説明

均一触媒を用いるアセチレン及びカルボン酸からのビニルエステルの製造

均一触媒を用いてカルボン酸をアセチレンと反応させることによってビニルエステルを選択的に製造する方法を開示し、特許請求する。本発明の好ましい態様においては、第VIII族金属コンプレックス触媒の存在下、約50〜180℃の温度において安息香酸とアセチレンを反応させることによって、定量的収率の安息香酸ビニルが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この正規出願は、2009年5月7日出願の同じ標題の米国特許出願12/387,740の出願日の利益を主張する。ここに米国特許出願12/387,740の優先権を主張し、その開示事項は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、概してカルボン酸及びアセチレンからビニルエステルを製造する方法に関する。具体的には、本発明は、アセチレンと種々のカルボン酸との反応からビニルエステルを製造するのに好適な一連の均一触媒系に関する。好ましい態様においては、本発明は均一触媒を用いる安息香酸ビニル(VB)、2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)、及び種々の他のネオカルボン酸のビニルエステルの形成に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルを形成するための経済的に実行可能なプロセスに対する必要性が長い間感じられている。例えば安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルは、例えば塗料、接着剤、及び種々の他の被覆配合物、並びにセメントモルタル添加剤などの種々の用途における用途が見出されている。
【0004】
対応するカルボン酸とアセチレンとの反応からビニルエステルを形成することができることが当該技術において公知である。亜鉛、カドミウム、及び水銀のような卑金属、並びにレニウム、ルテニウム、パラジウム等のような貴金属の触媒などの種々の触媒が提案されている。実際、カルボン酸亜鉛で触媒するプロセスが、10個の炭素原子を含む高分岐構造の合成飽和モノカルボン酸であるVERSATIC(登録商標)酸10のビニルエステルであるVEOVA(登録商標)モノマー10を製造するためにHexion Specialty Chemicalsによって商業化されている。より詳しくは、カルボン酸とアセチレンとの反応からビニルエステルを形成するためにカルボン酸亜鉛触媒を用いることが開示されているTannerらの米国特許6,891,052を参照されたい。
【0005】
同様に、カルボン酸をアセチレンと反応させて対応するビニルエステルを形成する種々の他のプロセスが、文献において報告されている。Borsboomらの米国特許3,607,915、及びTransition-Metal-Catalyzed Addition of Heteroatom-Hydrogen Bonds to Akynes, Alonsoら, Chem. Rev., 2004, 104 (6), 3079-3160を参照されたい。特に、Borsboomらは、概して上述したようなカルボン酸のアセチレンとの亜鉛触媒反応を含む他の方法を開示している。一方、Alonsoらは、アセチレンとカルボン酸との反応の触媒的付加化学に関する最新技術の分析を与えている。また、Reppeの米国特許2,066,075、I.G. Farbenindustrie AGのドイツ国特許DE740678、Fischerらの米国特許2,339,066及び2,342,463、General Aniline and Film Corporationの英国特許GB641,438A、Bellerらの米国特許2,472,086、Staeger Reinhardのスイス国特許CH324667、Fernholzらの米国特許3,062,863、Hargraveらの米国特許3,125,593、Engelらの米国特許3,285,941、Shell Internationale Researchのドイツ国特許DE1237557、Hubnerらの米国特許3,646,077、及びWieseらの米国特許6,500,979も参照されたい。
【0006】
また、種々の第VIII族金属コンプレックス触媒がカルボン酸とアセチレンとの反応によるビニルエステルの形成において有効であることも、文献において報告されている。例えば、Sternらの米国特許3,479,392、及びHeiderらの米国特許5,395,960を参照されたい。Sternら及びHeiderらはいずれも、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、又は白金をベースとする触媒の存在下における芳香族カルボン酸のビニル化を開示している。Sternらは、具体的にはアセチレン又はアセチレン系化合物以外の反応物質から置換オレフィンを製造する方法に集中しており、Heiderらは、触媒的ビニル化反応のために好適な分岐脂肪族カルボン酸しか開示しておらず、2−エチルヘキサン酸、4−tert−ブチル安息香酸、スベリン酸、及びコハク酸モノメチルなどの例が与えられている。しかしながら、Heiderらは例として触媒としてルテニウム金属の使用しか開示しておらず、約25〜100のルテニウムに対するカルボン酸の非常に低いモル比を用いている。即ち、Heiderらの条件は、製造されるビニルエステル1モルあたり大量の触媒を必要とする。更に、Heiderらにおいては、7〜17時間のより長い反応時間を用いており、これによってこれらの条件は工業運転のためには不適当である。
【0007】
また、ビニル化技術においては、パラジウムを共触媒としてカドミウム又は亜鉛触媒と共に用いることも公知である。例えば、Farbwerke Hoechst Aktiengesellschaftのドイツ国特許DE1161878、及びShell Internationale Researchの英国特許GB1,130,245を参照されたい。いずれの特許も、亜鉛又はカドミウム触媒及びパラジウム共触媒の存在下での安息香酸及びアセチレンのビニル化を開示している。しかしながら、教示されているパラジウム化合物は遊離パラジウム金属又は塩化パラジウムであり、これらのプロセスは通常は120℃より高い温度において運転される。
【0008】
Lincolnらの米国特許5,430,179は、安息香酸などのカルボン酸をアセチレンなどのアルキンにルテニウム触媒的付加することによって、安息香酸ビニルのようなビニルエステルを合成するための均一プロセスを開示している。Lincolnらは、トルエン又は鉱油のような随意の溶媒、及び約40〜約200℃の温度範囲を含む反応条件を開示している。Lincolnらは更に、液相反応媒体の重量を基準として約50,000ppm〜約0.5ppmのルテニウムの範囲の濃度のルテニウムドデカカルボニルを含む群から選択されるルテニウム触媒を、場合によってはトリフェニルホスフィン、トリス(メトキシフェニル)ホスフィン、又はトリス(p−フルオロメチルフェニル)ホスフィンのようなリガンドと組み合わせて用いることを開示している。しかしながら、Lincolnらは、ここに開示する反応条件下でルテニウムジカルボニルアセテートの存在下でのピバル酸とアセチレンとの反応からピバル酸ビニルを形成する1つの例しか開示していない。
【0009】
BASF AktiengesellschaftのWO2007/060176A1は、レニウムをベースとする化合物などの金属化合物の群から選択される触媒の存在下でカルボン酸をアルキン化合物と反応させることによってカルボン酸ビニルを製造する方法を提供する。BASFは、具体的にはジレニウムデカカルボニルの存在下で安息香酸とアセチレンを反応させることを開示している。実施例1を参照されたい。この実施例は、388のレニウム原子に対するカルボキシル基のモル比を教示しており、反応は、トルエン溶媒中、140℃において6時間の反応時間にわたって行う。報告されている収率は99%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許6,891,052
【特許文献2】米国特許3,607,915
【特許文献3】米国特許2,066,075
【特許文献4】ドイツ国特許DE740678
【特許文献5】米国特許2,339,066
【特許文献6】米国特許2,342,463
【特許文献7】英国特許GB641,438A
【特許文献8】米国特許2,472,086
【特許文献9】スイス国特許CH324667
【特許文献10】米国特許3,062,863
【特許文献11】米国特許3,125,593
【特許文献12】米国特許3,285,941
【特許文献13】ドイツ国特許DE1237557
【特許文献14】米国特許3,646,077
【特許文献15】米国特許6,500,979
【特許文献16】米国特許3,479,392
【特許文献17】米国特許5,395,960
【特許文献18】ドイツ国特許DE1161878
【特許文献19】英国特許GB1,130,245
【特許文献20】米国特許5,430,179
【特許文献21】WO2007/060176A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Transition-Metal-Catalyzed Addition of Heteroatom-Hydrogen Bonds to Akynes, Alonsoら, Chem. Rev., 2004, 104 (6), 3079-3160
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、ここで、既存のプロセスのいずれも、ビニル化反応によって安息香酸ビニル(VB)又は2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)を製造するためには好適ではなく、特に従来の亜鉛触媒は、工業的な拡大規模の運転のためには許容できない反応速度及び収率を与えたことが見出された。上記に記載した他の方法は、工業規模でVB又はV2EHのようなビニルエステルを製造するためには同じように好適ではない。而して、温和な反応条件下でVB又はV2EHのようなビニルエステルをそれらのそれぞれのカルボン酸から形成する経済的に実行可能な触媒的に活性な反応を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ここで予期しなかったことに、カルボン酸とアセチレンとの反応から安息香酸ビニルのようなビニルエステルを、高い選択率及び収率で、工業的規模で製造することができることが見出された。より詳しくは、本発明は、場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はこれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含む、ビニルエステルを対応するカルボン酸及びアセチレンから選択的に形成するための均一方法を提供する。
【0014】
本発明方法において用いる触媒は金属コンプレックスである。本発明方法において好適な金属コンプレックスの例としては、限定なしに、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムが挙げられる。
【0015】
ここで、幾つかのリガンド及び添加剤を用いることによって本発明の触媒の触媒活性が向上することが見出された。カルボン酸及びアセチレンによるビニル化反応を起こすことができる種々のリガンド及び添加剤を、本発明方法において用いることができる。
【0016】
また、触媒、並びに場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を好適に選択し、それらを好適な量で用いることによって、少なくとも50%のカルボン酸の転化率が得られ、ビニルエステルへの選択率を少なくとも50%にすることができることも見出された。更に、本発明を好適に実施することによって、少なくとも80で約2000以下の相対活性を達成することができる。
【0017】
本発明の他の形態及び有利性を、下記の詳細な説明及び特許請求の範囲において記載する。
下記において添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。図面において同じ数字は同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明方法にしたがってカルボン酸及びアセチレンからビニルエステルを製造するために好適な装置の概要図である。
【図2】図2は、本発明方法による種々の触媒金属を用いて達成される安息香酸ビニルへの相対選択率を示す。
【図3】図3は、本発明方法による種々の触媒金属を用いて達成される相対活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下記において、幾つかの態様及び複数の例を参照して本発明を詳細に記載する。かかる議論は例示のみの目的である。特許請求の範囲に示す本発明の精神及び範囲内での特定の例に対する修正は、当業者に容易に明らかであろう。ここで用いる用語は、直ぐ下に示す代表的な定義に合致するその通常の意味で与える。
【0020】
ここで用いる均一触媒とは、触媒反応中に反応物質と同じ相(例えば液体又は気体)中に存在する触媒を指す。これに対して、ここで用いる不均一触媒とは、触媒反応中に反応物質と異なる相中に存在する触媒を指す。
【0021】
ここで用いるモルパーセント(モル%又は%)などの用語は、他に示さない限りにおいてモルパーセントを指す。重量パーセント(重量%)などの用語は、他に示さない限りにおいて重量パーセントを指す。
【0022】
「転化率」は、反応中に消費される反応物質の割合を指し、供給流中のカルボン酸の量を基準とする質量パーセントとして表す。カルボン酸(CA)の転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから下式:
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、投入CA質量=反応器中に装填(計量投入)されるカルボン酸の質量であり、排出CA質量(GC)=GCデータに基づく反応後のカルボン酸の質量である)
を用いて計算する。
【0025】
「選択率」は、消費されたカルボン酸に対して製造されるビニルエステルの量を指し、転化したカルボン酸を基準とするモル%として表す。例えば、転化率が50モル%であり、転化したカルボン酸の50モル%がビニルエステルに転化している場合には、本発明者らはビニルエステル選択率を50%と言う。ビニルエステル(VB)への選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0026】
【化2】

【0027】
を用いて計算する。
「収率」は、反応器中に装填されるカルボン酸に対して製造されるビニルエステルの量を指し、反応器中に装填されるカルボン酸を基準とするモル%として表す。ビニルエステル(VE)の収率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから次式:
【0028】
【化3】

【0029】
を用いて計算する。上式において、投入CAモル量=反応器中に装填(計量投入)されるカルボン酸のモル数であり、排出CAモル量(GC)=GCデータに基づく反応後のカルボン酸のモル数であり、排出VEモル量(GC)=GCデータに基づく反応後のビニルエステルのモル数である。
【0030】
触媒活性は、以下の式を用いてターンオーバー数(TON)によって求める。TONは、触媒中に含まれるそれぞれの金属原子によって生産される所望の生成物の平均量を指す。
【0031】
【化4】

【0032】
式中、触媒モル量=反応器中に装填(計量投入)される触媒のモル数であり、N金属原子=触媒中の金属原子の数である。
下記の条件下で求められるターンオーバー数に関し、このターンオーバー数をここでは相対活性と呼ぶ。触媒系の相対活性を求めるための条件には、4時間のバッチ運転時間、約385:1のカルボン酸:触媒金属の充填モル比、及び120℃の温度が含まれる。リガンドを用いる場合には、リガンドは1:1のリガンド:触媒金属のモル比で利用できる。
【0033】
反応は、次の化学反応式:
【0034】
【化5】

【0035】
(式中、Rは、第1級、第2級、又は第3級アルキル基などのアルキル基;シクロアルキル基;又はフェニルのようなアリール基;である)
にしたがって進行する。而して、Rがフェニルである場合には、下記の化学反応式にしたがって、用いる酸は安息香酸(BA)であり、形成される生成物は安息香酸ビニル(VB)である。
【0036】
【化6】

【0037】
同様に、Rが2−エチルペンチルである場合には、下記の化学反応式にしたがって、用いる酸は2−エチルヘキサン酸(2EHA)であり、形成される生成物は2−エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)である。
【0038】
【化7】

【0039】
ここで予期しなかったことに、ビニルエステルをカルボン酸とアセチレンとの反応から、高い選択率及び収率で、工業的規模で製造することができることが見出された。より詳しくは、本発明は、場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はこれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含む、ビニルエステルをカルボン酸及びアセチレンから選択的に形成するための均一方法を提供する。かかる溶媒としては、例えば、アセトニトリル、安息香酸ブチル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メシチレン、鉱油、トルエン、及びキシレンを挙げることができる。
【0040】
当該技術において公知の種々のカルボン酸を本発明方法において用いて、対応するビニルエステルを形成することができる。本発明の実施のために好適なカルボン酸の例は、脂肪族又は芳香族のモノカルボン酸、ジカルボン酸、及びポリカルボン酸である。脂肪族モノカルボン酸の例としては、以下のもの:酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−メチルプロピオン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸;ピバル酸、並びにネオデカン酸、ネオトリデカン酸、及びネオノナン酸のような他のネオ酸;ステアリン酸、及び脂肪酸が挙げられる。芳香族モノ及びジカルボン酸の例としては、以下のもの:安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、及びフタル酸が挙げられる。他の芳香族カルボン酸としては、例えばo−、m−、又はp−トルイル酸、o−、m−、又はp−クロロ安息香酸などのような置換安息香酸が挙げられる。脂肪族ジ及びポリカルボン酸の例としては、アジピン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、及びポリアクリル酸が挙げられる。本発明方法において好適な種々の他のカルボン酸としては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、サリチル酸、桂皮酸、及びシクロヘキサン酸が挙げられる。
【0041】
好ましくは、本発明方法において用いることができる酸としては、安息香酸、並びに例えば2−エチルヘキサン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘプタン酸などのような種々の分岐脂肪族カルボン酸が挙げられる。
【0042】
本発明において好適な他の特定の種類のカルボン酸はネオ酸である。ネオ酸は高分岐の脂肪族カルボン酸である。一般に、ネオ酸は、テトラ置換α−炭素を含むトリアルキル酢酸である。置換α−炭素上のアルキル基によって立体効果が生じ、即ちネオ酸の反応する能力が妨げられる。メチル置換α−炭素のネオ酸は、立体障害が最も少ないネオ酸である。ネオ酸の反応性は、主としてネオ酸の分子量及び構造によって定まる。一般に、α−炭素上のアルキル基の分子量がより大きいと、立体効果がより大きくなり、ネオ酸の反応性がより小さくなる。本発明において好適なネオ酸は、式I:
【0043】
【化8】

【0044】
(式中、R、R、及びRのそれぞれは、1〜10個の炭素を有するアルキル基であり、R+R+R中の合計炭素数は3〜30である)
によって表すことができる。ネオ酸の例としては、限定なしにネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオデカン酸等が挙げられる。幾つかのネオ酸は、例えばExxonMobil Chemical Companyから商業的に入手できる。商業的に入手できるネオ酸の具体例としては、上記に列記したもの、及びExxonMobil Chemical Companyからのneo 910及びneo 913のような特許ネオ酸が挙げられる。
【0045】
本発明方法はアセチレンとカルボン酸との反応からビニルエステルを製造することを意図しているが、かかるビニル化反応を起こすことができる種々の他の公知の第1級アルキンを本発明方法において用いることもできる。一般に、本発明方法の付加反応を妨げない非置換アルキン及びモノ置換アルキンを用いることができる。代表的な置換基としては、アルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アセトキシ、カルボキシ、及びハロ基が挙げられる。アルキンは通常は2〜10個の炭素原子を有し、好適なアルキンとしては、アセチレン、メチルアセチレン、フェニルアセチレン、1−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシンなどのような置換又は非置換の第1級アルキンが挙げられる。本発明の実施において有用なより好適なアルキンとしては、アセチレン及びメチルアセチレンが挙げられる。
【0046】
本発明方法において用いる触媒は金属コンプレックスである。本発明方法において好適な金属コンプレックスの例としては、限定なしに、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムが挙げられる。
【0047】
ここで、幾つかのリガンド及び添加剤を用いると本発明の触媒の触媒活性を向上させることが見出された。カルボン酸及びアセチレンによるビニル化反応を起こすことができる種々のリガンド及び添加剤を、本発明方法において用いることができる。リガンドの例としては、限定なしに以下のもの:トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、o−ビピリジル、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)、トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン[P(p−CF]、トリス(1−ナフチル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、及びトリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。
【0048】
添加剤の例としては、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、カドミウムアセチルアセトナート、塩化セリウム、塩化鉄、酢酸カリウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、安息香酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、パラベンゾキノン、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、酢酸ビニル、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12)、臭化亜鉛、塩化亜鉛、無水安息香酸、トリ(n−ブチル)アミン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロリド、リン酸ナトリウム、及びテトラブチルアンモニウムアセタートが挙げられる。
【0049】
本発明方法は、当該技術において公知の通常の反応器を用いて、バッチ、半バッチ、又は連続条件下で実施することができる。例えば、複雑なアセチレン排気システムを有する連続撹拌タンク反応器(CSTR)、又は並流若しくは対向流栓流反応器(カラムタイプ)
を用いることができるが、これらの例は限定を意図するものではない。通常は、均一触媒は回収して反応器に戻す。バッチシステムにおいては、分離ユニットによってバッチの間に粗生成物から触媒を周期的に分離することができる。連続システムにおいては、触媒の分離及び再循環は好ましくは連続的に行う。或いは、所望の場合には均一触媒を基材に適用して触媒を異質化することができる。
【0050】
全ての連続アセチレン反応器は、未反応ガスのための大量の再循環流、大きな圧縮システム、及び同時にカルボン酸供給流による連続添加を介する均一触媒の良好な制御が必要である。同時に、一部の粗液体生成物を反応器から排出しなければならない。
【0051】
当業者であれば、それによって任意の変数、例えば反応器生産性(STY)又は転化率が適当になる反応器処理量を最適にするのに必要な反応器の寸法を選択するであろう。
本発明によれば、カルボン酸とアセチレンとの反応は、単一の反応区域を含むバッチ反応器などの種々の構成の装置内で行うことができる。
【0052】
以下の実施例から明らかなように、本発明を実施することによって高い転化率及びVBのようなビニルエステルへの選択率を得ることができる。即ち、触媒及び場合によっては1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を好適に選択することによって、カルボン酸のビニルエステルへの高い転化率を達成することができることがここで見出された。より詳しくは、所望の量の触媒を場合によって1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤と組み合わせて用いることによって、少なくとも50%のカルボン酸の転化率が得られることが観察された。更に、ビニルエステルへの選択率は少なくとも50%であることが分かった。更に、本発明を好適に実施することによって、少なくとも80で約2000以下の相対活性を達成することができる。
【0053】
この反応のプロセスは、ビニルエステルを形成するカルボン酸とアセチレンの所期の反応を起こして、カルボン酸の高い転化率においてビニルエステルへの高い選択率を与えることができるような任意の反応温度を用いて行うことができる。通常は、かかる反応は約40℃〜約180℃の温度範囲において行う。例えば、反応温度は、幾つかの触媒条件下においては約40℃〜約60℃の範囲であってよい。反応温度はまた、幾つかの他の触媒条件下においては約70℃〜約90℃の範囲であってもよい。幾つかの場合においては、反応温度は約80℃〜約100℃の範囲である。幾つかの他の場合においては、反応温度は約110℃〜約130℃の範囲である。小数の他の場合においては、反応温度はまた約130℃〜約150℃の範囲であってもよい。最後に、幾つかの場合においては、反応温度は約150℃〜約170℃の範囲である。
【0054】
反応はまた、例えば大気圧以下、大気圧、又は大気圧以上の条件のような、高い転化率でカルボン酸からビニルエステルが選択的に形成されるような任意の圧力条件において行うことができる。一般に、反応は約1絶対気圧〜2絶対気圧の範囲の圧力において行うことが好ましい。より詳しくは、反応は、大気圧条件において、例えば窒素、ヘリウム、又はアルゴンの雰囲気中のような不活性雰囲気中で行う。
【0055】
一般に、用いるアセチレン系化合物の量は、転化させるカルボキシル基に対して等モル量又は僅かにモル過剰である。而して、用いるカルボン酸がモノカルボン酸である場合には、アセチレン:酸のモル比は、一般に約1:1〜100:1、好ましくは約1.2:1〜30:1、より好ましくは約1.5:1〜約10:1である。したがって、二塩基酸及び/又は他の多塩基酸を用いる場合には、アセチレン系化合物は比例してより多い量で用いる。
【0056】
本発明の一形態においては、本発明方法は少量の触媒を用いて行うことができる。即ち、多量の安息香酸(BA)のようなカルボン酸を、少量の触媒材料の存在下でビニルエステル(即ちVB)に転化させることができる。一般に、反応混合物は、約4000:1〜約100:1のカルボン酸:金属のモル比の所望の金属コンプレックス触媒及びカルボン酸(CA)の混合物を含む。より通常的には、CA/金属のモル比は約1000:1である。しかしながら、所望の転化率及びビニルエステルへの選択率をもたらす任意の他のCA/金属のモル比を、本発明方法において用いることができる。
【0057】
本発明の他の形態においては、この触媒は本発明方法において非常に高い相対活性(金属原子あたりのビニルエステルのモル量)を示す。通常は、相対活性は約100〜約1000の範囲である。
【0058】
本発明の更なる形態においては、本発明方法を好適に実施することによって、例えば安息香酸ビニルのようなビニルエステルへの非常に高い選択率を得ることができる。通常は、消費される安息香酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも60%にすることができる。より具体的には、消費されるカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも80%にすることができる。更により具体的には、消費されるカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率は、少なくとも99%である。
【0059】
本発明方法は、最良の触媒活性、相対活性、及びVEへの選択率が得られるように、所望の長さの時間行うことができる。通常は、反応はバッチモードで約1時間〜約5時間の範囲の時間行う。より通常的には、反応はバッチモードで約4時間行う。しかしながら、本発明方法は、当該技術において公知の任意のプロセス技術を用いて半連続又は連続的に行うことができる。
【0060】
本発明方法の一態様においては、用いる触媒は白金金属コンプレックスである。種々の公知の白金金属コンプレックスを本発明方法において用いることができる。白金金属コンプレックスの例としては、限定なしに以下のもの:白金アセチルアセトナート、(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)、ヨウ化白金(II)、ヨウ化白金(IV)、臭化白金(II)、臭化白金(IV)、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、白金(0)−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、キシレン中の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及びシス−ビス(ベンゾニトリル)ジクロロ白金(II)が挙げられる。幾つかのリガンドを加えると白金触媒の活性が向上し、この活性は一般に反応の観察される相対活性の増加によって測ることができる。特に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンの添加剤は、カルボン酸の転化率及び安息香酸ビニルのようなビニルエステルへの選択率の両方を向上させることが分かった。
【0061】
ここで記載する白金触媒は、ここに記載する1種類以上の他のリガンドと組み合わせて用いることもできる。白金触媒のための上記に記載したもの以外の特に好適なリガンドとしては、限定なしに以下のもの:1,2−DPPB、トリフェニルホスフィン、及びオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)が挙げられる。白金触媒を用いる反応はここで記載する任意の溶媒を用いて行うことができ、安息香酸ブチルが最も好適な溶媒である。しかしながら、幾つかの場合においては、反応は溶媒なしに行うことができる。例えば、用いるカルボン酸が脂肪族カルボン酸である場合には、それらの殆どは室温において液体であるので、これらの酸は溶媒なしに本方法において用いることができる。例えば、用いる酸が2−エチルヘキサン酸である場合には、溶媒を用いる必要はない。
【0062】
白金触媒を用いる反応は、好適には約80℃〜約180℃の範囲の温度、より好ましくは約120℃〜約160℃の温度範囲において行うことができる。特に、約140℃〜160℃の反応温度が高い相対活性を与えることが見出されたが、ここで記載する任意の他の温度範囲も好適である可能性がある。白金触媒に関する相対活性は、一般に約450〜約900の範囲であり、好ましくは相対活性は約500〜約850の範囲である。白金触媒を用いるビニルエステルへの選択率は約50%〜約100%の範囲であり、好ましくはかかる選択率は約70%〜約100%の範囲であり、より好ましくはかかる選択率は約80%〜約100%の範囲である。
【0063】
本発明方法の他の形態においては、本発明方法のために好適な触媒は、レニウム金属コンプレックス触媒である。本発明方法において有効な任意の公知のレニウムコンプレックスを用いることができる。本発明方法のために好適なレニウム金属触媒の例としては、限定なしに、ブロモペンタカルボニルレニウム(I)、ペンタカルボニルクロロレニウム(I)、及びジレニウムデカカルボニルが挙げられる。ここで記載するように、レニウム触媒には、触媒活性を向上させるように1種類以上のリガンドを更に含ませることができる。レニウム触媒のために好適なリガンドの例としては、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン又はオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)が挙げられる。更に、ここで記載する1種類以上の添加剤をレニウム触媒と共に用いることができる。レニウム金属触媒と共に用いるのに好適な添加剤の例は、酢酸カリウム又は安息香酸ナトリウムである。
【0064】
本発明方法の一態様においては、用いる金属コンプレックス触媒は、単独か、又は4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン又はオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)であるリガンドと組み合わせたジレニウムデカカルボニルである。本発明方法の他の態様においては、用いる金属コンプレックス触媒は、(アセトニトリル)トリクロロビス(トリフェニルホスフィン)レニウム(III)、メチルトリオキソレニウム(VII)、又はヨードジオキソビス(トリフェニルホスフィン)レニウム(V)である。
【0065】
レニウム触媒は本発明方法における好適な触媒であることが特に見出された。特に好ましいレニウム触媒は、ペンタカルボニルクロロレニウム(I)及びジレニウムデカカルボニルである。レニウム触媒は、一般に例えばBAのVBへのようなカルボン酸のビニルエステルへの非常に高い転化率を与える。通常は、転化率は少なくとも約80%であり、より通常的には転化率は少なくとも約95%である。同様に、ビニルエステルへの選択率もレニウム触媒を用いると高い。通常は、ビニルエステルへの選択率は少なくとも80%であり、より通常的には少なくとも約95%である。ターンオーバー数もレニウム触媒を用いると高い。通常は、レニウム触媒を用いると少なくとも約400の相対活性を達成できる。レニウム触媒を用いる反応は、ここで記載する任意の溶媒を用いて行うことができ、安息香酸ブチルが最も好適な溶媒である。
【0066】
レニウム触媒の存在下での反応は、好適には約80℃〜約180℃の範囲の温度、より好ましくは約120℃〜約160℃の温度範囲において行うことができる。特に、約140℃の反応温度が高い相対活性を与えることが見出されたが、ここに記載する任意の他の温度範囲も好適である可能性がある。レニウム触媒を用いる反応も、通常はバッチモードで約2〜4時間行う。しかしながら、任意の公知の半連続又は連続プロセス条件をレニウム触媒と共に用いることもできる。レニウム触媒の存在下においては、非常に高いカルボン酸(CA)/金属のモル比を用いることができる。例えば、約350〜1200のCA/レニウム金属のモル比を用いて非常に高いVEへの選択率を得ることができる。例えば、約1200の非常の高いCA/金属のモル比においては、99%以下のVEへの選択率を達成することができる。
【0067】
本発明方法の他の形態においては、用いる金属コンプレックス触媒はロジウム金属コンプレックス触媒である。本発明方法において有効な任意の公知のロジウムコンプレックスを用いることができる。ロジウムコンプレックス触媒の例としては、以下のもの:
(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I);
1,1’−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン(cod)Rh−ホスホタングステン酸;
[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン](1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート;
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド;
テトラロジウムドデカカルボニル;
ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ロジウム(III)二量体;
メトキシ(シクロオクタジエン)ロジウム(I)二量体;及び
酢酸ロジウム(II)二量体;
が挙げられる。
【0068】
ロジウム触媒も、ここに記載する1種類以上のリガンドと組み合わせて用いることができる。ロジウム触媒のために好適なリガンドの例は、以下のもの:
1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;
トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン;
トリス(1−ナフチル)ホスフィン;
トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン;
トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン;
オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン);
ジフェニル−2−ピリジルホスフィン;
1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB);
トリフェニルホスフィン;及び
4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン;
である。
【0069】
更に、ここで記載する1種類以上の添加剤をロジウム触媒と組み合わせて用いると、選択率及びVEへの転化率の全体を向上させることができる。添加剤の具体例としては、とりわけテトラフルオロホウ酸ナトリウムが挙げられる。
【0070】
より詳しくは、最適の結果を得るために、ロジウム金属コンプレックス触媒とリガンドとの以下の組み合わせを用いることができる:
テトラロジウムドデカカルボニルとオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン);
テトラロジウムドデカカルボニルとジフェニル−2−ピリジルホスフィン;
酢酸ロジウム二量体と1,2−DPPB;
酢酸ロジウム二量体とトリフェニルホスフィン;
酢酸ロジウム二量体と4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン;
酢酸ロジウム二量体とオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン);
(アセチルアセトナト)カルボニル(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)とトリフェニルホスフィン;及び
ビス(1,5−シクロオクタジエン)ジロジウム(I)ジクロリド、トリフェニルホスフィン、及び添加剤としてテトラフルオロホウ酸ナトリウム。
【0071】
一般に、ロジウム触媒は、約50℃〜約180℃の範囲の反応温度、より特には約120℃〜約160℃の温度範囲において高い相対活性を示す。相対活性は、通常は温度を上昇させると増加し、約50〜約300の範囲である。特に、約160℃の範囲の反応温度において、少なくとも100の相対活性が観察される。ここで記載する任意の溶媒をロジウム触媒の存在下で用いることができ、アセトニトリル、トルエン、及び安息香酸ブチルがより有利である。また、ここで記載する任意のリガンド、より特にはロジウム触媒と共に記載したものを用いると、相対活性及びVEへの選択率が向上することも観察される。より注目すべきことに、酢酸ロジウム(II)二量体のようなロジウム触媒に関しては、リガンドを加えることによって触媒の活性が大きく向上する。特に、ここで記載する単座又は二座芳香族ホスフィンリガンドを加えると、VEの製造に関するロジウム触媒の活性が向上する。例えば、最も高い相対活性は、酢酸ロジウム(II)二量体を二座リガンドであるオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)と組み合わせることによって達成することができる。一般に、温度を約50℃から約180℃に上昇させても、カルボン酸の転化率及びVEへの選択率が増加する。
【0072】
本発明方法の他の形態においては、金属コンプレックス触媒はルテニウムである。本発明方法において有効な任意の公知のルテニウムコンプレックスを用いることができる。ルテニウム金属コンプレックスの例としては、以下のもの;ビル(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)及びトリルテニウムドデカカルボニルが挙げられる。ルテニウム触媒も、ここに記載する1種類以上のリガンドと組み合わせて用いることができる。ルテニウムと共に用いることができる好適なリガンドとしては、以下のもの:1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、トリフェニルホスフィン、及びトリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。更に、ルテニウム触媒も、ここに記載する1種類以上の添加剤と組み合わせて用いることができる。
【0073】
ルテニウム触媒とリガンドとの組み合わせの代表的な例としては、以下のもの:ビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)/1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB);トリルテニウムドデカカルボニル/トリフェニルホスフィン;及び、トリルテニウムドデカカルボニル/1,2−DPPB;が挙げられる。ルテニウム触媒を用いる反応は、ここに記載する任意の溶媒中で行うことができ、反応温度が120℃より高い場合には安息香酸ブチルが好ましい。しかしながら、より低い温度においては、アセトニトリル(約50℃付近の反応温度)又はトルエン(約80℃又は90℃付近の反応温度)を用いることができる。120℃より高い反応温度においては、溶媒としてメシチレンを用いることもできる。ロジウム触媒を用いる反応は、好ましくは約50℃〜約180℃の温度範囲において行う。VEへの選択率は、一般に温度を上昇させると増加する。しかしながら、リガンドの1,2−DPPB又はトリフェニルホスフィンの存在下においては、選択率はより高い温度において僅かに減少する。しかしながら、一般に、より高い温度は1,2−DPPB又はトリフェニルホスフィンの存在下でトリルテニウムドデカカルボニル触媒に対してプラスの効果を有する。
【0074】
本発明方法の他の形態においては、金属コンプレックス触媒はパラジウムである。本発明方法において有効な任意の公知のパラジウムコンプレックスを用いることができる。パラジウム金属コンプレックスの例としては、以下のもの:酢酸パラジウム(II)、及びパラジウム(II)[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ビス(ベンゾニトリル)ビステトラフルオロボレートが挙げられる。ここでも、パラジウムと組み合わせて用いることができるここで開示する種々のリガンドを、本発明のこの形態において用いることができる。単座及び二座リガンドの両方を用いることができる。かかる二座リガンドの具体例としては、限定なしに、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、及び1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが挙げられる。単座リガンドの例としては、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン;トリス(1−ナフチル)ホスフィン;及びオキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン);が挙げられる。1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)又はトリス(1−ナフチル)ホスフィンのような他のリガンドを、パラジウム触媒と共に用いることもできる。
【0075】
通常は、パラジウム金属コンプレックスを場合によってはリガンドと組み合わせた任意の組合せを用いることができる。より好ましくは、酢酸パラジウムと1,2−DPPBとの組合せは、VEを高い相対活性で製造するために有効な触媒であることが分かった。この反応は、一般にここで開示する任意の温度範囲において行う。好ましくは、この反応は約60℃〜約180℃、好ましくは約150℃〜約170℃の温度範囲において行う。相対活性は、通常は約100〜約200、より好ましくは約140〜約160の範囲である。トルエン又は安息香酸ブチルが好ましい溶媒である。一般に、製造される安息香酸ビニルのようなビニルエステルの量は、約110℃〜130℃の範囲の温度においてより多い。また、ここで開示するパラジウム触媒の組合せに関しては、転化率及び選択率は温度と共に増加する。一般に、酢酸パラジウムにリガンドを加えると、触媒活性が向上し、それによってVEの製造が増加する。単座及び二座リガンドの両方とも、酢酸パラジウムの触媒活性に対してプラスの効果を示す。
【0076】
本発明方法の他の形態においては、金属コンプレックス触媒はイリジウムである。本発明方法において有効な任意の公知のイリジウムコンプレックスを用いることができる。イリジウム金属コンプレックスの例としては、以下のもの:1,5−シクロオクタジエン(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)イリジウム(I)、(アセチルアセトナト)(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム(I)、及びイリジウム(III)アセチルアセトナートが挙げられる。この反応は、ここに記載する任意の温度範囲、好ましくは約40℃〜約180℃の範囲において行うことができる。より好ましくは、反応温度は約50℃〜約120℃の範囲である。一般に、製造される安息香酸ビニルのようなビニルエステルの量は、用いる触媒によって温度を120℃以下に上昇させると増加する。しかしながら、触媒としてイリジウム(III)アセチルアセトナートを用いる場合には、VEの最も多い製造は160℃において観察される。
【0077】
一般に、VEへの選択率も、殆どのイリジウム触媒に関しては温度を120℃以下に上昇させると増加する。しかしながら、イリジウム(III)アセチルアセトナートを用いる場合には、VEへの選択率は温度を160℃以下に上昇させると増加し、転化率は上記で議論したように同様に増加する。CA/イリジウムのモル比を増加させてそれによって相対活性を増加させることによって、選択率及びVEの転化率を増加させることができる。イリジウム触媒の場合には、リガンドを加えることはイリジウム触媒の活性にマイナスの効果を示し、有益な効果は与えなかった。
【0078】
本発明の一態様においては、白金触媒を用いて安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための均一方法も提供される。本発明方法のこの態様においては、安息香酸を好適な有機溶媒中でアセチレンと反応させる。好適な溶媒としてはここに記載するものが挙げられる。好ましくは、90℃より高い反応温度においてはトルエン又は安息香酸ブチルを用い、90℃より低い反応温度においてはアセトニトリルを用いる。また、溶媒として安息香酸ブチルに代えて鉱油を用いることもできる。この反応は、一般に、約40℃〜約160℃の範囲の温度、好ましくは約100℃〜160℃の範囲の温度において行う。一般に、特に幾つかの白金触媒を用いる場合には、温度を上昇させるとより多い量の安息香酸ビニルが製造される。この反応は、一般に、白金アセチルアセトナート、ヨウ化白金、臭化白金、又は(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)から選択される白金触媒の存在下で行う。一般に、触媒として白金アセチルアセトナート又は臭化白金を用いる場合、160℃においては120℃と比較してより多い量の安息香酸ビニルが製造される。しかしながら、約120℃から約160℃への温度の上昇は、他の白金触媒を用いる安息香酸の安息香酸ビニルへの転化には大きな効果を有しない可能性がある。また、幾つかのリガンドを白金触媒と組み合わせて用いると触媒活性が向上することも観察された。用いることができるリガンドの例としては、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、又はトリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0079】
また、温度に伴う転化率及び選択率の傾向は、特定の触媒系、即ち触媒とリガンドの組み合わせに関連することも一般に観察された。例えば、ヨウ化白金を単独か又は4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンと共に用いる場合には、温度を上昇させると安息香酸の転化率が減少し、安息香酸ビニルへの選択率が増加する。他方において、オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)を用いて試験した場合には、温度を上昇させると、(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)及び白金アセチルアセトナートに関しては安息香酸の転化率の大きな変化は観察されないが、安息香酸ビニルへの選択率は減少する。
【0080】
本発明方法の他の態様においては、レニウム触媒を用いて安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための均一方法も提供される。本発明方法のこの態様においては、安息香酸を好適な有機溶媒中でアセチレンと反応させる。好適な溶媒としては、ここに記載するものが挙げられる。好ましくは、90℃より高い反応温度においてはトルエン又は安息香酸ブチルを用い、90℃より低い反応温度においてはアセトニトリルを用いる。この反応は、一般に、約40℃〜約160℃の範囲の温度、好ましくは約100℃〜160℃の範囲の温度において行う。一般に、レニウム触媒をリガンドと組み合わせて用いると、約140℃の反応温度付近において最も高い安息香酸ビニルへの選択率が得られる。この反応は、一般に、ペンタカルボニルクロロレニウム(I)、ジレニウムデカカルボニル、又はブロモペンタカルボニルレニウム(I)から選択されるレニウム触媒の存在下で行う。一般に、この反応は更に、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)から選択され、場合によっては酢酸カリウム又は安息香酸ナトリウムを添加剤として含むリガンドと組み合わせて行う。
【0081】
図1は、本発明の触媒系を用いてカルボン酸とアセチレンとを反応させることによってビニルエステルを製造するための実験室スケールのシステム10を示す。図1のシステム10は、撹拌反応器20及び回収器30を含む。反応器20及び回収器30には、それぞれ凝縮器40、50が備えられており、これらのためにバブラーのような通常の圧力調節手段(図示せず)が与えられている。簡単に言うと、250mLの三ツ口ガラスフラスコのような所望の寸法の好適な反応器20を用いる。まず、ライン22を通して、反応器20に、所望のカルボン酸、好適な溶媒、及び所定量の触媒、並びに必要な場合にはリガンド及び添加剤を充填する。次に、反応器20を窒素でパージし、所望の反応温度に加熱する。次に、ライン24を通してアセチレンを反応混合物中に所望の速度でバブリングし、更なるカルボン酸を必要な場合には溶媒と共にライン22を通して充填することができる。反応が進行するにつれて、ライン26を通してビニルエステル生成物を取り出し、分別し、回収フラスコ30内に回収する。凝縮器40、50は、非凝縮性ガスを放出しながら最適量の生成物及び溶媒を回収するように働く。凝縮器40、50の温度は、当業者に公知の通常の手段によって調節する。反応物質の添加順序は本発明方法においては重要ではない。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は本発明を更に例示するために示すものであり、特許請求の範囲に示される発明の精神及び範囲を限定するように解釈すべきではない。これらの実施例は、例示の目的のみで与えるものであり、当業者に公知のそれらの種々の修正を容易に行うことができる。
【0083】
実施例1〜23は、本発明の種々の触媒を用いる安息香酸の安息香酸ビニルへの転化を示す。実施例1及び3〜23によって達成された安息香酸ビニルへの選択率及びTONを、それぞれ図2及び3において要約して示す。
【0084】
具体的には、実施例1〜6は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々の白金金属コンプレックスの触媒活性を示す。実施例7〜11は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々のレニウム金属コンプレックスの触媒活性を示す。実施例12及び13は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々のロジウム金属コンプレックスの触媒活性を示す。実施例14〜17は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々のルテニウム金属コンプレックスの触媒活性を示す。実施例18〜20は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々のパラジウム金属コンプレックスの触媒活性を示す。実施例21〜23は、リガンド及び/又は添加剤を用いるか又は用いない種々のイリジウム金属コンプレックスの触媒活性を示す。
【0085】
実施例24〜33は、本発明の種々の触媒を用いる2−エチルヘキサン酸の2−エチルヘキサン酸ビニルへの転化を示す。実施例34〜43は、本発明の種々の触媒を用いる、ネオ酸を含む種々の他のカルボン酸の対応するビニルエステルへの転化を示す。
【0086】
最後に、比較例1〜5は、対照反応条件下での安息香酸ビニルの製造に関する亜鉛及びカドミウム触媒のような従来技術の触媒の触媒活性を示す。
表1に、ここで記載するVEを選択的に製造する本発明方法において用いることができる種々の触媒及びリガンドのコンプレックスを要約する。また、これらの触媒系を用いて達成することができるVEへの選択率及びTONも示す。以下の実施例は、より詳細な結果を与える。
【0087】
【表1】

【0088】
生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析:
以下の手順は、安息香酸(BA)の安息香酸ビニル(VB)への転化に関して用いることができる具体的なGC法を示す。同様の方法を他のビニルエステルのために容易に構成することができる。
【0089】
生成物の分析は、DB-FFAP 0.25μmカラム(30m×0.25mm)を用いるGCによって行った。バックフラッシュカラムCP-Sil 5(1m×0.25mm)を取り付けて、高沸点溶媒が主カラム上で分析されるのを抑止した。GC試料は、概して次のようにして調製した。反応物質及び1種類又は複数の生成物を含む最終反応混合物(約1mL)を、正確な量のドデカン(内部標準試料)を含むトルエン(4mL)で希釈した。反応物質及び1種類又は複数の生成物を溶解するために、混合物全体を室温において5分間又は30分間のいずれかの間撹拌した。0.04mLの最終試料をトルエンで更に希釈して、GC分析のために適当な濃度範囲を確保した。幾つかの場合においては、反応混合物を5mLのトルエンで希釈し、室温において1時間撹拌して反応物質及び1種類又は複数の生成物を溶解した。
【0090】
安息香酸及び安息香酸ビニルのピークは他のピークから良好に分離された。ドデカンを外部標準試料として用い、これはクロマトグラフにおいて他のピークから良好に分離された。較正混合物の組を分析することによって、GCを安息香酸及び安息香酸ビニルに関して較正した。GC法は、25ppmの安息香酸及び5ppmの安息香酸ビニルを検出するのに十分な感度を有していた。このGC法においては次の温度プロファイルを用いた:50℃で保持時間1分間;20℃/分で160℃に昇温;保持時間0分間;40℃/分で250℃に昇温;保持時間2.25分間;合計運転時間=11分間。
【0091】
実施例1
適当な導入口及び撹拌装置を取り付けた好適な反応容器に、360mgの安息香酸及び500ppmのパラベンゾキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、900mgの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、3mgの白金アセチルアセトナート(約385の酸/触媒金属のモル比)を撹拌しながら加え、混合物全体を140℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で供給してアセチレン圧を1.7barに保持した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時間の終了時に、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、安息香酸ビニルへの選択率は55%であったことが観察された。安息香酸の転化率は60%であり、TONは約90〜110であった。
【0092】
実施例2
適当な導入口及び撹拌装置を取り付けた好適な反応容器に、17gの安息香酸及び2gのパラベンゾキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、142.5gの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、8.5gの白金アセチルアセトナートを撹拌しながら加え、混合物全体を120℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時間の終了時に、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。
【0093】
実施例3
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度を120℃又は160℃のいずれかに保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10mgの白金均一触媒と組み合わせて用いた。TON及びVBの収率の観察結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
実施例4
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃:を用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例1におけるものと同等のBA/金属のモル比を保持するために適当な量の白金均一触媒と組み合わせて用いた。また、表3に示すように種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表3に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
実施例5
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は全ての実験において140℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。385、1155、及び3850の3つの異なるレベルのBA/金属のモル比を達成するのに必要な量の白金均一触媒を用いた。また、これらの変化するBA/金属のモル比と共に表4に示すように、種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表4に示す。
【0098】
【表4】

【0099】
実施例6
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃:を用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。表5に一覧するような異なる量の安息香酸を、これらの実験のそれぞれにおいて500ppmのパラベンゾキノンと共に用いた。2.5mgの白金均一触媒を用い、2.5mgのリガンドを用いた。得られたBA/金属のモル比は次の通りであった:用いた100mgのBAに関して約122;用いた230mgのBAに関して約280;及び用いた360mgのBAに関して約440。表5に、TON及びVBの収率を含むこれらの実験の結果を示す。
【0100】
【表5】

【0101】
実施例7
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃:を用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例1におけるものと同等のBA/金属のモル比を保持するために適当な量のレニウム均一触媒と組み合わせて用いた。また、表6に示すように種々のリガンドもそれぞれのレニウム金属コンプレックスと共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表6に示す。
【0102】
【表6】

【0103】
実施例8
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。3つの異なる反応時間:1時間、2時間、及び4時間を用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。全ての実験を140℃の温度において行った。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例7におけるものと同等のBA/金属のモル比を保持するために所望の量のレニウム均一触媒と組み合わせて用いた。また、表7に示すように種々のリガンドをそれぞれのレニウム金属コンプレックスと共に用いた。TON及びVBの収率(%)も表7に示す。
【0104】
【表7】

【0105】
実施例9
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は全ての実験において140℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。385、1150、及び3800の3つの異なるレベルのBA/金属のモル比を達成するのに適当な量のレニウム均一触媒を用いた。また、これらの変化するBA/金属のモル比と共に表8に示すように、種々のリガンドもそれぞれのレニウム金属コンプレックスと共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表8に示す。
【0106】
【表8】

【0107】
実施例10
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は全ての実験において120℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。これらの実験においては、2.5mgのブロモペンタカルボニルレニウム(I)又はペンタカルボニルクロロレニウム(I)、及び表9に示す等モル量の種々のリガンドを用いた。TON及びVBへの選択率も表9に示す。
【0108】
【表9】

【0109】
実施例11
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は全ての実験において140℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。360mgの量の安息香酸を、2.5mgのペンタカルボニルクロロレニウム(I)又はジレニウムデカカルボニル、及び表10に示す等モル量の種々のリガンドと組合せて用いた。TON及びVBへの選択率も表10に示す。
【0110】
【表10】

【0111】
実施例12
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。それぞれの実験において、以下の反応温度の少なくとも1つを保持した:50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃又は90℃(溶媒としてトルエン中);又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)。全ての場合において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10mgのロジウム均一触媒と組合せて用いた。TON及びVBの収率の観察結果を表11に示す。
【0112】
【表11】

【0113】
実施例13
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。全ての実験において、溶媒として安息香酸ブチル中で、反応温度を120℃に保持した。用いた安息香酸の量は100mg又は360mgのいずれかであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。用いた触媒は酢酸ロジウム(II)二量体であった。用いた触媒の量は、360mgの安息香酸の場合には2.5mg、100mgの安息香酸の場合には10mgの触媒であった。種々のリガンドを、1のリガンド/金属の比でロジウム触媒と共に用いた。TON及びVBの収率の観察結果を表12に示す。
【0114】
【表12】

【0115】
実施例14
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。それぞれの実験において、以下の温度及び溶媒の少なくとも1つを用いた:50℃(アセトニトリル);80℃(トルエン)、又は90℃(トルエン)。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10mgのルテニウム触媒と組合せて用いた。また、表13に示すように、種々のリガンドもそれぞれのルテニウム金属コンプレックスと共に用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率も表13に示す。
【0116】
【表13】

【0117】
実施例15
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。それぞれの実験において、以下の温度:120℃又は160℃:の少なくとも1つを用いた。溶媒として安息香酸ブチルを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例1のものと同等の酸/金属のモル比を保持するために必要な量のルテニウム触媒と組み合わせて用いた。また、表14に示すように、種々のリガンドもそれぞれのルテニウム金属コンプレックスと共に1のリガンド/金属のモル比で用いた。TON及びVBの収率も表14に示す。
【0118】
【表14】

【0119】
実施例16
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は120℃に保持した。溶媒として安息香酸ブチル又はメシチレンを用いた。用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び触媒として10mgのトリルテニウムドデカカルボニルと組み合わせて用いた。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを1の一定のリガンド/金属の比で用いた。TON及びVBの収率の観察結果を表15(ここでは安息香酸ブチルを溶媒として用いた)に示し、表16にメシチレンに関して得られた同様の結果を示す。
【0120】
【表15】

【0121】
【表16】

【0122】
実施例17
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度はそれぞれ、50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃(溶媒としてトルエン中);及び120℃(溶媒として安息香酸ブチル中);に保持した。全ての場合において、用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び触媒として10mgのビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)と組合せて用いた。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを1の一定のリガンド/金属の比で用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表17に示す。
【0123】
【表17】

【0124】
実施例18
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は、80℃(溶媒としてトルエン中)又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持した。全ての場合において、用いた安息香酸の量は230mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び触媒として10mgの酢酸パラジウムと組合せて用いた。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを0.5の一定のリガンド/金属のモル比で用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表18に示す。
【0125】
【表18】

【0126】
実施例19
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は、80℃(溶媒としてトルエン中)又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持した。全ての実験において、用いた安息香酸の量は230mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、触媒として10mgの酢酸パラジウムを用いた。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを1.0の一定のリガンド/金属のモル比で用いた。TON、転化率、及びVBの収率の観察結果を表19に示す。
【0127】
【表19】

【0128】
実施例20
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応温度は120℃又は160℃のいずれかに保持した。全ての実験において溶媒として安息香酸ブチルを用いた。全ての実験において、用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用い、触媒として、約235〜441の範囲のBA/金属のモル比を与えるのに適当な量の酢酸パラジウムを用いた。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを0.6〜1.0の変動するリガンド/金属のモル比で用いた。TON及びVBの収率の観察結果を表20に示す。
【0129】
【表20】

【0130】
実施例21
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応を、以下のように種々の温度において異なる溶媒中で行った:アセトニトリル中50℃;トルエン中80℃;安息香酸ブチル中120℃及び160℃。全ての実験において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び酸化イリジウム(IV)の存在下での実験(この場合には2.5mgの触媒を用いた)を除いて10mgのイリジウムコンプレックス触媒と組み合わせて用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表21に示す。
【0131】
【表21】

【0132】
実施例22
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応を、120℃及び160℃の2つの温度において、溶媒として安息香酸ブチル中で行った。全ての実験において、用いた安息香酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いた。385の一定のBA/金属のモル比を得るのに適当な量のイリジウム均一触媒を用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表18に示す。
【0133】
【表22】

【0134】
実施例23
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応を、120℃及び160℃の2つの温度において、溶媒として安息香酸ブチル中で行った。全ての実験において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び10mgのイリジウム均一触媒と組み合わせて用いた。トリフェニルホスフィン又は1,2−DPPBをリガンドとして、種々のイリジウム金属コンプレックス触媒と共に、1の金属/リガンドのモル比で用いた。TON、転化率、及びVBへの選択率の観察結果を表23に示す。
【0135】
【表23】

【0136】
実施例24
適当な導入口及び撹拌装置を取り付けた好適な反応容器に、100mgの2−エチルヘキサン酸及び500ppmのパラベンゾキノンを充填する。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持する。この混合物に、900mgの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して2−エチルヘキサン酸を溶解する。この溶液に、10mgの白金アセチルアセトナートを撹拌しながら加え、混合物全体を140℃に加熱する。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で供給してアセチレン圧を1.7barに保持する。反応混合物を更に4時間撹拌する。この時間の終了時に、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析する。
【0137】
実施例25
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。反応温度は、120℃又は160℃のいずれかに保持する。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる2−エチルヘキサン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び10mgの白金均一触媒と組み合わせて用いる。本実施例において用いることができる種々の白金触媒を表24に示す。
【0138】
【表24】

【0139】
実施例26
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃を用いる。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる2−エチルヘキサン酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例24又は25におけるものと同等の2EHA/金属のモル比を保持するのに所望の量の白金均一触媒と組み合わせて用いる。また、表25に示すように、種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いる。
【0140】
【表25】

【0141】
実施例27
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。全ての実験において、反応温度は140℃に保持する。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる2−エチルヘキサン酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いる。385、1155、及び3850の3つの異なるレベルの2EHA/金属のモル比を達成するのに所望の量の白金均一触媒を用いる。また、これらの変化する2EHA/金属のモル比と共に表26に示すように、種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いる。
【0142】
【表26】

【0143】
実施例28
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃を用いる。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる2−エチルヘキサン酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例24又は25におけるものと同等の2EHA/金属のモル比を保持するのに所望の量のレニウム均一触媒と組み合わせて用いる。また、表27に示すように、種々のリガンドもそれぞれのレニウム金属コンプレックスと共に用いる。
【0144】
【表27】

【0145】
実施例29
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。反応温度は、50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃又は90℃(溶媒としてトルエン中);又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持する。全ての場合において、用いる2−エチルヘキサン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び10mgのロジウム均一触媒と組合せて用いる。用いる種々のロジウム触媒を表28に示す。
【0146】
【表28】

【0147】
実施例30
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。全ての実験において、溶媒として安息香酸ブチル中で、反応温度を120℃に保持する。用いる2−エチルヘキサン酸の量は、10mgの触媒コンプレックスの場合には100mg、25mgの触媒コンプレックスの場合には360mgのいずれかであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせて用いる。用いる触媒は酢酸ロジウム(II)二量体である。用いる触媒の量は、100mgの2−エチルヘキサン酸の場合には2.5mg、360mgの2−エチルヘキサン酸の場合には10mgの触媒である。種々のリガンドを、1のリガンド/金属の比でロジウム触媒と共に用い、これらを表29に示す。
【0148】
【表29】

【0149】
実施例31
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。反応温度は、50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃又は90℃(溶媒としてトルエン中);又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持する。全ての場合において、用いる2−エチルヘキサン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び10mgのルテニウム均一触媒と組合せて用いる。用いる種々のルテニウム触媒及びリガンドを表30に示す。
【0150】
【表30】

【0151】
実施例32
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。反応温度は、80℃(溶媒としてトルエン中)又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持する。全ての場合において、用いる2−エチルヘキサン酸の量は230mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び触媒として10mgの酢酸パラジウムと組合せて用いる。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを1.0の一定のリガンド/金属のモル比で用い、これらを表31に示す。
【0152】
【表31】

【0153】
実施例33
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例24を実質的に繰り返す。反応を、以下のように種々の温度において異なる溶媒中で行った:アセトニトリル中50℃;トルエン中80℃;安息香酸ブチル中120℃及び160℃。全ての実験において、用いる2−エチルヘキサン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び酸化イリジウム(IV)の存在下での実験(この場合には2.5mgの酸化イリジウム(IV)を用いる)を除いて10mgのイリジウムコンプレックス触媒と組み合わせて用いる。種々のイリジウム触媒を表32に示す。
【0154】
【表32】

【0155】
実施例34
適当な導入口及び撹拌装置を取り付けた好適な反応容器に、100mgのネオヘプタン酸及び500ppmのパラベンゾキノンを充填する。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持する。この混合物に、900mgの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱してネオヘプタン酸を溶解する。この溶液に、10mgの白金アセチルアセトナートを撹拌しながら加え、混合物全体を140℃に加熱する。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で供給してアセチレン圧を1.7barに保持する。反応混合物を更に4時間撹拌する。この時間の終了時に、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析する。
【0156】
実施例35
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。反応温度は、120℃又は160℃のいずれかに保持する。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いるネオヘプタン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び10mgの白金均一触媒と組合せて用いる。本実施例において用いることができる種々の白金触媒を表33に示す。
【0157】
【表33】

【0158】
実施例36
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃を用いる。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる酸はネオペンタン酸である。用いるネオペンタン酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例34又は35におけるものと同等のCA/金属のモル比を保持するのに所望の量の白金均一触媒と組合せて用いる。また、表34に示すように、種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いる。
【0159】
【表34】

【0160】
実施例37
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。全ての実験に関して反応温度を140℃に保持する。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる酸はピバル酸(PA)である。用いるピバル酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノンと組合せて用いる。385、1155、及び3850の3つの異なるレベルのPA/金属のモル比を達成するのに必要な量の白金均一触媒を用いる。また、これらの変化するPA/金属のモル比と共に表35に示すように、種々のリガンドもそれぞれの白金金属コンプレックスと共に用いる。
【0161】
【表35】

【0162】
実施例38
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。3つの異なる反応温度:120℃、140℃、及び160℃を用いる。溶媒として安息香酸ブチルを用いる。用いる酸はネオデカン酸(NDA)である。用いるネオデカン酸の量は360mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び実施例34又は35におけるものと同等のNDA/金属のモル比を保持するのに適当な所望の量のレニウム均一触媒と組合せて用いる。また、表36に示すように、種々のリガンドもそれぞれのレニウム金属コンプレックスと共に用いる。
【0163】
【表36】

【0164】
実施例39
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。反応温度は、50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃又は90℃(溶媒としてトルエン中);又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中);のいずれかに保持する。用いる酸はドデカン酸である。全ての場合において、用いるドデカン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10mgのロジウム均一触媒と組合せて用いる。用いる種々のロジウム触媒を表37に示す。
【0165】
【表37】

【0166】
実施例40
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。全ての実験において、溶媒として安息香酸ブチル中で、反応温度を120℃に保持する。用いる酸はオクタン酸である。用いるオクタン酸の量は、500ppmのパラベンゾキノンと組み合わせる場合には100mg、又は0.05mgのパラベンゾキノンと組み合わせる場合には360mgのいずれかである。用いる触媒は酢酸ロジウム(II)二量体である。用いる触媒の量は、100mgのペンタン酸の場合には10mg、360mgのペンタン酸の場合には2.5mgの触媒である。種々のリガンドを、1のリガンド/金属の比でロジウム触媒と共に用い、これらを表38に示す。
【0167】
【表38】

【0168】
実施例41
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。反応温度は、50℃(溶媒としてアセトニトリル中);80℃又は90℃(溶媒としてトルエン中);又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中);のいずれかに保持する。用いる酸はネオヘプタン酸である。全ての場合において、用いるネオヘプタン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び10mgのルテニウム均一触媒と組合せて用いる。用いる種々のルテニウム触媒及びリガンドを表39に示す。
【0169】
【表39】

【0170】
実施例42
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。反応温度は、80℃(溶媒としてトルエン中)又は120℃(溶媒として安息香酸ブチル中)のいずれかに保持する。本実施例において用いる酸はネオペンタン酸である。全ての場合において、用いるネオペンタン酸の量は230mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び触媒として10mgの酢酸パラジウムと組合せて用いる。これらの実験のそれぞれにおいて、種々のリガンドを1.0の一定のリガンド/金属のモル比で用い、これらを表40に示す。
【0171】
【表40】

【0172】
実施例43
以下の条件を用いて幾つかの実験で実施例34を実質的に繰り返す。反応を、以下のように種々の温度において異なる溶媒中で行う:アセトニトリル中50℃;トルエン中80℃;安息香酸ブチル中120℃及び160℃。用いる酸はデカン酸である。全ての実験において、用いるデカン酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン、及び酸化イリジウム(IV)の存在下での実験(この場合には2.5mgの触媒を用いる)を除いて10mgのイリジウムコンプレックス触媒と組み合わせて用いる。種々のイリジウム触媒を表41に示す。
【0173】
【表41】

【0174】
実施例44
好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、65.15gの安息香酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、134mgの安息香酸ブチルを撹拌しながら加え、必要な場合には混合物を僅かに加熱して安息香酸を溶解した。この溶液に、0.47gの白金アセチルアセトナート(Pt(acac))を撹拌しながら加え、混合物全体を160℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に25.46gの安息香酸ビニルが形成されたことが観察された(収率32%)。24.69gの未反応の安息香酸が回収された。BAの転化率=62%;VBへの選択率=52%;であり、TONは144であった。
【0175】
実施例45
図1に示す種類の好適な反応容器に適当な導入口及び撹拌装置を取り付け、194.85gの2−エチルヘキサン酸及び2gのメチルヒドロキノンを充填した。反応器を窒素で2〜3回パージし、窒素の一定流を保持した。この混合物に、0.51gの白金アセチルアセトナート(Pt(acac))を撹拌しながら加え、混合物全体を160℃に加熱した。この時点で、アセチレンを反応器中に一定流で100mL/分の速度で供給した。反応混合物を更に4時間撹拌した。この時点で、反応混合物の試料を取り出し、上記に記載のようにしてGCによって分析した。GC分析から、反応混合物中に16.19gの2−エチルヘキサン酸ビニルが形成されたことが観察された(収率7%)。150.3gの未反応の2−エチルヘキサン酸が回収された。2−EHAの転化率=23%;V2EHへの選択率=31%;であり、TONは73であった。
【0176】
比較例
以下の比較例は、カドミウム又は亜鉛ベースの触媒のような従来の触媒を用いる安息香酸ビニルの製造を示す。
【0177】
比較例1
触媒として酢酸カドミウム又はカドミウムアセチルアセトナートを用いた他は、幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応は、溶媒として安息香酸ブチル、鉱油、又はジエチレングリコールジブチルエーテル中で、150℃又は180℃において行った。全ての実験において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び50mgの触媒と組み合わせて用いた。また、幾つかのリガンド及び添加剤も、1の金属/リガンドのモル比で用いた。試験したリガンドとしては、トリフェニルホスフィン及びo−ジピリジルが挙げられる。試験した添加剤は、以下のもの:塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化セリウム(III)、酢酸リチウム、塩化リチウム、及び塩化第2鉄であった。結果は、酢酸カドミウム又はカドミウムアセチルアセトナートの最良の性能が安息香酸ブチル中180℃において得られたことを示した。カドミウムアセチルアセトナートを用いると、0.9の最大のTONが30%の安息香酸ビニルへの選択率と共に得られた。試験したリガンド及び/又は添加剤のいずれによっても向上は観察されなかった。
【0178】
比較例2
触媒としてカドミウムアセチルアセトナートを用い、リガンドとしてトリフェニルホスフィンを用いるか又は用いなかった他は、2つの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応は、溶媒として安息香酸ブチル中150℃において行った。いずれの実験においても、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び50mgの触媒と組合せて用いた。トリフェニルホスフィンを用いる実験においては、1の金属/リガンドのモル比の量のトリフェニルホスフィンを用いた。約0.2のTONが得られた。
【0179】
比較例3
触媒として亜鉛アセチルアセトナートを用いた他は、幾つかの実験で実施例1を実質的に繰り返した。反応は、溶媒として安息香酸ブチル、鉱油、又はジエチレングリコールジブチルエーテル中で、150℃又は180℃において行った。試験したリガンドとしては、トリフェニルホスフィン、1,2−DPPB、トリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、及びo−ジピリジルが挙げられる。試験した添加剤は、以下のもの:塩化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、トリルテニウムドデカカルボニル、塩化ルテニウム(II)、カドミウムアセチルアセトナート、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロリド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアセタート、塩化アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化セリウム(III)、ナトリウムトリフラート、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、及び塩化第2鉄であった。全ての実験において、用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び50mgの触媒と組み合わせて用いた。また、幾つかのリガンド及び添加剤も、1の金属/リガンドのモル比で用いた。結果は、亜鉛触媒系の最良の性能が0.5未満のTONを示したことを示した。
【0180】
比較例4
亜鉛アセチルアセトナートを、添加剤としてカドミウムアセチルアセトナートと組み合わせて用いた他は、実施例1を実質的に繰り返した。反応は、溶媒として安息香酸ブチル中で180℃において行った。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び50mgの触媒と組み合わせて用いた。約0.51のTONが得られた。試験したリガンド及び/又は添加剤のいずれによっても向上は観察されなかった。
【0181】
比較例5
触媒として亜鉛アセチルアセトナートを用いた他は、実施例1を実質的に繰り返した。反応は、溶媒として安息香酸ブチル中で180℃において行った。用いた安息香酸の量は100mgであり、これを500ppmのパラベンゾキノン及び50mgの触媒と組み合わせて用いた。約0.45のTONが得られた。
【0182】
本発明を幾つかの態様に関して記載したが、本発明の精神及び範囲内のこれらの態様の修正は当業者に容易に明らかになるであろう。本発明は特許請求の範囲において規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、均一触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又は添加剤又はそれらの混合物の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が金属コンプレックスであり、金属が、イリジウム、パラジウム、白金、レニウム、ロジウム、及びルテニウムからなる群から選択され、触媒並びに場合によって用いる1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を、ビニルエステルへの選択率が少なくとも50%になるように選択し、そのようになる量で用いる、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項2】
少なくとも50%のカルボン酸転化率及び少なくとも80の相対活性を示すことを更に特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カルボン酸が、安息香酸、2−エチルヘキサン酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、及びネオデカン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
均一触媒の金属が、フッ化物、塩化物、ヨウ化物、酢酸塩、アセチルアセトナート、ジメチル、カルボニル、1,5−シクロオクタジエン、メトキシ、5−インデニル、テトラフルオロボレート、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]−ビス(ベンゾニトリル)、ブロモペンタカルボニル、ブタン、トリフェニルホスフィン、及びビス(2−メチルアリル)からなる群から選択される少なくとも1種類の化合物又は基と錯化している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
初期反応混合物が、約100:1〜約5000:1の酸:金属のモル比の金属コンプレックス触媒及び安息香酸の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が約25℃〜約250℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
反応混合物の圧力が約1絶対気圧〜2絶対気圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
溶媒が、アセトニトリル、ベンゾニトリル、安息香酸ブチル、鉱油、ジエチレングリコールジブチルエーテル、及びトルエンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
リガンドが、トリフェニルホスフィン、1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、o−ビピリジル、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、及び4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンからなる群から選択され;添加剤が、アルミニウムアセチルアセトナート、塩化アルミニウム、カドミウムアセチルアセトナート、塩化セリウム、塩化鉄、酢酸カリウム、酢酸リチウム、臭化リチウム、塩化リチウム、安息香酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、パラベンゾキノン、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、塩化パラジウム、トリルテニウムドデカカルボニル(Ru(CO)12)、臭化亜鉛、塩化亜鉛、無水安息香酸、トリ(n−ブチル)アミン、テトラ(n−ブチル)アンモニウムクロリド、リン酸ナトリウム、及びテトラブチルアンモニウムアセタートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
場合によっては好適な有機溶媒中に溶解しているカルボン酸を、均一触媒の存在下、好適な反応温度及び圧力において、場合によっては1種類以上のリガンド又はその添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が金属コンプレックスであり、金属が、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、及びパラジウムからなる群から選択され、触媒並びに場合によって用いる1種類又は複数のリガンド及び1種類又は複数の添加剤を、相対活性が少なくとも100になるように選択し、そのようになる量で用いる、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項11】
カルボン酸が安息香酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
カルボン酸が2−エチルヘキサン酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
カルボン酸及び触媒を約180:1〜約3000:1の酸:金属のモル比で供給する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
反応温度が約50℃〜約180℃の範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
触媒が約100〜約1000の相対活性(ビニルエステルのモル量/金属原子)を示す、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
消費されたカルボン酸を基準とするビニルエステルへの選択率が少なくとも60%である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
2−エチルヘキサン酸を、場合によっては好適な有機溶媒中で、好適な反応温度及び圧力において、均一触媒の存在下、場合によっては1種類以上のリガンド又はその添加剤の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が金属コンプレックスであり、金属が、白金、レニウム、ロジウム、ルテニウム、及びパラジウムからなる群から選択され、2−エチルヘキサン酸を約200:1〜約4000:1の2−エチルヘキサン酸:触媒金属のモル比で供給する、2−エチルヘキサン酸から2−エチルヘキサン酸ビニルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項18】
カルボン酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、パラジウム触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとして1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)の存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が酢酸パラジウム(II)であり、カルボン酸を約200:1〜約4000:1のカルボン酸:パラジウム金属のモル比で供給する、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項19】
反応温度が約150℃〜約170℃の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
リガンドを約0.5:1〜約1:1のリガンド:金属のモル比で存在させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
安息香酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、ルテニウム触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとして1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)又はトリフェニルホスフィンの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒がビス(2−メチルアリル)(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)及びトリルテニウムドデカカルボニルから選択され、カルボン酸を約200:1〜約4000:1のカルボン酸:ルテニウム金属のモル比で供給する、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項22】
触媒がトリルテニウムドデカカルボニルであり、安息香酸を約200:1〜約400:1の安息香酸:金属の比で供給し、反応温度が約150℃〜約170℃であり、リガンドを約0.5:1〜約1:1のリガンド:金属のモル比で存在させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
カルボン酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、ロジウム触媒の存在下、及び場合によっては1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン(1,2−DPPB)、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、ジフェニル−2−ピリジルホスフィン、及びトリフェニルホスフィンからなる群から選択されるリガンドの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が、[1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン](1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロボレート、テトラロジウムドデカカルボニル、又は酢酸ロジウム(II)二量体から選択され、カルボン酸を約200:1〜約500:1のカルボン酸:ロジウム金属のモル比で供給する、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項24】
反応温度が約110℃〜約170℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
リガンドを約0.5〜約1.5のリガンド:金属のモル比で存在させる、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
触媒がテトラロジウムドデカカルボニルであり、リガンドがオキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)又はジフェニル−2−ピリジルホスフィンである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
触媒が酢酸ロジウム(II)二量体であり、リガンドが、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、トリフェニルホスフィン、及び1,2−ジフェニルホスフィノベンゼンからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
カルボン酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、白金触媒の存在下、及び場合によっては4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、及びトリフェニルホスフィンからなる群から選択されるリガンドの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が、白金アセチルアセトナート、ヨウ化白金、又は(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)から選択され、カルボン酸を約200:1〜約5000:1のカルボン酸:白金金属のモル比で供給する、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項29】
反応温度が約130℃〜約170℃の範囲である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
金属コンプレックス触媒が白金アセチルアセトナートであり、反応温度が約140℃〜約160℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
リガンドが0.5:1〜2:1のリガンド:金属のモル比の4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
金属コンプレックス触媒が(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)であり、反応温度が約140℃〜約160℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
リガンドが0.4:1〜2:1のリガンド:金属のモル比の4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
金属触媒がヨウ化白金であり、温度が約140℃である、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
カルボン酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、レニウム触媒の存在下、及び場合によっては(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ジフェニルホスフィノベンゼン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、及びトリス(p−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィンから選択され、場合によっては添加剤として酢酸カリウム又は安息香酸ナトリウムを含むリガンドの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が、ペンタカルボニルクロロレニウム(I)、ジレニウムデカカルボニル、又はブロモペンタカルボニルレニウム(I)から選択され、カルボン酸を約150:1〜約1500:1のカルボン酸:レニウム金属のモル比で供給する、カルボン酸からビニルエステルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項36】
反応温度が約110℃〜約170℃の範囲である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
リガンドを約0.4〜約1.5:1のリガンド:金属のモル比で存在させる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
金属触媒がブロモペンタカルボニルレニウム(I)であり、場合によってはリガンドが、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ−2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)、又は1,2−ジフェニルホスフィノベンゼンであり、場合によっては添加剤が酢酸カリウムである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
金属コンプレックス触媒がジレニウムデカカルボニルであり、場合によってはリガンドが、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、オキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)、又はトリス(4−メトキシフェニル)ホスフィンである、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
金属触媒がペンタカルボニルクロロレニウム(I)であり、場合によってはリガンドが、4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ベンゼン、又はオキシジ(2,1−フェニレン)ビス(ジフェニルホスフィン)であり、場合によっては添加剤が安息香酸ナトリウムである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
安息香酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、白金触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとして4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が白金アセチルアセトナート又は(1,5−シクロオクタジエン)ジメチル白金(II)から選択され、安息香酸を約250:1〜約5000:1の安息香酸:白金金属のモル比で供給する、安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための均一方法。
【請求項42】
安息香酸を、好適な有機溶媒中、好適な反応温度及び圧力において、レニウム触媒の存在下、及び場合によってはリガンドとして4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−9,9−ジメチルキサンテンの存在下でアセチレンと反応させることを含み、ここで、触媒が、ペンタカルボニルクロロレニウム(I)、ジレニウムデカカルボニル、又はブロモペンタカルボニルレニウム(I)から選択され、安息香酸を約150:1〜約1500:1の安息香酸:レニウム金属のモル比で供給する、安息香酸から安息香酸ビニルを選択的に形成するための均一方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−526110(P2012−526110A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509786(P2012−509786)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/001276
【国際公開番号】WO2010/129030
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】