説明

在庫管理方法

【課題】1日のうちで生産品の余剰在庫を極力無くし、適切な在庫管理を行うことができる在庫管理方法を提供する。
【解決手段】自工程情報取得ステップS1及び出荷台数補正ステップS3にて取得した情報に基づいて、当該日の生産品の在庫推移をシュミレーションして、その結果に基づいて、生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の構成部品、例えば、エンジン本体の在庫管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の在庫管理方法では、例えば、エンジン本体の製造工程を自工程として、該エンジン本体を組み込む車両本体の製造工程を後工程とすると、後工程の車両本体の製造工程先へのエンジン本体の最初の出荷便の出荷台数が稼動開始時点に必要なエンジン本体の在庫数として設定されていた。
【0003】
しかしながら、実際には、稼動開始時点に出荷便の出荷時刻が設定されることは稀なケースであり、当該日最初の出荷便までに、エンジン本体を生産する時間があるために前日終了時点でのエンジン本体の必要在庫を低く設定できるが、従来技術では、エンジン本体の必要在庫が多く算出され、結果的に余剰在庫になってしまう。出荷台数が出荷便ごとに異なる場合には、特に不都合が生じるようになる。
【0004】
そこで、余剰在庫を抑制する従来技術として、特許文献1には、出荷要求に対して、需要確実性を輸送時間に基づいて定め、需要確実性の高低により割当順位を定めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−44572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の生産計画立案方法に係る発明では、日や週単位での在庫管理は可能であるが、出荷先や出荷便単位での出荷台数を考慮できていないために、1日のうちで余剰在庫が生じる虞があり、また、欠品がでる可能性もある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、1日のうちで当該生産品の余剰在庫を極力無くし、適切な在庫管理を行うことができる在庫管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の発明は、第1生産品の在庫を管理するための在庫管理方法であって、当該日の前記第1生産品の生産に係る情報と、当該日の前記第1生産品の出荷便の出発時刻及び該出荷便に対する出荷台数に係る情報とを取得する自工程情報取得ステップと、当該日の、前記第1生産品を組み付ける第2生産品の生産に係る情報と、当該日の前記第2生産品の生産計画に対する進度情報とを取得する後工程情報取得ステップと、前記後工程情報取得ステップにて取得した情報に基づいて、前記自工程情報取得ステップで取得した当該日の第1生産品の出荷便に対する出荷台数を補正する出荷台数補正ステップと、前記自工程情報取得ステップ及び前記出荷台数補正ステップにて取得した情報に基づいて、当該日の前記第1生産品の在庫推移をシュミレーションする在庫推移シュミレーションステップと、該在庫推移シュミレーションステップにて取得したシュミレーション結果に基づいて、前記第1生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数を決定する在庫数決定ステップと、を含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、最終的に、自工程情報取得ステップ及び出荷台数補正ステップに基づいて、当該日の第1生産品の在庫推移シュミレーションを取得するので、該シュミレーション結果に基づいて、第1生産品の当該日の稼動開始時点における必要な在庫数を決定することができる。これにより、当該日の第1及び第2生産品の生産の流れにおいて、第1生産品の余剰在庫を極力抑制することが可能になる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載した発明において、前記在庫推移シュミレーションステップにて得たシュミレーション結果をデータとして蓄積して、将来の在庫管理にフィードバックさせることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、在庫推移シュミレーション結果をデータとして蓄積して、将来の生産品の在庫管理にフィードバックさせることで、将来において、決定される在庫数の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1日のうちで当該生産品の余剰在庫を極力無くし、適切な在庫管理を行うことができる在庫管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る在庫管理方法のフロー図である。
【図2】図2は、第1生産品の在庫推移をシュミレーションした図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る在庫管理方法は、第1生産品としてのエンジン本体の製造工程を自工程として、該エンジン本体を組み込む第2生産品としての車両本体の製造工程を後工程とした場合、図1に示すように、自工程情報取得ステップS1と、後工程情報取得ステップS2と、出荷台数補正ステップS3と、在庫推移シュミレーションステップS4と、在庫数決定ステップS5とが備えられる。なお、自工程においては、複数種類の第1生産品が製造され、後工程では、複数種類の第1生産品がそれぞれ組み付けられる第2生産品が製造される。そこで、以下の説明では、1種類の第1生産品に対する本在庫管理方法を説明するが、全種類の第1生産品に対して以下に説明する在庫管理方法が採用される。また、以下の説明で言及している「当該日」とは、第1生産品の在庫管理を行う任意日の稼動開始時刻から稼動終了時刻までを意味する。
【0013】
まず、自工程情報取得ステップS1では、当該日の第1生産品の生産に係る情報と、当該日の第1生産品の出荷便の出発時刻及び該出荷便に対する出荷台数に係る情報とを取得する。
第1生産品の生産に係る情報は、第1生産品の生産順序及び生産条件の情報である。すなわち、生産順序の情報は、複数種類の第1生産品のうち在庫管理の対象となる第1生産品の仕掛開始時間の情報である。また、生産条件の情報は、在庫管理の対象となる第1生産品の製造工程数及び生産タクトタイムの情報である。
当該第1生産品の1出荷便に対する出荷台数に係る情報は、1日に出荷便が数回ある場合においては、1日当りの出荷台数を1日当りの出荷便数で割った値として取得する。例えば、1日の出荷台数が120個で、1日の出荷便数が4回であれば、1出荷便に対する出荷台数は30個として決定される。なお、後工程先が複数ある場合には、後工程先ごとの1出荷便に対する出荷台数の情報と、後工程先ごとの各出荷便の出発時刻の情報が取得される。
【0014】
次に、後工程情報取得ステップS2では、当該日の、第1生産品が組み付られる第2生産品の生産に係る情報と、当該日の第2生産品の生産計画に対する進度情報とを取得する。
第2生産品の生産に係る情報は、第2生産品の生産順序及び生産条件の情報である。すなわち。第2生産品の生産順序の情報は、在庫管理の対象となる第1生産品が組み付けられる第2生産品の仕掛開始時間の情報である。また、生産条件の情報は、在庫管理の対象となる第1生産品が組み付けられる第2生産品の製造工程数及び生産タクトタイムの情報である。
第2生産品の生産計画に対する進度情報は、すなわち、当該日の第2生産品の生産計画に対して例えば50台遅れていれば「−50」として情報を得る。
【0015】
次に、出荷台数補正ステップS3では、後工程情報取得ステップS2にて取得した、第1生産品を組み付ける第2生産品の生産に係る情報と、当該日の第2生産品の生産計画に対する進度情報とに基づいて、自工程情報取得ステップS1で取得した当該日の第1生産品の出荷便に対する出荷台数を補正する。すなわち、第2生産品の当該日の実際の生産進捗に合せるように、第1生産品の出荷便(出荷時刻)に対する出荷台数を設定するようにする。
【0016】
次に、在庫推移シュミレーションステップS4では、自工程情報取得ステップS1及び出荷台数補正ステップS3に基づいて、図2に示すような、当該日の第1生産品の在庫推移をシュミレーションする。
すなわち、当該日の第1生産品の在庫推移に係るシュミレーションは、図2に示すように、当該日の稼動開始時点に任意の初期在庫数Aを設定する。また、後工程先Xへの出荷便数(4回)、出荷時刻(T1、T3、T4、T6)、及び出荷台数補正ステップS3にて決定された各出荷便に対する出荷台数を反映して、また、後工程先Yへの出荷便数(2回)、出荷時刻(T2、T5)及び、出荷台数補正ステップS3にて決定された各出荷便に対する出荷台数を反映する。また、自工程情報取得ステップS1にて取得した第1生産品の生産に係る情報により算出した当該日の第1生産品の生産能力(時間に対する生産数(在庫数)の傾き)を反映させる。
【0017】
次に、在庫数決定ステップS5では、在庫推移シュミレーションステップS4にて取得したシュミレーション結果に基づいて、第1生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数を決定する。
すなわち、図2に示すシュミレーション結果において、稼動開始時点に任意の初期在庫数Aからシミュレーションの最下点Bを差し引いた値が、第1生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数となる。
そして、図2に示す在庫管理フローは、第1生産品が第2生産品に組み込まれる期間の全ての日について行われる。
【0018】
また、在庫推移シュミレーションのデータを蓄積して、該データを将来の在庫管理にフィードバックさせることで、将来において決定される在庫数の精度を向上させることができる。
なお、在庫推移シュミレーションは、第1生産品の当該日の稼動開始時点での必要な在庫数を決定して、当該日の第1及び第2生産品の生産の流れにおいて第1生産品の余剰在庫を極力抑制するものであって、第1生産品の当該日に必要な在庫数と前日までの在庫数との関連性はないものである。
【0019】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る在庫管理方法では、特に、後工程情報取得ステップS2にて取得した情報に基づいて、自工程情報取得ステップS1で取得した当該日の第1生産品の出荷便に対する出荷台数を補正する出荷台数補正ステップS3と、自工程情報取得ステップS1及び出荷台数補正ステップS3にて取得した情報に基づいて、当該日の第1生産品の在庫推移をシュミレーションする在庫推移シュミレーションステップS4と、該在庫推移シュミレーションステップS4にて取得したシュミレーション結果に基づいて、第1生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数を決定する在庫数決定ステップS5とを含む。これにより、当該日の第1及び第2生産品の生産の流れにおいて、第1生産品の余剰在庫を極力抑制することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1生産品の在庫を管理するための在庫管理方法であって、
当該日の前記第1生産品の生産に係る情報と、当該日の前記第1生産品の出荷便の出発時刻及び該出荷便に対する出荷台数に係る情報とを取得する自工程情報取得ステップと、
当該日の、前記第1生産品を組み付ける第2生産品の生産に係る情報と、当該日の前記第2生産品の生産計画に対する進度情報とを取得する後工程情報取得ステップと、
前記後工程情報取得ステップにて取得した情報に基づいて、前記自工程情報取得ステップで取得した当該日の第1生産品の出荷便に対する出荷台数を補正する出荷台数補正ステップと、
前記自工程情報取得ステップ及び前記出荷台数補正ステップにて取得した情報に基づいて、当該日の前記第1生産品の在庫推移をシュミレーションする在庫推移シュミレーションステップと、
該在庫推移シュミレーションステップにて取得したシュミレーション結果に基づいて、前記第1生産品の当該日稼動開始時点における必要な在庫数を決定する在庫数決定ステップと、
を含むことを特徴とする在庫管理方法。
【請求項2】
前記在庫推移シュミレーションステップにて得たシュミレーション結果をデータとして蓄積して、将来の在庫管理にフィードバックさせることを特徴とする請求項1に記載の在庫管理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−208881(P2012−208881A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75708(P2011−75708)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】