説明

埋め込み部材

【課題】血流下で血管内皮前駆細胞(EPC)を選択的に捕捉して、内皮化された表面を形成し得る埋め込み部材を提供。
【解決手段】基材と、基材の表面に設けられたコーティング層を有する、EPCを流血下で捕捉し、かつ内皮化するための埋め込み部材。前記コーティング層は、水不溶性合成高分子からなり、かつ前記高分子は、EPCに特異的に相互作用をする蛋白質を固定化するための官能基を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮前駆細胞(以下、EPCと呼ぶことがある)を流血中で特異的に捕捉し内皮化を促進するコーティング層を有する埋め込み部材に関する。
【背景技術】
【0002】
人工血管など、体内に埋め込まれ血液と接する部材においては、血栓形成による閉塞や再狭窄などを低減するために、従来から、様々な取り組みが行われてきている。
【0003】
その一環として、本発明者らは血液接触面の基材表面に設けられた抗凝固能を有する成分を含む高分子材料層と、前記高分子材料層の表面に設けられた化学固定化された蛋白質とを備え、前記蛋白質はEPCのみに発現するレセプタと特異的に作用するリガンドあるいはレセプタの抗体であり、この生物学的特異作用によって、血流下でEPCを選択的に捕捉することができる人体埋め込み部材を提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−125682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の埋め込み部材が有する高分子材料層は、抗凝固能を有する成分を含むものであり、抗凝固能を有する成分は、埋め込み部材を体内に埋め込んだ後に、徐々に高分子材料層から放出され、抗凝固能を発揮して、血流下で高分子材料層表面に固定化された蛋白質がEPCを選択的に捕捉して高分子材料層表面を内皮化する間、血栓の生成を抑制するものである。抗凝固能を有する成分としてはヘパリンが例示されている。特許文献1に記載の埋め込み部材が有する高分子材料層は、具体的には、アルブミンまたはゼラチンを水溶性カルボジイミドで架橋したゲル層であり、ゲル層に含まれたヘパリンがゲル層から徐々に放出されて、高分子材料層表面が内皮化されるまでの間、血栓の生成を抑制する。
【0006】
しかるに、ゲル層に含まれたヘパリンを血栓の生成を抑制するに適した割合でゲル層から徐々に放出させるには、ゲル層の構造やヘパリンの存在状態等を制御する必要がある。
【0007】
そこで、ヘパリンのような徐放性の抗凝固能を有する成分を用いること無しに、EPCを選択的に捕捉して高分子材料層表面を内皮化し得る高分子材料層を有する埋め込み部材を提供できれば利用価値は高いと本発明者らは考えた。
【0008】
そこで本発明の目的は、ヘパリンのような抗凝固能を有する成分を徐放性成分として用いることなく、血流下でEPCを選択的に捕捉して、内皮化された表面を形成し得る埋め込み部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの検討の結果、埋め込み部材の表面に設けるコーティング層は、EPCに特異的に相互作用をする蛋白質を固定化するための官能基を有する水不溶性合成高分子で構成すること、さらには上記コーティング層に血管内皮前駆細胞(EPC)に特異的に相互作用をする蛋白質(特異的蛋白質)を固定化することで、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
基材と、
基材の表面に設けられたコーティング層を有する埋め込み部材であって、
前記コーティング層は、水不溶性合成高分子からなり、かつ前記高分子は、血管内皮前駆細胞(以下、EPC)に特異的に相互作用をする蛋白質(以下、特異的蛋白質)を固定化するための官能基(以下、固定化用官能基)を有するものである、
EPCを流血下で捕捉し、かつ内皮化するための埋め込み部材。
[2]
前記水不溶性合成高分子がポリ(エチレン・ビニルアルコール)共重合体、ポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体またはアミノ化ポリビニルアルコール共重合体である[1]に記載の埋め込み部材。
[3]
固定化用官能基が水酸基、アミノ基またはカルボキシル基である[1]または[2]に記載の埋め込み部材。
[4]
固定化用官能基の少なくとも一部が、N,N'-カルボニルジイミダゾールまたはカルボジイミドで活性化された官能基である[1]〜[3]のいずれかに記載の埋め込み部材。
[5]
前記コーティング層の表面には、前記固定化用官能基の少なくとも一部を介して特異的蛋白質が固定化されている、[1]〜[4]のいずれかに記載の埋め込み部材。
[6]
特異的蛋白質が、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGFの細胞表層レセプタに対する抗体、アンジオポイエティン、およびアンジオポイエティンの細胞レセプタに対する抗体からなる群から選ばれる少なくとも1種である[5]に記載の埋め込み部材。
[7]
VEGFの細胞表層レセプタがVEGFR1またはVEGFR2であり、アンジオポイエティンの細胞レセプタがTie1またはTie2である[6]に記載の埋め込み部材。
[8]
前記コーティング層は、特異的蛋白質が固定化されていない表面にブロッキング剤が固定化されている[5]〜[7]のいずれかに記載の埋め込み部材。
[9]
ブロッキング剤がポリエチレングリコールである[8]に記載の埋め込み部材。
[10]
前記基材が、体内に埋め込まれ、血液と接触することになる人工的な埋め込み部材の構成部材である[1]〜[9]のいずれかに記載の埋め込み部材。
[11]
前記構成部材は、人工血管、ステント、または人工弁に用いられるものである[10]に記載の埋め込み部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ヘパリンのような抗凝固能を有する成分を徐放性成分として用いることなく、血流下でEPCを選択的に捕捉して、EPCで被覆し、内皮化された表面(EPCまたはEPCが分化した血管内皮細胞(EC)で被覆された表面)を形成し得る埋め込み部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ブロッキング剤が固定化された表面の模式図を示す。
【図2】実施例1で作製した、均一な薄厚のコーティング層(厚み約3ミクロン)が形成されたステントの写真である。
【図3】実施例1における、コーティング層上に固定した蛍光標識蛋白質の表面濃度のプロファイルを示す。
【図4】実施例1における、コーティング層表面の蛍光強度のタンパク質濃度の依存性の測定結果を示す。
【図5】実施例2で作製した、均一薄膜層(膜厚2ミクロン)が内腔に形成された筒状体(人工血管)の写真である。
【図6】実施例2で作製した、均一薄膜層(膜厚2ミクロン)が内腔に形成された筒状体(人工血管)の写真である。
【図7】実施例2で作製し伸展した筒状体(人工血管)の写真(上図:ステント、下図:接着細胞の蛍光画像)。
【図8】実施例3における、片末端アミノ基のポリエチレングリコールでブロッキングした表面の細胞接着の様子を示す写真(左図:フィブロネクチン固定化表面、右図ポリエチレングリコールブロッキング表面)を示す。
【図9】比較例1における、蛍光アルブミン固定表面の写真を示す。
【図10】基材表面の蛍光強度のタンパク質濃度の依存性とポリエチレングリコール(PEG)吸着時のタンパク質の固定量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の埋め込み部材は、EPCを流血中で部材表面において捕捉し、その表面を内皮化することができる埋め込み部材である。本発明の埋め込み部材は、基材とこの基材の表面に設けられたコーティング層を有する。ここで、コーティング層を設ける基材の表面とは、血液と接触する側の面をいう。
【0014】
基材は、体内に埋め込まれ、血液と接触することになる人工的な埋め込み部材の構成部材であれば、特に制限はない。そのような構成部材は、例えば、人工血管、ステント、または人工弁等に用いられるものであることができる。人工血管の場合は、例えば、チューブ形状のポリエステル繊維やポリテトラフルオロエチレン樹脂などの生体適合性材料から構成されるものであることができる。人工血管は、その内径によって、10mm以上の大口径人工血管、8mm程度の中口径人工血管、6mm以下の小口径人工血管などの種類があり、臨床に使用されている。しかし、特に内径6mm以下の小口径人工血管は、冠状動脈疾患、末梢動脈疾患等の治療において希求されているが、血栓閉塞によって実用化されていない。ステントの場合は、例えば、金属または生体適合性の高分子材料から成るものを挙げることができる。人工弁の場合は、所謂、機械弁であり、一部又は全部のパーツが金属または生体適合性の高分子材料でできているものであることができる。
【0015】
コーティング層は、水不溶性合成高分子からなり、かつ前記高分子は、EPCに特異的に相互作用をする蛋白質(特異的蛋白質)を固定化するための官能基(固定化用官能基)を有するものである。
【0016】
水不溶性合成高分子は、例えば、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系共重合体、ヒドロキエチレアクリレートとメタアクリレート共重合体やポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体等のアクリレート系共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエステル系ポリマーアロイ等の生体適合性高分子であることができる。これらの材料は、例えば、人工腎臓などで使用され、生体適合性が実証された材料である。水不溶性合成高分子は、その表面に特異的蛋白質を固定化することから、蛋白質の官能基と水中で温和な条件で反応しうる官能基(固定化用官能基)を有する材料から選択される。官能基として水酸基を有する材料として、エチレン・ビニルアルコール共重合体及びヒドロキエチレアクリレートとメタアクリレート共重合体を挙げることができる。また、官能基としてカルボキシル基を有する材料として、ポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体を挙げることができる。さらに、官能基としてアミノ基を有する材料として、アミノ化ポリビニルアルコール共重合体(例えば、アミノ化率25 mol%)を水不溶性合成高分子を挙げることができる。
【0017】
上記水不溶性合成高分子は、適当な有機溶媒に溶解し、塗布液として、この塗布液を基材表面に塗布して有機溶媒を揮発させてコーティング層を形成する。有機溶媒は、水不溶性合成高分子を溶解し、かつコーティング層を形成後は、容易にコーティング層から揮発除去できるものであることが好ましい。特に、埋め込み部材には生体適合性が要求されることから、有機溶媒のコーティング層への残存は回避すべきである。水不溶性高分子塗布液の塗布は、基材がステントの場合には超音波噴霧装置を用い、基材が人工血管の場合には内腔に塗布液を注入して、それぞれ行うことができる。コーティング層の厚みは、特に制限はないが、例えば、1〜500μmの範囲とすることができる。コーティング層の厚みは、コーティング層が形成される基材の種類に応じて適宜決定できる。
【0018】
高分子側鎖に水酸基を有する水不溶性高分子であるエチレン・ビニルアルコール共重合体を用いる場合、コーティング層を形成した後に、コーティング層の少なくとも表面層に存在する水酸基を、例えば、N,N'-カルボニルジイミダゾールと反応させてイミダゾイル化することで、固定化用官能基を活性化することもできる。具体的には、N,N'-カルボニルジイミダゾール含有溶液をコーティング層と接触させることで、固定化用官能基を活性化できる。
【0019】
高分子側鎖にカルボキシル基を有する水不溶性高分子であるアクリル酸共重合体を用いる場合にも、基材表面に塗布し、ついでコーティング層の少なくとも表面層に存在するカルボキシル基を水溶性縮合剤〔WSC;カルボジイミド;1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrocloride〕と反応させて、固定化用官能基を活性化することができる。具体的には、カルボジイミド含有溶液をコーティング層と接触させることで、固定化用官能基を活性化できる。
【0020】
コーティング層の表面には、前記固定化用官能基の少なく一部を介して特異的蛋白質が固定化される。特異的蛋白質とは、EPCに特異的に相互作用をする蛋白質を意味する。そのような特異的蛋白質としては、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGFの細胞表層レセプタ(例えば、VEGFR1あるいはVEGFR2)に対する抗体、アンジオポイエティン、およびアンジオポイエティンの細胞レセプタ(例えば、Tie1あるいはTie2)に対する抗体からなる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらの特異的蛋白質は、単独でも複数(2種以上)を組み合わせて使用することもできる。
【0021】
特異的蛋白質は、固定化用官能基を有するコーティング層の表面に、特異的蛋白質を含有する水溶液(例えば、リン酸緩衝液)を接触させることで、固定化することができる。特異的蛋白質のコーティング層の表面での固定化量は、特異的蛋白質の種類等に応じて適宜決定でき、特異的蛋白質が固定化されたコーティング層の表面が、血液と接触した際に、特異的蛋白質を介して捕捉され、次いで分化が促進されて内皮細胞(EC)でほぼ一様に被覆され得る程度にすることが適当である。特異的蛋白質の大きさに比べてEPCの大きさは格段に大きく、従って、特異的蛋白質のコーティング層表面への固定化密度が小さくても、EPCが捕捉されれば、コーティング層表面はEPCで被覆され得る。また、上記で例示した特異的蛋白質は、必ずしも安価なものではないため、より安価に埋め込み部材を提供するという観点からは、特異的蛋白質の固定化量を適正化することが好ましい。
【0022】
また、特異的蛋白質の高密度表面固定を意図しても、原理的に未固定部分が存在し、この部分が目的としない細胞種の接着や血液凝固系の活性化の源となる可能性もある。即ち、特異的蛋白質が固定化されていないコーティング層表面が増大すると、コーティング層を形成する前記水不溶性高分子と、EPC以外の細胞やタンパク質成分との相互作用が生じ易くなる。そのような相互作用をより抑制するために、コーティング層は、特異的蛋白質が固定化されていない表面にブロッキング剤が固定化されていることが好ましい。ブロッキング剤が固定化された表面の模式図を図1に示す。ブロッキング剤としては、ポリエチレングリコールを挙げることができる。ポリエチレングリコールは分子量が例えば、200〜10000程度のものを用いることができる。但し、ポリエチレングリコールの分子量は、ブロッキング性能を考慮して適宜設定できる。複数種類のポリエチレングリコールを併用することもできる。
【0023】
ポリエチレングリコールの固定化は、ポリエチレングリコールの片末端にアミノを導入した片末端アミノ化ポリエチレングリコールを用い、コーティング層の固定化用官能基と反応させることで実施できる。ブロッキング剤を用いる場合、特異的蛋白質の固定化量とブロッキング剤の固定化量の比率は、例えば、5:100〜90:10の範囲であることができる。
【0024】
本発明によれば、病変血管壁を再建する人工機器(ステントおよび小口径人工血管)の表面での血栓形成を抑止し、生体動脈血管と同等の恒久的な非血栓性を発現するコーティング層を有する埋め込み部材が提供される。本発明の埋め込み部材のコーティング層表面は、流血中に微量に含まれる血管内皮細胞を選択的に捕捉・被覆(内皮化)することができる。高選択的捕捉は、コーティング層表面に固定したVEGFまたはそのレセプタ(例えば、VEGFR1若しくはVEGFR2)の抗体、アンジオポイエティンまたはそのレセプタ(例えば、Tie1若しくはTie2)の抗体等との生物学的特異相互作用によって実現される。
【実施例】
【0025】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0026】
実施例1
ポリ(エチレン・ビニルアルコール)共重合体(ポリビニルアルコール含量:72 mol%)のHFIP(ヘキサフルオロイソプロピルアルコール)0.5%溶液を米国Sono-Tek社 超音波噴霧装置によりステント上にコーティングした。空気乾燥によって均一なコーティング層が形成された(厚み約3ミクロン:図2)。ついでこのステントをN,N'-カルボニルジイミダゾールの5%アセトニトリル溶液の中に常温で2時間浸漬して、表面層の水酸基をイミダゾイル化して活性化した。その後、未反応のカルボニルジイミダゾールをアセトニトリルで洗浄した後に、0.1 mg/mlの蛋白質(この場合はVEGFの代わりに蛍光標識したアルブミンを代用)のりん酸緩衝液に常温でゆるく攪拌下で24時間浸漬した。浸漬後、りん酸緩衝液で充分洗浄した後に蛍光顕微鏡で蛍光強度を測定した。
【0027】
図3にエチレン・ビニルアルコール共重合体(ビニルアルコール含量;72mol.%)上に固定した蛍光標識蛋白質の表面濃度のプロファイル、図4に基材表面の蛍光強度のタンパク質濃度の依存性を示した。蛋白質濃度0.1 mg/mlで高密度蛋白質表面層が形成されていることが判明した。
【0028】
実施例2
ポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体(ポリアクリル酸含量30 mol%)の2%HFIP溶液をセグメント化ポリウレタン・メッシュ筒状体(内径3.5mm、長さ10cm;自作した高電界エレクトロスピニング装置で製造)の内腔に注入し、直ちに溶液を重力流出させて乾燥することにより均一コーティング層が筒状体内腔に形成できた(膜厚2ミクロン:図5および6に写真を示す)。ついで、VEGF(1μg〜100μg/ml)のりん酸緩衝液に浸漬した。24時間後に生理食塩水で洗浄した。血管内皮および内皮前駆細胞は接着し、経時的に伸展した(図7:蛍光脂質標識DiOでラベルした内皮細胞を播種し、3日間培養したものを示した上図:ステント、下図:接着細胞の蛍光画像)。
【0029】
上記実施例1及び2におけるエチレン・ビニルアルコール共重合体及びポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体に代えて、例えば、アミノ化ポリビニルアルコール共重合体(アミノ化率25 mol%)を用いることで、同様にステント又は人工血管にコーティング層を形成し、ついで水溶性縮合剤(カルボジイミド)を含む蛋白質(VEGF)のりん酸緩衝液に浸漬して、表面に蛋白質固定化することで、本発明の埋め込み部材を作製することもできる。
【0030】
実施例3:未固定部分のブロッキング
特異的蛋白質の未固定部分をブロッキングするために、細胞接着・蛋白質吸着を抑制するポリエチレングリコール(実施例3)またはアルブミン(比較例1)を固定化した表面を形成した。片末端アミノ基のポリエチレングリコール(分子量2,000) 0.1%溶液に実施例1の表面活性化水酸基材料を浸漬(24時間)した表面は細胞の接着がフィブロネクチン固定化表面に比べて大幅に抑制され、ブロッキング効果は顕著であった(図8)。一方、蛍光アルブミン溶液(1 mg/ml)に浸漬した後、りん酸緩衝液で洗浄すると、蛍光は殆ど観察されなかった(図9および10)。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、人工血管等の人体への埋め込み部材に関連する分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
基材の表面に設けられたコーティング層を有する埋め込み部材であって、
前記コーティング層は、水不溶性合成高分子からなり、かつ前記高分子は、血管内皮前駆細胞(以下、EPC)に特異的に相互作用をする蛋白質(以下、特異的蛋白質)を固定化するための官能基(以下、固定化用官能基)を有するものである、
EPCを流血下で捕捉し、かつ内皮化するための埋め込み部材。
【請求項2】
前記水不溶性合成高分子がポリ(エチレン・ビニルアルコール)共重合体、ポリ(メチルメタクリレート・アクリル酸)共重合体またはアミノ化ポリビニルアルコール共重合体である請求項1に記載の埋め込み部材。
【請求項3】
固定化用官能基が水酸基、アミノ基またはカルボキシル基である請求項1または2に記載の埋め込み部材。
【請求項4】
固定化用官能基の少なくとも一部が、N,N'-カルボニルジイミダゾールまたはカルボジイミドで活性化された官能基である請求項1〜3のいずれかに記載の埋め込み部材。
【請求項5】
前記コーティング層の表面には、前記固定化用官能基の少なくとも一部を介して特異的蛋白質が固定化されている、請求項1〜4のいずれかに記載の埋め込み部材。
【請求項6】
特異的蛋白質が、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGFの細胞表層レセプタに対する抗体、アンジオポイエティン、およびアンジオポイエティンの細胞レセプタに対する抗体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の埋め込み部材。
【請求項7】
VEGFの細胞表層レセプタがVEGFR1またはVEGFR2であり、アンジオポイエティンの細胞レセプタがTie1またはTie2である請求項6に記載の埋め込み部材。
【請求項8】
前記コーティング層は、特異的蛋白質が固定化されていない表面にブロッキング剤が固定化されている請求項5〜7のいずれかに記載の埋め込み部材。
【請求項9】
ブロッキング剤がポリエチレングリコールである請求項8に記載の埋め込み部材。
【請求項10】
前記基材が、体内に埋め込まれ、血液と接触することになる人工的な埋め込み部材の構成部材である請求項1〜9のいずれかに記載の埋め込み部材。
【請求項11】
前記構成部材は、人工血管、ステント、または人工弁に用いられるものである請求項10に記載の埋め込み部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−92489(P2011−92489A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250130(P2009−250130)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度文部科学省知的クラスター創成事業(第II期)「ほくりく健康創造クラスター」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】