説明

地盤変動モニタリング装置及びこれを用いた地盤変動検知システム

【課題】連続的に使用でき、誤作動が少なくメンテナンスや経済性に優れた土石流等の地盤変動の検知システム。
【解決手段】観測地点に設置された少なくとも1以上の地盤変動モニタリング装置と、これから送信される情報を取得する管理サーバとからなる。管理サーバは、取得した情報を計測値として記録する計測値情報記録手段と、地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報と地盤変動モニタリング装置それぞれの位置情報とを関連付けて記録する装置設置情報記録手段と、地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段と、地盤変動を判定する判定手段とを有し、判定手段は、計測値情報記録手段に記録された計測値と、装置設置情報記録手段に記録された地盤変動モニタリング装置の識別情報及び位置情報と、判定情報記録手段に記録された判定基準情報とに基づいて地盤変動の判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を早期に検出する地盤変動の検知技術に関する。
【背景技術】
【0002】
崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動のうち、特に大きな災害を引き起こす異常出水等による土石流は、梅雨期や台風時の豪雨などにより水を含んだ大量の土砂が一瞬の間に谷沿いを流下する現象である。一般的に土石流は1時間に20mm以上の強い雨のときや、降り始めてから100mm以上の大雨のときに発生のおそれがあり、要注意とされている。そして発生する土石流のスピードは一般的に秒速5〜20m、時速20〜70kmであり、このスピードが大きな災害につながる要因ともいわれている。
【0003】
土石流の発生などの地盤変動による災害を少なくするために、土石流等の発生や規模を早期に把握する必要があり、土石流の検知装置が各種提案されている。従来の土石流検知装置は、接触型と非接触型とに大別される。
【0004】
接触型は、流路断面内にワイヤを水平に張り、土石流が発生するとワイヤが断線してこれを検知するもので、このワイヤを上下(鉛直方向に)に複数本張ることにより土石流の水位についてもおおまかに計測できるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、非接触型としては、上記ワイヤの代りに光線を使用する光センサ、土石流の発生音をマイクで検知する音響センサ、土石流の流下時に発生する地震動を捉える振動センサ、或いは土石流に向けて超音波を発生すると共にその反射波を受信して、その往復時間から水位を計測する超音波水位計、等を使用したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−352356号公報
【特許文献2】特開2002−148082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記接触型はワイヤを使用したものであり、一度断線すると張り替えない限り再度の検知ができないため、連続的な使用ができないという問題点を有している。
【0007】
また上記非接触型は、連続的な使用はできるものの、気象条件等により誤作動が生じやすく、信頼性に問題があったり、さらにメンテナンス等に困難さがあり費用的にも問題がある。
【0008】
本発明は、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を検知する技術において、連続的な使用が可能で、かつ誤作動が少なくメンテナンスや経済性に優れている地盤変動検知技術を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明が提案するものは、振動検知センサと無線ICタグとを備えていて観測地点に設置される地盤変動モニタリング装置であって、前記無線ICタグは、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報が記録されている記録部と、無線通信により情報の送信を行う通信部と、前記振動検知センサの計測情報に基づいて前記通信部を介して情報送信を行う制御部とを有することを特徴とするものである。
【0010】
この地盤変動モニタリング装置は、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置されて使用される。
【0011】
前述したように、本発明の地盤変動モニタリング装置においては、前記無線ICグが、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報が記録されている記録部と、無線通信により情報の送信を行う通信部と、前記振動検知センサの計測情報に基づいて前記通信部を介して情報送信を行う制御部とを備えていることを特徴にしている。
【0012】
前記の制御部の制御の下で行われる前記通信部を介しての情報送信は、前記振動検知センサの計測値に応じて情報送信(例えば、各無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報の送信)を行うものとすることができる。
【0013】
前記振動検知センサの計測情報に基づいて情報送信することにより、例えば、前記振動検知センサの計測値に応じて情報送信することにより、通常発生する振動と災害による振動とを予め区分けし、後述する本発明の地盤変動検知システムの検知精度を高めることができる。
【0014】
例えば、通常発生する振動と災害による振動とを区分けする設定に関する情報は後述する管理サーバの判定情報記録手段に記録されており、前記地盤変動モニタリング装置が設置される場所に応じて、当該情報が、管理サーバから各地盤変動モニタリング装置の無線ICタグに送信される。
【0015】
各地盤変動モニタリング装置に配備されている無線ICタグは、当該無線ICタグの記憶部に格納されている前記の通常発生する振動と災害による振動とを区分けする情報を参照し、前記振動検知センサの計測値に応じて情報送信することにより、災害による振動発生の場合にのみ情報送信するようにして、後述する本発明の地盤変動検知システムの検知精度を高めることができる。
【0016】
このように、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置される地盤変動モニタリング装置に、振動検知センサと無線ICタグとを配備したので、土石流等の地盤変動があったときは振動検知センサが感知し、無線ICタグが当該無線ICタグに固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)を送信する。そこで、従来の接触型のような断線による張り替えを不要とし、連続的な使用を可能にすることができる。
【0017】
振動検知センサ及び無線ICタグは、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置される地盤変動モニタリング装置に内装させることができる。例えば、地盤変動モニタリング装置上端側(例えば、頭部)に内装させることができる。これによって過酷な自然条件下での使用を可能にすることができる。なお、外部から覆って、地盤変動モニタリング装置の内部に振動検知センサ及び無線ICタグを取り付け、取り外し可能のように配備する形態にすれば、無線ICタグが電池使用のアクティブ型であっても電池交換を可能にすることができる。
【0018】
次に、前記目的を達成するため、本発明が提案するものは、所定の観測地点(例えば、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所)に設置された、少なくとも1以上の前述した本発明の地盤変動モニタリング装置と、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を取得する管理サーバとを備えている地盤変動検知システムである。
【0019】
この本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記管理サーバは、取得した情報を計測値として記録する計測値情報記録手段と、前記地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報と当該地盤変動モニタリング装置それぞれの位置情報とを関連付けて記録する装置設置情報記録手段と、地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段と、地盤変動を判定する判定手段とを有している。
【0020】
そして、前記の判定手段は、前記計測値情報記録手段に記録された計測値と、前記装置設置情報記録手段に記録された地盤変動モニタリング装置の識別情報及び位置情報と、前記判定情報記録手段に記録された判定基準情報とに基づいて地盤変動の判定を行うことを特徴とするものである。
【0021】
かかる本発明の地盤変動検知システムによれば、前述した本発明の地盤変動モニタリング装置を所定の観測地点に少なくとも1以上(例えば、複数)設置しておくことにより、前記振動検知センサの計測値が所定の値を越えた地盤変動モニタリング装置からはそれぞれ当該地盤変動モニタリング装置を特定する情報(例えば、当該地盤変動モニタリング装置に取り付けられている無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)を管理サーバが取得する。
【0022】
管理サーバの装置設置情報記録手段には、前記地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報と当該地盤変動モニタリング装置それぞれの位置情報とが関連付けられて記録されている。なお、ここで、例えば、前記地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報は、各地盤変動モニタリング装置に設置されている無線ICタグに固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報)とすることができる。
【0023】
そこで、前記の判定手段が、前記計測値情報記録手段に記録された計測値(例えば、管理サーバが取得した前記のICタグ識別情報)と、前記装置設置情報記録手段に記録されている地盤変動モニタリング装置の識別情報(例えば、前記の地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報であるところの、当該地盤変動モニタリング装置に設置されている無線ICタグのICタグ識別情報)及び位置情報とを利用して、前記振動センサの計測値が所定の値を越えた地盤変動モニタリング装置及び、その設置位置が特定される。
【0024】
これにより、例えば、土石流が発生するおそれのある箇所に、予想される土石流の流れを横切るように複数の本発明の地盤変動モニタリング装置を設置しておき、隣り合って設置されている地盤変動モニタリング装置から前記のICタグ識別情報を取得したならば、それらが設置されている幅方向の広がりで、土石流発生箇所や、その規模などを判定することが可能になる。
【0025】
以上に説明した本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を受信する読取装置と、該読取装置で受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われる形態にすることができる。
【0026】
例えば、前述した本発明の地盤変動モニタリング装置を所定の観測地点に1以上設置し、振動検知センサが振動を感知したときに無線ICタグが情報(例えば、当該無線ICタグに固有の識別情報である、他の無線ICタグと識別するための識別情報)を送信し、これを読取装置(例えば、ICタグリーダ)が受信して、通信装置が無線通信網に送信する。そして無線通信網を経由して管理サーバが取得し、管理サーバは上記各記録手段に記録された各種情報と、送信された前記の情報とに基づいて地盤変動の判定を行うものである。
【0027】
すなわち、本発明では情報送信を無線で行うので、従来の接触型検知装置のようにワイヤの断線は発生せず、連続的に使用することが可能である。そして、前述した本発明の地盤変動モニタリング装置を用いているので、誤作動を抑えた地盤変動の検出が可能となり、また、メンテナンスも容易な検出システムを提供することができる。
【0028】
なお、前記の地盤変動モニタリング装置から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を受信し、中継して送信する少なくとも1以上の中継装置と、該中継装置から受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われる形態にすることもできる。
【0029】
すなわち地盤変動モニタリング装置から送信される情報を受信する読取装置に換えて、地盤変動モニタリング装置から発信される情報を中継する中継装置を、通信装置と地盤変動モニタリング装置の間に置いたものである。読取装置であるICタグリーダの設置が困難な観測地点の環境や、ICタグリーダの読取可能範囲が狭小である等の場合を考慮したものである。
【0030】
以上に説明した本発明の地盤変動検知システムにおいて、前記管理サーバは、前記地盤変動モニタリング装置が設置された前記観測地点の地形地質情報を記録した地形地質情報記録手段を更に有し、前記判定手段は地盤変動の判定において前記地形地質情報に基づく補正を行うものとすることができる。
【0031】
予め地盤変動モニタリング装置が設置された観測地点の地形地質情報を記録し、地盤変動の判定の補正に使用することで、より現場状況に合致した地盤変動の判定が可能となる。例えば、常時落石多発地帯であることや、地盤の弱い地帯で土石流が発生し易い傾斜の急な要注意地点であることなどの地形地質情報を記録しておけば、振動検知センサの振動検知により送信されてきたICタグの識別情報をより活用した判定ができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を検知するシステムあって、連続的な使用が可能で、かつ誤作動が少なくメンテナンスや経済性に優れている地盤変動検知システムと、これに使用される地盤変動モニタリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0034】
図1は、本発明に係る地盤変動検知システムの一例の概略構成を説明する図である。
【0035】
図1図示の実施形態に係る本発明の地盤変動検知システムは、振動検知センサ付の無線ICタグ23が内装されている地盤変動モニタリング装置11a、11b、11c、11d、・・・11n(以下、適宜「地盤変動モニタリング装置11」と総称する)と、この地盤変動モニタリング装置11から送信される情報である無線ICタグ23の識別情報(無線ICタグ識別情報(以下「ID情報」という)を受信する読取装置(ICタグリーダ)12と、読取装置12が受信したID情報を無線通信網13に送信する通信装置15と、無線通信網13を経由してID情報を受信する管理サーバ16とからで構成されている。
【0036】
なお、図1図示の実施形態では、通信装置15から送信されたID情報は、通信装置15の付近に位置する無線通信の基地局17を介して無線通信網13に送られ、さらにゲートウェイ18を介して接続されるインターネット19経由で管理サーバ16に送信される。
【0037】
地盤変動モニタリング装置11は、図2図示の形態では、下端側が大径の基部24になっている円柱体の本体21と、この本体21の上端側の平坦な頭部に対して着脱可能に螺合する円筒状の蓋体22とを備えている。そして蓋体22の内側底部に、振動検知センサ付の無線ICタグ23が取付けられている。
【0038】
本発明の地盤変動モニタリング装置11は、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置され、かつ長期間風雨に晒される。そこで、本体21は、ある程度の強度を有すると共に、耐候性、耐腐食性も備えた材質のもので形成することができる。例えば、プラスチック、アルミニウム、ステンレス等で製造することができる。
【0039】
蓋体22も、ある程度の強度を有すると共に、耐候性、耐腐食性も備えた材質のもの、例えば、プラスチック製とすることができるが、地盤変動モニタリング装置11内に内装される振動検知センサ付の無線ICタグ23のアンテナを外部に露出する等して、その通信機能に支障がなければ、アルミニウム、ステンレス等の金属製にすることもできる。
【0040】
図1図示の実施形態では、本体21の頭部に蓋体22を着脱可能に取付けるため、本体21の頭部(図2中、上側)の周端面と、蓋体22の内周面との間で相互にねじ切りされた螺合部25を形成している。しかし、長期間風雨に晒されて、地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置されることを考慮して、振動検知センサ付の無線ICタグ23を、地盤変動モニタリング装置11の内側に、取り付け、取り外し可能に装着できる形態であれば、図示の実施形態に限られるものではない。
【0041】
図3(a)は、振動検知センサ付の無線ICタグ23のブロック構成の一例を説明する図である。図示の実施形態では、振動検知センサ付の無線ICタグ23は、アンテナ31、通信回路32、制御回路33、メモリ35、A/D変換回路36、振動検知センサである振動センサ37、電源38を備えて構成されている。
【0042】
振動検知センサ37は、振動センサと対象測定物によって形成されるコンデンサの静電容量から、ギャップ(変位)を測定するもの、または渦電流効果を利用したもの等があるが、いずれを使用してもよい。
【0043】
電源38は、アクティブ型ICタグに使用されるものであれば、特に限定するものでなく、通常で2年程度の使用が可能と考えられる。電池交換は上記したように、地盤変動モニタリング装置11の蓋体22が螺合により着脱可能であることから、容易に行える。
【0044】
A/D変換回路36は、振動検知センサ37の計測値であるアナログ値をデジタル値に変換するものである。
【0045】
メモリ35は、識別情報であるID情報が記録されているものであり、通常読み書き可能な記録回路により構成されている。ID情報は、無線ICタグ23ごとの識別情報である。
【0046】
図示の実施形態においては、この各無線ICタグ23ごとのID情報は、当該無線ICタグ23が配備されている地盤変動モニタリング装置11を特定する地盤変動モニタリング装置11の識別情報として、当該地盤変動モニタリング装置11が設置されている位置を表す位置情報に関連付けられて、後述するように、管理サーバ16の装置設置情報記録手段76に記録されている。
【0047】
通信回路32は、メモリ35に記録されたID情報を、アンテナ31を介して読取装置(ICタグリーダ)12に送信する機能を有する。
【0048】
制御回路33は、振動検知センサ付の無線ICタグ23の各構成回路、構成部分等を制御する機能を有するもので、図示の実施形態では、振動センサ37の測定値が予め設定された所定値以上であるときに、メモリ35に記録されたID情報を読取り、通信回路32を制御してアンテナ31を介して送信するようになっている。
【0049】
図4は、読取装置(ICタグリーダ)12及び通信装置15のブロック構成の一例を説明する図である。図示の例では、読取装置(ICタグリーダ)12は、アンテナ51、通信手段である送受信手段52、制御手段53、記録手段55、電源56を備えて構成されている。
【0050】
読取装置(ICタグリーダ)12は、地盤変動モニタリング装置11から送信されるID情報を受信する機器で、受信可能範囲を考慮して地盤変動モニタリング装置11の設置位置、設置数により、その設置数量や設置位置が決定される。地盤変動モニタリング装置11は、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置されるのに対し、読取装置(ICタグリーダ)12は土石流等に触れることのない地点に設置することが好ましい。
【0051】
また使用する電源56は、太陽光発電装置と蓄電池とを組み合わせたものを用いることができる。地盤変動モニタリング装置11に使用する振動検知センサ付の無線ICタグ23と異なり、読取装置(ICタグリーダ)の使用電力は大きいので、太陽光による発電方式としたものである。これにより昼夜間を問わず連続使用を可能とすることができる。
【0052】
アンテナ51及び送受信手段52は、地盤変動モニタリング装置11の振動検知センサ付の無線ICタグ23から送信されたID情報を受信するものであり、受信したID情報は一旦、記録手段55に記録される。
【0053】
制御手段53は、読取装置(ICタグリーダ)12の上記各手段等を制御するものであり、受信したID情報の記録指示、後述する通信装置15への送信等を行うものである。なお、図示の実施形態では、読取装置(ICタグリーダ)12と通信装置15は近接しており、有線にて情報の送受信をおこなっている。
【0054】
通信装置15は、読取装置(ICタグリーダ)12が受信、収集したID情報を無線通信網13に送信する役割を有するものである。図示の実施形態では、通信装置15は、アンテナ61、通信手段である送受信手段62、制御手段63、記録手段65、増幅手段66、電源67を備えて構成されている。
【0055】
電源67は、読取装置(ICタグリーダ)12と同様に、太陽光発電装置と蓄電池とを組み合わせたものを用いるが、読取装置(ICタグリーダ)12又は通信装置15の何れかに電源を設け、電力の融通を行ってもよい。
【0056】
アンテナ61及び送受信手段62は、読取装置(ICタグリーダ)12から送信されたID情報を無線通信網13に送信する機能を有するものである。なお読取装置(ICタグリーダ)12から送信されたID情報は一旦、記録手段65に記録される。
【0057】
増幅手段66は、無線通信網13にID情報を送信する前に、出力情報を増幅する機能を有するものである。
【0058】
制御手段63は、通信装置15の各手段の機能を制御するもので、主として読取装置(ICタグリーダ)12から送信されたID情報の記録、無線通信網13への送信指令等の機能を有する。
【0059】
図5は、管理サーバ16のブロック構成の一例を説明する図である。図5図示の例では、管理サーバ16は、通信手段71、制御手段72、地盤変動を判定する判定手段73、情報提供手段75、地盤変動モニタリング装置11にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置11と識別するための識別情報と当該地盤変動モニタリング装置11それぞれの位置情報とを関連付けて記録する装置設置情報記録手段76、地形地質情報記録手段77、地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段78、取得した情報(計測値)を記録する計測値情報記録手段79を備えて構成されている。
【0060】
装置設置情報記録手段76に記録されている、各地盤変動モニタリング装置11にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置11と識別するための識別情報は、この実施形態では、各地盤変動モニタリング装置11に配備されている無線ICタグ23に固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報であるID情報)としている。
【0061】
地盤変動モニタリング装置11にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置11と識別するための識別情報と、当該地盤変動モニタリング装置11それぞれの位置情報とを関連付けて装置設置情報記録手段76に記録することは、例えば、地盤変動モニタリング装置11の設置時にGPS装置で計測した設置位置の緯度経度の位置情報と、各地盤変動モニタリング装置11に配備されている無線ICタグ23に固有の識別情報(すなわち、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報であるID情報)とを関連付けて記録するようにして行われる。
【0062】
なお、各地盤変動モニタリング装置11にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置11と識別するための識別情報として地盤変動モニタリング装置11自体の番号(地盤変動モニタリング装置番号)を用いることもできる。
【0063】
管理サーバ16は、本システム用の各種表示装置等を備えた専用機を使用してもよいが、パーソナルコンピュータやワークステーション、及び各種通信機器等を備えて構成することもできる。
【0064】
計測値情報記録手段79は、振動センサ37が所定の振動値を検出した場合、前記の無線ICタグ23から送信されてきたID情報を計測値として記録するものである。なお、この際、当該ID情報を取得した日時情報を発生日時情報として前記のID情報とともに計測値として記録しておくことができる。
【0065】
判定情報記録手段78には、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動の判定を行うための判定基準が記録されている。
【0066】
後述する判定手段73はこの判定基準と上記した計測値に基づき、地盤変動の判定を行うものである。
【0067】
この判定基準としては、例えば、連続して設置されている複数の地盤変動モニタリング装置11のうち、隣接する5台以上の地盤変動モニタリング装置11に配備されている各無線ICタグ23からID情報が送信されてきたときを地盤変動の警告段階、隣接する10台以上の地盤変動モニタリング装置11に配備されている各無線ICタグ23からID情報が送信されてきたときを地盤変動発生段階とする判定基準を採用することができる。
【0068】
地形地質情報記録手段77は、地盤変動モニタリング装置11を設置した観測地点の地形、地質等の情報が詳細に記録されているものであり、この地形地質情報により地盤変動の判定の補正を行うようになっている。
【0069】
例えば、ID情報を送信してきた隣接する地盤変動モニタリング装置11が5台であっても、当該観測地点の地質が土石流の発生が起こり易い注意地点である場合であって、補正値として2を乗じるように記録されているときは、5(台)に2を乗じて10(台)として地盤変動発生段階に繰り上げるようになっているものである。なお、これは例示であって実際にはより現実に対応した補正値が設定される。
【0070】
判定手段73は、上記したように計測値情報及び判定情報により、あるいは、計測値情報、判定情報及び地質地形情報により、地盤変動の判定を行う機能を有するものである。
【0071】
情報提供手段75は、判定手段73が行った判定の結果を、図示しない表示機器等に出力表示するものである。表示機器としては、表示ランプ、映像、音声等によって行うものである。出力は近接地のほか、インターネット19等の通信回線を通じて送信することもできる。
【0072】
通信手段71は、通信装置15から送信される地盤変動モニタリング装置11からのID情報をインターネット19等を介して受信する機能を有するものであり、PC等に内蔵される通信回路等が該当する。
【0073】
制御手段72は、管理サーバ16の各手段を制御する機能を有するものであり、例えばPCのCPU、RAM等が該当する。なお判定手段73及び情報提供手段75も、上記CPU、RAM等を所定のアプリケーションにて作動させることで、上記各手段の機能を発揮するようになっている。
【0074】
また上記各記録手段(76〜79)は、ハードディスク、光磁気ディスク等の外部記憶装置が該当し、バス80を介して通信手段71、制御手段72、判定手段73及び情報提供手段75と接続されて、情報交換をおこなっている。
【0075】
次に、以上に説明した地盤変動検知システムの動作について、動作手順のフローチャートを示す図6を参照して説明する。
【0076】
なお、管理サーバ16においては、観測地点に設置した地盤変動モニタリング装置11の設置位置(緯度経度等)、各地盤変動モニタリング装置11の番号、各地盤変動モニタリング装置11に配備されている無線ICタグ23のID情報等が、装置設置情報記録手段76に記録されているものとする。
【0077】
地盤変動モニタリング装置11は、振動センサ37が予め設定された数値以上の振動を感知したときは、制御回路33の指令によりメモリ35に記録されたID情報を通信回路23及びアンテナ31を介して送信する。
【0078】
このID情報は、読取装置(ICタグリーダ)12に受信され、接続する通信装置15によって無線通信網13に送信される。
【0079】
そしてゲートウェイ18、インターネット19を経由して管理サーバ16に送信される(S11)。
【0080】
管理サーバ16は、連続して送信された各地盤変動モニタリング装置のID情報を集計し、計測値情報記録手段79に記録する(S12)。
【0081】
判定手段73は、計測値情報記録手段79に記録された計測値(送信されたID情報)と、装置設置情報提供手段76に記録されている設置済み地盤変動モニタリング装置11の識別情報に関連付けられている各地盤変動モニタリング装置11の位置情報、判定情報記録手段78に記録されている地盤変動の判定基準、さらに地形地質情報記録手段77に記録された、判定の補正数値としての観測地点の地質地形情報に基づいて、地盤変動の判定を行う(S13)。
【0082】
上記判定結果は、情報提供手段75によって図示しない表示装置等に出力する(S14)。
【0083】
このように、崖崩れの発生、土石流の発生、地滑りの発生などの地盤変動を観測・モニタリングする場所に設置されて使用される複数の地盤変動モニタリング装置のそれぞれから、振動感知によって各地盤変動モニタリング装置に内蔵された無線ICタグのID情報が送信されてくる。そこで、連続するように複数の地盤変動モニタリング装置を設置しておけば、異常出水による土石流の発生、落石、崖崩れ等の地盤変動があった場合、管理サーバ16が取得するID情報も複数になるので、適切な分析による判定ができる。
【0084】
その結果、誤作動を極力防止でき、さらには分析により災害予側も可能である。またワイヤ等を張った接触型の検出装置と異なり、長期にわたって連続した観測ができる。
【0085】
更に、地盤変動の判定情報を充実させることで、土石流の規模、場所、速度、下流域への到達時間などを計測・演算し、流域住民や工事従事者などに通報・警告する機能を有するシステムをさらに構築することができる。
【0086】
また、監視カメラを設置することで、送信されたID情報に基づき、該当する地盤変動モニタリング装置の周辺にある監視カメラを作動させ、観測地点の画像も取得することができる。
【0087】
(他の実施形態)
図7は、本発明に係る地盤変動検知システムの他の実施形態の概略構成を説明する図である。
【0088】
上記した実施形態と相違する点は、読取装置(ICタグリーダ)にかえて中継装置を複数設置して、ID情報を中継送信したものである。
【0089】
したがって、相違する点を中心に説明し、共通する点は説明を省略する。
【0090】
図7に示すように、地盤変動モニタリング装置11a、11b、11c、11d、・・・、11nと通信装置15との間には、ID情報の送受信を無線中継する中継装置14a、14b、・・・、14n(以下、適宜「中継装置14」と表す)が設けられている。
【0091】
図3(b)は、中継装置14のブロック構成図である。図示の例では、中継装置14は、アンテナ81、通信回路82、制御回路83、メモリ85、電源86、増幅回路87を備えて構成されている。
【0092】
この中継装置14は、通信のみが可能な無線ICタグを使用することができる。例えば、地盤変動モニタリング装置11に使用した本体21と蓋体22とで形成される密閉空間内に通信のみ可能な無線ICタグを取付けることで、中継装置14を構成することができる。
【0093】
なお本体21と蓋体22とで形成される密閉空間内に無線ICタグを設置したときに、無線機能を損なうことのないようにする必要があり、例えばアンテナ部のみを蓋体22から露出させる等が考えられる。
【0094】
このように、地盤変動モニタリング装置11を使用した中継装置14を設置して、ID情報の送信網を形成すれば、無線タグリーダの設置が困難な観測地点であっても、連続した地盤変動検知が可能となる。
【0095】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係る地盤変動検知システムの概略構成図。
【図2】本発明に係る地盤変動モニタリング装置の断面概略図。
【図3】(a)は地盤変動モニタリング装置に内装される振動検知センサ付の無線ICタグのブロック構成図、(b)は他の実施形態で使用する中継装置のブロック構成図。
【図4】読取装置(ICタグリーダ)及び通信装置のブロック構成図。
【図5】管理サーバのブロック構成図。
【図6】地盤変動検知システムの動作の手順を示すフローチャート。
【図7】地盤変動検知システムの他の実施形態の概略構成図。
【符号の説明】
【0097】
11(11a、11b、11c、11d、・・・、11n) 地盤変動モニタリング装置
12 読取装置(ICタグリーダ)
13 無線通信網
15 通信装置
16 管理サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動検知センサと無線ICタグとを備えていて観測地点に設置される地盤変動モニタリング装置であって、
前記無線ICタグは、他の無線ICタグと識別するためのICタグ識別情報が記録されている記録部と、無線通信により情報の送信を行う通信部と、前記振動検知センサの計測情報に基づいて前記通信部を介して情報送信を行う制御部とを有することを特徴とする地盤変動モニタリング装置。
【請求項2】
所定の観測地点に設置された少なくとも1以上の請求項1記載の地盤変動モニタリング装置と、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を取得する管理サーバとを備えている地盤変動検知システムであって、
前記管理サーバは、
取得した情報を計測値として記録する計測値情報記録手段と、
前記地盤変動モニタリング装置にそれぞれ付与されている他の地盤変動モニタリング装置と識別するための識別情報と当該地盤変動モニタリング装置それぞれの位置情報とを関連付けて記録する装置設置情報記録手段と、
地盤変動の判定基準情報を記録する判定情報記録手段と、地盤変動を判定する判定手段とを有し、
該判定手段は、前記計測値情報記録手段に記録された計測値と、前記装置設置情報記録手段に記録された地盤変動モニタリング装置の識別情報及び位置情報と、前記判定情報記録手段に記録された判定基準情報とに基づいて地盤変動の判定を行う
ことを特徴とする地盤変動検知システム。
【請求項3】
前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を受信する読取装置と、該読取装置で受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われることを特徴とする請求項2記載の地盤変動検知システム。
【請求項4】
前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報の管理サーバによる取得は、前記地盤変動モニタリング装置から送信される情報を受信し、中継して送信する少なくとも1以上の中継装置と、該中継装置から受信した前記情報を無線通信網に送信する通信装置及び、前記無線通信網を介して行われることを特徴とする請求項2記載の地盤変動検知システム。
【請求項5】
前記管理サーバは、前記地盤変動モニタリング装置が設置された前記観測地点の地形地質情報を記録した地形地質情報記録手段を更に有し、前記判定手段は地盤変動の判定において前記地形地質情報に基づく補正を行うことを特徴とする請求項2乃至4にいずれか一項に記載の地盤変動検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−47534(P2009−47534A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213510(P2007−213510)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(507279864)株式会社ACKグループ (3)
【Fターム(参考)】