説明

均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体

【課題】 同一構造の糖鎖を有するエリスロポエチン誘導体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 エリスロポエチンのアミノ酸配列に1個または2個以上のシステインへの置換を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドに、構造が同一の1本または2本以上の糖鎖が結合基を介して結合しているエリスロポエチン誘導体、その製造方法、これを含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エリスロポエチンは赤血球系前駆細胞に作用しその分化、増殖を促進することにより、末梢血中の赤血球数を維持する機能を持つ血球分化ホルモンである。エリスロポエチンはヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウマを始め種々の動物に存在する。ヒトエリスロポエチン(配列番号1)はアミノ酸166残基からなる糖タンパク質であり、24、38および83番目のアスパラギン残基にN型糖鎖、126番目のセリン残基にO型糖鎖が結合しており、全重量のうち約40%を糖鎖が占めている。これまでの研究でエリスロポエチンの糖鎖の機能は、造血ホルモンとしての生理活性や、タンパク質の安定性に関わることが知られている。例えば、O型糖鎖が欠如していても生体内での活性にさほど影響がないが、これに対しN型糖鎖が欠如した場合エリスロポエチンは活性を失うこと(Wasley et al., Blood 1991, 77, 2624-2632)、糖鎖を持たないエリスロポエチンは、in vitroでは活性を示すが、in vivoでは速やかに代謝され活性を示さないこと(Takeuchi et al., Glycobiology 1991, 1, 337-346)、また、N型糖鎖を持つエリスロポエチンの中でも、糖鎖構造がより分岐しているもの、糖鎖の末端にシアル酸を有するものは、より少量のエリスロポエチンの投与でも長時間、生理活性効果を持続することができることが分かっている (Lin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1985, 82, 7580-7584、Erbayraktar et al.,. Proc. Natl. Acad. Sci. 2003, 100, 6741-6746)。こうした知見を受けて、これまでに糖鎖の結合部位や数を改変して生体内安定性を高めたエリスロポエチン誘導体がいくつか開発されており(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)、中には上市に至ったものもある(例えば、30および88番目のアミノ酸に追加の糖鎖が結合したダルベポエチンアルファ)。
【0003】
しかしながら、糖タンパク質であるエリスロポエチンは、糖鎖が結合されない大腸菌などの細菌を用いた製造方法を利用できないため、生産効率に劣る動物細胞を用いた方法で製造する必要があった。しかも、かかる手法で製造されたエリスロポエチンまたはエリスロポエチン誘導体は、糖鎖の生合成が完了していないために生じる糖鎖構造の不均一性によって、アミノ酸配列は同じであるが、糖鎖構造が不均一な異性体の混合物としてしか得ることができなかった。このため、製造ロット間の品質のバラツキや糖鎖の最適化ができないなどの問題を有していた。かかる問題を解決するための1つの方策として、エリスロポエチンを完全に化学合成により製造する試みが最近行われつつある。例えば、Macmillanらは、エリスロポエチンのペプチド鎖全長を大腸菌発現法によって発現し、そこに単糖(GlcNac)をハロアセトアミド法を用いたconvergent法によって導入している(非特許文献1)。しかしながら、発現法によるタンパク質に化学的に糖を結合させる当該手法では、糖の結合する位置を制御するのが困難であるし、また、複数の糖からなる糖鎖を単糖と同様に結合することができるかは定かではない。
【0004】
一方、化学合成法と発現法とを組み合わせた製造例も最近になって報告されている。例えば、エリスロポエチンの22〜28番目のペプチドにGlcNAcを結合させたものを化学的に合成し、これとは別に29〜166番目までのペプチド鎖を大腸菌発現法により得て、これらを連結させた例(非特許文献2)や、エリスロポエチンの1〜32番目のペプチドに、同様のconvergent法によってGlcNAcまたは5糖からなる非天然型の合成糖鎖を付加させたものを化学的に合成し、これとは別に33〜166番目までのペプチド鎖を大腸菌発現法により得て、これらを連結させた例(特許文献5)等が知られている。しかしながら、これらの製造例では、単糖か、または5糖からなる極めて短い非天然型糖鎖が結合しているにすぎず、得られたエリスロポエチン誘導体が、天然型糖鎖を有する天然のエリスロポエチンが有する活性を保持していることは到底期待できなかった。また、酵母を用いた発現法により、末端にシアル酸を有するN型糖鎖を付加したエリスロポエチンの合成も試みられたが、糖鎖構造の不均一性を解消するには至らなかった(非特許文献3)。したがって、5糖を超える単一構造の天然型糖鎖を有するエリスロポエチンまたはエリスロポエチン誘導体はこれまで得られておらず、さらなる研究努力が求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平3-72885
【特許文献2】特表平4-502331
【特許文献3】特表平8-506023
【特許文献4】特表2001−514851
【特許文献5】国際公開第2008/001109号パンフレット
【非特許文献1】Macmillan et al., Chemistry & Biology 2001, 8, 133-145
【非特許文献2】Macmillan et al., J. Am. Chem. Soc . 2004, 31, 9530-9531
【非特許文献3】Hamilton et al., Science 2006, 313, 1441-1443
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体を探求する中で、エリスロポエチン誘導体の糖鎖結合部分と糖鎖非結合部分とを別々に製造し、糖鎖結合部分の糖鎖結合部位に同一構造を有する糖鎖を結合させてから、糖鎖非結合部分と連結することにより、均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体が効率よく得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、エリスロポエチンのアミノ酸配列に1個または2個以上のシステインへの置換を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドに、構造が同一の1本または2本以上の糖鎖が結合基を介して結合しているエリスロポエチン誘導体に関する。
本発明はさらに、糖鎖が6糖以上のものである上記エリスロポエチン誘導体に関する。
本発明はまた、結合基が、−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される、上記エリスロポエチン誘導体に関する。
本発明はさらに、糖鎖が、少なくとも1つの非還元末端にシアル酸を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のエリスロポエチン誘導体に関する。
【0009】
本発明はさらにまた、糖鎖が、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
【0010】
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
【0011】
(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、および
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAcからなる群から選択される、上記エリスロポエチン誘導体に関する。
【0012】
また、本発明は、上記エリスロポエチン誘導体の製造方法であって、以下の工程:
(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖のシステイン残基に結合基を介して同一構造の糖鎖を結合する工程、
(3)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(4)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結する工程
を含む方法に関する。
さらに、本発明は、上記エリスロポエチン誘導体の製造方法であって、以下の工程:
(1)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖を調製する工程、
(3)結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖と結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖とを連結する工程、および
(4)連結されたポリペプチド鎖に結合基を介して同一構造の糖鎖を結合する工程、
(5)保護された結合基結合性アミノ酸を脱保護する工程
を含む方法に関する。
【0013】
さらにまた、本発明は、糖鎖が結合した連結されたポリペプチドをフォールディングする工程をさらに含む上記方法に関する。
本発明はまた、互いに連結される2本のポリペプチド鎖のうち、N末端側のポリペプチド鎖がC末端にチオエステル基を有し、C末端側のポリペプチド鎖がN末端にシステイン残基を有する上記方法に関する。
本発明はさらに、糖鎖が、少なくとも1つの非還元末端にシアル酸を有する上記方法に関する。
本発明はさらにまた、結合基が、−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される上記方法に関する。
また、本発明は、上記エリスロポエチン誘導体を含む医薬組成物に関する。
さらに、本発明は、エリスロポエチン欠乏性疾患の処置のための上記組成物に関する。
さらにまた、本発明は、エリスロポエチン過剰性疾患の処置のための上記組成物に関する。
【0014】
本発明はまた、(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第1の糖鎖を結合して、第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(3)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第2の糖鎖を結合して、第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(4)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(5)(2)で調製した第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第1のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(6)(3)で調製した第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第2のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(7)(5)で得た第1のエリスロポエチン誘導体と、(6)で得た第2のエリスロポエチン誘導体とを、所望の活性について比較する工程
を含む、糖鎖構造のスクリーニング方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエリスロポエチン誘導体は均一な糖鎖構造を有するため、ロット間のばらつきが少ないなど品質が安定しており、また、結合する糖鎖の種類を均一化できるため、糖鎖構造を目的に応じて最適化することが可能となる。
また、本発明の製造方法は、任意のエリスロポエチン誘導体に適用することができるため、既存のエリスロポエチン製剤の活性をさらに高めることが可能となる。
エリスロポエチンの適用対象となる患者や患畜の多さや、疾患の致命率を考慮すれば、本発明がヒト医学および獣医学にもたらす貢献は計り知れない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の1つの側面は、均一な糖鎖構造を有するエリスロポエチン誘導体に関する。
本発明におけるエリスロポエチンは、ヒト、サル、マウス、イヌ、ウシ、ウマなどの任意の動物に由来するものを包含する。各動物種に由来するエリスロポエチンのアミノ酸配列および核酸配列に関する情報は、種々のタンパク質および核酸データベース、例えば米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のデータベースなどから容易に取得することができる。典型例としてヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列および核酸配列を配列番号1および2として示す。
当然のことながら、生物個体間には、タンパク質の生理学的機能を損なわない遺伝子配列やアミノ酸配列の変異が生じる可能性があるため、本発明におけるエリスロポエチンは、上記配列番号で表される配列と同一の配列を有するタンパク質や核酸以外にも、同配列に対し1個または2個以上、典型的には1個または数個、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸または塩基が相違する配列を有するものを含む。
【0017】
本発明におけるエリスロポエチン誘導体は、天然のエリスロポエチンに化学的修飾および/または遺伝子工学的改変を加えた任意の化合物を含む。したがって、前記エリスロポエチン誘導体には、エリスロポエチンを構成するアミノ酸に化学基を付加したもの、糖鎖の構造を変化させたもの、糖鎖とアミノ酸の結合部位に結合基を付加したもののほか、天然のエリスロポエチンのアミノ酸配列に1個または2個以上、例えば1個または数個のアミノ酸の変異、すなわち、アミノ酸の欠失、置換、付加を有するアミノ酸配列を有する化合物等も含まれる。本発明の一態様において、かかるアミノ酸変異はシステインへの置換を含む。したがって、この態様においては、少なくとも1つのシステインへの置換の他に、他の任意の変異を有してもよい。これらエリスロポエチン誘導体のうち、天然のエリスロポエチンと同等かまたはこれを上回る活性を有するものが好ましい。かかる活性は、エリスロポエチン受容体への結合活性、赤血球前駆細胞の分化促進活性、増殖促進活性、赤血球数増加活性などを含む。これらの活性は、いずれも当業者に既知の手法で評価することができる。
【0018】
例えば、エリスロポエチン受容体への結合性は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法、平衡透析法、原子間力顕微鏡法(Florin EL et al., Science. 1994;264 (5157):415-7)、放射性同位体、酵素、蛍光色素などで標識した天然のエリスロポエチンと被験物質とを競合させる種々の競合アッセイなどにより行うことができる。また、赤血球前駆細胞の分化促進活性および増殖促進活性、さらにはその結果としての赤血球数増加活性は、簡便にはヘマトクリット値により評価することができる。かかる活性の少なくとも1つが、天然のエリスロポエチンと同等(±10%)か、これより20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、300%または400%以上であるものが好ましい。かかるエリスロポエチン誘導体は、エリスロポエチン欠乏性の種々の疾患、例えば、限定されることなく、腎性貧血、未熟児貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、抗がん剤などの細胞増殖抑制剤による貧血などの処置や、骨髄移植や自己輸血など、赤血球数の増加が必要な状況において有利に用いることができる。
【0019】
本発明のエリスロポエチン誘導体の別の態様においては、同誘導体が内因性のエリスロポエチンへの拮抗作用を有することが好ましい。この態様において、エリスロポエチン誘導体は、エリスロポエチンの活性、例えば、エリスロポエチン受容体への結合活性、赤血球前駆細胞の分化促進活性、増殖促進活性、赤血球数増加活性などを阻害する。かかる阻害活性は、既知量の天然型エリスロポエチンと、既知量、例えば、漸増量のエリスロポエチン誘導体とを共存させ、天然型エリスロポエチンの活性の変化を測定することにより評価することができる。本態様においては、エリスロポエチン誘導体が、内因性エリスロポエチンのかかる活性の少なくとも1つを5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%阻害することが好ましい。かかるエリスロポエチン誘導体は、エリスロポエチン過剰性の種々の疾患、例えば、限定されることなく、多血症などの処置に有利に用いることができる。
【0020】
本発明において、エリスロポエチン誘導体の糖鎖は、結合基を介してポリペプチド鎖に結合している。かかる結合基は、糖鎖とポリペプチド鎖のアミノ酸との結合を媒介するものであれば特に限定されず、例えば、システインとの結合を媒介する−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される基や、グルタミンに糖鎖を結合させるWO2005/095331に記載の結合剤により形成された基を含む。これらの結合基のうち、エリスロポエチン誘導体の上記活性を高めるものが特に好ましい。また、別の態様においては、エリスロポエチン誘導体に、内因性エリスロポエチン阻害活性を付与する結合基、さらにはかかる阻害活性を高める結合基が好ましい。
【0021】
本発明のエリスロポエチン誘導体は、均一な糖鎖構造を有するものである。すなわち、本発明のエリスロポエチン誘導体に結合している糖鎖は全て同一(または単一)の構造を有している。糖鎖は、複数の単糖が、直鎖状にまたは分岐して結合したものであるため、同一構造を有するとは、糖鎖に含まれる単糖の種類および数、結合順序、結合様式などが同一であることを意味する。ここで、構造が全て同一であるとは、エリスロポエチン誘導体に結合している全ての糖鎖のうち、主要な構造を有する糖鎖の占める割合が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上、最も好ましくは100%であることを意味する。結合している糖鎖が同一の構造を有しているか否かは、当業者に知られた糖鎖の構造を解析するための種々の手法、例えば、NMR、多次元HPLC、MSn(多段階質量分析)などで判断することができる。
【0022】
本発明のエリスロポエチン誘導体に結合させる糖鎖は、エリスロポエチン誘導体の活性、特に赤血球数増加活性などの生体内活性を担保するものであれば特に限定されずに、公知の任意の糖鎖を含む。上記生体内活性の担保は、エリスロポエチン誘導体の半減期の延長によるものであってもよい。かかる糖鎖としては、例えば、D−ガラクトース(Gal)、D−マンノース(Man)、N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、N−アセチルノイラミン酸(NeuAc)、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)およびフコース(Fuc)からなる群から選択される糖で構成される糖鎖を含む。本発明の一態様において、糖鎖は、これらの糖を2個以上、好ましくは4〜20個、より好ましくは5〜15個、さらに好ましくは7〜11個含む。また、本発明の好ましい態様において、糖鎖における単糖の数は6個以上である。結合様式としては、αおよびβグリコシド結合のいずれか一方、またはこの両方を含んでもよい。糖鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、後者の場合、分岐鎖の数は2〜5本、例えば、2または3本である。本発明の一態様において、糖鎖は、好ましくはN結合型糖鎖(ハイマンノース型、混成型および複合型を含む)またはO結合型糖鎖である。本発明の糖鎖は、種々の動物に適合したものであってもよい。したがって、本発明の一態様において、糖鎖はヒト型糖鎖、すなわち、N−アセチルグルコサミン残基と結合したガラクトース残基を有する糖鎖であることが好ましい。ヒト型糖鎖を有する本発明のエリスロポエチン誘導体は、ヒトを対象とする医薬組成物において特に有利に用いることができる。
【0023】
本発明の好ましい態様において、糖鎖は、シアル酸(N−アセチルノイラミン酸、N−グリコリルノイラミン酸など)をその非還元末端に含む。1本の糖鎖に含まれるシアル酸の数は分岐鎖の数にもよるが、限定されることなく、例えば、1個、2個または3個であってもよい。したがって、本発明のより好ましい態様において、糖鎖は、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
【0024】
(Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
【0025】
(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、および(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAcからなる群から選択される。
なお、上記糖鎖は、GlcNAcにフコースが結合していてもしていなくてもよい。
【0026】
糖鎖の本数も、エリスロポエチン誘導体の活性、特に赤血球数増加活性などの生体内活性を担保するものであれば特に限定されずに、例えば、1本、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、またはこれ以上であってもよい。したがって、本発明のエリスロポエチン誘導体に含まれるシアル酸の数は、合計1〜50個またはそれ以上となり得る。これらの糖鎖の本数およびシアル酸の数のうち、エリスロポエチン誘導体の活性が、天然のエリスロポエチンに比べて高まるものが好ましい。
【0027】
糖鎖は、エリスロポエチン誘導体の活性を消失させない範囲でポリペプチド鎖の任意の位置に導入することができる。これらの位置としては、例えば、天然のエリスロポエチンのN結合型糖鎖の結合位置と同じ位置(例えば、ヒトエリスロポエチンにおいては24、38および83番目のアミノ酸)や、活性上昇に寄与し得る位置(例えば、ヒトエリスロポエチンにおいては30および88番目のアミノ酸)等が挙げられるが、これらに限らない。所望の位置に結合基が結合できるアミノ酸が存在しない場合には、その位置に結合基に結合し得るアミノ酸を導入してもよい。したがって、本発明におけるエリスロポエチン誘導体の一態様は、糖鎖結合部位に結合基を介して糖鎖に結合するアミノ酸が導入されたものである。かかるアミノ酸の導入は、エリスロポエチン誘導体の生理活性を消失させるものでなければ特に限定されず、例えば、糖鎖結合部位に存在するアミノ酸との置換や、糖鎖結合部位へのアミノ酸の付加によって達成することができる。導入されるアミノ酸は、結合基が例えば−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される基である場合はシステインであり、WO2005/095331に記載の結合剤により形成された基である場合はグルタミンである。
【0028】
また、本発明のエリスロポエチン誘導体は、その製造上有利となる1個または2個以上のアミノ酸変異を含んでいてもよい。例えば、ヒトエリスロポエチンを細菌発現系で産生すると不溶性になってしまうが、83番目のアスパラギンと126番目のセリンをリシンなどと置換することで、かかる問題を回避できることが知られている(非特許文献2)。また、ヒトエリスロポエチンを細菌発現系で産生する場合、ヒスチジンタグ(Hisタグ)などの、特定の物質との結合性を有するタグを組み込んでおくと精製上有利だが、例えばヒスチジンタグの分離にCNBrを使用するとメチオニンが加水分解されるため、54番目のメチオニンをロイシンなどと置換しておくことができる。かかる変異のうち、エリスロポエチン誘導体の活性を消失させないものが好ましく、活性に影響を与えないものがより好ましく、活性を高めるものがさらに好ましい。
【0029】
本発明のエリスロポエチン誘導体は、好ましい態様において所定の立体構造を有する。所定の立体構造を有するとは、例えば、天然のヒトエリスロポエチンは、29Cysと33Cys、および7Cysと161Cysがそれぞれジスルフィド結合しているが、エリスロポエチン誘導体にこのようなジスルフィド結合が存在することを含む。所定の立体構造は、好ましくは、天然のエリスロポエチンまたは活性が確認されているエリスロポエチン誘導体と同等か、これに類似するものである。本発明のエリスロポエチン誘導体が所定の立体構造を有することは、例えば、ジスルフィドマッピング法、立体構造エピトープに特異的な抗体への結合性の評価、X線解析などにより確認することができる。
【0030】
本発明はまた、上記エリスロポエチン誘導体の製造方法に関する。
本発明の製造方法の一態様では、エリスロポエチン誘導体を、1つまたは2つ以上の糖鎖結合部分と1つまたは2つ以上の糖鎖非結合部分とに分けて、これらを別々に作製してから、各部分を連結する。本態様は、以下の工程を含んでもよい:
(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して同一構造の糖鎖を結合する工程、
(3)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(4)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結する工程。
【0031】
上記製造方法において、糖鎖結合部分のポリペプチド鎖は、結合基が結合される1個または2個以上のアミノ酸を含む。糖鎖結合部分のポリペプチド鎖が、結合基への結合性を有するが結合基の結合を所望しないアミノ酸(すなわち、結合基からの保護を要するアミノ酸)を含む場合には、工程(1)の合成において、該アミノ酸として保護基により保護されたものを用い、さらに前記結合基が結合されるアミノ酸が保護基により保護されている場合には、前記結合を所望しないアミノ酸として、前記結合基が結合されるアミノ酸の保護基とは異なる条件で脱保護される保護基により保護されたアミノ酸を用いる。同一の基を保護するが、脱保護条件の異なる保護基は当該技術分野でよく知られている。例えば、システインのスルフヒドリル基の保護基であるBzl(4Me)基は強酸で脱保護される一方、Acm基は強酸で脱保護されないが酢酸銀で脱保護される。また、カルボキシ基の保護基であるフェナシルエステルは亜鉛/酢酸還元条件で、アリルエステルはテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムにより選択的に脱保護できる。前記結合基が結合されるアミノ酸が保護基により保護されている場合には、該アミノ酸を脱保護する工程を、工程(1)と(2)との間に工程(1’)として含んでもよい。また、糖鎖結合部分のポリペプチド鎖が、結合基への結合性を有するが結合基の結合を所望しないアミノ酸を含む場合には、該アミノ酸を脱保護する工程を、工程(4)の後に、工程(5)として含んでもよい。
【0032】
工程(1)における糖鎖結合部分のポリペプチド鎖の合成には、当該技術分野で既知の任意の手法を用いることができる。かかる手法としては、限定されることなく、例えば、液相合成法、固相合成法、Boc法、Fmoc法などが挙げられる。アミノ酸が側鎖に反応性の基を有する場合は、これが保護基で保護されたアミノ酸を用いる。所定の反応性基の保護に適した保護基の種類は当該技術分野でよく知られている。例えば、α-アミノ基の保護基としては、ベンジルオキシカルボニル基(CbzあるいはZ)、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)、フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)などが、カルボキシ基の保護基としては、メチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル(BzlまたはBn)、シクロヘキシルエステル、フェナシルエステル(Pac)、アリルエステル(All)などが、アルコール性ヒドロキシ基の保護基としては、ベンジル基やtert−ブチル基などが、フェノール性ヒドロキシ基の保護基としては、2−ブロモベンジルオキシカルボニル(Z(2Br))やtert−ブチル基などが、グアニジノ基の保護基としては、p−トルエンスルホニル基(p−Ts)などが、システインのスルフヒドリル基の保護基としては、4−メチルベンジル基(Bzl(4Me))、トリチル基(Trt)、tert−ブチル基、N−(アセチル)アミノメチル基(Acm)などが、イミダゾール環のπ−窒素の保護基としては、ベンジルオキシメチル基(Bom)やtert−ブトキシメチル基(Bum)などが、τ−窒素の保護基としては、2,4−ジニトロフェニル基(Dnp)、トリチル基などが用いられる。
【0033】
工程(2)において結合される糖鎖は、同一の構造を有する上述の糖鎖を用いる。かかる糖鎖は、任意の公知の方法により得ることができる。具体的な手法としては、限定されることなく、例えば、糖鎖を化学合成すること(例えば、J.Seifert et al. Angew Chem Int.Ed. 2000, 39, p531-534参照)、および、同一の構造を有する糖鎖アミノ酸(例えば、糖鎖アスパラギン)のアミノ酸残基を結合基に置換すること等が挙げられる。本発明の一態様においては、大量生産により適している後者の手法が好ましい。当該手法において、同一の構造を有する糖鎖アミノ酸としては、限定されることなく、例えば、天然または人工の糖鎖給源から分離したものや市販されているものを利用することができる。天然または人工の糖鎖給源からの同一構造の糖鎖の分離は、例えば、WO2004/058789に記載の方法により行うことができる。具体的には、鶏卵などの天然の糖鎖給源から、Seko et al., Biochim Biophys Acta. 1997;1335(1-2):23-32などに記載の方法で糖鎖アスパラギンを含む混合物(シアリルグリコペプチド(SGP))を単離し、該糖鎖アスパラギンに脂溶性の保護基(例えば、Fmoc)を導入して糖鎖アスパラギン誘導体混合物を得、これをクロマトグラフィーに供することにより、該混合物に含まれる種々の構造の糖鎖を、その構造に応じて分離することができる。また、種々の保護基を有するまたは有しない特定の構造の糖鎖アスパラギンは、例えば、大塚化学株式会社より入手可能である。
【0034】
糖鎖アミノ酸のアミノ残基の結合基への置換は、公知の任意の方法により行うことができる。例えば、Fmocが結合した糖鎖アスパラギンにおいては、限定されることなく、ヒドラジン処理により糖鎖ヒドラジドを得、続く酸加水分解により糖鎖−1−OH体を得、これと炭酸水素アンモニウムとを混合して糖鎖−1−NH体とし、これとブロモ酢酸の活性エステルとを反応させて、結合基−NH−(CO)−CHBrが結合した糖鎖ブロモアセトアミド体を得ることができる。
【0035】
工程(2)における、ポリペプチド鎖への結合基を介した糖鎖の結合は、当該技術分野で既知の任意の手法を用いることができる。かかる手法としては、限定されることなく、例えば、還元末端に−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される基を有する糖鎖誘導体をシステインのスルフヒドリル基と縮合させる方法(WO2005/010053参照)や、WO2005/095331に記載の結合剤を用いる方法などが挙げられる。
【0036】
工程(3)における糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖の調製は、工程(1)と同様の化学合成のほか、微生物や動植物細胞による発現系によって行うこともできる。
発現系によるポリペプチド鎖の調製は当業者によく知られているが、典型的には、発現させるポリペプチド鎖をコードする核酸分子を調製する工程、調製した核酸分子を発現系の宿主細胞に導入する工程、導入により得た形質転換体を培養して増殖させ、所望のポリペプチド鎖を発現させる工程、および必要に応じて産生されたポリペプチド鎖を精製する工程を含む。
発現させるポリペプチド鎖をコードする核酸分子の調製手法としては、当該技術分野で既知の任意の手法を用いることができ、例えば、目的のポリペプチド鎖を発現する細胞のmRNAなどからRT−PCRなどによりcDNAを作製し、これを鋳型に適切なプライマーでPCRなどの核酸増幅法を行うこと等が挙げられる。得られた核酸分子は、種々のベクターにクローニングして保存することができる。所定の宿主に適合する具体的なベクターは当業者によく知られており、その多くは市販されている。
【0037】
調製した核酸分子を発現系の微生物や宿主細胞に導入する手法としては、当該技術分野で既知の任意の手法を用いることができ、例えば、該遺伝子をウイルスベクターに組み込み、該ベクターを間葉系細胞に感染させて導入する方法や、リン酸カルシウムトランスフェクション法、DEAE−デキストラントランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔(エレクトロポレーション)、リポソーム融合、ポリブレンによるトランスフェクションおよび細胞膜のレーザー微穿孔による遺伝子の直接的な送達を包含する、周知の多数の技法が挙げられる。当業者はまた、前記遺伝子を細胞のゲノムに組込み、当該遺伝子の発現を可能にするように細胞内に適切に導入することのできる上記以外のいかなる技術をも本発明に用いることができる。
発現系による調製には任意の微生物や、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等の細胞を用いることができるが、産生効率や取扱いの容易性から細菌、特に大腸菌が用いられる。本発明の製造方法の一態様においては、同一構造の糖鎖を合成的に結合させるため、ポリペプチド鎖に糖鎖が付加されない発現系、例えば、細菌発現系が好ましい。
【0038】
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、該生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フルクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類等を用いることができる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0039】
大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主とする形質転換体の培養は、通常振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中のpHは3.0〜9.0に保持する。pHの調製は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
培養している形質転換体は、自然にまたは誘導によりポリペプチドを発現し、培養物中に生成蓄積することができる。ポリペプチドの発現方法としては、直接発現以外に、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。ポリペプチドの生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、あるいは宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞や、生産させるポリペプチドの構造を変えることにより、該方法を選択することができる。
【0040】
ポリペプチドをコードする遺伝子を導入した形質転換体により製造されたポリペプチドは、例えばポリペプチドが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の酵素の単離精製法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、ダイヤイオン(R)HPA等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、セファロースFF等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、ポリペプチドの精製標品を得ることができる。
目的のポリペプチドを含む上記無細胞抽出液は、上記精製工程の前または後、好ましくは精製工程後に、生物由来物を不活性化または除去する工程に供することができる。かかる工程は、限定することなく、熱処理、ろ過、有機溶剤処理、カラム等を用いた精製、ソラレン誘導体等を用いた光処理、オゾン処理など、当業者に既知の任意の手法を含む。熱処理は、例えば、フィブリノゲン、アルブミン製剤等の処理に用いられている、60〜65℃、10〜144時間の温度・時間条件で行うことができる。
【0041】
ポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてポリペプチドの不溶体を回収する。回収したポリペプチドの不溶体をタンパク質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析することにより、該ポリペプチドを正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法により該ポリペプチドの精製標品を得ることができる。
ポリペプチドが細胞外に分泌された場合には、培養上清に該ポリペプチドあるいはその誘導体を回収することができる。すなわち、該培養物を遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、ポリペプチドの精製標品を得ることができる。
また、ポリペプチドの回収を容易にするために、特定の物質との結合性を有するタグペプチドを予め発現させるポリペプチドに組み込んでおくこともできる。かかるタグペプチドとしては、限定することなく、Hisタグ、GSTタグ、Sタグ、T7タグなどを挙げることができる。したがって、宿主細胞に導入される核酸分子は、かかるタグペプチドをコードする核酸配列を含んでいてもよい。
【0042】
工程(4)の、糖鎖結合部分のポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結する工程には、2本のポリペプチド鎖を連結できる任意の公知の方法を用いることができ、例えば、限定されることなく、ネイティブケミカルライゲーション(NCL、特表2004-518621等を参照)を挙げることができる。NCLは、C末端にチオエステルを有するペプチドAと、N末端にシステインを有するペプチドBとを緩衝溶液中で混合し、ペプチドBのN末端にあるシステインのスルフヒドリル基の求核攻撃により、ペプチドAのC末端のチオエステル基を脱離させ、続くアミンの求核攻撃によって2つのペプチド同士を天然のペプチド結合を介して連結する方法である。
したがって、工程(4)にNCLを用いる場合には、N末端側に位置するポリペプチドのC末端をチオエステル化する工程が、工程(4)に先立って必要となる。かかるチオエステル化は、例えば、C末端のカルボン酸をPyBOPおよびDIPEAを用いて活性化させ、過剰のアルキルチオールを加えることで達成することができる。この手法を用いる場合、フラグメント末端のアミノ酸のα炭素の立体配置を抑制するため、アルキルチオールの添加は低温にて行うのが好ましく、より好ましくは10℃〜−80℃、より好ましくは0℃〜−40℃の温度で行う。また、上記チオエステル化は、Yamamoto et al., J. Am. Chem. Soc. 2008, 130 (2), 501 -510に記載のFmoc法やBoc法などによっても行うことができる。
【0043】
NCLは、好ましくは当モル量の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを、緩衝溶液中で混合することにより行う。好ましい態様において、ライゲーション反応は、pH6〜8を有する緩衝液中で実行され、好ましいpHの範囲は6.5〜7.5である。この緩衝液は、水性、有機性、またはその混合物であってもよい。ライゲーション反応はさらに、1種または2種以上の触媒および/または1種または2種以上の還元剤、脂質、他の変性剤または可溶化剤などを含むことができる。好ましい触媒の例としては、チオールおよびホスフィン含有物質、たとえばチオフェノール、ベンジルメルカプタン、TCEPおよびアルキルホスフィンなどが挙げられる。変性剤および/または可溶化剤の例には、グアニジニウム、尿素の水またはTFE、HFIP、DMF、NMPなど有機溶媒溶液、水、またはグアニジニウムおよび尿素水溶液と混合したアセトニトリルが含まれる。ライゲーション反応の速度は温度により調節することができるが、通常は5〜55℃、好ましく15〜40℃で行うことができる。例として、ライゲーション反応は、pH6.8から7.8の間で、6Mグアニジニウム中の2%チオフェノールを用いる反応系において良好に進行する。
【0044】
NCLは、連結するC末端側のペプチド鎖のN末端にシステインを要求するため、エリスロポエチンの所望の部位にシステインが存在しない場合は、当該部位にシステインを導入することができる。ペプチド鎖を化学合成により作製する場合は、鎖のN末端にシステイン残基を結合させればよく、また、ペプチド鎖(またはポリペプチド鎖)を発現法により作製する場合は、宿主細胞に導入する核酸分子に、エラープローンPCR、部位特異的変異導入、アセンブリPCR、DNAシャッフリング、in vivo変異導入、カセット変異導入、リカーシブアンサンブル変異導入(recursive ensemble mutagenesis)、およびエクスポネンシャルアンサンブル変異導入(exponential ensemble mutagenesis)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で知られた任意の変異導入法によって、所望の部位をシステインに変異させることができる。これらの変異導入法のうち、本発明においては、変異導入部位の制御が比較的正確に行える部位特異的変異導入が好ましい。該技法においては、例えば、自動DNA合成装置で所望の変異を含んだプライマーを作製し、野生型エリスロポエチンのDNAをテンプレートにPCRを行うことによって、所望の部位に所望の変異を含んだ変異型核酸分子を容易に得ることができる。次に、得られた核酸分子を適切なベクターに組込み、適切な細胞に導入し、発現させることにより、上記の変異型核酸分子がコードする所望の変異体を得ることができる。部位特異的変異導入によるヒトエリスロポエチン変異体の製造方法は、例えば、Bill et al., Biochim Biophys Acta. 1995;1261(1):35-43などに記載されている。
【0045】
本発明の製造方法の別の態様は、以下の工程を含むことができる:
(1)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖を調製する工程、
(3)結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖と結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖とを連結する工程、および
(4)連結されたポリペプチド鎖に結合基を介して糖鎖を結合する工程、
(5)保護された結合基結合性アミノ酸を脱保護する工程。
この態様において、結合基結合性アミノ酸保護部分は、糖鎖とポリペプチド鎖との結合を媒介する結合基が結合し得るアミノ酸であって、結合基の結合を所望しない、すなわち結合基を介した糖鎖の導入を所望しないアミノ酸が存在する部分を意味する。かかるアミノ酸は、結合基との反応から保護する必要があるため、保護されたアミノ酸を用いる。一方、結合基結合性アミノ酸非保護部分とは、糖鎖とポリペプチド鎖との結合を媒介する結合基が結合し得るアミノ酸であって、結合基の結合を所望する、すなわち結合基を介した糖鎖の導入を所望するアミノ酸が存在する部分を意味する。かかるアミノ酸には、結合基との反応から保護する必要がないため、保護されていないアミノ酸を用いる。
工程(1)のポリペプチド鎖の合成、工程(2)のポリペプチド鎖の調製、工程(3)のポリペプチド鎖の連結、工程(4)の糖鎖の結合、および工程(5)の脱保護は、既に他の態様について上記したものと同様の手法で行うことができる。この態様は、糖鎖導入部位が比較的広範囲に分散して存在する場合や、結合基からの保護を要するアミノ酸が比較的狭い範囲に集中して存在する場合などにとりわけ有用である。
【0046】
上記いずれの製造方法も、糖鎖が結合され、全ての部分が連結されたポリペプチドをフォールディングさせる工程を含むことができる。フォールディング工程は、最初の態様においては、工程(4)の後(工程(5)を含む場合は、工程(5)の後)、また、2番目の態様においては、工程(5)の後に行うことができる。フォールディング工程は、種々の公知の手法を用いることができるが、限定されることなく、例えば、フォールディングバッファー中での透析を含むことができる。フォールディングバッファーは、限定されることなく、例えば、グアニジンなどのグアニジン基を有する化合物またはその塩を含み、pHは6.0〜9.0であってもよい。透析は、複数回行うことができ、また、各透析処理のフォールディングバッファーの組成やpHは同一であっても異なっていてもよい。
ポリペプチドがフォールディングしたことは、ポリペプチドの立体構造を解析する任意の手法で確認することができ、これには、限定されることなく、ジスルフィドマッピング法、立体構造エピトープに特異的な抗体への結合性の評価、X線解析などが含まれる。
【0047】
本発明はまた、上記エリスロポエチン誘導体を含む医薬組成物に関する。
本発明の医薬組成物の一態様において、医薬組成物はエリスロポエチン欠乏性疾患の処置のためのものである。本態様において、組成物は天然のエリスロポエチンと同等かまたはこれを上回る生理活性を有するエリスロポエチン誘導体を含むことが好ましい。エリスロポエチン欠乏性疾患としては、エリスロポエチンの血中レベル等が正常状態に比べて低下していることに起因する任意の疾患、例えば、限定されることなく、腎性貧血、未熟児貧血、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、抗がん剤などの細胞増殖抑制剤による貧血などが挙げられる。また、この態様の組成物は、骨髄移植や自己輸血など、赤血球数の増加が必要な状況において有利に用いることができる。
本発明の医薬組成物の別の態様において、医薬組成物はエリスロポエチン過剰性疾患の処置のためのものである。本態様において、組成物は内因性エリスロポエチンの活性を阻害するエリスロポエチン誘導体を含むことが好ましい。エリスロポエチン欠乏性疾患としては、エリスロポエチンの血中レベル等が正常状態に比べて上昇していることに起因する任意の疾患、例えば、限定されることなく多血症などが挙げられる。
【0048】
本発明の組成物は、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、限定することなく、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、動脈内、門脈内、心室内、経粘膜、経皮、鼻内、腹腔内、肺内および子宮内等の経路で投与してもよく、各投与経路に適した剤形に製剤してもよい。かかる剤形および製剤方法は任意の公知のものを適宜採用することができる(例えば、標準薬剤学、渡辺喜照ら編、南江堂、2003年等を参照)。
例えば、経口投与に適した剤形としては、限定することなく、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、ゲル剤、シロップ剤等が挙げられ、また非経口投与に適した剤形としては、溶液性注射剤、懸濁性注射剤、乳濁性注射剤、用時調製型注射剤等の注射剤が挙げられる。非経口投与用製剤は、水性または非水性の等張性無菌溶液または懸濁液の形態であることができる。具体的には、例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、賦形剤、ビヒクル、防腐剤、結合剤等と適宜組み合わせて、適切な単位投与形態に製剤化することができる。これら製剤における有効成分量は、処置に有効な用量を想定された投与回数で対象に供給できるように適宜設定することができる。
【0049】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助剤を含む等張液、例えばD−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウム等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80、HCO−50等と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤等と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプル、バイアル、チューブ、ボトル、パック等の容器に充填する。
【0050】
本組成物の対象の体内への投与は上記いずれの経路によってもよいが、好ましくは非経口投与、より好ましくは筋肉内投与または静脈内投与である。投与回数は1回が好ましいが、状況に応じて複数回投与することもできる。また、投与時間は短時間でも長時間持続投与でもよい。本発明の組成物は、より具体的には、注射により投与することができる。注射による投与の例としては、例えば、局所注射、静脈内注射、動脈内注射、選択的動脈内注入、門脈内注入、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射等によるものが挙げられるが、これらに限られない。
【0051】
さらに本発明は、対象へ本発明の組成物の有効量を投与することを含む、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の処置方法に関する。本発明の処置方法において、本発明の処置用組成物の対象への投与は、例えば、上述の投与方法に従って好適に実施することができる。また、医師または獣医師においては、上記投与方法を適宜改変して、本発明の剤を対象へ投与することが可能である。ここで、有効量とは、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の発症を低減し、症状を軽減し、または進行を防止する量であり、好ましくは、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の発症を予防し、またはエリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患を治癒する量である。また、投与による利益を超える悪影響が生じない量が好ましい。かかる量は、培養細胞等を用いたin vitro試験や、マウス、ラット、イヌまたはブタ等のモデル動物における試験により適宜決定することができる。
【0052】
本発明の処置方法において投与する組成物の具体的な用量は、処置を要する対象に関する種々の条件、例えば、症状の重篤度、対象の一般健康状態、年齢、体重、対象の性別、食事、投与の時期および頻度、併用している医薬、治療への反応性、および治療に対するコンプライアンス等を考慮して決定され得るため、一般的な有効量と異なることもあるが、かかる場合であっても、これらの方法はなお本発明の範囲に含まれる。
投与経路としては、経口および非経口の両方を包含する種々の経路、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、局所、直腸、動脈内、門脈内、心室内、経粘膜、鼻内、腹腔内、髄腔内、関節内、脳室内、肺内および子宮内等の経路が含まれる。
投与頻度は、用いる組成物の性状や、上記のような対象の条件によって異なるが、例えば、1日多数回(すなわち1日2、3、4回または5回以上)、1日1回、数日毎(すなわち2、3、4、5、6、7日毎等)、1週間毎、数週間毎(すなわち2、3、4週間毎等)であってもよい。
また、本発明の処置法においては、本発明の組成物のほか、上述のエリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の処置に有効な他の薬剤を併用することができる。
【0053】
本発明の方法において、用語「対象」は、任意の生物個体を意味し、好ましくは動物、さらに好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトの個体である。本発明において、対象は健常であっても、何らかの疾患に罹患していてもよいものとするが、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の処置が企図される場合には、典型的には該疾患に罹患しているか、罹患するリスクを有する対象を意味する。
また、用語「処置」は、疾患の治癒、一時的寛解または予防などを目的とする医学的に許容される全ての種類の予防的および/または治療的介入を包含するものとする。例えば、「処置」の用語は、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患の進行の遅延または停止、病変の退縮または消失、エリスロポエチン欠乏性疾患またはエリスロポエチン過剰性疾患発症の予防または再発の防止などを含む、種々の目的の医学的に許容される介入を包含する。
【0054】
本発明はまた、糖鎖構造が均一な2種以上のエリスロポエチン誘導体を作製することを含む、糖鎖構造のスクリーニング方法に関する。本方法は、具体的には、以下の工程を含むことができる:
(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第1の糖鎖を結合して、第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(3)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第2の糖鎖を結合して、第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(4)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(5)(2)で調製した第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第1のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(6)(3)で調製した第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第2のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(7)(5)で得た第1のエリスロポエチン誘導体と、(6)で得た第2のエリスロポエチン誘導体とを、所望の活性について比較する工程。
【0055】
本発明のスクリーニング方法において、工程(1)〜(6)は、上述のエリスロポエチン誘導体の製造方法の最初の態様に準じて行うことができる。ただし、ここで、第2の糖鎖は、第1の糖鎖とは構造がことなるものである。したがって、本発明のスクリーニング方法において、第1のエリスロポエチン誘導体と、第2のエリスロポエチン誘導体とは、アミノ酸配列は同じだが、糖鎖構造は異なる。上記方法における所望の活性としては、例えば、エリスロポエチン受容体への結合活性、赤血球前駆細胞の分化促進活性、増殖促進活性、赤血球数増加活性、あるいはまた、内因性エリスロポエチン阻害活性などが挙げられる。かかる活性の評価方法は、上記したとおりである。本スクリーニング方法により、所望の活性について最適な糖鎖構造を決定することができ、本発明のエリスロポエチン誘導体の当該活性を効率的に高めることが可能となる。
【実施例】
【0056】
本発明を、以下の実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1 糖鎖結合部分の合成
本発明の均一な糖鎖を有するエリスロポエチン誘導体(配列番号5)は、糖鎖が結合した糖鎖糖鎖結合部分と、糖鎖を有しない糖鎖非結合部分とに分けて別々に作製した後で、両部分を連結して製造した。具体的には、ヒトエリスロポエチンの1〜32番目のアミノ酸に相当する糖鎖糖鎖結合部分(5)は、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列において、24番目のアスパラギンおよび30番目のアラニンをそれぞれ糖鎖を結合するためにシステインに置換したもの(2)を化学合成して、C末端をチオエステル化したペプチドチオエステル体(4)に、還元末端をブロモアセトアミド化したN型シアリル糖鎖(1)を縮合させて作製し、一方、ヒトエリスロポエチンの33〜166番目のアミノ酸に相当する糖鎖非結合部分(6)は、ヒトエリスロポエチンのアミノ酸配列において、54番目のメチオニンをロイシンに、83番目のアスパラギンと126番目のセリンをそれぞれリシンに置換したポリペプチドを大腸菌発現系を用いて産生し、これら両部分をネイティブケミカルライゲーションにより連結した(図1参照)。
【0057】
1.糖鎖結合部分のポリペプチド鎖の合成
ペプチドの伸張は一般的なFmoc法による固相合成法を用いた。概要を図2に示す。
固相としては、固相合成チューブにトリチルクロライド樹脂132mg(200mmol)を入れ、蒸留DMFおよび蒸留DCMで十分に洗浄後に乾燥させたものを用いた。縮合に用いるアミノ酸のアミノ基はFmoc基によって保護されているものを用いた。また、反応は特に記載が無い限り固相合成チューブ内で行った。
Fmoc−His(trt)−OH 2等量(248mg、400mmol)およびDIPEA 8等量(272ml、1.6mmol)をDCM(0.8ml)に溶解し、前記で調製した樹脂が充填された固相合成用チューブに入れ、室温で2時間攪拌した。攪拌後、樹脂をDCM:MeOH:DIPEA=17:2:1で数回洗い、続いてDCM、DMFでよく洗浄し中間体12を得た。その後、20%ピペリジン/DMF溶液(1.0ml)を樹脂に加え30分撹拌することによりFmoc基を脱保護し、DMFで樹脂を洗浄後に中間体13を得た。
【0058】
次に、樹脂をDMFで洗浄後、2残基目のFmoc−Glu(But)−COOH 5等量(319mg、750mmol)、HOBt・HO 5等量(89mg、750mmol)、DIPCDI 5等量(115ml、750mmol)をDMF溶媒500mM(1.5ml)中で混合し、これを樹脂に加え室温で1時間攪拌し中間体14を得た。縮合後は樹脂をDMFで洗浄後、カイザー試験で樹脂上にアミノ酸が縮合されていることを確認し、1残基目と同様にFmoc基を脱保護した。3残基目以降も同様に縮合を行った。11残基目までは、全て各1回の縮合(single coupling)で終えた。以下、12残基目以降の縮合回数を、アミノ酸1文字表記と共に記す。
縮合2回(double coupling):12E、18Y、20E、21L、22V、24S、25D、26C、27I、29R、30P、31P
縮合3回(triple coupling):13K、23R
なお、無表記のアミノ酸についてはsingle couplingであった。
23Rおよび29Rについては縮合剤にHOBt・HO、DIPCDIを用いるのではなく、HOBt、HBTU、DIPEAを用いた。また、糖鎖を結合する3Cおよび9CはTrtで保護されたものを、糖鎖を結合させない4Cおよび26CはAcmで保護されたものをそれぞれ用いた。
【0059】
縮合が終了した樹脂をDMFおよびDCMでよく洗浄し、AcOH:DCM:MeOH=5:4:1のカクテル2mlを樹脂に加え3時間攪拌した後、樹脂から保護ペプチド2を切り出した。ナスフラスコにヘキサン60ml(30倍量)を入れ、そこに保護ペプチド2が溶解している液を滴下し、樹脂を2mlのDCMで3回洗った。これを、室温で減圧濃縮して乾固させ、ベンゼンで酢酸を共沸した。一部、95%TFA、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)、2.5%HOを加えて、4Cおよび26C以外のペプチド側鎖の保護基を除去し、室温で減圧濃縮後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて純度を確認したところ、保持時間11分(図3参照)に32残基の目的とするペプチドを質量分析の結果より確認した。
ESI−MS:m/z C1592624651についての計算値:[M+3H]3+ 1254.2, [M+4H]4+ 940.9、実測値:1254.4 , 941.1
【0060】
2.糖鎖結合部分のポリペプチド鎖のチオエステル化
1.で得た保護ペプチド2をベンゼンを用いて共沸後、デシケーターで乾燥させた。この保護ペプチド2のうち、42mg(7mmol)をDMF 0.95ml(7.4mM)に溶解させ、乾燥させたモレキュラーシーブス4Å(6mg)およびエチルチオール30等量(19ml、210mmol)を加え、−20℃で1時間攪拌し、PyBOP 5等量(18mg、35mmol)、DIPEA 5等量(6ml、35mmol)を加え2時間反応させてチオエステル化を行った。反応終了後、ジエチルエーテル6ml中に反応溶液を滴下し、白色沈殿物を遠心分離法により回収した。数回ジエチルエーテルで沈殿物を洗浄し、乾燥させ白色固形物を得た。この固形物に対し、TFA:HO:TIS:EDT=90:5:2.5:2.5のカクテル1mlを加え3時間攪拌させ、ペプチド側鎖の保護基を除去した。室温で減圧濃縮後サンプルをHPLC(カラム:Synmetory300(TM) C4、3.5μm、4.6×150mm、流速:1.0ml/分、18%〜54%CHCNを含む0.09%TFAの15分のリニアグラジエント)で分析し、保持時間9.5分(図4(A)参照)にEPO(1−32)チオエステル体4を得たことを質量分析の結果より確認した。
EPO(1−32)チオエステル体4;ESI−MS:m/z C1612664650についての計算値:[M+3H]3+ 1268.9, [M+4H]4+951.9, [M+5H]5+ 761.7、実測値:1268.7, 952.1, 761.9
このペプチドチオエステル4をHPLCを用いて精製し、分取した溶液を凍結乾燥し次の反応に用いた。
【0061】
3.ジシアリル糖鎖ブロモアセトアミド体(1)の作製
ジシアリル糖鎖−Asn−Fmoc(大塚化学株式会社、製品コード1S2S−11NC)から、スキーム1に記載の手順でジシアリル糖鎖ブロモアセトアミド体(1)を製造した。
【化1】

【0062】
なお、糖鎖のNMRは各単糖に番号を付けて化合物毎に解析結果を示した。
【化2】

【0063】
3−1.糖鎖ヒドラジド17の合成
ジシアリル糖鎖−Asn−Fmoc 16(30mg、12.1μmol)を55%ヒドラジン水溶液(3ml)に溶かし、100℃で加熱し、10時間反応させた。TLC(イソプロパノール:1M酢酸アンモニウム水溶液=1:1)で原料消失確認後、硫酸共存下のデシケーターで減圧濃縮し乾固させた(16にヒドラジンを添加すると、直ちにFmoc基が脱保護される為、TLCで反応を追跡する際の原料は、Fmoc基が脱保護されたジシアリル糖鎖−アスパラギンとなる)。残渣を水(1.5ml)に溶かし、炭酸水素ナトリウムを飽和するまで加え、そして無水酢酸(200μl)を加えた。TLC(イソプロパノール:1M酢酸アンモニウム水溶液=1.5:1)で反応を追跡し、原料消失確認後、炭酸水素ナトリウムを加えpH7〜8とした。反応溶液をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(カラム担体:Sephadex G-25、カラムサイズ:20×900mm、流速:0.6ml/分、展開溶媒:水)で精製し、目的とする化合物17(収量26.2mg、11.5μmol、収率94.8%)を得た。
【0064】
1H-NMR(400MHz,D2O)
δ5.17(s, 1H, Man4-H1), 4.98 (s, 1H, Man4’-H1), 4.77 (s, 1H, Man3-H1), 4.64 (bd, 3H, GlcNAc2,5,5’-H1), 4.48 (d, 2H, J = 7.89 Hz, Gal6,6’-H1), 4.29 (bd, 1H, Man3-H2), 5.00 (d, 1H, J = 9.8 Hz, GlcNAc1-H1), 4.23 (bd, 1H, Man4-H2), 4.15 (bd, 1H, Man4’-H2), 2.70 (dd, 2H, J = 4.6 Hz, J = 12.6 Hz, NeuAc7,7’-H3eq), 2.11 (s, 3H, Ac), 2.10 (s, 6H, Ac×2),2.06 (s, 6H, Ac×2) ,2.05(s, 3H, Ac), 1.75 (dd, 2H, J = 12.7 Hz, J = 12.6 Hz, NeuAc7,7’-H3ax)
ESI-MS
m/z C86H142N8O62 [M−2H]2−についての計算値:1138.4、実測値:1138.5
【0065】
3−2.ジシアリル糖鎖−1−OH体18の合成
糖鎖ヒドラジド体17(78.6mg、34.5μmol)に37%酢酸水溶液(5ml)を加え、室温で3時間反応させた。TLC(イソプロパノール:1M 酢酸アンモニウム水溶液=1.5:1)で反応終了確認後、水酸化ナトリウム水溶液を加えpH7〜8とした。反応溶液をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(カラム担体:Sephadex G−25、カラムサイズ:20×900mm、流速:0.6ml/分、展開溶媒:水)で精製し、目的とする化合物18(収量73.0mg、32.9μmol、収率95.4%)を得た。
1H-NMR(400MHz,D2O)
δ5.19 (bd, 1H, J =2.1 Hz, GlcNAc1α-H1), 5.14(s, 1H, Man4-H1), 4.95 (s, 1H, Man4’-H1), 4.78 (s, 1H, Man3-H1), 4.66(bd, 1H, J =7.7 Hz, GlcNAc1β-H1), 4.61 (bd, 3H GlcNAc2,5,5’-H1), 4.45 (d, 2H, J = 7.7 Hz, Gal6,6’-H1), 4.26 (bd, 1H, Man3-H2), 4.20 (bd, 1H, Man4-H2), 4.12 (bd, 1H, Man4’-H2), 2.67 (dd, 2H, J = 3.7 Hz, J = 12.6 Hz NeuAc7,7’-H3eq), 2.09 (s, 3H, Ac), 2.07 (s, 6H, Ac×2), 2.03 (s, 9H, Ac×3) , 1.75 (dd, 2H, J = 12.2 Hz, 12.6 Hz, NeuAc7,7’-H3ax)
ESI-MS
m/z C84H138N6O62 [M−2H]2−についての計算値:1110.2、実測値:1110.7
【0066】
3−3.ジシアリル糖鎖−1−NH体(19)の合成
ジシアリル糖鎖−1−OH体(18)(30.0mg、13.5μmol)を水(3ml)に溶かし、炭酸水素アンモニウムを飽和するまで加え、37℃で72時間反応させた。反応終了確認後、反応溶液をろ過し、凍結乾燥により脱塩をし、ジシアリル糖鎖−1−NH体19を定量的に得た。
1H-NMR(400MHz,D2O)
δ5.09(s, 1H, Man4-H1), 4.91 (s, 1H, Man4’-H1), 4.73 (s, 1H, Man3-H1), 4.56 (bd, 3H, GlcNAc2,5,5’-H1), 4.40 (d, 2H, J = 7.98 Hz, Gal6,6’-H1), 4.22 (bd, 1H, Man3-H2), 4.15 (bd, 1H, Man4-H2), 4.09 (bd, 1H, J =9.66Hz, GlcNAc1-H1), 4.08 (bd, 1H, Man4’-H2), 2.62 (dd, 2H, J = 3.99 Hz, 12.4 Hz, NeuAc7,7’-H3eq), 2.04 (s, 3H, Ac), 2.02 (s, 6H, Ac×2), 1.99 (s, 9H, Ac×3) , 1.68 (dd, 2H, J = 12.2 Hz, J = 12.4 Hz, NeuAc7,7’-H3ax)
ESI-MS
m/z C84H139N7O61 [M−2H]2−についての計算値:1109.9、実測値:1110.1
【0067】
3−4.ジシアリル糖鎖−ブロモアセトアミド体1の合成
ブロモ酢酸(78.0mg、566μmol)をDMF(4.5ml)に溶かし、DCC(105mg、502μmol)を加え、アルゴン気流下0℃で1時間撹拌し、ブロモ酢酸の活性エステルを調製した。
ジシアリル糖鎖−1−NH体19(20mg、9.0μmol)を氷冷下で蒸留水(2ml)に溶かし、炭酸水素ナトリウム(7.6mg)を加えた。氷冷下撹拌しながら別途調製したブロモ酢酸の活性エステル(100μl)を加え、質量分析で反応を追跡し、反応終了までブロモ酢酸の活性エステルを加えた。反応終了確認後、ゲルろ過カラムクロマトグラフィーで精製し、1の混合物を得た(カラム担体:Sephadex G-25、カラムサイズ:20×900mm、流速:0.6ml/分、展開溶媒:水)。そして、1の混合物をHPLCにより精製し(測定波長215nm、カラムデータ:WATERS X-Bridge(TM) ShieldRP-18、5μm、250×10mm、展開溶媒50mM NHOAcaq:CHCN=98:2、流速3.5ml/分)、1を含む溶液をゲルろ過カラムクロマトグラフィー(カラム担体:Sephadex G-25、カラムサイズ:30×900mm、流速:0.8ml/分、展開溶媒:水)で脱塩し、目的とする化合物1(収量4mg、1.71μmol、収率19%)を得た。
【0068】
1H-NMR(400MHz,D2O)
δ5.10(s, 1H, Man4-H1), 5.04 (d, 1H, J = 9.7Hz, GlcNAc1-H1), 4.92 (s, 1H, Man4’-H1), 4.75 (s, 1H, Man3-H1), 4.58 (m, 3H, GlcNAc2,5,5’-H1), 4.41 (d, 2H, J = 7.6 Hz, Gal6,6’-H1), 4.23 (bd, 1H, Man3-H2), 4.16 (bd, 1H, Man4-H2), 4.09 (bd, 1H, Man4’-H2), 2.63 (m, 2H, NeuAc7,7’-H3eq), 2.05 (s, 3H, Ac), 2.03 (s, 6H, Ac×2), 1.97 (s, 9H, Ac×3) , 1.69 (dd, 2H, J = 12.1 Hz, J = 12.27 Hz, NeuAc7,7’-H3ax)
ESI−MS
m/z C86H140BrN7O62 [M−2H]2−についての計算値:1170.5,、実測値:1170.5
【0069】
4.糖鎖の結合
ペプチドチオエステル体4(3.5mg、920μmol)、ジシアリル糖鎖ブロモアセトアミド体1(6.32mg、2.76μmol)とをpH7.5の100mM リン酸バッファー中で混ぜ、反応をHPLCで分析し(図4(A)〜(C)参照)、保持時間7.9分に糖鎖ペプチドチオエステル体5を得たことを質量分析の結果より確認した(図4右側参照)。
糖鎖ペプチドチオエステル体5:ESI−MS:m/z C33354460174についての計算値:[M+4H]4+ 2082.5, [M+5H]5+1666.4, [M+6H]6+ 1388.9、実測値:2083.5, 1667.0, 1389.3
【0070】
実施例2 糖鎖非結合部分の調製
糖鎖非結合部分(33〜166番目のアミノ酸)は、大腸菌発現系を用いてまたは固相合成法により作製した。
1.糖鎖非結合部分をコードする核酸分子の大腸菌への導入
(1)LB培地A(HO 1l中、バクトトリプトン 10g、酵母エキス 5g、NaCl 10g、寒天 15gを含む)を5ml入れた試験管に、大腸菌(BL21)懸濁液を100ml加え、ボルテックス処理後一晩37℃でインキュベートした。
(2)LB培地Aが5ml入った試験管に、(1)の培養液を200ml加えたものを2本作製し、37℃でインキュベートした。濁度(OD600)を測定し、50分後にOD600=0.4になった時点で試験管を氷中に入れた。
(3)(2)の試験管内容物をコニカルチューブに移し、0℃、2,000rpmで20分遠心した。
(4)デカントで上清を捨て沈殿物を砕き、0.1M CaClを3ml加え、氷中で20分放置した。
(5)(4)のチューブを0℃、2,000rpmで20分遠心した。
(6)デカントで上清を捨て沈殿物を砕き、0.1M CaClを0.5ml加え、ボルテックス処理後、別途用意したチューブに移した。
【0071】
(7)(6)のサンプルに、配列番号3のアミノ酸配列を有するエリスロポエチン変異体の断片をコードする核酸分子を含むpET16bベクターを2ml加え、軽く混ぜた後、氷中で1時間静置した。なお、当該ベクターは本発明者らにより、第三者に自由に配布されている。前記核酸分子は、pET16bベクター(Novagen社)のNdeI/BamHI部位に挿入されている(図5参照)。
(8)(7)のサンプルを42℃の水浴に3分浮かべ、(ヒートショック法)続いて氷中で1分間冷却した。
(9)(8)に、LB培地Aを5ml加え、37℃で45分インキュベートした後、室温、3,000rpmで10分遠心した。
(10)上清(濾液)を捨て、沈殿物を砕いた後、沈殿物に対しLB培地Aを1ml加え、ボルテックス処理後全量を100μl、900μlの2つに分けてそれぞれをLB培地B(HO 1l中、バクトトリプトン 10g、酵母エキス 5g、NaCl 5gおよびブドウ糖 5gを混合し、これに1.5%の寒天(15g/l)を加え、20分間オートクレーブ処理し、50〜60℃に放冷して100mgのアンピシリンを加えたもの)を30mlプレーティングしたシャーレーにコンラージを用いて散布した。
(11)(10)のシャーレーを37℃で10時間静置した。
(12)(11)によって形成されたコロニーを、試験管(LB培地Aに10%アンピシリンを1000:1の比で含むLBamp培地を3ml入れたもの)に滅菌済みの爪楊枝を用いてピックアップし、ボルテックス処理後37℃で一晩インキュベートした。
【0072】
2.遺伝子の確認
I)プラスミドDNA取り出し
(1)上記1.(12)のサンプルの1.5mlをエッペンドルフチューブに移した。
(2)室温にて7,000rpmで3分遠心後、上清を除去し沈殿物を砕いた。
(3)沈殿物に対し、100mlのGTE(50mM ブドウ糖、25mM Tris・HCl、10mM EDTA)を加え、ボルテックス処理後、シェーカーを使用して5分懸濁し、さらにアルカリSDS溶液(0.2N NaOH、1%SDS)を200ml加えて転倒混和した後、氷中で5分冷却した。
(4)5M酢酸カリウム溶液を150ml加え転倒混和した後、氷中で5分冷却した。
(5)クロロホルムを15ml加えてボルテックス処理し、4℃、13,000rpmで15分遠心した後、上清を別のエッペンドルフチューブに移し、この上清に対して10mg/ml RNaseを3ml加え、37℃で1時間放置した。
【0073】
(6)(5)のサンプルに対し、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1)を500ml加え、室温、13,000rpmで10分遠心した。
(7)上清を別のエッペンドルフチューブに移し、3M NaOAc 40ml、EtOH 1mlを加えて転倒混和し、ボルテックス処理後−80℃で30分静置した。
(8)(7)のエッペンドルフチューブを4℃、13,000rpmで30分遠心した。
(9)上清を除去し、沈殿物に対して70%EtOH 1mlを加えてボルテックス処理後、室温、13,000rpmで5分遠心した。
(10)上清を除去し、デシケーターで乾燥させた。
(11)オートクレーブ処理した純水(aHO)を15ml加え、シェーカーで10分攪拌した。
【0074】
II) プラスミドDNAの制限酵素処理および電気泳動
(1)上記I)(11)のサンプルの5mlをとり、BamHIおよびNdeIを含む制限酵素処理液A(10×Highバッファー(Tris・HCl pH7.5 500mM、MgCl 100mM、DTT 10mM、NaCl 1M)2.25ml、0.1%BSA 2.25ml、NdeI 0.85ml、BamHI 0.85ml、aHO 10.76ml)を15ml添加混合し、37℃で2時間放置した。
(2)室温に戻し、反応停止液(HO中の、50%グリセロール、0.5%SDS、2mM EDTA、0.25%キシレンシアノール、0.25%ブロモフェノールブルー)を5ml加えた。
(3)4%ポリアクリルアミドゲル(30%アクリル溶液1.995ml、10×TBE(HO1l中、Trisma base 108g、ホウ酸55g、0.25M EDTA 80ml)1.5ml、10%APS(HO1l中、過硫酸アンモニウム0.1g)75ml、TEMED 10ml、aHO 15ml)に(2)のサンプルをロードし、50V(定電圧)で泳動した。(ランニングバッファーは、1×TBE(10×TBEを10倍希釈したもの)を、分子量マーカーはΦ×174を用いた。)
(4)エチジウムブロマイドで15分染色し、300nmで試料を評価したところ、465bp程度のバンドを認めた(図6)。発現させるタンパク質は155アミノ酸長であるため、これに相当する長さのDNAが切り出されたことが確認された。
【0075】
3.タンパク質の発現
(1)試験管2本にそれぞれ2×YTamp(aHO 1l中、バクトトリプトン16g、バクト酵母エキス10g、NaCl 5g、アンピシリン100mg)を5ml入れ、そこに上記1.(12)の液(4℃で2週間保存していたサンプル)の30mlをそれぞれ加えた後、37℃で一晩インキュベートした。
(2)2×YTamp 1lに(1)で作製した溶液10mlを加え、37℃でインキュベーションを開始した。
(3)濁度(OD600)を測定して、2時間後にOD=0.6になったところで1M イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を1ml加え、3時間誘導を行った。
(4)(3)のサンプルを氷につけ、4℃、3,500rpmで10分遠心した。
(5)上清を捨て、集菌した。
(6)−20℃で保存した。
【0076】
4.発現したタンパク質の精製および確認
I−1)発現したタンパクの精製
(1)3−(6)のサンプルを室温で解凍後、100mlのバッファーA(100mM NaHPO、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、5mM イミダゾール、pH8.0)に溶かし、氷中でソニケーションし、細胞壁を破砕した。
(2)Ni−NTAアガロース(50%EtOH)を10mlとり、固相合成チューブ(カラム)に充填した後バッファーAで置換し、(1)のサンプルをロードしてNi−NTAアガロースと十分混和した後に溶出した。
(3)溶出液を回収し、再度カラムにロードした。この操作を10回繰り返し、最終的な溶出液を回収した。(透過液(1))
(4)(3)のNi−NTAアガロースを、バッファーB(100mM NaHPO、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、50mM イミダゾール、pH8.0)100mlで洗浄し、洗液を回収した。(透過液(2))
(5)バッファーC(100mM NaHPO、10mM Tris・HCl、6M 塩酸グアニジン、400mM イミダゾール、pH8.0)10mlを用いて溶出した(溶出液)。CBBG液(Coomassie Brilliant Blue G250)を用いて、タンパクの溶出を確認した。
(6)透析チューブに(5)の溶出液を入れ、純水が入った5lビーカーに透析チューブを浮かべ、4℃で一晩攪拌し、透析を行った。
(7)透析チューブの内容物を遠沈管に回収し、4℃、3,500rpmで10分遠心後、上清を捨て、10×Hisタグ融合タンパク質を得た。
【0077】
I−2)発現したタンパクの精製および熱処理
別の実験では、生物由来物を不活性化するために、精製した発現タンパク質を熱処理した。具体的には、まず、(1)で37℃で一晩インキュベートする代わりに15℃で72時間懸濁培養した以外は上記3.と同様にして、大腸菌に糖鎖非結合部分を発現させ、集菌した。得られた菌体は、100mlの前記バッファーAに再懸濁後、氷中でソニケーションし、細胞壁を破砕した。得られた細胞破砕液を、あらかじめバッファーAで平衡化したNi−NTAアガロース(QIAGEN社)5mlと十分混和し、サンプルをNi−NTAアガロース上に吸着させた後、カラムにパッキングし、Ni−NTAアガロースカラムを作製した。吸着後の細胞破砕液はろ過することにより不溶性成分を除去した。回収した細胞破砕液ろ液は、Ni−NTAアガロースカラムにアプライし、素通り画分を同カラムに再度アプライするという操作を10回繰り返すことにより、サンプルをNi−NTAアガロース上に吸着させた。
次いで、サンプルが吸着したNi−NTAアガロースカラムを、10カラム容積に相当する前記バッファーBで洗浄した。最後に2カラム容積の前記バッファーCを用いて目的とするタンパク質フラグメントを溶出させた。溶出画分中のタンパク質の検出は、CBBG液を用いて確認した。
この溶出液を、透析チューブに入れ、純水が入った5lビーカーに透析チューブを浮かべ、4℃で透析を行った。透析チューブの内容物を遠沈管に回収し、4℃、3,500rpmで10分遠心後、上清を捨て、得られた沈殿物を凍結乾燥し、白色パウダー状の目的とするEPO非糖鎖結合部分を含む10×Hisタグ融合タンパク質を得た。
得られた融合タンパク質を、以下のようにして熱処理した。
まず、凍結乾燥したパウダー状のタンパク質フラグメント(1.1mg)を6Mグアニジン緩衝液(220μl)に溶解させた。その溶液(40μl)をエッペンドルフチューブに取り、6Mグアニジン緩衝液(160μl)で希釈し、これを熱処理用サンプル溶液とした。
次いで、サンプル溶液をオイルバス(60℃)上にて24時間加熱した。サンプル溶液を室温まで冷却し、チオフェノール(0.5μl)を加えた。10分後、この混合液(全量)をHPLC分析に使用した。保持時間11.2分の画分を分取し、ESI−MSで分析した結果、目的とするEPOの非糖鎖結合部分を含む10×Hisタグ融合タンパク質が確認できた(図7および8)。この熱処理されたタンパク質をHPLCにより精製した後、下記の合成反応に使用した。
【0078】
II)発現したタンパク質の電気泳動による確認
(1)I)の各段階のサンプル(透過液(1)、透過液(2)、溶出液)から20mlずつエッペンドルフチューブに取り、それぞれアセトン:メタノール=1:1を200ml加え、氷中で30分放置してタンパク質を沈殿させた。
(2)上清を捨て、アセトン:メタノール=1:1 200mlを再度加え、沈殿物を洗浄した。これを3回繰り返した後、沈殿物を乾燥させた。
(3)(2)の乾燥沈殿物に1×SB(0.5M Tris−HCl(pH6.8)1ml、10%SDS 2ml、βメルカプトエタノール0.6ml、グリセロール1ml、HO 5.4ml、1%BTB(液が紺色になるまで数滴添加))20mlを加え、ボルテックス処理後、100℃で5分放置した。
(4)12.5%アクリルアミドゲル(アッパーゲル:aHO 5ml、アッパーゲルバッファー(Tris 6.06g、SDS 0.4g、HOで100mlにメスアップ、pH6.8)3.75ml、30%アクリルアミド(モノアクリルアミド58g、ビスアクリルアミド2g、200ml HO)6.25ml、10%APS75ml、TEMED10ml、ロワーゲル:aHO 3ml、ローワーゲルバッファー(Tris 36.34g、SDS 0.8g、HOで200mlにメスアップ、pH8.8)1.25ml、30%アクリルアミド 0.75ml、10%APS 17.5ml、TEMED 5ml)を用意し、20mA(定電流)で泳動した。(ランニングバッファーは、1×SDS−PAGEバッファー(aHO 500ml中、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン1.51g、グリシン7.2g、SDS 500mg)を用いた。)
(5)CBB(Coomasie Brilliant Blue)で30分染色後、脱色液(MeOH 25%、AcOH 10%、HO 65%)で一晩脱色した。図9に示すとおり、レーン4の溶出液中に目的とするタンパク質の17kDa程度のバンドを確認した。
【0079】
5.CNBr処理
(1)4.I)(7)のサンプルをHPLCで精製した後凍結乾燥したサンプル0.6mgに対し、アルゴン下にて1mlの80%ギ酸溶液を加え、さらに5mgのCNBrを加え遮光して一晩攪拌した。この処理により、Hisタグと糖鎖非結合部分との間のメチオニンのC末端側のアミド結合が加水分解され、糖鎖非結合部分6を単離することができる。
(2)HPLCを用いて分析し、保持時間12分に所望の糖鎖非結合部分(33〜166番目のアミノ酸)を得たことを質量分析により確認した(図10)。
【0080】
6.糖鎖非結合部分の化学合成
配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドを、実施例1と同様のFmoc法による固相合成法を用いて合成した。得られたポリペプチド鎖をHPLCを用いて分析し、所望の糖鎖非結合部分(33〜166番目のアミノ酸)を得たことを質量分析により確認した。
【0081】
実施例3 糖鎖結合部分と糖鎖非結合部分とのライゲーション
糖鎖結合部分と糖鎖非結合部分とをネイティブケミカルライゲーション(NCL)により連結した。すなわち、実施例1で得たチオエステル化した糖鎖結合部分(1mg、120nmol)と、実施例2で得た糖鎖非結合部分(1.78mg、120nmol)とを、緩衝溶液(6M 塩酸グアニジン、0.2M PBS、40mM TCEP(トリス(2−カルボシキシエチル)ホスフィン)、0.2M MPAA(4−メルカプトフェニル酢酸)、pH7.6)220μlに加え、室温で15時間反応させた。15時間後、反応混合物をSDS−PAGEで分析したところ(図11)、29kDa付近にバンドが観察された(レーンe)。これは、糖鎖結合部分の分子量約8kDaと糖鎖非結合部分の分子量約15kDaとの合計に相当し、糖鎖結合部分と糖鎖非結合部分とのライゲーションが進行していることを示すものである。なお、目的化合物7は糖タンパク質であり、SDSとの結合度合いが純粋なタンパク質のみのものと異なるため、SDS−PAGEでは目的分子量(23KDa)よりもやや高分子量側(29KDa)にバンドが確認された。反応生成物をゲルろ過(superdex75 10/300)により精製し(図12)、HPLC分析(図13)によって14分に目的化合物7を得たことを質量分析により確認した(図14)。また、同時にSDS−PAGEによっても7のバンドのみ得たことを確認した。(図11 レーンf)。
化合物7:ESI−MS:m/z C9981619249364についての計算値:[M+15H]15+ 1542.49, [M+16H]16+ 1446.15, [M+17H]17+ 1361.14, [M+18H]18+ 1285.58, [M+19H]19+ 1217.97, [M+20H]20+ 1157.12, [M+21H]21+ 1102.07, [M+22H]22+ 1052.02, [M+23H]23+ 1006.32, [M+24H]24+ 964.43, [M+25H]25+ 925.89、実測値:1544.2, 1447.3, 1361.2, 1285.7, 1218.1, 1157.2, 1102.2, 1052.2, 1006.5, 964.6, 926.1
【0082】
実施例4 Acm基の除去
実施例3で得たライゲーション生成物7を未精製のまま用いた。実施例3において、ライゲーション反応開始15時間後に反応溶液を一部(20μl)、アセトン:メタノール=1:1の溶液1ml中に滴下し、沈殿物を得た。この沈殿物を遠心分離処理によって、溶液と分離し、沈殿物をアセトン:メタノール=1:1の溶液によって、数回洗浄した。得られた沈殿物を乾燥させた後、酢酸銀(3.3mg、19.7μmol)を90%酢酸(2ml)に溶かした溶液を別途に調製し、この酢酸水銀溶50μlを沈殿物に加え、Acm保護基の脱保護反応を開始した。反応開始から6時間後、DTT(ジチオスレイトール)を1mg反応系中に加え、10分間攪拌した。これをゲルろ過にて精製し(図15)、HPLC分析によって14分に目的化合物8を得たことを(図16)質量分析を測定することによって確認した。(図17)
化合物8:ESI−MS:m/z C9921609247362についての計算値:[M+15H]15+ 1533.01, [M+16H]16+ 1437.26, [M+17H]17+ 1352.78, [M+18H]18+ 1277.68, [M+19H]19+ 1210.49, [M+20H]20+ 1150.01, [M+21H]21+ 1095.30, [M+22H]22+ 1045.56, [M+23H]23+ 1001.14, [M+24H]24+ 958.51, [M+25H]25+ 920.21, [M+26H]26+ 884.85, [M+27H]27+ 852.12, [M+28H]28+ 821.72、実測値:1534.7, 1437.3, 1352.6, 1277.6, 1212.1, 1150, 1095.3, 1045.7, 1000.3, 958.6, 920.2, 884.9, 852.2, 821.6
【0083】
実施例5 EPO誘導体9のフォールディング
実施例4で得た化合物8を未精製のまま用いた。実施例4において、脱Acm化を行い、ジチオスレイトールを添加した後、生じた沈殿物を遠心操作によって分離し、上澄(50μl弱)を透析チューブ(Spectra Por(R) Biotech Regenerated Cellulose Dialysis Membranes MWCO; 3,500)に移した。この透析チューブを、フォールディングバッファー1(6Mグアニジン塩酸塩、100mM Tris・HCl pH8.5)500ml中で一晩透析を行った。続いて、透析チューブをフォールディングバッファー1から取り出し、フォールディングバッファー2(3Mグアニジン塩酸塩、100mM Tris・HCl 、4μMシステイン、0.5μMシスチン、pH8.5)500ml中で、一晩透析を行った。その後、透析チューブをフォールディングバッファー2から取り出し、フォールディングバッファー3(1Mグアニジン塩酸塩、100mM Tris・HCl、pH8.0)500ml中で8時間透析を行い、最後にフォールディングバッファー4(10mM Tris・HCl、PH7.0)500ml中で一晩透析を行った。
【0084】
これらの操作を行った後、透析チューブの中身をエッペンドルフチューブに回収し、この約10μlを、HPLCにて分析を行ったところ、15分にピークを観測し(図18)、これを精製し(図19)質量分析を測定したところ(図20)、目的物9(図21)由来の質量分析値に相当するピークのみが得られたことから糖鎖が均一な所望のエリスロポエチン誘導体が得られたことが確認された。また、ジスルフィドマッピング法により三次元構造の取れたエリスロポエチン誘導体であることが確認された。
化合物9:ESI−MS:m/z C9921605247362についての計算値:[M+10H]10+ 2298.62, [M+11H]11+ 2089.74, [M+12H]12+ 1915.68, [M+13H]13+ 1768.40, [M+14H]14+ 1642.16, [M+15H]15+ 1532.75, [M+16H]16+ 1437.01, [M+17H]17+ 1352.54, [M+18H]18+ 1277.45、実測値:2299.0, 2089.8, 1915.9, 1768.5, 1642.4, 1532.9, 1437.2, 1352.6, 1277.5
【0085】
実施例6 EPO誘導体および市販EPO製剤の電気泳動分析
実施例5で得た本発明のEPO誘導体と、市販EPO製剤(エポジン(R)(中外製薬株式会社)または、rhEPO(Calbiochem社、カタログ番号:329871))とをポリアクリルアミドゲル電気泳動分析に供した。EPO誘導体または市販EPO製剤をサンプルバッファー(株式会社第一化学)と混合し、95℃で5分間加熱処理し氷上で冷却した。処理サンプルを5〜20%ポリアクリルアミドゲル(和光純薬工業株式会社)に添加し常法に従って25mA、200Vの条件で65分間泳動した。泳動後のゲルはSypro(R)オレンジ(Molecular Probes社)で染色し、各サンプルの泳動像をLAS1000(富士フイルム株式会社)で解析した。結果を図22および23に示す。市販EPO製剤であるエポジン(R)およびrhEPOは修飾される糖鎖構造の多様性から移動度の異なる複数の分子種の混合物として37〜45KDaに泳動された。これに対し、EPO誘導体は28KDaに単一のバンドとして泳動されており、均質な糖鎖修飾を受けていることが明らかとなった。
【0086】
実施例7 EPO誘導体の生物活性
(1)EPO誘導体の抗EPO抗体反応性
実施例5で得た本発明のEPO誘導体の抗ヒトEPO抗体に対する反応性を、EPO ELISA kit(Roche社)を用いて検討した。試料としてEPO誘導体を100または200倍に希釈したもの(希釈率0.01または0.005)を用い、製造者のマニュアルに従って分析した。結果を図24に示す。反応系に含まれるEPO誘導体の量と、これに結合した抗ヒトEPO抗体の量が比例していることから、抗ヒトEPO抗体が本発明のEPO誘導体に結合することが明らかとなった。
【0087】
(2)EPO誘導体の細胞増殖活性
上記EPO誘導体の生物活性を、EPO感受性細胞株を用いた細胞増殖能を指標に評価した。ヒト細胞株TF−1(ATCC、カタログ番号:CRL−2003)またはマウス細胞株DA−1(理化学研究所バイオリソースセンター、カタログ番号:RCB1143)を、10%FCS含有RPMI1640培地に2.5×10個/mlの密度となるよう懸濁した。細胞懸濁液を80μlずつU底96穴プレート(Falcon社)に播種し、種々の希釈率のEPO誘導体または市販EPO製剤(エポジン(R)、中外製薬株式会社)を20μl/ウェルずつ添加した。細胞は、COインキュベーター中、37℃にて2日間培養した。各ウェルにCell counting kit-8溶液(株式会社同仁化学研究所)を10μl/ウェルずつ添加し、さらに120分培養を継続した。細胞内還元酵素活性により発色基質WST−8から生成された水溶性ホルマザン量を測定波長450nm(参照波長630nm)におけるOD値として測定し、細胞増殖能の指標とした。結果を図25(TF−1)および図26(DA−1)に示す。
いずれの細胞においても、本発明のEPO誘導体は、生物活性が十分に確認されている市販EPO製剤と同様の濃度作用曲線を示しており、同誘導体が生物活性を有することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】糖鎖が均一なエリスロポエチン誘導体の製造方法の一例を示す模式図である。
【図2】糖鎖結合部分のポリペプチド鎖合成手順の概要を示す模式図である。
【図3】保護ペプチド2のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%TFA水溶液中の、4.5%〜67.5%CHCNを含む0.09%TFAの15分のリニアグラジエント。
【図4】(A)精製したEPO(1−32)チオエステル体4のHPLCチャートである。(B)糖鎖を導入する反応を追跡したHPLCチャートである。(C)糖鎖ペプチドチオエステル体5のHPLCチャート(左側)および質量分析チャート(右側)である。なお、HPLC溶出条件は、いずれも以下のとおりである。カラム:Synmetory300(TM) C4、3.5μm、4.6×150mm、流速:1.0ml/分、18%〜54%CHCNを含む0.09%TFAの15分のリニアグラジエント。
【図5】pET16bベクターの構造を示す模式図である。
【図6】大腸菌に導入した核酸分子の電気泳動像である。レーン1はΦ×174マーカー、レーン2はBamHIおよびNdeIで切り出したプラスミドDNA試料である。
【図7】熱処理をしていない(0時間)または熱処理をした(24時間)大腸菌発現EPOフラグメントのHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、A液:0.1%TFA水溶液、B液:90%アセトニトリル(0.09%TFA含有)、グラジェント:B液 5%→95% 15分、測定波長:220nm。
【図8】熱処理をしていない(A)または熱処理をした(B)大腸菌発現EPOフラグメントの質量分析チャートである。
【0089】
【図9】大腸菌で発現させたタンパク質の各生成段階における電気泳動像である。レーン1はBSAマーカー、レーン2は透過液(1)、レーン3は透過液(2)、レーン4は溶出液、レーン5は分子量マーカーである。
【図10】CNBr処理後の生成物のHPLCチャート(左側)および質量分析チャート(右側)である。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%TFA水溶液中の、4.5%〜85.5%CHCNを含む0.09%TFAの15分のリニアグラジエント。
【図11】NCL反応中の反応混合物の電気泳動像である。レーンdは分子量マーカー、レーンeは反応混合物、レーンfは精製後の化合物7である。
【図12】未精製の化合物7のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:superdex75 10/300、流速:0.3ml/分、6M グアニジン、100mM NaCl、50mM Tris pH8.0のアイソクラチックグラジエント。
【図13】精製後の化合物7のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの5分のアイソクラチックグラジエント、次いで0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%〜85.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの15分のリニアグラジエント。
【図14】精製後の化合物7の質量分析チャートである。
【図15】未精製の化合物8のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:superdex75 10/300、流速:0.3ml/分、6M グアニジン、100mM NaCl、50mM Tris pH8.0のアイソクラチックグラジエント。
【図16】精製後の化合物8のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの5分のアイソクラチックグラジエント、次いで0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%〜85.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの15分のリニアグラジエント。
【0090】
【図17】精製後の化合物8の質量分析チャートである。
【図18】未精製の化合物9のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの5分のアイソクラチックグラジエント、次いで0.1%HCOOH水溶液中の、4.5%〜85.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの15分のリニアグラジエント。
【図19】精製後の化合物9のHPLCチャートである。なお、HPLC溶出条件は、以下のとおりである。カラム:Cadenza CD-18(Imtakt Inc.、3μm、4.6×75mm)、流速:1.0ml/分、0.1%HCOOH水溶液中の、18%〜85.5%CHCNを含む0.09%HCOOHの15分のリニアグラジエント。
【図20】精製後の化合物9の質量分析チャートである。
【図21】化合物9の化学構造式である。
【図22】EPO誘導体および市販EPO製剤(エポジン(R))を電気泳動法で分析した結果を示した図である。
【図23】EPO誘導体および市販EPO製剤(Calbiochem社製rhEPO)を電気泳動法で分析した結果を示した図である。
【図24】EPO誘導体の抗EPO抗体反応性を示したグラフである。縦軸は測定波長450nmにおけるOD値を示す。
【図25】EPO誘導体および市販EPO製剤(エポジン(R))のTF−1細胞増殖活性を示したグラフである。縦軸は測定波長450nmにおけるOD値を示す。
【図26】EPO誘導体および市販EPO製剤(エポジン(R))のDA−1細胞増殖活性を示したグラフである。縦軸は測定波長450nmにおけるOD値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスロポエチンのアミノ酸配列に1個または2個以上のシステインへの置換を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドに、構造が同一の1本または2本以上の糖鎖が結合基を介して結合しているエリスロポエチン誘導体。
【請求項2】
糖鎖が6糖以上のものである、請求項1に記載のエリスロポエチン誘導体。
【請求項3】
結合基が、−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される、請求項1または2に記載のエリスロポエチン誘導体。
【請求項4】
糖鎖が、少なくとも1つの非還元末端にシアル酸を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のエリスロポエチン誘導体。
【請求項5】
糖鎖が、(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、
(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAc、および
(NeuAcα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→6)(NeuAcα2→6Galβ1→4GlcNAcβ1→2Manα1→3)Manβ1→4GlcNAcβ1→4GlcNAcからなる群から選択される、請求項4に記載のエリスロポエチン誘導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のエリスロポエチン誘導体の製造方法であって、以下の工程:
(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖のシステイン残基に結合基を介して同一構造の糖鎖を結合する工程、
(3)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(4)糖鎖結合部分のポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結する工程
を含む、前記方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のエリスロポエチン誘導体の製造方法であって、以下の工程:
(1)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)1個または2個以上の結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖を調製する工程、
(3)結合基結合性アミノ酸保護部分のポリペプチド鎖と結合基結合性アミノ酸非保護部分のポリペプチド鎖とを連結する工程、および
(4)連結されたポリペプチド鎖に結合基を介して同一構造の糖鎖を結合する工程、
(5)保護された結合基結合性アミノ酸を脱保護する工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
糖鎖が結合した連結されたポリペプチドをフォールディングする工程をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
互いに連結される2本のポリペプチド鎖のうち、N末端側のポリペプチド鎖がC末端にチオエステル基を有し、C末端側のポリペプチド鎖がN末端にシステイン残基を有する、請求項6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
糖鎖が、少なくとも1つの非還元末端にシアル酸を有する、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
結合基が、−NH−(CO)−CHX、−NH−(CO)−(CH−CHX、イソチオシアネート基、−NH−(CO)−(CH−COHおよび−NH−(CO)−(CH−CHO(式中、Xはハロゲン原子、aは0または1であり、bは1〜4の整数を示す)からなる群から選択される、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のエリスロポエチン誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項13】
エリスロポエチン欠乏性疾患の処置のための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
エリスロポエチン過剰性疾患の処置のための、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
(1)1個または2個以上の糖鎖結合部分のポリペプチド鎖を合成する工程、
(2)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第1の糖鎖を結合して、第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(3)(1)で合成した糖鎖結合部分のポリペプチド鎖に結合基を介して第2の糖鎖を結合して、第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットを調製する工程、
(4)1個または2個以上の糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖を調製する工程、および
(5)(2)で調製した第1の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第1のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(6)(3)で調製した第2の糖鎖結合部分または糖鎖結合部分のセットのポリペプチド鎖と糖鎖非結合部分のポリペプチド鎖とを連結して、第2のエリスロポエチン誘導体を調製する工程、
(7)(5)で得た第1のエリスロポエチン誘導体と、(6)で得た第2のエリスロポエチン誘導体とを、所望の活性について比較する工程
を含む、糖鎖構造のスクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−242372(P2009−242372A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209583(P2008−209583)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】