説明

培養物観察システム

【課題】最初から試料にフォーカスがほぼ合った状態で観察を開始することができる培養物観察システムを提供する。
【解決手段】本発明の培養物観察システムは、培養物の培養に適した環境を構成するための培養手段と、前記培養物の顕微鏡画像を撮影するための撮像手段と、該撮像手段により撮影された顕微鏡画像を表示するための表示手段と、該表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、現在のフォーカス位置を前記培養物に関係付けて記憶する記憶手段を備えると共に、培養物の撮影に際して、当該培養物に関係付けて前記記憶手段に記憶したフォーカス位置を初期値として前記撮像手段をフォーカス設定し、その状態で撮影した顕微鏡画像を前記表示手段に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養物の培養状況を顕微鏡画像にて観察することを可能とする培養物観察システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のバイオ、再生医療関連の分野の発達に伴い、インキュベータ(培養手段)を使用して細胞を培養する作業が、増加傾向にある。細胞の培養を促進するためには、それぞれの細胞に適した培養空間を整備する必要があり、従来より、培養空間の温度制御、湿度制御、雰囲気制御を行うインキュベータが開発されている。
【0003】
特に、培養条件としてCO2(二酸化炭素)ガス濃度の厳格な濃度条件を要求する細胞の培養を行う場合には、温度制御及び湿度制御を行うものに加えて、培養空間のCO2ガス濃度を制御可能とするCO2インキュベータが用いられている。
【0004】
一方、当該細胞の培養状態を観察する場合には、該CO2インキュベータにおいて培養されている細胞等のサンプルをインキュベータから取り出し、他の位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡、更には、蛍光顕微鏡などにおいて観察した後、再度、培養を継続するため、インキュベータ内に戻される。
【0005】
しかしながら、細胞の培養状態を観察するたびに、CO2インキュベータ内から取り出されると、細胞の培養条件が変化してしまい、場合によっては細胞が死滅してしまうなど、適切な培養を行うことが困難となる。そこで、CO2インキュベータ内において細胞の培養を継続しながら、観察することを可能とする培養顕微鏡が開発されている(特許文献1参照)。
【0006】
この培養顕微鏡は、細胞を培養するインキュベータ室と細胞を観察する顕微鏡部分が一体となって構成されており、インキュベータ室内に配設される回転ベースには、試料容器を設置するトレイが配設されている。トレイは、複数の試料設置穴を有し、回転ベースを回転制御することで、それぞれの試料容器内に収容される試料を顕微鏡を構成する対物レンズから観察可能とされている。
【0007】
また、顕微鏡室には、照明用のLEDやCCDカメラなどが設置されており、試料からの光は、対物レンズ、倍率変更レンズ等を介してCCDカメラに入射される。CCDカメラにて撮影されている画像は、コンピュータに取り込まれ、当該コンピュータに接続されるディスプレイにてリアルタイムで表示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−11415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した如き培養顕微鏡では、観察したい試料容器を選択し、観察位置の入力に従って、回転ベースの制御や各種レンズの制御が行われ、ディスプレイには、観察したい細胞の画像が表示される。このとき、ディスプレイの表示画面には、選択されている試料容器の表示や、観察位置、即ち、XY座標やレンズの上下移動量、倍率などが表示される。
【0010】
ところで、受精卵の培養にあたっては、通常、1つの培地に1つの試料(受精卵細胞)を置いて行われる。この培地はシャーレ等の試料容器に1つあるいは複数形成される。そして、顕微観察する際には、対物レンズの視野の中央に試料が来るように、目視にておおよその位置(X座標、Y座標)に試料容器を置き、そこから少しずつ位置をずらしながら培地中の試料を探すことになる。しかし、1つの受精卵の大きさはその直径が100μm程度と極めて微小であるので、培地中のその受精卵が在る深さにフォーカスが合っていないと、受精卵を見つけるのは容易ではない。
【0011】
そこで、本発明は、従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、最初から試料にフォーカスがほぼ合った状態で観察を開始することができる培養物観察システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の培養物観察システムは、培養物の培養に適した環境を構成するための培養手段と、前記培養物の顕微鏡画像を撮影するための撮像手段と、該撮像手段により撮影された顕微鏡画像を表示するための表示手段と、該表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、現在のフォーカス位置を前記培養物に関係付けて記憶する記憶手段を備えると共に、培養物の撮影に際して、当該培養物に関係付けて前記記憶手段に記憶したフォーカス位置を初期値として前記撮像手段をフォーカス設定し、その状態で撮影した顕微鏡画像を前記表示手段に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の培養物観察システムによれば、観察対象の培養物、例えば受精卵に一度フォーカスを設定すれば、次回の観察時からは自動的に前回観察時のフォーカス位置にフォーカスが合うので、前回観察時に使用した容器と同じ容器を使用した場合はX座標、Y座標の移動だけ、すなわちフォーカス位置を改めて合わせることなく培養物を見つけられるので培養物を見つけることが極めて容易になる。これにより、観察ポイントの設定操作が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した培養物観察システムを構成する培養物観察装置の部分透視正面図である。
【図2】図1の培養物観察装置の側面図である。
【図3】図1の培養物観察装置の縦断側面図である。
【図4】図1の培養物観察装置の横断平面図である。
【図5】培養物観察システムを構成する制御装置の電気ブロック図である。
【図6】ディスプレイに表示される「撮影ポイントの設定」画面を示す図である。
【図7】ディスプレイに表示される「座標移動量の設定」画面を示す図である。
【図8】ディスプレイに表示される「撮影ポイントの設定」画面を示す図である。
【図9】ディスプレイに表示される「撮影ポイントの設定」画面を示す図である。
【図10】ディスプレイに表示される「細胞観察システム」画面を示す図である。
【図11】試料容器と鮮鋭度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について詳述する。図1は本発明を適用した培養物観察システムSを構成する培養物観察装置1の部分透視正面図、図2は図1の培養物観察装置1の側面図、図3は図1の培養物観察装置1の縦断側面図、図4は図1の培養物観察装置1の横断平面図、図5は培養物観察システムSを構成する制御装置の電気ブロック図をそれぞれ示している。
【0016】
本実施例の培養物観察システムSは、培養物として例えば、受精卵内に存在する未分化な幹細胞(所謂ES細胞)である胚性幹細胞や、既にできあがった体内の各器官に存在する未分化な幹細胞、例えば造血幹細胞や神経管細胞などの体性幹細胞等の再生医療等に用いられる細胞のみならず、受精卵などの細胞の培養操作に用いられるシステムであり、培養しつつ、該培養状況を観察可能とするシステムである。
【0017】
培養物観察システムSは、培養物としての細胞(以下、培養物として細胞を例に挙げて説明する)の培養に適した環境を構成するための培養庫(培養手段)2と、細胞の顕微鏡画像を撮影するための撮像装置(撮像手段)3と、撮像装置3により撮影された顕微鏡画像を表示するためのディスプレイ(表示手段)4と、これら培養庫2、撮像装置3及びディスプレイ4を制御する制御手段としてのコンピュータ5とを備えるものである。このうち、培養庫2と、撮像装置3により図1に示す如き培養物観察装置1が構成され、コンピュータ5は、汎用のマイクロコンピュータにより構成されるPCなどから構成される。
【0018】
培養物観察装置1は、例えば一面(本実施例では前面)に開口10を有する断熱性の箱体により本体12が構成されており、この本体2内(庫内)上部には、培養庫2を構成する培養室13が形成されている。また、この培養室13の下方に位置する本体12内下部には、撮像装置3が配設される撮像室6が形成されている。
【0019】
そして、本体12には、前面開口10を開閉自在に閉塞するための内扉14が設けられていると共に、更に、内扉14の外方に位置して断熱扉15が設けられている。内扉14は、内部を透視可能とする透明ガラス板などにより構成されており、断熱扉15を開放し、内扉14を閉鎖した状態で、培養室13内を視認可能とされる。また、断熱扉15の前面には、コントロールパネル16が設けられていると共に、該断熱扉15の裏面外周縁には、内扉14の端面より外側に位置してガスケット17が取り付けられている。これにより、培養室13は、外部から密閉可能とされる。
【0020】
培養室13を構成する本体12内壁面には、所定間隔を存して熱良導性の区画壁20が配設されている。この区画壁20は、培養室13を構成する全面、即ち、天面、底面、左右側面、背面に位置して配設されており、当該区画壁20と本体12内壁面との間には、庫内ヒータ19(図5のみ図示する)が配設されている。尚、培養室13の下方には、撮像装置3が配設されているため、培養室13の底面は、当該撮像装置3が設けられている部分を除く部分に庫内ヒータ19が配設されているものとする。また、扉15を閉じた状態で、培養室13の前面を構成する断熱扉15の背面にも、扉ヒータ18(図5のみ図示する)が配設されている。これにより、培養室13は、区画壁20及び内扉14を介して間接的に六面すべての面から加熱可能とされている。
【0021】
また、培養室13の左右側壁を構成する各区画壁20には、内方に突出して図示しない棚架設部が複数段形成されており、当該棚架設部には、熱良導性、且つ、複数の連通穴が形成される棚板(棚)7が着脱可能に複数段架設されている。尚、詳細は後述する如く、当該培養室13内後部には、光源47が配設されているため、本実施例では、棚板7の後端は光源47の前面より前方となるように架設可能とされているが、これに限定されるものではなく、培養室13を構成する背面に近接する位置まで延在し、光源47に対応する位置は、該光源47を回避する形状(断面U字状の切欠)としてもよい。
【0022】
一方、本体12には、培養室13内と連通するようにガス供給口23が設けられており、当該ガス供給口23には、図示しないガス供給管が接続されている。このガス供給管には、CO2ガス電磁弁24を介してCO2ガスボンベが接続されている(CO2ガス供給手段)と共に、O2ガス電磁弁25を介してO2ガスボンベ(O2ガス供給手段)が接続されている。それのガスボンベには、所定純度以上のガスが封入されているものとする。各電磁弁24、25は、詳細は後述する培養庫側制御装置C1にて開閉制御される。尚、当該ガス供給管は、湿度調整手段を備えていても良く、これによって、所定のCO2濃度、O2濃度、湿度のガスを培養室13に供給可能としても良い。また、本実施例では、CO2ガス、O2ガスの両者を供給可能としているが、CO2ガスのみを供給可能としても良い。
【0023】
また、本体12内には、培養室13の空気温度を検出するための庫内温度センサ26と、培養室13のCO2ガス濃度を検出するためのCO2ガス濃度センサ27、培養室13のO2ガス濃度を検出するためのO2ガス濃度センサ28が設けられている。これらセンサ26、27、28は、いずれも培養庫側制御装置C1に接続されており、これらセンサの検出に基づき、上記庫内ヒータ19、扉ヒータ18、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25が制御され、詳細は後述する如く設定された培養環境の温度やガス濃度が制御される。尚、本体12には、培養室13内の不要な空気を排出するための排気口29が設けられており、当該排気口29に介設される排気弁30(図5のみ図示する)を制御することによって、培養室13内の排気制御が可能とされる。
【0024】
本体12内には、培養室13内の空気を撹拌し、空気の状態を均一とするための図示しない送風機が設けられている。この送風機は送風機用モータ32により作動するものであり、該送風機用モータ32は、培養庫側制御装置C1により制御される。
【0025】
他方、この本体12内に形成される培養室13内には、詳細は後述する撮像室6内に配設される倍率変更レンズ等のレンズ35やCCDカメラ36等と共に撮像装置3を構成するテーブル37が配設されている。このテーブル37は、熱良導性の材料にて構成されると共に、図4に示されるように本実施例では平面略円形を呈した板状部材である。該テーブル37には、細胞等の試料を収容した試料容器42を複数設置するため連通して形成される保持穴43が複数形成されている。本実施例では、6個の保持穴43が所定間隔を存して形成されると共に、これら保持穴43は、いずれもテーブル中心から所定寸法を存して形成される。
【0026】
試料容器42は、少なくとも底面及び上面が透光性を有する容器、例えば、透明のガラス又は樹脂製にて構成されており、光源47からの照射光を透過し、対物レンズ44により内容物を観察可能なものとされている。また、この試料容器42の開口は、通気性を有するフィルタを備えた蓋部材にて閉塞可能とされており、容器42内の湿度、ガス濃度を培養室13内と同様とすることができる。
【0027】
また、テーブル37の中心には、熱良導性材料にて構成される回転軸38が取り付けられている。この回転軸38は、一端が撮像室6内に配設される回転移動用ステージモータ39(図5のみ図示する)に接続され、当該ステージモータ39の駆動により、水平方向に回転可能とされる。また、この回転軸38は、直線移動用のステージモータ40によって、一方向、本実施例では、前後方向に移動可能とされている。これにより、回転移動、直線移動によってテーブル37を移動させることで、テーブル37に設置された試料容器42内の細胞等を移動させることができる。
【0028】
この回転軸38には、ステージヒータ41が取り付けられており、回転軸38の一端に取り付けられる熱良導性のテーブル37を所定の温度に加熱することが可能とされる。尚、テーブル37には、該テーブル37の温度を検出するためのステージ温度センサ46が取り付けられている。
【0029】
そして、テーブル37は配設される培養室13と、撮像装置3が配設される撮像室6内とは、仕切壁45にて区画されており、培養室13内の調整された空気が撮像室6内に進入しないように密閉構造とされている。
【0030】
テーブル37の下方には、仕切壁45を介して撮像室6側から突出して対物レンズ44が設けられている。この対物レンズ44は、テーブル37の保持穴43に設置された試料容器42内の細胞等を観察可能とするものであり、回転軸38(テーブル中心)から所定間隔を存した位置、即ち、保持穴43が形成される位置に対応する位置に設けられる。そして、当該対物レンズ44に対向する位置(対物レンズ44の上方)には、撮像装置3を構成する光源47がアーム48を介して培養室13内に位置する本体12に設けられている。
【0031】
本実施例における光源47は、LED照明が用いられており、培養室13内に上下に延在して配設され、上方から対物レンズ44と該光源47の照射孔との間に位置する細胞等を照明する。尚、光源47は、LED照明に限定されるものではなく、例えば水銀ランプや光ファイバーなどであっても良いものとする。
【0032】
尚、本実施例では、テーブル37の上方の培養室13には、複数段の棚板7・・が架設可能とされることから、光源47は、前面開口10から行われる培養物(容器に収容された状態の細胞など)の納出作業の邪魔とならない位置、本実施例では培養空間後部に配置されるものとする。また、光源47の照射孔に対向して設けられる対物レンズ44も同様に、培養空間後部に位置して配設されるものとする。
【0033】
そして、これら対物レンズ44と、光源47と、テーブル37と共に、撮像装置3を構成する倍率変更レンズ35やCCDカメラ36等は、上述した如きモータ39、40と共に、撮像室6内に配設される。尚、当該対物レンズ44や倍率変更レンズ35、CCDカメラ36等により構成される撮像システムについては、従来の構造と同様のものであるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
次に、図5の電気ブロック図を参照して、本実施例における培養物観察システムSの制御システム(制御手段)について説明する。上述したように培養物観察システムSは、培養室13に培養環境を構成する培養庫2と、該培養庫2内(培養室13内)において培養される細胞等(培養物)の撮像を実行する撮像装置3とを備えた培養物観察装置1と、該培養物観察装置1と通信線により接続されるコンピュータ5とから構成される。培養物観察装置1は、培養庫側制御装置C1と、撮像装置側制御装置C2を備えている。
【0035】
培養庫側制御装置C1の入力側には、庫内温度センサ26、CO2ガス濃度センサ27、O2ガス濃度センサ28、ステージ温度センサ46、コントロールパネル16が接続され、出力側には、庫内ヒータ19、扉ヒータ18、ステージヒータ41、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25及び送風モータ32が接続されている。また、培養庫側制御装置C1には、コンピュータ5とデータ通信を実行するための通信線50が接続されている。また、培養庫側制御装置C1は、メモリ53を内蔵しており、コンピュータ5からの出力及びコントロールパネル16の操作に基づく出力に基づいて、各設定値をメモリ53に記憶可能とし、当該設定値に基づいて培養室13の温度、ガス濃度及びテーブル37の温度が制御される。また、各温度データやガス濃度データは、培養庫側制御装置C1により、コンピュータ5へ出力される。
【0036】
撮像装置側制御装置C2の出力側には、撮像装置3を構成するレンズ35、CCDカメラ36、ステージモータ39、40、光源47等が接続される。また、撮像装置側制御装置C2には、コンピュータ5とデータ通信を実行するための通信線51(画像取込用通信線、制御用通信線などから構成される)が接続されている。これにより、コンピュータ5からの出力に基づいて、観察する座標移動や光源27による照射ON/OFF、輝度調整、CCDカメラ36による画像取込などの制御が行われる。また、観察する座標位置データや光源の輝度データは、撮像装置側制御装置C2により、コンピュータ5へ出力される。
【0037】
コンピュータ5は、培養物観察装置1の制御及び各種データの取込、そのデータの参照・記憶を可能とするアプリケーションプログラム(記憶手段としてのメモリ9を内臓)を備えており、接続されるディスプレイ4の表示画面に各種データや取得画像(顕微鏡画像)を表示可能とする。各種設定は、ディスプレイ4に表示される画面に従って、数値入力や決定操作を行うことによって実行することが可能とされる。また、コンピュータ5には、操作手段としてマウス8が接続されている。
【0038】
次に、本実施例の培養物観察システムSの動作について説明する。コントロールパネル16、又は、コンピュータ5を操作することにより、培養室13における培養条件、本実施例では、庫内温度、庫内CO2ガス濃度、O2ガス濃度を設定する。ここでは、庫内温度は+37.0℃、CO2ガス濃度は5.0%、O2ガス濃度は5.0%とする。
【0039】
これに基づき培養庫側制御装置C1は、庫内ヒータ19、扉ヒータ18、ステージヒータ41の通電制御を行い、培養室13及びテーブル37の温度を設定温度である+37.0℃に維持する。具体的には、庫内温度センサ26が+36.5℃に低下した場合に、庫内ヒータ19及び扉ヒータ18を通電し、+37.5℃に上昇した場合に庫内ヒータ19及び扉ヒータ18を非通電とする。また、ステージ温度センサ46が+36.5℃に低下した場合に、ステージヒータ41を通電し、+37.5℃に上昇した場合にステージヒータ41を非通電とする。
【0040】
このように、庫内ヒータ19と扉ヒータ18は、ステージヒータ41とは独立して温度制御が行われる。この場合において、本実施例では、培養庫側制御装置C1は、テーブル37の温度を培養室13内の温度以下であって、培養物としての細胞の培養に適した温度に制御する。即ち、制御装置C1は、テーブル37の温度を培養室13内の温度と同じか、若しくは、培養室13内の温度よりも低く、且つ、細胞の培養に適した温度(本実施例では+36.5℃)より高い温度となるように制御を行う。
【0041】
これにより、常に培養室13内の空気温度をテーブル37の温度以上とすることが可能となる。従って、テーブル37の保持穴43に設置された試料容器42上部の温度(培養室13内の空気温度に近似)がテーブル37に接触する試料容器42下部の温度(テーブル37の温度に近似)より低くなることで、試料容器42内面に結露が発生する不都合を回避することが可能となる。
【0042】
そのため、テーブル37に設置された試料容器42内の細胞の培養に適した温度を維持しつつ、容器内面に発生する結露を回避することが可能となるため、該結露により、試料容器42を介して行われる細胞の撮影に結露が邪魔となる不都合を回避することができる。これによって、テーブル37上に設置された細胞を適切に観察することが可能となる。
【0043】
また、培養庫側制御装置C1は、CO2ガス濃度センサ27及びO2ガス濃度センサ28により検出される培養室13内の各ガス濃度(CO2ガス濃度、O2ガス濃度)に基づき、CO2ガス電磁弁24、O2ガス電磁弁25、排気弁30の開閉制御を行い、培養室13内を設定ガス濃度(本実施例では、CO2ガス濃度は5.0%、O2ガス濃度は5.0%)に維持する。
【0044】
これにより、培養室13内は、上述した如く設定された温度、ガス濃度等とすることが可能となる。そのため、培養室13内に設けられるテーブル37の各保持穴43に細胞等を収容した各試料容器42を設置することで、当該培養条件によって、該細胞の培養を行うことが可能となる。尚、当該テーブル37に設置された細胞等は、詳細は後述する如く撮像装置3によって、観察可能とされる。また、本実施例では、培養室13内に複数の棚板7が架設されていることから、当該棚板7に培養物(細胞等)を収容した容器を載置することで、同培養条件によって、該細胞の培養を行うことが可能となる。
【0045】
従って、撮像装置3による観察対象とされる細胞(培養物)以外の他の細胞(培養物)も同一の装置によって培養することが可能となる。これにより、一度に培養可能とされる細胞(培養物)の収容量拡大を図ることが可能となる。また、格別に培養を行うためだけの装置、即ち、撮像装置を備えていないCO2インキュベータを設置することなく、培養のみ、及び、培養しつつ該培養状況の観察の両者を実行することが可能となり、利便性の向上を図ることが可能となる。
【0046】
次に、上記培養条件によって培養が行われている細胞(培養物)の撮像(観察)動作について、図6乃至図10を参照して説明する。撮像装置3は、コンピュータ5からの出力に基づき制御されるため、以下、コンピュータ5に接続されるディスプレイ4の表示画面に従って、コンピュータ5で実行されるコンピュータプログラムについて説明する。
【0047】
先ず初めに、コンピュータ5は、コンピュータプログラムを起動することで、ディスプレイ4の表示画面には、図10に示すような「細胞観察システム」の初期画面が表示される。この「細胞観察システム」の初期画面に表示される「観察設定」を選択し、当該「観察設定」内における図示しない「撮影ポイントの設定」を選択することにより、図6に示されるような「撮影ポイントの設定画面」が表示され、当該画面において、各ステージにおける撮影ポイントの設定を行う。この「撮影ポイントの設定画面」には、「撮影ポイントの設定」、「現在位置の画像情報」、「現在位置」などが表示される。
【0048】
「現在位置の画像情報」には、現在のCCDカメラ36により撮影された顕微鏡画像が表示される(リアルタイム表示)。「現在位置」には、テーブル37全体の表示に対する現在の撮影位置が表示される。本実施例では、撮像装置3にて撮影される観察対象は、テーブル37の6つの保持穴43に設置される試料容器42内の細胞である。「現在位置」に示すように、テーブル37は30°単位で区画される12ステージで構成されているものとし、「現在位置」として、各ステージNo.、X座標、Y座標、Z座標が表示されると共に、大まかな現在の撮影位置が「+」として表示される。
【0049】
ここで、X座標、Y座標は、テーブル37を回転移動用ステージモータ39によって回転駆動、若しくは、直線移動用ステージモータ40を駆動させることで移動される量(移動量)によって決定されるものであり、Z座標は、対物レンズ44を上下に移動させることで移動される量(移動量)によって決定されるものである。尚、これら各座標は、画面上の「ステージ初期化」ボタンを操作することで、原点を決定することができ、これに対する移動量を計算することで、現在撮影される位置(移動位置)が決定される。
【0050】
また、現在位置は、「撮影ポイントの設定画面」に表示される「X/Y移動」、及び「Focus」の各矢印ボタンを操作することで、任意に移動させることが可能となっている。尚、制御装置C2は、当該ボタン操作に基づき、各ステージモータ39、40等を駆動し、テーブル37を回転若しくは、前後移動させることで、テーブル37上の細胞を任意に対物レンズ44にて観察可能な位置に移動する。
【0051】
ここで、「Focus」とは、対物レンズ44を上下に移動させるボタンであり、0から+5及び−5段階に分けて移動させることが可能である。これによって、撮影対象となる細胞のピントを任意に選択することが可能となる。また、「AF」ボタンは、オートフォーカスボタンであり、当該ボタンを操作することによって、自動で対物レンズ44を上下に移動させ、鮮鋭度の高いZ座標(位置)を検出してフォーカス(焦点を合わせる)する。
【0052】
このとき、コンピュータ5は、制御装置C2を介して対物レンズ44を上限値から下限値まで移動させ、各Z座標(各位置)における鮮鋭度を検出する。そして、所定の鮮鋭度以上のZ座標を鮮鋭度と共にメモリ9に記憶する。そして、オートフォーカス終了時には、最も鮮鋭度の高かったZ座標(位置)においてフォーカス(焦点を合わせ)した顕微鏡画像を「現在位置の画像情報」に表示する。
【0053】
この「AF」ボタンの例えば上下には、図示しない「上AF」ボタン及び/又は「下AF」ボタンを設ける。「下AF」ボタンを操作することにより、「現在位置の画像情報」には、メモリ9に記憶されている次に鮮鋭度の高い画像(オートフォーカス操作終了直後の状態では、最も鮮鋭度の高い画像が表示されていたため、次に表示される画像は、二番目に高い鮮鋭度のZ座標における顕微鏡画像となる)が表示される。
【0054】
更に「下AF」ボタンを操作することにより、順次、メモリ9に記憶されている鮮鋭度の低い画像が表示される。尚、「上AF」ボタンを操作することにより、現在表示されている顕微鏡画像よりも鮮鋭度の高い顕微鏡画像を「現在位置の画像情報」に表示する。
【0055】
例えば、図11に示される試料容器42内には、蓋部分(上面内壁)に水滴や細胞が付着しており、容器42の底面に細胞がある。この他にも、培地等の液面に細胞があり、培地(液中)に細胞が浮遊している。当該試料容器42内の細胞を観察対象とし、オートフォーカスボタンを操作すると、複数点、本実施例では6箇所において所定の鮮鋭度以上の座標が取得され、メモリ9に記憶された。ここで、最も鮮鋭度の高かったZ座標(位置)における顕微鏡画像は、培地等の液面にある細胞を観察したものであり、二番目に鮮鋭度の高かったZ座標(位置)における顕微鏡画像は、容器42底面にある細胞を観察したものであった。また、三番目、五番目、六番目のものは培地中に浮遊する細胞を観察したものであり、四番目のものは容器42の上面内壁に付着した水滴や細胞を観察したものであった。
【0056】
そのため、オートフォーカス操作終了後における「現在位置の画像情報」には、鮮鋭度の最も高かった培地等の液面にある細胞を観察した顕微鏡画像が表示される。その後、「下AF」ボタンを操作することにより、「現在位置の画像情報」には、次に鮮鋭度の高かった容器42底面にある細胞を観察した顕微鏡画像が表示される。更に、「下AF」ボタンを操作すると、「現在位置の画像情報」には、順次鮮鋭度に応じて顕微鏡画像が表示される。「上AF」ボタンを操作すると、現在表示されている「現在位置の画像情報」における顕微鏡画像に次いで鮮鋭度の高い顕微鏡画像が表示される。
【0057】
尚、何れかの鮮鋭度の高いZ座標に移動した状態で、更に、「Focus」の各矢印ボタンを操作することで、設定された単位ごとに0から+5及び−5段階に分けて移動させることが可能である。
【0058】
これにより、同一の撮影位置(X座標、Y座標)における奥行き方向に対し、複数の撮像面に対する鮮鋭度の高いZ座標を自動で検出することが可能となるため、容易にそれぞれのZ座標における撮影ポイントを選択することが可能となる。そのため、奥行き方向の異なる位置における複数の培養物等の顕微鏡画像を容易に観察することが可能となる。
【0059】
また、オートフォーカスの操作によって得られた最も鮮鋭度の高い顕微鏡画像のみならず、それよりも低く、且つ所定の鮮鋭度以上の顕微鏡画像を、「上下AF」ボタンを操作することで、直接表示することが可能となるため、観察対象となる培養物を容易に撮影することが可能となり、利便性が向上される。
【0060】
通常、所定のZ座標において撮影された顕微鏡画像には、当該Z座標面上に位置する観察物が鮮明に表示され、これよりも奥行き方向に位置する物体は殆ど表示されない。また、オートフォーカス機能では、最も鮮鋭度の高いZ座標における顕微鏡画像を直接検出し、フォーカスすることが可能であるが、それよりも低く、且つ所定の鮮鋭度以上の顕微鏡画像を得ることは困難であった。そのため、オートフォーカス機能によって得られた顕微鏡画像では、目的とする細胞が表示されない場合がある。この場合には、オートフォーカス機能を使用することはできず、任意にZ座標(位置)を移動させ、目的とする細胞を検索しなけばならない。
【0061】
これに対し、本実施例では、所定の鮮鋭度以上の複数の顕微鏡画像を検出し、フォーカスする機能を備えており、各顕微鏡画像は、「上AF」「下AF」ボタンを操作することによって、任意にディスプレイ4の表示画面に表示することが可能となる。これにより、「上AF」「下AF」ボタンの操作によって表示される複数の顕微鏡画像から、目的とする観察対象物(細胞)を選択することが可能となる。これにより、観察ポイントの設定操作が簡素化される。
【0062】
また、X、Y、Z軸の各移動を操作する矢印ボタンは、移動量の比較的大きな粗動ボタンと、移動量の比較的小さな微動ボタンの両者を備えている。これら粗動ボタン及び微動ボタンは、「撮影ポイントの設定画面」に表示される「座標移動量の設定」ボタンを操作することで、図7に示す「座標移動量の設定画面」を表示し、当該画面において各移動量単位を設定することが可能となる。この「座標移動量の設定画面」では、「X軸ステージターン移動量」、「Y軸ステージスライド移動量」、「Z軸フォーカス移動量」のそれぞれについて、粗動ボタン及び微動ボタンを一度操作した際の移動量を数値入力することで設定することができる。尚、本実施例では、各X座標、Y座標、Z座標は、各ステージモータ39、40及び対物レンズ44を上下動するモータによって変更されるものであり、これらモータはパルス制御によって移動量制御を行うことから、パルス数値にて設定を行う。これにより、観察座標を決定に際し、効率的に座標移動を行うことが可能となる。
【0063】
また、「撮影ポイントの設定画面」では、「現在位置の画像情報」領域の任意の位置(任意の座標)にマウスカーソル位置移動させ、その状態で、コンピュータ5に接続されるマウス8の左ボタンをダブルクリックすることにより、当該選択位置を「現在位置の画像情報」領域の中央に移動(図8の状態)させる、即ち、当該座標を画像表示領域の中央となるように座標を移動させることが可能となる。これにより、「現在位置の画像情報」領域に、観察対象とする細胞を中央に移動させた顕微鏡画像を表示することが可能となり、観察環境を整備することが可能となる。
【0064】
更に、この「撮影ポイントの設定画面」では、「現在位置の画像情報」領域内にマウスカーソル位置を移動させ、その状態でマウス8の右ボタンを一度クリックすることにより、「現在位置の画像情報」領域(顕微鏡画像内)にX軸とY軸のそれぞれのスケール表示を行う十字型スケールが表示される(図9)。この十字型スケールは、X軸、Y軸共に、例えば、10μm、50μm、100μmごとに、異なる長さ(本実施例では、スケールが大きくなる程長く表示される)の目盛りが表示される。尚、このスケール表示に付される目盛りの単位は、これに限定されるものではなく、同画面において、任意に変更して、例えば、20μm、100μm、200μmのように表示可能としても良い。
【0065】
このスケール表示の原点(X軸とY軸の交点)は、マウス8を操作することにより、表示画面上のマウスカーソル位置を中心に移動可能とされる。そのため、「現在位置の画像情報」領域に表示される任意の細胞の近傍(特定の位置)にスケール表示を移動させることにより、一目で観察対象である細胞の寸法を確認することが可能となる。従って、観察対象である細胞の大体の寸法を推測に依拠することなくスケール表示により確認することが可能となり、適切な細胞(細胞培養)観察を実現することが可能となる。
【0066】
また、このスケール表示は、撮像装置3によって観察される光学的に可変とされる倍率(撮影倍率)や、ディスプレイ4の表示画面の大きさなどによって変更する。また、コンピュータ5に撮像装置3から取得された画像(顕微鏡画像)をデジタル処理することによって、表示倍率を変更とした場合においても、当該表示画面に表示される大きさに応じてスケール表示の目盛り単位を変更する。表示倍率が大きくなった場合には、スケール表示の各目盛り単位当たりの大きさ(寸法)を大きく表示し、表示倍率が小さくなった場合には、スケール表示の各目盛り単位当たりの大きさ(寸法)を小さく表示する。
【0067】
そのため、撮像装置3による撮影倍率が変更された場合や、表示倍率が変更された場合であっても、適切なスケール表示を実現することが可能となり、観察対象となる細胞の大体の寸法をより適切に把握することが可能となる。
【0068】
尚、このスケール表示は、もう一度、マウス8を右クリックすることで、表示位置を固定することが可能であり、更にもう一度右クリックすることで、スケール表示を非表示(解除)することができる。
【0069】
他方、「撮影ポイントの設定画面」に表示される「撮影ポイントの設定」には、「試料選択」、「使用ステージNo.」、「撮影ポイントの選択」、「Z−Stack」「LED調光」、「白黒/カラー」の選択が表示されている。
【0070】
「試料選択」には、予め登録された試料名が表示される。図6における表示では、試料名は「1 AAA」であり、使用ステージNo.は12である。ここで、「ポイント登録」ボタン(同図ではグレイアウトされている。)を操作することで、「現在位置」に表示された現在の撮影位置(X,Y,Z)を、当該ステージの撮影ポイントの1つとして登録することが可能である。尚、このとき、当該試料が収容されている試料容器42に対応付けて、上記Z座標をフォーカスポイント初期値として別途登録するようにしている。これについては後述する。
【0071】
そして、「撮影ポイントの選択」では、登録No.毎に予め登録されている各撮影ポイントのX、Y、Z座標がメモリ9から読み出されて右側に詳細表示される。これにより、そのステージに置かれた試料容器42に収容されている試料(細胞)が複数ある場合でも、それぞれの試料に対応させて撮影ポイントを設定し、記憶しておくことができると共に、撮影ポイントを選択して「選択中の撮影Pt.へ移動」ボタンを操作することで、所望の試料を撮影位置へ直接移動させることができるものである。尚、この移動後の撮影ポイントは、「現在位置」において、X、Y、Z座標が表示される。
【0072】
また、「Z−Stack」では、タイムラプス撮影の観察座標ごとに、各撮影座標(XY座標)に対するフォーカス(Z座標)を±5ポイントで登録でき、またその間隔距離も設定できる。「LED調光」では、同様にタイムラプス撮影の観察座標ごとに、光源47であるLEDの輝度設定が可能であり、「白黒」を選択又は非選択とすることで、タイムラプス撮影の観察座標ごとに、撮影形態として白黒であるかカラーであるかを設定することができる。また、ステージNo.を指定し、そのステージ基点への移動が可能である。
【0073】
ところで、新しい試料(細胞)を導入して培養および観察を開始する際には、その試料そのものの情報、例えば、検体番号、検体の種類、管理者名等を登録すると共に、その試料が置かれた培地の情報や試料容器の種別等の情報、容器が置かれたステージの情報(ステージNo.)等をその試料に関連付けて先ず登録する。試料容器42は通常、シャーレを使用するが、製品毎(種別毎)にガラスの厚みなど特性が異なり、それが撮影に影響を与えるので、どの試料容器42を使用しているかその種別情報を予め登録するのである。そして、上述したように試料毎に撮影ポイントを設定する。これは即ち、培地中に置かれた試料(細胞)を見つけてフォーカスを当てることに他ならない。
【0074】
ここで、受精卵の培養・観察においては、通常、1つの培地に受精卵を1つだけ置いて培養する。観察すべき受精卵が複数ある場合は、受精卵の数だけ培地を形成し、それぞれに1個ずつ受精卵を置いて培養する。培地は1つの試料容器に複数あっても構わない。このとき、培地中の受精卵の位置、この場合、対物レンズ44から見た深さ方向の位置、即ちZ座標は、どの培地またどの受精卵においてもほぼ同じ値になることが分かっている。
【0075】
本実施例では、「ポイント登録」ボタンを操作することにより、そのときの撮像面のZ座標を、そのとき観察対象となっている試料が収容された試料容器42に対応付けて、フォーカスポイント初期値としてメモリ9に記憶することができる。そこで、例えば、ある培地において、オートフォーカス機能等を使って目的とする細胞を見つけたら、必要に応じて「Focus」の各矢印ボタンを操作して最適なピントに調整し、しかる後、「ポイント登録」ボタンを操作する。これにより、当該試料に関連付けられた試料容器42に対応させて、現在のZ座標(位置)が記憶される。
【0076】
そして、実施例では、「撮影ポイントの設定画面」に移行したとき、当該試料に関連付けられてメモリ9に記憶された試料容器42の情報を参照し、フォーカスポイント初期値が記憶されていれば、その値に従って対物レンズ44の位置を調整し、その位置でフォーカスさせた(焦点を合わせた)状態の顕微鏡画像を撮影し、最初に表示するようにしている。
【0077】
これにより、1つの培地で受精卵を見つけて撮影ポイントを設定することで、次に同じ試料容器に載っている別の培地の試料、あるいは容器の種別が共通の別の試料容器に載っている別の試料の撮影ポイントを設定する際には、観察対象の受精卵がある水平面に最初からほぼピントが合った状態で顕微鏡画像が表示されて観察を始めることができる。そのため、「X/Y移動」の各矢印ボタンを操作して撮影位置(X座標、Y座標)を調整するだけで、容易に受精卵を見つけることができるようになる。これにより、培地中のどこに受精卵があるか分からない状態で受精卵を探す作業に比べて、極めて簡単に短時間で受精卵を見つけることができるものである。
【符号の説明】
【0078】
S 培養物観察システム
C1 培養庫側制御装置
C2 撮像装置側制御装置
1 培養物観察装置
2 培養庫(培養手段)
3 撮像装置(撮像手段)
4 ディスプレイ(表示手段)
5 コンピュータ(制御手段)
6 撮像室
7 棚板
15 断熱扉
18 扉ヒータ
19 庫内ヒータ
23 ガス供給口
24 CO2ガス電磁弁
25 O2ガス電磁弁
26 庫内温度センサ
27 CO2ガス濃度センサ
28 O2ガス濃度センサ
32 送風機用モータ
35 レンズ
36 CCDカメラ
37 テーブル
38 回転軸
39 回転移動用ステージモータ
40 直線移動用ステージモータ
41 ステージヒータ
42 試料容器
43 保持穴
44 対物レンズ
46 ステージ温度センサ
47 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養物の培養に適した環境を構成するための培養手段と、前記培養物の顕微鏡画像を撮影するための撮像手段と、該撮像手段により撮影された顕微鏡画像を表示するための表示手段と、該表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、撮影位置とフォーカス位置を記憶する記憶手段を備えると共に、指示に応じて現在の撮影位置と現在のフォーカス位置とを前記記憶手段に記憶しておき、新しい培養物の撮影に際して、前記記憶手段に記憶されたフォーカス位置を初期値として前記撮像手段をフォーカス設定し、その状態で撮影した顕微鏡画像を前記表示手段に初期表示することを特徴とする培養物観察システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記培養物を収容する試料容器の情報を前記記憶手段に記憶するものであり、前記フォーカス位置を前記試料容器の情報として記憶することを特徴とする請求項1に記載の培養物観察システム。
【請求項3】
前記制御手段は、新しい培養物の撮影に際して、先ず、当該培養物を収容する試料容器を当該培養物に関係付けて前記記憶手段に登録し、当該試料容器の情報に前記フォーカス位置が記憶されていた場合、そのフォーカス位置を初期値として前記撮像手段をフォーカス設定し、その状態で撮影した顕微鏡画像を前記表示手段に初期表示することを特徴とする請求項2に記載の培養物観察システム。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記試料容器が置かれるステージを複数備え、前記制御手段は、前記複数のステージ毎に前記撮影位置を記憶することを特徴とする請求項3に記載の培養物観察システム。
【請求項5】
前記試料容器の情報は、容器の種別及び前記フォーカス位置を少なくとも含むことを特徴とする請求項3に記載の培養物観察システム。
【請求項6】
培養物の培養に適した環境を構成するための培養手段と、前記培養物の顕微鏡画像を撮影するための撮像手段と、該撮像手段を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、撮影位置とフォーカス位置を記憶する記憶手段を備えると共に、前記撮像手段により撮影される顕微鏡画像の鮮鋭度の高い位置を検出してフォーカスするオートフォーカス機能と、奥行き方向における他の鮮鋭度の高い位置を検出してフォーカスする機能とを併せて有するものであり、このオートフォーカス機能によりフォーカスして撮影した1つの顕微鏡画像を前記表示手段に表示し、指示に応じてそのとき表示している画像の撮影位置とフォーカス位置とを前記記憶手段に記憶しておき、新しい培養物の撮影に際して、前記記憶手段に記憶されたフォーカス位置を初期値として前記撮像手段をフォーカス設定し、その状態で撮影した顕微鏡画像を前記表示手段に表示することを特徴とする培養物観察システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−22322(P2011−22322A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166747(P2009−166747)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】