説明

地盤注入工法

【課題】液状化の恐れのある地盤、特に、地盤注入を施し難い既設構造物下方等の地盤注入工法であって、削孔径を小さくし、作業性を向上させて大深度や長区間注入を可能にする。
【解決手段】外管吐出口22を有する外管20と、外管20内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカ27を外管吐出口22をはさむように間隔をあけて備え、さらに、パッカ内吐出口29を有し、かつ間隔をあけて備えられた内管パッカ27間に内管吐出口30を有する内管21とを備え、先端に位置情報発信器を内蔵したボーリングロッドで削孔された削孔23内に設置され、内管流路31に注入液を送液することにより、複数の内管パッカ27間に外管内空間32を形成するとともに、外管内空間32内に内管吐出口30から注入液を吐出し、外管吐出口22を通して地盤中に注入することから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軟弱地盤等、漏水地盤等、液状化の恐れのある地盤、汚染地盤などの地盤注入工法に係り、特に、地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤、廃棄物処理場の底盤あるいは溜め池や貯水池下方等(以下、「構造物」という)の地盤注入工法に係り、詳細には、地盤注入を施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、かつ経済的に地盤注入し、地盤沈下や、地震時における地盤の液状化を未然に防止し得、さらに廃棄物処理場からの有害物質の溶出を防止し得、さらに溜め池や貯水地からの漏水を防止し得る地盤注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物基礎の液状化対策工では、従来、例えば図1に示されるように、構造物54の基礎下に水平方向にボーリングして複数の吐出口を有する注入外管を設置し、さらにその外管内に注入内管を挿入して外管吐出口から順次に地盤中に注入液を注入して地盤を固結する方法が用いられている。
【0003】
液状化防止工は既設構造物直下の大容量土地盤改良となる場合が多く、このため、経済的に、かつ確実に地盤改良を行う必要がある。このためには、所定領域に確実に注入されなければならず、かつ、注入は低吐出速度で土粒子間浸透を行わなければならない。この場合、地盤改良には構造物下に屈曲と水平を任意に組み合わせて長距離の注入管を設置し、注入しなければならない。このため注入には長い時間を要し、かつ工期が長くなり、工事費が高くなる。これを防ぐためには注入管の削孔径を小さくし、注入操作を簡単にして施工能率を高めなければならない。このためには、一つの吐出口からは低吐出速度で注入して土粒子間浸透を図りながら、しかも、全体的には大吐出速度での注入を可能にして経済性の向上を計ることが考えられる。
【0004】
一般に、地盤は粒度や透水性の異なった層が互層になって形成されているため、地盤に注入管を挿入し、この注入管から注入液を通して地盤を固結する際、注入液は透水性の大きな層に逸脱してしまい、全体を均質に固結することができない。
【0005】
そこで、この問題を解決する手段として図12(a)乃至(d)に示される工法が開発されている。これを詳述すると、まず、図12(a)に示されるように、地盤1をボーリングし、この中にケーシング2を挿入する。次いで、図12(b)に示されるようにケーシング2の中に外管3を挿入する。この外管3の管壁4には軸方向の異なる位置に複数の吐出口5、5・・5が所定の間隔をあけて開口され、これら吐出口5、5・・5はそれぞれゴムスリーブ6で覆われている。
【0006】
さらに、ケーシング2にシールグラウト7を注入した後、図12(c)に示されるようにケーシング2を引き抜く。これにより外管3はシールグラウト7でシールされる。
【0007】
次に図12(d)に示されるように先端にストレーナ8、8・・8が穿設され、この上下にパッカ9、9が配置された内管10を外管3中に挿入し、この内管10の管路を通して注入液を注入すると、注入液は矢印のようにストレーナ8ならびに上下のパッカ9、9間に形成された空間11を経て、外管3の吐出口からゴムスリーブ6を押し拡げ、シールグラウト7を割ってそのステージ周辺の地盤1中に浸透する。
【0008】
上述図12に示される工法では注入液はシールグラウト7の存在により外管3に沿って上下方向に逸脱することがなく、所定の注入深度毎に確実に浸透して固結する。また、削孔と外管埋設という工程と注入という工程のそれぞれ異なる工種をそれぞれ別々に行うことができるので作業が単純化できるという作業上の利点も有している。
【0009】
しかし、上述の工法では内管10のパッカ9、9はリング状の硬質合成樹脂で形成されており、このような硬質パッカ9、9では注入深度が深くなると土圧によって外管が変形し、内管10の挿入あるいは引き上げが不能になる。また、パッカ9、9を軟質材料にするとパッカ効果が得られなくなる。このため、本出願人の特許第2772637号に示されるように、複数のパッカを有する内管を用いて複数の外管吐出口から同時に注入する方法も提案されているが、内管パッカとして硬質合成樹脂を用いており、上記問題は解決されていない。
【0010】
このため、硬質パッカの代わりに、特許第2814475号に示すエアパッカを用いる工法が開発されているが、この工法ではエアパッカの管路を内管内に形成しなくてはならないので、内管の径が大きくなる。したがって、外管の径も大きくなるのみならず、外管を挿入するボーリング孔も太くなり、経済性が低下し、作業工程も一つ増えるため、作業工程も一つ増え、施工が繁雑になる。
【0011】
さらに、二重管ロッドの内管先端部にゴムの袋体を設け、外管と内管の二つの流路を通る主材と反応剤水溶液を混合させ、得られるゲル化時間の短いグラウトとゲル化時間の長いグラウトと吐出口位置を切り換え二重管ロッドを引き上げながら注入する工法も本出願人によって提案されている。(特公昭63−64567号公報参照。)
【0012】
しかし、この方法はゲル化時間の異なるグラウトの切り換えが繁雑であり、かつ二重管ロッドを引き上げながら注入するため、ある注入深度での注入が不完全な場合、再注入して確実な注入効果を得ることは不可能である。また、多数の注入孔毎に、異なった種類の工程であるボーリング削孔工程と、注入工程を連続して行わなくてはならないため、作業の合理化が困難である。また、特開平7−71028および特開平8−226119には、注入管に袋体あるいはダンベル状の袋体からなるパッカを装着し、パッカ間の内管吐出口から外管吐出口を通して地盤に注入する工法が提案されている。しかし、いずれも袋体のパッカを膨らます流体はパッカ用の流路を通して圧入するものであって、内管吐出口から地盤中に注入される注入液の流路とは異なるものである。したがって、外管内に挿入する内管径は、それぞれ別々のパッカ用流路と注入液用流路からなるため太くなり、したがって、外管を埋設するための削孔径も大きくなり、経済性と作業性の点で問題がある。
【特許文献1】特公昭63−64567号公報
【特許文献2】特開平1−52910号公報
【特許文献3】特許第2814475号
【特許文献4】特開平7−71028号公報
【特許文献5】特開平8−226119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする問題点は構造物下方の液状化防止工に際し、水平方向または屈曲してボーリングし、ボーリング孔内に設置した注入管から注入液を注入する地盤注入工法において、注入管の管径を小さくして構造を単純化することにより削孔径(ボーリング孔径)を小さくし、かつ作業性を向上させて経済性を得、さらに構造物下への長区間の注入を可能にし、さらには、地盤中に定着した外管内を内管が容易にパッカを形成しながら所定の注入ステージに移向し、これにより何回も繰り返し注入を可能にし、あるいは長尺の多数の注入ステージを同時注入して注入効果を確実にし、上述の公知技術に存する欠点を改良した地盤注入工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明の地盤注入工法によれば、建造物下方の地盤に注入管を屈曲して、または水平に、または屈曲と水平を任意に組み合わせて設置し、この注入管を通して地盤中に注入液を注入する地盤注入工法において、前記注入管は軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えた注入管であって、先端に位置情報発信器を内蔵したボーリングロッドで削孔された削孔内に設置され、内管流路に注入液を送液することにより、前記膨縮性内管パッカを注入液の送液圧力によって膨張して複数の内管パッカ間に外管内空間を形成するとともに、この外管内空間内に内管吐出口から注入液を吐出し、注入液を外管内空間から外管吐出口を通して地盤中に注入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の地盤注入工法では、注入管は先端に位置情報発信器を内蔵したボーリングロッドで削孔されたボーリング孔内に設置され、外管と、外管内に遊挿された内管からなり、この内管は内管パッカを膨張させるためのパッカ流体用管路を設けることなく、内管流路に送液される注入液の送液圧で内管パッカを膨張させ、パッカ流体用管路の設置を省略することにより内管径を小さくし、また、パッカ操作を省略しながら内管を外管内に自由に移向して所定のステージで注入し得、これにより構造物下の長大な地盤注入の経済性ならびに作業性を得るという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面を用いて詳述する。
図1は構造物下方の地盤注入例の基本図である。図2は本発明工法の一具体例の断面図である。図3は本発明工法の他の具体例の断面図である。図4は本発明工法のさらに他の具体例の断面図である。図5は本発明工法のパッカ機能の原理を説明するための説明図である。
【0017】
本発明は図1の基本図に示されるように、構造物54下方に深さ方向に、削孔23を複数本重ねるようにしてほぼ水平に形成し、この削孔23中に注入管(地盤注入管A)を挿入、設置し、この注入管Aを通して地盤1中に注入液を注入する。本発明工法に用いられる地盤注入管Aは具体的には例えば図2に示される。
【0018】
図2において、本発明工法に用いられる地盤注入管Aは外管20と、内管21とから基本的に構成される。外管20は軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口22を有し、地盤1中に形成された削孔23に挿入され、削孔壁24と外管20との間の削孔23中にシールグラウト25を填充して地盤1中に定着、設置される。外管吐出口22は図1に示されるように、ゴムスリーブ26で覆われる。このゴムスリーブ26は逆止弁として作用する。
【0019】
内管21は外管20内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカ27、27・・27を締め金具28、28・・28によって外管吐出口22をはさむように間隔をあけて備える。さらに、内管21は内管パッカ27内にパッカ内吐出口29を有し、かつ間隔をあけて備えられた内管パッカ内27、27間に内管吐出口30を備える。
【0020】
上述のように構成される本発明工法に用いられる地盤注入管Aは内管21の内管流路31に注入液を送液することにより、膨縮性内管パッカ27が注入液の送液圧力によって膨張して上下に隣接する複数の内管パッカ27、27間に外管内空間32が形成され、この外管内空間32には内管吐出口30から注入液が吐出され、注入液は外管内空間32から外管吐出口22を通し、ゴムスリーブ26を押し拡げ、かつシールグラウト25を割裂して地盤1中に注入される。次いで、内管パッカ27から填充物を排出して収縮の後、内管21を内管吐出口30が他の外管吐出口22と合致するまで移動し、同様にして注入を繰り返す。
【0021】
図3は本発明に用いられる注入管Aの他の具体例を示す断面図であって、外管20は外管吐出口22をはさむように複数の外管パッカ33、33・・33を備え、外管パッカ33内に外管パッカ内吐出口34を通して固結材を、ゴムスリーブ26を押し拡げて填充し、膨張させて地盤1中に定着、設置する。そして、内管流路31に注入液を送液することにより、膨縮性内管パッカ27が図2と同様、注入液の送液圧力によって膨張して左右に隣接する複数の内管パッカ27、27間に外管内空間32を形成する。注入液はさらに、内管吐出口30から外管内空間32および外管吐出口22を通して外管外空間35に吐出され、ここから地盤1中に注入される。さらに図2と同様にして内管21を移動し、注入を繰り返す。この外管空間35は大きな表面積を有する柱状の注入源となるので、多量の注入速度で注入しても、注入源の単位面積からの注入速度は小さいので、低圧で土粒子間注入でき、急速浸透注入が可能になる。
【0022】
また、上記外管パッカは透水性袋体からなり、パッカ内に固結材を圧入することによって、削孔径よりも大きな径に膨張するに充分な直径を有することが好ましい。特に、本発明の適用の対象となる液状化の危険のある地盤はルーズな細砂の滞積層であって、透水性が垂直方向よりも横方向の方が大きい。このため、注入液は水平方向に広く拡がりやすい。これを防いで横方向のステージ毎に所定の注入を行うには、外管パッカを土中に押し広げて孔壁よりも大きなパッカを形成することが望ましい。このようにすれば、パッカのまわりの土が周辺に圧蜜され、かつ固結材の一部が透水性袋体から周辺にしみ出して実際の袋体で形成されたパッカよりもさらに大きなパッカが土中に形成される。このため、注入液は横方向に無制限に逸脱することなく、所定のステージ毎に所定の注入量に対応した固結体が形成される。
【0023】
さらに、本発明では、ボーリングロッドによる削孔の際に、孔壁保持材を含有する削孔液を用いて削孔することが望ましい。孔壁保持材としては、CMCやPVA等、高分子系材料が適している。もちろん、これらにさらにベントナイトを混入することもできる。これらは潤滑材でもあり、横方向ボーリングの際に削孔作業を容易にするのみならず、ボーリングロッドを引き抜くに当って、垂直方向の土圧が作用しても、孔壁が保持される。このため、引き抜きが容易になるのみならず、横方向の削孔壁が注入するまでに崩壊して注入が困難になるという問題を解決し、注入孔壁が高分子材の粘着力によって保持されて注入が容易になる。
【0024】
図4は本発明に用いられる注入管Aのさらに他の具体例の断面図であって、内管21が三個以上の膨縮性内管パッカ27、27・・27を備え、外管内空間32を複数形成した例である。この場合、複数の外管吐出口22、22・・22から注入液を同時に地盤1中に注入することができる。これにより、複数の注入ステージを同時に注入し得、長尺の注入区間の急速施工が可能である。すなわち、本発明は注入液自体でパッカを形成するため、多数のパッカを内管に形成でき、このため多数の外管吐出口から同時に注入することが可能である。
【0025】
なお、本発明において、内管流路31は図6に示すように、内管21を複数本備えることにより複数本設けることもできる。この場合、各内管吐出口30、30・・30はそれぞれ異なる外管内空間32に開口するようにする。すなわち、本発明は注入液自体でパッカを形成するため、複数の注入管路を有する内管による同時注入が可能である。これにより、複数の注入ステージを同時に注入して長尺の注入区間の急速施工が可能であるのみならず、浸透性や強度の異なる注入材を土層の状態に合わせて注入でき、かつ主材を注入した注入ステージに反応剤を重ね合わせて注入することもでき、あるいは懸濁液を注入した領域に溶液型グラウトを重ね合わせて注入することもできる。このとき、図示しないが、複数の内管吐出口を同一の外管内空間に開口させておけば、2種類の注入液、たとえば主剤配合液(A液)と反応剤配合液(B液)が外管内空間で混合され、この混合液が外管吐出口から地盤に注入することになる。なお、複数の内管は並列管でもよく、多重管でもよい。
【0026】
さらに、内管吐出口30は次の(a)および(c)のいずれかを満たすように形成される。
(a)内管吐出口30を細孔に形成する。この状態を図7(a)に示す。
この細孔は内管21に直接所定の孔径で穿孔してもよいが、あらかじめ所定の径の細孔を穿設した摩耗しにくい金属製チップ(図示せず)を内管吐出口30に、取りはずし自在に螺着することが好ましい。この場合、注入液の噴射圧によってチップの細孔が摩耗し、径が大きくなった時点で新しいチップに取り換えることができるので、注入液の常に正確な吐出速度を保持することができる。
(b)内管吐出口30を内管パッカ内吐出口29よりも細孔に形成する。この状態を図7(a)、(b)に示す。
(c)内管吐出口30の面積を内管流路31の断面積よりも小さく形成する。この状態を図7(a)、(b)に示す。
【0027】
なお、内管吐出口30は図7(c)に示されるように、ゴムスリーブ26などの抵抗体で覆うか、図7(d)に示されるように、逆止弁50を取り付ける。逆止弁50は内管吐出口30に外側からボール51を当てがい、このボール51をバネ52で押えつけるように構成される。
【0028】
さらに、内管流路31には図5に示されるように、脱圧装置44を設けることができる。また、内管21は図8に示されるように、フレキシブルジョイントで連結して形成してもよい。図8において、図8(a)は一本の内管をフレキシブルジョイントで連結した例であり、図8(b)は複数本の内管をフレキシブルジョイントで連結した例である。
【0029】
内管パッカ27は不透水性で弾力性に富んだ合成ゴムの袋体で形成される。したがって、内管パッカ27内に注入液による内圧が作用すると、内管パッカ27は膨張して外管20の内壁に密着し、パッカを形成する。しかし、注入液の送液を中止したり、あるいは注入液の圧力を図8に示すような内管流路31に設けられた脱圧装置44により減圧すると、パッカ27の弾性によって収縮し、外管20の内壁から離れる。したがって、所定ステージで所定量の注入を完了したのち、直ちに次の注入ステージに移向できる。脱圧装置44は注入ポンプより下流側にあればよく、図中の三方コック等、バルブだけでもよい。内管の加圧された注入液はバルブが開けば外部に排出されて、内管パッカは収縮する。さらに、吸水ポンプで内管内の注入液を吸い上げてしまえば、注入ステージを移向する際に、内管内の注入液が外管内に漏出するのを最小限におさえることができる。
【0030】
注入深度が大きくなったり、水平方向の注入管設置長が長くなると、外管20は土圧によって変形する。したがって、内管21の挿入や移動が困難になる。しかし、図8(a)、図8(b)に示されるように内管21の所定の位置に合成ゴムのホース状フレキシブルジョイント53を設けることにより、内管21は外管20の変形に対応して外管20内を移向し得る。また、内管パッカ27はゴムパッカであって、所定のステージでの注入完了時に収縮する。このため、内管21は容易に外管21内で移向できる。さらに、従来のようなエアパッカが不用なため、内管21の径を細くすることができ、この点からも外管の変形に順応する。また、本発明において、内管は硬質パイプで形成してもよいが、内管吐出口が存在する範囲よりも手前側の内管をホースで形成することにより、捲取装置つきの昇降装置で自由に外管内を移動することが可能である。
【0031】
本発明の内管パッカ27は弾力性のある不透水性袋体であって、通常、合成ゴムが用いられる。これは内管21の内圧が作用しない時点では、筒状、好ましくは円筒状を呈し、パッカ内吐出口29が内部に位置するように両端を内管21に緊結し、水密性を保って形成される。このため、内管21を外管20内にスムーズに移向できる。なお、図2〜10における内管パッカ27は注入液の内管内圧力で袋体が膨張して外管20の内壁に密着した状態を示す。
【0032】
本発明に使用される注入材は内管パッカ27内でゲル化すると、パッカが機能しなくなるため、ゲル化時間が長く、かつ詰まりにくい材料が望ましい。したがって、気中のゲル化時間が土中のゲル化時間よりも長いものが良い。このような注入材は土中に注入した注入液がゲル化したあとでも、内管流路や内管パッカ中ではゲル化が生じておらず、このため所定ステージで所定量注入後、次の注入ステージに移向して注入するまで、パッカの収縮、膨張を繰り返してパッカ機能を継続することができる。この種の注入材としては、水ガラスのアルカリを酸で除去した非アルカリ性水ガラスグラウト、あるいは水ガラスをイオン交換樹脂や、イオン交換膜で脱アルカリして得られた活性シリカを主材とするグラウトが挙げられる。これらのグラウトは気中で10時間以上のゲル化時間を有するが、土中では数時間のゲル化時間を保持する。したがって、これらの注入液は長時間、広範囲の注入を可能とする。もちろん、注入時間が短い場合はゲル化時間が1時間以上のアルカリ系水ガラスグラウトも用いることができる。
【0033】
上述の注入材のうち、非アルカリ性水ガラスグラウトや活性シリカグラウトは溶液型であるため内管パッカ27内に詰まる心配がないのみならず、アルカリ分を含まないため粘性が低く、かつ内管パッカ27中にシリカのゲルを生じにくい。また、液状化対策を必要とする地盤は貝殻等のカルシウムを含むことが多く、弱アルカリ性を呈する。したがって、上述グラウトは地盤中でPHが上昇してゲル化が促進される。このため、地盤中におけるゲル化時間よりも注入管内から地上部におけるゲル化時間が長い。したがって、地盤中に注入している間に注入管の内管パッカ27中でゲル化する心配はない。このため、本発明の対象とする注入条件下、すなわち、建造物下を数十メートル、あるいは数百メートルの長距離に注入管を設置して数時間、あるいは十時間以上の長時間、注入し続ける注入条件下において、特に、非アルカリ性水ガラスグラウトと活性シリカグラウトは本発明工法の実施を可能ならしめ、本発明において優れた注入材ということができる。
【0034】
ここで、本発明にかかるパッカ機能の基本原理を図5を用いて説明する。図5は外管20およびその中に遊挿された内管21を備えた実験装置の説明図であって、吐出バルブ37を閉じて外管20と、内管21と、内管パッカ27と、外管内空間35と、外管吐出口22とからなる本発明装置の最小単位に関して圧力の関係を説明する。
【0035】
まず、内管21の内管流路31から注入液を圧力Pおよび流量Fで送液する。圧力Pは圧力計38により、流量Fは流量計39によりそれぞれ測定される。内管21と膨張性の内管パッカ27は内管パッカ内吐出口29を通じて連通しており、内管パッカ27は膨張する。この内圧は注入液の圧力Pと同じである。
【0036】
一方、外管20の外管吐出口22には流量圧力調整装置40が備えられる。この装置40の圧力調整弁41を開放しておけば、外管内空間32の圧力Pは空間32が外部に開放された状態にあるから、当然Pよりも低くなる。このときの圧力および流量は流量圧力調整装置40の圧力計42および流量計43で測定される。したがって、内管21内に注入液の送液圧力が加わっている限り、内管パッカ27は膨張してパッカとして形成され、内吐出口30から吐出された注入液は外管内空間32を経て外管吐出口22から外部に吐出される。
【0037】
圧力調整弁41を徐々に閉じてその開口度を低くすると、圧力計42の圧力は上昇する(P11)。この際、送液流量Fを同一にすると、内管圧力Pは圧力Pよりも高くなる。この場合、圧力P11は地盤の浸透抵抗圧に相当する。しかし、地盤に注入が行われている限り、圧力Pは圧力P11よりも高いわけであるから、当然、内管パッカ27内圧力は圧力Pとなって、外管内空間32内の圧力P11よりも高く維持されるので注入が継続することになる。
【0038】
しかるに、内管21内の注入液が内管吐出口30から出て、外管吐出22を経て地盤に注入されるまでの間に内管パッカ27が膨張し、内管パッカ27が形成される前は外管内空間32が充分形成されないので、注入液が外管内空間32を横方向に移動してしまうので、外管内を注入液が移動し、不特定の外管吐出口22から地盤中に注入されることになるので、所定の注入領域に注入されず、好ましくない。このため、内管吐出口30から外管内空間32に吐出される時点ですでに内管パッカ27が形成されていることが好ましい。そのためには内管21からの吐出に際して、加圧状態になっていることが好ましい。すなわち初期圧が生じていることが望ましい。
【0039】
初期圧とは空気中で注入液を吐出口から吐出した時に生じる管内圧を言う。普通、1ステージ当たりの注入、すなわち、上下のパッカ間の1注入区間は区間長にもよるが、通常は0.5m〜4mとして、注入速度は2〜50リットル/分で行われるが、そのような注入速度に対して内管パッカの材質にもよるが、通常、初期圧が0.1kgf/cm以上、好ましく、1kgf/cm以上である。その場合、内管吐出口から注入液が吐出する際に内管パッカがすでに膨張している。また、図5における送液圧は1〜50kgf/cmが好ましい。
【0040】
初期圧として、パッカの材質にもよるが、0.1kgf/cm以上、通常は1kgf/cm以上の管内圧力を生じれば、パッカが外管管壁に密着する。その場合の吐出口径は1ステージ当たりの吐出速度にもよるが、0.1〜5mm程度の細孔が好ましい。実際には1ステージ当たりの注入速度に対応して一つの吐出口径と、吐出口数と、膨縮性パッカの弾力性とを適切に設計することによって初期圧を任意に設定できる。したがって、本発明は以下の方法を行えることにより初期圧が容易に形成され、内管パッカを内管吐出口からの吐出よりも早く膨張しやすくすることができる。
【0041】
(a)内管吐出口を細孔にする。
(b)内管吐出口の面積は内管流路の断面積よりも小さい。
(c)内管パッカ内吐出口を内管吐出口よりも大きくする。
(d)内管吐出口は逆止弁を設けている。図7(d)はバネ52の力よりも内管内の注入液の圧力が大きくなってはじめて外管内空間に注入液が吐出される。
(e)内管吐出口は吐出抵抗体で覆われる。図7(c)において、ゴムスリーブ26を用い、吐出口を覆っておけば、ゴムスリーブ26の弾力性に対応した内管内注入液の圧力が高まった時点で注入液が外管内空間に吐出される。
以上において、細孔は上述のとおり、噴射孔にした方がさらに好ましい。
【0042】
以上の基本原理に基づいて本発明は請求項に示すとおりに完成された。図5中、44は脱圧装置であって、送液バルブ45、三方コック46、吸水ポンプ47から構成される。48は排水管であり、三方コック49を備える。
【0043】
図5からわかるように、注入圧力は圧力計38によって測定される。したがって、内管吐出口30から吐出された後、地盤中における注入圧力を知るには、空気中における吐出圧力を差し引いて算出すればよいことになるが、注入中における実際の圧力を知るには、外管内空間32に電気的土圧計、ストレインゲージまたは間隙水圧計のいずれかを設置して外管内空間32における注入液の液圧を計算し、その情報をリアルタイムで有線または無線により地上部の管理室に集め、その情報に基づき、注入速度や、注入圧力や、注入の中断、完了等の注入管操作を管理することにより、最適の注入を行うことができる。もちろん、同時に、内管パッカ27内にも同様の電気的土圧計や、ストレインゲージ間隙水圧計のいずれかを設け、その情報を得ることによって内管内圧力と外部浸透圧力の変動や、圧力の差の情報を得ることによって内管の吐出口の状況や外部のゲル化の状況を正確に把握して注入管理にフィードバックすることができる。
【0044】
これらの計測センサーは通常、図7(d)あるいは図5の内管吐出口30の出口流路に設置することもできるが、さらに内管のパッカ間の外側壁にストレインゲージや土圧計をはりつけることもできる。もちろん、外管内側の壁面に埋め込むこともできる。そして、その情報は内管を通して、または外管に設けた溝等に沿って、有線または無線により地上に送られる。また、本発明において、隣接する二つの内管パッカ27、27をはさむ1ステージ毎に注入する場合、図5の流量計39の計測値がそのままそのステージにおける注入速度を示すことになる。一方、図4、図6に示すように、一定の注入流量を複数の注入ステージに同時に注入する場合、通常、土層が平面的に滞積している地盤を対象としており、この場合、内管吐出口の孔径に対応してその吐出量が分配されるとみなすことができる。このため、水平方向に注入する液状化防止用注入工法として本発明における多ステージ同時注入は極めて有用である。しかし、その実際を計測する場合には、図5または図7におけるそれぞれのステージの内管吐出口部分に毎分流速を計測するセンサーを設け、その計測センサーの情報を有線または無線で地上部の管理室に集めることによって各ステージの注入速度と注入量をリアルタイムで把握し、前述した注入操作にフィードバックして最適の注入管理をすることが可能になる。
【0045】
なお、流量計測センサーは定流量弁や、さらに積算流量計であって、これを図7(d)における逆止弁と内管吐出口の間の流路に設けてもよい。この場合、流量は内管に沿わせて外管内空間におさまるように設ければよい。また、積算流量計は注入が完了後、地上部に取り出して、そのステ−ジの注入量を確認してもよく、また、有線または無線により、
リアルタイムで地上部で情報を集めて記録してもよい。また、上述したように、注入圧力センサーと注入流量センサーを同時に設け、これにより、各注入ステージにおける外管内空間の注入圧力、吐出速度を把握して注入管理をすることができる。
【0046】
図9(a)〜(g)は注入管を地盤中に設置するための施工例の説明図であって、図9(a)はボーリングロッド55のヘッド部58付近を示す。ボーリングロッド55の(単管ヘッド)のヘッド部58は先端がテーパー面56に形成され、螺着体59で螺着されている。
【0047】
ヘッド部58は図9(b)に示されるように、地盤1中の位置情報を発信する発信器、すなわち、位置情報発信器60を内蔵し、牽引バー61に連結されている。位置情報発信器60から発信された情報は後述の図9(c)に示されるように、地表面36に設置された受信ロケーター62によって受信される。
【0048】
図9(c)はボーリングロッド55(単管ロッド55)を構造物54真下の地盤1中に掘進している状態を表した説明図であって、地表面36上に設置された削孔機57にヘッド部58に位置情報発信器60の内蔵された単管ロッド55を接続し、屈曲と水平を任意に組み合わせながら、水等のボーリング流体の噴射とともに地盤1中に掘進する。そして、地表面36には受信ロケーター62を設置し、この受信ロケーター62が地下の位置情報発信器60からの位置情報の電波を受信する。削孔機57はその情報に基づき、ボーリングロッド55(単管ロッド55)の削孔方向や位置を確認し、コントロールしながら単管ロッド55を地盤1中に掘進する。
【0049】
ボーリングロッド55のヘッド部58の先端はテーパー面56に形成されているため、ボーリングロッド55を回転すれば直進し、回転を止めて圧入すればテーパーの方向に応じて屈曲し、この結果、ボーリングロッド55は任意の方向に掘進される。ヘッド部58の位置はコントローラ(図示せず)で把握し、これをボーリング操作にフイードバックできる。また、ボーリングロッド55の先端には位置情報装置としてジャイロを設けることによりボーリングロッド55内を通してヘッド部58の位置を把握することもできる。
【0050】
単管ロッド55を地盤1中の所定の位置まで掘進した後、図9(d)に示されるように、牽引バー61を引っ張って位置情報発信器60を地上に回収する。この結果、ボーリングロッド55の先端から末端まで空洞になる。このボーリングロッド55内空洞に、次いで、図9(e)に示されるように、先端にメカニカルアンカー63の装着された外管20をシールグラウト25を圧入させながら挿入する。
【0051】
次に、外管20を押しながら単管ロッド55を引き抜くと、図9(f)に示されるように、メカニカルアンカー63が開いて削孔壁24にかみ込み、これにより外管20はアンカーされ、かつシールグラウト25によって削孔23内に定着する。
【0052】
さらに、シールグラウト25が固化して後、図9(g)に示されるように、複数の膨縮性内管パッカ27、27・・27を間隔をあけて備え、パッカ間に内管吐出口30を有する内管21を外管20に遊挿する。次いで、内管21内に注入液を圧入すると、注入液がパッカ内吐出口29からパッカ内に入り内管パッカ27、27・・27を膨張して外管20の内壁に圧着し、外管内空間32を形成する。さらに、注入液は内管吐出口30および外管吐出口22を経てシールグラウト25を破壊しながら地盤中に浸透、注入する。
【0053】
注入の後、内管21内の注入液の内圧を脱圧することにより、内管パッカ27を収縮し、内管21を次の注入ステージに移動する。この操作を繰り返して所定注入領域を浸透固結する。なお、外管20はシールグラウト25の代わりに図3に示すように外管パッカ33を用いて定着することもできる。外管パッカ33には図示しないダブルパッカを有する内管を用い、外管パッカ内吐出口34から外管パッカ33内にセメントベントナイト等を圧入し、膨張して外管パッカ33を形成し、外管20を削孔内に定着する。
【0054】
図10は注入液送液装置Xを用いた本発明にかかる地盤注入工法の説明図であって、複数の注入管からの同時注入を行って大容量土の地盤固結を可能にするものである。図10に示される注入液送液装置Xは制御部130、注入液加圧部131、注入液分配部132、注入部133および送液系134から構成される。操業を手動で行う場合には、制御部130は必要としない。以下、制御部130を用いた例について具体的に詳述する。
【0055】
注入液加圧部131は図10に示されるように、注入液槽135からの注入液ポンプ136(グラウトポンプ)により加圧し、加圧注入液として送液系134を介して注入液分配部132に送液する。グラウトポンプ136は制御部130の注入監視盤130aからの指示を受け、注入液を所望の圧力に加圧する。
【0056】
注入液分配部132は複数本の分岐管137、137・・137を備える。これら分岐管137、137・・137はそれぞれ先端に注入管Aと連結する連結部138を有する。この連結部138は所定の注入管Aを通して所定の注入量を注入し終わった時点で、あるいは所定の注入圧に達した時点で、その分岐管137を他の注入管Aに連結換えすることもできる。
【0057】
上述の分岐管137、137・・137は図10に示されるように、送液系134を介して加圧部131と連結された分配部132からのそれぞれ伸長して配置され、先端の連結部138で注入管Aと連結される。そして、加圧部131からの加圧注入液は分配容器139を介して各分岐管137、137・・137に分配され、注入管Aに送液される。なお、この分配容器139には図示しない攪拌装置を備えることもできる。また、各137、137・・137は分配容器139を経たずに、直接、加圧部131からの送液系134と連結することもできる。
【0058】
また、図10において、分岐流量計f、f・・fの総量を測定することにより送液流量計140の流量を把握することができ、このため、送液流量計140は必ずしも必要としない。さらに、送液圧力計141は必ずしも送液系134に設けなくても、直接、分配容器139に設けてもよい。V〜Vは分岐バルブ、P〜Pは分岐圧力計、130bは操作盤130cは注入記録盤、130dデータ入力装置、142は送液バルブである。また、圧力ボンベ143は内管自動昇降機144を作動する。これらは、いずれも制御部130と接続され、制御部130からの指示を受けて作動する。
【0059】
図11は注入液送液装置として多連装注入装置を用いた本発明にかかる地盤注入工法の説明図であって、注入液を貯蔵する注入液槽135と、一プラント中にそれぞれモータ等の独立したあるいは図示しないが共通の駆動源145で作動し、かつ制御部130に接続されて制御される多数のユニットポンプ146、146・・146と、これら各ユニットポンプ146、146・・146から伸長され、配置される送液管147、147・・147とを備えて構成される。各送液管147、147・・147の先端に連結部38を備え、地盤1の削孔23に挿入された注入管Aの内管21の内管流路31に連結される。注入液槽135中の注入液は各ユニットポンプ146、146・・146の作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入管Aの内管流路31に圧送され、パッカ内吐出口29を通して内管パッカ27を膨張するとともに、複数の外管吐出口22、22・・22からゴムスリーブ26を押し開けて同時に地盤1に多点注入される。Vは分岐バルブである。圧力ボンベ143は自動昇降機144を作動するが、図10と同様に制御部130からの指示を受けて作動する。
【0060】
上述本発明の注入工法は注入液を注入液加圧部から複数の注入液送液系統を通して前記地盤中の注入ポイントに注入し、前記複数の注入液送液系統には流量圧力検出器を設け、これら検出器から検出された注入液の流量および/または圧力のデータを注入監視盤を備えた集中管理装置に送信し、注入液送液系統からの注入状況を前記注入監視盤の画面に表示し、一括監視を行いながら、選定した複数の注入ポイントから注入を同時に行い、それぞれの注入状況を把握することにより各注入管路における注入開始から終了に至るまでの工程はそれぞれ別々に行いながら、かつ、全体の注入管理を行うことが可能であり、したがって、所定の場所に所定の形状の固結体を急速に形成できる。
【0061】
なお、本発明では、内管21の外側の外管内空間32および内管パッカ27には図示しない電気式土圧計を設置して、注入時の注入圧力をリアルタイムで計測し、注入材の制御部130へのフィードバックとすることもできる。この場合、土圧計の情報は常に有線および無線で地上部に集められ、注入制御部に反映する。
【0062】
以上のとおり、本発明にかかる注入工法は建物等の構造物54下方の液状化防止注入に適している。例えば構造物54下方の深さ方向に複数層積層して同時注入することもでき、あるいはさらに、構造物54の下方に水平方向に注入管を複数本並列して設定して同時注入することもでき、あるいはさらに、深さ方向と水平方向に複数層同時に固結層を形成することもできる。なお、本発明において、注入管設置のためのボーリングは構造物付近の地表面から行ってもよく、たて杭から先端に情報発信機を内蔵したボーリングロッドで水平に構造物の基礎地盤中に行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上述の本発明工法は管径を小さくして構造を単純化することにより削孔を小さくし、かつ作業性を向上させて経済性を得、さらに石油タンク基礎地盤や、飛行場の滑走路下や、建築物基礎地盤や、貯水池底盤や、産業廃棄物の底盤等の長区間注入を可能にし、かつ注入効果を確実する。
【0064】
すなわち、本発明工法は簡便な構造で注入管径を小さくすることができ、かつ構造物直下に、水平方向にあるいは屈曲しながら長尺の注入管を挿入し、注入することができる。特に、地盤の改良すべき個所に、任意形状の削孔、すなわちボーリング孔を穿孔し、このボーリング孔から複数の吐出口を介して注入液を地盤中に同時に注入し、地盤改良するようにしたから、所定の位置に、所定の浸透固結形態に急速な浸透固結を可能にするとともに、地盤注入の施し難い既設構造物下方の支持地盤を急速かつ確実に、さらに広範に地盤改良を施工し得、産業上有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】構造物下方の地盤注入例の基本図である。
【図2】本発明工法に用いられる装置の一具体例の断面図である。
【図3】本発明にかかる地盤注入装置の他の具体例の断面図である。
【図4】本発明にかかる地盤注入装置のさらに他の具体例の断面図である。
【図5】本発明のパッカ機能の原理を説明するための実験装置の説明図である。
【図6】内管を複数本備えた装置の説明図である。
【図7(a)】内管パッカ内吐出口と内管吐出口を表した説明図であって、大きさの関係を表す。
【図7(b)】内管パッカ内吐出口と内管吐出口を表した説明図であって、大きさの関係を表す。
【図7(c)】内管吐出口に覆われるゴムスリーブおよび逆止弁の説明図である。
【図7(d)】内管吐出口に覆われるゴムスリーブおよび逆止弁の説明図である。
【図8(a)】内管をフレキシブルジョイントで連結した状態の説明図であって、一本の内管を表す。
【図8(b)】内管をフレキシブルジョイントで連結した状態の説明図であって、二本の内管を表す。
【図9(a)】本発明に用いられるボーリングロッドの平面図である。
【図9(b)】本発明に用いられるボーリングロッドのヘッド部の断面図である。
【図9(c)】構造物直下にボーリングロッドを掘進している状態を表した説明図である。
【図9(d)】牽引バーを引っ張って発信ロケーターを地上に回収している状態の断面図である。
【図9(e)】外管をボーリングロッド内空洞に挿入している状態の断面図である。
【図9(f)】外管を削孔内に定着させた状態の断面図である。
【図9(g)】外管内に内管を遊挿し、内管パッカを膨張して外管内に定着させた状態の断面図を表す。
【図10】注入液送液装置を用いた本発明にかかる注入工法の説明図である。
【図11】注入液送液装置として多連装注入装置を用いた本発明にかかる地盤注入工法の説明図である。
【図12(a)】従来の装置の断面図であって、工程図を表す。
【図12(b)】従来の装置の断面図であって、工程図を表す。
【図12(c)】従来の装置の断面図であって、工程図を表す。
【図12(d)】従来の装置の断面図であって、工程図を表す。
【符号の説明】
【0066】
A 地盤注入管
1 地盤
20 外管
21 内管
22 外管吐出口
23 削孔
24 削孔壁
25 シールグラウト
26 ゴムスリーブ
27 内管パッカ
28 締め金具
29 内管パッカ内吐出口
30 内管吐出口
31 内管流路
32 外管内空間
33 外管パッカ
34 外管パッカ内吐出口
35 外管外空間
54 構造物
55 ボーリングロッド
60 位置情報発信器
130 制御部
135 注入液槽
136 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に注入管を屈曲して、または水平に、または屈曲と水平を任意に組み合わせて設置し、この注入管を通して地盤中に注入液を注入する地盤注入工法において、前記注入管は軸方向の異なる位置に複数の外管吐出口を有する外管と、この外管内に遊挿され、複数の膨縮性内管パッカを前記外管吐出口をはさむように間隔をあけて備え、さらに、これら内管パッカ内にパッカ内吐出口を有し、かつ前記間隔をあけて備えられた内管パッカ間に内管吐出口を有する内管とを備えた注入管であって、先端に位置情報発信器を内蔵したボーリングロッドで削孔された削孔内に設置され、内管流路に注入液を送液することにより、前記膨縮性内管パッカを注入液の送液圧力によって膨張して複数の内管パッカ間に外管内空間を形成するとともに、この外管内空間内に内管吐出口から注入液を吐出し、注入液を外管内空間から外管吐出口を通して地盤中に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項2】
請求項1において、外管を地盤の削孔中にシールグラウトを填充することによって定着、設置する請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項3】
請求項1において、外管に外管吐出口をはさむように複数の外管パッカを設置し、該外管パッカ内に固結材を填充し、膨張させて地盤に定着、設置する請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項4】
請求項3において、外管パッカは透水性袋体であって、該外管パッカ内に固結材を填充し、削孔径よりも大きな径に膨張させて土中にパッカを形成し、外管を地盤に定着、設置する請求項3に記載の地盤注入工法。
【請求項5】
請求項1において、内管が三個以上の膨縮性内管パッカを備えることにより外管内空間を複数形成してなり、これにより複数の外管吐出口から注入液を同時に地盤中に注入する請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項6】
請求項1において、内管流路を複数本設け、各内管吐出口を異なる外管内空間に開口するようにした請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項7】
請求項1において、膨縮性内管パッカは弾力性のある不透水性袋体であって、注入液の送液による内圧で外管内壁に密着するまで膨張し、注入液の送液を停止することにより、あるいは内管内の注入液の一部を脱液して内管内圧力を低下させることにより収縮し、これにより内管を外管内で移動自在とする請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項8】
請求項7において、弾力性のある不透水性袋体は筒状合成樹脂であって、パッカ内吐出口が筒状内に位置するように両端を内管に緊結して取付けられる請求項7に記載の地盤注入工法。
【請求項9】
請求項1において、内管吐出口は以下の(a)ないし(d)のいずれかを満たすように形成される請求項1に記載の地盤注入工法。
(a)内管吐出口を細孔に形成する。
(b)内管吐出口を内管パッカ内吐出口よりも細孔に形成する。
(c)内管吐出口の面積を内管流路の断面積よりも小さく形成する。
(d)内管パッカの袋体の両端に内管断面を連結する。
【請求項10】
請求項9において、細孔は噴射ノズルとして形成される請求項9に記載の地盤注入工法。
【請求項11】
請求項1において、内管吐出口が逆止弁を備えるか、吐出抵抗体で覆われる請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項12】
請求項1において、注入液として、空気中におけるゲル化時間が土中ゲル化時間よりも長い注入液を用いる請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項13】
請求項1において、内管流路には脱圧装置が設けられる請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項14】
請求項1において、内管はフレキシブルジョイントで連結される請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項15】
請求項1において、外管内空間および/または内管パッカ内に電気的土圧計、ストレインゲージあるいは間隙水圧計のいずれかを設置して注入時の注入圧を計測するようにした請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項16】
請求項15において、注入圧の情報は有線または無線で地上に集められ、注入の制御に用いられる請求項15に記載の地盤注入工法。
【請求項17】
請求項1において、内管吐出口に流量計測センサを設け、注入時の注入速度と注入量を計測するようにした請求項1に記載の地盤注入工法。
【請求項18】
請求項1において、前記外管は次の(a)、(b)または(c)の工程によって地盤中に設置される請求項1に記載の地盤注入工法。
(a)位置情報発信器内蔵のドリルヘッドが先端に装着されたボーリングロッドをケーシング中に挿入し、ドリルヘッドを回転しながら改良すべき地盤中にボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜き、残ったケーシング中に0逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してケーシングを引き抜き、外管を地盤中に定着する。
(b)位置情報発信器内蔵のボーリングヘッドが先端に装着されたボーリングロッドを地盤中にボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に到達したときに位置情報発信器内蔵部分を引き抜き、次いで、ボーリングロッド中に、逆止弁を備えた複数の外管吐出口を有する外管を挿入してボーリングロッドを引き抜き、外管を地盤に定着する。
(c)位置情報発信器内蔵のドリルヘッドが先端に装着されたボーリングロッドを地盤中に外管とともに押し込んでボーリングし、ボーリング孔が所定の位置に達したのち、ボーリングロッドを引き抜いて外管を地盤に定着する。
【請求項19】
請求項18において、ボーリングロッドによる削孔は孔壁保持材を含有する削孔液を用いて行う請求項18に記載の地盤注入工法。
【請求項20】
請求項1において、注入液は注入液送液装置によって内管流路に送液され、前記注入液送液装置が制御部と、注入液槽と、この注入液槽に連結され、注入液を加圧、送液する注入液加圧部と、加圧された注入液を地盤中における各注入管に送り出す送液管とを備え、前記注入液加圧部および送液管は制御部に接続され、制御部の制御のもとに注入液を前記複数の外管吐出口から地盤中に同時に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項21】
請求項20において、前記注入液送液装置は制御部と、注入液加圧部と、複数本の注入管に通じる複数の分岐管を有し、前記加圧部からの加圧注入液を各分岐管に分配する注入液分配部と、前記加圧部から前記注入液分配部に通じる加圧注入液の送液系と、この送液系に備えられた送液流量計および/または送液圧力計とを備え、これら注入液分配部、送液部、送液流量計および/または送液圧力計はそれぞれ制御部に接続されてなり、注入液を制御部の制御のもとに一つの送液系から複数の注入液流路に同時に送液して複数の外管吐出口から同時に注入し、これにより広範囲の地盤を急速かつ確実に改良する請求項20に記載の地盤注入工法。
【請求項22】
請求項20において、前記注入液送液装置は制御部と、注入液槽と、一プラント中に多数備えられるとともに、それぞれ注入液槽に接続され、かつ、独立した、あるいは共通の駆動源で作動するユニットポンプと、一方が前記各ユニットポンプに連結され、他方が前記複数の注入管にそれぞれ連結された送液管とを備え、これらユニットポンプおよび送液管はそれぞれ制御部に接続されてなり、前記注入液槽中の注入液を前記制御部の制御のもとに、各ユニットポンプの作動により各送液管に圧送し、複数の外管吐出口から同時に地盤に注入する請求項20に記載の地盤注入工法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図7(d)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9(a)】
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【図9(b)】
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【図9(c)】
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【図9(d)】
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【図9(e)】
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【図9(f)】
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【図9(g)】
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【図10】
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【図11】
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【図12(a)】
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【図12(b)】
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【図12(c)】
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【図12(d)】
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【公開番号】特開2006−152594(P2006−152594A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341933(P2004−341933)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000141082)株式会社関配 (22)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】