説明

圧電発振器

【課題】瞬間的な温度変化や風などによる微細な温度変動(揺らぎ)による周波数揺らぎ
を除去する手段を得る。
【解決手段】温度を検出する温度センサ回路6と、温度センサ回路6のセンサ出力に基づ
いて周波数制御を行う周波数制御回路7と、圧電振動子と電圧制御型の可変容量素子とを
含み、周波数制御回路7の出力信号により発振周波数を調整可能な発振回路5と、温度セ
ンサ回路6のセンサ出力に含まれる高域成分電圧信号のみを通過させるハイパスフィルタ
回路8と、を備え、温度センサ回路6は、第1のセンサ出力と、第1のセンサ出力とは温
度と出力電圧との関係が互いに逆特性となる第2のセンサ出力を出力し、第1のセンサ出
力をハイパスフィルタ回路8に入力し、ハイパスフィルタ回路8の出力を第2のセンサ出
力に重畳して、周波数制御回路7に入力するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子を使用した圧電発振器に関し、特に温度補償型圧
電発振器に備えられた温度センサの温度揺らぎによる出力周波数揺らぎを、簡単な付加回
路により低減した圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電発振器は周波数安定度、小型軽量、低価格等により携帯電話等の通信機器か
ら水晶時計のような民生機器まで、多くの分野で用いられている。中でも圧電振動子の周
波数温度特性を補償した温度補償型圧電発振器(TCXO)は、周波数安定度を必要とす
る携帯電話等に広く用いられている。
特許文献1には位相雑音の低減化を図ったIC化TCXOが開示されている。この補償
方式では可変容量素子の非線形な領域を使用することで、補償電圧には線形の電圧を用い
ることが可能となる。
【0003】
図6は、特許文献1に開示された温度補償型圧電発振器の構成を示す回路図であり、温
度補償発振器30は、圧電振動子X、MOS型容量素子及び増幅回路を有するコルピッツ
型水晶発振器31と、温度センサ32と、補償電圧発生回路33と、を備えている。コル
ピッツ型水晶発振器31の圧電振動子Xと接地間に接続される可変容量回路は、低温補償
用のMOS型容量素子MLと高温補償用のMOS型容量素子MHとが、共に同一極性方向
に直列に接続され、更に直流阻止用の容量C13を介して接地されている。そして、低温
補償用容量素子ML、高温補償用容量素子MHには夫々抵抗R14、R15を介して低温
用温度補償電圧VL、高温用補償電圧VHが供給され、容量素子ML、MHの接続点には
抵抗R13を介して基準電圧Vref1が印加されるように構成されている。MOS型容
量素子のゲート電圧と容量との関係の一例は、周知のように図7に示すようなゲート電圧
−容量特性を呈する。
低温制御電圧VLは、25℃以下の範囲では0.5V〜3Vの範囲で一次的に変化し、
且つ25℃以上ではほぼ一定の0.5Vとなるような電圧とする。また高温制御電圧VH
は、25℃以上の範囲では0.5V〜3Vの範囲で一次的に変化し、且つ25℃以下では
ほぼ一定の0.5Vとなるような電圧とする。この補償方式の制御電圧は、低温制御電圧
、高温制御電圧と2つの電圧を必要とするが、温度に対して直線的に変化する線形電圧を
生成すればよく、回路構成が簡素化される。この温度補償方式を用いることにより、温度
に対し、右肩上がりの周波数温度特性を有する圧電振動子の温度補償が、可能になると開
示されている。
【特許文献1】特開2001−60828公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の圧電発振器は、常温近傍の補償感度を殆どゼロに等しく設定してい
るので、使用頻度の高い常温近傍における発振信号のC/N悪化を防止することができる
と開示されている。
しかしながら、温度補償型圧電発振器が小型化され、その熱容量が小さくなると、温度
センサは周囲の瞬間的な温度変化や風などによる温度変動(揺らぎ)に敏感に反応し、温
度補償型圧電発振器の出力周波数が微小に変動する(周波数が揺らぐ)ことになる。この
周波数の揺らぎが圧電発振器の高安定度を必要とする電子装置に、悪影響を及ぼすことが
あるという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、周波数の揺らぎを低減した圧電発
振器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本発明に係る圧電発振器は、温度を検出する温度センサ回路と、該温度セ
ンサ回路のセンサ出力に基づいて出力信号を出力する周波数制御回路と、少なくとも、圧
電振動子と電圧制御型の可変容量素子とを含み、前記周波数制御回路の出力信号により発
振周波数を調整可能な発振回路と、前記温度センサ回路のセンサ出力に含まれる高域成分
電圧信号のみを通過させるハイパスフィルタ回路と、を備え、前記温度センサ回路は、第
1のセンサ出力と、温度変化に対し該第1のセンサ出力とは極性が逆の変化特性を有する
第2のセンサ出力を出力し、前記第1のセンサ出力を前記ハイパスフィルタ回路に入力し
、前記ハイパスフィルタ回路の出力を前記第2のセンサ出力に重畳して、前記周波数制御
回路に入力したことを特徴とする。
【0007】
以上のように温度センサ回路に第1及び第2のセンサ出力を設け、これらの出力が温度
に対し互いに逆特性となるようにすると共に、これらを加算することにより、圧電発振器
の周囲温度に揺らぎが生じた場合でも、揺らぎの高周波成分を互いに相殺するので、出力
周波数に温度揺らぎによる周波数揺らぎのない圧電発振器を構成することができるという
効果がある。
【0008】
[適用例2]また圧電発振器は、前記温度センサ回路は、2つの温度センサ部を含むこ
とを特徴とする適用例1に記載の圧電発振器である。
【0009】
以上のように温度センサ回路に2つの温度センサ部を設けることにより、小型化が可能
であると共に、2つの温度センサ部の出力電圧はほぼ同じ電圧となるので、温度揺らぎに
よる高周波成分を十分に相殺することができるという利点がある。
【0010】
[適用例3]また圧電発振器は、前記温度センサ回路が、1つの温度センサ部と、該温
度センサ部の出力を反転する反転部と、を備えることを特徴とする適用例1に記載の圧電
発振器である。
【0011】
以上のように温度センサ回路が、1つの温度センサ部と、該温度センサ部の出力を反転
する反転部と、を備えることにより、反転部の増幅度を調整することにより、2つの逆相
電圧の電圧値を等しく調整できるので、温度揺らぎによる高周波成分を完全に相殺するこ
とができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施
形態に係る圧電発振器1の構成を示すブロック回路図である。圧電発振器1は、温度を検
出する温度センサ回路6と、該温度センサ回路6のセンサ出力に基づいて周波数制御を行
う周波数制御回路7と、少なくとも、圧電振動子Xと電圧制御型の可変容量素子Mとを含
み、周波数制御回路7の出力信号により発振周波数を調整可能な発振回路5と、温度セン
サ回路6のセンサ出力に含まれる高域成分電圧信号のみを通過させるハイパスフィルタ回
路と、を備えている。
発振回路5は、例えば図6に示すコルピッツ発振回路31がある。コルピッツ発振回路
31は、発振用トランジスタTrのベース−接地間に、負荷容量の一部となるコンデンサ
C11とコンデンサC12との直列回路を接続し、この直列回路の接続中点と発振用トラ
ンジスタTrのエミッタとを接続し、更にエミッタと接地間との間にエミッタ抵抗Reを
接続する。更に、発振用トランジスタTrのベース−接地間に抵抗R21を接続し、ベー
ス−電源Vcc間に抵抗R22を接続し、ベースバイアス回路とする。更に発振用トラン
ジスタTrのベースと圧電振動子Xの一方の端子とを接続し、圧電振動子Xの他方の端子
と、可変容量素子ML、MH及び容量C13の直列回路とを接続し、容量C13の一方の
端子を接地する。可変容量素子ML、MHの接続中点には抵抗R13を介して基準電圧V
ref1を接続する。なお、必要に応じて、電源Vccに容量Cc(パスコン)を、トラ
ンジスタTrの出力には容量Coを接続して発振回路5を構成する。なお、図1の抵抗R
7、R8は、周波数制御回路7の出力を該抵抗R7、R8介して可変容量素子ML、MH
に印加する抵抗である。
【0013】
周波数制御回路7の低温側制御電圧VLは、例えば図8(a)に示すように25℃以下
では0.5V〜3Vの範囲を一次的に変化し、25℃以上では0.5Vを保持する電圧と
する。また、高温側制御電圧VHは、例えば図8(b)に示すように25℃以下では0.
5Vを保持し、25℃以上では0.5V〜3Vの範囲を一次的に変化する電圧とする。周
波数制御回路7は、図8(a)、(b)に示すような制御電圧VL、VHを発生する機能
を有する回路である。
温度センサ回路6は、第1の温度センサ6aと、第2の温度センサ6bを備えており、
第1の温度センサ6aの温度に対する出力電圧特性と、第2の温度センサ6bの温度に対
する出力電圧特性と、は互いに逆特性を有している。
第2の温度センサ6bの出力は直接、周波数制御回路7の入力に接続する。第1の温度
センサ6aの出力は、ハイパスフィルタ回路8に入力され、該ハイパスフィルタ回路の出
力が周波数制御回路7の入力に加えられる。つまり、第2の温度センサ6bの出力に第1
の温度センサ6aの出力の高周波成分が加算され、この加算された電圧が周波数制御回路
7に入力される。
【0014】
図2(a)は、温度センサ回路6及びハイパスフィルタ回路8の一例を示す回路図であ
る。温度センサ回路6の第1の温度センサ6aは、ダイオードD1と抵抗R1とを直列接
続し、抵抗R1の一方の端子に基準電圧Vref2を加え、ダイオードD1の一方の端子
を接地する。第1の温度センサ6aの出力電圧Vs1は、ダイオードD1と抵抗R1との
接続点より得られ、温度t−電圧Vs1特性は、図2(b)に示すように温度の上昇に対
し、出力電圧Vs1が単調に低下する特性となる。また、第2温度センサ6bは、ダイオ
ードD2と抵抗R2とを直列接続し、ダイオードD2の一方の端子に基準電圧Vref2
を加え、抵抗R2の一方の端子を接地する。第2の温度センサ6bの出力電圧Vs2は、
ダイオードD2と抵抗R2との接続点より得られ、温度t−電圧Vs2特性は、図2(c
)に示すように温度の上昇に対し、出力電圧Vs2が単調に上昇する特性となる。
第1の温度センサ6aの温度t−電圧Vs1特性と、第2の温度センサ6bの温度t−
電圧Vs2特性とは逆特性となる。即ち、温度変化に対して第1の温度センサ6aの出力
である第1のセンサ出力と、第2の温度センサ6bの出力である第2のセンサ出力とでは
、極性が逆の変化特性である。そして、本実施形態の場合は、例えば、図2に示すように
第1のセンサ出力の係数は負係数、第2のセンサ出力の係数は正係数であるように温度変
化に対する温度センサ出力の変化特性の係数が逆である。なお、第1及び第2の温度セン
サ6a、6bの回路が、夫々1個のダイオードD1、D2を用いた回路を示したが、夫々
複数来のダイオードを直列接続した回路を用いて構成してもよい。
ハイパスフィルタ回路8の最も簡単な回路は、図2(a)に示すように、直列腕の容量
C1と並列腕の抵抗R3とで構成される回路である。また、OPアンプを使ったハイパス
フィルタ回路も用いられている。なお、ハイパスフィルタ回路8の出力は、接続によるイ
ンピーダンスの影響を避けるべく、容量C2を介して周波数制御回路7の入力に接続する

圧電発振器1の動作を説明する前に、第1の温度センサ6a及びハイパスフィルタ回路
8が無い一般的な温度補償型発振器について考える。第2の温度センサ6bが周囲の瞬間
的な温度変化や風等による微小な温度揺らぎにより、その出力電圧Vs2に揺らぎ(ノイ
ズ)が生じると、該電圧Vs2が周波数制御回路7に入力される。周波数制御回路7の出
力から揺らぎ成分が重畳した制御電圧VL、VHが出力され、この電圧が可変容量素子M
L、MHに印加される。一方、可変容量素子ML、MHの接続中点には抵抗R13を介し
て基準電圧Vref1が供給される。つまり、可変容量素子ML、MHの温度補償電圧(
VL−Vref1)、(Vref1−VH)に温度センサ回路の揺らぎ成分が重畳し、可
変容量素子ML、MHの容量に揺らぎが生じる。そのため、発振回路5の出力周波数に周
波数揺らぎ成分が重畳されることになる。
【0015】
本発明の第1の実施例の圧電発振器1のように、温度tの上昇に応じて出力電圧が増加
する第2の温度センサ6bと、温度tの上昇に応じて出力電圧が減少する第1の温度セン
サ6aと、を用い、第2の温度センサ6bの出力電圧Vs2は直接、周波数制御回路7の
入力に接続する。一方、第1の温度センサ6aの出力電圧Vs1は、ハイパスフィルタ8
に入力され、ハイパスフィルタ8により入力電圧の高周波成分のみが通過し、周波数制御
回路7の入力に加えられる。つまり、第2の温度センサ6bの出力電圧Vs2と、第1の
温度センサ6aの出力電圧Vs1の高周波成分のみとが加算される。第2の温度センサ6
bの出力電圧Vs2に重畳する温度揺らぎによる高周波成分(ノイズ)と、第1の温度セ
ンサ6aの出力電圧Vs1に重畳する温度揺らぎによる高周波成分(ノイズ)とは、互い
に逆相の関係にあるので、両者を加算すると相殺されて除去され、圧電発振器1の出力周
波数に温度揺らぎによる影響、周波数揺らぎは発生しない。
以上のように温度センサ回路に第1及び第2のセンサ出力を設け、これらの出力が温度
に対し互いに逆特性となるようにすると共に、これらを加算することにより、圧電発振器
の周囲温度に揺らぎが生じた場合でも、揺らぎの高周波成分を互いに相殺するので、出力
周波数に温度揺らぎによる周波数揺らぎのない圧電発振器を構成することができるという
効果がある。
また、温度センサ回路に2つの温度センサ部を設けることにより、小型化が可能である
と共に、2つの温度センサ部の出力電圧はほぼ同じ電圧となるので、温度揺らぎによる高
周波成分を十分に相殺することができるという利点がある。
尚、温度揺らぎによる高周波成分とは、上述の相殺機能が無かった場合に、温度揺らぎ
により実質的に起きる圧電振動子Xの周波数変動を温度補償するに必要な温度補償電圧に
対して、当該補償電圧を過剰に変動させようとする温度センサの検出出力に含まれる信号
成分である。
【0016】
図3は、図1に示した圧電発振器1を表面実装型圧電発振器で構成した一例の断面図で
ある。
この図3に示す圧電発振器1は、上面と下面に夫々凹所12、13を備えると共に矩形
環状の底面14に4つの実装端子15を備えた縦断面形状が略H型の絶縁容器(パッケー
ジ)11と、上面側凹所12内に設けた2つの上面側内部パッド16に圧電振動素子X上
の2つの励振電極を夫々電気的に接続した状態で該上面側凹所12を気密封止する金属リ
ッド17と、下面側凹所13の天井面13aに配置され各上面側内部パッド16、及び各
実装端子15と所定の配線パターンにより導通した下面側内部パッド18と、下面側内部
パッド18に実装されるIC部品19と、を備える。
IC部品19は、水晶振動素子X以外の電子回路を集積化したベアチップ部品である。
上面側凹所12を備えた絶縁容器11の上部と、上面側内部パッド16と、水晶振動素
子Xと、金属リッド17は、水晶振動子(圧電振動子)を構成している。即ち、水晶振動
子はセラミック等の絶縁材料からなる絶縁容器11の上面側凹所13内の上面側内側パッ
ド16上に水晶振動素子Xを導電性接着剤(導電性ペースト)20を用いて電気的・機械
的に接続し、絶縁容器11の外璧上面の導体リングに金属リッド17を溶接等によって電
気的・機械的に接続して上面側凹所12内を気密封止した構成である。
このような構成は、圧電発振器1の小型化を達成する為に直接又はポッティング樹脂を
介して外気に曝され易い状態で絶縁容器11に搭載されたIC部品19と、水晶振動素子
Xを気密空間に収容して外気から隔離した構成の圧電振動子とを備えた構造が特徴である

その為、IC部品19に内蔵した温度センサは周囲の瞬間的な温度変化や風などによる
温度変動(揺らぎ)に敏感に反応する一方、水晶振動素子Xはこのような温度変化や揺ら
ぎに対して反応が鈍い。従って、温度変更に対して温度センサと圧電振動素子との間で感
度差が生じ易い構造の一つである。
このような構造であっても本発明を適用すれば、圧電発振器1(温度補償型圧電発振器
)は、温度センサ回路6が圧電発振器1の内部及び周囲温度を感知し、その温度変化を電
圧に変換し、該電圧に基づいて周波数制御回路7が制御電圧を生成する。この制御電圧を
圧電振動子に直列接続された可変容量素子に印加し、圧電振動子の周波数を所定の周波数
に維持するように動作する。制御電圧には温度揺らぎによる高周波成分(ノイズ)は除去
されているので、周波数揺らぎのない圧電発振器が構成できる。
【0017】
図4は、第2の実施例の圧電発振器2の構成を示すブロック回路図である。圧電発振器
2は、温度を検出する温度センサ回路6と、該温度センサ回路6のセンサ出力に基づいて
周波数制御を行う周波数制御回路7と、少なくとも、圧電振動子Xと電圧制御型の可変容
量素子Mとを含み、周波数制御回路7の出力信号により発振周波数を調整可能な発振回路
5と、位相を反転させる反転増幅器と、温度センサ回路6のセンサ出力に含まれる高域成
分電圧信号のみを通過させるハイパスフィルタ回路と、を備えている。
発振回路5と周波数制御回路7とは、第1の実施例で説明したので省略する。
温度センサ回路6の出力は2分割され、一方は直接、周波数制御回路7に接続する。他
方は反転増幅器9に接続し、該反転増幅器9の出力はハイパスフィルタ8の入力に接続し
、ハイパスフィルタ8の出力を周波数制御回路7に接続する。
【0018】
図5(a)は、温度センサ回路6、反転増幅器9及びハイパスフィルタ回路8の一例を
示す回路図である。温度センサ回路6は、ダイオードD1と抵抗R1とを直列接続し、抵
抗R1の一方の端子に基準電圧Vref2を印加し、ダイオードD1の一方の端子を接地
して構成される。温度センサ回路6の出力電圧Vsは、ダイオードD1と抵抗R1との接
続点より得られ、温度t−電圧Vs特性は図5(b)に示すようなに、温度tの増加に対
して出力電圧Vsが減少する特性となる。
反転増幅器9は、例えばオペアンプ10の逆相入力端子に抵抗R4を接続すると共に、
逆相入力端子と出力端子との間に抵抗R5を並列接続し、正相入力端子に基準電圧Vre
f3を印加して構成する。
ハイパスフィルタ回路8は、図2(a)で説明したので省略する。
【0019】
第2の実施例の圧電発振器2は、温度tの上昇に対して出力電圧Vsが減少する温度セ
ンサ回路6の出力を2分し、一方は直接、周波数制御回路7の入力に接続する。他方は、
反転増幅器9の入力に接続し、該反転増幅器9の出力をハイパスフィルタ8の入力に接続
し、該ハイパスフィルタ8の出力を容量C2を介して、周波数制御回路7の入力に接続す
る。温度センサ回路6が周囲の瞬間的な温度変化や風などによる温度変動(揺らぎ)を検
知すると、図5(b)に示す温度センサ回路6の出力電圧Vsに揺らぎ(ノイズ)による
高周波成分が重畳する。高周波成分が重畳した出力電圧Vsが周波数制御回路7に入力さ
れる。一方、揺らぎ(ノイズ)による高周波成分が重畳した出力電圧Vsが反転増幅器9
に入力されると、その電圧Vsが反転されると共に、重畳する高周波成分の位相も反転さ
れて、ハイパスフィルタ8に入力される。ハイパスフィルタ8では高周波成分のみが通過
し、周波数制御回路7に入力される。つまり、揺らぎ(ノイズ)による高周波成分が重畳
した温度センサ回路6の出力電圧Vsと、位相が反転した高周波成分とが、周波数制御回
路7の入力で加算される。そのため、揺らぎ(ノイズ)による高周波成分が除去(キャン
セル)された電圧が、周波数制御回路7に加えられることになる。その結果、圧電発振器
2の出力周波数に温度揺らぎによる影響、周波数揺らぎは発生しない。
以上のように温度センサ回路が、1つの温度センサ部と、該温度センサ部の出力を反転
する反転部と、を備えることにより、反転部の増幅度を調整することにより、2つの逆相
電圧の電圧値を等しく調整できるので、温度揺らぎによる高周波成分を完全に相殺するこ
とができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第1実施例の圧電発振器の構成を示すブロック回路図。
【図2】(a)は温度センサ回路とハイパスフィルタ回路、(b)は第1の温度センサの温度tと出力電圧Vs1との関係を示す図、(c)は第2の温度センサの温度tと出力電圧Vs2との関係を示す図。
【図3】本発明の圧電発振器の構成を示す断面図。
【図4】第2実施例の圧電発振器の構成を示すブロック回路図。
【図5】(a)は温度センサ回路とハイパスフィルタ回路、(b)は温度センサの温度tと出力電圧Vsとの関係を示す図。
【図6】従来の圧電発振器の構成を示す回路図。
【図7】MOS型容量素子のゲート電圧と容量との関係を示す図。
【図8】(a)、(b)は周波数制御回路の出力電圧。
【符号の説明】
【0021】
1、2…圧電発振器、5…発振回路、6…温度センサ回路、6a…第1の温度センサ、6
b…第2の温度センサ、7…周波数制御回路、8…ハイパスフィルタ回路、9…反転増幅
器、D1、D2…ダイオード、R1、R2、R3、R4、R5、R7、R8…抵抗、C1
、C2…容量、11…絶縁容器(パッケージ)、12、13…凹所、14…底面、15…
実装端子、16…上面側内部パッド、17…金属リッド、18…下面側内部パッド、19
…IC部品、20…導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を検出する温度センサ回路と、
該温度センサ回路のセンサ出力に基づいて出力信号を出力する周波数制御回路と、
少なくとも、圧電振動子と電圧制御型の可変容量素子とを含み、前記周波数制御回路の
出力信号により発振周波数を調整可能な発振回路と、
前記温度センサ回路のセンサ出力に含まれる高域成分電圧信号のみを通過させるハイパ
スフィルタ回路と、を備え、
前記温度センサ回路は、第1のセンサ出力と、温度変化に対し該第1のセンサ出力とは
極性が逆の変化特性を有する第2のセンサ出力を出力し、前記第1のセンサ出力を前記ハ
イパスフィルタ回路に入力し、前記ハイパスフィルタ回路の出力を前記第2のセンサ出力
に重畳して、前記周波数制御回路に入力したことを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記温度センサ回路は、2つの温度センサ部を含むことを特徴とする請求項1に記載の
圧電発振器。
【請求項3】
前記温度センサ回路は、1つの温度センサ部と、該温度センサ部の出力を反転する反転
部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−273087(P2009−273087A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124358(P2008−124358)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】