説明

基地局制御装置及び無線リソース割当方法

【課題】セル境界に位置するユーザ端末のスループットを向上させること、及び、セルラ移動通信システムのトータルスループットの低下を抑制することを図る。
【解決手段】基地局コントローラ10が、ユーザ端末2がシングルサイト接続するときの周波数利用効率とマルチサイト接続するときの周波数利用効率との比較によって決定された該ユーザ端末2の通信方法であるシングルサイト接続又はマルチサイト接続に応じた無線リソースを、該ユーザ端末2と通信を行う基地局1で確保する無線リソース割当部と、マルチサイト接続を行うユーザ端末2の無線リソース割当頻度の増減を、該ユーザ端末2とマルチサイト接続を行う基地局1の数の増減とは逆にする無線リソース割当頻度制御部と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局制御装置及び無線リソース割当方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本国内の携帯電話サービスにおいては、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)およびCDMA2000(Code Division Multiple Access 2000)に代表されるIMT−2000(International Mobile Telecommunications 2000)と称される第3世代移動通信システムが普及してきている。さらに、そのIMT−2000の高度化システムおよびIMT−2000の次世代システムとして、IMT−Advancedと称される第4世代移動通信システムに関する標準規格が策定されつつある。
【0003】
IMT−Advancedは、低速移動時に1Gbpsの伝送速度を、高速移動時には100Mbpsの伝送速度をそれぞれ実現することを目標としている。このような高速通信を実現するためには、広帯域な周波数帯を使用した通信方式を利用することが必要になるが、そのような通信方式の一つとして、直交周波数分割多元接続(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:OFDMA)方式が知られている。OFDMA方式は、広帯域の周波数帯をサブキャリアと称する直交した狭帯域に分割し、各サブキャリアで情報を伝送する方式である。このOFDMA方式によれば、無線装置で生じる周波数特性をサブキャリア毎に補正したり、又、伝送路で生じる周波数特性の時間変動に対して適応的に周波数多重伝送および周波数分割多元接続を行ったりすることができることから、広帯域通信を実現する有力な伝送方式の一つとして注目されている。
【0004】
また、複数のアンテナを用いた伝送路マルチ化(Multiple Input Multiple Output:MIMO)技術は、送信側の複数のアンテナから個別に送信された信号を受信側の複数のアンテナで受信し、その受信信号から空間信号分離することで周波数利用効率の向上を図る技術として注目されている。
【0005】
セルラ移動通信システムは、複数の基地局を配置し、各基地局の通信エリア(セル)によって連続的な通信サービスエリアを構築するものであるが、セルラ移動通信システムに対し、OFDMA方式やMIMO技術を用いた通信方式を適用する場合、使用可能な周波数領域の制限により、全周波数帯域を各セルに割当てる指針が考えられる。この場合、基地局近傍に位置する移動局については、通信基地局からの所望信号が高いレベルで受信できると共に、隣接する基地局からの無線信号が距離減衰によりレベル低下するため、高い通信品質を確保でき、広帯域通信の効果としてユーザスループットの高速化が期待できる。しかし、セル境界に位置する移動局については、所望信号のレベルが距離減衰により低下するだけでなく、隣接基地局の無線信号が通信信号と同レベルの干渉信号となり、通信品質を大きく劣化させるため、広帯域通信の効果が十分に得られないという課題がある。この課題は、移動局よりも基地局の送信電力が大きいため、特に下り回線(基地局から移動局方向の回線)で顕著になる。
【0006】
その課題に対し、例えば特許文献1,2,3に対処方法が開示されている。この従来技術では、複数の基地局を制御する基地局コントローラを設け、基地局コントローラが、セル境界にいる移動局に対し複数の基地局が連携してMIMO技術等を用いた通信を行うように、複数の基地局を制御する。
【0007】
また、特許文献4に記載の従来技術では、各基地局(自セル基地局、他セル基地局)が、パイロット信号を含むパイロットチャネルと、少なくとも移動局との通信に必要な制御情報を含む制御チャネルと、ユーザデータの情報を含むトラヒックチャネルとを多重したOFDM信号を送信する。移動局は、自セル基地局からの希望信号と他セル基地局からの干渉信号を受信し、パイロット信号から取得したチャネル情報と受信した制御情報とに基づいて、MIMOにおける信号分離技術(例えば、最尤推定(Maximum Likelihood Detection:MLD)法など)を用いて希望信号と干渉信号とを検出し、他セル基地局からの干渉信号を除去して自セル基地局からの希望信号を得る。
【0008】
また、非特許文献1では、FFR(Fractional Frequency Reuse)技術を用いた基地局連携手法が提案されている。この非特許文献1に記載の基地局連携手法では、従来のFFRにおける外側セルに割当てるサブチャネル・グループに加えて、基地局連携MIMO送信用の新たなサブチャネル・グループを割当て、基地局連携通信を行うユーザ端末に対しては、当該基地局連携MIMO送信用に割当てたサブチャネル・グループ内の無線リソースを割当てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−134844号公報
【特許文献2】特開2007−043332号公報
【特許文献3】国際公開第2006/016485号パンフレット
【特許文献4】特開2009−100116号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】石井隼人、吉本明代、服部武、大関武雄、鈴木利則、“FFRを用いる複数基地局協調型MIMO伝送システムの通信容量の検討”、電子情報通信学会ソサエティ大会、B-5-48、p397、2009年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した特許文献1、2、3の従来技術を用いて基地局連携通信を行う場合、ある瞬間にあるセル境界に位置する一ユーザ端末が複数の基地局の無線リソースを占有する状態が発生する。これは、相対的に、基地局近くに位置し、高スループットを得ることができるはずの他ユーザ端末に対して、無線リソースの割当頻度を減少させるので、セルラ移動通信システムのトータルスループットが低下する一要因となる。また、特許文献4及び非特許文献1の従来技術は、セル境界におけるユーザスループットを向上させるための技術であるが、セルラ移動通信システムのトータルスループットの低下を抑制するという課題を解決するものではない。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、セル境界に位置するユーザ端末のスループットを向上させること、及び、セルラ移動通信システムのトータルスループットの低下を抑制することができる基地局制御装置及び無線リソース割当方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る基地局制御装置は、複数の基地局を配置し、各基地局の通信エリアによって連続的な通信サービスエリアを構築するセルラ移動通信システムにおいて、複数の基地局を制御する基地局制御装置であって、移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率とマルチサイト接続するときの周波数利用効率との比較によって決定された該移動局の通信方法であるシングルサイト接続又はマルチサイト接続に応じた無線リソースを、該移動局と通信を行う基地局で確保する無線リソース割当部と、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度の増減を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数の増減とは逆にする無線リソース割当頻度制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る基地局制御装置において、前記無線リソース割当頻度制御部は、シングルサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度に対して、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1に制限することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る基地局制御装置において、前記無線リソース割当頻度制御部は、マルチサイト接続を行う移動局を無線リソース割当候補に選択した回数を、移動局ごとにカウントするカウンタ部を有し、前記カウンタの値に基づいて、無線リソース割当候補になったマルチサイト接続を行う移動局に対し、無線リソースを割当てるか否かを判定することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る基地局制御装置において、前記無線リソース割当頻度制御部は、前記カウンタの値を、当該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数で剰余演算する剰余演算部を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る基地局制御装置において、前記無線リソース割当頻度制御部は、無線リソース割当候補の移動局を選択するときに用いる各移動局の評価値に対し、マルチサイト接続を行う移動局の評価値を該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1にすることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る基地局制御装置においては、移動局がマルチサイト接続するときの周波数利用効率が、該移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率よりも、「(所定の周波数利用効率向上率)×(該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数)」倍以上である場合にのみ、該移動局の通信方法としてマルチサイト接続を選択する通信方法選択部を備えたことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る無線リソース割当方法は、複数の基地局を配置し、各基地局の通信エリアによって連続的な通信サービスエリアを構築するセルラ移動通信システムにおける無線リソース割当方法であって、複数の基地局を制御する基地局制御装置が、移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率とマルチサイト接続するときの周波数利用効率との比較によって決定された該移動局の通信方法であるシングルサイト接続又はマルチサイト接続に応じた無線リソースを、該移動局と通信を行う基地局で確保するステップと、前記基地局制御装置が、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度の増減を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数の増減とは逆になるように制御するステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る無線リソース割当方法において、前記基地局制御装置は、シングルサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度に対して、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1に制限することを特徴とする。
【0021】
本発明に係る無線リソース割当方法においては、前記基地局制御装置又は移動局が有する通信方法選択部が、移動局がマルチサイト接続するときの周波数利用効率が、該移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率よりも、「(所定の周波数利用効率向上率)×(該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数)」倍以上である場合にのみ、該移動局の通信方法としてマルチサイト接続を選択するステップをさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、セル境界に位置するユーザ端末のスループットを向上させること、及び、セルラ移動通信システムのトータルスループットの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るセルラ移動通信システムの概略構成図である。
【図2】OFDM無線リソースの論理構成を示す概念図である。
【図3】本発明に係る無線リソース割当方法の一例である。
【図4】本発明に係る無線リソース割当方法の他の例である。
【図5】本発明に係る無線リソース割当方法の他の例である。
【図6】本発明に係る無線リソース割当方法の他の例である。
【図7】本発明に係る基地局コントローラ10の実施例1である。
【図8】図7に示す基地局コントローラ10に係る無線リソース割当方法の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る基地局コントローラ10の実施例2である。
【図10】図9に示す基地局コントローラ10に係る無線リソース割当方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るセルラ移動通信システムの概略構成図である。図1において、セルラ移動通信システムは、各々セルを提供する複数の基地局1、基地局1に無線接続して通信する移動局(ユーザ端末)2、及び、複数の基地局1を制御する基地局コントローラ10を有する。図1には、2台の基地局1(基地局識別子がAであるものとBであるもの)並びに、基地局1(A)が提供するセル3A及び基地局1(B)が提供するセル3Bが、例示されている。
【0025】
各基地局1は、バックボーンネットワーク4を介してコアネットワーク5に接続される。バックボーンネットワーク4及びコアネットワーク5は、それぞれルータ6を有する。基地局コントローラ10は、バックボーンネットワーク4内に設けられ、各基地局1と有線で接続される。
【0026】
本実施形態に係るセルラ移動通信システムにおいて、基地局1及びユーザ端末2は複数のアンテナを備え、基地局1とユーザ端末2が1対1で通信する場合も、複数の基地局1が連携して一ユーザ端末2と通信する場合も、MIMO技術を用いた伝送(MIMO伝送)を行うことが可能である。MIMO伝送の種類(MIMOモード)としては、最大比合成送信ダイバーシチ等の送信ダイバーシチ、時空間符号化、固有ビーム空間多重方式等の空間多重、及び、それらの組合せなどがある。
【0027】
また、本実施形態に係るセルラ移動通信システムにおいて、基地局1とユーザ端末2間の多元接続方式にはOFDMA方式を用いる。本実施形態では、論理的な無線リソースと物理的な無線リソースとの対応関係(マッピングの仕方)は、全ての基地局で共通であるとする。OFDMAとMIMO伝送を利用する場合、無線リソースは、時間領域と周波数領域と空間領域とから構成される。一ユーザ端末2に対し複数の基地局1が連携したMIMO伝送を行う場合、連携する複数の基地局には同じ無線リソースを割り当てる必要がある。
【0028】
基地局コントローラ10は、制御対象の基地局1の情報及び該基地局1に接続するユーザ端末2の情報を各基地局1から取得する。基地局コントローラ10は、制御対象の基地局1の全てついて、その無線リソースの割当を一括で行う。基地局コントローラ10は、無線リソース割当結果を各基地局1へ送信する。
【0029】
以下の説明において、「シングルサイト接続」とは一ユーザ端末2と一基地局1が1対1の通信を行うことを指し、「マルチサイト接続」とは一ユーザ端末2と複数の基地局1が1対多の通信を行うことを指す。
【0030】
基地局コントローラ10が複数の基地局1を制御して、セル境界に在るユーザ端末2に対し、複数の基地局が連携してMIMO伝送等を用いたマルチサイト接続を行うことにより、セル境界に在るユーザ端末2のスループットを向上させることができる。
【0031】
次に、図2から図6までを参照して、本実施形態に係る無線リソース割当方法の概念を説明する。以下、基地局識別子がAである基地局1を基地局Aと称し、基地局識別子がBである基地局1を基地局Bと称する。ここでは、マルチサイト接続は、基地局A及び基地局Bの2台が連携する、2基地局連携を想定する。
【0032】
図2は、基地局A、基地局Bの各OFDM無線リソースの論理構成を示す概念図である。図2において、横軸は時間(タイムスロット単位)、縦軸は周波数(サブキャリア単位)である。図2は論理構成を示し、縦軸の周波数は物理的なサブキャリア周波数には対応しない。このため、論理的な無線リソース割当結果は、さらに物理的な無線リソースにマッピングされる。無線リソースの割当単位であるリソースブロック(Resource Block:RB)は、複数のサブキャリアとOFDMシンボルとからなる。例えば、LTE(Long Term Evolution)では12個のサブキャリアと7個のOFDMシンボルとから1個のRBが構成される。
【0033】
ここでは、説明の便宜上、図2に示すように、1回の無線リソース割当スケジューリング(以下、単にスケジューリングと称する)に対して、基地局A及び基地局Bはそれぞれ6個のRBを有するとする。また、一ユーザ端末2に対して1個のRBを割当てるとする。また、スケジューリングの一回当たり、各基地局A、Bは8個のRBをいずれかのユーザ端末2に割り当てるとする。
【0034】
図3は、無線リソース割当方法の一例である。図3の例では、6台のユーザ端末2−1〜6(以下、UE(User Equipment)1〜6と称する)が存在している。UE1〜6のうち、UE1及びUE3がマルチサイト接続を行う。図3の無線リソース割当方法では、ユーザ間の公平性を保つため、一ユーザ端末2に割当てるRBの数が同数となるようにする。マルチサイト接続を行うユーザ端末2(UE1、UE3)に対しては、1回の無線リソース割当において、基地局A及び基地局Bの両方のRB(同一のサブチャネル及び同一のタイムスロットで構成されるRB)を割当てる必要がある。したがって、UE1及びUE3には、それぞれ、1回の無線リソース割当により、基地局Aの1個のRBと基地局Bの1個のRBとの合計2個のRBが割り当てられる。一方、シングルサイト接続を行うユーザ端末2(UE2、UE4、UE5、UE6)には、それぞれ、1個のRBを割り当てる無線リソース割当を2回ずつ行い、合計2個のRBを割り当てる。したがって、2基地局連携のマルチサイト接続を行うユーザ端末2は、シングルサイト接続を行うユーザ端末2に対して、無線リソース割当頻度が「1/(連携数)=1/2」となる。これにより、各UE1〜6には、2個ずつRBが割り当てられる。
【0035】
なお、3台の基地局1が連携する3基地局連携を行う場合、マルチサイト接続を行うユーザ端末2には、1回の無線リソース割当において、3台の基地局1が共通のRBを割り当てるので、各基地局1が1個のRBを割り当てることにより合計3個のRBが割り当てられる。このため、シングルサイト接続を行うユーザ端末2との公平性を保つために、3基地局連携のマルチサイト接続を行うユーザ端末2は、シングルサイト接続を行うユーザ端末2に対して、無線リソース割当頻度を「1/(連携数)=1/3」とする。
【0036】
上述の図3の無線リソース割当方法では、マルチサイト接続を行うユーザ端末2の無線リソース割当頻度を、シングルサイト接続を行うユーザ端末2の無線リソース割当頻度の「1/(連携数)」とする。これにより、一ユーザ端末2に割当てるRBの数が同数となるように調整し、ユーザ間の公平性を保つことができる。
【0037】
図4、図5は、無線リソース割当方法の他の例である。図4において、6台のUE1〜6うち、UE1、UE2及びUE5が基地局Aに所属し、UE3、UE4及びUE6が基地局Bに所属している。UE1及びUE3はマルチサイト接続が可能であり、他のユーザ端末2(UE2、UE4、UE5、UE6)はシングルサイト接続を行うとする。また、説明の便宜上、全てのユーザ端末2は、シングルサイト接続を行った場合、一RB当たりデータ量「1」を送信できるとする。また、UE1がマルチサイト接続を行った場合も、UE3がマルチサイト接続を行った場合も、シングルサイト接続に対するデータ送信量の向上度は同じとする。
【0038】
図4に、基地局A及び基地局Bが全ユーザ端末2に対してシングルサイト接続を行う場合の無線リソース割当例を示す。図4中の<1>は、各ユーザ端末2が割り当てられたRBで送信できるデータ量「1」を示す。図4において、セルラ移動通信システム(基地局A及び基地局B)のトータルの送信データ量は12である。
【0039】
図5に、UE1及びUE3がマルチサイト接続を行った場合の無線リソース割当例を示す。図5の例では、UE1及びUE3はマルチサイト接続を行うことにより、シングルサイト接続に比べて2倍のデータ量「2」を送信できるとする。ここで、上述の図3の無線リソース割当方法を用いる。これにより、2基地局連携のマルチサイト接続を行うUE1及びUE3は、シングルサイト接続を行うユーザ端末2(UE2、UE4、UE5、UE6)に対して、無線リソース割当頻度が「1/(連携数)=1/2」となる。したがって、図5に示すように、2基地局連携のマルチサイト接続を行うUE1及びUE3は、それぞれ、1回の無線リソース割当により2個のRBが割り当てられ、当該2個のRBにより、送信データ量「2」を得る。これに対して、シングルサイト接続を行うユーザ端末2(UE2、UE4、UE5、UE6)は、それぞれ、2回の無線リソース割当により2個のRBが割り当てられ、送信データ量「2」となる。
【0040】
上述の図4、図5の例では、両方とも、セルラ移動通信システム(基地局A及び基地局B)のトータルの送信データ量は12であり、マルチサイト接続を行うユーザ端末2の無線リソース割当頻度を「1/(連携数)」とすることにより、マルチサイト接続を行うことによるセルラ移動通信システムのトータルスループットの低下を防止することができる。但し、マルチサイト接続を行うユーザ端末2も、シングルサイト接続を行うユーザ端末2も、データ送信量は2であり、マルチサイト接続を行うことによるスループット向上効果はない。
【0041】
ここで、マルチサイト接続を行うことによりn倍のユーザスループット向上効果を得るには、マルチサイト接続を行うことによりシングルサイト接続に比べて「n×2=n×(連携数)」倍のスループット向上を得る必要がある。図6は、図5の例に対し、マルチサイト接続を行うユーザ端末2のスループットをシングルサイト接続よりも向上させる無線リソース割当方法の例である。図6の例では、マルチサイト接続を行うUE1及びUE3は、それぞれ、2個のRBを用いてデータ送信量「4」を実現する。これは、マルチサイト接続を行うことにより2倍のユーザスループット向上効果を得るために、マルチサイト接続を行うことによりシングルサイト接続に比べて「2×2=4」倍のスループット向上を得る必要があることを示す。
【0042】
したがって、セルラ移動通信システムのトータルスループットを維持するために、マルチサイト接続を行った場合の周波数利用効率が、シングルサイト接続を行った場合の周波数利用効率に対して、「(所定の周波数利用効率向上率n)×(連携数)」倍以上である場合にのみ、当該ユーザ端末2に対してマルチサイト接続を行う。
【0043】
次に、本実施形態に係る基地局コントローラ10の実施例を説明する。
【0044】
以下に示す実施例では、論理RBテーブルから物理RBテーブルへのマッピング方法として、分散データマッピングを用いる。分散データマッピングでは、物理的な無線リソースを割当てる際に、セルラ移動通信システムの周波数全帯域に均等に分配されたサブキャリアにマッピングされて送信される。分散データマッピングにより、フェージングによる受信信号レベルの落ち込みを平均化する効果が得られる。また、連携基地局間の受信信号レベル差を平均化する効果も期待できる。したがって、本実施例では、周波数方向のスケジューリングは実施されない。また、論理RBから物理無線リソースへのマッピングは、あるタイムスロット内の論理RBの割当処理後に行われる。ここでは、1回の物理無線リソースへのマッピングのために行われる論理RB割当をスケジューリングタイミングと呼ぶ。したがって、スケジューリングタイミングはタイムスロット単位である。
【0045】
また、以下に示す実施例では、マルチサイト接続を行うことにより、シングルサイト接続に比べて2倍のスループットを得られる(所定の周波数利用効率向上率が2である)ことを想定する。
【0046】
以下の説明では、マルチサイト接続を行うユーザ端末2のことをマルチサイト接続端末と称し、シングルサイト接続を行うユーザ端末2のことをシングルサイト接続端末と称する。
【実施例1】
【0047】
図7は、本実施形態に係る基地局コントローラ10の実施例1である。図7において、基地局コントローラ10は、制御部11とコアNW側入出力インターフェース12とスケジューリング部13と接続基地局情報取得・保持部14と接続端末情報取得・保持部15とBS側入出力インターフェース16とMS接続割当カウンタ17とを備える。
【0048】
制御部11は、基地局コントローラ10内の各部を制御する。コアNW側入出力インターフェース12は、コアネットワーク5に接続してデータを送受信する。スケジューリング部13は、無線リソースを割当てる機能と、無線リソース割当頻度を制御する機能と、通信方法を選択する機能とを有する。接続基地局情報取得・保持部14は、制御対象の基地局1の情報を取得して保持する。接続端末情報取得・保持部15は、制御対象の基地局1に接続するユーザ端末2の情報を各基地局1から取得して保持する。BS側入出力インターフェース16は、制御対象の基地局1に接続してデータを送受信する。
【0049】
MS接続割当カウンタ17は、ユーザ端末2ごとに設けられる。MS接続割当カウンタ17は、マルチサイト接続端末の無線リソース割当頻度を「1/(連携数)」にするために使用される。本実施例1では、スケジューリング部13が、あるユーザ端末2を選択した際に、当該ユーザ端末2がマルチサイト接続端末である場合にのみ、RBを割当てる回数をユーザ端末2の選択回数に対して「1/(連携数)」に制限する。このために、MS接続割当カウンタ17が、マルチサイト接続端末の選択回数をカウントする。
【0050】
図8は、本実施形態に係る無線リソース割当方法の実施例1である。図8には、1回のスケジューリングタイミングにおける論理無線リソース割当の処理手順を示している。図8の処理は、スケジューリングタイミングごとに実行される。
【0051】
図8において、ステップS1からS5までは、全ユーザ端末2に対して行われる。ステップS1では、スケジューリング部13が、各MIMOモードにおける周波数利用効率を計算する。具体的には、ユーザ端末2が接続基地局1経由で基地局コントローラ10へ送信した無線品質情報を元にして、マルチサイト接続の有無の別に、全MIMOモードに対し、最大伝送容量となるMCS(Modulation and Coding Scheme)を選択して周波数利用効率を計算する。
【0052】
このとき、周波数利用効率として、送信できるビット数の期待値(スループットの期待値)を用いることができる。スループットの期待値は、次式(1)で算出できる。
(選択された連携パターン且つMCSにより1回の割当で割当てられる無線リソースで送信できるビット数)×(1−PER) ・・・(1)
但し、PERは、ユーザ端末2に対して選択された連携パターン且つMCSを用いたときの当該ユーザ端末2の搬送波対干渉波及び雑音電力比(Carrier to Interference and Noise power Ratio:CINR)により得られるパケット誤り率を示す。
【0053】
無線品質情報は、例えば、CINR、受信信号強度、各周辺基地局からの受信電力の差などである。なお、CINRの計算において、連携基地局からの信号は搬送波成分とすべきであるから、連携基地局の組合せ毎にCINRを計算する。また、本実施例では、分散データマッピングを用いるので、無線品質情報には1回のスケジューリングタイミング(例えば、1個のタイムスロット)内の全サブキャリアにおける平均値を用いる。
【0054】
次いで、ステップS2では、スケジューリング部13が、ステップS1で計算した周波数利用効率のうち、マルチサイト接続を行った場合の周波数利用効率の最大値、そのときのMIMOモード及びMCS情報、並びに、シングルサイト接続を行った場合の周波数利用効率の最大値、そのときのMIMOモード及びMCS情報を保持する。
【0055】
次いで、ステップS3では、スケジューリング部13が、ステップS2で保持した周波数利用効率の最大値を用いて、次式(2)を判定する。
(マルチサイト接続の周波数利用効率の最大値)≧(所定の周波数利用効率向上率)×(連携数)×(シングルサイト接続の周波数利用効率の最大値) ・・・(2)
ここで、本実施例では、シングルサイト接続に比べてマルチサイト接続を行うことにより2倍のスループットを得られる場合を想定している。したがって、所定の周波数利用効率向上率は2であるので、上記の式(2)は次式(3)となる。
(マルチサイト接続の周波数利用効率の最大値)≧2×(連携数)×(シングルサイト接続の周波数利用効率の最大値) ・・・(3)
【0056】
上記の式(3)が成立する場合(ステップS3、YES)には、ステップS4で当該ユーザ端末2に対してマルチサイト接続を選択する。上記の式(3)が成立しない場合(ステップS3、NO)には、ステップS5で当該ユーザ端末2に対してシングルサイト接続を選択する。
【0057】
上記ステップS1〜S5により、全ユーザ端末2に対して、マルチサイト接続又はシングルサイト接続のいずれかが選択される。
【0058】
次いで、ステップS6では、スケジューリング部13が、全ユーザ端末2の各メトリック値を計算する。メトリック値の計算には、プロポーショナルフェアネス(Proportional Fairness:PF)やラウンド・ロビンなどの評価式を用いる。本実施例では、PFを用いた次式(4)により、ユーザ端末2のメトリック値を計算する。
【0059】
【数1】

【0060】
但し、M(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおけるメトリック値である。Rave(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tまでの平均スループットである。Rinst(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおける連携パターン(マルチサイト接続又はシングルサイト接続)且つMCSにより送信可能な瞬時スループットである。γは、フェアネスファクターであり、デフォルト値は1である。
【0061】
次いで、ステップS7では、スケジューリング部13が、ステップS6で計算した全ユーザ端末2のメトリック値をそれぞれ比較し、最も大きなメトリック値を持つユーザ端末2を、無線リソース割当候補のユーザ端末2(以下、選択ユーザ端末2と称する)として選択する。この結果、選択ユーザ端末2を選択できた場合(ステップS8、YES)はステップS9に進み、選択ユーザ端末2を選択できなかった場合(ステップS8、NO)はステップS18に進む。ここで、選択ユーザ端末2を選択できない場合とは、選択ユーザ端末2を選択するもとのユーザ端末2の集合が空である場合である。
【0062】
ステップS9では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2の連携パターンを確認する。この結果、選択ユーザ端末2の連携パターンが、マルチサイト接続である場合はステップS10に進み、シングルサイト接続である場合はステップS14に進む。
【0063】
ステップS10では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2のMS接続割当カウンタ17を1つカウントアップする。次いで、ステップS11では、スケジューリング部13が、カウントアップ後の選択ユーザ端末2のMS接続割当カウンタ17のカウンタ値と選択ユーザ端末2のマルチサイト接続における基地局連携の連携数とを用いて、次式(5)を計算する。スケジューリング部13は、式(5)の計算結果を用いて、マルチサイト接続を行う選択ユーザ端末2の無線リソース割当頻度を判定する。
(選択ユーザ端末2のMS接続割当カウンタ値)mod(連携数) ・・・(5)
但し、modは剰余演算を表し、「X mod Y」はXをYで割った余りである。
【0064】
式(5)の計算結果が1である場合は、無線リソース割当頻度の判定結果が合格(ステップS11、OK)であり、ステップS12に進む。式(5)の計算結果が1以外である場合は、無線リソース割当頻度の判定結果が不合格(ステップS11、NG)であり、選択ユーザ端末2に対して無線リソースを割り当てず、ステップS16に進む。
【0065】
ステップS12では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2のマルチサイト接続における基地局連携の連携数、及び、MIMOモードに基づいて、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができるか否かを判定する。例えば、2基地局連携(連携数が2)であった場合、選択ユーザ端末2と基地局連携により通信する2台の基地局1は同一の無線リソース領域が未割当であることが必須である。
【0066】
ステップS12の結果、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができる場合はステップS13に進む。ステップS12の結果、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができない場合は、選択ユーザ端末2に無線リソースを割り当てず、当該選択ユーザ端末2を、選択ユーザ端末2を選択するもとのユーザ端末2の集合から削除し、ステップS7に戻る。
【0067】
ステップS13では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2と基地局連携により通信する複数の基地局1の共通の未割当無線リソースを選択ユーザ端末2に割り当てる。この後、ステップS16へ進む。
【0068】
ステップS14では、スケジューリング部13が、シングルサイト接続を行う選択ユーザ端末2が接続する基地局1に、割当可能な無線リソースが有る(無線リソース割当可)か無い(無線リソース割当不可)かを判定する。ステップS14の結果、無線リソース割当可である場合はステップS15に進む。ステップS14の結果、無線リソース割当不可である場合は、選択ユーザ端末2に無線リソースを割り当てず、当該選択ユーザ端末2を、選択ユーザ端末2を選択するもとのユーザ端末2の集合から削除し、ステップS7に戻る。
【0069】
ステップS15では、スケジューリング部13が、シングルサイト接続を行う選択ユーザ端末2の情報を保持する。この保持される情報は、選択ユーザ端末2の端末識別子、所要RB数などである。ここではまだ、シングルサイト接続を行う選択ユーザ端末2に対する無線リソースの割当を行わないが、選択ユーザ端末2が必要とする無線リソース量(論理リソーステーブルの未割当RB数)を割当済みとして記憶する。
【0070】
ステップS16では、スケジューリング部13が、全ユーザ端末2に対して、平均スループットRave(i)(t)を更新する。平均スループットRave(i)(t)は次式(6)又は(7)の計算結果により更新される。無線リソースが時刻tで割当てられたユーザ端末2に対しては、式(6)を用いる。無線リソースが時刻tで割当てられなかったユーザ端末2に対しては、式(7)を用いる。但し、ステップS11で無線リソース割当頻度の判定結果が不合格であった選択ユーザ端末2に対しては式(6)を用いる。
【0071】
【数2】

【0072】
【数3】

【0073】
但し、βは時定数である。
【0074】
次いで、ステップS17では、スケジューリング部13が、制御対象の基地局1に割当可能な無線リソース(未割当のRB)が有るか否かを確認する。この結果、割当可能な無線リソースが有る場合はステップS6に戻り、割当可能な無線リソースが無い場合はステップS18に進む。
【0075】
ステップS18では、スケジューリング部13が、ステップS15で保持したシングルサイト接続端末の情報に基づいて、無線リソースを割り当てると決定したシングルサイト接続端末に対し、無線リソースの割当を行う。
【0076】
基地局コントローラ10は、無線リソース割当結果を制御対象の各基地局1へ送信する。無線リソース割当結果は、基地局1ごとに、どの無線リソース(RB)をどのユーザ端末2に割り当てるのかを示す情報である。
【0077】
上述のシングルサイト接続端末に対するステップS15及びS18の処理は、分散データマッピングにおいて、効率的に無線リソース割当を行うための処理である。マルチサイト接続では、連携基地局の組合せを考慮して複数基地局で共通の無線リソースを割当てる必要がある。これに対し、シングルサイト接続では、シングルサイト接続端末を収容する一基地局の無線リソースのみを割当てればよい。このため、無線リソース割当の効率の観点から、無線リソース割当の自由度が大きいはじめのうちにマルチサイト接続端末へ無線リソースを割り当てる。すると、各基地局には、未割当無線リソースが分散的に残ることが予想されるので、この残余無線リソースをシングルサイト接続端末に活用するために、ステップS15で所要の無線リソース量のみを確保し、ステップS18で実際の無線リソース割当を行うのである。
【0078】
なお、本実施例1では、ユーザ端末2が無線情報を基地局1経由で基地局コントローラ10へ送信し、基地局コントローラ10がユーザ端末2の連携パターンを決定するが、この限りではなく、各ユーザ端末2が上述のステップS1からS5までを実行して連携パターンを決定し、この結果を基地局コントローラ10へ送信するようにしてもよい。
【実施例2】
【0079】
図9は、本実施形態に係る基地局コントローラ10の実施例2である。図9において、図7の各部に対応する部分には同一の符号を付している。図9に示す実施例2の基地局コントローラ10は、図7の構成と同様であるが、MS接続割当カウンタ17を具備しない。以下、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0080】
図10は、本実施形態に係る無線リソース割当方法の実施例2である。図10には、1回のスケジューリングタイミングにおける論理無線リソース割当の処理手順を示している。図10の処理は、スケジューリングタイミングごとに実行される。図10において、ステップS31からS33までは、図8のステップS1からS3までと同じである。
【0081】
ステップS33の結果、上記の式(3)が成立する場合(ステップS33、YES)には、ステップS34で、スケジューリング部13が当該ユーザ端末2に対してマルチサイト接続を選択する。次いで、ステップS35では、スケジューリング部13が、次式(8)により、マルチサイト接続のユーザ端末2のメトリック値を計算する。式(8)は、PFを用いた計算式である。
【0082】
【数4】

【0083】
但し、M(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおけるメトリック値である。連携数は、端末識別子がiであるユーザ端末2のマルチサイト接続における基地局連携の連携数である。Rave(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tまでの平均スループットである。Rinst(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおけるマルチサイト接続且つMCSにより送信可能な瞬時スループットである。γは、フェアネスファクターであり、デフォルト値は1である。なお、平均スループットRave(i)(t)の更新に用いる計算式は、PFと同様である。
【0084】
上述の実施例1では、マルチサイト接続端末の無線リソース割当頻度を「1/(連携数)」に制限するためにMS接続割当カウンタ17を具備した。これに対し、本実施例2では、マルチサイト接続端末の無線リソース割当頻度を「1/(連携数)」に制限するために、式(8)に示すようにマルチサイト接続端末のメトリック値を「1/(連携数)」とする。
【0085】
ステップS33の結果、上記の式(3)が成立しない場合(ステップS33、NO)には、ステップS36で、スケジューリング部13が当該ユーザ端末2に対してシングルサイト接続を選択する。次いで、ステップS37では、スケジューリング部13が、次式(9)により、シングルサイト接続のユーザ端末2のメトリック値を計算する。式(9)は、PFを用いた計算式である。
【0086】
【数5】

【0087】
但し、M(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおけるメトリック値である。Rave(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tまでの平均スループットである。Rinst(i)(t)は、端末識別子がiであるユーザ端末2の時刻tにおけるシングルサイト接続且つMCSにより送信可能な瞬時スループットである。γは、フェアネスファクターであり、デフォルト値は1である。
【0088】
次いで、ステップS38では、スケジューリング部13が、ステップS35,S37で計算した全ユーザ端末2のメトリック値をそれぞれ比較し、最も大きなメトリック値を持つユーザ端末2を、無線リソース割当候補のユーザ端末2(選択ユーザ端末2)として選択する。この結果、選択ユーザ端末2を選択できた場合(ステップS39、YES)はステップS40に進み、選択ユーザ端末2を選択できなかった場合(ステップS39、NO)はステップS45に進む。ここで、選択ユーザ端末2を選択できない場合とは、選択ユーザ端末2を選択するもとのユーザ端末2の集合が空である場合である。
【0089】
ステップS40では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができるか否かを判定する。この判定は、マルチサイト接続端末に対しては図8のステップS12と同じであり、シングルサイト接続端末に対しては図8のステップS14と同じである。ステップS40の結果、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができる場合はステップS41に進む。ステップS40の結果、選択ユーザ端末2に無線リソースを割当てることができない場合は、選択ユーザ端末2に無線リソースを割り当てず、当該選択ユーザ端末2を、選択ユーザ端末2を選択するもとのユーザ端末2の集合から削除し、ステップS38に戻る。
【0090】
ステップS41では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2の連携パターンを確認し、シングルサイト接続である場合はステップS43に進み、マルチサイト接続である場合はステップS42に進む。
【0091】
ステップS42では、スケジューリング部13が、選択ユーザ端末2と基地局連携により通信する複数の基地局1の共通の未割当無線リソースを選択ユーザ端末2に割り当てる。この後、ステップS44へ進む。
【0092】
ステップS43では、スケジューリング部13が、シングルサイト接続を行う選択ユーザ端末2の情報を保持する。この保持される情報は、選択ユーザ端末2の端末識別子、所要RB数などである。ここではまだ、シングルサイト接続を行う選択ユーザ端末2に対する無線リソースの割当を行わないが、選択ユーザ端末2が必要とする無線リソース量(論理リソーステーブルの未割当RB数)を割当済みとして記憶する。
【0093】
ステップS44では、スケジューリング部13が、制御対象の基地局1の割当可能な無線リソース(未割当のRB)が有るか否かを確認する。この結果、割当可能な無線リソースが有る場合はステップS31に戻り、割当可能な無線リソースが無い場合はステップS45に進む。
【0094】
ステップS45では、スケジューリング部13が、ステップS43で保持したシングルサイト接続端末の情報に基づいて、無線リソースを割り当てると決定したシングルサイト接続端末に対し、無線リソースの割当を行う。
【0095】
基地局コントローラ10は、無線リソース割当結果を制御対象の各基地局1へ送信する。無線リソース割当結果は、基地局1ごとに、どの無線リソース(RB)をどのユーザ端末2に割り当てるのかを示す情報である。
【0096】
なお、本実施例2では、ユーザ端末2が無線情報を基地局1経由で基地局コントローラ10へ送信し、基地局コントローラ10がユーザ端末2の連携パターンを決定するが、この限りではなく、各ユーザ端末2が上述のステップS31からS37までを実行して連携パターン及びメトリック値を決定し、この結果を基地局コントローラ10へ送信するようにしてもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、基地局コントローラ10をバックボーンネットワーク4内に設けたが、この限りではなく、基地局コントローラ10を各基地局1に分散して設け、ある基地局1の基地局コントローラ10が隣接する基地局1の基地局コントローラ10と連携するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…基地局、2…移動局(ユーザ端末)、10…基地局コントローラ(基地局制御装置)、11…制御部、12…コアNW側入出力インターフェース、13…スケジューリング部(無線リソース割当部、無線リソース割当頻度制御部、通信方法選択部)、14…接続基地局情報取得・保持部、15…接続端末情報取得・保持部、16…BS側入出力インターフェース、17…MS接続割当カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局を配置し、各基地局の通信エリアによって連続的な通信サービスエリアを構築するセルラ移動通信システムにおいて、複数の基地局を制御する基地局制御装置であって、
移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率とマルチサイト接続するときの周波数利用効率との比較によって決定された該移動局の通信方法であるシングルサイト接続又はマルチサイト接続に応じた無線リソースを、該移動局と通信を行う基地局で確保する無線リソース割当部と、
マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度の増減を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数の増減とは逆にする無線リソース割当頻度制御部と、
を備えたことを特徴とする基地局制御装置。
【請求項2】
前記無線リソース割当頻度制御部は、シングルサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度に対して、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1に制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局制御装置。
【請求項3】
前記無線リソース割当頻度制御部は、
マルチサイト接続を行う移動局を無線リソース割当候補に選択した回数を、移動局ごとにカウントするカウンタ部を有し、前記カウンタの値に基づいて、無線リソース割当候補になったマルチサイト接続を行う移動局に対し、無線リソースを割当てるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局制御装置。
【請求項4】
前記無線リソース割当頻度制御部は、前記カウンタの値を、当該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数で剰余演算する剰余演算部を有することを特徴とする請求項3に記載の基地局制御装置。
【請求項5】
前記無線リソース割当頻度制御部は、
無線リソース割当候補の移動局を選択するときに用いる各移動局の評価値に対し、マルチサイト接続を行う移動局の評価値を該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1にする、
ことを特徴とする請求項2に記載の基地局制御装置。
【請求項6】
移動局がマルチサイト接続するときの周波数利用効率が、該移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率よりも、「(所定の周波数利用効率向上率)×(該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数)」倍以上である場合にのみ、該移動局の通信方法としてマルチサイト接続を選択する通信方法選択部、
を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基地局制御装置。
【請求項7】
複数の基地局を配置し、各基地局の通信エリアによって連続的な通信サービスエリアを構築するセルラ移動通信システムにおける無線リソース割当方法であって、
複数の基地局を制御する基地局制御装置が、移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率とマルチサイト接続するときの周波数利用効率との比較によって決定された該移動局の通信方法であるシングルサイト接続又はマルチサイト接続に応じた無線リソースを、該移動局と通信を行う基地局で確保するステップと、
前記基地局制御装置が、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度の増減を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数の増減とは逆になるように制御するステップと、
を含むことを特徴とする無線リソース割当方法。
【請求項8】
前記基地局制御装置は、シングルサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度に対して、マルチサイト接続を行う移動局の無線リソース割当頻度を、該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数分の1に制限する、
ことを特徴とする請求項7に記載の無線リソース割当方法。
【請求項9】
前記基地局制御装置又は移動局が有する通信方法選択部が、移動局がマルチサイト接続するときの周波数利用効率が、該移動局がシングルサイト接続するときの周波数利用効率よりも、「(所定の周波数利用効率向上率)×(該移動局とマルチサイト接続を行う基地局の数)」倍以上である場合にのみ、該移動局の通信方法としてマルチサイト接続を選択するステップをさらに含むことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の無線リソース割当方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−142375(P2011−142375A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−457(P2010−457)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち「複数基地局連携送信によるユーザスループット高速化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】