説明

基地局装置

【課題】データの伝送効率を向上させて高速のスループットを実現する基地局装置を得ること。
【解決手段】本発明にかかる基地局装置は、受信信号に含まれるCQI値に基づいて、適応変調で使用するMCSを決定する基地局装置であって、移動局が伝送路状態を測定した時点から実際に適応変調後のデータを送信する時点までの時間経過に伴う伝送路状態の変動に応じて、前記CQI値を補正する補正部(5)と、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定するMCS決定部(8)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信システムで用いられる基地局装置に関するものであり、特に、CQI(Channel Quality Indication)値に基づいて適応変調を行う基地局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の移動端末(移動局)においては、多量の静止画や短時間の動画等を扱うためのマルチメディア対応が進められており、それに伴って大容量かつ高速のデータ伝送方法が必要となっている。この大容量かつ高速のデータ伝送方法としては、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)方式があり、下り方向(基地局から移動局への方向)の伝送速度のみを高速化したHS−PDSCH(High Speed-Physical Downlink Shared Channel:高速下り共用チャネル)等を用いたデータ伝送方法が検討されている。
【0003】
上記HSDPAの規格において、高速化を実現するための技術の一つとして、適応変調がある。適応変調とは、伝送路の瞬時SIR(Signal and Interference Ratio:信号対干渉比)値から伝送路状態を推定し、伝送路状態が悪い場合は、伝送レートを低くして誤り率を下げて確実に伝送する方式である。一例として、伝送パケットサイズ(Transport Block Size),変調方式(16QAM(Quadrature Amplitude Modulation),QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)),コード多重数(Nofcode)の一連のパラメータCQIテーブル(CQI mapping table)を指標とする方法が3GPP標準で規格化されている。具体的には、下記非特許文献1中の表7A,7B,7C,7D,7Eにおいて定義されている。このテーブルでは、CQI値が大きいほど、伝送路状態が良好であることを表している。
【0004】
従来の移動体通信システムにおいては、移動局が、瞬時SIRを測定しこれをもとに決定したCQI値を基地局に報告する。そして、基地局がCQI値および上記テーブルに基づいてMCSを決定している。
【0005】
【非特許文献1】3GPP Specification TS25.214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のHSDPAの規格で適用されている適応変調では、実際には、移動局がSIRを測定してからCQI値に変換するまでにかかる処理遅延時間、そのCQI値を基地局に報告するときにかかる伝播遅延時間、基地局が当該CQI値に基づいてMCSを決定するときにかかる処理遅延時間、基地局においてデータを送信するまでにかかる処理遅延時間、による遅延が存在する。そのため、たとえば、移動体通信システム等、伝送路状態が変動するような通信環境においては、その移動に処理が追随できず、適切なMCSで送信できないことがある、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、伝送路状態の変動に応じた適切なMCSを決定し、それによって、より高速のスループットを実現する基地局装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる基地局装置は、受信信号に含まれるCQI値に基づいて、適応変調で使用するMCSを決定する基地局装置であって、移動局が伝送路状態を測定した時点から実際に適応変調後のデータを送信する時点までの時間経過に伴う伝送路状態の変動に応じて、前記CQI値を補正する補正手段と、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定するMCS決定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、CQI値の履歴保持部を設け、当該履歴保持部に保持されたCQI値の履歴および最新のCQI値に基づいて、現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値の補正を行い、当該補正されたCQI値をもってMCSを決定することとした。これにより、上記遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現する基地局装置を得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる基地局装置(以下、基地局と呼ぶ)の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる基地局の実施の形態1の構成例を示す図である。この実施の形態1における基地局は、受信アンテナ1,無線受信部2,復調部3,読み出し部4,本発明の特徴である補正部5,MCS決定部8,適応変調部9,無線送信部10,送信アンテナ11を有する。また、上記補正部5は、CQI補正部6とCQI履歴保持部7とを有する。
【0012】
無線受信部2は、受信アンテナ1を介して、移動局から送信されたCQI値を含む無線信号を受信する。なお、CQI値とは、移動局側において推定した下り回線の品質指標である。このCQI値は、移動局が基地局からの下り信号のSIRを測定しこの測定結果に基づいて決定した値であり、送信データに対してマッピングした状態で基地局に送られる。
【0013】
復調部3は、上記無線受信部2において所定の無線受信処理が行われた無線送信信号を復調する。そして、読み出し部4は、復調部3にて復調された信号からCQI値を読み出す。ここで、読み出されたCQI値は、移動局側で下り回線のSIRを測定した時点での値である。しかしながら、移動局が下り回線のSIRを測定し、CQI値を決定するまでには処理時間に起因する遅延が発生する。さらに、基地局が基地局内スケジューラによって当該移動局を選択してMCSを決定した後、実際に下りデータを送信する処理に関しても処理時間に起因する遅延が発生する。すなわち、基地局が決定したMCSは、当該移動局にとっては既に適切なものではなくなっている可能性がある。そこで、本実施の形態においては、移動局が伝送路状態(SIR)を測定した時点から実際に適応変調後のデータを送信する時点までの時間経過に伴う伝送路状態の変動に応じて適切なMCSを決定してデータ伝送を行うために、基地局が、補正部5を用いてCQI値の補正処理を実施する。
【0014】
補正部5においては、CQI補正部6が、CQI履歴保持部7に保持されたCQI値の履歴に基づいて現時点でのCQI値を予測する。これにより、CQI値の補正を実現する。
【0015】
CQI値を補正後、MCS決定部8は、補正部5によって補正されたCQI値に基づいてMCSを決定し、さらに、適応変調部9は、MCSに従ってデータの適応変調を行う。そして、適応変調が実施された後のデータは、無線送信部10を介して送信アンテナ11より送信される。
【0016】
ここで、上記CQI補正部6の動作の一例を具体的に説明する。CQI補正部6は、たとえば、回帰分析によってCQI値を予測する。たとえば、時刻tiでのCQI値をCQIi、(I=0,n)とした場合、CQI値における時刻tの関数CQI(t)は、次式(1)のように表すことができる。
【0017】
【数1】

…(1)
【0018】
なお、上記回帰分析は直線回帰としたが、その他の重回帰アルゴリズムを使用した場合であっても本発明の趣旨をなんら妨げるものではない。
【0019】
このように、本実施の形態においては、CQI値の履歴を保持するための履歴保持部を設け、そのCQI値の履歴に基づいて、現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、上記遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現することができる。
【0020】
実施の形態2.
図2は、本発明にかかる基地局の実施の形態2の構成例を示す図である。この実施の形態2における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴となる読み出し部4aおよび補正部5aを備える。また、上記補正部5aは、CQI補正部6aとTPC情報保持部12とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1と異なる読み出し部4aおよび補正部5aについて説明する。
【0021】
本実施の形態の読み出し部4aは、復調部3にて復調された信号からCQI値、およびTPC情報を読み出し、読み出したTPC情報をTPC情報保持部12に保持する。補正部5aにおいては、CQI補正部6aが、TPC情報保持部12に保持されたTPC情報に基づいてCQI値を補正する。
【0022】
なお、上記TPCは、3GPPにおけるTS25.214において規格化されている上り個別チャネル(Uplink DPCCH)内の「Transmit Power Controlフィールド」に格納されるビット値である。ここで、TPCビットを簡潔に説明する。CDMA方式では、その方式の性質上、移動局にとって同一基地局に属する他の移動局への送信電波は干渉となる。たとえば、移動局が基地局から遠ざかった場合は、距離減衰により受信電力が小さくなる。そのため、移動局が基地局からの電波を受信する際に、その受信電波が基地局から他の移動局への送信電波による干渉に埋もれないようにするためには、基地局側の送信電力を大きくする必要がある。これを実現するため、移動局は、受信電力をモニタし、たとえば、受信電力が小さくなった場合は、基地局に対して送信電力を大きくするように要求する。一方、移動局が基地局に近づく場合は、移動局が基地局に対して送信電力を小さくするように要求する。これらの要求は、TPCフィールドに格納されるTPCビットを用いて行われる。
【0023】
上記TPCを利用して、本実施の形態のCQI補正部6aにおいては、たとえば、上記TPCが基地局送信電力の増加を要求する値である場合に、移動局が基地局から遠ざかりつつある状況などのようにSIRが減少する傾向であると判断し、読み出し部4aにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。これに対して、上記TPCが基地局送信電力の減少を要求する値である場合は、移動局が基地局に近づきつつある状況などのようにSIRが増加する傾向であると判断し、読み出し部4aにて読み出されたCQI値に一定の値を加える。
【0024】
なお、上記CQI補正部6aは、さらに、直近のCQI値以降のTPCを累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値を補正することによって、より補正の精度を向上させることができる。また、前述した実施の形態1と同様に、TPCの履歴および最新のTPCについての回帰分析を行い、当該回帰分析結果に基づいてCQI値を補正することによって、さらに補正の精度を向上させることができる。
【0025】
このように、本実施の形態においては、TPC情報保持部を設け、そのTPC情報保持部に保持されているTPC情報に基づいて現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、前述した遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0026】
実施の形態3.
図3は、本発明にかかる基地局の実施の形態3の構成例を示す図である。この実施の形態3における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴である読み出し部4bおよび補正部5bを備える。また、上記補正部5bは、CQI補正部6bとfD情報保持部13とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1および2と異なる読み出し部4bおよび補正部5bについて説明する。
【0027】
本実施の形態の読み出し部4bは、復調部3にて復調された信号からCQI値およびfD情報を読み出し、読み出したfD情報をfD情報保持部13に保持する。補正部5bでは、CQI補正部6bが、fD情報保持部13に保持されたfD情報に基づいてCQI値を補正する。
【0028】
なお、上記fDはドップラー周波数を表す。基地局は、移動局が受信している信号のドップラー周波数の遷移に基づいて移動局が自局から遠ざかっているか、近づいているか、または、自局からの距離が変わらないか、の判断を行う。
【0029】
本実施の形態のCQI補正部6bでは、たとえば、上記fD情報(ドップラー周波数の情報)に基づいて移動局が基地局から遠ざかりつつあると判断した場合は、SIRが減少する傾向であると判断し、読み出し部4bにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。これに対して、上記fD情報の遷移に基づいて移動局が基地局に近づきつつあると判断した場合は、SIRが増加する傾向であると判断し、CQI読み出し部4bにて読み出されたCQI値に一定の値を加える。
【0030】
なお、上記CQI補正部6bは、さらに、直近のCQI値以降のfD情報を累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値の補正を行うようにすることによって、より補正の精度を向上させることができる。また、前述した実施の形態1と同様に、fD情報の履歴および最新のfD情報についての回帰分析を行い、当該回帰分析結果に基づいてCQI値を補正することによって、さらに補正の精度を向上させることができる。
【0031】
このように、本実施の形態においては、fD情報保持部を設け、そのfD情報保持部に保持されているfD情報に基づいて現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、前述した遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0032】
実施の形態4.
図4は、本発明にかかる基地局の実施の形態4の構成例を示す図である。この実施の形態4における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴である読み出し部4cおよび補正部5cを備える。また、上記補正部5cは、CQI補正部6cと位置情報保持部14とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1、2および3と異なる読み出し部4cおよび補正部5cについて説明する。
【0033】
本実施の形態の読み出し部4cは、復調部3にて復調された信号からCQI値および位置情報を読み出し、読み出した位置情報を位置情報保持部14に保持する。補正部5cでは、CQI補正部6cが、位置情報保持部14に保持された位置情報に基づいてCQI値を補正する。
【0034】
なお、上記位置情報は移動局の位置情報である。移動局がGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星から受信したデータを基地局に送信すると、基地局は、移動局から受信したデータに基づいて移動局の位置情報(緯度・経度情報)を取得する。基地局は、上記位置情報に基づいて、当該移動局が自局から遠ざかっているか、近づいているか、または、自局からの距離が変わらないか、の判断を行う。
【0035】
本実施の形態のCQI補正部6cでは、たとえば、上記位置情報により移動局が基地局から遠ざかりつつある状況であると判断した場合に、SIRが減少する傾向であると判断し、読み出し部4cにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。これに対して、移動局が基地局に近づきつつある状況であると判断した場合は、SIRが増加する傾向であると判断し、読み出し部4cにて読み出されたCQI値に一定の値を加える。
【0036】
なお、上記CQI補正部6cは、さらに、直近のCQI値以降の位置情報を累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値を補正することによって、より補正の精度を向上させることができる。また、前述した実施の形態1と同様に、位置情報の履歴および最新の位置情報についての回帰分析を行い、当該回帰分析結果に基づいてCQI値を補正することによって、さらに補正の精度を向上させることができる。
【0037】
このように、本実施の形態においては、位置情報保持部を設け、その位置情報保持部に保持されている位置情報に基づいて現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、前述した遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0038】
実施の形態5.
図5は、本発明にかかる基地局の実施の形態5の構成例を示す図である。この実施の形態5における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴である読み出し部4dおよび補正部5dを備える。また、上記補正部5dは、CQI補正部6dとACKフィールド誤り率保持部15とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1〜4と異なる読み出し部4dおよび補正部5dについて説明する。
【0039】
本実施の形態の読み出し部4dは、復調部3にて復調された信号からCQI値およびACKフィールド誤り率を読み出し、読み出したACKフィールド誤り率をACKフィールド誤り率保持部15に保持する。補正部5dでは、CQI補正部6dが、ACKフィールド誤り率保持部15に保持されたACKフィールド誤り率に基づいてCQI値を補正する。
【0040】
ここで、上記ACKフィールドはHSDPAにおいて規格化されている。基地局は、移動局がパケットを正しく受信できなかった場合にパケットの再送信を行う旨がHSDPAにおいて規格化されている。さらに、移動局は、パケットの再送信が必要か否かの情報をACKまたはNACKの送信により基地局に対して通知する旨がHSDPAにおいて規格化されている。
【0041】
さらに、3GPPのTS25.212においては、HSDPA用上り回線(HS-DPCCH)のACKフィールドが、値1の10ビット繰り替えしパターンを示している場合にはACKを表し、また、値0の10ビット繰り替えしパターンを示している場合にはNACKを表す旨が規格化されている。
【0042】
すなわち、上記CQI補正部6dは、上記HSDPA用上り回線のACKフィールドが値1の10ビット繰り替えしパターンまたは値0の10ビット繰り替えしパターンのいずれにも該当しない場合は、ACKまたはNACKのいずれにも該当しないため、上りの伝送路において干渉による誤りが発生したと判断する。
【0043】
なお、通常上りと下りで異なるチャネル(周波数帯)を用いて通信を行う場合は、上りの伝送路状態と下りの伝送路状態が同様に変動していると判断することはできない。しかしながら、上り回線と下り回線の周波数の小さい場合におけるFDD(Frequency Division Duplex)モードおよび上り回線と下り回線とで同一の周波数を使用するTDD(Time Division Duplex)モードについては、上りの伝送路状態と下りの伝送路状態が同様に変動していると判断することができる。本実施の形態はこれを利用するものである。
【0044】
本実施の形態のCQI補正部6dでは、たとえば、上記ACKフィールド誤り率保持部15において保持されているACKフィールド誤り率の履歴および上記で読み出した最新のACKフィールド誤り率について解析し、ACKフィールド誤り率が増加傾向である場合は、移動局が基地局から遠ざかりつつある状況などのようにSIRが減少する傾向と判断し、読み出し部4dにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。これに対して、上記ACKフィールド誤り率が減少傾向である場合は、移動局が基地局に近づきつつある状況などのようにSIRが増加する傾向と判断し、読み出し部4dにて読み出されたCQI値に一定の値を加える。
【0045】
なお、CQI補正部6dは、さらに、前述した実施の形態1と同様に、ACKフィールド誤り率の履歴および最新のACKフィールド誤り率についての回帰分析を行い、回帰分析されたACKフィールド誤り率に基づいてCQI値の補正を行うようにすることで、より補正の精度を向上させることができる。
【0046】
このように、本実施の形態においては、ACKフィールド誤り率保持部を設け、そこに保持されているACKフィールド誤り率および最新のACKフィールド誤り率に基づいて、現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、上記遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0047】
実施の形態6.
図6は、本発明にかかる基地局の実施の形態6の構成例を示す図である。この実施の形態6における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴である読み出し部4eおよび補正部5eを備える。また、上記補正部5eは、CQI補正部6eとCQIフィールド誤り率保持部16とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1〜5と異なる読み出し部4eおよび補正部5eについて説明する。
【0048】
本実施の形態の読み出し部4eは、復調部3にて復調された信号からCQI値およびCQIフィールド誤り率を読み出し、読み出したCQIフィールド誤り率をCQIフィールド誤り率保持部16に保持する。補正部5eでは、CQI補正部6eが、CQIフィールド誤り率保持部16に保持されたCQIフィールド誤り率に基づいて、CQI値を補正する。
【0049】
なお、上記CQIフィールド誤り率は、たとえば、次のように定義する。3GPPにおけるTS25.212の4.7.7によると、移動局は、3GPPにおけるTS25.214に示すCQIマッピングテーブル(TABLE 7D)のCQIを表す5ビット分を(以下、CQIデータと呼ぶ)、20ビットのデータに符号化し、その後、符号化後の20ビットのデータを、HSDPA用上り回線(HS-DPCCH)のCQIフィールドに格納して基地局へ送信する。ここで、符号化後のCQIデータは、符号化される前のCQIデータの値が1から15の場合は、符号化後のビット15〜ビット19(0オリジンで、ビット19がMSB)がすべて‘0’となる。これに対して、符号化される前のCQIデータの値が16から30の場合は、符号化後のビット15〜ビット19がすべて‘1’になる。この特徴に基づいて、上記CQI補正部6eは、復号化される前のCQIデータのビット15〜ビット19がすべて‘0’、または、すべて‘1’のいずれにも該当しない場合に、上りの伝送路において干渉による誤りが発生したと判断する。
【0050】
本実施の形態のCQI補正部6eでは、前述した実施の形態5と同様に、上り回線と下り回線の周波数の小さい場合におけるFDD(Frequency Division Duplex)モードおよび上り回線と下り回線とで同一の周波数を使用するTDD(Time Division Duplex)モードにおいて、上りの伝送路状態と下りの伝送路状態が同様に変動していると判断することができることを利用する。すなわち、CQI補正部6eは、たとえば、上記CQIフィールド誤り率保持部16において保持されているCQIフィールド誤り率の履歴および上記で読み出した最新のCQIフィールド誤り率について解析し、CQIフィールド誤り率が増加傾向である場合は、移動局が基地局から遠ざかりつつある状況などのようにSIRが減少する傾向と判断し、読み出し部4eにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。これに対して、上記CQIフィールド誤り率が減少傾向である場合は、移動局が基地局に近づきつつある状況などのようにSIRが増加する傾向と判断し、読み出し部4eにて読み出されたCQI値に一定の値を加える。
【0051】
なお、上記CQI補正部6eは、さらに、前述した実施の形態1〜5と同様に、CQIフィールド誤り率の履歴および最新のCQIフィールド誤り率についての回帰分析を行い、当該回帰分析結果に基づいてCQI値の補正を行うようにすることで、より補正の精度を向上させることができる。
【0052】
このように、本実施の形態においては、CQIフィールド誤り率保持部を設け、そのCQIフィールド誤り率保持部に保持されているCQIフィールド誤り率および最新のCQIにフィールド誤り率に基づいて、現在およびまたは将来の伝送路状態を予測することによりCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、上記遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0053】
実施の形態7.
図7は、本発明にかかる基地局の実施の形態7の構成例を示す図である。この実施の形態7における基地局は、前述した実施の形態1の読み出し部4および補正部5に代えて、本発明の特徴である読み出し部4fおよび補正部5fを備える。また、上記補正部5fは、CQI補正部6fと上り同期はずれ検出部17とを備える。以降、本実施の形態においては、前述した実施の形態1〜6と異なる読み出し部4fおよび補正部5fについて説明する。
【0054】
本実施の形態の読み出し部4fは、復調部3にて復調された信号からCQI値および上り同期はずれを検出するためのデータを読み出す。補正部5fでは、上り同期はずれ検出部17は、読み出し部4fに読み出された同期はずれを検出するためのデータに基づいて上り同期はずれが発生したかどうかを判断する。そして、CQI補正部6fは、上り同期はずれ検出部17が上り同期はずれを検出した場合にCQI値を補正する。
【0055】
なお、3GPPのTS25.214においては、上り同期はずれが明確には規定されていないが、上記TS25.214内の4.3.1.3の中には下り同期はずれが例示されており、上り同期はずれを下り同期はずれと同様に考えることができる。たとえば、上記4.3.1.3には、上り回線のTPC等の情報を読み出すときに発生する誤り率が規定値を超えた場合には、同期はずれが発生したと判断できることが例示されている。
【0056】
本実施の形態のCQI補正部6fでは、前述した実施の形態5と同様に、上り回線と下り回線の周波数の小さい場合におけるFDD(Frequency Division Duplex)モードおよび上り回線と下り回線とで同一の周波数を使用するTDD(Time Division Duplex)モードにおいて、上りの伝送路状態と下りの伝送路状態が同様に変動していると判断することができることを利用する。すなわち、CQI補正部6fは、たとえば、上記同期はずれ検出部17において同期はずれが検出された場合、移動局が基地局から遠ざかりつつある状況などのようにSIRが減少する傾向と判断し、読み出し部4fにて読み出されたCQI値から一定の値を減じる。
【0057】
このように、本実施の形態においては、上り同期はずれ検出部を設け、上り同期はずれ検出部の情報に基づいてCQI値を補正し、補正後のCQI値に基づいてMCSを決定することとした。これにより、上記遅延による問題が解消され、データの伝送効率が向上し、より高速のスループットを実現できる。
【0058】
なお、以上の実施の形態1〜7の処理は独立に実施可能なものとして記載したが、これに限らず、たとえば、上記実施の形態1〜7に記載の補正部(5,5a,5b,5c,5d,5e,5f)の機能を任意に組み合わせることとしてもよい。これにより、さらにCQI値の補正の精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかる基地局装置は、移動体通信システムに有用であり、特に、CQI値に基づいて適応変調を行う基地局装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明にかかる基地局装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかる基地局装置の実施の形態2の構成例を示す図である。
【図3】本発明にかかる基地局装置の実施の形態3の構成例を示す図である。
【図4】本発明にかかる基地局装置の実施の形態4の構成例を示す図である。
【図5】本発明にかかる基地局装置の実施の形態5の構成例を示す図である。
【図6】本発明にかかる基地局装置の実施の形態6の構成例を示す図である。
【図7】本発明にかかる基地局装置の実施の形態7の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 受信アンテナ
2 無線受信部
3 復調部
4,4a,4b,4c,4d,4e,4f 読み出し部
5,5a,5b,5c,5d,5e,5f 補正部
6,6a,6b,6c,6d,6e,6f CQI補正部
7 CQI履歴保持部
8 MCS決定部
9 適応変調部
10 無線送信部
11 送信アンテナ
12 TPC情報保持部
13 fD情報保持部
14 位置情報保持部
15 ACKフィールド誤り率保持部
16 CQIフィールド誤り率保持部
17 上り同期はずれ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号に含まれるCQI(Channel Quality Indication)値に基づいて、適応変調で使用するMCSを決定する基地局装置において、
移動局が伝送路状態を測定した時点から実際に適応変調後のデータを送信する時点までの時間経過に伴う伝送路状態の変動に応じて、前記CQI値を補正する補正手段と、
補正後のCQI値に基づいてMCSを決定するMCS決定手段と、
を備えることを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記補正手段は、
CQI値を保持しておくためのCQI履歴保持手段と、
前記CQI履歴保持手段に保持された所定数の過去のCQI値および最新のCQI値に基づいて現在または将来の伝送路状態を予測し、当該伝送路状態に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第1のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記第1のCQI補正手段は、
前記CQI履歴保持手段に保持された所定数の過去のCQI値および最新のCQI値を回帰分析し、当該回帰分析結果をCQI値の補正結果とすることを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
受信信号に含まれるTPC(Transmitter Power Control)ビット値を保持しておくためのTPC情報保持手段と、
前記TPC情報保持手段に保持されたTPCビット値に基づいて現在または将来の伝送路状態を予測し、当該伝送路状態に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第2のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1、2または3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記第2のCQI補正手段は、さらに、
TPCビット値を累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値を補正することを特徴とする請求項4に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記第2のCQI補正手段は、さらに、
前記TBC情報保持手段に保持された所定数の過去のTPCビット値および最新のTPCビット値に基づいて回帰分析し、当該回帰分析結果に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正することを特徴とする請求項4または5に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記補正手段は、
移動局の移動に伴うドップラー周波数情報(以下、fD情報と呼ぶ)を保持しておくためのfD情報保持手段と、
前記fD情報保持手段に保持されたfD情報に基づいて、前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第3のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の基地局装置。
【請求項8】
前記第3のCQI補正手段は、さらに、
fD情報を累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値を補正することを特徴とする請求項7に記載の基地局装置。
【請求項9】
前記第3のCQI補正手段は、さらに、
前記fD情報保持手段に保持された所定数の過去のfD情報および最新のfD情報に基づいて回帰分析し、当該回帰分析結果に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正することを特徴とする請求項7または8に記載の基地局装置。
【請求項10】
前記補正手段は、
受信信号に含まれる位置情報を保持しておくための位置情報保持手段と、
前記位置情報保持手段に保持された位置情報に基づいて、前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第4のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の基地局装置。
【請求項11】
前記第4のCQI補正手段は、さらに、
位置情報を累積加算し、当該加算結果に基づいてCQI値を補正することを特徴とする請求項10に記載の基地局装置。
【請求項12】
前記第4のCQI補正手段は、さらに、
前記位置情報保持手段に保持された所定数の過去の位置情報および最新の位置情報に基づいて回帰分析し、当該回帰分析結果に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正することを特徴とする請求項10または11に記載の基地局装置。
【請求項13】
前記補正手段は、
受信信号に含まれるACKフィールド誤り率を保持しておくためのACKフィールド誤り率保持手段と、
前記ACKフィールド誤り率保持手段に保持された所定数の過去のACKフィールド誤り率および最新のACKフィールド誤り率に基づいて、前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第5のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の基地局装置。
【請求項14】
前記第5のCQI補正手段は、さらに、
前記ACKフィールド誤り率保持手段に保持された所定数の過去のACKフィールド誤り率および最新のACKフィールド誤り率に基づいて回帰分析し、当該回帰分析結果に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正することを特徴とする請求項13に記載の基地局装置。
【請求項15】
前記補正手段は、
受信信号に含まれるCQIフィールド誤り率を保持しておくためのCQIフィールド誤り率保持手段と、
前記CQIフィールド誤り率保持手段に保持された所定数の過去のCQIフィールド誤り率および最新のCQIフィールド誤り率に基づいて、前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第6のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一つに記載の基地局装置。
【請求項16】
前記第6のCQI補正手段は、さらに、
前記CQIフィールド誤り率保持手段に保持された所定数の過去のCQIフィールド誤り率および最新のCQIフィールド誤り率に基づいて回帰分析し、当該回帰分析結果に基づいて前記受信信号に含まれるCQI値を補正することを特徴とする請求項15に記載の基地局装置。
【請求項17】
前記補正手段は、
上り方向の信号同期はずれを検出する同期はずれ検出手段と、
前記同期はずれ検出手段により同期はずれが検出された場合に、前記受信信号に含まれるCQI値を補正する第7のCQI補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一つに記載の基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−295842(P2006−295842A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117467(P2005−117467)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】