説明

圧電振動体、圧電アクチュエータ、電子機器及び圧電振動体の製造方法

【課題】振動特性のばらつきを抑制することができる圧電振動体、圧電アクチュエータ、電子機器及び圧電振動体の製造方法を提供すること。
【解決手段】電極が設けられる圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32が積層される補強板33とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体30であって、圧電素子31,32と補強板33とは、互いに接合材により接合され、当該圧電振動体30は、周縁における当該圧電振動体30の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置に、他の位置より多くの接合材が保持される保持領域34を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子と補強板とを有する圧電振動体、圧電アクチュエータ、電子機器及び圧電振動体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動体と、当該圧電振動体の振動によって駆動される被駆動体とを備えた圧電アクチュエータが知られている。このうち、圧電振動体は、ステンレス等の板状体である補強板に圧電素子が積層された構造を備えている。このような圧電振動体においては、圧電素子の表裏両面に形成される電極の位置、当該電極への電圧の印加状態、並びに、これら圧電素子及び補強板の形状及び寸法に応じて、圧電素子の長手方向に沿って伸縮する縦振動(縦一次振動)と、当該縦振動に直交する方向に屈曲する屈曲振動(屈曲二次振動)とを、圧電振動体に生じさせることができる。そして、圧電アクチュエータにおいては、前述の電極に電圧を印加すると、圧電振動体が振動して、被駆動体が駆動される。
【0003】
このような圧電素子と補強板とは、はんだ或いは接着剤等の接合材により接合される。そして、これらの接合の際には、圧電素子と補強板とを、これらの積層方向に沿って立設された位置決めピン等により位置決めし、当該圧電素子及び補強板を加圧して接合する圧電振動体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】再公表公報WO2004/043617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法にて、接合材として接着剤を用いて圧電振動体を製造すると、余分な接着剤が圧電素子及び補強板の周縁に漏出してしまう。一方、圧電素子と補強板とは剥離が生じない程度に密に接合させる必要がある反面、接合時に漏出しない程度に接着剤を塗布することは困難である。このような接着剤が圧電素子又は補強板の周囲にばらついて漏出すると、当該接着剤による圧電振動体の重心の変位や、当該圧電振動体の変位量の変化により、製造される個々の圧電振動体の振動特性がばらつくという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、振動特性のばらつきを抑制することができる圧電振動体、圧電アクチュエータ、電子機器及び圧電振動体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電振動体は、電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体であって、前記圧電素子と前記補強板とは、互いに接合材により接合され、当該圧電振動体は、周縁における当該圧電振動体の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置に、他の位置より多くの前記接合材が保持される第1の保持領域を有することを特徴とする。
【0008】
ここで、圧電振動体の振動としては、前述の縦振動及び屈曲振動のうち、少なくともいずれかが挙げられる。
また、圧電振動体の振動時の節とは、当該圧電振動体が振動した際に、圧電振動体における変位量が最も小さい部位(詳述すると、振幅が0となる部位)を示し、例えば、平面視略長方形状の圧電振動体が長手方向に沿って縦振動する場合には、当該圧電振動体の長手方向の中央位置となる。また、当該圧電振動体が屈曲振動する場合には、幅方向(圧電振動体を平面視した際の長手方向に直交する方向)の中心線上ではあるが、長手方向においては中心点、及び、それ以外の複数箇所となることが多い。
【0009】
更に、当該節に応じた位置とは、圧電振動体の周縁において当該圧電振動体の振動時の変位量が最も小さい部位を示す。例えば、平面視略長方形状を有する圧電振動体が縦振動する場合には、当該節に応じた位置は、前述の節を通り、かつ、長手方向に対する直交方向に沿う直線上の周縁部位となる。当該圧電振動体が屈曲振動する場合にも、当該節に応じた位置は、前述の節を通り、かつ、幅方向に沿う直線上の周縁部位となる。
また、接合材としては、接合の際に液状を呈するものが適用される。また、接合の際に、接合材を加熱して接合しやすくしてもよい。このような接合材としては、例えば、エポキシ樹脂、嫌気性接着剤及び光硬化型接着剤の混合接着材等の合成樹脂接合材、並びに、ハンダ等の金属接合材を挙げることができる。このうち、金属接合材を接合材として用いる場合には、接合の際に加熱溶融が必要である。
【0010】
本発明によれば、圧電素子と補強板との間から周縁に漏出した接合材は、圧電振動体の周縁における当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置である第1の保持領域に集められている。これによれば、例えば、圧電振動体の製造時において、圧電素子と補強板との間から接合材が漏出した場合でも、振動時の節に応じた位置に、より多くの接合材が保持されることとなり、当該位置とは異なる位置(例えば、振動時の振幅が最大となる腹の位置)により多くの接合材が保持されている場合に比べ、当該接合材による圧電振動体の振動への影響が低減する。
【0011】
具体的に、当該節に応じた位置より、当該位置とは異なる位置に多くの接合材が保持されている場合には、当該接合材による圧電振動体の重心の変位等により、振幅のバランスが崩れてしまう。これに対し、振動時の節に応じた位置に、当該位置とは異なる位置より多くの接合材が保持されることで、振幅のバランスを維持することができる。
従って、製造される圧電振動体の振動特性のばらつきを抑制することができる。
【0012】
本発明では、前記圧電素子及び前記補強板は、互いに接合される際に、当該圧電振動体の外側で、かつ、前記節に応じた位置に配置される第1の位置決め部材により位置決めされ、前記第1の保持領域は、前記第1の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間に形成されることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、圧電素子と補強板との接合時に、これらを第1の位置決め部材により位置決めすることにより、圧電素子と補強板との間から漏出した接合材を、当該第1の位置決め部材と圧電振動体との隙間で生じる毛細管現象により集め、当該接合材が保持される第1の保持領域を形成することができる。この際、第1の位置決め部材は、圧電振動体の外側で、かつ、当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置に配置されるので、圧電振動体の周縁における当該節に応じた位置に、他の位置より多くの接合材を確実に保持させることができる。従って、振動特性のばらつきを抑制することができる圧電振動体を効率よく製造することができる。
【0014】
本発明では、前記補強板は、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部を備え、前記圧電素子及び前記補強板は、互いに接合される際に、当該圧電振動体の外側で、かつ、前記突出部近傍に配置される第2の位置決め部材により位置決めされ、前記第2の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間には、前記接合材が保持される第2の保持領域が形成されることが好ましい。
【0015】
例えば、このような突出部は、平面視略長方形状の圧電振動体では、当該圧電振動体の長手方向に交差する側面における一方の端部寄りの位置に形成することができ、更には、圧電振動体の中央を中心として、点対称となる位置に形成することができる。
本発明によれば、第2の位置決め部材により、補強板と圧電素子との接合時において第1の位置決め部材によって位置決めされる方向とは異なる方向の位置決めを行うことができる。
【0016】
ここで、このような突出部は、例えば、被駆動体に接触させて、圧電振動体の振動により当該被駆動体を駆動させるために設けられる。このような突出部が、圧電振動体がアンバランスとなる位置に設けられていると、前述の縦振動及び屈曲振動を生じさせやすくなり、当該突出部は楕円軌道を描くように振動する。しかしながら、突出部を設けたことによって生じたアンバランスが解消される位置(例えば、突出部が形成された面における当該突出部とは反対側の位置)に多くの接合材が保持されてしまうと、圧電振動体の振動時の振幅、ひいては、楕円軌道を描く突出部の振幅が小さくなり、圧電振動体の振動特性が変化する可能性がある。
【0017】
これに対し、本発明によれば、第2の位置決め部材が配置される突出部近傍に、余分な接合材が保持される第2の保持領域を形成することができるので、圧電振動体のアンバランスを維持することができ、圧電振動体の振幅、ひいては、突出部の振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体の振動特性に変化が生じることを抑制することができ、製造される圧電振動体の振動特性のばらつきを一層抑制できる。この場合、第2の位置決め部材が配置される箇所は、当該圧電振動体の長手方向に交差する側面における幅方向の中心位置より突出部配置側(突出部寄りの位置)であることが好ましい。
【0018】
なお、突出部が、平面視で当該圧電振動体の長手方向に交差する側面における幅方向の中央部に形成されている場合には、第2の位置決め部材は、突出部の両側で、当該突出部から等間隔に配置されていることが好ましい。このような場合、第2の位置決め部材が配置される突出部の両側に、余分な接合材が保持される第2の保持領域を形成することができるので、圧電振動体にアンバランスをもたらさずに、所望の振動を維持させることができる。
【0019】
本発明では、前記補強板は、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部を備え、前記突出部は、前記圧電素子と前記補強板とが接合される際に、これらを位置決めする第3の位置決め部材が挿通する孔部を有し、前記第3の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間には、前記接合材が保持される第3の保持領域が形成されることが好ましい。
【0020】
本発明では、第3の位置決め部材により、補強板及び圧電素子の接合時の長手方向の位置決めを容易に行うことができる。
ここで、突出部は、前述のように、例えば、被駆動体に接触させて、圧電振動体の振動により当該被駆動体を駆動させるために設けられるが、当該突出部を、圧電振動体がアンバランスとなる位置に設け、当該圧電振動体に縦振動及び屈曲振動を生じさせることで、当該突出部は、楕円軌道を描くように振動する。しかしながら、圧電素子と補強板との間から漏出した余分な接合材が、当該アンバランスが解消される位置に多く保持されてしまうと、圧電振動体の振動時の振幅、ひいては、楕円軌道を描く突出部の振幅が小さくなり、圧電振動体の振動特性が変化する可能性がある。
【0021】
これに対し、本発明によれば、突出部の孔部を挿通する第3の位置決め部材と、圧電振動体の周縁との間に、接合材が保持される第3の保持領域を形成することができる。これにより、前述の第2の位置決め部材の場合と同様に、圧電振動体のアンバランスを維持することができ、圧電振動体の振幅、ひいては、突出部の振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体の振動特性に変化が生じることを抑制することができ、製造される振動特性のばらつきを一層抑制することができる。この場合、突出部及び第3の位置決め部材が配置される箇所は、当該圧電振動体の長手方向に交差する側面における幅方向の中心位置より端部側(長辺側)であることが好ましい。
【0022】
なお、突出部が、平面視で当該圧電振動体の長手方向に交差する側面における幅方向の中央部に形成されている場合には、第3の位置決め部材も、上記幅方向の中央部に配置されることになる。このため、余分な接合材が保持される第3の保持領域が形成されても、圧電振動体にアンバランスをもたらさずに、所望の振動を維持させることができる。
【0023】
また、本発明の圧電アクチュエータは、前述の圧電振動体と、当該圧電振動体の振動により駆動される被駆動体とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、前述の圧電振動体と同様の効果を奏することができ、振動特性のばらつきを抑制した駆動信頼性の高い圧電アクチュエータを構成及び製造することができる。
【0024】
また、本発明の電子機器は、前述の圧電アクチュエータを備えることを特徴とする。
このような電子機器として、腕時計等の時計や、カメラ等を例示することができる。
本発明によれば、前述の圧電アクチュエータと同様の効果を奏することができ、これにより、動作信頼性の高い電子機器を構成及び製造することができる。
【0025】
また、本発明の圧電振動体の製造方法は、電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体の製造方法であって、前記圧電素子及び前記補強板の少なくとも一方における他方に対向する面に、接合材を付着させる接合材付着工程と、前記圧電振動体の外側で、かつ、前記圧電振動体の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置に第1の位置決め部材を配置して、前記圧電素子及び前記補強板を位置決めする位置決め工程と、前記圧電素子及び前記補強板を互いに接合させる接合工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
ここで、圧電素子及び補強板を互いに接合する接合工程としては、圧電素子及び補強板を、接合材を介して対向させた後、治具等の加圧手段により加圧することで、これらを互いに接合する方法を採用することができる。また、このほか、接合工程として、圧電素子及び補強板を、接合材を介して積層させた後、上方に配置された部材の自重により自然に加圧されることで、これらを互いに接合する方法を採用することも可能である。
また、接合工程では、接合材を加熱して接合しやすくしてもよい。なお、接合材は、接合の際に液状を呈するものが適用される。このような接合材としては、例えば、エポキシ樹脂、嫌気性接着剤及び光硬化型接着剤の混合接着材等の合成樹脂接合材、並びに、ハンダ等の金属接合材を挙げることができる。このうち、金属接合材を接合材に用いる場合には、接合の際に加熱溶融が必要である。
【0027】
本発明によれば、圧電素子及び補強板を互いに接合する接合工程にて、これら圧電素子及び補強板の間から漏出した余分な接合材は、圧電振動体と、当該圧電振動体の外側に位置する第1の位置決め部材との隙間で生じる毛細管現象により、当該隙間に集められる。これによれば、当該圧電振動体の外側(周縁)において、第1の位置決め部材が配置されていない部分には、接合材が殆どはみ出ないことになる。この第1の位置決め部材の配置位置は、圧電振動体の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置であるので、当該接合材は、圧電振動体の周縁における当該節に応じた位置に多く保持される。
【0028】
このようにして圧電素子及び補強板が接合された後に、第1の位置決め部材を圧電振動体から離間させると、圧電振動体の周縁における前述の節に応じた位置に、接合材が多く残されたままになる。このような場合、前述のように、製造された圧電振動体の振動特性に対する余分な接合材の影響を低減することができる。
【0029】
一方、第1の位置決め部材の形状、接合材の種類、及び、圧電振動体の節の周縁の形状等によっては、第1の位置決め部材を圧電振動体から離間させると、当該圧電振動体の周縁における節に応じた位置に保持された接合材が、第1の位置決め部材に付着されたまま剥がされて、当該節に応じた位置の接合材が、圧電振動体の周縁における他の部分より少なくなる場合も生じうる。この場合であっても、当該接合材が少なくなった位置は、節に応じた位置、すなわち、圧電振動体の振幅に影響を及ぼしにくい位置であるので、当該圧電振動体の振動特性に対する余分な接合材の影響を低減することができる。
従って、振動特性のばらつきを抑制した圧電振動体を効率よく製造することができる。
【0030】
本発明では、前記位置決め工程では、前記補強板に形成され、かつ、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部近傍に第2の位置決め部材を配置して、前記第1の位置決め部材とともに、前記圧電素子と前記補強板とを位置決めすることが好ましい。
本発明によれば、前述の圧電振動体と同様に、補強板の突出部近傍に余分な接合材を集めることができるので、当該接合材による圧電振動体の振動特性の変化を抑制することができる。
【0031】
すなわち、圧電振動体がアンバランスとなる位置に、例えば被駆動体と接触する突出部が設けられている場合に、当該突出部近傍に第2の位置決め部材が配置されることで、当該突出部と第2の位置決め部材との間に、余分な接合材を保持させる第2の保持領域を形成することができる。これによれば、圧電振動体のアンバランスが解消される位置に余分な接合材が多く保持される場合に比べ、当該圧電振動体のアンバランスを維持することができ、圧電振動体の振幅、ひいては、突出部の振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体の振動特性に変化が生じることを抑制することができ、振動特性のばらつきを一層抑制することができる圧電振動体を、効率よく製造することができる。
【0032】
本発明では、前記位置決め工程では、前記補強板に形成され、かつ、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部が有する孔部に第3の位置決め部材を挿通させて、前記第1の位置決め部材とともに、前記圧電素子と前記補強板とを位置決めすることが好ましい。
本発明によれば、前述の圧電振動体と同様に、圧電振動体を平面視した際の突出部の位置に、当該突出部近傍の余分な接合材を集めることができるので、当該余分な接合材による圧電振動体の振動特性の変化を抑制することができる。
【0033】
すなわち、圧電振動体がアンバランスとなる位置に、例えば被駆動体と接触する突出部が設けられている場合に、当該突出部に第3の位置決め部材が挿通する孔部を形成しておくことで、当該第3の位置決め部材と、圧電振動体の周縁との間に、余分な接合材が保持される第3の保持領域を形成することができる。これによれば、前述の第2の位置決め部材の場合と同様に、圧電振動体のアンバランスを維持することができ、圧電振動体の振幅、ひいては、突出部の振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体の振動特性に変化が生じることを抑制することができ、振動特性のばらつきを一層抑制することができる圧電振動体を、効率よく製造することができる。
【0034】
また、本発明の圧電振動体の製造方法は、電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体の製造方法であって、前記圧電素子及び前記補強板の少なくとも一方における他方に対向する面に、接合材を付着させる接合材付着工程と、前記圧電素子及び前記補強板を前記接合材により接合させる接合工程と、前記圧電素子及び前記補強板の周縁における当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置で、前記接合材を吸引する吸引工程と、を有することを特徴とする。
【0035】
ここで、接合工程としては、前述の製造方法と同様に、圧電素子及び補強板を、接合材を介して対向させた後、治具等の加圧手段により加圧することで、これらを互いに接合する方法を採用することができるほか、圧電素子及び補強板を、接合材を介して積層させた後、上方に配置された部材の自重により自然に加圧されることで、これらを互いに接合する方法を採用することができる。
また、接合工程では、接合材を加熱して接合しやすくしてもよい。なお、接合材は、接合の際に液状を呈するものが適用される。このような接合材としては、例えば、エポキシ樹脂、嫌気性接着剤及び光硬化型接着剤の混合接着材等の合成樹脂接合材、並びに、ハンダ等の金属接合材を挙げることができる。このうち、金属接合材を接合材に用いる場合には、接合の際に加熱溶融が必要である。
【0036】
更に、吸引工程は、接合工程と同時に実施しても、当該接合工程の後に実施してもよい。すなわち、圧電素子及び補強板を加圧(治具による加圧、及び、上方に位置する部材の自重による自然加圧を含む)することにより接合する場合には、加圧作業中に吸引工程を実施してもよく、或いは、加圧作業後に実施してもよい。
【0037】
本発明によれば、接合工程にて漏出した余分な接合材は、圧電振動体の周縁で、かつ、当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置にて吸引されるので、当該余分な接合材のうち、吸引しきれない接合材を、当該節に応じた位置に集めることができる。これによれば、前述のように、余分な接合材による圧電振動体の振動への影響を低減することができる。従って、振動特性のばらつきを抑制した圧電振動体を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、圧電振動体の周縁で、かつ、当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置に、当該位置とは異なる位置により多くの接合材を保持させる等、当該接合材の分布を異ならせることができる。従って、当該圧電振動体の振動に対する接合材の影響を低減することができ、製造される圧電振動体の振動特性のばらつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔1.第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る時計を説明する。
〔時計の概略構成〕
図1は、本実施形態に係る時計10を示す平面図である。
本実施形態に係る電子時計(以下、「時計」と略す場合がある)10は、本発明の電子機器に相当し、計時手段としてのムーブメント1、通常時刻を表示する文字板2、時針3、分針4及び秒針5のほか、クロノグラフ時間を示す秒クロノグラフ針6及び分クロノグラフ針7を備えている。
時針3、分針4及び秒針5は、一般的なアナログクォーツと同様のものであり、詳しい図示を省略するが、水晶振動子が組み込まれた回路基板と、コイル、ステータ及びロータを有するステッピングモータと、駆動輪列と、電池とにより駆動される。
秒クロノグラフ針6は、後述する圧電アクチュエータ20及び減速輪列50により駆動され、また、分クロノグラフ針7は、図示を省略したが、当該秒クロノグラフ針6と同様の機構により駆動される。
【0040】
〔圧電アクチュエータ及び減速輪列の構成〕
図2は、圧電アクチュエータ20及び減速輪列50を示す模式図である。
圧電アクチュエータ20は、図2に示すように、電圧印加に応じて振動する圧電振動体30と、当該圧電振動体30の振動により回転するロータ40とを備えている。
このうち、被駆動体としてのロータ40は、板ばね41によって圧電振動体30側に付勢されており、当該圧電振動体30とロータ40外周との間に適切な摩擦力が発生することで、圧電振動体30の振動が効率良くロータ40に伝達されるようになっている。なお、圧電振動体30の構成については、後に詳述する。
【0041】
減速輪列50は、ロータ40の回転を秒クロノグラフ針6に伝達する。この減速輪列50は、歯車51,52により構成されている。
歯車51は、ロータ40と同軸に配置され、当該ロータ40と一体となって回転する。
歯車52は、秒クロノグラフ針6(図1参照)の回転軸に固定され、歯車51に噛合している。このため、圧電振動体30の駆動により生じたロータ40の回転が、歯車51,52を介して減速された秒クロノグラフ針6に伝達され、当該秒クロノグラフ針6が駆動する。
【0042】
〔圧電振動体の構成〕
図3は、圧電振動体30を示す概要斜視図である。
圧電振動体30は、矩形平板状を有する一対の圧電素子31,32(説明の便宜上、上方に位置する圧電素子を31とし、下方に位置する圧電素子を32とする)と、これらの圧電素子31,32の間に介装される平板状の補強板33とを備え、これら圧電素子31,32と補強板33とは、本実施形態では、接合材としての接着剤により互いに接合される。
【0043】
圧電素子31,32の表面(それぞれ補強板33に対向する面とは反対側の面)には、当該圧電素子31,32に駆動信号としての交流電圧を印加するための電極310,320が、それぞれ形成される。この電極は、ニッケル或いは金などによるめっき、スパッタ、蒸着等の方法で形成される。なお、圧電素子31,32の裏面(それぞれ補強板33に対向する面)にも、図示を省略するが、表面側と同様の電極が形成され、この電極は補強板33と重ねられ導通されている。
このような圧電素子31,32の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を例示できる。
【0044】
これら圧電素子31,32の寸法、並びに、圧電素子31,32に前述の各電極を介して印加される交流電圧の周波数(駆動周波数)は、圧電素子31,32に繰り返し電圧が印加された際に、当該圧電素子31,32に縦振動(縦一次振動)及び屈曲振動(屈曲二次振動)が同時に現れるように、適宜設定される。なお、縦振動及び屈曲振動については、後に詳述する。
【0045】
補強板33は、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料から形成されている。この補強板33は、圧電素子31,32が積層される本体部331と、当該本体部331に一体的に形成された一対の突出部332及び腕部333とを備える。
このうち、本体部331は、平面視略長方形状を有し、当該本体部331の平面視の寸法は、圧電素子31,32と略同じとなるように設定されている。
一対の突出部332は、本体部331の短辺側の両側面(長手方向に直交する面)における一方の端部から外側に略円弧状に突出するように形成され、当該本体部331の中央を中心として点対称に形成されている。具体的に、各突出部332は、本体部331の対角位置にそれぞれ形成され、一方の突出部332が、前述のロータ40(図2参照)に当接する。
【0046】
腕部333は、本体部331を平面視した際に、当該本体部331の長手方向に沿う一方の側面の略中央に突設されている。この腕部333は、本体部331から延出する延出部3331と、当該延出部3331の延出方向先端に形成された平面視略矩形の固定部3332とを備えている。この固定部3332には、孔部3333が形成され、当該孔部3333を挿通したねじ(図示省略)が、ムーブメント1を構成する地板に固定されることにより、圧電振動体30は当該地板に固定される。
【0047】
ここで、圧電振動体30の振動について説明する。
図4は、圧電振動体30の振動時の節D1,D2を示す図である。なお、図4では、圧電振動体30の屈曲振動時の幅方向の中心線を一点鎖線にて示す。
圧電振動体30は、前述のように、電圧印加により縦振動及び屈曲振動を生じる。
このうち、縦振動は、圧電振動子31、32の表面と裏面の電極に駆動信号が印加されることにより生じるもので、圧電振動体30を平面視した際の中央を中心として、長手方向に沿って伸縮する振動である。すなわち、圧電振動体30は、伸長時には、当該中央を中心として外側に延出し、収縮時には、当該中央を中心として内側に収縮する。このため、当該中央を通り、かつ、圧電振動体30の長手方向に直交する直線上の領域は、当該圧電振動体30の縦振動時に変位が生じにくい領域となり、当該中央の位置が縦振動時の節D1となる。
【0048】
また、屈曲振動は、前述の縦振動が引き起こされる際に、各突出部332が幅方向においてアンバランスに配置されていることにより引き起こされるものである。この屈曲振動は、圧電素子31,32の平面中心に対して点対称に、縦振動に直交する方向(長手方向に直交する方向)に沿って、当該長手方向における一方の端部側及び他方の端部側が、それぞれ互いに反対方向に変位する振動である。この変位の方向は、一方の端部側及び他方の端部側で、振動1サイクルの中で反転するようになる。このため、屈曲振動時においては、圧電振動体30の幅方向(長手方向に対する直交方向)の中心線は、図4において一点鎖線で示す曲線となる。これら曲線の交点であり、屈曲振動時の節D1,D2(節D1は縦振動時の節を兼ねる)を通り、かつ、当該圧電振動体30の長手方向に直交する直線上の領域は、屈曲振動時に圧電振動体30において変位が生じにくい領域となる。
【0049】
一方、一対の突出部332は、圧電振動体30が振動した際に変位量が最も大きくなる部位であり、圧電振動体30に屈曲振動及び縦振動を生じさせることにより、略楕円軌道R(図2参照)を描いて振動する。そして、一方の突出部332が、上記のように振動することにより、前述のロータ40(図2参照)を回転させる。
なお、屈曲振動は、突出部332が補強板33にアンバランスに配置されているために縦振動に誘起されて振動する場合、或いは、補強板33上に配置された複数の電極に駆動信号を選択的に引加することにより誘起される場合に生じうる。しかしながら、本実施形態では、屈曲振動は、前者により誘起される。ただし、後者によって屈曲振動が誘起されるようにしてもよい。
【0050】
〔圧電振動体の製造工程〕
図5は、圧電振動体30の製造工程を示すフローチャートである。また、図6及び図7は、圧電振動体30の製造時の状態を示す平面図及び斜視図である。具体的に、図6及び図7は、複数の位置決めピンP(P1,P2)により位置決めされた圧電振動体30を示す平面図及び斜視図である。なお、図6では、圧電振動体30の屈曲振動時の幅方向の中心線を一点鎖線にて示す。
上述した圧電振動体30は、図5に示す工程S1〜S3を経て製造される。
このうち、接合材付着工程S1では、圧電素子31,32における補強板33に対向する面に接着剤を均一に付着させる。このような接着剤は、インクジェット方式を用いて噴射したり、所定量付着させた後にへら等で延ばしたり、或いは、スクリーン印刷で付着させたりしてもよい。
【0051】
また、接合工程S1では、接合しやすくするために接合材を加熱してもよい。
なお、接合材は、接合の際に液状を呈するものが適用される。このような接合材としては、例えば、エポキシ樹脂、嫌気性接着剤及び光硬化型接着剤の混合接着材等の合成樹脂接合材、並びに、ハンダ等の金属接合材を挙げることができる。このうち、金属接合材を接合材に用いる場合には、接合の際に加熱溶融が必要である。この接合材の性質(液状)及び材質、加熱可能性等については、以下の各実施形態及び変形例でも、同様に適用されるものである。
【0052】
位置決め工程S2では、図6及び図7に示すように、圧電素子31,32の間に補強板33を介装し、略円筒状の位置決めピン(以下、「ピン」と略す場合がある)P(P1,P2)を用いて、これら圧電素子31,32及び補強板33の平面位置がずれないように位置決めする。
この際、第1の位置決め部材としてのピンP1は、圧電振動体30の外側で、かつ、当該圧電振動体30の振動時の節D1,D2に応じた位置で、圧電素子31,32及び補強板33のそれぞれに当接するように配置される。詳述すると、ピンP1は、当該圧電振動体30の縦振動時の節D1、及び、屈曲振動時の節D1,D2に応じた位置にそれぞれ配置される。すなわち、ピンP1は、圧電振動体30の周縁において、節D1,D2を通り、かつ、当該圧電振動体30の長手方向に直交する直線上の位置にそれぞれ配置される。なお、ピンP1が当接する圧電素子31,32及び補強板33の位置では、これら圧電素子31,32及び補強板33は略面一となっている。
【0053】
また、ピンP1より小さい直径を有する第2の位置決め部材としてのピンP2は、圧電振動体30の外側で、かつ、突出部332近傍に配置される。具体的に、ピンP2は、圧電振動体30の長手方向に直交する側面に沿い、かつ、突出部332近傍に、圧電素子31,32及び補強板33(更には突出部332に)にそれぞれ当接するように配置される。このピンP2が当接する圧電素子31,32及び補強板33の位置では、これら圧電素子31,32及び補強板33は略面一となっている。
なお、本実施形態では、各ピンP2は、突出部332近傍で、かつ、当該突出部332寄りの位置に配置されるが、これに限らず、突出部332の近傍であればよい。また、位置決め部材としてのピンPの断面形状は、円状に限らず、角状などの非円形状であってもよい。
【0054】
これらピンP1,P2のうち、圧電振動体30において互いに交差する一対の側面に沿って配置されるピンP1,P2は、当該圧電振動体30が載置される治具(図示省略)の載置面に沿って摺動自在に設けられている。そして、当該摺動するピンP1,P2が、固定されたピンP1,P2に向かって圧電振動体30を押圧することで、各ピンP1,P2により、圧電振動体30が位置決めされる。
【0055】
接合工程S3では、図示しない治具により、上方に位置する圧電素子31を下方に位置する圧電素子32に向かって加圧して、これら圧電素子31,32と補強板33とを接合する。
この際、圧電素子31と補強板33との間、及び、圧電素子32と補強板33との間からは、余分な接着剤Bが漏出する。このような余分な接着剤Bは、圧電振動体30とピンP1,P2との隙間にて生じる毛細管現象により、当該隙間に集められる。
【0056】
このうち、長手方向に沿う側面に漏出した余分な接着剤Bは、圧電振動体30の周縁におけるピンP1に応じた位置、すなわち、圧電振動体30の周縁における節D1,D2に応じた位置に集められ、これにより、当該側面における他の位置より多くの接着剤Bが保持される保持領域34が、節D1,D2に応じた位置に形成される。また、長手方向に直交する側面(幅方向に沿う側面)に漏出した余分な接着剤Bは、圧電振動体30の周縁におけるピンP2に応じた位置、すなわち、突出部332近傍に集められ、これにより、保持領域35が形成される。すなわち、保持領域34,35は、それぞれ、本発明の第1の保持領域及び第2の保持領域に相当する。
以上により、圧電振動体30が製造される。
【0057】
以上説明した本実施形態の時計10によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)圧電素子31,32及び補強板33の接合に際して漏出した余分な接着剤Bは、圧電振動体30の周縁における節D1,D2に応じた位置に集められ、保持される保持領域34が形成される。これによれば、当該余分な接着剤Bが、圧電振動体30の周縁にばらついて保持されている場合や、当該周縁における節D1,D2に応じた位置とは異なる位置(例えば、節D1,D2の中間である腹の位置)に多くの接着剤が保持される場合に比べ、当該余分な接着剤Bによる圧電振動体30の振動への影響を低減することができる。従って、圧電振動体30の振動特性のばらつきを抑制することができる。
また、このような圧電振動体30を圧電アクチュエータ20が備えることにより、動作信頼性の高い圧電アクチュエータ20、ひいては、時計10を構成することができる。
【0058】
(2)余分な接着剤Bが保持される保持領域34は、圧電振動体30と、当該圧電振動体30の外側で、かつ、振動時の節D1,D2に応じた位置に配置されたピンP1との隙間で生じる毛細管現象により、当該隙間に形成される。これによれば、当該保持領域34を、圧電振動体の周縁における節D1,D2に応じた位置に簡易に形成することができる。従って、振動特性のばらつきを抑制することができる圧電振動体30を効率よく製造することができる。
【0059】
なお、ピンP1を圧電振動体30から離間させる際に、ピンP1の形状、接合材(接着剤)の種類、及び、圧電振動体30の節の周縁の形状等によっては、ピンP1を圧電振動体から離間させると、当該圧電振動体30の周縁における節に応じた位置に保持された接合材が、ピンP1に付着されたまま剥がされて、当該節に応じた位置の接合材が、圧電振動体30の周縁における他の部分より少なくなる場合も生じうる。しかしながら、このような場合であっても、圧電振動体30の周縁において接合材が少なくなった位置は、節に応じた位置、すなわち、圧電振動体30の振幅に影響を及ぼしにくい位置である。従って、前述の場合と同様に、当該圧電振動体30の振動特性に影響をもたらさないようにすることができ、振動特性のばらつきを抑制することができる圧電振動体30を製造することができる。
【0060】
(3)ここで、突出部332は、圧電振動体30にアンバランスを生じさせており、当該圧電振動体30に縦振動及び屈曲振動を生じさせると、前述のように、突出部332が楕円軌道を描くように振動する。しかしながら、当該突出部332から離れた位置、すなわち、アンバランスが解消する位置に多くの接着剤が保持されると、突出部332の振幅が小さくなり、圧電振動体30の振動特性が変化する場合がある。
これに対し、ピンP2を突出部332近傍に配置することで、当該ピンP2と圧電振動体30の周縁との間、すなわち、突出部332近傍に、余分な接着剤Bが保持される保持領域35を形成することができる。これによれば、圧電振動体30のアンバランスを維持することができ、突出部332の振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体30の振動特性に変化が生じることを抑制することができ、当該圧電振動体30を簡易に、かつ、効率よく製造することができる。
【0061】
また、このようなピンP2を、圧電振動体30の長手方向に直交する幅方向に沿う側面に沿って配置することで、圧電振動体30の長手方向の位置決めを容易に行うことができるほか、当該長手方向に沿う側面に沿って配置されるピンP1とともに、圧電振動体30を確実に位置決めすることができる。
【0062】
〔2.第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Aは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備えるが、圧電振動体30Aでは、余分な接着剤Bを更に突出部332に保持させる点で、当該圧電振動体30Aと圧電振動体30とは相違する。なお、以降の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図8は、本実施形態に係る圧電振動体30Aの製造時の状態を示す平面図である。
本実施形態に係る時計は、図示を省略するが、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Aを備えるほかは、時計10と同様の構成を有する。
圧電振動体30Aは、図8に示すように、圧電素子31,32(圧電素子32については図示省略)と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33Aとを備え、これらが接合材としての接着剤により互いに接合された構成を有している。
【0064】
補強板33Aは、前述の補強板33と同様に、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料により形成されている。この補強板33Aは、本体部331と、一対の突出部332A及び腕部333とを備える。このうち、一対の突出部332Aには、本体部331寄りの位置に、平面視略円形状の孔部332A1が形成されている。この孔部332A1には、圧電振動体30Aの製造時に、補強板33Aを位置決めする第3の位置決め部材としてのピンP3が挿通する。
【0065】
このような圧電振動体30Aは、前述の工程S1〜S3を経て製造される。
このうち、位置決め工程S2では、前述のピンP1が、圧電振動体30での場合と同様に、圧電振動体30Aの周縁に沿って配置される。また、ピンP1より直径寸法の小さいピンP3が、前述の孔部332A1を挿通する。これらピンP1,P3により、圧電素子31,32及び補強板33Aが位置決めされる。
そして、接合工程S3では、治具(図示省略)により、これら圧電素子31,32及び補強板33Aが加圧される。これにより、圧電素子31,32と補強板33Aとの間から余分な接着剤Bが漏出し、圧電振動体30AとピンP1との間に、当該余分な接着剤Bが保持される保持領域34が形成される。この他、圧電振動体30AとピンP3との隙間にも、当該接着剤Bが保持される第3の保持領域としての保持領域36が形成される。
【0066】
以上説明した本実施形態の時計によれば、前述の効果(1),(2)と同様の効果のほか、以下の効果を奏することができる。
(4)接合工程S3にて圧電素子31,32と補強板33Aとの間から漏出した接着剤Bは、圧電振動体30AとピンP3との隙間にも集められる。すなわち、突出部332A近傍の余分な接着剤Bを、当該突出部332Aに確実に集めることができる。これによれば、前述の圧電振動体30の場合と同様に、圧電振動体30Aのアンバランスが解消されずに維持することができるので、圧電振動体30Aの振動時に、突出部332Aの振幅が小さくなることを抑えることができる。従って、圧電振動体30Aの振動特性に変化が生じることを抑制することができ、当該圧電振動体30Aの振動特性のばらつきを一層抑制することができる。
【0067】
また、突出部332Aの孔部332A1にピンP3を挿通させることで、圧電素子31,32及び補強板33の長手方向の位置決めを容易に行うことができるほか、当該ピンP3と圧電振動体30Aとの間に保持領域36を形成するので、振動特性のばらつきを抑えた圧電振動体30Aを、容易に製造することができる。従って、当該圧電振動体30Aの製造効率を向上することができる。
【0068】
〔3.第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態の時計について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Bは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備える。しかしながら、圧電振動体30では、当該圧電振動体30とピンP1,P2との隙間で生じる毛細管現象により、余分な接着剤Bを集めていたのに対し、圧電振動体30Bでは、当該圧電振動体30Bの周縁で、かつ、節D1,D2に応じた位置で、余分な接着剤Bを吸引することで保持領域34を形成する。この点で、当該圧電振動体30Bと、圧電振動体30とは相違する。
【0069】
図9は、本実施形態に係る圧電振動体30Bの製造工程を示すフローチャートである。
本実施形態に係る時計は、図示を省略するが、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Bを備えるほかは、時計10と同様の構成を有する。
圧電振動体30Bは、圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33とを備え、これらが互いに接合材としての接着剤により接合された構成を有している。この圧電振動体30Aは、図9に示すように、工程S1,S2A,S3及びS4を経て製造される。
このうち、位置決め工程S2Aでは、節以外の周縁部に配置された複数のピンPにより圧電素子31,32及び補強板33を位置決めする。
【0070】
図10は、当該圧電振動体30Bの製造時の状態を示す平面図である。
吸引工程S4では、接合工程S3にて圧電素子31,32と補強板33との間から漏出した余分な接着剤Bを、複数のノズルNZを有する吸引装置により吸引する。この際、各ノズルNZは、図10に示すように、圧電振動体30Bの外側で、かつ、当該圧電振動体30Bの振動時の節D1,D2に応じた位置に配置される。このため、ノズルNZにより吸引された際に、除去しきれなかった接着剤Bは、当該圧電振動体30Bの周縁で、かつ、節D1,D2に応じた位置にて保持及び固着され、保持領域34が形成される。
【0071】
なお、吸引工程S4は、接合工程S3での圧電素子31,32及び補強板33に対する加圧と同時に実施してもよく、或いは、当該加圧の後に実施してもよい。また、治具等による加圧を行わずに、圧電素子32の上方に位置する補強板33、更には、当該補強板33の上方に位置する圧電素子31の自重による自然加圧を行う場合でも、これらの接合作業中に、吸引工程S4を実施するようにしてもよい。
【0072】
以上説明した本実施形態の時計によれば、前述の効果(1)と同様の効果がある。
すなわち、圧電素子31,32と補強板33との間から漏出した余分な接着剤Bは、圧電振動体30Bの周縁で、かつ、節D1,D2に応じた位置にて吸引される。これによれば、当該余分な接着剤Bを圧電振動体30Bの周縁から除去することができるほか、除去しきれなかった場合でも、当該接着剤Bを、節D1,D2に応じた位置に集めることができる。従って、前述の圧電振動体30と同様に、余分な接着剤Bによる圧電振動体30Bの振動への影響を低減することができ、振動特性のばらつきを抑制した圧電振動体30Bを効率よく製造することができる。
【0073】
〔4.第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Cは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備えるが、圧電振動体30では、当該圧電振動体30の周縁で、かつ、ピンP1,P2との隙間に、余分な接着剤Bを保持させたのに対し、本実施形態に係る圧電振動体30Cでは、余分な接着剤Bが保持される構成を補強板に設けた点で、当該圧電振動体30Cと圧電振動体30とは相違する。
【0074】
図11は、本実施形態に係る圧電振動体30Cを示す平面図である。なお、図11においては、圧電素子31の図示を省略している。
本実施形態の時計は、図示を省略するが、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Cを備えるほかは、時計10と同様の構成を有する。
圧電振動体30Cは、図11に示すように、圧電素子31,32(圧電素子31については図示省略)と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33Cとを備え、これらが互いに接合材としての接着剤により接合された構成を有している。
【0075】
補強板33Cは、前述の補強板33と同様に、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料により形成されており、本体部331Cと、当該本体部331Cに一体的に形成された突出部332及び腕部333とを備えている。
本体部331Cは、圧電素子31,32と平面視の寸法が略同じとなるように設定された前述の本体部331より僅かに小さく形成されている。この本体部331Cの周縁には、圧電振動体30Cの振動時の節D1,D2に応じた位置に、圧電素子31,32の外側に突出しない程度に補強板33Cの外辺から、当該外辺に対する直交方向に突出した複数の突部331C1が形成されている。
【0076】
このため、圧電振動体30Cの製造工程S1〜S3における接合工程S3にて、当該圧電振動体30Cが加圧されると、当該突部331C1の周縁は、圧電素子31,32と補強板33Cとの間から漏出した余分な接着剤B(図示省略)が溜まる接着剤溜まりとなる。すなわち、補強板33Cの外辺と突部331C1の側辺とが、180度以内の角度を持つ窪み部となり、当該窪み部が上記接着剤溜まりとなる。この接着剤溜まりが、接着剤Bが圧電振動体30Cの外側に漏出することを防ぐ部位となる。すなわち、これら突部331C1の周縁に、接着剤Bが保持される保持領域34が形成される。
【0077】
以上説明した本実施形態に係る時計によれば、前述の効果(1)と同様の効果がある。
すなわち、圧電素子31,32及び補強板33Cの間から漏出した余分な接着剤Bは、圧電振動体30の周縁における節D1,D2に応じた位置に形成された突部331C1周縁に集められて保持される。これによれば、当該余分な接着剤Bが、圧電振動体30Cの周縁にばらついて保持されている場合や、当該周縁における節D1,D2に応じた位置とは異なる位置に多く保持される場合に比べ、圧電振動体30Cの振動に対する余分な接着剤Bの影響を低減することができる。従って、圧電振動体30Cの振動特性のばらつきを抑制することができる。
【0078】
また、突部331C1の周縁に、余分な接着剤Bが溜まる接着剤溜まりが形成されるので、圧電振動体30CとピンP1との隙間に集められる接着剤Bが少なくなる。これによれば、圧電振動体30CとピンP1とを容易に離間することができる。従って、圧電振動体30Cの製造工程を簡略化することができる。
【0079】
〔5.第5実施形態〕
次に本発明の第5実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Dは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備えるが、当該圧電振動体30では、圧電素子31,32と本体部331とは略同じ寸法に形成されていたのに対し、圧電振動体30Dは、漏出した接着剤BがピンP1,P2に付着しないように、本体部331Dに凹部が形成されている点において、圧電振動体30Dと圧電振動体30とは相違する。
【0080】
図12は、本実施形態に係る圧電振動体30Dを示す斜視図である。
本実施形態に係る時計は、図示を省略するが、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Dを備えるほかは、時計10と同様の構成を有する。
圧電振動体30Dは、図12に示すように、圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33Dとを備え、これらが互いに接合材としての接着剤により接合された構成を有している。
補強板33Dは、圧電素子31,32と略同じ寸法に形成された平面視略矩形の本体部331Dと、当該本体部331Dに一体的に形成される一対の突出部332及び腕部333とを備えている。
【0081】
このうち、本体部331Dの周縁には、前述の節D2に応じた位置に、内側に略半円形状に凹んだ凹部331D1が形成されている。詳述すると、凹部331D1は、補強板33Dの長手方向に直交し、かつ、節D2を通る直線上に、中心が位置するように形成されている。なお、節D1に応じた位置に凹部を形成してもよい。
また、当該本体部331Dの周縁における突出部332近傍には、同じく内側に略半円形状に凹んだ凹部331D2が形成されている。詳述すると、凹部331D2は、突出部332が形成された側面において、補強板33Dの長手方向に沿い、かつ、節D2を通る直線上に中心が位置するように形成されている。なお、これに限らず、凹部331D2は、突出部332近傍で、かつ、当該突出部332寄りの位置に形成されていればよい。また、突出部332が側面の略中央に形成されている場合には、凹部は、当該突出部332の両側で、かつ、当該突出部332から等間隔に形成されていてもよい。
【0082】
このような圧電振動体30Dは、前述の工程S1〜S3を経て製造される。このうち、位置決め工程S2では、前述のように、ピンP1は、圧電振動体30Dの外側で、かつ、当該圧電振動体30Dの振動時の節D1,D2に応じた位置に配置される。また、ピンP2は、同様に、圧電振動体30Dの外側で、かつ、突出部332近傍に配置される。
【0083】
接合工程S3にて、圧電振動体30Dを加圧すると、圧電素子31,32と補強板33Dとの間から余分な接着剤B(図示省略)が漏出する。この余分な接着剤Bは、圧電振動体30Dと、ピンP1,P2との隙間で生じる毛細管現象により、当該各隙間に集められる。この際、本体部331Dには、各ピンP1,P2に応じて凹部331D1,331D2が形成されているので、当該各隙間に集められた接着剤Bは、表面張力により凹部331D1,331D2内に保持されることとなる。このため、当該接着剤Bが、各ピンP1,P2に付着することを防ぐことができる。すなわち、当該凹部331D1,331D2は、本発明の第1の保持領域及び第2の保持領域にそれぞれ相当する。
なお、凹部331D1,331D2内の接着剤Bは、当該凹部331D1,331D2以外の圧電振動体30Dの周縁の部位に対して多く保持されることとなるが、当該部位の接着剤Bは、一部が凹部331D1,331D2内に流入した結果、減量されているので、圧電振動体30Dの振動には影響しない。
【0084】
以上説明した本実施形態に係る時計によれば、前述の時計10と同様の効果のほか、以下の効果がある。
(5)圧電振動体30Dの振動時の節D2に応じて、補強板33Dの周縁に凹部331D1を形成し、また、突出部332近傍に凹部331D2を形成したことにより、凹部331D1,331D2内に余分な接着剤Bを保持させることができる。これによれば、ピンP1,P2に、余分な接着剤Bが付着することを防ぐことができ、製造時にピンP1,P2から圧電振動体30Dを容易に剥離させることができる。従って、当該圧電振動体30Dの製造工程を簡略化することができる。
【0085】
〔6.第6実施形態〕
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Eは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備えるが、当該圧電振動体30では、圧電素子31,32と本体部331とを略同じ寸法で形成したのに対し、圧電振動体30Eでは、圧電素子31,32に対して本体部を僅かに小さく形成した点で、当該圧電振動体30Eと圧電振動体30とは相違する。
【0086】
図13及び図14は、本実施形態に係る圧電振動体30Eを示す平面図及び縦断面図である。
本実施形態に係る時計は、図示を省略するが、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Eを備えるほかは、時計10と同様の構成を有する。
圧電振動体30Eは、図13及び図14に示すように、圧電素子31,32(図13では、圧電素子32は図示省略)と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33Eとを備え、これらが接合材としての接着剤により互いに接合された構成を有している。
【0087】
補強板33Eは、圧電素子31,32の形状に応じて平面視略長方形状に形成された本体部331Eと、当該本体部331Eに一体的に形成された一対の突出部332及び腕部333とを備える。
このうち、本体部331Eは、本体部331とは異なり、圧電素子31,32より僅かに小さく形成されている。このため、互いに中心位置を合わせるように、補強板33Eと圧電素子31,32とを接合すると、図14に示すように、圧電振動体30Eにおける補強板33Eの周縁に対応する位置に、凹部38Eが形成される。
【0088】
このような圧電振動体30Eは、前述の工程S1〜S3を経て製造される。なお、位置決め工程S2では、前述のように、ピンP1は、圧電振動体30Eの外側で、かつ、当該圧電振動体30Eの振動時の節D1,D2に応じた位置に配置される。また、ピンP2は、同様に、圧電振動体30Eの外側で、かつ、突出部332近傍に配置される。
ここで、接合工程S3にて、圧電振動体30Eを加圧すると、圧電素子31,32と補強板33Eとの間から余分な接着剤Bが漏出する。しかしながら、図14に示すように、当該余分な接着剤Bは表面張力により凹部38E内に保持されるため、圧電振動体30Eを位置決めするピンP1,P2(図示省略)に付着しない。
【0089】
以上説明した本実施形態に係る圧電振動体30Fによれば、以下の効果がある。
(6)製造された圧電振動体30EとピンP1,P2との剥離を容易に行うことができるので、当該圧電振動体30E、ひいては、圧電アクチュエータ及び時計の製造を簡略化することができる。
ここで、前述の特許文献1に記載の製造方法では、前述のように、接合材として接着剤を用いて圧電振動体を製造すると、余分な接着剤が圧電素子及び補強板の周縁に漏出して固着する。このような場合、圧電振動体と位置決めピンとの剥離が煩雑となり、当該圧電振動体の製造効率が低下する。
【0090】
これに対し、本実施形態に係る圧電振動体30Eは、電極310,320が設けられる圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32が積層される補強板33Eとを有し、当該電極310,320への電圧印加に応じて振動する圧電振動体30Eであって、当該圧電素子31,32と補強板33Eとは、互いに接合材(接着剤B)により接合され、当該圧電振動体30Eの周縁には、圧電素子31,32と補強板33Eとの間と連通する凹部38Eが形成されている。
【0091】
これによれば、位置決め工程S2にて位置決めされた圧電振動体30Eに対して、接合工程S3にて加圧した際に、圧電素子31,32と補強板33Eとの間から接着剤Bが漏出した場合でも、表面張力により、当該接着剤Bを凹部38E内に保持させることができる。このため、当該圧電振動体30Eに当接されるピンP1,P2に、当該接着剤Bが付着することを防ぐことができ、ピンP1,P2と、製造された圧電振動体30Eとの剥離を容易に行うことができる。従って、圧電振動体30E、ひいては、圧電アクチュエータ及び時計の製造を簡略化することができる。
【0092】
ここで、これら補強板33Eと圧電素子31,32との間で生じる剥離は、これらの周縁から生じることが多い。これに対し、圧電振動体30Eの周縁に、圧電素子31,32と補強板33Eとの間と連通し、接着剤溜まりとなる凹部38Eが形成されていることにより、当該圧電素子31,32と補強板33とのそれぞれの周縁における接合強度を向上することができるので、これらの間での剥離を生じにくくすることができる。従って、圧電振動体30Eの劣化を生じにくくすることができるほか、当該圧電振動体30Eの動作信頼性を向上することができる。
【0093】
(7)凹部38Eは、補強板33Eの寸法を圧電素子31,32の寸法に対して小さくすることにより形成されるので、当該凹部38Eを容易に形成することができる。従って、圧電振動体30Eの構成を簡略化しつつ、当該圧電振動体30Eの製造工程を簡略化することができる。
【0094】
図15及び図16は、本実施形態に係る圧電振動体30Eの変形である圧電振動体30Fを示す平面図及び断面図である。
なお、本実施形態では、圧電素子31,32に対して補強板33Eを小さく形成することで、これらが接合された際に接着剤溜まりとなる凹部38Eを形成したが、これに限らず、圧電素子に対して補強板を大きく形成することで凹部を形成してもよい。
例えば、図15及び図16に示す圧電振動体30Fは、圧電素子31,32(図15では、圧電素子32は図示省略)と、当該圧電素子31,32間に介装される補強板33Fとを備え、これらが接合材としての接着剤により互いに接合された構成を有している。
【0095】
補強板33Fは、平面視略長方形状の本体部331Fと、当該本体部331Fに一体的に形成された一対の突出部332及び腕部333とを備える。
本体部331Fは、圧電素子31,32より僅かに大きく形成されている。このため、本体部331Fは、補強板33Fに対する圧電素子31,32の積層方向に対する直交方向に、圧電素子31,32から突出する。この本体部331Fの突出により、圧電振動体30Fには、本体部331Fにおける圧電素子31側及び圧電素子32側に、当該本体部331Fより凹んだ凹部38Fがそれぞれ形成される。
【0096】
このような圧電振動体30Fの製造工程S1〜S3のうち、接合工程S3にて圧電振動体30Fを加圧すると、圧電素子31,32と補強板33Fとの間から余分な接着剤Bが漏出する。しかしながら、図16に示すように、当該余分な接着剤Bは、表面張力により凹部38Fに保持されるため、圧電振動体30Fを位置決めするピンP1,P2に付着しない。
【0097】
以上説明した圧電振動体30Fによれば、前述の効果(6)と同様の効果のほか、以下の効果がある。
(8)凹部38Fは、補強板33Fの本体部331Fを圧電素子31,32より大きく形成することにより形成されるので、当該凹部38Fを容易に形成することができる。従って、圧電振動体30Fの構成を簡略化しつつ、当該圧電振動体30Fの製造工程を簡略化することができる。
【0098】
〔7.第7実施形態〕
次に、本発明に係る第7実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Gは、前述の圧電振動体30Eと同様の構成を備えるが、圧電振動体30Eでは、圧電素子31,32より本体部331Eを小さく形成することで凹部38Eを形成したが、圧電振動体30Gでは、本体部を切り欠くことで凹部を形成する点で、圧電振動体30Gと圧電振動体30Eとは相違する。
【0099】
図17は、本実施形態に係る時計が備える圧電振動体30Gを示す縦断面図である。
本実施形態に係る時計は、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Gを備えるほかは、前述の時計10と同様の構成を備える。
圧電振動体30Gは、図17に示すように、圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32の間に介装される補強板33Gとを備えている。
補強板33Gは、本体部331Gと、当該本体部331Gに一体的に形成される一対の突出部332及び腕部333(ともに図示省略)とを備えている。
【0100】
本体部331Gは、平面視した際の寸法が圧電素子31,32と略同じとなるように形成されている。この本体部331Gにおける圧電素子31,32に対向する各面の周縁には、傾斜部331G1が面押し加工により形成されている。このため、本体部331Gの周縁には、圧電素子31,32と接合された際に、当該圧電素子31,32との間に断面視略三角形状の凹部38Gがそれぞれ形成される。
これら凹部38G内には、前述の製造工程S1〜S3のうち接合工程S3にて、圧電振動体30Gが加圧された際に漏出する余分な接着剤Bが、表面張力により保持される。このため、圧電振動体30Gの外側で、かつ、振動時の節D1,D2に応じた位置に配置されることで圧電振動体30Gを位置決めするピンP1、及び、同じく圧電振動体30Gの外側で、かつ、突出部332近傍に配置されることで圧電振動体30Gを位置決めするピンP2に、接着剤Bが付着しない。
以上説明した本実施形態に係る時計によれば、前述の効果(6)と同様の効果がある。
【0101】
図18から図20は、本実施形態の変形である圧電振動体30H,30I,30Jをそれぞれ示す縦断面図である。
なお、本実施形態では、本体部331Gの周縁に傾斜部331G1を形成して、圧電素子31,32と補強板33Gとを組合せた際に、当該本体部331Gの周縁に凹部38Gを形成したが、当該凹部を他の構成により形成してもよい。
例えば、図18に示す圧電振動体30Hのように、圧電素子31,32と同様の構成を有する圧電素子31H,32Hに傾斜部312,322をダイシング加工により形成し、当該圧電素子31H,32Hと補強板33とを組み合わせることで、接着剤溜まりとなる凹部38Hを形成してもよい。
【0102】
また、図19に示す圧電振動体30Iのように、圧電素子31,32と同様の構成を有する圧電素子31I,32Iにおける補強板33に対向する面の周縁に段差部313,323を形成したり、或いは、図20に示す圧電振動体30Jのように、補強板33Jの本体部331Jにおける圧電素子31,32に対向する面の周縁に段差部331J1を形成したりすることで、余分な接着剤が保持される凹部38I,38Jを形成してもよい。
これら圧電振動体30H〜30Jによっても、前述の圧電振動体30Gと同様の効果がある。
【0103】
〔8.第8実施形態〕
次に、本発明の第8実施形態について説明する。
本実施形態に係る圧電振動体30Kは、前述の圧電振動体30と同様の構成を備えるが、当該圧電振動体30は、漏出した余分な接着剤Bを当該圧電振動体30の側面にて保持していたのに対し、圧電振動体30Kは、当該余分な接着剤Bが、各圧電素子の表面(電極310,320が形成される実装面)に付着しづらくする構成を有している点で、当該圧電振動体30Kと圧電振動体30とは相違する。
【0104】
図21は、本実施形態に係る時計が備える圧電振動体30Kを示す縦断面図である。
本実施形態に係る時計は、圧電振動体30に代えて圧電振動体30Kを備えるほかは、前述の時計10と同様の構成を備えている。
この圧電振動体30Kは、図21に示すように、圧電素子31K,32Kと、これらの間に介装される補強板33とを備えている。
このうち、圧電素子31K,32Kは、圧電素子31,32とそれぞれ同様の構成及び寸法を有するほか、当該圧電素子31K,32Kの表面(補強板33に対向する側とは反対側の面)の周縁には、傾斜部31K1,32K1が面押し加工により形成されている。
【0105】
このような圧電振動体30Kは、前述の製造工程S1〜S3を経て製造される。なお、位置決め工程S2では、前述のように、ピンP1は、圧電振動体30Eの外側で、かつ、当該圧電振動体30Eの振動時の節D1,D2に応じた位置に配置される。また、ピンP2は、同様に、圧電振動体30Eの外側で、かつ、突出部332近傍に配置される。
【0106】
ここで、接合工程S3にて、圧電振動体30Kを治具J2により加圧すると、当該圧電振動体30KとピンP1,P2との隙間で生じる毛細管現象により、当該隙間に余分な接着剤Bが集められ、前述の保持領域34,35(図21では、ともに図示省略)が形成される。この保持領域34,35に保持される接着剤Bは、量が多い場合には、ピンP1,P2に沿って圧電素子31K,32Kの補強板33に対する積層方向に流れてしまう。
しかしながら、圧電素子31K,32Kの表面、すなわち、電極310,320が形成される実装面の周縁に傾斜部31K1,32K1が形成されているので、表面張力により、当該余分な接着剤Bは、傾斜部31K1,32K1に留まって固着される。
【0107】
以上説明した本実施形態に係る圧電振動体30Kによれば、前述の効果(1)〜(3)と同様の効果のほか、以下の効果がある。
(9)前述の特許文献1に記載の製造方法においては、接合材として接着剤を用いて圧電振動体を製造すると、余分な接着剤が圧電素子及び補強板の周縁に漏出する。この際、当該余分な接着剤の量が多い場合には、圧電振動体の周縁及び位置決めピンに沿って当該余分な接着剤が圧電振動体の表面に付着する可能性がある。このような圧電振動体の表面には電極が形成されるので、当該接着剤が圧電振動体の表面に付着すると、電極の形成、及び、圧電振動体の振動に悪影響を及ぼすという問題がある。このため、接着剤が圧電振動体(より詳しくは圧電素子)の表面に付着しづらい構成が要望されてきた。
【0108】
これに対し、本実施形態の圧電振動体30Kは、電極310,320が設けられる圧電素子31K,32Kと、当該圧電素子31K,32Kが積層される補強板33とを有し、当該電極310,320への電圧印加に応じて振動する圧電振動体30Kであって、当該圧電素子31K,32Kと補強板33とは、互いに接合材(接着剤B)により接合され、圧電素子31K,32Kの少なくとも一方における補強板33に対向する面とは反対側の面には、中心から周縁に向かうに従って補強板33に近接する傾斜部31K1,32K1が形成されている。
【0109】
これによれば、圧電素子31K,32Kと補強板33との間から漏出した余分な接着剤Bが、ピンP1,P2に沿って圧電素子31K,32Kの補強板33に対する積層方向に流出した場合でも、表面張力により、当該接着剤Bを傾斜部31K1,32K1に留まらせることができる。従って、電極310,320の実装面に接着剤Bが付着しないので、電極310,320の実装、及び、圧電振動体30Kの振動に対する接着剤Bの影響を確実に低減させることができる。また、このような傾斜部31K1,32K1は面押し加工により形成されるので、圧電素子31K,32Kに簡易に形成することができる。
【0110】
〔9.第9実施形態〕
次に、本発明の第9実施形態について説明する。
前記した第8実施形態では、余分な接着剤Bが圧電素子31K,32Kの表面に付着しないように、当該圧電素子31K,32Kに傾斜部31K1,32K1を形成したが、本実施形態では、治具に凹部を形成することで、圧電素子の表面における電極の形成領域に接着剤が付着しないようにしている点で、本実施形態と第8実施形態とは相違する。
【0111】
図22は、圧電振動体30の製造に用いられる本実施形態に係る治具J2,J3を示す縦断面図である。
本実施形態に係る治具J2,J3は、前述の圧電振動体30を製造する際(具体的には、前述の位置決め工程S2)に用いられる治具である。このうち、治具J2は、治具J3上に載置された圧電振動体30のうち、圧電素子31を加圧して、圧電素子31,32及び補強板33を互いに接合させる。
【0112】
治具J3には、図22に示すように、凹部J31が形成されている。この凹部J31内には、当該凹部J31の端縁から所定の間隔を隔ててピンP1又はピンP2が立設されている。この所定の間隔は、圧電素子32の表面(補強板33に対向する側とは反対側の面)における周縁から、電極320が形成される領域(電極形成領域)までの寸法より短く設定されている。なお、ピンP1は、前述のように、圧電振動体30の外側で、かつ、節D1,D2に応じた位置に配置され、ピンP2は、圧電振動体30Eの外側で、かつ、突出部332近傍に配置される。
【0113】
以上説明した本実施形態に係る圧電振動体及び治具J2,J3より、前述の(1)〜(3)と同様の効果を奏することができるほか、以下の効果を奏することができる。
(10)前述の特許文献1に記載の製造方法においては、接合材として接着剤を用いて圧電振動体を製造すると、前述のように、圧電素子と補強板との間から漏出した余分な接着剤が、電極形成領域に付着する可能性がある。この場合、電極の形成、及び、圧電振動体の振動に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0114】
これに対し、本実施形態に係る治具J2,J3は、電極310,320が設けられる圧電素子31,32と、当該圧電素子31,32が積層される補強板33とを有し、当該電極310,320への電圧印加に応じて振動する圧電振動体30の製造に用いられる治具であって、当該圧電振動体30が載置される第1の治具J3と、載置された圧電振動体30を治具J3に向かって加圧する第2の治具J2とを備え、各治具J2,J3の少なくともいずれか一方には、載置された圧電振動体30の周縁の少なくとも一部に応じた位置に形成された凹部J31を有する。なお、凹部J31は、本実施形態では、治具J3に形成されている。
【0115】
これによれば、余分な接着剤Bが圧電振動体30の側面に沿って流出した場合に、当該接着剤Bが凹部J31内に流れるので、圧電素子32の表面における電極320が形成される領域に付着しにくくすることができる。従って、当該余分な接着剤Bが、電極の形成、及び、圧電振動体の振動に対して悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0116】
また、当該凹部J31内には、ピンP1,P2が立設され、当該ピンP1,P2と凹部J31の端縁とは、当該凹部J31が形成された治具J3に当接する圧電素子32の面(表面)における周縁から、電極320の形成領域までの距離より小さい間隔で離間している。
これによれば、各ピンP1,P2と凹部J31の端縁との距離が、圧電素子32の表面の周縁から電極形成領域に至る距離より短いので、当該周縁に当接するピンP1,P2に沿って流出した余分な接着剤Bが、当該電極形成領域に到達することを防ぐことができる。従って、当該余分な接着剤Bが、電極の形成、及び、圧電振動体の振動に対して悪影響を及ぼすことを確実に抑制することができる。
【0117】
図23は、本実施形態に係る治具J2,J3の変形である治具J1,J4を示す縦断面図である。
なお、図23に示すように、前述の凹部J31と同様の凹部J41を、圧電振動体30を加圧する側の治具J4に形成してもよい。このような場合、治具J4が圧電素子31の表面(補強板33に対向する側とは反対側の面)に当接した際に、当該表面における電極310の形成領域より外側に、凹部J41の開口端が位置していれば、当該形成領域に接着剤が付着することを確実に抑制することができる。
【0118】
〔10.実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、圧電振動体30,30A〜30Kは、電極310,320に対する電圧印加により、縦振動及び屈曲振動を行うとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、縦振動及び屈曲振動のいずれか一方を行うのみでもよい。
また、前記各実施形態では、接合材として接着剤を挙げたが、これに限らず、前述のように、はんだ等の他の接合材を採用してもよい。
【0119】
前記各実施形態では、接合工程S3においては、圧電素子及び補強板を、これらの積層方向に沿って治具により加圧するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、治具上に載置される圧電素子の上方に位置する補強板、及び、当該補強板の上方に位置する圧電素子の自重による自然加圧を行うことで、これら圧電素子及び補強板を互いに接合するようにしてもよい。
【0120】
前記第1及び第2実施形態では、ピンP1を圧電振動体30,30Aの振動時の節D1,D2に応じて、それぞれ配置したが、本発明はこれに限らない。すなわち、これら節D1,D2のいずれかに応じて位置決め部材としてのピンが配置されるのであれば、当該ピンの数は問わない。また、ピンP1のみを用いて圧電振動体を位置決めしてもよく、或いは、ピンP1と、ピンP2,P3とを組み合わせて位置決めしてもよい。
【0121】
また、前記第3実施形態では、圧電振動体30Bの周縁で、かつ、節D1,D2に応じた位置に応じてノズルNZを配置し、当該ノズルNZにより、余分な接着剤Bを吸引するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、圧電振動体の周縁で、かつ、少なくとも1つの節に応じて位置で余分な接着剤を吸引するのであれば、吸引する箇所及びノズルの数は、適宜設定してよい。
【0122】
更に、前記第4実施形態では、節D1,D2に応じた補強板33Cの周縁に、それぞれ突部331C1を形成するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、補強板の周縁で、かつ、少なくともいずれかの節に応じた位置に突部が形成されていれば、当該突部の数及び形状は問わない。
【0123】
前記第5実施形態では、節D1,D2に応じた補強板33Dの周縁に、略半円形状の凹部331D1を形成した。しかしながら、これに限らず、当該節D1,D2の少なくともいずれかに応じた位置に、内側に凹んだ凹部が形成されていればよい。また、凹部の形状も半円形状に限らず、他の形状としてもよい。
【0124】
前記第6実施形態では、圧電素子31,32に対して、本体部331E,331Fを大きく又は小さく形成した。しかしながら、これに限らず、本体部の周縁における節D1,D2の少なくともいずれかに応じた位置が、圧電素子31,32に対して大きく又は小さく形成されていれば、当該本体部の周縁の全てが、圧電素子31,32の側面から突出又は没入していなくてもよい。
【0125】
前記第7実施形態では、圧電素子又は本体部の周縁にわたって、凹部38G〜38Jを形成するとした。しかしながら、これに限らず、本体部の周縁における節D1,D2の少なくともいずれかに応じた位置に凹部が形成されていれば、当該本体部の周縁の全てにわたって凹部が形成されていなくてもよい。
【0126】
前記第8実施形態では、圧電素子31K,32Kの周縁に、傾斜部31K1,32K1を形成することで、漏出した余分な接着剤Bが、圧電素子31K,32Kの表面の電極形成領域に付着しないようにした。しかしながら、これに限らず、傾斜部31K1,32K1に代えて、段差を形成するなどして、当該余分な接着剤Bの接着剤溜まりとなる凹部を形成してもよい。
【0127】
前記第9実施形態では、圧電振動体30の下方に配置され、凹部J31が形成された治具J3と、圧電振動体30の上方に配置され、凹部J41が形成された治具J4とを、それぞれ別に利用していたが、これらを組み合わせて利用してもよい。
また、当該凹部J31,J41の幅寸法は、圧電素子の表面における周縁から電極形成領域に至るまでの距離より短く設定されているとしたが、これに限らず、適宜設定してよい。
【0128】
前記各実施形態では、圧電素子の表面及び裏面に形成された電極は、当該表面の略全面、及び、当該裏面の略全面にそれぞれ形成されていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、圧電素子に形成される電極の構成は、適宜設定することができる。
例えば、圧電素子の表面の電極は、平面中心を中心として4等分に分割された部分電極であってもよい。この場合、一方の対角方向の2つの電極に駆動信号を印加する場合と、他方の対角方向の2つの電極に駆動信号を印加する場合とで選択駆動することにより、突出部332の楕円運動の方向を互いに逆転させることができる。この場合の突出部は、平面視略長方形の本体部331の場合には、当該本体部331の短辺(長手方向に直交する辺)の側面に形成されているが、短辺の幅方向中央部に形成されていてもよく、更には、当該幅方向中央部から長辺側に変位した変位位置に形成されていてもよい。なお、上記部分電極は、4分割以外であってもよく、例えば、5分割であってもよい。
また、前記各実施形態では、圧電振動体の振動形態は、縦振動及び屈曲振動の両者がそれぞれ行われる場合を中心に説明したが、どちらか一方の振動形態、例えば、縦振動を行う場合にも適用できるものである。
【0129】
前記各実施形態では、突出部332,332Aは、圧電振動体を平面視した際の短辺(長手方向に直交する辺)となる側面の長辺寄りの端部に形成されるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、突出部の位置は、当該側面の中央でも、中央から長辺寄りの位置に形成されていてもよく、或いは、長辺となる側面に形成されていてもよい。
なお、突出部が、当該短辺となる側面の幅方向の中央に形成されている場合に、第2の位置決め部材としてのピンP2を用いる場合には、当該ピンP2を、突出部の両側で、かつ、当該突出部から等間隔に配置すれば、当該突出部の両側に、余分な接合材が保持される第2の保持領域を形成することができる。従って、圧電振動体にアンバランスをもたらさずに、所望の振動を維持させることができる。
また、同様に、孔部を有する突出部が当該短辺となる側面の幅方向の中央に形成されている場合に、第3の位置決め部材としてのピンP3を用いる場合には、余分な接合材が保持される第3の保持領域も、突出部の形成位置、すなわち、当該側面の幅方向の中央に形成することができる。従って、圧電振動体にアンバランスをもたらさずに、所望の振動を維持させることができる。
【0130】
前記各実施形態では、圧電振動体30,30A〜30Kのいずれかを備える圧電アクチュエータ20は、時計10に用いられるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、カメラ及びプリンタ等の電子機器に、本発明の圧電振動体及び圧電アクチュエータを適用することも可能である。
また、前記各実施形態に係る圧電振動体30,30A〜30Kで挙げた構成を、1つの圧電振動体に組み合わせて採用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の第1実施形態に係る時計を示す平面図。
【図2】前記実施形態における圧電アクチュエータ及び減速輪列を示す模式図。
【図3】前記実施形態における圧電振動体を示す概要斜視図。
【図4】前記実施形態における圧電振動体の振動時の節を示す図。
【図5】前記実施形態における圧電振動体の製造工程を示すフローチャート。
【図6】前記実施形態における圧電振動体の製造時の状態を示す平面図。
【図7】前記実施形態における圧電振動体の製造時の状態を示す斜視図。
【図8】本発明の第2実施形態に係る圧電振動体の製造時の状態を示す平面図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る圧電振動体の製造工程を示すフローチャート。
【図10】前記実施形態における圧電振動体の製造時の状態を示す平面図。
【図11】本発明の第4実施形態に係る圧電振動体を示す平面図。
【図12】本発明の第5実施形態に係る圧電振動体を示す斜視図。
【図13】本発明の第6実施形態に係る圧電振動体を示す平面図。
【図14】前記実施形態における圧電振動体を示す縦断面図。
【図15】前記実施形態の変形である圧電振動体を示す平面図。
【図16】前記実施形態の変形である圧電振動体を示す縦断面図。
【図17】本発明の第7実施形態に係る圧電振動体を示す縦断面図。
【図18】前記実施形態の変形である圧電振動体を示す縦断面図。
【図19】前記実施形態の変形である圧電振動体を示す縦断面図。
【図20】前記実施形態の変形である圧電振動体を示す縦断面図。
【図21】本発明の第8実施形態に係る圧電振動体を示す縦断面図。
【図22】本発明の第9実施形態に係る治具を示す縦断面図。
【図23】前記実施形態の変形である治具を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0132】
10…時計(電子機器)、20…圧電アクチュエータ、30,30A〜30K…圧電振動体、31,31H,31I,31K,32,32H,32I,32K…圧電素子、33,33A,33C〜33G,33J…補強板、34…保持領域(第1の保持領域)、35…保持領域(第2の保持領域)、36…保持領域(第3の保持領域)、40…ロータ(被駆動体)、310,320…電極、332,332A…突出部、332A1…孔部、331D1…凹部(第1の保持領域)、331D2…凹部(第2の保持領域)、B…接着剤、D1,D2…節、P1…ピン(第1の位置決め部材)、P2…ピン(第2の位置決め部材)、P3…ピン(第3の位置決め部材)、S1…接合材付着工程、S2,S2A…位置決め工程、S3…接合工程、S4…吸引工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体であって、
前記圧電素子と前記補強板とは、互いに接合材により接合され、
当該圧電振動体は、周縁における当該圧電振動体の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置に、他の位置より多くの前記接合材が保持される第1の保持領域を有することを特徴とする圧電振動体。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動体において、
前記圧電素子及び前記補強板は、互いに接合される際に、当該圧電振動体の外側で、かつ、前記節に応じた位置に配置される第1の位置決め部材により位置決めされ、
前記第1の保持領域は、前記第1の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間に形成されることを特徴とする圧電振動体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の圧電振動体において、
前記補強板は、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部を備え、
前記圧電素子及び前記補強板は、互いに接合される際に、当該圧電振動体の外側で、かつ、前記突出部近傍に配置される第2の位置決め部材により位置決めされ、
前記第2の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間には、前記接合材が保持される第2の保持領域が形成されることを特徴とする圧電振動体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずかに記載の圧電振動体において、
前記補強板は、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記圧電素子と前記補強板とが接合される際に、これらを位置決めする第3の位置決め部材が挿通する孔部を有し、
前記第3の位置決め部材と、当該圧電振動体の周縁との間には、前記接合材が保持される第3の保持領域が形成されることを特徴とする圧電振動体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧電振動体と、当該圧電振動体の振動により駆動される被駆動体とを備えることを特徴とする圧電アクチュエータ。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電アクチュエータを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体の製造方法であって、
前記圧電素子及び前記補強板の少なくとも一方における他方に対向する面に、接合材を付着させる接合材付着工程と、
前記圧電振動体の外側で、かつ、前記圧電振動体の振動時の節の少なくともいずれかに応じた位置に第1の位置決め部材を配置して、前記圧電素子及び前記補強板を位置決めする位置決め工程と、
前記圧電素子及び前記補強板を互いに接合させる接合工程と、
を有することを特徴とする圧電振動体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の圧電振動体の製造方法において、
前記位置決め工程では、前記補強板に形成され、かつ、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部近傍に第2の位置決め部材を配置して、前記第1の位置決め部材とともに、前記圧電素子と前記補強板とを位置決めすることを特徴とする圧電振動体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の圧電振動体の製造方法において、
前記位置決め工程では、前記補強板に形成され、かつ、接合される前記圧電素子より外側に突出する突出部が有する孔部に第3の位置決め部材を挿通させて、前記第1の位置決め部材とともに、前記圧電素子と前記補強板とを位置決めすることを特徴とする圧電振動体の製造方法。
【請求項10】
電極が設けられる圧電素子と、当該圧電素子が積層される補強板とを有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体の製造方法であって、
前記圧電素子及び前記補強板の少なくとも一方における他方に対向する面に、接合材を付着させる接合材付着工程と、
前記圧電素子及び前記補強板を前記接合材により接合させる接合工程と、
前記圧電素子及び前記補強板の周縁における当該圧電振動体の振動時の節に応じた位置で、前記接合材を吸引する吸引工程と、を有することを特徴とする圧電振動体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2010−148187(P2010−148187A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320503(P2008−320503)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】