説明

地中連続遮水壁の構築方法及び分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシング

【課題】地中連続遮水壁の構築方法及びそれに用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングを提供すること。
【解決手段】地中連続遮水壁の構築方法において、軟弱地盤27に掘削形成された縦孔23内に、硬化性充填材21を設けて止水用有底筒状体24を縦孔内に挿入すると共に、施工に伴う掘削残土を含む産業廃棄物、コンクリート又はモルタルの少なくとも一つを充填して、自沈により沈設して所定の位置に配置し、止水用有底筒状体の外側を硬化性充填材で満たして、止水用有底筒状体とその外側の硬化性充填材からなる2重構造の止水杭体を形成すると共に、隣り合う2重構造の止水杭体相互が硬化性充填材の部分で重なるようにして連続する地中連続遮水壁を形成し、かつ、隣り合う2重構造の止水杭体間の硬化性充填材を、螺旋状攪拌部材1により攪拌し、前記螺旋状攪拌部材を引き上げた後、硬化性充填材を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集中豪雨・長期降雨・台風等により急激な水量増加(増水)に対し、軟弱地盤上の構造物を浸食破壊から守るため、高い不透水性の機能を持った不透水性の地中連続遮水壁の構築方法及びその方法に用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングに関する。しかも、施工に伴う産業廃棄物の発生を極力抑え、且つ発生した残土を再利用し、環境にやさしく経済性に優れた不透水性の地中連続遮水壁の構築方法及びその方法に用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングに関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤の地盤改良工法のうち、杭体として用いられる工法は、深層混合処理工法が主流をなしており、機械攪拌式(粉体系・スラリー系)と高圧噴射式にわかれる。
前者の機械攪拌式の場合は、先端掘削部のビットが翼形式になっており、隣接杭を切削して接合(ラップ)することは難しく、良くて接円となり、浸透水に対しての止水効果は不向きとされる。
後者の高圧噴射式の場合は、高圧水及び高圧グラウトで地盤を切削する方法で、水を使用する事から地山を傷めたり、汚泥が発生する。杭全体をグラウトでの改良となるので、残留土・孔壁崩壊土がブロックで杭内へ崩落したり、隣り合う杭体相互の接合部(ラップ部)に残留砂が堆積したりして、これもまた止水性が乏しいとされ単杭ではなく、複列杭を採用している。
【0003】
従来、地中連続壁の構築方法としては、例えば、縦孔内に有底筒状の中空構造物を、一つ置きの縦孔内に設置するようにした連続した杭列(又は柱列)からなる地中連続壁の構築方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図14に示すように、前記のような地中杭(柱)列式の地中連続壁33を構築する場合には、隣り合う杭(又は複数の杭列ユニット)34は、時間差をおいて施工されるため、隣り合う杭(又は複数の杭列ユニット)34間のグラウト等の硬化性充填材21には、境界部Sが形成される恐れがあり、隣り合うグラウト等の硬化性充填材21間で、品質の差による止水性能の差を生じる恐れがあり、遮水性能が低くなる恐れがある。
そのため、杭(柱)間での止水性能(遮水性能)の低下を起こす恐れがあり、杭(柱)間でのグラウト等の硬化性充填材21の均質な混合状態を図り、止水性能(遮水性能)の向上を図ることが可能な施工方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−102490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、地中連続遮水壁を構成している個々の杭体における杭体内への浸透性の問題を有利に解決できると共に、隣り合う杭(柱)間での止水性能の低下を起こす恐れのない止水性能(遮水性能)の向上を図ることが可能な不透水性の地中連続遮水壁の構築方法及びそれに用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の地中連続遮水壁の構築方法では、軟弱地盤に連続した場所打ち杭列を構築することによる地中連続遮水壁の構築方法において、軟弱地盤に掘削形成された縦孔内に、硬化性充填材を設けて止水用有底筒状体を前記縦孔内に挿入すると共に、前記止水用有底筒状体内に、施工に伴う掘削残土を含む産業廃棄物、コンクリート又はモルタルの少なくとも一つを充填して止水用有底筒状体を自沈により沈設して所定の位置に配置し、前記止水用有底筒状体の外側を前記硬化性充填材で満たして、止水用有底筒状体とその外側の硬化性充填材からなる2重構造の止水杭体を形成すると共に、隣り合う前記2重構造の止水杭体相互が硬化性充填材の部分で重なるようにして連続する遮水壁を形成し、かつ、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材を、止水用有底筒状体の外側でこれを囲むように配設される螺旋状攪拌部材により攪拌し、前記螺旋状攪拌部材を引き上げた後、前記硬化性充填材を硬化させることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の地中連続遮水壁の構築方法において、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材は、後行して設けられる2重構造の止水杭体の形成時に螺旋状攪拌部材により攪拌混合された後、硬化されることを特徴とする。
第3発明では、第1発明又は第2発明地中連続遮水壁の構築方法において、前記螺旋状攪拌部材は、縦孔掘削時、又は硬化性充填材の充填後に縦孔内に配置され、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の前記硬化性充填材を攪拌混合した後、回転させながら引き抜くことを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかに記載の地中連続遮水壁の構築方法において、前記硬化性充填材は、モルタル、粘性グラウト又は可塑性グラウトのいずれか一つであることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれか一つに記載の地中連続遮水壁の構築方法に用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングであって、前記ケーシングは、その外周面に螺旋状の軌跡に沿って間隔をおいて多数のガイド部材が設けられ、各ガイド部材はガイド溝を備え、多数のガイド部材におけるガイド溝に、螺旋状攪拌部材の螺旋状の内周側が螺旋状の軌跡に沿って移動可能に嵌合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明の地中連続遮水壁の構築方法では、軟弱地盤に連続した場所打ち杭列を構築することによる地中連続遮水壁の構築方法において、軟弱地盤に掘削形成された縦孔内に、硬化性充填材を設けて止水用有底筒状体を前記縦孔内に挿入すると共に、前記止水用有底筒状体内に、施工に伴う掘削残土を含む産業廃棄物、コンクリート又はモルタルの少なくとも一つを充填して止水用有底筒状体を自沈させることにより沈設して所定の位置に配置し、前記止水用有底筒状体の外側を前記硬化性充填材で満たすようにして、止水用有底筒状体とその外側の硬化性充填材からなる2重構造の止水杭体を形成すると共に、隣り合う前記2重構造の止水杭体相互が硬化性充填材の部分で重なるようにして連続する遮水壁を形成し、かつ、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材を、止水用有底筒状体の外側でこれを囲むように配設される螺旋状攪拌部材により攪拌し、前記螺旋状攪拌部材を縦孔23から引き上げた後、前記硬化性充填材を硬化させるので、杭間境界部における硬化性充填材を確実に攪拌混合して、境界部の硬化性充填材の均一化及び均質化を図ることができ、地中連続遮水壁の遮水性能を格段に向上させることができる等の効果が得られる。
第2発明では、第1発明の地中連続遮水壁の構築方法において、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材は、後行して設けられる2重構造の止水杭体の形成時に螺旋状攪拌部材により攪拌混合された後、硬化されるので、隣り合う止水杭体間の硬化性充填材の均一混合及び均質化を図った上で固化させることができる等の効果が得られる。
第3発明では、第1発明又は第2発明地中連続遮水壁の構築方法において、前記螺旋状攪拌部材は、縦孔掘削時、又は硬化性充填材の充填後に縦孔内に配置され、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の前記硬化性充填材を攪拌混合した後、回転させながら引き抜くので、螺旋状攪拌部材により硬化性充填材を攪拌混合した上で螺旋状攪拌部材を容易に引き上げて引き抜くことができ等の効果が得られる。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかに記載の地中連続遮水壁の構築方法において、前記硬化性充填材は、モルタル、粘性グラウト又は可塑性グラウトのいずれか一つであるので、施工場所に応じた硬化性充填材を用いた遮水壁とすることができる等の効果が得られる。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれか一つに記載の地中連続遮水壁の構築方法に用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングであって、前記ケーシングは、その外周面に螺旋状の軌跡に沿って間隔をおいて多数のガイド部材が設けられ、各ガイド部材はガイド溝を備え、多数のガイド部材におけるガイド溝に、螺旋状攪拌部材の螺旋状の内周側が螺旋状の軌跡に沿って移動可能に嵌合されているので、ケーシングに対して螺旋状攪拌部材を同心状に装着したり、分離したりすることができ、そのため、ケーシング又は螺旋状攪拌部材のいずれか一方を回転させながら分離することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)は本発明において用いる分離可能な螺旋攪拌翼を備えたケーシングに駆動側を連結した状態を示す正面斜視図、(b)はその一部の断面図、(c)は変形形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すケーシングの上部連結部付近を示すものであって、(a)は一部横断平面図、(b)は一部縦断正面図である。
【図3】図1の下端部付近を示すものであって、(a)は底面図、(b)は正面図である。
【図4】図1の下端部付近を断面で示すものであって、(a)は(b)の矢視断面図、(b)は縦断正面図である。
【図5】本発明の止水性能を有する地中連続遮水壁を構築する場合の施工手順を示すものであって、(a)はアースオーガーにより排土しながら削孔して縦孔を形成している状態を示す概略縦断正面図、(b)は所定の深さまで削孔した状態を示す概略縦断正面図、(c)はアースオーガーを引き抜いた後に、分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングを縦孔内に回転させながら挿入した状態を示す概略縦断正面図である。
【図6】図5cにおいて、分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングが縦孔上端付近まで挿入された状態を示し、(a)は横断平面図、(b)は一部縦断正面図である。
【図7】図6の状態から連結ボルトを取り外して、上部の駆動側の取り付けフランジを有する中空駆動軸を取り除いて、ケーシング内に止水用有底筒状体を挿入すると共にその止水用有底筒状体内に掘削土を投入する状態を示すものであって、(a)は平面図、(b)は一部縦断正面図である。
【図8】分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシング内に配置される止水用有底筒状体を、ケーシングを逆回転させながら引き上げることによりケーシングの下端から抜くようにして残置させるようにしている状態を示すものであって、(a)は横断平面図、(b)は縦断正面図である。
【図9】ケーシングを逆回転させながら引き抜く場合の上部の連結状態を示すものであって、(a)は一部横断平面図、(b)は一部縦断正面図である。
【図10】(a)縦孔内にグラウトを充填すると共にケーシングと螺旋状攪拌部材とを分離する直前の状態を示す概略縦断正面図、(b)は止水用有底筒状体内に掘削土を投入して自沈させると共に、ケーシングと螺旋状攪拌部材とを分離してケーシングを逆回転させながら引き上げている状態を示す概略縦断正面図である。
【図11】(a)は螺旋状攪拌部材により止水用有底筒状体の周囲のグラウトを攪拌して、螺旋状攪拌部材を引き上げている状態を示す概略縦断正面図、(b)はグラウトを固化させると共に上部にモルタル層を形成した状態を示す概略縦断正面図である。
【図12】螺旋状攪拌部材を回転させてグラウトを攪拌する場合或は引き上げる場合に、駆動側と螺旋状攪拌部材側とを連結している状態を示すものであって、(a)は一部横断平面図、(b)は一部縦断正面図である。
【図13】本発明の施工方法によって構築された地中連続遮水壁を示す横断平面図である。
【図14】従来の施工方法によって構築された地中連続壁を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0011】
先ず、図1〜図3を参照して、本発明の地中連続遮水壁の構築方法において用いる分離可能な螺旋状攪拌部材1を備えたケーシング2について説明すると、前記ケーシング2は、下端に横軸3aと共に回動して開閉可能な分割型下部蓋3を備えており、各分割型下部蓋3は、ケーシング2の下端部に固定されたアクチュエータ等の回動駆動装置3bにより、前記横軸3aを介して駆動される。
【0012】
前記ケーシング2の外周面には螺旋状の軌跡に沿って間隔をおいて多数の鋼製のガイド部材4が配置されて、前記各ガイド部材4の基端側が溶接等により固定されて、前記の多数のガイド部材4は、単独又は、ガイド部材4と前記ケーシング2の外周面と共同して、螺旋状ガイド部2aを形成している。
螺旋状攪拌部材1を備えたケーシング2は、例えば、鋼製材料により製作される。前記の前記ケーシング2及びガイド部材4は鋼製材料により製作されている。
【0013】
前記の各ガイド部材4は、図1(b)に示すように、上部ガイド片4aと下部ガイド片4bとを前記の螺旋状の軌跡に沿って上下に間隔をおいて対向するように配置して、ケーシング2の外周面に溶接により固定して構成されていてもよく、或は、図1(b)に示すように、上部ガイド片4aと下部ガイド片4bとに一体に接続する接続部5を備えていると共に側方開口のガイド溝6を備えたガイド部材4とされていてもよく、これを前記ケーシング2の外周面には螺旋状の軌跡に沿って間隔をおいてケーシング2の外周面に固定することで螺旋状の軌跡に沿った螺旋状ガイド部2aを構成してもよい。
【0014】
前記のいずれのガイド部材4の場合も、前記のケーシング2の外周面に、螺旋状に配置される螺旋状攪拌部材1の螺旋状の内周縁部に連続するように設けた螺旋状係合凸部又は凹部7を備えた螺旋状内周縁部をガイドする必要があるため、ガイド部材4に設けられるガイド溝6は、螺旋状の軌跡に沿った形態のガイド溝とされているのが好ましい。
【0015】
前記のガイド部材4は、螺旋状攪拌部材1の基端側の螺旋状内周縁部に設けた螺旋状係合凸部又は凹部7を係止するための、係止凹部又は係止凸部8を有するガイド溝6を備えている。前記の係止凹部又は係止凸部8は螺旋状の軌跡に沿った形態の溝とされているが望ましい。
前記のようなガイド部材4が、ケーシング2の外周面に、螺旋状攪拌部材1の内周縁部をガイド可能なように、螺旋状の軌跡に沿って多数配置されて、溶接等により前記ケーシング2に固定されている。
前記の螺旋状係合凸部又は凹部7及び係止凹部又は係止凸部8を有するガイド溝6の形態としては、断面矩形、断面円形、断面台形、断面三角形等の形状であってもよい。
前記の螺旋状の軌跡に沿って設けられた多数のガイド部材4による螺旋状ガイド部2aと、螺旋状攪拌部材1の螺旋状内周縁部22とは、同じピッチの螺旋状部とされている。
螺旋状の軌跡に沿って設置された多数のガイド部材4のガイド溝6に、螺旋状攪拌部材1の螺旋状内周縁部22がほぼ螺旋状の軌跡沿って移動可能に嵌合されて、螺旋状攪拌部材1を下降させながら回転又は上昇させながら逆回転させることで、螺旋状攪拌部材1は螺旋状の軌跡に沿って相対的に昇降可能にされている。
【0016】
ケーシング2の上方から螺旋状攪拌部材1を螺旋状ガイド部2aの軌跡に沿って、回転させながら同時に下降させることで、螺旋状攪拌部材1の螺旋状内周縁部をケーシング2の多数の各ガイド部材4に嵌合させることができ、また、ケーシング2又は螺旋状攪拌部材1のいずれか一方を、回転(逆回転)させながら上昇(下降)させることで、係合させたり、離脱させて、分離することができるようにされている。
【0017】
前記のケーシング2と螺旋状攪拌部材1とは、それらの上部において、連結して一体に駆動したり、連結を解除して分離し、一方のみを回転させて引き上げ可能にされているので、次にその構造について、図2及び図9を参照して説明する。
【0018】
前記の螺旋状攪拌部材1の上端部は、水平なリング状の従動連結板9に溶接等により固定されて、前記の従動連結板9を、駆動側とボルト19(図2参照)、又はボルト・ナット20(図9参照)により、連結することで、前記のケーシング2と共に回転したり、ケーシング2と分離した状態では、螺旋状攪拌部材1単独で、定位置で縦孔23内の硬化性充填材21を攪拌したり、上昇しながら攪拌したり、駆動軸側を上昇させることで、引き抜いたりすることができるようにしている。前記の場合に、螺旋ピッチと同じピッチで昇降させる場合には、攪拌作用はほとんどなく、螺旋ピッチと異なるピッチの昇降形態になるほど、攪拌作用は大きくなる。
前記のリング状の従動連結板9には、等角度間隔をおいて雌ねじ孔10又は連結用孔が設けられている。
【0019】
また、ケーシング2の上端部には、雄ねじ部又は雌ねじ部からなるねじ式等の上部連結部11が設けられ、その上部連結部11には、フランジ付き連結体12が連結されている。前記のフランジ付き連結体12は、筒本体13の下端部に、雌ねじ部又は雄ねじ部からなる下部連結部14を有すると共に、筒本体13の上端部に、外向きフランジ15を有し、前記外向きフランジ15に貫通したボルト挿通用縦孔16を、等角度間隔をおいて備えている。
【0020】
前記のフランジ付き連結体12には、駆動装置(図示を省略した)に接続した中空駆動軸17の下端部に一体に設けられた取り付けフランジ18が配置され、前記取り付けフランジ18と従動連結板9は複数の連結ボルト19により連結されている。
【0021】
前記のケーシング2と螺旋状攪拌部材1とを、図2又は図6に示すように、結合した状態で、前記中空駆動軸17内を供給管として利用して、前記中空駆動軸17の上端にスイベル装置(流体回転継手装置、図示を省略した)を介して高圧供給ホース(図示省略)を連結すると共に圧送ポンプ(図示を省略)により、グラウト等の硬化性充填材の供給源から圧送することで、ケーシング2内に、グラウト等の硬化性充填材21を充填すると共に、回動駆動装置3bを駆動して前記ケーシング2の先端の分割型下部蓋3を開くことで、縦孔23内に、グラウト等の硬化性充填材21を充填することができる。
縦孔23内へのグラウト等の硬化性充填材21の充填は、後記の止水用有底筒状体24の自沈させる部分の体積を考慮して設定され、縦孔23から溢れないように適宜設定する。
【0022】
図6に示す状態から、縦孔23内にグラウト等の硬化性充填材21を充填した後、前記のケーシング2と螺旋状攪拌部材1とを分離して、ケーシング2内に止水用有底筒状体24を挿入する場合には、前記ケーシング2を適宜仮保持手段により保持すると共に、螺旋状攪拌部材1を適宜仮保持手段により保持した状態で、図7に示すように、前記連結ボルト19を取り外して、中空駆動軸17及び取り付けフランジ18を一次的に取り外した状態で、前記ケーシング2内に止水用有底筒状体24を挿入すると共に、前記止水用有底筒状体24内に、縦孔23掘削時に排土した掘削残土25又は産業廃棄物を投入することで、止水用有底筒状体24を自沈させることができる。
【0023】
前記のケーシング2と螺旋状攪拌部材1とを分離して、ケーシング2のみを引き上げる場合には、前記ケーシング2及び従動連結板9を、適宜、軟弱地盤27上に設置した保持部材26等の仮保持手段により、保持した状態で、前記連結ボルト19を取り外す(図7に示す状態)。
図7に示す状態から、図9に示すように、フランジ付き連結体12と、中空駆動軸17側の取り付けフランジ18を複数のボルト・ナット20により連結して、前記の螺旋状攪拌部材1の回転を適宜、軟弱地盤27上に設置した保持部材26等の仮保持手段により阻止した状態で、前記ケーシング2を回転させながら引き抜くことで、螺旋状攪拌部材1を縦孔23内に残置させることができる。
【0024】
また、図12に示すように、前記のケーシング2を逆回転させて引き投げて撤去して、中空駆動軸17側の取り付けフランジ18と、螺旋状攪拌部材1上端の従動連結板9を複数の連結ボルト19(又はボルト・ナット)により連結した状態では、駆動装置に接続されている中空駆動軸17を定位置で回転駆動させたり、螺旋状ガイド部2aのピッチと異なるピッチで上下動させることで、縦孔23内の硬化性充填材21を攪拌混合させることができ、また、中空駆動軸17を逆回転駆動させながら、螺旋状ガイド部2aのピッチに合わせて引き上げることで、螺旋状攪拌部材1を硬化性充填材21をほとんど攪拌することなく引き上げることができるようにされている。
【0025】
次に、前記のような分離可能な螺旋状攪拌部材1を備えたケーシング2を用いて、地中連続遮水壁を構築方法としては、例えば、下記(1)〜(6)の工程により構築するようにすればよい。
【0026】
(1)先ず、図5(a)(b)に示すように、例えば、掘削ヘッドを備えたアースオーガー等の掘削具28を矢印で示すように回転駆動させて実線矢印で示すように下降させて、堤体等の所定の位置において軟弱地盤27を排土しながら削孔して、所定の深度(例えば、5m前後)まで削孔して縦孔23を形成した後、図5(b)に2点鎖線で示すように、前記の掘削具28を引き上げて撤去する。掘削残土25を縦孔23付近に排土しておく。
【0027】
(2)次いで、図5(c)及び図6に示すように、前記縦孔23内に、分離可能な螺旋状攪拌部材1を備えたケーシング2を、駆動装置により矢印で示すように回転(正回転)させながら挿入する。
前記の中空駆動軸17の上部は、図示を省略するが、スイベルジョイントが設けられて、前記スイベルジョイントに接続されたグラウト供給高圧ホース(図示を省略した)を介して、中空駆動軸17内からグラウト等の硬化性充填材21を、ケーシング2内を通して、前記ケーシング2先端の分割型下部蓋3を適宜開いて、縦孔23内に充填する(図10a参照)。
前記の硬化性充填材21の縦孔23内への充填は、直接、縦孔23内へ充填してもよい。
【0028】
前記の硬化性充填材21としては、螺旋状攪拌部材1に沿って競り上がる性状の、モルタル(中練モルタル、セメントベントナイトモルタルを含む)、粘性グラウト、可塑性グラウト材等の硬化性充填材であればよく、適宜硬化時間が調整された硬化性充填材とされ、硬化時間は、適宜設計により設定される。
【0029】
縦孔23内に充填されるグラウト等の硬化性充填材21は、掘削残土25が投入される止水用有底筒状体24の体積を考慮して、図10(a)に示すように、所定の中間部の高さ位置まで注入する。
この状態において、ケーシング2と螺旋状攪拌部材1とが連結した状態として。駆動装置によりケーシング2を矢印で示すように回転させることで、硬化性充填材21を縦孔23の孔壁面に確実になじませて、付着を確実にさせることができる。
【0030】
(3)次いで、従動連結板9を適宜、仮保持手段により保持すると共に、ケーシング2に接続しているフランジ付き連結体12における外向きフランジ15を適宜、仮保持手段により保持し、前記のボルト19を取り外して、取り付けフランジ18付きの中空駆動軸17を取り外し、ケーシング2内に止水用有底筒状体24を挿入可能な状態とする(図7参照)。
その状態で、ケーシング2内に止水用有底筒状体24を挿入すると共に、その止水用有底筒状体24内に、縦孔23の掘削時において生じた掘削残土25及び不足する場合には適宜建設残土等の産業廃棄物を投入して止水用有底筒状体24を自沈させながら縦孔23内のグラウト等の硬化性充填材21をせり上げさせて、止水用有底筒状体24を沈設する(図10b参照)。前記の止水用有底筒状体24内に投入する材料としては、掘削残土を含む産業廃棄物、コンクリート又はモルタルの少なくとも一つ、必要に応じ複数を投入するように充填してもよい。止水杭体を高強度とする場合には、コンクリートを止水用有底筒状体24内に投入して充填硬化したり、止水性を向上させる場合には、適宜調整された各種のモルタルを止水用有底筒状体24内に投入して充填硬化させる。このようにすることで、結果的に、地中連続遮水壁の強度(曲げ剛性及び支持力)及び止水杭体の止水性能の向上を図ることができる。
【0031】
前記の止水用有底筒状体24としては、ポリプロピレン,ポリエチレン、ビニール等の合成樹脂製又はゴム製の止水用有底筒状体24としてもよく、ガラス繊維,炭素繊維等により強化された繊維強化樹脂製の止水用有底筒状体24としてもよく、ガラス繊維或は炭素繊維製等の繊維製の不浸透性の素材からなる不透水性の止水用有底筒状体24としてもよい。
【0032】
(4)前記の止水用有底筒状体24の沈設する時に、前記のように、ケーシング2先端の分割型下部蓋3を開放し、ケーシング2を引き上げることで、止水用有底筒状体24をケーシング2下端から抜いて、縦孔23内に残置させることができる(図10b参照)。
前記のように、ケーシング2を引き上げるために、図9に示すように、外フランジ15と中空駆動軸17側の取り付けフランジ18とを、ボルト・ナット20により連結し、従動連結板9の回転を適宜仮保持手段により保持して回転を阻止した状態で、前記空中駆動軸17を逆回転させると共に、螺旋状攪拌部材1のピッチと同じピッチとなるように上昇移動させることで、図10(a)(b)に示すように、前記螺旋状ガイド部2aを螺旋状攪拌部材1の螺旋状内周縁部22に沿って上昇移動させて、ケーシング2を螺旋状攪拌部材1の内側から離脱させることができる。
【0033】
(5)次いで、図10(b)に示すように、ケーシング2を引き上げて、ケーシング2の引き上げが完了したら、前記の外フランジ15と中空駆動軸17側の取り付けフランジ18とを連結しているボルト・ナット20を取り外し、図12に示すように、中空駆動軸17側の取り付けフランジ18を従動連結板9にボルト19(又はボルト・ナット)により連結し、駆動装置により、前記の螺旋状攪拌部材1を回転させて、グラウト等の硬化性充填材21を攪拌混合する。
このように、螺旋状攪拌部材1により、グラウト等の硬化性充填材21を攪拌混合することにより、硬化性充填材21を均一に混合し均質化を図り、また、均質止水用有底筒状体24の外周面との境界面を前面に渡って確実に付着させる。
【0034】
(6)前記のようにして、止水用有底筒状体24とその外側の硬化性充填材21とからなる2重構造の止水杭体31を形成する。また、隣り合う2重構造の止水杭体31相互が硬化性充填材21の部分で重なるようにし、図13に示すように、軟弱地盤27に連続する地中遮水壁32を構築する。
前記の止水杭体31は、グラウト等の硬化性充填材21が硬化する前に、一つ置き又は連続して一つづつ構築してもよいが、2つまたは3つ以上の複数を1ユニットとして、ユニットづつ構築するようにしてもよい。
前記の場合に、図13に示すように、先行して構築される止水杭体31と、後続して構築される止水杭体31との間の硬化性充填材21は、時間差をおいて打設施工されるため、本発明においては、隣り合う止水杭体31の間の硬化性充填材21を、ケーシング2に一体とされた状態又は分離された状態の螺旋状攪拌部材1を有効に利用して、隣り合う止水杭体31の間(境界部)の硬化性充填材21を均一に十分攪拌して、均質化及び施工させるようにしている。
【0035】
グラウト等の硬化性充填材21を充填した後において、又は、止水用有底筒状体24を沈設した状態において、ケーシング2と螺旋状攪拌部材1が連結一体されている時点において、縦孔23内のグラウト等の硬化性充填材21を攪拌混合したり、ケーシング2と螺旋状攪拌部材1が分離された状態においては、駆動装置に接続している螺旋状攪拌部材1により、グラウト等の硬化性充填材21と孔壁面との土を確実にミキシングして、孔壁面との付着のみならず、止水用有底筒状体24外周面との付着を確実に図り、しかも硬化性充填材21の均一化及び均質化を図り、遮水性を高めている。
【0036】
その他、本発明の実施の形態として上述した施工方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての施工方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。 その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例に想到し得るものであり、それら変更例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0037】
本発明を実施する場合、軟弱地盤によっては、アースオーガーに代えて、ケーシング2と螺旋状攪拌部材1とを連結一体化した状態で、軟弱地盤を掘削して、縦孔23を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 螺旋状攪拌部材
2 ケーシング
2a 螺旋状ガイド部
3 分割型下部蓋
3a 横軸
3b 回動駆動装置
4 ガイド部材
4a 上部ガイド片
4b 下部ガイド片
5 接続部
6 ガイド溝
7 螺旋状係合凸部又は凹部
8 係止凹部又は係止凸部
9 従動連結板
10 雌ねじ孔
11 上部連結部(ケーシング側)
12 フランジ付き連結体
13 筒本体
14 下部連結部
15 外向きフランジ
16 ボルト挿通用縦孔
17 中空駆動軸
18 取り付けフランジ
19 ボルト
20 ボルト・ナット
21 硬化性充填材
22 螺旋状内周縁部
23 縦孔
24 止水用有底筒状体
25 掘削残土
26 保持部材
27 軟弱地盤
28 掘削具
29 モルタル層
31 止水杭体
32 地中連続遮水壁
33 地中連続壁
34 杭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱地盤に連続した場所打ち杭列を構築することによる地中連続遮水壁の構築方法において、軟弱地盤に掘削形成された縦孔内に、硬化性充填材を設けて止水用有底筒状体を前記縦孔内に挿入すると共に、前記止水用有底筒状体内に、施工に伴う掘削残土を含む産業廃棄物、コンクリート又はモルタルの少なくとも一つを充填して止水用有底筒状体を自沈により沈設して所定の位置に配置し、前記止水用有底筒状体の外側を前記硬化性充填材で満たして、止水用有底筒状体とその外側の硬化性充填材からなる2重構造の止水杭体を形成すると共に、隣り合う前記2重構造の止水杭体相互が硬化性充填材の部分で重なるようにして連続する遮水壁を形成し、かつ、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材を、止水用有底筒状体の外側でこれを囲むように配設される螺旋状攪拌部材により攪拌し、前記螺旋状攪拌部材を引き上げた後、前記硬化性充填材を硬化させることを特徴とする地中連続遮水壁の構築方法。
【請求項2】
隣り合う前記2重構造の止水杭体間の硬化性充填材は、後行して設けられる2重構造の止水杭体の形成時に螺旋状攪拌部材により攪拌混合された後、硬化されることを特徴とする請求項1に記載の地中連続遮水壁の構築方法。
【請求項3】
前記螺旋状攪拌部材は、縦孔掘削時、又は硬化性充填材の充填後に縦孔内に配置され、隣り合う前記2重構造の止水杭体間の前記硬化性充填材を攪拌混合した後、回転させながら引き抜くことを特徴とする請求項1又は第2発明に記載の地中連続遮水壁の構築方法。
【請求項4】
前記硬化性充填材は、モルタル、粘性グラウト又は可塑性グラウトのいずれか一つであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の地中連続遮水壁の構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の地中連続遮水壁の構築方法に用いられる分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシングであって、前記ケーシングは、その外周面に螺旋状の軌跡に沿って間隔をおいて多数のガイド部材が設けられ、各ガイド部材はガイド溝を備え、多数のガイド部材におけるガイド溝に、螺旋状攪拌部材の螺旋状の内周側が螺旋状の軌跡に沿って移動可能に嵌合されていることを特徴とする分離可能な螺旋状攪拌部材を備えたケーシング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−237138(P2012−237138A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106741(P2011−106741)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(511115000)株式会社グラテクセンターシモダ (1)
【出願人】(593165878)株式会社エルジー (6)
【Fターム(参考)】