説明

圧電振動子の気密検査装置及び気密検査方法

【課題】圧電振動子の特性異常をファインリーク判定の前に検出し、気密不良品を精度よくリジェクトする。
【解決手段】圧電振動子の気密性を検査する圧電振動子の気密検査方法であって、加圧前に取得された複数の周波数測定値に基づいて、圧電振動子の特性異常の有無を判定する第1の特性異常判定ステップ(S62)と、加圧後に取得された複数の周波数測定値に基づいて、圧電振動子の特性異常の有無を判定する第2の特性異常判定ステップ(S63)と、前記第1の特性異常判定ステップ(S62)及び前記第2の特性異常判定ステップ(S63)においてともに特性異常が無いと判定された場合に、ファインリーク判定ステップ(S64)に進む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子の気密検査装置及び気密検査方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶などの圧電材料を使用した圧電振動子用のパッケージ(以下「パッケージ」という)は、圧電振動子の信頼性を確保する上で内部の気密性が十分に保たれていることが必要であり、圧電振動子の製造工程においてはパッケージの気密検査の工程が必要である。気密検査としては、蓋封止工程などにおいて生ずる大きな穴の気密検査に対応したグロスリーク判定と、小さな穴の気密検査に対応したファインリーク判定とがある。
【0003】
グロスリーク判定の具体的方法としては、例えばパッケージを湯の中に沈めて内部を膨張させ、封止が十分でない場合に膨張した内部空気が封止不完全部分から気泡となって漏れ出るのを目視で確認する方法がある。
【0004】
また、他の従来のグロスリーク判定方法としては、粘性が低く低表面張力、かつ無臭無色透明なフッ素系不活性液体であるフロリナートを用いた具体例がある。所定の容器に検査対象となるパッケージの気密封止が完了した水晶振動子(圧電振動子の具体例)を載置してフロリナートを充填すると、水晶振動子に大きな穴があるとフロリナートがパッケージの内部に侵入する。侵入したフロリナートは、水晶振動子の振動を停止させるよう作用するので、フロリナートに浸した水晶振動子を発振回路に接続して発振特性を確認することにより、水晶振動子のグロスリーク判定が可能となる。
【0005】
そして、ファインリーク判定の方法としては例えばHeリーク検査法がある。Heリーク検査法は、グロスリーク検査の前に行われ、ヘリウムガスが充填された検査容器内でパッケージを加圧して微小穴からパッケージ内にヘリウムガスを圧入し、次いで検査容器内を減圧にしてパッケージからリークされるヘリウムガスを測定することで、微小穴の存在を確認するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−51802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水晶振動子の気密検査方法は次のような問題がある。
【0008】
検査対象となる圧電振動素子をパッケージ内に収容して気密封止が完了した水晶振動子を湯の中に沈める気泡を利用したグロスリーク判定の方法は、気泡を目視により確認する判定方法であり、信頼性に乏しいといった問題がある。
【0009】
また、フロリナートを用いたグロスリーク判定の方法は、フロリナートが環境に悪影響を与える溶液であり、今後廃止される方向であることから、フロリナートをグロスリーク判定に用いることは環境改善のために避けるべきである。
【0010】
そして、Heガスを用いたファインリーク判定の方法は、検査対象となるパッケージの気密封止が完了した水晶振動子を加圧チャンバー内に載置した後、Heガスを吸気して所定の時間加圧させる必要があり、判定に時間がかかる。さらに、Heガスを吸気して所定の時間加圧した水晶振動子を加圧チャンバー内から取り出し、Heガスディテクターのチャンバー内に収容するまでに、水晶振動子のパッケージ内に進入したHeガスが少なからず放出されてしまう可能性があり、判定に誤差を生ずることが考えられる。そして、水晶振動子のパッケージのサイズが小さくなると、水晶振動子のパッケージ内に進入するHeガスが微小となるため、一段と進む水晶振動子の小型化に対応することが難しい。
【0011】
上述したような従来の水晶振動子パッケージの気密検査方法の問題点を解決する手法として、特許文献1により開示された水晶振動子のインピ−ダンスを測定する気密検査方法がある。
【0012】
ところが、近年パッケージのサイズが小型化し、特にファインリークに起因する水晶振動子を含む圧電振動子のインピ−ダンスを高精度に判定するのは困難になってきている。そして、パッケージの気密性に問題がないにもかかわらず、起動直後の発振周波数が安定しない圧電振動子や発振周波数のばらつきが大きい圧電振動子といった特性異常を有する圧電振動子がファインリーク検査異常品と誤判定されてしまう場合が少なからず発生している。
【0013】
本発明の目的は、上記課題に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、起動後の発振周波数が安定しない又は発振周波数のばらつきが大きい(以下、「特性異常」と表す)圧電振動子をファインリーク判定の前に検出し、気密不良品を精度よくリジェクト(除外)することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明は、
圧電振動素子をパッケージ内に収容した圧電振動子の気密性を検査する圧電振動子の気密検査方法であって、前記圧電振動子に発振を開始させてから所定時間経過後に、複数の時刻における前記圧電振動子の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する加圧前測定値取得ステップと、前記圧電振動子を加圧した状態で、複数の時刻における前記圧電振動子の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する加圧後測定値取得ステップと、前記加圧前測定値取得ステップにおいて取得された少なくとも1つの前記周波数測定値及び前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された少なくとも1つの前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する第1の気密性判定ステップと、前記加圧前測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の特性異常の有無を判定する第1の特性異常判定ステップと、前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の特性異常の有無を判定する第2の特性異常判定ステップと、前記第1の特性異常判定ステップ及び前記第2の特性異常判定ステップにおいてともに特性異常が無いと判定された場合には、前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する第2の気密性判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、グロスリーク判定とファインリーク判定だけでなく、起動特性判定や周波数偏差判定も気密検査内で行うことにより、ファインリーク判定における誤判定を防止し、気密不良品を精度よくリジェクトできるとの効果を発揮する。
【0016】
(2)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記第1の気密性判定ステップは、前記加圧前測定値取得ステップで取得された1の前記周波数測定値と前記加圧後測定値取得ステップで取得された1の前記周波数測定値の差分を所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定してもよい。
【0017】
(3)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記第2の気密性判定ステップは、前記加圧後測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値を直線近似し、当該直線の傾きを所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定してもよい。
【0018】
(4)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記第1の特性異常判定ステップは、前記加圧前測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値を直線近似し、当該直線の傾きを所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の特性異常の有無を判定してもよい。
【0019】
(5)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記第2の特性異常判定ステップは、前記加圧後測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値のn階差分(n≧1)の標準偏差の値を所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の特性異常の有無を判定してもよい。
【0020】
(6)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記nは3以上であってもよい。
【0021】
(7)この圧電振動子の気密検査方法は、
前記第1の特性異常判定ステップ又は前記第2の特性異常判定ステップで特性異常が有ると判定された場合に、さらにHeリーク検査によって前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定するステップを含んでもよい。
【0022】
(8)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記加圧後測定値取得ステップは、前記圧電振動子を加圧中の所与の期間に、前記第2の気密性判定ステップで使用される前記周波数測定値と同時に、前記第2の特性異常判定ステップで使用される前記周波数測定値を取得してもよい。
【0023】
(9)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記加圧後測定値取得ステップは、前記第2の気密性判定ステップで使用される前記周波数測定値を取得する前に、前記第2の特性異常判定ステップで使用される前記周波数測定値の取得を開始してもよい。
【0024】
(10)この圧電振動子の気密検査方法において、
前記圧電振動素子は水晶振動素子であって、前記加圧後測定値取得ステップにおいて、前記水晶振動素子に流れる電流が0.5〜1.0mAの範囲になるように制御して前記水晶振動素子を発振させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る圧電振動子の気密検査方法に用いる装置の構成例の図である。
【図2】圧電振動子の位相特性を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る加圧力の変化を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における良品・不良品の発振周波数の変動の例を示す図である。
【図5】本実施形態の圧電振動子の気密検査方法のフローチャートである。
【図6】本実施形態の圧電振動子の気密検査方法のフローチャートである。
【図7】本実施形態の圧電振動子の特性異常判定に用いるパラメーターの測定例を示す図である。
【図8】本実施形態の圧電振動子の特性異常判定に用いるパラメーターの測定例を示す図である。
【図9】本実施形態の圧電振動子の気密検査方法のフローチャートである。
【図10】本実施形態の圧電振動子の気密検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1.気密検査装置)
図1は本実施形態に係る圧電振動子の気密検査方法に用いる装置の構成例の図である。
【0027】
気密検査装置1は圧電振動素子をパッケージ内に収容した圧電振動子2を検査対象とする気密検査装置である。圧電振動素子は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、
タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ほう酸リチウム(Li2B4O7:LBO)等の単結晶材料や、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、ダイヤモンド薄膜等の圧電性薄膜、圧電性セラミックス材料などを用いて製造することができる。本願発明に係る気密検査方法は広く圧電振動子一般を対象とする。しかし、圧電振動子の特性は様々であるため、説明の都合上、以下の実施形態に係る圧電振動子2としてはATカットの水晶振動素子をパッケージ内に収容した水晶振動子を想定する。
【0028】
気密検査装置1は圧電振動子2を内部に収容する気密空所である加圧チャンバー3を有する。加圧チャンバー3内部の気圧は加圧ガスにより適宜加圧される。この加圧ガスはボンベ4に充填されており、加圧ガスとして例えばHeガスが用いられる。ボンベ4と加圧チャンバー3とは配管もしくは他の手段により接続されており、加圧チャンバー3内の吸気開閉弁7を開け加圧ガスを吸気する。また、加圧チャンバー3から加圧ガスを排気するには、加圧チャンバー3内の排気開閉弁8を開けることで行う。ここで、気密検査装置1は、吸気開閉弁7と排気開閉弁8の開閉動作を制御する開閉弁制御回路9を有していてもよい。
【0029】
加圧チャンバー3内には、検査対象の圧電振動子2を発振させるための発振回路を有する治具10が含まれる。治具10には、例えば圧電振動子2を固定し保持する保持治具やその他検査に必要な回路基板等が含まれていてもよい。気密検査装置1は治具10の発振回路により圧電振動子2が発振したときに発振周波数を測定する測定器14を備える。また、気密検査装置1は加圧チャンバー3内の温度を検出する温度センサー11や治具10を介して圧電振動素子を流れる電流が一定となるように制御する定電流制御回路13を含んでもよい。
【0030】
このような構成の気密検査装置1を用いた本実施形態の気密検査方法は、例えば次の手順による。まず、検査対象となる圧電振動子2を、加圧チャンバー3内の発振回路を備えた治具10にセットして発振周波数を測定器14により測定する。次に、吸気開閉弁7を開けてボンベ4の加圧ガスを吸気して、加圧チャンバー3内部を加圧し、一定の気圧となったら加圧後の圧電振動子2の発振周波数も測定器14により測定する。そして、これらの加圧前および加圧後の測定値に基づいて、後述する気密性判定(リーク判定)や特性異常判定を行う。このとき、気密検査の進行に応じて適宜排気開閉弁8によって加圧チャンバー3内部の気圧が調整(減圧)されてもよい。また、発振周波数の測定において、温度センサー11の情報に基づき治具10などによって圧電振動子2の発振周波数に温度補償が加えられていてもよいし、定電流制御回路13を用いて圧電振動子2を流れる電流が一定となるように制御されてもよい。
【0031】
この気密検査において、例えばパッケージ封止に不備があると、圧電振動子2の内部にある圧電振動素子も加圧チェンバー3内の加圧に伴い加圧されて、その電気的特性が変化する。そこで、この性質を利用し、加圧チャンバー3内で治具10を使って圧電振動子2を発振させて測定器14により発振周波数を測定し、例えば加圧前後の発振周波数の変化などから気密性の判別を行ったりしている。
【0032】
図2は圧電振動子の位相特性を示した図である。
【0033】
図2は圧電振動子2の気密性が保たれていないときの位相特性の例であるが、加圧した際に、位相が60degから80deg近辺において周波数が大きく変化している。そこで、本実施形態の気密検査方法はこの性質を利用して、周波数測定により検出の精度を高めることができる。例えば、圧電素子の有するインピーダンス値を測定する方法(特許文献1参照)では、圧電振動子2の気密性が保たれていないときでも加圧前後の圧電素子のインピーダンス値の変化は少ない。そこで、位相が60degから80deg近辺における周波数測定の測定値の変化に基づいて判断すれば検出の精度ないし検査の信頼性は高まると考えられる。本実施形態の気密検査方法では、装置の構成として、例えば圧電振動子2の位相が60degから80degとなるコルピッツ型等の発振回路を治具10に設けておくことで前記位相範囲での周波数測定が可能であり、気密検査の検出精度が向上させることができる。
【0034】
本発明に係る圧電振動子の気密検査方法を実現する装置の形態は気密検査装置1には限らないが、以下の実施形態では気密検査装置1を用いるものとして説明し、以下の記載における気密検査装置の構成要素に付された番号は図1で用いた番号である。また、治具10は前記位相範囲(60degから80deg)での周波数測定が可能な発振回路を備えているものとして説明する。
【0035】
(2.周波数測定の実施形態)
図3は本実施形態における加圧チャンバー3内部の加圧力の変化を示す図である。
【0036】
図3において、加圧力が0の場合加圧チャンバー3内部は加圧ガスにより加圧されていないことを意味する。すなわち、気圧の調整をしていない通常の環境下での検査であれば加圧チャンバー3内部は大気圧のままであることを意味する。加圧力が1[MPa(メガパスカル)]であるとは、吸気開閉弁7を開け加圧ガスを吸気した結果、加圧チャンバー3内部の気圧が加圧ガスの吸気前に比べて1[MPa]加圧されたことを意味する。なお、1[MPa]は例示であり、加圧力の値は気密検査の実施の形態によって適切に選択される。
【0037】
図3において、時刻t1は検査対象である圧電振動子2が発振を開始した「発振開始時刻」を示す。
【0038】
時刻t2は、時刻t1から時間T経過後であり、発振開始時に比べ圧電振動子2の発振が安定する「発振安定時刻」を示す。ここで、Tは検査対象である圧電振動子2の性能(圧電振動子2の発振が安定するのに必要な時間)に依存する。本実施形態ではTを1秒とする。
【0039】
時刻t3は、時刻t2から時間T経過後であり、加圧チャンバー3の加圧を開始する「加圧開始時刻」を示す。ここで、Tは後述する加圧前測定値取得ステップにおいて取得される周波数測定値(以下「加圧前測定値」ともいう)をサンプリングするのに要する時間に依存する。すなわち、Tは必要な加圧前測定値を得るのに十分な時間である。本実施形態ではTを1秒とする。
【0040】
時刻t4は、時刻t3から時間T経過後であり、加圧チャンバー3内部が所定の気圧に達した「所定気圧到達時刻」を示す。ここで、Tは加圧チャンバー3の容積や加圧ガスの吸気性能など気密検査装置1の構成に依存する。本実施形態ではTを1秒とする。
【0041】
時刻t5は、時刻t4から時間T経過後であり、加圧チャンバー3内部の加圧による温度上昇の影響がなくなる「温度安定時刻」を示す。温度の安定とは、例えば加圧チャンバー3内部の温度が加圧前の温度に戻ることをいう。ここで、Tも気密検査装置1の構成に依存する。本実施形態ではTを11秒とする。
【0042】
時刻t6は、時刻t5から時間T経過後であり、周波数測定が完了する「測定完了時刻」を示す。ここで、Tは後述する加圧後測定値取得ステップにおいて取得される周波数測定値(以下「加圧後測定値」ともいう)をサンプリングするのに要する時間に依存する。本実施形態ではTを6秒とする。
【0043】
本実施形態における加圧の状況を図3を用いて説明する。検査対象となる圧電振動子2を、加圧チャンバー3内の発振回路を備えた治具10にセットし、発振開始時刻t1から圧電振動子2は発振を開始する。その2秒後(T+T)の加圧開始時刻t3で吸気開閉弁7を開け加圧チャンバー3内への加圧ガスの吸気が開始される。その1秒後(T)の所定気圧到達時刻t4には加圧チャンバー3内部の圧力が加圧前に比べて1[MPa]上昇し所定の気圧に到達する。そして、加圧チャンバー3内部は前記所定の気圧を保ったまま17秒後(T+T)周波数測定が完了する。
【0044】
図4は本実施形態における良品・不良品の発振周波数の変動の例を示す図である。時刻に付された番号は図3と同じであり説明は省略する。
【0045】
図4の縦軸ΔFは周波数測定値を所定の周波数からの変動量で示したものである。単位はppm(parts per million)であり、その圧電振動子の周波数(以下、「公称周波数」という)に対する測定値の差を、公称周波数に対する割合で示している。例えば10MHzの圧電振動子を用いた場合、測定値が10,000,100Hzであった場合、ΔFは100Hzであり、ppmに換算すると10ppmと表される。
【0046】
図4には良品判定となる場合(A)、ファインリーク判定で不良と判定される場合(B)、グロスリーク判定で不良と判定される場合(C)が示されている。後述するように、良品判定となるのはグロスリーク判定およびファインリーク判定で共に良品判定されたものに限られる。
【0047】
まず、グロスリーク判定で不良と判定されるものは、図4の(C)のように1の加圧後測定値(例えば時刻t5での測定値)と1の加圧前測定値(例えば時刻t2での測定値)の差が大きい。例えば図4ではその差は10ppmである。
【0048】
次に、ファインリーク判定で不良と判定されるものは、図4の(B)のように加圧前後での周波数の差はグロスリーク判定での不良品ほど大きくはない。しかし、加圧後測定値において時間が経つにつれ公称周波数との差が大きくなる傾向がある(時刻t5〜t6)。一方で図4の(A)のように良品は加圧後測定値が時間経過に伴い変化するという傾向は見られない。すなわち、ファインリーク判定は加圧後測定値を直線近似し、その時間経過に対する傾きにより判定することが可能である。
【0049】
しかし、その傾きは非常に小さく、ファインリークが発生していないにもかかわらず、例えば発振周波数の変動量が大きく、発振周波数のばらつきが大きい圧電振動子をファインリーク検査異常品として誤判定してしまう場合がある。そこで、本実施形態では後述する第1および第2の特性異常判定を導入し、起動直後の発振周波数の変動量が大きい圧電振動子や発振周波数のばらつきが大きい圧電振動子といった特性異常を有する圧電振動子をファインリーク判定の前に検出し、気密不良品を精度よくリジェクトする。なお、ここでは、発振周波数の変動量とは起動直後からの発振周波数の変化のことを言い、発振周波数のばらつきとは、発振回路が起動して発振が安定したときの、発振周波数の変化のことを言う。
【0050】
(3.気密検査方法の実施形態)
図5は本実施形態における圧電振動子2の気密検査方法のフローチャートを示す。図5において、S1からS5では本実施形態での操作内容に先に説明した時刻t1〜t6を付して図3、図4と対応づけている。
【0051】
S1は発振開始時刻t1において、検査対象である圧電振動子2の発振を開始することを示す。
【0052】
S2は圧電振動子2の発振が安定する所定の時刻(発振安定時刻t2)まで待つことを示す。
【0053】
S3は発振安定時刻t2から加圧開始時刻t3まで加圧前測定値を取得、すなわち圧電振動子2の発振周波数を測定することを示す。このとき、複数の時刻において圧電振動子2の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する。ここで、S3を加圧前測定値取得ステップとも呼ぶ。
【0054】
S4は加圧開始時刻t3から加圧チャンバー3内部を加圧し始めることを示す。加圧チャンバー3内部が所定の気圧に達すると(所定気圧到達時刻t4)、その後は測定完了時刻t6まで加圧チャンバー3内部は所定の気圧に保たれる。
【0055】
図5のS5は、所定気圧到達時刻t4からではなく、加圧チャンバー3内部の温度が安定した温度安定時刻t5から測定完了時刻t6まで加圧後測定値を取得、すなわち加圧後の圧電振動子2の発振周波数を測定することを示す。
【0056】
ここで、S5は圧電振動子2を加圧した状態で、複数の時刻における圧電振動子2の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する。ここで、S5を加圧後測定値取得ステップとも呼ぶ。
【0057】
S6はS3、S5で取得された圧電振動子2の発振周波数の測定値をもとに気密性判定および特性異常判定を行うステップである(電気式リーク検査)。詳細は図6を用いて説明する。
【0058】
図6(A)は本実施形態における電気式リーク検査のフローである。すなわち、圧電振動素子をパッケージ内に収容した圧電振動子2の気密性を検査する気密検査方法における、データ(圧電振動子2の発振周波数)測定後の良品判定又は不良品判定を行うフローである。
【0059】
本実施形態では、第1の気密性判定ステップS61と第2の気密性判定ステップS64だけでなく、第1の特性異常判定ステップS62と第2の特性異常判定ステップS63を実施することにより特性異常の圧電振動子2を検出し、気密不良品を精度よくリジェクトすることができる。
【0060】
図6(A)のS61は、グロスリーク判定である(図4の(C)参照)。グロスリーク不良品は加圧後の測定値と加圧前の測定値の差が大きい。そこで、加圧後測定値取得ステップにおいて取得される周波数測定値(以下「加圧後測定値」ともいう)の1の測定値(時刻t5での測定値)と、加圧前測定値取得ステップにおいて取得される周波数測定値(以下「加圧前測定値」ともいう)の1の測定値(時刻t2での測定値)の差を計算し、その差分が例えば1ppm未満であれば圧電振動子2はグロスリーク判定基準を満たすとしてステップS62に進む。前記条件を満たさなければ、グロスリーク不良判定S66となる。
【0061】
なお、図6(A)のS61は、加圧前測定値取得ステップ(図5のS3)において取得された少なくとも1つの周波数測定値及び加圧後測定値取得ステップ(図5のS5)において取得された少なくとも1つの周波数測定値に基づいて、圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する「第1の気密性判定ステップ」に対応する。
【0062】
本実施形態では、加圧後測定値から1の測定値を選択しているが複数でもよい。複数の測定値を選択した場合には平均値などの代表値を求めて判定に用いてもよい。加圧前測定値についても同様である。また、時刻t5での測定値は別の加圧後測定値でもよく、時刻t2での測定値は別の加圧前測定値でもよい。また、1ppmは例であり、検査対象である圧電振動子2の特性などから別の数値を用いてもよい。
【0063】
図6(A)のS62は、圧電振動子2の起動直後の特性異常を検出するための起動特性判定である。前述の特性異常に分類される圧電振動子として、起動直後の発振周波数が安定しない圧電振動子がある。これは発振周波数が安定するまでに時間がかかる特性を有するがパッケージのリークによる不良ではない。したがって、この特性異常の圧電振動子がリーク不良判定とされてしまうことは、気密検査としての信頼性を低下させる。また、発振周波数が安定するまでに時間はかかるが、その圧電振動子のスペック、用途からは不良品とまではいえない場合もある。この場合にリーク不良とすることは誤判定であり、その結果、歩留まりが低下してしまう。ステップS62はこのような特性異常不良品を検出する。
【0064】
なお、図6(A)のS62は、加圧前測定値取得ステップにおいて取得された複数の周波数測定値に基づいて、圧電振動子の特性異常の有無を判定する「第1の特性異常判定ステップ」に対応する。
【0065】
起動特性判定では、複数の加圧前測定値の時間的な変化を直線近似し、その傾きの絶対値が例えば5ppb(parts per billion)/s未満であれば圧電振動子2は特性異常(起動特性異常)ではないと判定し、ステップS63に進む。前記条件を満たさなければ、圧電振動子2は特性異常(起動特性異常)であるとして、He(ヘリウム)リーク検査S67に進む。このときHeリーク検査S67に進まずに、起動特性異常として不良品と判定されてもよい。Heリーク検査S67の実施は、特性異常により第2の気密性判定ステップでの信頼できる結果を期待できない場合に、第2の気密性判定ステップの方法とは別のリーク検査を行うことで気密検査としての信頼性を高め、加えてその実施結果に問題がない特性異常品を良品とすることで歩留まりを高めることにある。なお、前記直線近似においては最小二乗法を用いてもよい。
【0066】
Heリーク検査S67は例えば図6(B)のフローチャートのように実施される。Heリーク検査S67は、特性異常の圧電振動子2をHe雰囲気内で加圧し(S671)、その後、真空室内などに圧電振動子2を放置し(S672)、そのHeリーク量を測る(S673)。そのリーク量が例えば1×10−9[Pam/s]未満であれば、Heリーク検査としての良品判定(S674)を行い、1×10−9[Pam/s]以上であれば、Heリーク検査としての不良判定(S674)を行う。
【0067】
ここで、Heリーク検査S67は加圧ステップ(S671)で約2時間放置する必要があり(MIL規格)、検査対象の圧電振動子2の全てに対してHeリーク検査S67を行うと気密検査に時間がかかる。更に、加圧(S671)の後に放置(S672)するチャンバー移動する過程でHeガスが少なからず放出されてしまうことがある。この移動時間は検査対象数が多ければ長くなる。例えばパッケージのサイズが小さい圧電振動子2を検査する場合は、移動中のHeガスの放出の影響を考慮すると、一度に多数の圧電振動子2を検査することは困難である。
【0068】
本実施形態では、特性異常のない圧電振動子2については周波数測定値を用いる第2の気密性判定を行うので、Heリーク検査S67による検査の長時間化などの影響が直接及ぶことはない。すなわち、特性異常を示した圧電振動子2だけに対し、主要な検査ステップ(S61〜S64)から切り離してHeリーク検査S67を行うので、前記の検査時間の長時間化の影響は及ばない。また、Heリーク検査S67の対象である特性異常を示す圧電振動子2は検査対象の一部であるので、前記移動時間中のHeガス放出の問題も生じない。
【0069】
なお、ステップS67としてHeリーク検査以外のファインリーク判定を行ってもよい。
【0070】
図6(A)のS63は、圧電振動子2の発振周波数のばらつきの異常を検出するための周波数偏差判定である。前述の特性異常に分類される圧電振動子として、発振周波数のばらつきが大きい圧電振動子がある。これは、発振周波数の測定値間で差が大きいため時間的な発振周波数の変化があるように見えるが、実際にはパッケージの気密性には問題はないという特性異常である。したがって、この特性異常の圧電振動子がリーク不良判定とされてしまうことは、気密検査としての信頼性を低下させる。また、発振周波数にばらつきは大きいが、その圧電振動子のスペック、用途からは不良品とまではいえない場合もある。この場合にリーク不良とすることは誤判定であり、その結果、歩留まりが低下してしまう。ステップS63はこのような周波数偏差不良品を検出する。
【0071】
なお、図6(A)のS63は、加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の周波数測定値に基づいて、圧電振動子の特性異常の有無を判定する「第2の特性異常判定ステップ」に対応する。
【0072】
本実施形態の周波数偏差判定では、周波数のばらつきを判断するために複数の加圧後測定値の3階差分を計算して、その標準偏差が例えば5ppb(parts per billion)未満であれば圧電振動子2は特性異常(周波数偏差異常)ではないと判定しステップS64に進む。前記条件を満たさなければ、圧電振動子2は特性異常(周波数偏差異常)であるとして、He(ヘリウム)リーク検査S67に進む。このときHeリーク検査S67に進まずに、周波数偏差異常として不良品と判定されてもよい。Heリーク検査S67については、起動特性判定の場合と同じである。なお、S63とS62はともに特性異常の判定であるので判定の順序は入れ替わってもよい。すなわち、周波数偏差判定が起動特性判定より前に行われてもよい。
【0073】
ここで、3階差分の具体的な計算は次の通りである。周波数測定値ΔF(公称周波数との差をppm単位で表記した周波数測定値)を時系列に並べたものを{ΔF1, ΔF2, ΔF3, ΔFm}と表すと、その1階差分は{ΔF2-ΔF1, ΔF3-ΔF2, ΔFm-ΔFm-1}である。つまり、1階差分値はΔF’i=ΔFi+1-ΔFi(i=1,2, m-1)で表される。そして、2階差分値ΔF’’はこの1階差分値を使って計算される。つまり、ΔF’’i=ΔF’i+1-ΔF’i=ΔFi+2-2ΔFi+1+ΔFi(i=1,2, m-2)である。そして、同様に3階差分値はΔF’’’i=ΔF’’i+1-ΔF’’i=ΔFi+3-3ΔFi+2+3ΔFi+1-ΔFi(i=1,2, m-3)である。
【0074】
本実施形態では圧電振動子2として、ATカットの水晶振動素子を用いた水晶振動子を想定する。この水晶振動素子の周波数温度特性は3次曲線を示すので、周波数偏差判定S63において3階差分を用いることで、温度変化の影響を取り除くことができ精度のよい判定を行うことができる。なお、3以上の階の差分をとってもよい。
【0075】
図7は、3つの圧電振動子(全て良品)についての周波数測定値の差分値計算の例を示す。図7(A)の点線で囲まれた部分は、加圧後の周波数測定値ΔFを示す。これには所定気圧到達時刻t4から温度安定時刻t5の期間に測定された周波数測定値が含まれる。図7(A)の通り、温度変化の影響のため、点線で囲まれた部分の周波数測定値ΔFは傾きをもっている。ここで、周波数温度特性は3次曲線を示すことから、3階差分を計算すると図7(B)のように周波数ばらつきのみが残る。そして3階差分の標準偏差をとると図7(C)のように、良品においてはその偏差の値は小さい。
【0076】
この結果から周波数測定値の3階差分を用いることで、周波数偏差判定は温度変化の影響を取り除いた精度のよい判定を行うことができる。
【0077】
ここで、図8は周波数測定値の3階差分の標準偏差F’’’stdevと水晶電流(水晶振動素子に流れる電流)との関係を示す。図8からは、水晶電流が0.5〜1.0mAの範囲にあるときに、標準偏差F’’’stdevが特に小さいことがわかる。したがって、周波数偏差判定ステップ(S63)において周波数測定値の3階差分を用いる本実施形態では、水晶振動素子に流れる電流値を0.5〜1.0mAの範囲である一定値となるように制御することで、さらに判定の精度を高めることができる。具体的な制御方法としては、図1の定電流制御回路13によって圧電振動素子を流れる電流を0.5〜1.0mAの範囲に制御すればよい。
【0078】
図6(A)のS64は、ファインリーク判定である(図4の(B)参照)。ファインリーク不良品は加圧後測定値において時間が経つにつれ公称周波数との差が大きくなる傾向がある。そこで、複数の加圧後測定値の時間的な変化を直線近似し、その傾きが例えば1ppb/s未満であれば圧電振動子2はファインリーク判定基準も満たすので良品判定S65となる。前記条件を満たさなければ、ファインリーク不良判定S68となる。なお、前記直線近似においては最小二乗法を用いてもよい。
【0079】
なお、図6(A)のS64は、第1の特性異常判定ステップ(S62)及び第2の特性異常判定ステップ(S63)においてともに特性異常が無いと判定された場合に、加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の周波数測定値に基づいて、圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する「第2の気密性判定ステップ」に対応する。
【0080】
以上のように、本実施形態のファインリーク判定ステップ(S64)においては、誤判定を生じさせうる特性異常の圧電振動子は既に前のステップ(S62、S63)で検出されているので、気密不良品だけを精度よくリジェクトすることができる。
【0081】
(4.変形例について)
前記の実施形態では、図6(A)の周波数偏差判定ステップ(S63)とファインリーク判定ステップ(S64)は共に複数の加圧後測定値を用いている。このとき、両ステップ(S63とS64)で用いる複数の加圧後測定値が全て同じであれば、加圧後測定値取得ステップ(S5)での発振周波数の測定回数を減らすことができるため望ましい。前述の通り、ファインリーク判定ステップ(S64)では温度変化に伴う変動が判定に影響することを避けるために、温度安定時刻t5以後の発振周波数の測定値を用いる必要がある。よって、この場合、温度安定時刻t5から測定完了時刻t6の期間で周波数測定値を取得すればよい(図5のS5)。
【0082】
このように、周波数偏差判定ステップ(S63)とファインリーク判定ステップ(S64)で使用する加圧後測定値の一部又は全部が共通する場合、圧電振動子2を加圧中の一定の期間(例えば温度安定時刻t5から測定完了時刻t6の期間)において、効率良く加圧後測定値を取得することが可能である。
【0083】
しかし、この場合、周波数偏差判定ステップ(S63)を開始できるのは加圧後測定値の取得が完了する測定完了時刻t6の経過後になる。もし、所定気圧到達時刻t4から温度安定時刻t5までに取得された周波数測定値の一部または全部を用いて周波数偏差判定を行うことができれば、周波数偏差判定に必要な加圧後測定値が測定完了時刻t6より前に揃うので周波数偏差判定ステップ(S63)を早期に開始でき、電気式リーク検査のフロー全体にかかる時間を短縮できる。
【0084】
また、周波数偏差判定ステップ(S63)で必要な加圧後測定値のデータ数が、ファインリーク判定ステップ(S64)で必要な加圧後測定値のデータ数より多い場合にも、所定気圧到達時刻t4から温度安定時刻t5までに取得された周波数測定値の一部または全部を用いて周波数偏差判定を行うことができれば、測定完了時刻t6を早めることができ、気密検査全体にかかる時間を短縮できる。
【0085】
そこで、先の実施形態の変形例として図5に代えて図9のフローチャートを用いる。図9は図5の変形例であり、S5に代えてS15を行っているが、S1〜S4のステップは同じである。このとき対応する電気式リーク検査のフローチャートは図6(A)に代えて図10となる。なお、Heリーク検査については図6(B)と同じである。なお、図9又は図10では、図5又は図6と同じ要素には同じ番号を付してあり説明を省略する。
【0086】
図10のS15は、所定気圧到達時刻t4から測定完了時刻t6まで加圧後測定値を取得することを示す。このとき、所定気圧到達時刻t4から温度安定時刻t5までに測定された圧電振動子2の発振周波数は加圧チャンバー3内部の加圧に伴う温度変化の影響を受けている。したがって、この期間の測定値は、発振周波数の時系列における小さな変化でも影響を受けるファインリーク判定に用いることはできないが、前述の通り周波数測定値の3階差分を用いることで温度変化の影響を取り除くことができる周波数偏差判定には用いることができる。
【0087】
本変形例における図10の周波数偏差判定ステップS163は、所定気圧到達時刻t4から温度安定時刻t5までに取得された加圧後測定値を用いて周波数偏差判定を行う場合を示す。このとき、周波数偏差判定に必要な加圧後測定値が測定完了時刻t6より前のt5に揃うので周波数偏差判定ステップを早期に開始でき、電気式リーク検査のフロー全体にかかる時間を短縮できる。
【0088】
なお、本発明は本実施の形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。また、圧電振動子の例として水晶振動子を用いたが、本発明は他の圧電振動子についても適応可能であり、特性異常の圧電振動子をファインリーク判定の前に検出し、気密不良品を精度よくリジェクトすることができる。
【0089】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0090】
1…気密検査装置、2…水晶振動子(圧電振動子)、3…加圧チャンバー(気密空所)、4…ボンベ、7…吸気開閉弁、8…排気開閉弁、9…開閉弁制御回路、10…治具(発振回路)、11…温度センサー、13…定電流制御回路、14…測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子をパッケージ内に収容した圧電振動子の気密性を検査する圧電振動子の気密検査方法であって、
前記圧電振動子に発振を開始させてから所定時間経過後に、複数の時刻における前記圧電振動子の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する加圧前測定値取得ステップと、
前記圧電振動子を加圧した状態で、複数の時刻における前記圧電振動子の発振周波数を測定し、複数の周波数測定値を取得する加圧後測定値取得ステップと、
前記加圧前測定値取得ステップにおいて取得された少なくとも1つの前記周波数測定値及び前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された少なくとも1つの前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する第1の気密性判定ステップと、
前記加圧前測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の特性異常の有無を判定する第1の特性異常判定ステップと、
前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の特性異常の有無を判定する第2の特性異常判定ステップと、
前記第1の特性異常判定ステップ及び前記第2の特性異常判定ステップにおいてともに特性異常が無いと判定された場合には、前記加圧後測定値取得ステップにおいて取得された複数の前記周波数測定値に基づいて、前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定する第2の気密性判定ステップと、を含むことを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記第1の気密性判定ステップにおいて、
前記加圧前測定値取得ステップで取得された1の前記周波数測定値と前記加圧後測定値取得ステップで取得された1の前記周波数測定値の差分を所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記第2の気密性判定ステップにおいて、
前記加圧後測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値を直線近似し、当該直線の傾きを所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記第1の特性異常判定ステップにおいて、
前記加圧前測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値を直線近似し、当該直線の傾きを所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の特性異常の有無を判定することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記第2の特性異常判定ステップにおいて、
前記加圧後測定値取得ステップで取得された複数の前記周波数測定値のn階差分(n≧1)の標準偏差の値を所定の値と比較し、比較結果に基づいて前記圧電振動子の特性異常の有無を判定することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子の気密検査方法において、
nは3以上であることを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記第1の特性異常判定ステップ又は前記第2の特性異常判定ステップで特性異常が有ると判定された場合に、さらにHeリーク検査によって前記圧電振動子の気密性が保たれているか否かを判定するステップを含むことを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記加圧後測定値取得ステップにおいて、
前記圧電振動子を加圧中の所与の期間に、前記第2の気密性判定ステップで使用される前記周波数測定値と同時に、前記第2の特性異常判定ステップで使用される前記周波数測定値を取得することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記加圧後測定値取得ステップにおいて、
前記第2の気密性判定ステップで使用される前記周波数測定値を取得する前に、前記第2の特性異常判定ステップで使用される前記周波数測定値の取得を開始することを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の圧電振動子の気密検査方法において、
前記圧電振動素子は水晶振動素子であって、
前記加圧後測定値取得ステップにおいて、
前記水晶振動素子に流れる電流が0.5〜1.0mAの範囲になるように制御して前記水晶振動素子を発振させることを特徴とする圧電振動子の気密検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−223643(P2010−223643A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69328(P2009−69328)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】