説明

地中におけるコンクリート構造物の接地構造及び方法

【課題】接地工事が容易で、コストダウンが可能な地中におけるコンクリート構造物の接地構造及び方法の提供を課題とする。
【解決手段】鉄筋47a,47bを有し地中に埋設されたセグメント(コンクリート構造物)45の内部空間に配置された電気設備44を接地するものである。セグメント45のコンクリーaトに接触し、且つ地盤42内に挿入されない位置に配置された接地電極部材43を備え、接地電極部材43の露出部43aに電気設備44の接地端子44aが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルなど地中の鉄筋コンクリート構造物、鉄骨コンクリート構造物又は鉄筋鉄骨コンクリート構造物に適用して好適な地中におけるコンクリート構造物の接地構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、接地は、電気設備に発生する異常電流を例えば銅などの接地電極部材を介して大地に流すことにより、感電、火災、機器損傷を防止している。接地電極部材は、固有の大地抵抗を有する土壌に対して、許容接地抵抗を確保できる表面積を有している。
【0003】
従来、図30に示すように、例えばシールドトンネル100内で送電線101の接続工事を行う場合、シールドトンネル100の内部空間102よりボーリングにより、セグメント103及び地山104を掘削して穴を設け、この穴内に接地用の棒状の接地電極部材105を挿入し、この接地電極部材105と送電線101とを接地線106で接続していた(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【特許文献1】特開昭57−115783号公報
【特許文献2】特開平9−28190号公報
【特許文献3】特開平10−2038号公報
【特許文献4】特開2005−56594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシールドトンネルにおける電気設備の接地技術は、シールドトンネルの深層化に伴い、地山の硬質化や高水圧化により、設置工事施工箇所の環境が悪化し、また、接地施工専業業者の減少などにより、接地工事費が高騰しているという問題があった。
【0005】
このような問題は、シールドトンネル内で電気設備を使用する場合に限らず、開削トンネルや各種の地中におけるコンクリート構造物内で電気設備を使用する場合にも同様に発生する。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、接地工事が容易で、コストダウンが可能な地中におけるコンクリート構造物の接地構造及び方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、
鉄筋又は鉄骨の一方又は両方を有し、地中に埋設されたコンクリート構造物の内部空間に配置された電気設備を接地する接地構造であって、
前記コンクリート構造物のコンクリートに接触し、且つ地盤に挿入されない位置に配置された接地電極部材を備え、
前記接地電極部材に、前記電気設備の接地端子を接続することを特徴とする。
【0008】
本発明では、接地電極部材を地盤内に埋設する必要がないので、施工工事が容易になる。また、接地電極部材が鉄筋に接触していないので、鉄筋が電食によって損傷するのを抑制できる。
【0009】
ここで、前記コンクリート構造物と地盤との間に、裏込め材が設けられている構成にできる。この場合は、裏込め材の特性により、接地抵抗が更に小さくなる。
【0010】
また、前記接地電極部材の一部が、前記コンクリート内に埋設されている構成にできる。
【0011】
また、前記接地電極部材は平板状に形成され、前記コンクリートの内部空間側の表面に設けられている構成にできる。
【0012】
また、前記コンクリート構造物は、シールドトンネル又は開削トンネルを例示できる。
また、前記コンクリート構造物の内部空間側の表面に穴が設けられ、前記接地電極部材が前記穴内に挿入されている構成にできる。
【0013】
また、前記穴内における前記接地電極部材の周囲に、接地低減充填材が充填されている構成にできる。
【0014】
また、前記接地電極部材は、前記コンクリートを貫通し、又は貫通していない構成にできる。
【0015】
また、前記コンクリートが地下水を吸収し、前記コンクリート構造物の抵抗率が1〜150Ω・mであることが好ましい。
【0016】
また、前記コンクリート構造物の抵抗率が25Ω・m以下であることが更に好ましい。この場合は、経年変化による接地抵抗の増大の影響を抑制できる。
【0017】
また、前記コンクリート構造物は前記シールドトンネルのセグメントであり、前記接地電極部材は、前記セグメントの籠鉄筋における鉄筋の間に配置されている構成にできる。
【0018】
また、前記接地電極部材は、前記セグメントのローリングを防止するために設けられた立金物取付用アンカーを例示できる。
【0019】
また、前記接地電極部材は、前記内部空間に最も接近した前記鉄筋又は前記鉄骨の深さまで埋設されている構成にできる。
【0020】
また、本発明は、
鉄筋又は鉄骨の一方もしくは両方を有し、地中に埋設されたコンクリート構造物の内部空間に配置された電気設備を接地する接地方法であって、
接地電極部材を前記コンクリート構造物のコンクリートに接触し、且つ地盤に挿入されない位置に配置し、
前記接地電極部材に、前記電気設備の接地用端子を接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、接地電極部材をコンクリート構造物のコンクリート内に埋設するだけであり、コンクリート構造物の外側の地盤内に埋設する必要がないので、施工工事が容易になると共に、コストダウンが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る地中におけるコンクリート構造物の接地構造及び方法の実施の形態を、添付した図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を鉄筋コンクリート構造物に適用した場合について説明するが、本発明は、鉄骨コンクリート構
造物又は鉄筋鉄骨コンクリート構造物にも適用できる。また、以下の実施形態は一実施例であり、本発明は実施形態に限定されない。
【0023】
《接地抵抗について》
ここでは、まず接地抵抗について説明する。図1に示すように、大地(地盤)11に埋設された接地電極10に、接地電流I(A)が流入すると、図2に示すように、接地電極10の電位E(V)が周囲の大地11に比べE(V)だけ上昇する。このとき、接地抵抗R(Ω)は、R=E/Iとなる。
【0024】
また、接地抵抗R(Ω)は、接地電極10から遠い場所ほど小さくなる。接地抵抗は、接地線抵抗及び接地電極自体の抵抗、接地電極と土壌の接触抵抗、及び接地電極周辺の大地抵抗率の3要素によって決まる。
【0025】
この3要素の中で接地抵抗に影響を与える要因として最も重要なのは、接地電極周辺の大地抵抗率(ρ)であり、接地電極10の寸法、形状が定まると、接地電極10の接地抵抗(値)Rは次式のように表される。
【0026】
R=ρ×F
但し、R:接地抵抗(Ω)
ρ:大地抵抗率
f:接地電極の形状と寸法により定まる関数
【0027】
上式から分かるように、接地抵抗Rを小さくするためには、大地抵抗率ρ又は関数fを小さくすればよい。あるいは、大地抵抗率ρを固定した場合には、接地電極10の形状や寸法を小さくすることにより、接地抵抗Rを小さくできる。
【0028】
また、図3に示すように、接地抵抗Rの理論式として半球状電極の考え方が簡便的に多用されている。
【0029】
この半球状電極の考え方では、接地抵抗Rは、R=ρ/2πrとなる。rは接地電極からの距離である。この数式のうち、1/2πrの部分がf(電極の形状と寸法により定まる関数)となる。
【0030】
《接地設計》
接地設計は、図4〜図6に基づいて、接地抵抗Rの目標値を定め、大地パラメータを把握し、接地規模に応じた接地工法により設計を行うのが一般的である。
【0031】
図4は一般に使用されている接地電極の形状と接地抵抗Rの計算式、図5は大地パラメータである土壌の抵抗率ρ、図6は土の含む水分と土壌の抵抗率との関係、図7は各種の土質における含水率と抵抗率との関係を示す図である。
【0032】
図4から分かるように、接地電極の形状に応じて接地抵抗Rの計算式が設定されている。また、図5〜図7から分かるように、大地抵抗は、土質やその中に含まれている水分の量等により変化する。
【0033】
地中のコンクリート構造物は、地下水位下に設置されることが多い。この状態では、地中のコンクリート構造物のコンクリートは、地下水を吸水する。そして、乾燥状態では絶縁体であるコンクリートが、吸水により半導体へと変化し、コンクリートの抵抗率は大地抵抗率と同等になる。
【0034】
図8はコンクリートの配合と吸水率及び抵抗率との関係、図9は各種物質の抵抗率を示す。図8及び図9から分かるように、コンクリートは吸水状態では土壌と同程度の抵抗率になる。
【0035】
従来、地中のコンクリート構造物を、大地(地盤)と接している導電性物体と見なし、その導電性物体を接地電極に代用した構造体接地設計が考えられている。
【0036】
この構造体接地設計では、図10に示すように、コンクリート構造体200の地表下部分201が、大地の地盤202に接していることから、地表下部分201の地盤202と接している接触面積と、半球状電極との置換を行い、接地抵抗を求める。
【0037】
すなわち、図11に示すように、コンクリート構造体200の地盤202との接触面積をAとすると、図12に示すように、半球状電極(等価半径r)203の表面積は2πr2であるから、上記接触面積AはA=2πr2、等価半径rはr=(A/2π)1/2となる
。上記から、等価半径rの半球状電極の接地抵抗Rは、R=ρ/2πrとなる。
【0038】
図13は、半球状電極203からの距離と接地抵抗の関係を示す。半球状電極203から遠い場所ほど、接地抵抗が小さくなる。
【0039】
一般にコンクリート構造物は、鉄骨コンクリート、鉄骨コンクリート造、又は鉄筋鉄骨コンクリート造であり、従来は、コンクリート構造体の一部である鉄骨や鉄筋に、接地線を接続し等価接地極の役目を持たせる構造にしていた。
【0040】
これに対して、本発明では、上記のように、地中のコンクリート構造物は地下水の吸水状態にあるため、その抵抗率は大地抵抗率と同等と考えられることから、次に説明するように、接地電極をコンクリート構造物のコンクリートにのみ接触させ、鉄骨や鉄筋に接触させない構造とする。
【0041】
《第1実施形態》
図14は、本発明に係る第1実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造1を示す。なお、図14は、鉄筋コンクリート構造物の一部を示す。
【0042】
地下のコンクリート構造物におけるコンクリートの抵抗率は、土質やその中に含まれている水分の量等により20〜100Ω・m程度となる。つまり、地下のコンクリート構造物の抵抗率は、大地の地盤と同等と考えられる。
【0043】
そこで、本発明の接地構造1は、地中の鉄筋コンクリート構造物20の鉄筋21a,21bに非接触の状態で、接地電極部材22をコンクリート23に埋設又は打ち込むことにより、所定の接地抵抗を得るように構成されている。なお、接地電極部材22は、銅などの良導体が用いられる。
【0044】
図14では、接地電極部材22が鉄筋21bに接触しているように見えるが、実際には接地電極部材22は鉄筋21b,21bの間で、鉄筋21bから離れた位置に配置されている。
【0045】
この接地構造1は、図14に示すように、一般の接地電極と同様に、地中の鉄筋コンクリート構造物20のコンクリート23に埋設又は打ち込まれた棒状の接地電極部材22を介して、接地電極部材22に流入した接地電流が大地の地盤24(図15参照)に流されるように構成されている。
【0046】
接地電極部材22は、図15に示すように、コンクリート23の内部空間に近い方の鉄筋21aと略同じ深さまで埋設されている。接地電極部材22の一方の先端は、内部空間に露出されている。また、接地電極部材22は、何れの鉄筋21a,21bにも接触しない位置に配置されている。
【0047】
この接地構造1は、図16に示すように、接地電極部材22に接地電流I(A)が流入すると、接地電極部材22の周りの大地における地盤24に誘導電位が発生する。なお、図16中の符号Xで示す範囲は、誘導電位影響範囲である。
【0048】
接地電極部材22の近傍に、平行又は交差する良導体である鉄筋21a,21bが存在する場合、接地電極部材22に流れた接地電流Iは、コンクリート23及び鉄筋21a,21bを介して地盤24に伝わる。この場合、接地抵抗(値)Rは、大地の土壌(地盤)24の土質やその中に含まれている水分の量等により変化する。
【0049】
また、接地電極部材22が銅の場合、異種金属である鉄筋21a,21bと接触すると、電食により鉄筋21a,21bが損傷するおそれがある。
【0050】
一般に、鉄(鋼)の電位は0.46Vであり、銅の電位が0.17Vであるので、鉄の方が浸食される。
【0051】
本発明では、接地電極部材22が、鉄筋21a,21bと接触していない(非接触)ので、鉄筋21a,21bが電食によって損傷するのを抑制できる。
【0052】
ここで、コンクリート構造物20の抵抗率ρ=100Ω・mとすると、接地抵抗R=ρ/(2πA)1/2から、R=100/(2πA)1/2(Aは結合等電位範囲面積)となる。
【0053】
また、接地抵抗R=25Ωとすると、コンクリート構造物20の大地における地盤24との接触面積A=2.5m2となる。従って、接地電極部材22がコンクリート構造物2
0のコンクリート23と接触する面積Aを、上記値に設定する。
【0054】
なお、図14の接地構造1では、接地電極部材22を空間に近い方の鉄筋21aと略同じ深さまで埋設したが、図17に示すように、接地電極部材22を大地24に近い方の鉄筋21aと略同じ深さまで埋設できる。
【0055】
この場合も、接地電極部材22は、図18に示すように、何れの鉄筋21a,21bにも接触しない位置に配置する。これにより、鉄筋21a,21bの電食を抑制できる。また、接地電極部材22は、市販の鉄筋アンカーなどを使用できる。
【0056】
《第2実施形態》
図19は、本発明に係る地中におけるコンクリート構造物の接地構造3を示す。上記のように、地中のコンクリート構造物20の抵抗率は、大地の抵抗率と同等と考えられる。
【0057】
このことから、この接地構造3は、銅製で板状の接地電極部材30が、必要面積だけコンクリート構造物20の空間側の表面20aに貼り付けられている。
【0058】
この場合、図20に示すように、接地電極部材30、コンクリート22及び鉄筋21a,21bを含む比較的大きな誘導電位範囲Xが生じる。これにより、接地電極部材30に流入した電流Iが誘導電位範囲Xを介して大地24に流れる。
【0059】
この接地構造3は、板状の接地電極部材30をコンクリート構造物20のコンクリート
23における内部空間側の表面に貼り付けるだけであり、施工が容易でコストダウンが可能になる。
【0060】
また、接地電極部材30が、鉄筋21a,21bに接触していないので、鉄筋21a,21bが電食によって損傷するのを回避できる。
【0061】
なお、コンクリート23が乾燥している状態では、コンクリート23の抵抗率が大地抵抗率と同等にならない絶縁体になる。このことから、コンクリート23が吸水状態にあることが必要となる。
【0062】
《第3実施形態》
図21は、本発明に係る第3実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造4を示す。
【0063】
この接地構造4は、本発明をシールドトンネル40に適用したものである。この接地構造4は、地中に埋設されたコンクリート構造物であるシールドトンネル40の内部空間41に配置された電動機などの電気設備44を接地する。
【0064】
シールドトンネル40のセグメント45は、鉄筋コンクリート製であり、コンクリート45aは地下水を吸水して所定の抵抗率ρ、本実施形態では抵抗率ρが100Ω・m以下となっている。なお、セグメント45の抵抗率ρは、1〜150Ω・m、好ましくは1〜100Ω・m、更に好ましくは25Ω・m以下に設定する。
【0065】
この接地構造4は、シールドトンネル40のセグメント45に設けられ、少なくとも一部である露出部43aが内部空間41に露出し、且つ地盤42に挿入されない金属状の接地電極部材43を備えている。そして、この接地電極部材43の露出部43aに、電気設備44の接地端子44aが接続される。なお、図中の符号44bは接地線である。
【0066】
地盤42とシールドトンネル40のセグメント45との間には、例えば厚さ50mm程度の裏込め材46が充填されている。セグメント45には、籠鉄筋47が設けられている。
【0067】
また、セグメント45には、内部空間41に面する穴48が設けられている。接地電極部材43は、穴48内に挿入されている。また、穴48内における接地電極部材43の周囲には、接地低減充填材49が充填されている。
【0068】
更に、接地電極部材43は、図22にも示すように、籠鉄筋47の裏込め材46に近い方の鉄筋47aと同程度の深さまで埋設されている。また、この接地電極部材43は、籠鉄筋47の何れの鉄筋47a〜47dにも接触しない位置に配置されている。
【0069】
この接地構造4は、接地電極部材43が籠鉄筋47に接触していないので、籠鉄筋47が電食によって損傷するのを抑制できる。
【0070】
また、接地電極部材43を地盤42内に挿入する必要がないので、施工が容易である。従って、接地専業業者に限らず一般的な工事業者が施工できるので、コスト低減が可能になる。
【0071】
なお、穴48は、セグメント45に予め設けられている裏込め材注入用のグラウトホール(非貫通穴又は貫通穴)を利用できる。このグラウトホールは、裏込め材が場所によって充分充填されていない場合に、裏込め材46を注入すべく設けられたものである。
【0072】
本発明では、RC(鉄筋コンクリート)造のセグメント45の籠鉄筋47に、コンクリート製のセグメント45に設けられた市販鉄筋アンカーなどを利用した接地電極部材43から、誘導電位範囲を広げて、セグメント45と裏込め材46による接地抵抗の低下を図ることができる。
【0073】
また、接地電極部材43は、セグメント45に予め設けられている立金物取付用アンカーと共用し、シールド施工に伴うセグメントのローリングを考慮して施工されている増し打ちアンカーを利用できる。
【0074】
更に、大地に異常電流をスムーズに流すため、裏込め材46の電気特性を利用できる。なお、裏込め材46の抵抗率は、例えば18.9Ω・m程度を示した測定結果が得られている。
【0075】
《既設のシールドトンネルにおけるグラウトホールの接地抵抗》
図23は、セグメント45に予め設けられているグラウトホール及び埋込インサートの接地抵抗を測定する際に使用した接地抵抗測定設備7を示す。
【0076】
この接地抵抗測定設備7は、電位降下法により接地抵抗を測定するものであり、大地の地盤71に差し込まれた接地極(E極)72と、所定の間隔(5〜10m)で配置された補助電極である電位極(P極)73及び電位極(C極)74とを有している。なお、符号75は測定器である。電位極73,74は、水により充分に濡れている。
【0077】
この接地抵抗測定設備7により、電位極73,74を地盤71上に設置した場合の接地抵抗と、電位極73,74をシールドトンネル内に設置した場合の接地抵抗を測定した結果、両方の接地抵抗が略同等であることを確認した。
【0078】
また、模擬的に地盤71上で接地極72の接地抵抗を測定し、電位極73,74の位置を変えて、接地抵抗を測定した結果、接地極72と電位極73間、及び電位極73,74の間隔を5m以上にすることにより、接地極72と電位極73,74の接地抵抗に相違がないことを確認した。
【0079】
この接地抵抗測定設備7により、既設のシールドトンネルにおけるグラウトホール、埋め込みインサート等について、Aトンネル及びBトンネルの現場で接地抵抗を測定した結果、図24に示すように、グラウトホール並びにボルトボックスについては、本発明を適用できる程度の接地抵抗であることを確認した。
【0080】
すなわち、Aトンネルのグラウトホールの接地抵抗(値)Rは、R=2.4〜48Ω、Bトンネルのグラウトホールの接地抵抗Rは、R=75〜150Ωであった。
【0081】
また、図25に示すように、Aトンネルでは、グラウトホールが2個の場合、接地抵抗Rが20Ω、グラウトホールが4個の場合、接地抵抗Rが8.7Ωであり、グラウトホールが多いほど接地抵抗が小さくなることが分かる。同様なことがBトンネルでも確認された。
【0082】
埋込インサートをシールドトンネルに設置した場合、その接地抵抗は420〜1000Ωであった。埋込インサートを並列接続したときの接地抵抗値は、10個並列で60Ω程度であった。
【0083】
また、シールドトンネルに設けられたボルトボックスでは、一点で測定したときに接地
抵抗が32Ωであった。
【0084】
このように、グラウトホール及びボルトボックスについては、D種としての接地抵抗値を満足する結果が得られた。また、埋込インサートは接地抵抗が比較的高い。
【0085】
なお、本発明では、コンクリート構造物の接地抵抗の目標値を1〜150Ω程度、好ましくは1〜100Ω程度、更に好ましくは25Ω以下に設定する。経年変化等の影響によりコンクリート構造物の抵抗率が上昇しても支障のないように、接地抵抗は25Ω以下に設定するのが好ましい。
【0086】
《第4実施形態》
図26は、本発明に係る第4実施形態の接地構造5を示す。なお、上記実施形態と同様な部分には、同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0087】
この接地構造5は、セグメント45を貫通しているグラウトホール50に、棒状の接地電極部材51が挿入されている。
【0088】
接地電極部材51の一端51aは、内部空間41に露出している。また、接地電極部材51の他端51bは、裏込め材46内まで延びている。
【0089】
また接地電極部材51は、籠鉄筋47の何れの鉄筋47a〜47dにも接触しない位置に配置されている。なお、図中の符号52は止水パッキンである。
【0090】
この接地構造5は、接地電極部材51を地盤42内まで延ばす必要がないので、施工が容易でコストダウンが可能である。また、接地電極部材51が鉄筋47a〜47dに接触していないので、鉄筋47a〜47dに電食が発生するのを抑制できる。
【0091】
《第5実施形態》
図27は、本発明に係る第4実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造6を示す。
【0092】
この接地構造6は、セグメント45内に設けられたセグメント鋼製ボックス60に、接地電極部材61が取り付けられている。また、セグメント鋼製ボックス60及び接地電極部材61の周囲には、接地低減充填材49が充填されている。
【0093】
接地電極部材61は、籠鉄筋47における裏込め材46に近い方の鉄筋47aと同程度の深さまで延びている。この接地構造6は、第4実施形態の接地構造4と同様な作用効果を有している。
【0094】
《第6実施形態》
図28は、本発明に係る第6実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造8を示す。
【0095】
この接地構造8は、金属製で板状の接地電極部材80が、セグメント45における内部空間41側の表面にビスなどで貼られている。接地電極部材80とセグメント45との間には、フリクション材(接地低減材)81が設けられている。
【0096】
本実施形態では、接地電極部材80は、200mm×200mm程度の大きさに形成されている。また、接地電極部材80には、亜鉛メッキが施されている。
【0097】
このように、本発明は、地中におけるコンクリート構造物の電気伝導特性と、裏込め材の電気伝導特性を利用した接地構造とすることにより、電気設備により発生する異常電流を確実に大地に放出することが可能となる。
【0098】
また、接地電極部材を地盤に挿入する必要がないので、接地専業技術に依存することなく、コストパフォーマンス(従来に比して50〜80%低減程度)が期待できる接地施工が可能となる。
【0099】
また、接地電極部材が鉄筋又は鉄骨に接触しないので、鉄筋又は鉄骨が電食によって損傷するのを抑制できる。
【0100】
また、シールドトンネルの深層化に伴い地山の硬質化や高水圧化により、接地工事施工箇所の環境悪化に影響されない接地施工が確保され、近傍の場所で行われる各種の工事施工等による接地箇所の損傷も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】接地抵抗を説明する図である。
【図2】接地抵抗と電位との関係を示す図である。
【図3】半球体状接地電極の模式図である。
【図4】各種の接地電極の形状と接地抵抗計算式を示す図である。
【図5】土壌の抵抗率を示す図である。
【図6】土の含む水分と抵抗率を示す図である。
【図7】各種の土壌の含水率と抵抗率との関係を示す図である。
【図8】コンクリートの配合割合と吸水率及び抵抗率を示す図である。
【図9】各種材料の抵抗率を示す図である。
【図10】地下構造物と地盤の接触部分を示す図である。
【図11】地下構造物と地盤の接触部分の表面積を説明する図である。
【図12】半球状電極を示す図である。
【図13】半球状電極に対する距離と接地抵抗との関係を示す図である。
【図14】本発明に係る第1実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造 を示す図である。
【図15】本発明に係る第1実施形態の接地電極部材の埋設状態を示す図であり、図14のA−A断面図である。
【図16】本発明に係る第1実施形態の接地電極部材の周囲に発生する誘導電位影響範囲を示す図である。
【図17】本発明に係る第1実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造を示す図である。
【図18】本発明に係る第1実施形態の接地電極部材の埋め込み深さを示す図であり、図17のB−B断面図である。
【図19】本発明に係る第2実施形態の地中のコンクリート構造物の接地構造を示す図である。
【図20】本発明に係る第2実施形態の誘導電位影響範囲を示す図である。
【図21】本発明に係る第3実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造を示す断面図である。
【図22】本発明に係る第3実施形態の設置電極部材の埋め込み深さを示す図であり、図21のC−C断面図である。
【図23】接地抵抗測定設備を示す図である。
【図24】シールドトンネルにおけるグラウトホールでの接地抵抗の測定結果を示す図である。
【図25】シールドトンネルにおける複数のグラウトホールに設けた接地電極を接続した場合の接地抵抗を示す図である。
【図26】本発明に係る第4実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造を示す図である。
【図27】本発明に係る第5実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造を示す図である。
【図28】本発明に係る第6実施形態の地中におけるコンクリート構造物の接地構造を示す図である。
【図29】従来例に係る接地技術を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 接地構造
3 接地構造
4 接地構造
5 接地構造
6 接地構造
7 接地抵抗測定設備
8 接地構造
10 接地電極
11 大地の地盤
20 コンクリート構造物
20 鉄筋コンクリート構造物
20a 表面
21a,21b 鉄筋
22 コンクリート
22 接地電極部材
23 コンクリート
24 地盤
30 接地電極部材
40 シールドトンネル
41 内部空間
42 地盤
43 接地電極部材
43a 露出部
44 電気設備
44a 接地端子
44b 接地線
45 セグメント
45a コンクリート
46 裏込め材
47 籠鉄筋
47a,47b 鉄筋
48 穴
49 接地低減充填材
50 グラウトホール
51 接地電極部材
51a 一端
51b 他端
52 止水パッキン
60 セグメント鋼製ボックス
61 接地電極部材
70 接地電極部材
71 地盤
72 接地極
73 電位極
75 測定器
100 シールドトンネル
101 送電線
102 内部空間
103 セグメント
104 地山
105 接地電極部材
106 接地線
200 コンクリート構造体
201 地表下部分
202 地盤
203 半球状電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋又は鉄骨の一方又は両方を有し地中に埋設されたコンクリート構造物の内部空間に配置された電気設備を接地する接地構造であって、
前記コンクリート構造物のコンクリートに接触し、且つ地盤内に挿入されない位置に配置された接地電極部材を備え、
前記接地電極部材の露出部に、前記電気設備の接地端子が接続されることを特徴とする地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項2】
前記コンクリート構造物と地盤との間に、裏込め材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項3】
前記接地電極部材の一部が、前記コンクリート内に埋設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項4】
前記接地電極部材は平板状に形成され、前記コンクリート構造物の内部空間側の表面に貼られていることを特徴とする請求項1または2に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項5】
前記コンクリート構造物は、シールドトンネルであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項6】
前記コンクリート構造物は、開削トンネルであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項7】
前記コンクリート構造物の内部空間側の表面に穴が設けられ、
前記接地電極部材が前記穴内に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項8】
前記穴内における前記接地電極部材の周囲に接地低減充填材が充填されていることを特徴とする請求項7に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項9】
前記接地電極部材は、前記コンクリート構造物のコンクリートを貫通していないことを特徴とする請求項7または8に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項10】
前記接地電極部材は、前記コンクリート構造物のコンクリートを貫通していることを特徴とする請求項7または8に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項11】
前記コンクリート構造物のコンクリートが地下水を吸収し、前記コンクリート構造物の抵抗率が1〜150Ω・mであることを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項12】
前記コンクリート構造物の抵抗率が25Ω・m以下であることを特徴とする請求項11に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項13】
前記コンクリート構造物は前記シールドトンネルのセグメントであり、前記接地電極部材は、前記セグメントの籠鉄筋における鉄筋の間に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項14】
前記接地電極部材は、前記セグメントのローリングを防止するために設けられた立金物
取付用アンカーであることを特徴とする請求項13に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項15】
前記接地電極部材は、前記内部空間に最も接近した前記鉄筋又は前記鉄骨付近の深さまで埋設されていることを特徴とする請求項1に記載の地中におけるコンクリート構造物の接地構造。
【請求項16】
鉄筋又は鉄骨の一方もしくは両方を有し、地中に埋設されたコンクリート構造物の内部空間に配置された電気設備を接地する接地方法であって、
接地電極部材を前記コンクリート構造物のコンクリートに接触し、且つ地盤に挿入されない位置に配置し、
前記接地電極部材に、前記電気設備の接地用端子を接続することを特徴とする地中におけるコンクリート構造物の接地方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2008−186748(P2008−186748A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20617(P2007−20617)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】