説明

基地局および無線リソース割り当て方法

【課題】再送の発生率が上昇するのを抑えてスループットを向上させる基地局を得ること。
【解決手段】本発明にかかる基地局は、移動体通信システムの基地局であって、収容している移動端末から下りチャネルの品質情報を取得する品質情報取得手段(復調・復号化部4,CQI受信部5)と、品質情報取得手段により取得された品質情報を品質情報が取得されてからの経過時間に基づいて補正するCQI補正部6と、CQI補正部6により補正された後の品質情報に基づいて移動端末への無線リソース割り当てを行うリソース割り当て部9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムにおいて、効率的な無線リンクの割り当てを実現する基地局および無線リソース割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体環境においても10Mbps以上を目指した高速移動通信が着目されている。高速移動通信を支援する技術の一つである無線リソースの割り当て技術としては、システムスループットを最大化するMAX C/I(Carrier to Interference ratio)法,完全な公平性を実現するRound Robin法,これらの中間的な性質のProportional Fairness法が用いられる。現実には公平性を保ちつつ、システムスループットを最大化する方法が用いられており、たとえば、受信環境の良い(セル中心付近)移動端末(以下、単に端末と記載する)には高速通信を割り当てる一方、受信環境の悪い(セルエッジ付近)端末には低速通信を割り当てる。
【0003】
非特許文献1および2には、無線リソース割り当てを支援する情報として、チャネル品質指標(Channel Quality Indicator;以下CQIと表す)を用いる方法が開示されており、この方法では、端末がCQIを基地局にフィードバックすることによって、上記受信環境に応じた割り当てを基地局が実施できるようにしている。
【0004】
このCQIを用いた無線リソースの割り当て方法では、端末は、測定した受信チャネルの品質をCQI値に変換し、CQI報告タイミングにおいて、基地局へそのCQI値を報告する。CQI値の報告には周期的報告と非周期的報告とがあるが、周期的報告の場合、その報告周期は端末収容台数や移動状態によって決められる。基地局は、端末から報告されたCQI値に基づいて無線リソースの割り当てを行うが、端末からのCQI値の報告がない場合には、最後に報告されたCQI値(過去に報告されたものの中で最新のCQI値)に基づいて無線リソース割り当てを行う。
【0005】
ここで、CQI値を周期的に報告するようにした場合、時間の経過とともに、報告されたCQI値と実際のチャネル品質との間で乖離が発生してしまい、実際のチャネル品質に即した無線リソース割り当てが行われない。たとえば、実際のチャネル品質よりCQI値が小さい(CQI値が示す品質が実際の品質よりも悪い)場合、割り当て結果に従った通信での伝送レートが、本来伝送可能な伝送レートよりも低くなってしまう。一方、実際のチャネル品質よりCQI値が大きい場合には、基地局からの伝送データを端末が正しく受信できない確率が極めて高くなるため、再送が起こりやすくなり大きな遅延の発生に繋がってしまう。
【0006】
そのため、この問題を改善するための検討が以前より盛んに行われてきており、たとえば、PER(Packet Error Rate;パケット誤り率)を利用してCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいて無線リソースを割り当てる技術が開示されている(下記特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2004−297232号公報
【非特許文献1】3GPP TS36.213 V8.1.0 2007年11月
【非特許文献2】3GPP TS25.214 V8.0.0 2007年11月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来のCQI値を補正した上で無線リソースを割り当てる技術では、PERが得られるまでに多大な時間を要し、PERが得られるまでの間は補正後のCQI値を得ることができない、すなわち、補正後のCQI値に基づいた無線リソース割り当てを実施できない期間が存在し、これに伴ってスループットが劣化する、という問題があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、従来よりも高スループットを実現する基地局および無線リソース割り当て方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、移動体通信システムの基地局であって、収容している移動端末から下りチャネルの品質情報を取得する品質情報取得手段と、前記品質情報取得手段により取得された品質情報を当該品質情報が取得されてからの経過時間に基づいて補正する補正手段と、前記補正手段により補正された後の品質情報に基づいて移動端末への無線リソース割り当てを行うリソース割り当て手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、常に、下りチャネルの実際の通信品質を考慮して無線リソース割り当てを行うことができるので、再送率が上昇するのを抑えてスループットを向上させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明にかかる基地局および無線リソース割り当て方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる基地局の実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示した基地局1は、送受信ユニット2、リソース割り当て部9、バッファ部10および選択部11を備える。
【0014】
図1に示した基地局1の各部の動作について説明する。送受信ユニット2の受信機2aは、RF部3、復調・復号化部4、CQI受信部5およびCQI補正部6を備えており、RF部3は、端末から送信されCQI信号を含んだ制御信号を受信し、受信信号に対して所定の周波数変換処理および帯域外雑音処理を行い、得られた信号を復調・復号化部4に供給する。復調・復号化部4は、RF部3から受け取った信号に対して、当該信号に実施されている符号化および変調の各方式に応じた復調処理および復号処理を実行し、元の信号(端末で符号化および変調される前の信号)を得る。また、得られた信号が制御信号の場合、その制御信号からCQI信号を抽出し、CQI受信部5に供給する。CQI受信部5は、復調・復号化部4から受け取ったCQI信号からCQI情報(上記非特許文献2で定義されたCQI値)を抽出し、CQI補正部6に供給する。CQI補正部6は、CQI受信部5から受け取ったCQI情報が示すCQI値を、当該CQI値を受信してから(受け取ってから)の経過時間の情報に基づいて補正する。なお、復調・復号化部4およびCQI受信部5が品質情報取得手段を構成する。
【0015】
受信機2aのCQI補正部6により補正された後のCQI値はリソース割り当て部9に供給され、リソース割り当て部9は、CQI補正部6から受け取った補正後のCQI値と、バッファ部10に格納された各ユーザデータのバッファ量やその他の優先度情報とに基づいて無線リソース割り当てを行う。なお、この無線リソース割り当ては、1サブフレームに1回実施する。上記その他の優先度情報としては、伝送するデータの種別(QoS;Quality of Service),UE Capability,などがある。
【0016】
バッファ部10は、各端末へ送信するユーザデータをユーザ(端末)毎に個別に保持しており、選択部11は、上記リソース割り当て部9による無線リソース割り当て結果に従い、次に送信するユーザデータをバッファ部10から読み出す。選択部11により読み出されたユーザデータは送受信ユニット2に供給される。
【0017】
送信機2bは、RF部7および符号化・変調部8を備えており、選択部11からユーザデータを受け取ると、符号化・変調部8で所定の符号化処理および変調処理を行い、得られた信号をRF部7が無線周波数帯に変換して端末へ送信する。
【0018】
図2は、本実施の形態の基地局1と通信する端末の構成例を示す図である。図2に示した端末は、RF部21および26と、復調・復号化部22および23と、チャネル品質測定部24と、符号化・変調部25と、を備える。
【0019】
図2に示した端末の各部の動作について説明する。RF部21は、基地局1からのRF信号を受信し、受信信号に対して所定の周波数変換処理および帯域外雑音処理を行い、得られた信号を復調・復号化部22および23に供給する。
【0020】
復調・復号化部22は、RF部21から受け取った信号に対して所定の復調・復号処理を実行して下りリンクデータを受信し、IPパケットデータ等を得る。一方、復調・復号化部23は、RF部21から受け取った信号から、例えばパイロット信号を抽出し、チャネル品質測定部24に供給する。チャネル品質測定部24は、受け取ったパイロット信号に基づいてCQI値を算出する。例えば、パイロット信号の平均値をS、分散をIとしてSIR(Signal to Interference Ratio)を計算し、得られたSIRをCQI値に変換して符号化・変調部25に供給する。この時、上記非特許文献2に記載された様に、報告するCQI値は端末がブロック誤り率0.1(10%)以下で受信できる最大の値とする。
【0021】
符号化・変調部25は、受け取ったCQI値に対して所定の処理を実行して符号化および変調を行い、RF部26は、符号化・変調部25から出力された信号を無線周波数帯の信号に周波数変換した後、基地局1に向けて送信する。
【0022】
つづいて、上述した本実施の形態の基地局1による特徴的な動作、すなわち、配下の各端末から通知されたCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいて配下の各端末に無線リソースを割り当てる動作について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図3は、本実施の形態の基地局1が実行するCQI補正動作を説明するための図である。図3では、横軸を時間(サブフレーム[1ms]単位)、縦軸を端末における受信チャネル品質(CQI値)を表しており、また、端末における実際の受信チャネル品質30と、端末から基地局1に対する受信チャネル品質(CQI値)の通知タイミング31と、基地局1がCQI補正動作を実行して得られるCQI補正値32(補正後のCQI値)と、を示している。図3に示したように、CQI値は、白丸で示した所定の通知タイミング31で端末から基地局1に伝送される。
【0024】
基地局1は、上記所定のタイミング(図示した通知タイミング31)で端末から通知されてくるCQI値を上りリンク情報として受信し、このCQI値を補正して得られた補正後のCQI値(1回目の補正を実行する前は通知されたCQI値そのもの)に基づいて、端末へ無線リソースを割り当てる。
【0025】
ここで、CQI値は、上記非特許文献2のSec.6A.2.3で示されたTable7A〜7Gに記載されたとおり31種類の値(0〜30)からなる。なお、CQI値のそれぞれの間隔は1dBステップで定義されている。また、端末はブロック誤り率10%を達成できる最大のCQI値を報告することとなっている。そのため基地局1は、なんらかの優先順位付けで各端末のスケジューリングを行いながら、各端末から通知されたCQI値を上限として、各端末に対して無線リソース割り当てを行うことにより、端末でのブロック誤り率が10%以下となるようにする。
【0026】
なお、CQI値は必ずしも毎サブフレームで通知されるわけではない。図3では4サブフレーム周期で通知する場合の例を記載しているが、実際の通信システムでは数10サブフレーム周期での通知となりうる。
【0027】
基地局1による無線リソース割り当て動作例をさらに詳細に示すと、基地局1は、CQI値を通知されてからの経過時間を観測し、経過時間に基づいてCQI値を補正しながら無線リソースの割り当てを行う。具体的には、CQI補正部6が、端末から通知されたCQI値を、所定時間が経過するごとに減少させることにより補正されたCQI値を得る。例えば、5無線フレーム経過後に1dB減少させるように制御を行う。これは、ある端末から通知されたCQI値が「30」であった場合(非特許文献2のSec.6A.2参照)、5無線フレーム経過後に当該CQI値を「30」から「29」に補正することに相当する。また、補正を実施後さらに5無線フレーム経過後にも1dB減らす(通知された値から2dB減らす)ように制御を行う(CQI値を「29」から「28」に再度補正する)。そして、リソース割り当て部9が、CQI補正部6によって補正された後のCQI値に基づいて、各端末へ無線リソースを割り当てる。
【0028】
以上のような手順で無線リソースを割り当てることにより、基地局1は、経過時間の大きいCQI値(実際のチャネル品質よりも大幅に良好な品質を示しているCQI値)に基づいて無線リソース割り当てを行い、その結果、伝送失敗(NACK)となる確率を下げることができるため、下り回線のスループットを向上させることができる。
【0029】
このように、本実施の形態の基地局では、端末から通知されたCQI値を、通知されてからの経過時間に基づいて下げることにより補正を行い、得られた補正後のCQI値を用いて無線リソースの割り当て処理を実行することとした。これにより、CQI値の通知を受けた後に実際のチャネル品質が劣化するような環境において、通知されてからの経過時間が長いCQI値に基づいて無線リソース割り当てを行っても端末が受信成功する確率が格段に上がるため、チャネル利用効率(スループット)を向上させることができる。また、経過時間に基づいてCQI値を補正するようにしたので、常に、補正後のCQI値を用いて無線リソースを割り当てることができる。
【0030】
なお、上記説明では、所定時間が経過するごとに、CQI値を所定値(たとえば1dB相当)下げることとしたが、所定時間が経過した後はQPSK(Quaternary Phase Shift Keying)のみを用いる(変調多値数を下げる)ようにしても良い。また、所定時間が経過した後はCQIテーブルの下限のみを用いるようにしても良い。また、所定時間が経過した後は、そのCQI値の通知元の端末に対して無線リソースを割り当てないようにしても良い。これらの制御を適用した場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。更に、所定時間が経過した後に割り当てを行う場合、端末に対してCQI報告を強制させるようにしてもよい。
【0031】
実施の形態2.
つづいて、実施の形態2の基地局について説明する。上述した実施の形態1では、CQI値を一定の補正量で補正する基地局について示したが、過去のCQI値の変動を考慮して補正量を決定した上で補正を行うことにより、CQI値の補正精度を向上させることができる。そのため、本実施の形態では、過去のCQI値の変動を考慮して決定した補正量でCQI値を補正する基地局について説明する。なお、本実施の形態の基地局および端末の構成は実施の形態1の基地局および端末と同様である(図1および図2参照)。また、本実施の形態の基地局は、実施の形態1の基地局と比較してCQI値の補正動作のみが異なる。そのため、以下では、CQI値の補正を行うCQI補正部6の動作についてのみ説明する。
【0032】
図4および図5は、本実施の形態のCQI補正部6の動作を説明するための図である。図4は、ユーザA(端末A)およびユーザB(端末B)における下りチャネル品質(CQI値)の時間変動の一例を示している。ここでは、図示したような、一方のユーザ(ユーザA)における下りチャネル品質は変動が大きく、他方のユーザ(ユーザB)における下りチャネル品質は変動が小さい場合について考える。この場合、例えば変動の大きいユーザAは、CQI値をXAdB下げる補正動作を行い、これに対して、変動の小さいユーザBはCQI値をXBdB(ただし、XA<XBとする)下げる補正動作を行う。このように動作させると、経過時間が同じであっても、下りチャネル品質の変動が大きいユーザAのCQI値の方が早く減少していく。従って、下りチャネル品質の変動状況に対応させて高精度にCQI値を補正し、得られたCQI値で無線リソース割り当てを行うことができるため、下り回線のチャネル利用効率(スループット)をさらに向上させることができる。すなわち、変動量(下りチャネル品質の劣化量)が大きい端末に対しては、伝送失敗(NACK)となり再送が発生する確率を下げ、一方、変動量が小さい端末に対しては、必要以上に低い伝送レートでデータ伝送を行うことを防止できる。
【0033】
図5は、上記図4を用いて説明した動作をより詳細に説明するための図であり、図4と同様に、下りチャネル品質(CQI値)の時間変動の一例を示している。図5では、端末における実際の下りチャネル品質を実線で示し、また、端末が基地局へCQI値を通知するタイミングを白丸で示している。
【0034】
図5に示したように、本実施の形態のCQI補正部6は、CQI値が通知されないサブフレームタイミングでは、前回通知されたCQI値または前回の補正処理で得られた補正後のCQI値からステップサイズαだけ減じたものを補正後のCQI値とする。このステップサイズαは次式(1)を用いて算出されるCQI値の分散σに基づいて決定する。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、CQIAVEはCQI値の平均値であり、現在時刻から所定時間前までの間に報告されたCQI値の平均値である。たとえば、現在の時刻をτ0として、過去の16TTI(Transmit Time Interval)前までの間(τ-16TTI〜τ0までの間)に通知されたCQI値を平均して得られた値とする。
【0037】
CQI補正部6は、上式(1)を用いて算出した分散σを使用し、たとえばしきい値判定することによりステップサイズαを決定する。具体例を示すと、分散σを予め設定されていたしきい値σthと比較し、σ<σthの場合、ステップサイズαを1dBとし、σ≧σthの場合には、ステップサイズαを2dBとする。なお、平均値の算出に用いるCQI値を直近の16TTIに限定しているのは、古い情報を破棄することにより、現時点に近い端末受信状況を反映するためである。
【0038】
なお、上記説明では、分散σの算出はTTI毎に行っているように記述したが、複数TTIに一回だけ行うようにしてもよい。また、CQI値を通知された後1TTI目から補正を行うかのように記述したが、最初の数TTIはCQI値の補正を0にするようにしてもよい。また補正をステップ状にして、0〜K−1(TTI)すなわちCQI値を通知されてから後K−1番目までのTTIではステップサイズαを0、K〜2K−1(TTI)ではステップサイズαをN、2K〜3K−1(TTI)ではステップサイズαを2Nとしても構わない。もちろん、上記平均を行う期間を16TTI以外としてもよい。更に、上記説明では時間経過量に関わらずステップサイズαを一定の値としたが、例えば、時間経過が大きくなると共にα,1.5α,…のように補正量(ステップサイズ)を大きくしていってもよい。逆に、時間経過が大きくなると共に補正を行う頻度(実行周期)を短くするようにしてもよい。
【0039】
このように、本実施の形態の基地局では、過去に通知されたCQI値に基づいてCQI値の変動量(分散)を算出し、得られた変動量に基づいて、CQI値の補正処理で使用するステップサイズを決定することとした。これにより、実施の形態1の場合と比較してCQI値を高精度に補正することができ、スループットをさらに向上させることができる。
【0040】
実施の形態3.
つづいて、実施の形態3の基地局について説明する。本実施の形態では、実施の形態2とは異なる方法でCQI値の変動を考慮し、CQI値の補正処理で使用する補正量(ステップサイズ)を決定する基地局について説明する。具体的には、実施の形態2ではCQI値の分散値を用いてCQI補正量を決定するのに対して、本実施の形態では、CQI値の瞬時値と平均値を用いてCQI値の補正量を決定する。なお、本実施の形態の基地局は、実施の形態2の基地局と比較して、CQI補正部6がCQI値の補正量を決定する手順のみが異なる。そのため、CQI補正部6によるCQI値の補正量決定動作についてのみ説明する。
【0041】
図6は、本実施の形態のCQI補正部6によるCQI値の補正量(ステップサイズ)決定動作の一例を示す図である。本実施の形態のCQI補正部6は、CQI値の平均値と瞬時値を算出し、次式(2)を用いて補正量を決定する。
【0042】
γ=CQIAVE − CQIK …(2)
ここで、CQIAVEは過去Mサブフレーム分のCQI値の平均値、CQIkは最新のCQI報告値(瞬時値)である。
【0043】
CQI補正部6は、実施の形態2と同様に(たとえば上記γをしきい値判定することにより)ステップサイズαを決定する。具体例を示すと、上記γを予め設定されていたしきい値γthと比較し、γ<γthの場合、ステップサイズαを1dBとし、γ≧γthの場合には、ステップサイズαを2dBとする。なお、ここではCQI値の個数を所定数とるように記述したが、所定時間内に通知されたCQI値について平均化するようにしてもよい。
【0044】
以上のような手順でステップサイズαを決定した場合にも実施の形態2で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0045】
実施の形態4.
つづいて、実施の形態4の基地局について説明する。本実施の形態では、実施の形態2および3とは異なる方法でCQI値の変動を考慮し、CQI値の補正処理で使用する補正量(ステップサイズ)を決定する基地局について説明する。具体的には、CQI値の変動量(分散)および最新の報告値(最新のCQI値)に基づいて補正量を決定する基地局について説明する。なお、本実施の形態の基地局は、実施の形態2の基地局と比較して、CQI補正部6がCQI値の補正量を決定する手順のみが異なる。そのため、CQI補正部6によるCQI値の補正量決定動作についてのみ説明する。
【0046】
図7は、CQI値の信頼度特性を示す図であり、縦軸はCQI値の絶対値(端末における実際のチャネル品質に対応するCQI値)、横軸は経過時間を表す。図7に示したように、仮に端末から同時に通知された2つのCQI値(PおよびQ)の関係が「絶対値P>絶対値Q」であったとしても、各CQI値の分散の大小関係により、各CQI値の絶対値の大小関係が時間の経過と共に入れ替わる可能性がある。たとえば、絶対値Pの分散が大きく、かつ絶対値Qの分散が小さい場合、絶対値Pの変動量(落ち込み)が大きいため、経過時間による逆転現象が生じ、一定時間が経過した後は、「絶対値P<絶対値Q」となる(図7参照)。そのため、本実施の形態のCQI補正部6は、例えば図8に示したテーブルに従い、CQI値の分散と絶対値の双方に基づいてCQI値の補正量を決定する。すなわち、報告された(通知された)CQI値が大きくかつその分散も大きい場合、より大きな補正量(補正値)を採用し、一方、CQI値が小さくかつその分散も小さい場合には、他の場合よりも小さな補正量を採用する。
【0047】
図8は、本実施の形態のCQI補正部6がCQI値の補正量を決定する際に参照するテーブルの一例を示す図である。図8において、CQIthはCQI値の絶対値のしきい値であり、σthはCQI値の分散値のしきい値である。なお、これは実施の形態2で示したCQI値の補正量(ステップサイズ)決定手順に対して(CQI値の)絶対値のしきい値判定処理を加えたものということができる。なお、実施の形態3で示したCQI値の補正量(ステップサイズ)決定手順に対しても同様に、上記絶対値のしきい値判定処理を加えることが可能である。
【0048】
このように、本実施の形態の基地局では、実施の形態2または3で示したCQI値の補正量決定処理において、さらに、CQI値の絶対値を考慮してCQI値の補正量を決定することとした。これにより、CQI値の補正精度をさらに高めることができ、スループットをさらに向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明にかかる基地局は、移動体通信システムに有用であり、特に、端末から一定周期以上の間隔で通知されるCQI値に基づいて端末への無線リソース割り当てを行う場合に、再送率が上昇しないように考慮して無線リソースを割り当てる基地局に適している。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明にかかる基地局の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかる基地局と通信する端末の構成例を示す図である。
【図3】実施の形態1の基地局が実行するCQI補正動作を説明するための図である。
【図4】実施の形態2のCQI補正部の動作を説明するための図である。
【図5】実施の形態2のCQI補正部の動作を説明するための図である。
【図6】実施の形態3のCQI補正部によるCQI値の補正量(ステップサイズ)決定動作の一例を示す図である。
【図7】CQI値の信頼度特性を示す図である。
【図8】実施の形態4のCQI補正部がCQI値の補正量を決定する際に参照するテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 基地局
2 送受信ユニット
2a 受信機
2b 送信機
3、7、21、26 RF部
4、22、23 復調・復号化部
5 CQI受信部
6 CQI補正部
8、25 符号化・変調部
9 リソース割り当て部
10 バッファ部
11 選択部
24 チャネル品質測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体通信システムの基地局であって、
収容している移動端末から下りチャネルの品質情報を取得する品質情報取得手段と、
前記品質情報取得手段により取得された品質情報を当該品質情報が取得されてからの経過時間に基づいて補正する補正手段と、
前記補正手段により補正された後の品質情報に基づいて移動端末への無線リソース割り当てを行うリソース割り当て手段と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項2】
前記補正手段は、
前記経過時間および前記品質情報である最新品質情報よりも過去に取得された品質情報に基づいて、当該最新品質情報を補正することを特徴とする請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記過去に取得された品質情報に基づいてその分散値を算出し、さらに当該算出した分散値に基づいてステップサイズを決定し、前記最新品質情報が取得されてから所定時間が経過するごとに、当該決定したステップサイズで、当該最新品質情報を減少させていくことを特徴とする請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記過去に取得された品質情報に基づいてその平均値を算出し、さらに当該算出した平均値および前記最新品質情報に基づいてステップサイズを決定し、当該最新品質情報が取得されてから所定時間が経過するごとに、当該決定したステップサイズで、当該最新品質情報を減少させていくことを特徴とする請求項2に記載の基地局。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記過去に取得された品質情報に基づいてその分散値を算出し、さらに当該算出した分散値および前記最新品質情報に基づいてステップサイズを決定することを特徴とする請求項3に記載の基地局。
【請求項6】
前記補正手段は、
前記分散値がより大きくかつ前記最新品質情報の示す品質がより良好な場合ほど、より大きなステップサイズを採用することを特徴とする請求項5に記載の基地局。
【請求項7】
移動体通信システムにおいて、基地局が移動端末に対して無線リソースを割り当てる場合の無線リソース割り当て方法であって、
収容している移動端末から下りチャネルの品質情報を取得する品質情報取得ステップと、
前記品質情報取得ステップで取得した品質情報を、当該品質情報を取得してからの経過時間に基づいて補正する補正ステップと、
前記補正ステップで補正した後の品質情報に基づいて移動端末への無線リソース割り当てを行うリソース割り当てステップと、
を含むことを特徴とする無線リソース割り当て方法。
【請求項8】
前記補正ステップでは、
前記経過時間および前記品質情報である最新品質情報よりも過去に取得した品質情報に基づいて、当該最新品質情報を補正することを特徴とする請求項7に記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項9】
前記補正ステップでは、
前記過去に取得した品質情報に基づいてその分散値を算出し、さらに当該算出した分散値に基づいてステップサイズを決定し、前記最新品質情報を取得してから所定時間が経過するごとに、当該決定したステップサイズで、当該最新品質情報を減少させていくことを特徴とする請求項8に記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項10】
前記補正ステップでは、
前記過去に取得した品質情報に基づいてその平均値を算出し、さらに当該算出した平均値および前記最新品質情報に基づいてステップサイズを決定し、当該最新品質情報を取得してから所定時間が経過するごとに、当該決定したステップサイズで、当該最新品質情報を減少させていくことを特徴とする請求項8に記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項11】
前記補正ステップでは、
前記過去に取得した品質情報に基づいてその分散値を算出し、さらに当該算出した分散値および前記最新品質情報に基づいてステップサイズを決定することを特徴とする請求項9に記載の無線リソース割り当て方法。
【請求項12】
前記補正ステップでは、
前記分散値がより大きくかつ前記最新品質情報の示す品質がより良好な場合ほど、より大きなステップサイズを採用することを特徴とする請求項11に記載の無線リソース割り当て方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−303077(P2009−303077A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157176(P2008−157176)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】