説明

埋め込み加工品のための半完成品及び方法

【解決手段】
本発明は、少なくとも2つの電子部品を有し、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のための埋め込み加工品を製造するための方法及び半完成品に関するものであり、全ての電子部品を保持基板(36)上に相対的に関連づけて配置することにより、部品集合(13)が形成され、部品集合は充填材(12)中に配置される。また、本発明は、半完成品を有したカードの製造方法、及び半完成品を用いて製造したカードに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの電子部品を有し、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のための埋め込み加工品の製造方法において、全ての電子部品を保持基板上に相互に関連付けて配置することにより部品集合を形成し、部品集合を第1被覆層上に配置した後、貫通孔を有したスペーサー層を第1被覆層に貼着し、部品集合を貫通孔に収容し、貫通孔を少なくとも部分的に満たす充填材を貫通孔に導入し、スペーサー層に第2被覆層を貼着し、被覆層を加圧しながら充填材を固化させるようにした製造方法に関する。さらに、本発明はこの様な形式のカードの製造方法及びこのような形式の半完成品を備えたカードに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で言及したタイプの埋め込み加工品を製造するための半完成品及び方法はよく知られており、ICカード、銀行カード、アクセス管理カード、パスポート等のもととなる製品を製造するために通常使用される。埋め込み加工品及び・またはこのタイプのカードは、一般的に高温積層法によって形成される。すなわち、いくつかのプラスチック層が、間に介装された電子部品と共に加圧され、比較的高温で互いに溶着される。高温積層法は埋め込み加工品やカード製品の両方によく利用される。例えば、表示装置、LED、小型のスピーカー、バッテリー等の複数の電子部品を埋め込み製品及び・またはカード内に一体化する場合、高温積層技術は不利であると判明した。組み込まれた部品の一部は温度に敏感で、150℃に達するような標準的な高温積層の温度に耐えることができない。また、電子部品は複雑な形状を有する場合があるため、部品を収容させるための打ち抜き孔を有する層状複合体に、これらの部品をうまく装着することは難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した不都合を避ける製造方法は、電子部品が常温硬化した充填材を使用して2つの層の間に配列される、いわゆる”常温積層法”や、比較的低温で層の間で接着材を硬化させる、いわゆる”低温加熱積層法”である。
埋め込み加工品及び・またはカードを製造するこれらの製造方法の一連の形態は、このように先行技術により知られている。既知の方法では、例えば、位置決めを補助する第2位置決め層がカードの1つの層に積層され、この第2層は挿入しようとする電子部品の外形形状に対応した貫通孔を有している。当該電子部品と第2層とを充填材内に埋め込んだ後、この充填材が硬化する前に、第3層がカードの厚さを決定する所定の間隔で貼着される。位置決め層は、とりわけ多孔質材で構成することにより、位置決め層の内部に充填材を浸透させることができる。また、充填材によって位置決め層を実質的に完全に取り囲み、カードを安定させる要素を形成するようにしてもよい。注入された充填材及び電子部品と共に加圧下で位置決め層を圧縮することが、先行技術により知られているこの方法の本質的特徴である。この場合、ある特定の状況では、部品を損傷する圧力が電子部品上に作用する。また、充填材からなる中間層内で全ての部品を正確に位置決めすることは、このタイプの方法において困難なものとなることがある。電子部品は、充填材及び・または圧縮の適用によって水平及び垂直方向の両方に意に反して移動してしまうことがある。コイルアンテナや表示装置のような異なった外形形状を有する電子部品が同時に存在する場合には特に、この問題が生じ易く、好ましくない。
【0004】
従って、本願発明は、ICカード用の埋め込み加工品を製造するための簡易で経済的な方法及び・または半完成品を提供するという目的に基づくものであり、これにより、高温や圧力による電子部品の破壊を防ぐと共に、様々な外形形状を有する電子部品を同時に使用することができ、カード本体において全ての電子部品を所定の相対的な位置に確実に配置できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1または2の特徴を有する埋め込み加工品の製造方法、請求項13の特徴を有する半完成品、請求項19の特徴を有するカードの製造方法、及び請求項22の特徴を有するカードによって実現される。
少なくとも2つの電子部品を有する埋め込み加工品を製造するための本発明の第1の方法によれば、全ての電子部品を保持基板上に相互に関連付けて配置することにより部品集合を形成し、部品集合を第1被覆層上に配置した後、貫通孔を有したスペーサー層を第1被覆層に貼着し、部品集合を貫通孔に収容し、貫通孔を少なくとも部分的に満たす充填材を貫通孔に導入し、スペーサー層に第2被覆層を貼着し、被覆層を加圧しながら充填材を固化させる。
【0006】
少なくとも1つの電子部品を有する埋め込み加工品を製造するための本発明の第2の方法によれば、全ての電子部品を保持基板上に相互に関連付けて配置することにより部品集合を形成し、貫通孔を有したスペーサー層を第1被覆層に貼着した後、部品集合を第1被覆層上に配設し、部品集合を貫通孔に収容し、貫通孔を少なくとも部分的に満たす充填材を貫通孔に導入し、スペーサー層に第2被覆層を貼着し、被覆層を加圧しながら充填材を固化させる。
【0007】
両方の方法ともスペーサー層が有益に使用されており、このスペーサー層が、両方の被覆層の間隔を規定することにより、カード型埋め込み加工品の厚さが定められる。後の充填材の硬化の際に被覆層に圧力が作用する場合、電子部品が圧力を受けることなく実質的に被覆層によって圧力が吸収される。このように、異なったサイズの電子部品、特に高さの異なる電子部品であっても、スペーサー層の貫通孔内に導入することができるが、電子部品の高さはスペーサー層の厚さを超えてはいけない。さらにまた、保持基板上に全ての電子部品を配置することによって、電子部品は充填材の充填または圧力の印加によって電子部品が所定の相対位置から確実に移動しないようにすることができる。従って、例えば、表示装置の高さ及び・またはボタン部材に対するその相対位置を容易に定めることができる。この方法はまた、単一工程で全ての電子部品を第1被覆層に配置するので、全体として簡易になる。また、電子部品の互いの電気的接続線は、充填材の充填及び・または加圧によって変化及び・または損傷することがない。そのため、部品集合を第1被覆層に配設する前に部品集合の機能チェックが可能である。
【0008】
この方法による1つの形態では、部品集合が第1被覆層に配置される前、第1の量の充填材が貫通孔内に導入され、電子部品は充填材内で相互に関係した位置に配置され、充填材が固化して保持基板を形成するようにしてもよい。このように一方では、全ての電子部品が充填材により完全に封じ込められ、他方では全ての電子部品が充填材内の所定の相対位置に恒久的に電子部品を位置決めすることができる。従って、その後の工程は、電子部品の相対位置に影響を及ぼすことはない。貫通孔内への充填材の供給を複数回に分けて順次行うことにより、埋め込み加工品内の電子部品の配置の高さが相違する保持基板を得ることも可能である。
【0009】
充填材の固化を熱衝撃により行う場合、電子部品に損傷を与える温度を超えない温度であるのが有益であることは判っている。従って、充填材として常温硬化合成樹脂を使用するのに加えて、80℃といった比較的低温で活性化して硬化する注入材を充填材として使用してもよい。その結果、高温積層法のように比較的高温によって電子部品に損傷を与えるといったことは生じず、常温硬化合成樹脂に関しては上記のような加熱活性のため硬化が比較的急速に行われる。
【0010】
部品集合が第1被覆層に固定される場合、貫通孔内へ充填材を供給する結果として、部品集合のずれ及び・または移動を効果的に予防することができる。
部品集合の底面側と第1被覆層との間に実装される固定層を使用することにより第1被覆層上に部品集合を容易に固定することができる。このタイプの固定層は、例えば第1被覆層または部品集合に、全体的または部分的に貼着されてもよく、粘着材または粘着フィルムからなっていてもよい。
【0011】
さらなる形態として、第1被覆層における部品集合の固定は超音波を使用して行ってもよい。これにより、補助材料を使用することなく、また、部品集合に大きな熱衝撃を与えることなく、被覆層と部品集合との間の接合を容易に行うことができる。
また、第1被覆層での部品集合の固定は、熱的方法を利用して行うことができる。例えば、固定は熱溶着法、即ち第1被覆層及び部品集合の表面を軟化させる方法によって行うことができる。ここで熱的方法は局所的に適用されることが重要であり、これにより電子部品にとって好ましくない加熱が生じない。
【0012】
少なくとも1つの電子部品が表示素子として実装される場合、表示素子と第2被覆層との間に光透過層が配設されてもよい。表示素子と被覆層との間に中空領域が形成されるのを防止できるので、光透過層は第2被覆層を介した良好な可視性を可能にする。表示素子が第2被覆層と接合される前に設けられ、第2被覆層を介した適正な光透過性を確保する低粘性の粘着物質によって光透過層を形成してもよい。
【0013】
被覆層がスペーサー層に恒久的に接合される場合、被覆層はスペーサー層から取り外すことができない。恒久的な接合は、被覆層とスペーサー層との間に配置された充填材の固化によって簡単に行ってもよいし、充填材が導入される前のスペーサー層と被覆層との間の接合領域に塗布された粘着材層によって行ってもよい。
この方法のさらに有利な形態では、被覆層とスペーサー層とを有する積層体から埋め込み加工品が分離される前または後に、第1及び・または第2被覆層が、スペーサー層及び・または固化した充填材から取り外されるようにしてもよい。この様な方法は、全体的に光沢及び・または滑らかな表面を有するPETといった充填材に対して強い接着性を有さない材料が被覆層に用いられる場合に、容易に実現することができる。特に埋め込み加工品が比較的薄く形成される場合、あるいは被覆層がカード全体に対して邪魔になる場合には、スペーサー層のみを有する埋め込み加工品が有利である。
【0014】
貫通孔の内側輪郭と部品集合の外側輪郭との間に仕切り線が生じるように埋め込み加工品を積層体から分離する場合には、とりわけ有利であることが判明した。従って、スペーサー層は仕切り線の経路に対応して分離されるわけではない。このため、カードに実装して使用できる埋め込み加工品は、スペーサー層及び・または位置決め層を有さない。電子部品は単に充填材の複合層と2つの外側被覆層とに収容される。しかしながら、スペーサー層を使用することにより、仕切り線によって定まる埋め込み加工品の輪郭内での部品集合の位置決めが可能となる。
【0015】
少なくとも2つの電子部品を有する埋め込み加工品を製造するための本発明による半完成品によれば、全ての電子部品が保持基板上に相対的な関係を有して配置されることにより部品集合を形成し、部品集合はスペーサー層の貫通孔に収容され、貫通孔は固化した充填材が充填されている。これにより、1回の作業工程で全電子部品を貫通孔内に挿入可能なので、特に経済的に半完成品を製造することができる。また、保持基板と第1被覆層との恒久的な接合が、容易に得られる。特に、部品の相対的な位置関係は充填材の充填によって変わることがないので、全ての部品について所定の相対的位置関係での恒久的な配置を確保することができる。
【0016】
部品集合が配置される第1被覆層に貫通孔を有するスペーサー層が貼着されると有利である。これにより、とりわけ容易に半完成品を製造可能である。
仕切り線が貫通孔の内側輪郭と部品集合の外側輪郭との間に設けられる場合、埋め込み加工品の特性に影響を与えるスペーサー層及び・または位置決め層を有していない埋め込み加工品が半完成品から分離されるようにしてもよい。
【0017】
さらなる形態では、第1被覆層に面した保持基板の接触面に表面構造を形成するようにしてもよい。例えば、網状、波状、こぶ状等の表面構造は、保持基板下方、即ち、保持基板と第1被覆層との間の領域の充填材の浸透を可能にするので、充填材を注入する際に保持基板の下方に空気が含有されることを避けることができる。
少なくとも半完成品の1つの被覆層が透明である場合、表示素子として実装された電子部品の監視及び・または読み取りが可能となる。例えば、ディスプレー画面が表示素子として用いられる場合、ディスプレー画面を覆う全ての層が透明であると都合がよい。
【0018】
特に有利な形態では、半完成品は板材から形成され、少なくとも1つ以上の部品集合、1つの貫通孔、1つの固化した充填材を有する。これにより、このようなタイプの1つの半完成品から複数の埋め込み加工品を得ることができ、とりわけ経済的に製造することができる。
半完成品を有するカードを製造するための本発明の製造方法によれば、カード及び・または埋め込み加工品が積層体から分離される前または後に、接着材を用いて半完成品及び・または埋め込み加工品に少なくとも1つの外側層が接着され、スペーサー層の貫通孔の内側輪郭と貫通孔内に配置された部品集合の外側輪郭との間に仕切り線が設けられるようにして、カード及び・または埋め込み加工品が積層体から分離される。カードが分離される前、または埋め込み加工品が外側層と共に積層体から分離された後に、半完成品を外側層に接着するための粘着材を使用することにより、過度の温度によって電子部品を損傷するおそれのある接着方法を適用する必要がなくなる。
【0019】
特に薄いカードまたは被覆層が邪魔になるようなカードを得るために、第1及び・または第2被覆層が、スペーサー層、及び・または外側層を貼着する前に固化した充填材から除去されるようにすると、特に有利であることが判明した。
本方法の有益な形態では、電子部品を損傷する温度を超えないようにしながら、熱衝撃により接着材を活性化してもよい。加熱によって活性化した接着材は、比較的低温で迅速に緊密な複合層の形成を可能にする。粘着材は両外側層や半完成品及び・または埋め込み加工品に塗布してもよい。例えば、特別な形態として、積層温度を低下させたいわゆる低温加熱積層法で積層を行ってもよい。これに対応する積層用粘着材は、比較的低温で活性化させておくことができる。
【0020】
本方法のさらに有益な形態は、請求項13の構成を引用する従属請求項の特徴についての記述により得られる。
本発明によるカードは、カードに貼着する前または後に印刷可能な少なくとも1つの外側層を有する半完成品を包含した積層構造を有する。
カードが表示素子を有する場合、少なくとも部分的に外側層が透明であれば、特に有益である。これにより、例えば、ディスプレー画面の大きさにほぼ適合して設けられた外側層の領域を介し、少なくとも部分的にディスプレー画面を見ることができる。
【0021】
外側層が全体的に透明であり、充填材に面する側に印刷する場合には、効果的に印刷の損傷を回避できる。
さらに有利なカードの形態は、請求項13の構成を引用する従属請求項の特徴についての記述から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】スペーサー層を有する第1工程の後の第1被覆層の断面図である。
【図2a】第1被覆層上の部品集合の配置に関する種々の実施形態における、第2工程の後の図8のII−II線に沿った断面図である。
【図2b】第1被覆層上の部品集合の配置に関する種々の実施形態における、第2工程の後の図8のII−II線に沿った断面図である。
【図2c】第1被覆層上の部品集合の配置に関する種々の実施形態における、第2工程の後の図8のII−II線に沿った断面図である。
【図2d】第1被覆層上の部品集合の配置に関する種々の実施形態における、第2工程の後の図8のII−II線に沿った断面図である。
【図3】貫通孔内に導入された第3工程の後の充填材の断面図である。
【図4】スペーサー層に貼着された第4工程の後の第2被覆層を示す図である。
【図5】第5工程の後の埋め込み加工品の第1の実施形態を示す断面図である。
【図6】第6工程の後のカードの断面図である。
【図7】埋め込み加工品の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】板材を図2aのVIII−VIII線に沿った断面で示す平面図である。
【図9a】表示素子を有する場合の第1の実施形態の断面図である。
【図9b】表示素子を有する場合の第2の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付した図面を参照し、本発明の詳細を以下に説明する。
埋め込み加工品の製造方法の一実施形態を、工程の順に図1乃至図5に断面図で示す。即ち、第1被覆層10と、貫通孔12を有して第1被覆層10に貼着されたスペーサー層11とを図1に示す。スペーサー層11は第1被覆層10に積層されており、接着材を使用して第1被覆層10に恒久的に接着されている(より詳細に図示せず)。次に部品集合が貫通孔12内へ配置される。
【0024】
図2aから図2dは、部品集合の配置に関する種々の実施形態を図8のII−II線に沿った断面図で示している。図2aに示される部品集合13は、電子部品14、15、16、及び部品17として巻線アンテナを有する。部品14、15、16、17は保持基板18上に配置され、恒久的に保持基板18に接合されている。このように形成される部品集合13は、図2aに示すように、貫通孔12内へ挿入され、部品14、15、16、17のいずれもスペーサー層11より上方に突出しないようになっている。ここに示す実施形態において、保持基板18と第1被覆層10との間に恒久的な接合が形成されるのではないので、比較的狭い間隔19が保持基板18と第1被覆層10との間に形成されるようにしてもよい。
【0025】
図2bには貫通孔12における部品集合13の配置についての第2の実施形態を示す。第1被覆層10と保持基板18との間に介装される粘着材層20が固定層として設けられる。ここでは詳細に図示しないが、粘着材層20は部品集合13が第1被覆層10に配置される前に、保持基板18または第1被覆層10に粘着フィルムまたは液状粘着材の形で適用することができる。粘着材層20は、貫通孔12内及び・または第1被覆層10上における部品集合13の相対位置を維持することにより、この後の工程における、部品集合13及び・または全ての部品14、15、16、17のずれを防止している。
【0026】
図2cは、保持基板22により部品集合13と異なる部品集合21を示す。保持基板22は、部品14、15、16、17を保持する板状保持部23と、網状部24とから形成される。従って、網状部24のみが第1被覆層10に接触し、網状部24、保持部23及び第1被覆層10の間には、空間25が形成される。空間25はその後の充填材の注入で充填材によって十分に満たされるようにすれば、保持基板22の下方に空気が含有されることを可能な限り避けられる。
【0027】
保持基板27上に配置された部品14、15、16、17を有する部品集合26を図2dに示す。この場合には、まず所定量の充填材57が貫通孔12内に導入される。次に、部品14、15、16、17が所定の相対位置で充填材57の表面28に配置される。図に示すように、部品14、15、16、17は軽度の圧力を印加されることにより、充填材57の表面28から内部に入り込むことができる。さらに充填材が供給されて貫通孔12内に導入される前に、充填材57が保持基板27上で固化する。ここでは実施形態を示さないが、充填材57は、部品14、15、16、17が配置される前に、充填材57が保持基板27上で全体的または部分的に固化するようにしてもよい。
【0028】
部品集合13が貫通孔12に配置された後、貫通孔12は充填材29によって満たされ、図3に示すように、実質的に充填材29が部品集合13を包含する。充填材29の量は、貫通孔12及び・またはスペーサー層11から充填材29がわずかに突出する程度の量となっている。
図4に示されるような次の工程では、第2被覆層30がスペーサー層11と充填材29とに貼り付けられる。それから、矢印31で示されるような平面に作用する圧力が第1被覆層10及び第2被覆層30に印加されることにより、スペーサー層11と第2被覆層30との間の過剰な充填材29が、層の縁の領域32に出る。ここではより詳細に図示しない方法の実施形態では、外面の縁を始点として第2被覆層30が傾斜してスペーサー層11に貼着されているので、充填材29が容易に排出される。第1及び第2被覆層10、30がスペーサー層に強固に密着接合される場合には、充填材29が熱衝撃によって固化され、半完成品33が形成される。次に、貫通孔12の内側輪郭35と部品集合13の外側輪郭36との間に位置する仕切り線34に沿って、半完成品33から図5に示す埋め込み加工品37が分離される。
【0029】
埋め込み加工品37は、外側層38、39を用いてさらに加工処理され、図6に示すカード40が形成される。外側層38、39は、より詳細に図示しないが、接着材を使用し、埋め込み加工品37の被覆層10、30に恒久的に接着されるのが好ましい。使用される粘着材は、比較的低温で活性化可能及び・または硬化可能であるのが好ましい。
埋め込み加工品41の更なる実施形態を図7に示しており、埋め込み加工品41は、部品集合13及び固化した充填材29によって構成されているに過ぎない。埋め込み加工品41が積層体から分離される前または後に、固化した充填材29から被覆層(図示せずが)除去される。
【0030】
図8は図2aのVIII−VIII線に沿う断面により、板材42の一部の詳細を示す平面図である。板材42は、第1被覆層10と、複数個の貫通孔12を有するスペーサー層11とからなる。図2aに示すような部品14、15、16、17を有する部品集合13が、各貫通孔12へ挿入されている。部品14、15、16、17は点線で示す接続導体43を使用して互いに接続されている。既に図4で説明したように、スペーサー層11の内側輪郭35と部品集合13の外側輪郭36との間に仕切り線34が設けられる。
【0031】
図9aは印刷された外側層45,46を有するカード44を示す。外側層45、46の外面には印刷47、48がそれぞれ設けられており、ここでは概略を示している。外側層45及び第2被覆層49はいずれも透明であり、印刷47が施されていない視認領域50が外側層45に設けられている。表示素子51として実装された部品と第2被覆層49との間には、透明層52が配置されている。透明層52は低粘度の粘着材から形成され、第2被覆層49がスペーサー層(図示せず)及び充填材29に貼着される前に表示素子51に貼着される。これにより、表示素子51が第2被覆層49と直接的に接触せず、表示素子51と第2被覆層49との間で生じうる横ずれを透明層52で補償しながら、第2被覆層49及び外側層45を介して表示素子51によって示される可視情報の良好な光学的透過性を透明層52によって確保することができる。
【0032】
第2被覆層49に第2外側層54を接合する前に、第2外側層54に印刷53を施すことも可能である。図9bに示すように、印刷53が第2外側層54の内面56に施されるようなカードを形成するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの電子部品(14,15,16,17)を有し、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のための埋め込み加工品(37,41)の製造方法において、
全ての電子部品を保持基板(18,22,27)上に相互に関連付けて配置することにより部品集合(13,21,26)を形成し、
前記部品集合を第1被覆層(10)上に配置した後、貫通孔(12)を有したスペーサー層(11)を前記第1被覆層に貼着し、
前記部品集合を前記貫通孔に収容し、
前記貫通孔を少なくとも部分的に満たす充填材(29)を前記貫通孔に導入し、
前記スペーサー層に第2被覆層(30,49)を貼着し、
前記被覆層を加圧しながら前記充填材を固化させることを特徴とする埋め込み加工品の製造方法。
【請求項2】
少なくとも2つの電子部品(14,15,16,17)を有し、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のための埋め込み加工品(37,41)の製造方法において、
全ての電子部品を保持基板(18,22,27)上に相互に関連付けて配置することにより部品集合(13,21,26)を形成し、
貫通孔(12)を有したスペーサー層(11)を第1被覆層(10)に貼着した後、前記部品集合を該第1被覆層上に配設し、
前記部品集合を前記貫通孔に収容し、
前記貫通孔を少なくとも部分的に満たす充填材(29)を前記貫通孔に導入し、
前記スペーサー層に第2被覆層(30,49)を貼着し、
前記被覆層を加圧しながら前記充填材を固化させることを特徴とする埋め込み加工品の製造方法。
【請求項3】
前記第1被覆層(10)に前記部品集合(26)を実装するため、
第1の量の充填材(57)を前記貫通孔(12)に導入し、
前記充填材中に前記電子部品(14,15,16,17)を相互に関連付けて配置し、
前記充填材を固化させて前記保持基板(27)を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記充填材(29,57)の固化は、前記部品(14,15,16,17)を損傷する温度を超えない温度の熱衝撃によって行うことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記部品集合(13,21,26)は前記第1被覆層(10)上に固定されることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1被覆層(10)上への部品集合(13,21,26)の固定は、前記部品集合の底面と前記第1被覆層との間に介装される固定層(20)を使用して行うことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1被覆層上への前記部品集合(13,21,26)の固定は、超音波を使用して行うことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1被覆層(10)上への前記部品集合(13,21,26)の固定は、熱的方法を利用して行うことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
少なくとも1つの部品は表示素子(51)として実装され、前記表示素子と前記第2被覆層(49)との間に透明層(52)が配設されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記被覆層(10,30,49)は、前記スペーサー層(11)に恒久的に接着されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記埋め込み加工品(37,41)が、前記被覆層及び前記スペーサー層を有する積層体から分離される前または後に、前記第1及び・または第2被覆層(10,30)が、前記スペーサー層(11)及び・または固化した前記充填材(29,57)から除去されることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
前記埋め込み加工品は、前記貫通孔の内側輪郭(35)と前記部品集合(13,21)の外側輪郭(36)との間に仕切り線(34)が生じるようにして、前記積層体から分離されることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
少なくとも2つの電子部品(14,15,16,17)を有し、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のための埋め込み加工品(37,48)を製造するための半完成品(33)において、 全ての電子部品が、相互に関連付けられて保持基板(18,22,27)に配置されることにより部品集合(13,21,26)が形成されており、
前記部品集合はスペーサー層(11)の貫通孔(12)に収容され、
前記貫通孔は固化した充填材(29,57)によって満たされていることを特徴とする埋め込み加工品を製造するための半完成品。
【請求項14】
前記貫通孔(12)を有する前記スペーサー層(11)は第1被覆層(10)に貼着され、
前記部品集合(13,21,26)は該第1被覆層上に配設されることを特徴とする、請求項13に記載の半完成品。
【請求項15】
前記貫通孔の内側輪郭(35)と前記部品集合の外側輪郭(36)との間に仕切り線(34)が形成されることを特徴とする、請求項13または14に記載の半完成品。
【請求項16】
前記第1被覆層(10)に対面する前記保持基板(22)の接触面に表面構造(24)が形成されることを特徴とする、請求項13乃至15のいずれかに記載の半完成品。
【請求項17】
少なくとも1つの被覆層(10,30,49)は透明であることを特徴とする、請求項13乃至16のいずれかに記載の半完成品。
【請求項18】
前記半完成品は板材(42)から形成され、
少なくとも1つ以上の部品集合(13,21,26)と、
1つの貫通孔(12)と、
1つの固化した充填材(29,57)と、
を有することを特徴とする、請求項13乃至17のいずれかに記載の半完成品。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれかに記載の半完成品(33)を使用する、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等であって、
カード(40,44,45)及び・または埋め込み加工品(37,41)を積層体から分離する前または後に接着材を用いて前記半完成品及び・または前記埋め込み加工品に少なくとも1つの外側層(38,39,45,46,54)を接着するカードの製造方法において、
前記カード及び・または前記埋め込み加工品は、スペーサー層(11)の貫通孔(12)の内側輪郭(35)と、前記貫通孔内に配設された部品集合(13,21,26)の外側輪郭(36)との間に仕切り線(34)が形成されるように前記積層体から分離されることを特徴とするカードの製造方法。
【請求項20】
前記第1及び・または第2被覆層(40,44,45)は、前記外側層(38,39,45,46,54)を貼着する前に、前記スペーサー層(11)及び・または固化した前記充填材(29,57)から除去されることを特徴とする、請求項18に記載の製造方法。
【請求項21】
前記接着材は、前記部品(14,15,16,17)を損傷する温度を超えない温度の熱衝撃によって活性化されることを特徴とする、請求項18または19に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項13乃至18のいずれかに記載の半完成品を含む、特にICカード、カード型商品券、身分証明書等のカード(40,44,45)において、
少なくとも1つの印刷可能な外側層(45,46,54)が、前記半完成品(33)を含む積層体に貼着されていることを特徴とするカード。
【請求項23】
前記外側層(45,54)は、少なくとも一部の領域(50)において透明であることを特徴とする、請求項22に記載のカード。
【請求項24】
前記外側層(54)は、前記充填材(29,57)と対面する面(56)に印刷が施されることを特徴とする、請求項23に記載のカード。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【公表番号】特表2010−519614(P2010−519614A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549779(P2009−549779)
【出願日】平成19年11月23日(2007.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010190
【国際公開番号】WO2008/101529
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(508356353)
【氏名又は名称原語表記】Smartrac IP B.V.
【住所又は居所原語表記】Strawinskylaan 851, NL−1077 XX, Amsterdam, Netherlands
【Fターム(参考)】