30の全体を示す外観斜視図であり、図2は前記実施形態の圧電型電気音響変換器30の内部構造を説明するための分解斜視図である。図3は前記圧電型電気音響変換器30に用いる振動板23の内部構造を説明するための分解斜視図であり、図4は前記振動板23のスルーホール導体24bの部分拡大断面図である。
【0016】
本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態は、図1及び図2に示すように、両主面にそれぞれ一対の外部電極14,17が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子10と、絶縁基板25の両主面にそれぞれ前記圧電素子10の外部電極14,17に接続するための接続電極24が設けられた略円板状の振動板23と、該振動板23の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部21を備えた支持体22とを有する圧電型電気音響変換器30であって、前記絶縁基板25には外周方向に延出された突部25Aを備え、前記振動板23の他方の主面には前記一対の接続電極24から前記絶縁基板25の凸部25Aに延出された引き出し部24Aが形成されている。
【0017】
具体的には、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極14,17を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子10と、これらの圧電素子10間に配設され、絶縁基板25の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子10の前記外部電極14,17に対応して接続する一組以上の接続電極24を備えた略円板状の振動板23における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子10の前記外部電極14,17を備えた主面が貼着された圧電振動板20と、この圧電振動板20の縁部近傍に沿う環状の支持部21を備えるとともに該環状の支持部21に前記振動板23の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板20を振動可能に支持する支持体22と、を備えた圧電型電気音響変換器30であって、
前記振動板23には、前記支持体22の環状の支持部21に囲まれた内側の領域にスルーホール導体24Bが設けられて前記振動板23の一方及び他方の主面の接続電極24が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極24にそれぞれ接続された一組の引き出し部24Aが前記振動板23の他方の主面の縁部近傍に形成されているものである。
【0018】
また、上記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる振動板23は、図3及び図4に示されるように、略円形の絶縁基板25の所定の位置にすり鉢状のスルーホール26が設けられ、該絶縁基板25の両主面に設けられた接続電極24がスルーホール26の内部に設けられたスルーホール導体24Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板25の前記支持体22の環状の支持部21と重ならない他方の主面には、圧電素子10の外部電極14,17と接続するための略半円形の一対の接続電極24が設けられており、前記絶縁基板25の外周方向に延出された凸部25Aには前記接続電極24の引き出し部24Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板25の前記支持体22の環状の支持部21と重なる側の主面には、前記引き出し部24Aを有さない接続電極24が一対設けられており、前記絶縁基板25の一方の主面の接続電極24と他方の主面の接続電極24とが前記絶縁基板25に設けられた厚み方向の断面がすり鉢状のスルーホール26の内部に形成されたスルーホール導体24Bにより相互に導電接続されている。
【0019】
上記絶縁基板25としては、絶縁性であって屈曲性に優れた材料、例えばPET(PolyEthylene Terephtalate)などの絶縁フィルムが好ましいが、PETに限定するものではなく、PEN,ポリイミド、アミド、等耐熱性を有する絶縁性樹脂フィルムの中から適宜選択して用いることができる。また、上記振動板の厚みは25μm〜100μmが好ましい。
【0020】
上記振動板23の接続電極24及びスルーホール導体24Bとしては、Ag、Ni,Cu,Al等の導電性を有する金属粉末と、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の絶縁性樹脂と、を主成分とする導電性樹脂が好ましく、特に、Ag粉末を含有するポリマー性導電ペーストが好ましい。前記導電性を有する金属粉末と前記絶縁性樹脂と溶剤とを混合した導電性樹脂ペーストを塗布し、乾燥した後、必要により紫外線照射や加熱し、硬化させることにより形成することができる。また、上記接続電極の厚みは、4〜20μmが好ましい。
【0021】
上記振動板23の絶縁基板25に設けられるスルーホール26としては、前記振動板23の前記支持体22の環状の支持部21に囲まれた内側に設けられていればよい。
また、上記絶縁基板25へのスルーホール26の形成は、打ち抜きプレスを用いた前記絶縁基板25の打ち抜きと同時に打ち抜き形成、またはこの工程に前後してフライス盤等を用いた切削加工により形成することができる。また、前記に限らず、前記絶縁基板25の表面にレーザ光を照射してスルーホール26を形成することもできる。
スルーホール26の形状は、特に制限はなく、円形、矩形、長孔状等、適宜選択して用いることができ、また、スルーホール26の絶縁基板25の厚み方向の断面形状は、円筒状に限らず、すり鉢状、鼓状等、各種断面を有するものであってもよく、さらに、スルーホール26の開口の縁に面取りやR付けを施したものであってもよい。
【0022】
上記スルーホール導体24Bの寸法は、前記スルーホール導体24Bの振動板23の厚み方向の最小断面積部分における開口径が前記振動板23の厚み寸法の0.5〜100倍であることが好ましい。これによれば、接続不良や共振周波数における音圧の低下を防止することができる。0.5倍より小さいと、スルーホール導体に電荷が集中して発熱が生じ、接続不良が生じる場合がある。また、100倍より大きい場合には、振動板の剛性が低下し、共振周波数の音圧が低下しやすい。
【0023】
上記振動板23と圧電素子10との接着に用いる接着剤としては、非導電性の接着剤が好ましく、UV硬化型嫌気性接着剤が好ましい。
【0024】
また、上記振動板23の縁部近傍と上記支持体22の環状の支持部21との接着に用いる接着剤としては、上記振動板23と圧電素子10との接着に用いる接着剤と同様であってもよいが、これに限定するものではなく各種の接着剤を用いることができ、また、接着剤の塗布に限らず両面接着テープ等を用いて接着してもよい。
【0025】
次に、本発明の第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30の製造プロセスの一例について、図2及び図3を参照しながら説明する。
まず、厚み50μmのPETフィルムを直径20mmの円の一部に外周に向けて延出された凸部25Aを有する形状に打ち抜きプレスで打ち抜き加工を施す工程と前後して、レーザ光照射により振動板の厚み方向の最小断面積部分における開口径が80μmのスルーホール26が形成された絶縁基板25を得る。
次に、図3に示されるように、得られた絶縁基板25の主面上に、Ag粉末を含有するポリマー性導電性ペーストを印刷膜厚の少なくとも一部が前記スルーホール26内に充填されるようにスクリーン印刷により塗布し、100℃で10分間乾燥した後、得られた絶縁基板25の他方の主面に前記と同様に導電性樹脂ペーストを塗布し、100℃で10分間乾燥し、その後、150℃で10分間加熱硬化して、前記絶縁基板25の表裏にそれぞれ一対の接続電極24を有する振動板23を得る。
次に、図2に示されるように、振動板23の縁部近傍とリング状の支持体22の環状の支持部21とを図示省略した両面接着テープにより接着したのち、前記振動板23の両主面にそれぞれ圧電素子10を接着して、本実施形態の圧電型電気音響変換器30を得る。
【0026】
次に本実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる圧電素子10の一例について、図5〜図7を参照して説明する。
図5は前記実施形態の圧電型電気音響変換器30に用いられる圧電素子10の一例の全体を示す外観斜視図であり、図6は上記図5に示す圧電素子10の断面図である。そして、図6(A)は上記図5におけるA−A線断面図であり、図6(B)は上記図5におけるB−B線断面図である。また、図7は上記圧電素子10の内部構造を説明するための分解斜視図である。
図5〜図7に示すように、少なくとも一方の主面に少なくとも一組の外部電極14,17を備えた略円板状の圧電素子10であって、略円板状の積層体12の積層方向に3つの圧電体層12A,12B,12Cを備えており、そのうちの少なくとも一つの圧電体層12Aの第1の主面上には第1の電極14A及び第2の電極17Aが間隙11を挟んで設けられており、前記圧電体層12Aの第2の主面上には前記第1の電極14Aと対向する第3の電極17B及び前記第2の電極17Aと対向する第4の電極14Bが同様に間隙を挟んで設けられている。そして、前記第1の電極14Aと前記第4の電極14Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体15A、該接続導体15Aと前記第1の電極14Aとを接続するスルーホール導体16A、及び前記接続導体15Aと前記第4の電極14Bとを接続するスルーホール導体16Bを経由して接続されるとともに、前記第2の電極17Aと前記第3の電極17Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体18A、該接続導体18Aと前記第2の電極17Aとを接続するスルーホール導体19A、及び前記接続導体18Aと前記第3の電極17Bとを接続するスルーホール導体19Bを経由して接続されている。
このため、前記圧電体層12Aの一方の主面の第1の電極14Aと第2の電極17Aとにそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加されると、スルーホール導体16A、前記接続導体15A,及びスルーホール導体16Bを経由して、前記圧電体層12Aを挟んで前記第2の電極17Aに対向する第4の電極14Bにも前記第1の電極14Aと同じ信号電圧が印加され、同様に、スルーホール導体19A、前記接続導体18A,及びスルーホール導体19Bを経由して、前記圧電体層12Aを挟んで前記第1の電極14Aに対向する第3の電極17Bにも前記第2の電極17Aと同じ信号電圧が印加される。これにより、各電極間に挟まれる圧電体層12Aが厚み方向/面方向に変位する。
【0027】
圧電素子10は、上記のように少なくとも一つの圧電体層12Aを備えた積層体12を有し、説明は省略するが残りの2つの圧電体層12B,12Cについても上記の圧電体層12Aと同様に電極、接続導体、及びスルーホールが形成され、接続されている。
このため、圧電素子10は、積層体12の表面の前記電極14A,17Aにそれぞれ異なる極性の信号電圧が印加されると、接続導体15A,15B、15C、及びスルーホール導体16A,16B,16C、16Dを経由して,電極14B,14C,14Dに前記電極14Aと同じ電圧が印加されるとともに、接続導体18A,18B,18C、及びスルーホール導体19A,19B,19C,19Dを経由して、電極17B,17C,17Dに前記電極17Aと同じ電圧が印加される。
この結果、圧電素子10は、積層体12の各圧電体層12A,12B,12Cが厚み方向/面方向に変位する。
【0028】
上記圧電素子10の圧電体層12A,12B,12Cとしては、セラミックス圧電体、有機圧電体、もしくはこれらの混合物を主成分とするものが好適である。
上記圧電素子10の電極14A〜14D,17A〜17D、接続導体15A〜15C,18A〜18C、スルーホール導体16A〜16D,19A〜19Dとしては、Ag,Ag−Pd,Pd等の電極材料、もしくは前記電極材料に少量の前記圧電体材料を共生地として混合したものが好適である。上記圧電素子の積層体12としては、少なくとも一つの圧電体層を備えるものであって、複数の圧電体層を備えるもののほうがより大きな変位を得られるために好適である。また、上記積層体は、上記少なくとも一つの圧電体層と他の絶縁体層とを積層したものであっても良いことは勿論である。
【0029】
次に、圧電体層としてセラミックス圧電体を用いた積層型の圧電素子10について、シート積層法を用いた製造プロセスの一例について概要を説明する。
まず、PZT系セラミック圧電体材料の粉末を準備し、バインダー、溶剤とともに混合してセラミックススラリーを作成し、得られたスラリーを用いて、PET(PolyEthylene Terephtalate)等からなるキャリアフィルム上にドクターブレード法、グラビア印刷法等公知の手段により塗工し、乾燥して厚さ10〜100μmの長尺の圧電体材料を主成分とするセラミックグリーンシートを形成した後、所定の寸法にカットし、複数枚のセラミックグリーンシートを作成する。次に得られたセラミックグリーンシートの所定の位置に打ち抜きプレス、レーザ光照射等によりスルーホールを穿孔する。次に、Ag,Ag−Pd,Pd等の電極材料粉末を準備し、バインダーと溶剤とともに混合して電極材料ペーストを作成し、得られた電極材料ペーストを用いて、上記セラミックグリーンシート上に所定のパターンで電極、接続導体を印刷するとともに、前記スルーホールにスルーホール導体を充填する。上記で得られたセラミックグリーンシートを前記電極及び前記接続導体と前記スルーホール導体とが接するように所定の順序で積層・圧着してセラミック積層体を作成し、400〜800℃で脱バインダー処理した後、850℃〜1100℃で1〜3時間焼成して積層体からなる圧電素子を得る。以上がシート積層法を用いた製造プロセスの概要であるが、本発明の圧電素子を得るための製造プロセスは上記のシート積層法に限定するものではなく、公知のスラリービルド法のほか、有機圧電体材料を用いてプリント配線基板と同様のプロセスを用いて形成することもできる。
【0030】
次に、上記圧電素子10について、シート積層法を例にして製造プロセスの一例を説明する。
まず、公知のPZT系セラミック圧電体材料の粉末を準備し、バインダー、溶剤とともに混合してセラミックスラリーを作成し、得られたスラリーを用いて、PETフィルム上にドクターブレード法により厚さ30μmの長尺のセラミックグリーンシートを作成する。得られたセラミックグリーンシートを所定の寸法に切断して複数枚のセラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2を作成する。尚、説明の都合上、圧電素子1個分について図示する(以下同様)。
次に、上記で得られたセラミックグリーンシート12A1の所定の位置にスルーホール16A1,19A1を、セラミックグリーンシート12A2の所定の位置にスルーホール16B1,19B1を、セラミックグリーンシート12B1の所定の位置にスルーホール16B2,19B2を、セラミックグリーンシート12B2の所定の位置にスルーホール16C1,19C1を、セラミックグリーンシート12C1の所定の位置にスルーホール16C2,19C2を、セラミックグリーンシート12C2の所定の位置にスルーホール16D1,19D1を、レーザ光照射によりそれぞれ穿孔する。
次に、Pd電極材料粉末とバインダーと溶剤とを混合した電極材料ペーストを準備し、スクリーン印刷法によりそれぞれのグリーンシートの所定の位置に電極、接続導体の印刷を行うとともに、スルーホール導体の充填を行う。まず、前記セラミックグリーンシート12A2の一方の主面に一対の接続導体15A,18Aを印刷するとともに前記スルーホール16B1,19B1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12B2の一方の主面に一対の接続導体15B,18Bを印刷するとともに前記スルーホール16C1,19C1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12C2の一方の主面に一対の接続導体15C,18Cを印刷するとともに前記スルーホール16D1,19D1にスルーホール導体を充填する。また、前記セラミックグリーンシート12A1の一方の主面に一対の電極14A,17Aを印刷するとともに前記スルーホール16A1,19A1にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12B1の一方の主面に一対の電極14B,17Bを印刷するとともに前記スルーホール16B2,19B2にスルーホール導体を充填する。同様に、前記セラミックグリーンシート12C1の一方の主面に一対の電極14C,17Cを印刷するとともに前記スルーホール16C2,19C2にスルーホール導体を充填する。また、前記セラミックグリーンシート12C2の他方の主面に一対の電極14D、17Dを印刷する。
前記電極と前記スルーホール導体、及び前記接続導体と前記スルーホール導体がそれぞれ接するように上記で得られたセラミックグリーンシート12A1,12A2,12B1,12B2,12C1,12C2を順次積層・圧着し、所定の温度で脱バインダー処理した後、所定の温度で3時間焼成して積層体12を得る。次に、上記積層体12の表面の前記電極14A,17Aにそれぞれ異なる極性の分極電圧が印加されると、接続導体15A,15B、15C、及びスルーホール導体16A,16B,16C、16Dを経由して,電極14B,14C,14Dに前記電極14Aと同じ電圧が印加されるとともに、接続導体18A,18B,18C、及びスルーホール導体19A,19B,19C,19Dを経由して、電極17B,17C,17Dに前記電極17Aと同じ電圧が印加される。
この結果、圧電素子10は、積層体12の各圧電体層12A,12B,12Cが厚み方向に分極される。
【0031】
上記圧電素子10は、少なくとも一つの圧電体層12Aを備えた積層体12を有するとともに、前記圧電体層12Aの第1の主面上には第1の電極14A及び第2の電極17Aが間隙11を挟んで設けられており、前記圧電体層12Aの第2の主面上には前記第1の電極14Aと対向する第3の電極17B及び前記第2の電極17Aと対向する第4の電極14Bが同様に間隙を挟んで設けられている。そして、前記第1の電極14Aと前記第4の電極14Bとが前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体15Aを経由して接続されるとともに、前記第2の電極17Aと前記第3の電極17Bとが、前記積層体12の前記第1の主面及び第2の主面のいずれとも異なる面上の接続導体18Aを経由して接続されている。
尚、上記に示した圧電素子10、振動板23及び圧電振動板20はそれぞれ略円板状に形成されているが、一例であって本発明はこれに限定するものではなく、少なくとも板状であればよい。また、支持部21及び支持体22はそれぞれ略円環状に形成されているが、一例であって本発明はこれに限定するものではなく、圧電振動板の外周に沿う環状であればよい。
【0032】
次に、本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。図8は第2の実施形態の圧電型電気音響変換器の全体を説明するための外観斜視図であり、図9は前記実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。図10は、本実施形態の圧電型電気音響変換器に用いられる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【0033】
本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態は、両主面にそれぞれ略半円形の一対の外部電極44,47が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子40と、可撓性の絶縁基板55の両主面にそれぞれ前記圧電素子40の外部電極に接続するための接続電極54Cが設けられた略円板状の振動板53と、該振動板53の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部51を備えた支持体52とを有する圧電型電気音響変換器60であって、前記絶縁基板55には外周方向に延出された一対の突部55Aを備え、前記振動板53の他方の主面には前記一対の接続電極54Cから前記絶縁基板55の凸部55Aに延出された引き出し部54Aが形成されている。
【0034】
具体的には、図8及び図9に示されるように、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極44,47を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子40と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板55の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子40の前記外部電極44,47に対応して接続する一組以上の接続電極54Cを備えた略円板状の振動板53における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子40の前記外部電極44,47を備えた主面が貼着された圧電振動板50と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部51を備えるとともに該環状の支持部51に前記振動板53の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板50を振動可能に支持する支持体52と、を備えた圧電型電気音響変換器60であって、
前記振動板53には、前記支持体52の環状の支持部51に囲まれた内側の領域にスルーホール導体54Bが設けられて前記振動板53の一方及び他方の主面の接続電極54Cが互いに導電接続されているとともに、前記接続電極54Cにそれぞれ接続された一組の引き出し部54Aが前記振動板53の他方の主面の縁部近傍に形成されている。
【0035】
上記第2の実施形態の圧電型電気音響変換器60に用いられる振動板53は、図10に示されるように、略円形の絶縁基板55の所定の位置にすり鉢状の複数のスルーホール56が設けられ、該絶縁基板55の両主面に設けられた接続電極54Cがスルーホール56の内部に設けられたスルーホール導体54Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板55の前記支持体52の環状の支持部51と重ならない側の主面には、圧電素子40の外部電極44,47と接続するための舌状の一対の接続電極54Cが設けられており、前記絶縁基板55の外周方向に延出された凸部55Aには前記接続電極54Cの引き出し部54Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板55の前記支持体52の環状の支持部51と重なる側の主面には、前記引き出し部54Aを有さない舌状の接続電極54Cが一対設けられており、前記絶縁基板55の一方の主面の接続電極54Cと他方の主面の接続電極54Cとが前記絶縁基板55に設けられた厚み方向の断面がすり鉢状の一対のスルーホール56の内部に形成されたスルーホール導体54Bにより相互に導電接続されている。
【0036】
また、本実施形態においては、前記振動板53の両主面の接続電極54Cが複数のスルーホール導体56で互いに導電接続されている。
【0037】
次に、本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態について、図11及び図12を参照して説明する。図11は第3の実施形態の圧電型電気音響変換器90の内部構造を説明するための分解斜視図であり、図12は本実施形態の圧電型電気音響変換器90に用いる振動板83の内部構造を説明するための分解斜視図である。尚、本実施形態の圧電型電気音響変換器90の外観は、前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器30と同様であるため、図示省略する。
【0038】
本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態は、両主面にそれぞれ一対の外部電極74,77が設けられた円板状の第1及び第2の圧電素子70と、絶縁基板85の両主面にそれぞれ前記圧電素子70の外部電極74,77に接続するための接続電極84が設けられた略円板状の振動板83と、該振動板83の一方の主面の縁部近傍を接着支持する環状の支持部81を備えた支持体82とを有する圧電型電気音響変換器90であって、前記絶縁基板85には外周方向に延出された突部85Aを備え、前記振動板83の他方の主面には前記一対の接続電極84から前記絶縁基板85の凸部85Aに延出された引き出し部84Aが形成されている。
【0039】
具体的には、図11に示されるように、少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極74,77を備えた略円板状の第1及び第2の圧電素子70と、これらの圧電素子70間に配設され、絶縁基板85の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子70の前記外部電極74,77に対応して接続する一組以上の接続電極84を備えた略円板状の振動板83における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子70の前記外部電極74,77を備えた主面が貼着された圧電振動板80と、この圧電震動板80の縁部近傍に沿う環状の支持部81を備えるとともに該環状の支持部81に前記振動板83の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記圧電振動板80を振動可能に支持する支持体82と、を備えた圧電型電気音響変換器90であって、
前記振動板83には、前記支持体82の環状の支持部81に囲まれた内側の領域にスルーホール導体84Bが設けられて前記振動板83の一方及び他方の主面の接続電極84が互いに導電接続されているとともに、
前記接続電極84にそれぞれ接続された一組の引き出し部84Aが前記振動板83の他方の主面の縁部近傍に形成されているものである。
【0040】
上記第3の実施形態の圧電型電気音響変換器90に用いられる振動板83は、図12に示されるように、略円形の絶縁基板85の所定の位置に長孔状のスルーホール86が設けられ、該絶縁基板85の両主面に設けられた接続電極84がスルーホール86の内部に設けられたスルーホール導体84Bで導電接続されている。具体的には、前記絶縁基板85の前記支持体82の環状の支持部82と重ならない側の主面には、圧電素子70の外部電極74,77と接続するための略半円形の一対の接続電極84が設けられており、前記絶縁基板85の外周方向に延出された凸部85Aには前記接続電極84の引き出し部84Aがそれぞれ延出されている。また、前記絶縁基板85の前記支持体82の環状の支持部81と重なる側の主面には、前記引き出し部84Aを有さない接続電極84が一対設けられており、前記絶縁基板85の一方の主面の接続電極84と他方の主面の接続電極84とが前記絶縁基板85に設けられた長孔状のスルーホール86の内部に形成されたスルーホール導体84Bにより相互に導電接続されている。
【0041】
尚、上記第1及び第3の実施形態においては板状の振動板の外形寸法は支持体の外形寸法よりも小さく形成されていたが、これに限定するものではなく、例えば、上記第2の実施形態に示されるように板状の振動板の外形寸法と支持体の外形寸法とを同じにしてもよく、また振動板の外形寸法が支持体の外形寸法よりも大きいものであってもよい。
【0042】
なお、上記第1〜第3の実施形態では、圧電型電気音響変換器の一例として圧電型スピーカに好適な振動板の実施例を示したが、本発明は、これに限定するものではなく、圧電レシーバ、圧電サウンダ、圧電マイクロホンなどの各種の圧電型電気音響変換器に適用することができる。また、これらの圧電型電気音響変換器は、公知の各種の電子機器に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、薄型化が要求される電子機器用の圧電型電気音響変換器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の圧電型電気音響変換器の第1の実施形態の全体を示す外観斜視図である。
【図2】前記第1の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図3】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図4】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板のスルーホール導体の拡大断面図である。
【図5】前記第1の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる圧電素子の一例の全体を示す外観斜視図である。
【図6】前記圧電素子の内部構造を説明するための断面図である。
【図7】前記圧電素子の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図8】本発明の圧電型電気音響変換器の第2の実施形態の全体を示す外観斜視図である。
【図9】前記第2の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図10】前記第2の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図11】本発明の圧電型電気音響変換器の第3の実施形態の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図12】前記第3の実施形態の圧電型電気音響変換器に用いる振動板の内部構造を説明するための分解斜視図である。
【図13】背景技術の圧電型電気音響変換器を説明するための分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10:圧電素子
14,14A,14D:外部電極
17,17A,17D:外部電極
20:圧電振動板
21:支持部
22:支持体
23:振動板
24:接続電極
24A:引き出し部
24B:スルーホール導体
25:絶縁基板
25A:凸部
26:スルーホール
30:圧電型電気音響変換器
40:圧電素子
44,44A,44D:外部電極
47,47A,47D:外部電極
50:圧電振動板
51:支持部
52:支持体
53:振動板
54:振動板の電極
54A:引き出し部
54B:スルーホール導体
54C:接続電極
55:絶縁基板
55A:凸部
56:スルーホール
60:圧電型電気音響変換器
70:圧電素子
74,74A,74D:外部電極
77,77A,77D:外部電極
80:圧電振動板
81:支持部
82:支持体
83:振動板
84:接続電極
84A:引き出し部
84B:スルーホール導体
85:絶縁基板
85A:凸部
86:スルーホール
90:圧電型電気音響変換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極を備えた板状の第1及び第2の圧電素子と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極に対応して接続する一組以上の接続電極を備えた板状の振動板における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極を備えた主面が貼着された圧電振動板と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部を備えるとともに該環状の支持部に前記振動板の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記振動板を振動可能に支持する支持体と、を備えた圧電型電気音響変換器において、
前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器。
【請求項2】
前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【請求項3】
前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【請求項4】
前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【請求項1】
少なくとも一方の主面に一組以上の外部電極を備えた板状の第1及び第2の圧電素子と、これらの圧電素子間に配設され、絶縁基板の一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極に対応して接続する一組以上の接続電極を備えた板状の振動板における一方及び他方の主面にそれぞれ前記圧電素子の前記外部電極を備えた主面が貼着された圧電振動板と、この圧電振動板の縁部近傍に沿う環状の支持部を備えるとともに該環状の支持部に前記振動板の一方の主面の縁部近傍を重ねて接着することにより前記振動板を振動可能に支持する支持体と、を備えた圧電型電気音響変換器において、
前記振動板には、前記支持体の環状の支持部に囲まれた内側の領域にスルーホール導体が設けられて前記振動板の一方及び他方の主面の接続電極が互いに導電接続されているとともに、前記接続電極にそれぞれ接続された一組の引き出し部が前記振動板の他方の主面の縁部近傍に形成されていることを特徴とする圧電型電気音響変換器。
【請求項2】
前記振動板のスルーホール導体が前記絶縁基板の厚み方向の断面がすり鉢状に形成されたスルーホール内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【請求項3】
前記振動板の両主面の接続電極が複数のスルーホール導体で互いに導電接続されていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【請求項4】
前記振動板のスルーホール導体が長孔状のスルーホール内に設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電型電気音響変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−17433(P2008−17433A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211418(P2006−211418)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】
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