説明

垂直循環型トレイ式仕分け装置

【課題】搬送用レールの両側に搬送物を排出することができる垂直循環型トレイ式仕分け装置を提供すること。
【解決手段】物品搬送用のトレイを有する複数のキャリッジが垂直循環する搬送用レールに沿って走行する垂直循環型トレイ式仕分け装置であって、キャリッジ140に、トレイ120を走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構200を有し、この移動機構は、搬送用レールに対して垂直な水平方向に直線運動可能な状態に取り付けられたラックと、前記ラックの一端に設けられ、前記搬送用レールに所定幅離間して併設されるガイドレールに摺接する押し当てローラと、前記ラックに噛み合うピニオンと、前記ピニオンの原動軸に一端が固定された主動アームと、前記キャリッジに一端が軸支された従動アームと、前記主動アーム及び前記従動アームの他端に前記トレイを支持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、搬送用レールに沿って走行する多数の物品搬送用のトレイに搬送物を載置して所定の位置まで搬送することにより、物品の仕分けを行うトレイ式仕分け装置に関するものである。より詳しくは、搬送用レールが垂直平面上を循環する軌道を有している垂直循環型トレイ式仕分け装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、物流・配送センターや工場内において物品を搬送・仕分けをする自動仕分け装置として、垂直循環する搬送用レールに沿って走行する複数の傾動可能なトレイ、いわゆるチルトトレイを有し、所定の位置でこのトレイを傾動させ、トレイ上に載置した物品を払い出す、チルトトレイ式仕分け装置が知られている(特公平7−41978号公報参照)。また、垂直循環する1つ又は一対の駆動チェーンに保持された載荷台に、搬送物を払い出すために搬送方向と直交する水平方向に循環回動する無端ベルトを設けたベルトキャリヤ式仕分け装置も知られている(実開平5−37754号、実開平7−30227号、実開平7−28121号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような従来のチルトトレイ式仕分け装置では、搬送用レールを垂直循環型に設置した場合、トレイを搬送用レールの片側に支持せざるを得ないため、搬送物を搬送用レールの片側方向にしか排出することができなかった。そのため、シュートの設置場所や搬送用レールのレイアウトの自由度が低かった。
【0004】
一方、ベルトキャリヤ式仕分け装置では、搬送用レールの両側に払い出すことも可能であるが、ベルト回転機構が高価であるだけでなく、その機構が複雑であるためメンテナンス作業も繁雑であった。さらに、ベルトキャリヤ式仕分け装置では、搬送物の載荷面が水平であるため、搬送物の落下を防ぐために落下止めを別途設ける必要があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、前述したような従来技術の問題を解決し、垂直循環軌道を有する搬送用レールに沿って物品搬送用のトレイが走行する垂直循環型トレイ式仕分け装置において、搬送用レールの両側に搬送物を排出することができる垂直循環型トレイ式仕分け装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本請求項1に係る発明は、物品搬送用のトレイを有する複数のキャリッジが垂直循環する搬送用レールに沿って走行する垂直循環型トレイ式仕分け装置において、前記トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構を設けることにより、前記課題を解決するものである。
【0007】
また、本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された垂直循環型トレイ式仕分け装置の構成に加えて、その移動機構として、搬送用レールに対して垂直な水平方向に直線運動可能な状態にキャリッジに取り付けられたラックと、このラックの一端に設けられ、前記搬送用レールに所定幅離間して併設されるガイドレールに摺接する押し当てローラと、前記ラックに噛み合うピニオンと、そのピニオンの原動軸に一端が固定された主動アームと、前記キャリッジに一端が軸支された従動アームと、前記主動アーム及び前記従動アームの他端にトレイを支持する構成を採用したことにより、前記課題を安価なコストで、別途の駆動源を要することなく、解決したものである。
【0008】
請求項1又は請求項2に記載された垂直循環型トレイ式仕分け装置において、搬送レールに沿って物品搬送用のトレイを走行させる走行駆動方式としては、搬送経路に沿って配置したリニアモータの一次コイルから搬送方向の走行駆動力を受けるリニア駆動方式や搬送経路に沿って配置した搬送チェーンの牽引力から走行駆動力を受けるトロリー駆動方式等、いずれの駆動方式を採用しても差し支えないが、低騒音・低振動化の点からリニア駆動方式を用いることが、特に好ましい。
【0009】
また、本発明における物品搬送用のトレイは、搬送経路のそれぞれの仕分け位置で傾動し、積載された物品を排出する傾動機構、いわゆるチルト機構を有しているが、その機構については、トレイを確実に傾動できるものであれば、その手段については、特に限定されるものではない。
【0010】
【作用】
本発明の垂直循環型トレイ式仕分け装置は、上述のような構成を備えているため、以下のような本発明に特有の作用を呈する。
【0011】
まず、本請求項1に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置によれば、トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構を有しているので、キャリッジが、搬送用レールの旋回部分を通過する際に、トレイを搬送用レールの一側方へ移動させることにより、直線部分においては、トレイを搬送用レールの真上に支持した状態で垂直循環軌道を円滑に循環走行する。その結果、垂直循環型トレイ式仕分け装置でありながら、搬送用レールの両側に搬送物排出用のシュートを設置することが可能となり、しかも、従前のトレイ傾動機構(チルト機構)により、搬送物が確実にシュートへ排出される。
【0012】
また、本請求項2に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置によれば、請求項1に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置が呈する作用に加えて、キャリッジに対する搬送用レールに沿った走行方向の駆動力が、トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動させるための駆動力へと変換され、別途の駆動源を要することなくトレイの移動が可能になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に本発明の好適な実施の形態を図1を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である垂直循環型トレイ式仕分け装置100の全体を表す斜視図を示している。図示はされていないが、垂直に循環する搬送用レールに沿って、複数のキャリッジ110が、図示はされていない連結ピン等の連結機構により連結されている。そして、各キャリッジ110に回転自在に結合されたトレイ支持手段140に物品搬送用のトレイ120が支持されている。この物品搬送用のトレイ120は、各トレイ毎に付設された傾動機構により、搬送方向に対して側方に傾動可能となっており、搬送経路の所定の仕分け位置において、当該トレイ120を傾動させることにより、当該トレイ120上に載置した搬送物をシュート130に放下させることが可能になっている。
【0014】
ここで、前記トレイ120は、走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構200により、各キャリッジに回転自在に結合されたトレイ支持手段140に支持されている。そのため、キャリッジが垂直循環軌道を形成している搬送用レールの旋回部分160を通過する際に、トレイ120を垂直循環軌道の一側方へ移動させることにより、搬送用レールの直線部分においては、トレイ120を搬送用レールの真上に支持した状態で、キャリッジが垂直循環軌道を走行することが可能になる。その結果、垂直循環型トレイ式仕分け装置でありながら、搬送用レールの両側に搬送物排出用のシュート130を設置することが可能となる。しかも、トレイを単に傾動させるだけの周知のトレイ傾動機構(チルト機構)により、搬送物を搬送用レールの両側に設置されたシュート130に確実に排出することが可能になる。
【0015】
次に、本発明の最も特徴的な構成である移動機構200について、図2乃至図4に基づき詳述する。図2乃至図4は、トレイ120を搬送用レールに対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構200の側面図であって、図2はトレイ120がキャリッジ110に対して真横に支持された状態を、図3はトレイ120がキャリッジ110に対して真上に支持された状態を、図4はトレイ120が搬送用レールに対して垂直な平面上を移動する様子をそれぞれ図示している。
【0016】
図2に示すように、移動機構200は、搬送用レールに対して垂直な水平方向に直線運動可能な状態にトレイ支持手段140に取り付けられたラック210とこのラック210の一端に設けられた押し当てローラ220と、押し当てローラを搬送用レールに対して前進後退させるガイドレール230と、前記ラック210に噛み合うピニオン240と、このピニオン240の原動軸240aに一端が固定された主動アーム250と、前記トレイ支持手段140に一端が軸支された従動アーム260とを有している。そして主動アーム250及び従動アーム260の他端にトレイ120が支持されている。
【0017】
図2は、キャリッジ110が、垂直循環軌道を有する搬送用レールの旋回部分160を通過する状態を示している。この時、前記ガイドレール230は、搬送用レールと最も離れた距離L1を隔てて設置されている。そのため、ラック210は、最も引き出された状態になっており、トレイ120は、主動アーム250と従動アーム260により、キャリッジ110のほぼ真横に支持される。
【0018】
一方、図3は、キャリッジ110が、垂直循環軌道を有する搬送用レールの直線部分を通過する状態を示している。この時、前記ガイドレール230は搬送用レール方向にL1−L2だけ接近した位置に設置されている。そのため、押し当てローラ220が、ガイドレール230に沿って搬送用レール方向へ接近し、ラック210が押し込まれる。その結果、ラック210に噛み合うようにトレイ支持手段140に軸支されたピニオン240が、原動軸240aを中心に回転する。そのため、原動軸240aに固定された主動アーム250がピニオン240の回転に伴い、原動軸240aを軸として回転する。そして、主動アーム250の他端に設置されたトレイ120が、円弧を描くように、搬送用レールに対して垂直な平面上を移動する。トレイ支持手段140の端に軸支された従動アーム260は、その他端がトレイ120に枢設されており、前記主動アーム250と共にトレイ120を支持している。
【0019】
図4は、ガイドレール230に沿って押し当てローラ220が搬送用レール方向に押し込まれたときに、トレイ120が移動する様子を示している。ガイドレール230がAの位置からB、C、Dへと搬送用レールに接近するにつれて、押し当てローラ220がガイドレール230に摺接して搬送用レール方向に押し込まれる。それに伴い上述のように主動アーム250が回動し、トレイ120が円弧を描くようにAの位置からB、C、Dへと移動する。例えば、トレイ120へ搬送物を積載するときには、作業者が作業し易い低い位置、すなわちAの位置にトレイ120を移動し、積載が終わったら搬送用レールの真上、すなわちCの位置へとトレイ120を移動する。さらにトレイ120が搬送用レールの旋回部分を通過する際には、トレイ120と搬送用レールの衝突を避けるためトレイ120はAの位置に支持される。
【0020】
このトレイ120の下部には、トレイを傾動する傾動機構が設置されており、トレイ120を両側方に傾動させることができるようになっている。そして、図3に示したように、搬送用レールの側方に設置された搬送物排出用のシュート130に、トレイ120を傾動することによりこのトレイ120上に載置された搬送物を放出することができる。しかも、図4に示すように、トレイ120を異なる高さに支持することが可能であるため、搬送物排出用のシュート130も垂直方向に高さを違えて複数設けることが可能になり、複数段両側払い出しタイプの仕分け装置を構成することができる。さらに、トレイ120は、搬送用レールの真上に支持されて、搬送用レールの直線部分を走行するため、このシュート130は搬送用レールの直線部分に近接して設置することが可能となり、狭いスペースでの設置が可能になる。
【0021】
また、図5に示した本発明の垂直循環型トレイ式仕分け装置の上面図から分かるように、シュート130が設置される仕分け位置、作業者がトレイ120上に搬送物を載置する搬入コンベヤ150及び搬送用レールの旋回部分160の位置に合わせて、予めガイドレール230と搬送用レールの距離を調整すると共に、ガイドレール230の軌道を滑らかな曲線になるように敷設することにより、特別に制御することなく、キャリッジ110が垂直循環軌道に沿って走行するに伴い、前記トレイ120を上述のように自動的に、しかもトレイに衝撃を加えることなく静粛に旋回移動させることが可能になる。
【0022】
なお、図示はされていないが各トレイ支持手段には、キャリッジが垂直循環軌道を走行した際に常にトレイの積載面が上を向くようにトレイを支持する水平維持機構を有している。この水平維持機構は、特に限定されるものではなく、公知の水平維持機構を適用することが可能である。
【0023】
また、上述の例では、移動機構として、ラックとピニオンを用いたものについて説明しているが、本発明に使用する移動機構としては、この構成に限られるものではなく、リンク機構を用いたものや、トレイを支持するアームを直接モータで回動させる機構を用いることも可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本請求項1に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置によれば、トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構を有しているので、キャリッジが搬送用レールの旋回部分を通過する際に、トレイを垂直循環軌道の一側方へ移動させることにより、直線部分においては、トレイを搬送用レールの真上に支持した状態で、循環走行することが可能になる。その結果、垂直循環型トレイ式仕分け装置でありながら、搬送用レールの両側に搬送物排出用のシュートを設置することが可能となり、スペース効率が向上すると共に従前のトレイ傾動機構(チルト機構)による搬送物のシュートへの排出が可能となり、装置をきわめて安価に構成することができる。また、搬送物の積載面がトレイであるため、落下止めを別途設ける必要がなくなり、構造が簡単になる。
【0025】
また、本請求項2に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置によれば、請求項1に係る垂直循環型トレイ式仕分け装置が奏する効果に加えて、キャリッジに対する搬送用レールに沿った走行方向の駆動力が、トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動させるための駆動力へと変換され、特別の駆動源を有することなくトレイを移動させることができる。しかも、別途の制御装置を要することなく、ガイドレールと搬送用レールとの距離を調節するだけで、トレイの移動を制御することが可能になる。
【0026】
さらに、本発明の垂直循環型トレイ式仕分け装置は、搬送物排出用のシュートを高さを変えて複数段設置し、各シュートの高さに応じて搬送物の払い出しを行うことも簡単に実現できる等、その産業上の利用価値はきわめて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直循環型トレイ式仕分け装置の全体を示す斜視図。
【図2】本発明の移動機構がトレイを真横に支持した状態を示す側面図。
【図3】本発明の移動機構がトレイを真上に支持した状態を示す側面図。
【図4】本発明の移動機構がトレイを移動させる状態を示す側面図。
【図5】本発明の垂直循環型トレイ式仕分け装置を上方から見たときの平面図。
【符号の説明】
100  ・・・ 垂直循環型トレイ式仕分け装置
110  ・・・ キャリッジ
120  ・・・ トレイ
130  ・・・ シュート
140  ・・・ トレイ支持手段
150  ・・・ 搬入コンベヤ
160  ・・・ 旋回部分
200  ・・・ 移動機構
210  ・・・ ラック
220  ・・・ 押し当てローラ
230  ・・・ ガイドレール
240  ・・・ ピニオン
240a ・・・ 原動軸
250  ・・・ 主動アーム
260  ・・・ 従動アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品搬送用のトレイを有する複数のキャリッジが垂直循環する搬送用レールに沿って走行する垂直循環型トレイ式仕分け装置において、
前記キャリッジに、前記トレイを走行方向に対して垂直な平面上を移動可能に支持する移動機構を設けたことを特徴とする垂直循環型トレイ式仕分け装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記搬送用レールに対して垂直な水平方向に直線運動可能な状態に前記キャリッジに取り付けられたラックと、
前記ラックの一端に設けられ、前記搬送用レールに所定幅離間して併設されるガイドレールに摺接する押し当てローラと、
前記ラックに噛み合うピニオンと、
前記ピニオンの原動軸に一端が固定された主動アームと、
前記キャリッジに一端が軸支された従動アームと、
前記主動アーム及び前記従動アームの他端に前記トレイが支持されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直循環型トレイ式仕分け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2004−10304(P2004−10304A)
【公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−168719(P2002−168719)
【出願日】平成14年6月10日(2002.6.10)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】