説明

地下構造物の構築方法及びこの方法にて構築される地下構造物

【課題】作業のための地上の占有範囲が狭く、敷地の大部分を通常通り使用してこの敷地範囲内の下方に螺旋状の地下構造物を構築することが可能な地下構造物の構築方法及びこの方法にて構築された地下構造物を提供する。
【解決手段】お寺の境内の敷地範囲1内の下方に構築された螺旋状の地下構造物3は、矩形のシールド機5を用いて螺旋状に地盤7を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより構築される。この地下構造物3は、シールド機5を発進させるための発進部9からシールド機5を発進させて、シールド機5により所定の深度Lに達するまでの所定の下り勾配を有する下り斜路部13と、シールド機5により下り斜路部13の終点部Zからシールド機5を到達させるための到達部11に向かって所定の上り勾配を有する上り斜路部15とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド機を用いて螺旋状の地下構造物を構築する地下構造物の構築方法及びこの方法にて構築された地下構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
都心の人口増にともない墓地が不足し、都心の墓地を購入することが困難となっている。そこで、多くの人が郊外の墓地を購入しているが、郊外の墓地にお墓参りに行くことは、都心の自宅から墓地までの往復に時間がかかるうえに、高齢者にとっては身体的負担が大きく、お墓参りが困難となってしまうという問題点があった。そこで、以下に示すように、都心にある寺院の境内や墓苑に平面的に配置されているお墓を立体的に配置する方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンクリート製の地上部建屋とこの建屋に連続するコンクリート製の地下部とからなる霊園が開示されている。これは、地上部建屋に管理人室や参拝者用の休憩室等を設け、地下部の各階に墓地を設けるものである。
【特許文献1】特公平6−89617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の地上部建屋及び地下部を設ける方法では、地下部を構築する際に、寺院の境内や墓苑の敷地内に筒状の山留め壁を設置し、この山留め壁の内部を掘削する工法が用いられ、以下のような問題があった。(1)山留め壁の設置及び山留め壁の内部掘削のための作業が大規模となり工期が長くなるために、コストがかかるという問題点があった。(2)また、山留め壁の設置及び内部の掘削等の際に、重機による騒音が生じるために、参拝者、近隣住民に迷惑がかかるという問題点があった。そして、この騒音のために、昼間しか作業できないという問題点があった。(3)さらに、工事作業範囲として建設予定位置すべての地上用地を占有してしまうという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、作業のための地上の占有範囲が狭く、敷地の大部分を通常通り使用してこの敷地範囲内の下方に螺旋状の地下構造物を構築することが可能な地下構造物の構築方法及びこの方法にて構築された地下構造物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明の地下構造物の構築方法は、シールド機を用いて螺旋状に地盤を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、螺旋状の地下構造物を構築することを特徴とする(第1の発明)。
本発明による地下構造物の構築方法によれば、シールド機にて地下構造物を構築することにより、地下構造物を構築している期間も地上の敷地の大部分を通常通り使用することが可能となる。また、掘削にともなう騒音・振動が発生しないために、昼夜で掘削作業を行うことが可能となる。そして、シールド機が推進すると同時にセグメントが敷設されるために、シールド機の後方では内装作業を並行して行うことが可能となる。したがって、工期を短縮することが可能となる。さらに、地下構造物を構築するための必要断面のみを掘削するために、環境への影響も小さくてすむ。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記螺旋状の地下構造物を所定の敷地範囲内の下方に構築することを特徴とする。
本発明による地下構造物の構築方法によれば、限られた敷地の下方に長距離の地下構造物を構築することが可能となる。そして、この長距離の地下構造物内を利用することにより限られた敷地の効率的な活用が可能となる。
【0008】
第3の発明は、第1又は2の発明において、所定の発進部から前記シールド機を発進させて、前記シールド機により所定の深度に達するまでの下り勾配を有する下り斜路部を構築し、前記シールド機により前記下り斜路部の終点部から地上に向かって上り勾配を有する上り斜路部を構築し、前記シールド機を所定の到達部に到達させることを特徴とする。
本発明による地下構造物の構築方法によれば、下り斜路部及び上り斜路部を構築するために、限られた敷地の下方に長距離の地下構造物を構築することが可能となる。
【0009】
第4の発明は、第3の発明において、前記発進部及び前記到達部は、シールド機の上下寸法よりもやや深い深度以浅の地中又は地上に設けられることを特徴とする。
本発明による発進部及び到達部によれば、発進部及び到達部の深度が浅いために、土留め壁の設置は不要又は簡易な設備でよく、掘削も小型の重機にて掘削することが可能となる。したがって、大規模な土留め壁の構築、大規模な掘削等の作業が不要となり、工期を短縮することが可能となる。
【0010】
第5の発明は、第3又は4の発明において、前記発進部は、前記シールド機が載置され、前記シールド機を下り勾配で発進させるための基台と、前記シールド機の発進時の反力を得るための反力手段とを備えることを特徴とする。
本発明による発進部によれば、基台と反力手段とを設けることにより、シールド機が下り勾配で発進するとともに、発進時の反力を得ることが可能となる。したがって、地上又はシールド機の一部が地上に露出した状態からシールド機を発進させることが可能となるので、大規模な発進立坑及び到達立坑の構築、発進立坑内への支圧壁の構築等が不要となる。
【0011】
第6の発明は、第1又は2の発明において、前記地下構造物の所望の深度に鉛直移動するためのエレベータ及び非常階段を設けることを特徴とする。
本発明による地下構造物の構築方法によれば、エレベータ及び非常階段を設けることにより所望の深度に短時間で容易に移動することが可能となる。
【0012】
第7の発明は、第1又は2の発明において、人が通行するための通路と、前記地下構造物内を照らすための照明と、前記地下構造物内の空調のための空調機と、前記地下構造物内の水を排水するための排水路と、該排水路からの水を貯留するためのタンクと、該タンク内の水を地上に排出するための排水装置とを設け、人が前記地下構造物内を往来可能であることを特徴とする。
本発明による地下構造物の構築方法によれば、地下構造物内が人にとって快適な空間となるために、人が地下構造物内を好んで利用するようになる。そして、この地下構造物を人が利用することにより敷地の効率的な活用が可能となる。
【0013】
第8の発明は、第7の発明において、前記排水装置は、前記タンク内の水を地上に揚水するための揚水ポンプと、前記地下構造物の所定の深度に鉛直移動するためのエレベータのシャフト内に設置され、該排水ポンプから送水される水を地上に送給するための排水管とを備えることを特徴とする。
本発明による排水装置によれば、エレベータのシャフト内に排水管を設置することにより新に排水管を設置するための立孔を設ける必要がない。
【0014】
第9の発明の地下構造物は、シールド機を用いて螺旋状に地盤を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、螺旋状に構築されることを特徴とする。
【0015】
第10の発明は、第9の発明において、前記地下構造物は、所定の敷地範囲内の下方に構築されることを特徴とする。
【0016】
第11の発明は、第9又は10の発明において、所定の発進部から前記シールド機を発進させて、前記シールド機により構築され、所定の深度に達するまでの下り勾配を有する下り斜路部と、前記シールド機により構築され、前記下り斜路部の終点部から所定の到達部に到達するまでの上り勾配を有する上り斜路部とから構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、本発明の地下構造物の構築方法によれば、敷地の大部分を通常通り使用して、この敷地範囲内の下方に長距離の地下構造物を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、発明の理解の便宜上、構築された地下構造物内を墓地として利用する方法について説明するが、本発明の適用対象は墓地に限定されるものではなく、例えば、博物館、美術館、ギャラリー等の多くの人が利用可能な空間として一般に広く適用が可能である。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態に係る螺旋状の地下構造物を示す平面図、図2は、本発明の第一実施形態に係る螺旋状の地下構造物を示す断面図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、お寺の境内の敷地範囲1内の下方に構築された螺旋状の地下構造物3は、矩形断面を有するシールド機5を用いて螺旋状に地盤7を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを組み立てることにより構築される。この地下構造物3は、シールド機5により構築され、所定の深度Lに達するまでの所定の下り勾配を有する下り斜路部13と、シールド機5により構築され、下り斜路部13の終点部Zから地上に向かって所定の上り勾配を有する上り斜路部15とから構成される。
【0021】
これらの上り斜路部15、下り斜路部13の所望の深度位置に直接移動するためのエレベータ17及び非常階段19が設置される。
また、地下構造物3の下方に設置され、排水路からの水を貯留するための貯水タンク21と、この貯水タンク21内の水を地上に排出するための排水装置23とが設置される。排水装置23は、貯水タンク21内の水を地上に揚水するための揚水ポンプ25と、エレベータ17のシャフト内に設置され、この揚水ポンプ25から送水される水を地上に送給するための排水管27とを備える。
【0022】
図3は、本実施形態に係るシールド機5の正面図、図4は、本実施形態に係るシールド機5の断面図である。
【0023】
図3及び図4に示すように、シールド機5は、進行方向前部で切羽の掘削を行うフード31と、後部で覆工を行うテール部33と、フード31及びテール部33を結ぶとともに推進設備等を内方に装備するガーダー部35とから構成され、外部から作用する荷重に対し前述した各部を保護するための矩形筒状の鋼殻からなるスキンプレートとを備える。このスキンプレートの内側に近接して、等間隔にシールドジャッキ39が設けられ、セグメント全周に均等に推進荷重が作用するように環状に設置される。
【0024】
シールド機5は、シールド機5本体を推進させるシールドジャッキ39と、シールド機5の前面側に矩形領域を掘削するように挙動するとともに、側面に向けて直線状又は弧を描きつつ水平方向にシフト可能であり、先端部にカッター刃43を有するカッターヘッド41と、カッターヘッド41を駆動するための駆動源45と、駆動源45の駆動力をカッターヘッド41に伝達する動力伝達機構47と、ガーダー部35とテール部33との間に設けられて、ガーダー部35のテール部33に対する上下方向及び左右方向への相対的な屈曲角度を所定の値に設定する中折れジャッキ49と、セグメント60を組み立てるためのセグメント組立装置51と、掘削した土砂を排出するための排出装置53とを備える。
【0025】
以下に、上述したシールド機5にて螺旋状の地下構造物3を構築する方法について、地下構造物3の掘削手順に従って説明する。
【0026】
図5は、本実施形態に係るシールド機5を発進部9に設置した状態を示す側断面図である。図5に示すように、地盤7をシールド機5の高さよりやや深くなるように掘削し、シールド機5を発進させるための発進部9を設ける。この発進部9は、周囲を掘削法面55にて囲まれており、この掘削法面55の内側には、シールド機5を所定の下り勾配で発進させるための基台57と、シールド機5の発進時の反力を得るための反力手段59とが設置される。なお、必要に応じて掘削法面55の内側に土留め壁を設けてもよい。
反力手段59は、複数の鋼材を組み合わせて構成した架台で、発進部9の地盤上にコンクリート製の基台57を介して設置される。
【0027】
図6は、本実施形態に係るシールド機5にて地下構造物3を構築する状態を示す平面図である。図6に示すように、シールド機5にて地盤7を掘削する際の工事作業範囲63の広さは、本実施形態においては、例えば、1000m程度である。工事作業範囲63内には、トレーラー61にて運搬されたセグメント60を仮置きしたり、掘削した土砂等を地上に搬出するためのクレーン65等が設置される。
【0028】
図7は、本実施形態に係る地下構造物3を示す平面図である。図7に示すように、下り斜路部13と上り斜路部15とは平面的に、水平方向に並列となるように構築され、上り斜路部15、下り斜路部13にそれぞれエレベータ17及び非常階段19が設置される。そして、エレベータ17、非常階段19はそれぞれの斜路部の対角位置に設置される。
【0029】
次に、シールド機5による下り斜路部13の構築方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る下り斜路部13の展開図である。図8に示すように、シールド機5を発進部9内の基台57に載置し、シールドジャッキ39を伸長してセグメント60に当接させ、このシールドジャッキ39がセグメント60を介して架台にて支持されることにより、シールド機5の推進時の反力が得られ、シールド機5が発進する。発進と同時にカッターヘッド41を回転駆動させてカッターヘッド41のカッター刃43により地盤7の掘削を開始する。
【0030】
図9(a)、(b)、(c)、(d)、(e)は、それぞれ図7のA−A’断面図、B−B’断面図、C−C’断面図、D−D’断面図、E−E’断面図である。
【0031】
図9(a)〜(e)に示すように、シールド機5は下り用の所定の曲率半径で、かつ所定の下り勾配にて螺旋状に地盤7を掘削する。掘削した部分には直ちにセグメントが組み立てられて、螺旋状の下り斜路部13が構築される。下り斜路部13は順番にa1、b1、c1、d1、e1、a2、b2、c2〜a4、b4、c4、d4、e4、a5と深度方向に積層されるように構築される。本実施形態においては、下り用の所定の曲率半径(中心から外周まで)は約25m、所定の下り勾配は約2.4%とした。
【0032】
シールド機5が所定の深度L位置(図9(a)のa5)に到達すると、上り斜路部15が下り斜路部13に対して平面的に水平方向に隣接するように、シールド機5を内方に向かって推進させる(図7の点線にて示す)。そして、シールド機5が下り斜路部13の終点部Z(図9(c)のc5)に到達すると、地上に向かって所定の上り勾配を有する上り斜路部15の掘削を開始する。
【0033】
次に、シールド機5による上り斜路部15の構築方法について説明する。
図10は、本実施形態に係る上り斜路部15の展開図である。図10に示すように、地盤7をシールド機5の高さよりやや深くなるように掘削し、シールド機5を到達させるための到達部11を設ける。到達部11は、発進部9と同様に、周囲を掘削法面55にて囲まれている。なお、必要に応じて掘削法面55の内側に土留め壁を設けてもよい。
【0034】
そして、終点部Zから到達部11に向かってシールド機5にて上り用の所定の曲率半径で、かつ所定の上り勾配にて螺旋状に地盤7を掘削する。掘削した部分には、下り斜路部13と同様に、直ちにセグメントが組み立てられて、螺旋状の上り斜路部15が構築される。上り斜路部15は、図9(a)〜(e)に示すように、順番にc5、d5、e5、a6、b6、c6、d6、e6〜a8、b8、c8、d8、e8、a9と地上方向に積層されるように構築される。本実施形態においては、上り用の所定の曲率半径(中心から外周まで)は約17.5m、所定の上り勾配は約2.9%とした。
そして、所定の深度T位置(図9(a)のa9)まで上り斜路部15を構築したシールド機5を到達部11に到達させる。到達部11に到達したシールド機5は敷地範囲1外に搬出される。
【0035】
図11は、本実施形態に係る地下構造物3の横断面図、図12は、本実施形態に係る地下構造物3の縦断面図である。
【0036】
図11及び図12に示すように、地下構造物3内には、人が通行するための通路67と、地下構造物3内を照らすための照明69と、温度調整及び空気浄化のための空調機71と、水を排水するための排水路73とが設けられ、人が地下構造物3内を快適に往来可能である。本実施形態において地下構造物3は、例えば、高さ2.7m、幅3.0mとした。
【0037】
そして、床に区画を設けて墓地75を形成して各墓地75に墓石76を設置し、この墓石76の周囲に香炉等の付属品を設置する。お墓参りにきた人は地上に設けられた入口からエレベータ17で地下構造物3内の所望の階に移動し、そこからは通路67を歩いて所望のお墓へ行く。お墓には線香やお花をお供えするために、所定の箇所に消火設備77、水汲み場79が設けられる。
【0038】
以上説明した本実施形態における地下構造物3の構築方法によれば、シールド機5にて地下構造物3を構築することにより、地下構造物3を構築している期間も地上の敷地範囲1の大部分を通常通り使用することが可能となる。また、掘削にともなう騒音・振動が発生しないために、昼夜で掘削作業を行うことが可能となる。そして、シールド機5が推進すると同時にセグメントが敷設されるために、シールド機5の後方では内装作業を並行して行うことが可能となる。したがって、工期を短縮することが可能となる。さらに、限られた敷地範囲1の下方に、螺旋状の下り斜路部13及び上り斜路部15を構築するために長距離の地下構造物3を構築することが可能となる。そして、地下構造物3を構築するための必要断面のみを掘削するために、環境への影響も小さくてすむ。
【0039】
また、発進部9に基台57と反力手段59とを設けることにより、シールド機5が所定の勾配で発進するとともに、発進時の反力を得ることが可能となる。したがって、地上又はシールド機の一部が地上に露出した状態からシールド機5を発進させることが可能となるので、大規模な発進立坑及び到達立坑の構築、発進立坑内への支圧壁の構築等が不要となる。そして、発進部9及び到達部11の深度が浅いために、土留め壁の設置は不要又は簡易な設備でよく、掘削も小型の重機にて掘削することが可能となり、大規模な土留め壁の構築、大規模な掘削等の作業が不要となる。
【0040】
また、エレベータ17のシャフト内に排水管27を設置することにより新に排水管27を設置するための立孔を設ける必要がない。
そして、本実施形態における地下構造物3の構築方法によれば、エレベータ17及び非常階段19を設けることにより所望の深度に短時間で容易に移動することが可能となる。また、地下構造物3内が人にとって快適な空間となるために、人が地下構造物3内を好んで利用するようになる。そして、この地下構造物3を人が利用することにより限られた敷地の効率的な活用が可能となる。
【0041】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。下記に示す説明において、第一実施形態と同様の構成を用いたものと対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0042】
図13は、本発明の第二実施形態に係る地下構造物81の横断面図、図14は、本発明の第二実施形態に係る地下構造物81の斜視断面図である。
図13及び図14に示すように、第一実施形態にて説明した地下構造物3内の片側のみに墓地75を設けるだけでなく、左右両側に墓地75を設けたものである。地下構造物81内の左右両側に墓地75を設けるために、本実施形態において地下構造物81は、例えば、高さ4.0m、幅3.2mとした。
【0043】
以上説明した本実施形態における地下構造物81の構築方法によれば、地下構造物81内が人にとって快適な空間となるために、人が地下構造物81内を好んで利用するようになる。そして、この地下構造物81を人が利用することにより限られた敷地の効率的な活用が可能となる。
【0044】
なお、上述したすべての実施形態において、矩形断面を有するシールド機5を用いた地下構造物3、81の構築方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、円形断面等の様々なシールド機5について広く適用可能である。
【0045】
なお、上述したすべての実施形態において、下り斜路部13を外周側に、上り斜路部15を内周側に設ける螺旋状の地下構造物3、81について説明したが、これに限定されるものではなく、下り斜路部13を内周側に、上り斜路部15を外周側に設けてもよく、また、下り斜路部13、上り斜路部15を上下に隣合うように配置した2重螺旋状としてもよい。
【0046】
そして、上述したすべての実施形態において、シールド機5の発進部9を地中に設ける方法について説明したが、これに限定されるものではなく、発進部9を地上に設け、シールド機5を地上から発進させてもよい。
【0047】
また、上述したすべての実施形態において、シールド機5の到達部11を地中に設ける方法について説明したが、これに限定されるものではなく、到達部11を地上に設け、シールド機5を地上に到達させてもよい。
【0048】
さらに、上述したすべての実施形態において、発進部9、到達部11を共に地中に設ける方法について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、発進部9を地上、到達部11を地中に別々に設けてもよい。ただし、上述したすべての実施形態のように、発進部9又は到達部11を地中に設けてシールド機5を地中から発進させた方が、発進部9又は到達部11を地上に設けてシールド機5を地上から発進させるよりもアプローチ部が短くなるために、工事作業範囲の占有面積が小さくなる。
【0049】
そして、上述したすべての実施形態において、地下構造物3、81内を墓地75として使用する方法について説明したが、これに限定されるものではなく、地下構造物3、81内は温度の季節変動及び日変動が小さく、湿度が高いことを利用して、例えば、酒類の貯蔵場所、野菜等の栽培場所として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第一実施形態に係る螺旋状の地下構造物を示す平面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る螺旋状の地下構造物を示す断面図である。
【図3】本実施形態に係るシールド機の正面図である。
【図4】本実施形態に係るシールド機の断面図である。
【図5】本実施形態に係るシールド機を発進部に設置した状態を示す側断面図である。
【図6】本実施形態に係るシールド機にて地下構造物を構築する状態を示す平面図である。
【図7】本実施形態に係る地下構造物示す平面図である。
【図8】本実施形態に係る下り斜路部の展開図である。
【図9】図7のA−A’断面、B−B’断面、C−C’断面、D−D’断面、E−E’断面を示す図である。
【図10】本実施形態に係る上り斜路部の展開図である。
【図11】本実施形態に係る地下構造物の横断面図である。
【図12】本実施形態に係る地下構造物の縦断面図である。
【図13】本発明の第二実施形態に係る地下構造物の横断面図である。
【図14】本発明の第二実施形態に係る地下構造物の斜視断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 敷地範囲 3、81 地下構造物
5 シールド機 7 地盤
9 発進部 11 到達部
13 下り斜路部 15 上り斜路部
17 エレベータ 19 非常階段
21 貯水タンク 23 排水装置
25 揚水ポンプ 27 排水管
31 フード部 33 テール部
35 ガーダー部 39 シールドジャッキ
41 カッターヘッド 43 カッター刃
45 駆動源 47 動力伝達機構
49 中折れジャッキ 51 セグメント組立装置
53 排出装置 55 掘削法面
57 基台 59 反力手段
60 セグメント 61 トレーラー
63 工事作業範囲 65 クレーン
67 通路 69 照明
71 空調機 73 排水路
75 墓地 76 墓石
77 消火設備 79 水汲み場
L 所定の深度 T 所定の深度
Z 終点部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド機を用いて螺旋状に地盤を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、螺旋状の地下構造物を構築することを特徴とする地下構造物の構築方法。
【請求項2】
前記螺旋状の地下構造物を所定の敷地範囲内の下方に構築することを特徴とする請求項1に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項3】
所定の発進部から前記シールド機を発進させて、前記シールド機により所定の深度に達するまでの下り勾配を有する下り斜路部を構築し、
前記シールド機により前記下り斜路部の終点部から地上に向かって上り勾配を有する上り斜路部を構築し、前記シールド機を所定の到達部に到達させることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項4】
前記発進部及び前記到達部は、シールド機の上下寸法よりもやや深い深度以浅の地中又は地上に設けられることを特徴とする請求項3に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項5】
前記発進部は、前記シールド機が載置され、前記シールド機を下り勾配で発進させるための基台と、前記シールド機の発進時の反力を得るための反力手段とを備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項6】
前記地下構造物の所望の深度に鉛直移動するためのエレベータ及び非常階段を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項7】
人が通行するための通路と、前記地下構造物内を照らすための照明と、前記地下構造物内の空調のための空調機と、前記地下構造物内の水を排水するための排水路と、該排水路からの水を貯留するためのタンクと、該タンク内の水を地上に排出するための排水装置とを設け、人が前記地下構造物内を往来可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項8】
前記排水装置は、前記タンク内の水を地上に揚水するための揚水ポンプと、前記地下構造物の所定の深度に鉛直移動するためのエレベータのシャフト内に設置され、該排水ポンプから送水される水を地上に送給するための排水管とを備えることを特徴とする請求項7に記載の地下構造物の構築方法。
【請求項9】
シールド機を用いて螺旋状に地盤を掘進するとともに、掘削した部分に順次セグメントを敷設することにより、螺旋状に構築されることを特徴とする地下構造物。
【請求項10】
前記地下構造物は、所定の敷地範囲内の下方に構築されることを特徴とする請求項9に記載の地下構造物。
【請求項11】
所定の発進部から前記シールド機を発進させて、前記シールド機により構築され、所定の深度に達するまでの下り勾配を有する下り斜路部と、
前記シールド機により構築され、前記下り斜路部の終点部から所定の到達部に到達するまでの上り勾配を有する上り斜路部とから構成されることを特徴とする請求項9又は10に記載の地下構造物。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図2】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−177425(P2007−177425A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374762(P2005−374762)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】