説明

型内被覆成形方法及び型内被覆成形体

【課題】被覆膜厚を任意に制御でき、塗装欠陥のない均一な被覆膜を有する型内被覆成形体の成形方法を提供すること。
【解決手段】キャビティを形成した金型装置、型締め装置、射出装置、注入装置、キャビティ内への気体噴出装置を具備する成形装置を用いて、樹脂成形品の表面に被覆を施す型内被覆成形方法であって、
型締め装置によって型締めをされた金型装置のキャビティへ、射出装置により反応性樹脂を射出充填する第1工程、
反応性樹脂の硬化反応により成形体を得る第2工程、
キャビティ内に射出された樹脂の重合反応によって硬化収縮した状態で、キャビティ内の空間部の容積に対し40〜100%の容積の被覆剤を注入する第3工程、
被覆剤の注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出する第4工程、
被覆剤が硬化完了するまで被覆剤にかかる圧力が0Paよりも高い状態となるように被覆剤にかかる圧力を保持する第5工程
を有する型内被覆成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応射出成形法での金型内被覆において、非塗装欠陥部を生じることなく、且つ被覆膜厚を任意に制御することができる型内被覆成形方法に関する。更に詳しくは、特定の条件を満足するように被覆剤に圧力をかけることにより、反応射出成形法において通常使用されている金型形状にあっても、非塗装欠陥部を生じることなく、被覆膜厚を任意に制御することができる型内被覆成形方法及びその成形方法により製造された型内被覆成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
バンパーやエンジンフード、フェンダー等の自動車部品、船外機カウルトップ、ホイルローダーやパワーショベル等の建設機械、ゴルフカートやゲーム機等のレジャー機器、洗面ボウルやシャワーパン等の住宅設備等に用いられている大型樹脂成形体は、成形機や金型等の成形設備費が安いことから、近年反応射出成形法で製造されることが多くなっている。これら用途で用いられている樹脂成形体に意匠性や耐久性等の特性を付与するために広くスプレー塗装が行われている。
【0003】
このような塗装方法としてのスプレー塗装は、近年環境問題に強い関心が寄せられるなか、塗装工場からの有害な揮発性有機物、いわゆるVOCの大気への放出が厳しく制限される傾向が強まってきていることや、従業員の健康保護を重視する観点から、スプレー塗装に代わる技術の開発が急務となっている。
【0004】
このような状況において、金型内で成形したプラスチック成形体の表面と金型のキャビティ面との間に塗料を注入した後、塗料を金型内で硬化させてプラスチック成形体表面に塗膜が密着した一体成形体を製造する型内被覆成形方法が注目されている。
【0005】
型内被覆成形方法は、反応射出成形方法(RIM)による樹脂成形体製造においては、樹脂原料単量体、重合触媒、触媒活性化成分等を含有する反応原液が成形体となる際に、硬化収縮によって生じた金型キャビティ面と成形体との間に出来た5乃至800μm程度の間隙に被覆剤を注入し、金型及び成形体表面の熱によって被覆剤を硬化させ、被覆された成形体を金型から取り出すものである。
【0006】
この型内被覆成形方法は、専らSMC(Sheet Molding Compound)、BMC(Bulk Molding Compound)といった熱硬化性樹脂成形材料による成形品の表面改質に広く実施されている。例えば特許文献1には、上部金型と下部金型との間にSMC材料を供給し両方の金型を閉じ圧縮成形した後、両方の金型の密閉状態を維持したまま離間し、上部金型と部品との間に生じる空間中にこの空間の体積よりも少ない量の被覆剤を射出し、その後再度型締めを行う方法が提案されている。
【0007】
また特許文献2には、上部金型と下部金型との間にSMC材料を供給し両方の金型を閉じ圧縮成形した後、金型と成形品との間に生じている圧縮圧力を大きく越える圧力で、金型と成形品の境界に被覆剤を射出する方法が提案されている。
【0008】
これら2件の公報に開示された方法は、圧縮成形においては、可動金型部に加えられた型締め力が、全て成形品に加えられる。従って、被覆剤の注入量と型締め力の制御によって被覆膜厚の制御が容易に行うことができる。
【0009】
また、熱可塑性樹脂の射出成形法においても、型内被覆成形方法が提案されている。例えば特許文献3には、熱可塑性樹脂を金型内に設けられたキャビティ内に射出した後、金型の型締め力を軽減し又は同一型締め力の状態で、樹脂成形品の塗装面と金型との間に形成された空間内に熱硬化性の塗料を注入・充填する方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献4には、熱可塑性樹脂を金型内に設けられたキャビティ内に射出した後、キャビティ内に射出された樹脂の冷却、固化によって型内圧が0Kgf/cmと等しくなった状態で、注入された被覆原料によって可動金型部が型開き方向に移動するように、若しくは、注入された被覆原料によってキャビティ内の樹脂が圧縮され且つ可動金型部が型開き方向に移動するように、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に所定量の被膜原料を注入し、離型前における型内圧が0Kgf/cmよりも高い状態となるように型内圧を保持する工程から成る方法が開示されている。
【0011】
しかし、一般に熱可塑性樹脂の射出成形法においては、通常、金型は固定金型部と可動金型部から成り、金型のキャビティ内に溶融した熱可塑性樹脂を射出する前に可動金型部が固定金型部に対し型締めされたとき、可動金型部は固定金型部と接触する。可動金型部に加えられた型締め力が可動金型部によって受けられた状態であり、型締め力は直接溶融樹脂にかかっているわけではない。
【0012】
従ってこのような型内被覆成形方法において、樹脂成形品の塗装面と金型との間に形成された空間よりも少ない量の被覆剤を注入した場合、即ち被覆膜厚を薄くしたい場合には被覆剤に十分な圧力がかからないため、塗装したい成形品面に被覆剤が行渡らず、未コート部分が生じたり、被覆剤の硬化収縮に伴い硬化塗膜にしわが生じたり、基材との付着不良等の不具合が生じることとなり、塗装膜厚の制御が困難である。
【0013】
一方、反応射出成形での金型内被覆成形方法に関しては、例えば特許文献5〜8が公知である。
【0014】
反応射出成形法においては、通常、金型は固定金型部と可動金型部からなり、金型のキャビティ内に反応性樹脂を射出する前に可動金型部が固定金型部に対して型締めされたとき、可動金型部は固定金型部と接触する。可動金型部に加えられた型締め力が固定金型部によって受けられた状態で、反応性樹脂を射出シリンダーからキャビティに射出し、反応性樹脂でキャビティ内を充填する。その後反応性樹脂はキャビティ内で硬化反応により収縮し、キャビティ内に間隙が生じる。反応性樹脂の硬化収縮で生じた空間部に被覆剤を注入するが、可動金型部に加えられた型締め力が可動金型部によって受けられた状態であり、型締め力は直接溶融樹脂にかかっているわけではない。従ってこのような型内被覆成形方法において、樹脂成形品の塗装面と金型との間に形成された空間よりも少ない量の被覆剤を注入した場合、即ち被覆膜厚を薄くしたい場合には被覆剤に十分な圧力がかからないため、塗装したい成形品面に被覆剤が行渡らず、未コート部分が生じたり、被覆剤の硬化収縮に伴い硬化塗膜にしわが生じたり、基材との付着不良等の不具合が生じることとなり、塗装膜厚の制御が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公昭55−9291号公報
【特許文献2】特公平4−33252号公報
【特許文献3】特開平5−301251号公報
【特許文献4】特開平8−142119号公報
【特許文献5】特開平11−300776号公報
【特許文献6】特開2001−071345号公報
【特許文献7】特開2005−246880号公報
【特許文献8】特開2007−313395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、上記課題を解決することであり、反応射出成形方法において、被覆膜厚を任意に制御でき、塗装欠陥のない均一な被覆膜を有する型内被覆成形体及びその成形体の型内被覆成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下の構成により、上記課題を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0018】
即ち、本発明に従って、
固定金型と可動金型とによりキャビティを形成した金型装置と、該可動金型を移動させ該金型装置の型締めをする型締め装置と、該キャビティへ樹脂を射出充填する射出装置と、該キャビティへ被覆剤を注入する注入装置と、該キャビティ内に気体を噴出する気体噴出装置とを具備する成形装置を用いて、樹脂成形品の表面に被覆を施す型内被覆成形方法であって、
前記型締め装置によって型締めをされた前記金型装置のキャビティへ、前記射出装置により反応性樹脂を射出充填する第1の工程と、
前記反応性樹脂の硬化反応により成形体を得る第2の工程と、
前記キャビティ内に射出された樹脂の重合反応によって硬化収縮した状態で、前記キャビティ内の空間部の容積に対し40〜100%の容積の被覆剤を注入する第3の工程と、
前記被覆剤の注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出する第4の工程と、
前記被覆剤が硬化完了するまで前記被覆剤にかかる圧力が0Pa(Kgf/cm)よりも高い状態となるように前記被覆剤にかかる圧力を保持する第5の工程
を有することを特徴とする型内被覆成形方法が提供される。
【0019】
また、本発明に従って、上記型内被覆成形方法により製造されたことを特徴とする型内被覆成形体が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反応射出成形方法において、被覆膜厚を任意に制御でき、塗装欠陥のない均一な被覆膜を有する型内被覆成形体及びその成形体の型内被覆成形方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】熱硬化性樹脂成形材料のRIM成形法の態様の装置の概略図である。
【図2】実施例1における注入圧力波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の型内被覆成形方法について、具体的に説明する。
【0023】
本発明に係わる型内被覆成形方法は、熱硬化性成形樹脂からなる成形体と、その表面に形成された型内被覆組成物の被膜からなっている。
【0024】
固定金型と可動金型とによりキャビティを形成した金型装置と、該可動金型を移動させ該金型装置の型締めをする型締め装置と、該キャビティへ樹脂を射出充填する射出装置と、該キャビティへ被覆剤を注入する注入装置と、該キャビティ内に気体を噴出する気体噴出装置とを具備する成形装置を用いて、樹脂成形品の表面に被覆を施す型内被覆成形方法であって、
前記型締め装置によって型締めをされた前記金型装置のキャビティへ、前記射出装置により反応性樹脂を射出充填する第1の工程と、
前記反応性樹脂の硬化反応により成形体を得る第2の工程と、
前記キャビティ内に射出された樹脂の重合反応によって硬化収縮した状態で、前記キャビティ内の空間部の容積に対し40〜100%の容積の被覆剤を注入する第3の工程と、
前記被覆剤の注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出する第4の工程と、
前記被覆剤が硬化完了するまで前記被覆剤にかかる圧力が0Pa(Kgf/cm)よりも高い状態となるように前記被覆剤にかかる圧力を保持する第5の工程
を有することを特徴とする型内被覆成形方法である。
【0025】
前記第3の工程において、キャビティ内の空間部と等しいか又は少ない容積の被覆剤を注入するとは、キャビティ内の空間部の容積に対し40〜100%、好ましくは60〜100%の容積の被覆剤を注入するものである。注入する被覆剤の容積が40%未満であると、被覆剤がキャビティ内の全面に押し広げることが困難となり好ましくない。
【0026】
前記第4の工程において、被覆剤注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出することにより、成形体が表面側に押されることで被覆剤をキャビティ内成形品表面に押し広げることができる。気体として圧力0.2〜1.5MPaの圧縮空気であることが好ましい。更に好ましくは、0.5〜1.0MPaであることがより好ましい。0.2MPaよりも低いと成形品を圧縮する力が弱く、被覆剤をキャビティ内成形品表面に押し広げる効果が薄い。1.5MPaあれば被覆剤をキャビティ内成形品表面に押し広げる効果が十分発揮される。なお、この際型締め圧力を越える力の圧縮空気を噴出することは、固定金型と可動金型とを押し開ける結果となり、圧縮空気が金型外に漏れることになり好ましくない。
【0027】
前記第4の工程において、被覆剤注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出開始するまでの時間は、0.1〜10秒であることが好ましい。0.1秒より短い時間あるいは注入の最中に気体を噴出すると、被覆剤のキャビティ内の流動を妨げる力として作用するため好ましくない。10秒以内であれば、被覆剤がゲル化を開始する前に、即ち流動性のある状態で圧力がかかるので好ましい。
【0028】
前記第5の工程において、被覆剤注入完了後に成形体の裏面側から気体を噴出することにより、成形体が表面側に押されることで被覆剤に圧力をかけることができる。この際、被覆剤は硬化に伴い収縮するため、被覆剤に圧力がかかっていないと金型表面から離れ、被覆膜の表面にツヤムラやシワといった不具合が生じるので、被覆剤が硬化完了するまで被覆剤に圧力をかけ続ける必要がある。被覆剤にかかる圧力は0Pa(Kgf/cm)以上1.5MPa以下が好ましい。
【0029】
前記第3の工程において、被覆剤注入のピーク圧力が7MPa〜30MPaの範囲であることが好ましい。被覆剤注入のピーク圧力が7MPa未満であると被覆剤をキャビティ内に注入するのに長時間かかり、被覆剤が流動途中でゲル化するので、圧縮空気を噴出しても被覆剤はもはや流動しないので好ましくない。30MPa以内であれば被覆剤は短時間で注入するので好ましい。なお、30MPaを超えると、注入装置や金型のシール構造や耐圧性能を上げる必要が生じ、コストアップとなり実用上好ましくない。
【0030】
前記熱硬化性成形樹脂としては、従来より公知の成形材料が使用でき、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、エポキシ樹脂をマトリックスとするRTM成形材料、ジシクロペンタジエン、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂等を用いたRIM成形材料等が挙げられる。特に好ましくは、ジシクロペンタジエンを用いたRIM成形法が挙げられる。ジシクロペンタジエンを主成分とする成形材料としては、石油のC5留分であるジシクロペンタジエンと、触媒である、例えばタングステン化合物とをA液とし、ジシクロペンタジエンと、触媒活性化剤である、例えば、有機アルミニウム化合物とをB液とする、2液型成形材料が代表的なものとして挙げられる。市販品としては商品名「PENTAM」「METTON」(RIMTEC株式会社製)がある。
【0031】
このような成形材料は、用途に応じた特性を満足するように、例えば、ガラス繊維、カーボン繊維や炭酸カルシウムウィスカー等の強化材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤等を含有することができる。
【0032】
次に、本発明で用いられる型内被覆組成物について説明する。
【0033】
本発明で用いられる型内被覆組成物は、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステルから選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)と共重合可能なモノマーと
(C)重合開始剤とを含有してなることが好ましい。
【0034】
より好ましくは、前記(A)成分と前記(B)成分との質量割合が、(A)/(B)=20/80〜80/20であり、前記(C)成分の質量割合が、(C)/{(A)+(B)}=0.1/100〜5/100を必須成分として含有し、更に必要に応じて炭酸カルシウムやタルク等の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である無機粒子、二酸化チタン等の着色顔料、ジアリルフタレートオリゴマー、飽和ポリエステル樹脂やポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂等の低収縮剤、離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、導電剤、帯電防止剤、重合防止剤、硬化促進剤等の任意成分を含むものである。
【0035】
(a)(A)成分について
本発明で用いられる型内被覆用組成物に使用される成分(A)は、(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である。
【0036】
(a−1)(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー
(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0037】
これらのオリゴマーの質量平均分子量は、それぞれの種類により変動し得るが、一般に、約300〜30,000、好ましくは、500〜10,000とするのが適当である。上記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーは、(メタ)アクリロイル基を、1分子中に、少なくとも2個以上8個、好ましくは、2〜6個有することが適当である。
【0038】
(a−1−1)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロシキアルキル(メタ)アクリレートとを、NCO/OH比が、例えば、0.8〜1.0、好ましくは、0.9〜1.0となるような存在比で混合し、通常の方法により製造することができる。水酸基が過剰に存在する場合や、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを多量に使用することにより、水酸基を多く有するオリゴマーが得られる。
【0039】
具体的には、(1)有機ジイソシアネート化合物と、(2)有機ポリオール化合物等とを例えば、ジブチル錫ラウレート等のウレタン化触媒の存在下で反応させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得る。次いで、ほとんど遊離イソシアネート基が反応するまで、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させることにより、上記ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを製造することが出来る。なお、(2)有機ポリオール化合物と、(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの割合は、後者1モルに対し、例えば、前者0.1〜0.5モル程度が適当である。
【0040】
上記の反応に使用される(1)有機ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−ジイソシアナトエタン、1,2−ジイソシアナトプロパン、1,3−ジイソシアナトプロパン、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン、メチルシクロヘキサン−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,6−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン等を使用することができる。これら有機ジイソシアネート化合物は、単独で用いても、また、それらの2種以上の混合物として使用することもできる。
【0041】
上記反応で使用される(2)有機ポリオール化合物は、好ましくは、有機ジオール化合物として、例えば、アルキルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等を挙げることができる。アルキルジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−エチルブタン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、4,8−ジヒドロキシトリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等を代表的なものとして挙げることができる。
【0042】
有機ジオール化合物としてのポリエーテルジオールは、例えば、既知の方法により、アルデヒドや、アルキレンオキサイド、グリコール等の重合により合成することができる。
【0043】
例えば、ホルムアルデヒドや、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を適当な条件下でアルキルジオールに付加重合させることによって、ポリエーテルジオールが得られる。有機ジオール化合物としてのポリエステルジオールとしては、例えば、飽和又は不飽和のジカルボン酸及び/又はそれらの酸無水物と、過剰のアルキルジオールとを反応させて得られるエステル化反応生成物、及びアルキルジオールにヒドロキシカルボン酸及び/又はその分子内エステルであるラクトン及び/又は分子間エステルであるラクチドを重合させて得られるエステル化反応生成物を用いることができる。これらの有機ポリオール化合物は単独で用いても、それらの2種以上を併用して使用することもできる。
【0044】
上記(3)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。その他、本発明で使用されるオリゴマーとしてのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を有する化合物と、有機ジイソシアネート化合物とを、NCO/OHの比が、例えば、0.9〜1.0の割合で、例えば、ジブチル錫ジラウリレート等のウレタン化触媒の存在下で反応しても製造することができる。
【0045】
(a−1−2)ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。このようなポリエステルポリオールは、代表的には飽和又は不飽和のジカルボン酸又はその酸無水物と、過剰量のアルキレンジオールとをエステル化反応することによって製造することができる。使用されるジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸や、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、マレイン酸等が代表的なものとして挙げられる。また、使用されるアルキレンジオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等が代表的なものとして挙げることができる。ここで、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸や、メタクリル酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0046】
(a−1−3)エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、エポキシ化合物と、上記のような不飽和カルボン酸とを、エポキシ基1当量当たりのカルボキシル基当量を、例えば、0.5〜1.5となるような割合で用い、通常のエポキシ基への酸の開環付加反応によって製造させたものである。ここで使用されるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ、フェノール性ノボラック型エポキシ等を好適に挙げることができる。
【0047】
(a−1−4)ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー
本発明で使用されるオリゴマーとしてのポリエーテル(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。
【0048】
(a−2)不飽和ポリエステル樹脂
一方、本発明において、(A)成分として使用される不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、有機ポリオール化合物と、不飽和カルボン酸とを、公知の方法により反応させ、更に必要に応じて、飽和ポリカルボン酸を反応させて製造することができる。使用される有機ポリオールとしては、例えば、エチレングリコールや、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ビスフェノールA等が代表的なものとして挙げることができる。また、使用される不飽和ポリカルボン酸としては、例えば、(無水)マレイン酸や、(無水)フマル酸、(無水)イタコン酸等を代表的なものとして挙げることができる。
【0049】
これら(A)成分としては、上記(メタ)アクリロイル基含有オリゴマーと、不飽和ポリエステル樹脂とを併用してもよい。
【0050】
(b)(B)成分について
本発明で使用される(B)成分は、上記(A)成分と共重合することができる不飽和モノマーである。
【0051】
このような不飽和モノマーとしては、例えば、スチレンや、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)クリル酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート等が代表的なものとして挙げられる。
【0052】
好ましくは、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−HDDA)のような脂肪族(メタ)アクリレートモノマー、並びにシクロヘキシルメタアクリレートのような脂環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)等である。(B)成分としては、上記不飽和モノマーを単独で使用してもよく、又は、これらの混合物として使用することができる。
【0053】
上記(A)成分と上記(B)成分の質量割合は、(A)成分及び(B)成分として使用される化合物等の種類にもよるが、通常、(A)/(B)=20/80〜80/20が好ましく、更に33/67〜67/33がより好ましい。この範囲であれば、硬化特性が良く堅牢な硬化塗膜が得られる、また、被覆組成物の型内での流動性が良く、気泡の混入もなく均一な被覆が得られるので好ましい。
【0054】
(c)(C)成分について
本発明で使用される(C)成分は、フリーラジカルを発生し、前記(A)成分及び(B)成分を重合させるために使用する重合開始剤である。重合開始剤としては、イソブチリルパーオキサイド1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニレタン)等がアゾ化合物の代表的なものとして挙げられる。
【0055】
(C)重合開始剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜3質量部であることが適当である。(C)重合開始剤の配合量が、0.1以下であると(A)、(B)成分の反応がうまく進まず、硬化不良となり正常な塗膜が得られない。また、5質量部を超えると被覆組成物のポットライフが著しく短くなり実用上好ましくない。
【0056】
(d)その他成分について
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じ炭酸カルシウムやタルク等の平均粒子径が0.1μm以上20μm以下である無機粒子の少なくとも1種を含むことができる。このようなものとして、例えば、炭酸カルシウムや、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、クレー等を好適に挙げることができる。これら無機粒子は、被膜硬化に伴う収縮応力を分散させ、成形体との付着性を向上させたり、表面の凹凸を平滑にしたり、成形体表面の外観を改良する目的で配合する。
【0057】
本発明で使用される型内被覆組成物は、更に必要に応じ着色顔料の少なくとも1種を含むことができる。着色顔料としては、従来から通常プラスチックス用、塗料用として使用されている各種着色顔料を使用することができる。
【0058】
例えば、白色系顔料では、二酸化チタンや酸化亜鉛、黄系では、酸化鉄黄やチタンイエロー、黒系では酸化鉄黒等の着色顔料を使用することができる。
【0059】
本発明では、硬化塗膜を金型からスムーズに離型させるために、任意に、離型剤を併用することができる。離型剤は、例えば、ステアリン酸や、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸塩、大豆油レシチン、シリコーン油、脂肪酸エステル、脂肪酸アルコール二塩基酸エステル類等を挙げることができる。これら離型剤の配合量は、前記{(A)+(B)}成分の合計100質量部に対して、例えば、0.1〜5質量部が好ましく、更には、0.2〜2質量部であることが好ましい。この範囲内においては、金型からの離型効果が好適に発揮される。
【0060】
本発明では、各種基材樹脂との付着性を向上させる目的で、改質樹脂を配合することができる。このような目的で使用される改質樹脂として、例えば、塩素化ポリオレフィン、マレイン酸変性ポリオレフィン、アクリルオリゴマー、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタアクリレート、アリルエステルオリゴマー等を挙げることができる。
本発明に使用される型内被覆組成物には、更に必要に応じて、導電性金属酸化物粒子で無機粉末の表面を被覆した導電材、帯電防止剤、酸化防止剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、可塑剤等の各種添加剤等を配合してもよい。
【0061】
<型内被覆成形方法>
以下、本発明の型内被覆成形方法について、それを実施するための成形機の構成、成形型及び被覆組成物注入装置を、図面を参照しながら具体的に説明するが、本発明の範囲はこのような具体的な成形機、成形型及び被覆組成物注入装置によって何ら限定されるものではない。
【0062】
図1はウレタンやジシクロペンタジエン成形材料のRIM成形法の場合の態様を示すものである。図1において、符号1及び2はそれぞれ互いに対向する成形用型部材である。
【0063】
型部材1(固定型)及び2(可動型)はそれぞれ型締め装置の固定盤及び可動盤に固定されており、可動盤には型締めシリンダによって進退動作される構成になっている。図1では、型締め装置の固定盤、可動盤及び型閉めシリンダは不図示である。そして、両型部材1及び2により、所要形状のキャビティ3が形成されていて、この中にジシクロペンタジエンを主成分とする成形材料が充填され、硬化される。ジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を充填する場合、ジシクロペンタジエン及び触媒からなるA液と、ジシクロペンタジエン及び活性化剤からなるB液を主成分とする原料は、それぞれ貯蔵タンク4及び5で温度調節された後、計量シリンダ6及び7で油圧シリンダ10及び11により、50〜200バールに昇圧され、ミキシングヘッド13中の対向したノズルから噴出し、互いに衝突することで混合される。
【0064】
一方、図1の態様では、被覆剤の注入手段として、シャットオフピン14Aを備えたインジェクタ14、上記インジェクタ14に所定量の被覆剤を供給する被覆剤計量シリンダ15及び被覆剤をその貯蔵部16から上記計量シリンダ15に供給するための供給ポンプ17が装備されている。なお、上記計量シリンダ15には被覆剤注入用のプランジャーレギュレータ15Aが備えられている。
【0065】
成形に際しては、先ず型締めシリンダを動作して、金型(成形用型部材1及び2)を閉じ、型締め圧を付加する。この型締め圧は通常0.5〜1MPaである。次いで、ミキシングヘッド13からジシクロペンタジエンを主原料とした成形材料が、キャビティ3内に射出される。この過程で、供給ポンプ17が作動し、計量シリンダ15に必要な量の被覆剤を供給する。上記成形材料が、金型内で適正に(被覆剤の注入・流動圧力に耐える程度に)硬化した段階で、上記型締め圧をそのまま、又は低減する。次いでインジェクタ14は、そのシャットオフピン14Aを動作し、その注入口を開放する。次いで計量シリンダ15の被覆剤注入用のプランジャーレギュレータ15Aを動作し、キャビティ3即ち型部材1の内壁と成形品表面との間に被覆剤を充填させる。
【0066】
再びシャットオフピン14Aを閉じた後、直ちにエアーポンプ18(図1において開閉弁は不図示)から圧縮空気を吹き込む。この圧縮空気の圧力は通常0.2〜1.0MPaである。この際、必要に応じ型締めシリンダを動作させ型締め操作を行うこともできる。型内で被覆剤が硬化した段階で圧縮空気の吹き込みを停止する。
【0067】
次いで、型締めシリンダを動作させ、両型部材1及び2を離間し、被覆された成形品を金型から取り出す。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明について更に詳細に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
【0069】
<被覆用組成物の調製>
<ウレタンオリゴマーの合成>
ウレタンオリゴマーは各種公知の方法で重合して作製することができる。合成例として、840質量部のイソホロンジイソシアネートに0.49質量部のジブチル錫ジラウレートを仕込み、40℃に保ちつつ、1000質量部のポリカプロラクトンジオール(平均分子量500)を滴下し、十分な時間反応させた後、2.45質量部のハイドロキノンを溶解させたペンタエリスリトールトリアクリレート607質量部を滴下して、更に十分な時間75℃で加熱攪拌を続け、ウレタンオリゴマーUAC−1を得た。
【0070】
得られたウレタンオリゴマーUAC−1、該ウレタンオリゴマーと共重合可能なモノマーとしてトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、重合開始剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートを主成分とする表1に示す被覆用組成物を調製した。
【0071】
【表1】

【0072】
<実施例1>
長さ600mm、幅550mm、高さ40mm、成形品の平均板厚4.5mmの箱形状のジシクロペンタジエンを主原料とする樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0073】
次いで、型締め力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物60cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力12MPaをかけて注入した。注入圧力波形の一例を図2に示す。なお、この成形品の場合、被覆剤注入時の型内空間部の容積は83cmであることが分かっている。注入完了0.5秒後に成形体の裏面側から0.7MPaの圧縮空気を噴出し被覆剤が硬化するまで80秒間保持した。その後圧縮空気の噴出を止め、更に40秒間保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0074】
<実施例2>
実施例1と同じ金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0075】
次いで、型締め圧力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物50cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力15MPaをかけて注入した。注入完了と同時に1秒間かけて型締め力を400KNまで昇圧し、直ちに成形体の裏面側から1.0MPaの圧縮空気を噴出し被覆剤が硬化するまで80秒間保持した。その後圧縮空気の噴出を止め、更に40秒間保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0076】
<実施例3>
実施例1と同じ金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0077】
次いで、型締め圧力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物83cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力20MPaをかけて注入した。注入完了と同時に1秒間かけて型締め力を400KNまで昇圧し、直ちに成形体の裏面側から1.0MPaの圧縮空気を噴出し被覆剤が硬化するまで80秒間保持した。その後圧縮空気の噴出を止め、更に40秒間保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0078】
<比較例1>
実施例1に対し、被覆剤注入後の圧縮空気の噴出を行わない方法である。即ち、長さ600mm、幅550mm、高さ40mm、成形品の平均板厚4.5mmの箱形状のジシクロペンタジエンを主原料とする樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0079】
次いで、型締め力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物60cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力12MPaをかけて注入した。注入完了後120秒間そのまま保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0080】
<比較例2>
実施例2に対し、被覆剤注入後の圧縮空気の噴出を行わない方法である。長さ600mm、幅550mm、高さ40mm、成形品の平均板厚4.5mmの箱形状のジシクロペンタジエンを主原料とする樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0081】
次いで、型締め力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物50cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力15MPaをかけて注入した。注入完了と同時に1秒間かけて型締め力を400KNまで昇圧し、被覆剤が硬化するまで80秒間保持した。その後更に40秒間保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0082】
<比較例3>
実施例2に対し、被覆剤注入時の型締め力はそのままで、圧縮空気の噴出圧力を型締め力よりも高い状態で行う方法である。即ち、長さ600mm、幅550mm、高さ40mm、成形品の平均板厚4.5mmの箱形状のジシクロペンタジエンを主原料とする樹脂成形品を得るためのキャビティを有する金型を用い、図1に示す態様に従って、成形体に対する型内被覆を実施した。この場合、金型温度を上型85℃、下型55℃に設定して、先ずジシクロペンタジエンを主原料とする成形材料を、260KNの型締め力で型締めされた金型内に射出し、60秒間硬化させた。
【0083】
次いで、型締め力をそのままで、表1に記載した被覆用組成物50cmを金型表面と成形体の表面との間に注入のピーク圧力15MPaをかけて注入した。注入完了1秒後に成形体の裏面側から1.8MPaの圧縮空気を噴出し被覆剤が硬化するまで80秒間保持した。その後圧縮空気の噴出を止め、更に40秒間保持した後、型内被覆用組成物を型内から取り出した。
【0084】
実施例1乃至3及び比較例1乃至3について、被覆面積、被覆膜の外観、被覆膜厚、基材との付着性を評価した結果を表2に示す。
【0085】
なお、被覆面積及び被覆膜の外観、基材との付着性は下記の評価方法に従って評価した。
【0086】
〔被覆面積〕
○…被覆面積100%
△…被覆面積90%以上〜100%未満
×…被覆面積90%未満
【0087】
〔被覆膜の外観〕
被覆膜のツヤ、シワ、均一性等を目視にて評価。
【0088】
○…ツヤのムラ、シワがなく、外観が均一であるもの
△…わずかにツヤのムラ、シワがみられるもの
×…かなりのツヤのムラ、シワが著しく、外観が不均一であるもの
【0089】
〔付着性〕
JIS K 5600−5−6:付着性(クロスカット法)に従って初期の塗膜付着性試験を実施した。塗膜の付着性はJIS K 5600−5−6に記載の試験結果の分類に基づき下記の0〜5の6段階で評価した。
【0090】
〈6段階評価〉
0…カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない。
1…カットの交差点における塗膜の小さな剥がれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2…塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点において剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的に剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4…塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び又は数カ所の目が部分的又は全面的には剥がれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
5…剥がれの程度が分類4を超える場合。
【0091】
【表2】

【符号の説明】
【0092】
1 型部材(固定型)
2 型部材(可動型)
3 キャビティ
4、5 貯蔵タンク
6、7 計量シリンダ
8、9 ピストンストローク制御装置
10、11 油圧シリンダ
12 油圧ユニット
13 ミキシングヘッド
14 インジェクタ
14A シャットオフピン
15 計量シリンダ
15A プランジャーレギュレータ
16 貯蔵部
17 供給ポンプ
18 エアーポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とによりキャビティを形成した金型装置と、該可動金型を移動させ該金型装置の型締めをする型締め装置と、該キャビティへ樹脂を射出充填する射出装置と、該キャビティへ被覆剤を注入する注入装置と、該キャビティ内に気体を噴出する気体噴出装置とを具備する成形装置を用いて、樹脂成形品の表面に被覆を施す型内被覆成形方法であって、
前記型締め装置によって型締めをされた前記金型装置のキャビティへ、前記射出装置により反応性樹脂を射出充填する第1の工程と、
該反応性樹脂の硬化反応により成形体を得る第2の工程と、
前記キャビティ内に射出された該反応性樹脂の重合反応によって硬化収縮した状態で、前記キャビティ内の空間部の容積に対し40〜100%の容積の被覆剤を該成形体の表面側に注入する第3の工程と、
該被覆剤の注入完了後に該成形体の裏面側から気体を噴出する第4の工程と、
該被覆剤が硬化完了するまで前記被覆剤にかかる圧力が0Pa(Kgf/cm)よりも高い状態となるように前記被覆剤にかかる圧力を保持する第5の工程
を有することを特徴とする型内被覆成形方法。
【請求項2】
前記第4の工程において、気体として圧力0.2〜1.5MPaの圧縮空気である請求項1に記載の型内被覆成形方法。
【請求項3】
前記第4の工程において、前記被覆剤の注入完了後に前記成形体の裏面側から気体を噴出開始するまでの時間は、0.1〜10秒である請求項1又は請求項2に記載の型内被覆成形方法。
【請求項4】
前記反応性樹脂がジシクロペンタジエン樹脂から成る請求項1〜3のいずれかに記載の型内被覆成形方法。
【請求項5】
前記第3の工程において、前記被覆剤の注入のピーク圧力が7MPa〜30MPaの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の型内被覆成形方法。
【請求項6】
前記被覆剤が、
(A)(メタ)アクリロイル基を有するウレタンオリゴマー、エポキシオリゴマー、ポリエステルオリゴマー、ポリエーテルオリゴマーあるいは不飽和ポリエステルから選ばれる少なくとも1種と
(B)前記(A)と共重合可能なモノマーと
(C)重合開始剤
とから成る請求項1〜5のいずれかに記載の型内被覆成形方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の型内被覆成形方法により製造されたことを特徴とする型内被覆成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−188573(P2010−188573A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33915(P2009−33915)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】