説明

基材の塗装方法

【課題】凹凸を有する基材の表面に塗装を施すにあたり、基材の凹部の内面にまで十分に塗料を行きわたらせて、基材の表面の全体に亘って塗装を施すことができる基材の塗装方法を提供する。
【解決手段】表面に凹凸を有する基材1を搬送しながらその表面に塗料9を塗布する基材の塗装方法に関する。略水平方向の周回軌道4を周回する噴射ノズル2を備える噴射塗装装置3を前記基材1の搬路5の上方にこの基材1の搬送方向に沿って複数設ける。前記複数の噴射塗装装置3のうち少なくとも一つの噴射塗装装置3の噴射ノズル2が他の噴射塗装装置3とは逆方向に周回するようにして各噴射塗装装置3の噴射ノズル2を周回回転させる。この状態で、前記基材1を搬送しながら前記噴射ノズル2から基材1の上面に向けて塗料9を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凹凸を有する外装建材等の基材に塗装を施す基材の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外装建材等として用いられる窯業系無機質板等の基材を塗装するにあたり、特に表面に凹凸を有するものについては、通常のロール塗装では表面の凹部にまで塗料を行きわたらせることが困難であるため、従来、略水平方向の周回軌道を周回する噴射ノズルを備える噴射塗装装置(ロータリースプレー塗装装置;特許文献1等参照)を用いた塗装が行われている。
【0003】
このような噴射塗装装置を用いて塗料の塗布を行うにあたっては、例えば上記のような噴射塗装装置を基材の搬路の上方に配置し、凹凸面が上方に配置されるようにして基材を搬送しながら、噴射塗装装置の噴射ノズルを略水平方向に周回回転させると共に下方の基材に向けて塗料を噴射するものであり、このようにして基材の表面の全面に亘って塗料を塗布し、このとき凹部の内面にも塗料9を十分に塗布しようとするものである。
【特許文献1】特開2000−61364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような噴射塗装装置を用いても、凹凸を有する基材の凹部の内面にまで十分に塗料を行きわたらせることは困難なものであった。特に、近年、外装建材として表面に深い凹凸模様を有する意匠性の高いものが要望されるようになっているが、このような深い凹凸を有する基材の表面に、凹部の内奥まで亘るように全体に亘って塗料を塗布することは非常に困難なものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、凹凸を有する基材の表面に塗装を施すにあたり、基材の凹部の内面にまで十分に塗料を行きわたらせて、基材の表面の全体に亘って塗装を施すことができる基材の塗装方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基材の塗装方法は、表面に凹凸を有する基材1を搬送しながらその表面に塗料9を塗布する基材の塗装方法において、略水平方向の周回軌道4を周回する噴射ノズル2を備える噴射塗装装置3を前記基材1の搬路5の上方にこの基材1の搬送方向に沿って複数設け、前記複数の噴射塗装装置3のうち少なくとも一つの噴射塗装装置3の噴射ノズル2が他の噴射塗装装置3とは逆方向に周回するようにして各噴射塗装装置3の噴射ノズル2を周回回転させた状態で、前記基材1を搬送しながら前記噴射ノズル2から基材1の上面に向けて塗料9を噴射することを特徴とするものである。周回運動する噴射ノズル2から塗料9が噴射される場合には、噴射時に塗料9自身が有している運動エネルギーと遠心力とに依存する方向に向けて塗料9の噴射方向が傾斜し、互いに逆方向に周回する噴射ノズル2からの塗料9の噴射方向はそれぞれ異なったものとなる。このため、噴射ノズル2が一方向のみに周回する場合では塗料9が塗布されにくい部分があっても、そのような部分には逆方向に周回する噴射ノズル2にて塗料9を塗布することができるようになり、凹凸を有する基材1の表面に塗料9を万遍なく行きわたらせることができる。
【0007】
本発明に係る他の基材の塗装方法は、表面に凹凸を有する基材1を搬送しながらその上面に塗料9を塗布する基材の塗装方法において、塗料塗布ロール10を有するロール塗装装置6を前記基材1の搬路5の上方に設けると共に、略水平方向の周回軌道4を周回する噴射ノズル2を備える噴射塗装装置3を前記基材1の搬路5の上方における前記ロール塗装装置6の下流側に設け、前記塗料塗布ロール10をその表面に塗料9を供給しながら回転させると共に前記噴射ノズル2を周回回転させた状態で、前記基材1を搬送しながら前記塗料塗布ロール10にて塗料9を塗布した後、前記噴射ノズル2から基材1の上面に向けて塗料9を噴射することを特徴とするものである。ロール塗装装置6にて基材1の表面に塗料9の塗布を行う際には、凹凸を有する基材1の表面の凸部の表面に塗料9が塗布されると共に、凹部7の開口縁付近に塗料9が付着してこの開口縁付近に塗料9の付着量が大きい液溜まり21が形成される。次いで噴射塗装装置3による塗料9の塗布によりその噴射圧力が基材1上の塗料9にかけられて塗膜における塗料9の流動が誘発され、凹部7の内側に塗料9が流入することとなり、このとき凹部7の開口縁の液溜まり21における塗料9が凹部7の内部に流入して、凹部7の内面に行きわたらせるために十分な塗料9が凹部7の内部に流入する。
【0008】
上記のような基材の塗装方法においては、基材1上面の凹部7の深さ寸法Dが、その開口幅寸法W以上であることが好ましく、このような深い凹部7を有する場合でも凹部7の内面にまで塗料7を行きわたらせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、基材の表面における凹部の内面などに塗料9が塗布されていない部分が生じるようなことを防止して、凹凸を有する基材1の表面に塗料9を万遍なく行きわたらせることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0011】
基材1としては適宜の材質・形状のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練して得られるセメント組成物を板状等に成形した後、この成形体を養生硬化することにより得られるセメント成形板等のような、窯業形無機質板を用いることができる。
【0012】
この基材1には表面に凹凸を形成する。このような凹凸は、例えば基材1として上記のようなセメント成形板を用いる場合には、セメント組成物を成形する際にロールプレスや平板プレス等により凹凸模様を転写成形したり、あるいは養生硬化後のセメント成形体に切削加工等を施したりすることにより形成することができる。
【0013】
基材1の表面の凹凸の形状は適宜のものとすることができるが、例えば基材1の表面に縦横複数条の溝を格子状に設けることにより溝の部分を凹部7、それ以外の部分を凸部8として形成することができる。例えば、図3(a)に示す例では、基材1の表面に断面V字状の凹部7を設けると共に、基材1の前記以外の部分を凸部8として形成している。また図示の例では凹部7を断面略V字状の溝として形成されているが、凹部7の断面形状はこのようなものに限られない。
【0014】
本発明では、このような凹凸を有する基材1に対して、図3(b)に示すように表面の全面に亘って塗料9を塗布して塗装を施すものであり、このとき基材1の凹部7の内面にも十分に塗料9を行きわたらせるものである。
【0015】
図1に、本発明に係る基材の塗装方法を実施するための工程の一例を示す。この塗装工程は、基材1の搬路5に沿って複数の噴射塗装装置3が設けられているものであり、図示の例では基材1の搬路5は複数の搬送ロール15を配設することにより構成され、この搬路5に沿って上流側から順に加熱装置11、裏面シーラー塗布装置12、第一の噴射塗装装置3a、砂散布装置13、第二の噴射塗装装置3b、加熱装置14が設けられている。
【0016】
加熱装置11は基材1を加熱することにより基材1を乾燥したり、基材1を塗料の塗布・成膜に適した温度(基材1の温度が低すぎることにより塗料9の成膜が阻害されるようなことがない温度)まで昇温させたりするために設けられる。
【0017】
また、裏面シーラー塗布装置12は、必要に応じて基材1の裏面にシーラーを塗布するために設けられる。シーラーは、塗装後の基材1の積載時に基材1の裏面と表面が重ねられた際に一方の基材1の表面の塗料が他方の基材1の裏面に付着して剥離することを防ぐ等の目的のために塗布される。図示の裏面シーラー塗布装置12は、基材1の搬路5の下方側にシーラー塗布ロール16及びドクターロール17が配設されており、シーラー塗布ロール16とドクターロール17との間にノズル18等からシーラーが供給され、このシーラーは、シーラー塗布ロール16が基材1の裏面と接触しながら回転することにより基材1の裏面に塗布されるようになっている。またシーラー塗布ロール16に対向する基材1の搬路5の上方側にはバックアップロール19が配設されおり、基材1がシーラー塗布ロール16とバックアップロール19との間で挟持された状態で基材1の裏面にシーラーが塗布されるようになっている。
【0018】
また、砂散布装置13は、基材1の表面に粒状の突起を設ける表面化粧を施すために設けられているものであり、必要に応じて適宜設けられるものである。砂散布装置13は、基材1の搬路5の上方に、砂を散布する散布ノズル20を設けて構成されている。
【0019】
また、加熱装置14は基材1に塗布された塗料9を加熱成膜するために設けられているものであり、その加熱温度及び加熱時間は、前記塗料9の組成に応じて適宜調整される。
【0020】
また、上記第一及び第二の各噴射塗装装置3は、略水平方向の周回軌道4を周回する噴射ノズル2を一又は複数個備えるものである。図示の噴射塗装装置3では、内部に塗料9の供給機構を備える回転体24の略鉛直の回転軸から斜め下方へ放射状に突出する複数の腕部25にそれぞれ噴射ノズル2が設けられており、複数の噴射ノズル2は前記回転軸を中心とする略水平な円周上に並んで配設されている。各噴射ノズル2は前記腕部25を介して供給された塗料9を下方に向けてスプレー噴射するものである。
【0021】
上記噴射塗装装置3は、回転体24を回転軸を中心に回転させることにより、各噴射ノズル2が略水平な円周軌道を周回回転するものであり、この噴射ノズル2の円周軌道の直径は、搬路5を搬送する基材1の幅寸法よりも大きくなるようになっている。また図示のように基材1を搬送方向と直交する方向に複数並べて配置した状態で搬送する場合には、一側端に配置された基材1の一側端縁と他側端に配置された基材1の他側端縁との間の幅寸法よりも、前記周回軌道4の直径が大きくなるようにする。
【0022】
ここで、上記のように形成される第一及び第二の噴射塗装装置3a,3bは、噴射ノズル2の周回方向が互いに逆方向となるように作動させるものである。
【0023】
このように構成される塗料9の塗布工程において基材1の塗装を施す場合には、まず基材1を上方側に凹凸面が配置されるようにし、搬送方向と直交する方向に複数枚(図示では二枚)並べて配置した状態で上記搬路5の始端に順次供給して搬送する。基材1はまず加熱装置11を通過することにより加熱される。このときの加熱条件は加熱の目的等に応じて適宜調整されるが、例えば基材1を塗料の塗布・成膜に適した温度まで昇温させる場合に基材1の温度が25〜45℃となるように加熱させることができる。
【0024】
次いで裏面シーラー塗布装置12にて裏面にシーラーが塗布される。シーラーとしては例えばアクリルスチレン系樹脂を含有し、そのイワタカップNK−2による粘度が9±2秒のものを用いることができ、またその塗布量は例えば13.1〜19.6g/m2(1.2〜1.8g/尺2)の範囲となるようにすることが好ましい。
【0025】
次に、基材1は第一の噴射塗装装置3aの下方を通過するものであり、このとき第一の噴射塗装装置3aは回転体24を回転させることにより噴射ノズル2が円周軌道を周回すると共に前記噴射ノズル2から塗料9を基材1に向けて噴射している状態で、基材1を通過させる。このとき噴射ノズル2が基材1の上方を横切るように通過する際には噴射ノズル2を開いて塗料9を噴射するようにし、基材1の上方を横切った後に円周軌道の両側部(基材1の搬送方向と直交する方向の両側部)に位置することによりその下方に基材1が配置されていない状態となったときは噴射ノズル2を閉じて塗料9を噴射しないようにして、塗料9の無駄を削減することが好ましい。
【0026】
このような第一の噴射塗装装置3aによる塗装を行う場合には、噴射ノズル2の周回回転速度は適宜のものとすることができるが、20〜40rpmの範囲にて周回回転させることが好ましい。また、噴射ノズル2からの塗料9の噴射圧力も適宜のものとすることができるが、例えば噴射ノズル2へ塗料9を10.8MPa(110kg/cm2)の圧力で供給すると同時にこの噴射ノズル2へエアーを0.49MPa(5kg/cm2)の圧力で供給することで噴射ノズル2から前記塗料9を噴射させることができる。
【0027】
このとき塗料9としては適宜のものを用いることができるが、例えばアクリル樹脂系エマルジョン塗料等のような有機塗料(有機エマルジョン塗料)を用いることができる。また、塗料9の粘度は噴射ノズル2からの噴射に適し、且つ基材1上面に膜状に塗布されるように適宜調整されるが、イワタカップNK−2による粘度が40±10秒の範囲となるようにすることが好ましい。またこの第一の噴射塗装装置3aによる塗料9の塗布量も適宜調整されるが、81.7〜92.6g/m2(7.7〜8.5g/尺2)の範囲となるようにすることが好ましい。
【0028】
次に、基材1は砂散布装置13を通過するものであり、このとき基材1に粒状の表面化粧を施す場合には、その上面に砂を散布する。砂の材質としては珪砂等を用いることができその粒子径、散布量等は適宜調整される。
【0029】
次に、基材1は第二の噴射塗装装置3bの下方を通過するものであり、このとき第二の噴射塗装装置3bにて上記第一の噴射塗装装置3aの場合と同様にして基材1の上面に塗料9を噴射するものであるが、このとき第二の噴射塗装装置3bの回転体24を、第一の噴射塗装装置3aとは反対側に回転させることにより噴射ノズル2を上記第一の噴射塗装装置3aとは逆方向に周回させ、この状態で噴射ノズル2から塗料9を噴射するものである。このとき塗料9としては、第一の噴射塗装装置3aにおけるものと同様の適宜のものを用いることができるが、通常は第一の噴射塗装装置3aと同一の塗料9が用いられる。また、第二の噴射塗装装置3bによる塗料9の塗布量は例えば81.7〜92.6g/m2(7.7〜8.5g/尺2)の範囲となるようにすることが好ましい。また基材1に塗布される塗料9の全体の塗布量は152〜196g/m2(14〜18g/尺2)の範囲とすることが好ましい。
【0030】
次に、基材1は加熱装置14を通過するものであり、このとき基材1に塗布された塗料9が加熱されることにより成膜する。このときの加熱条件は塗料9の組成や塗布量等に応じて適宜調整されるが、例えば120〜170℃で42秒間加熱することにより基材1の板温が80〜90℃となるように加熱することができる。
【0031】
上記のようにして基材1の塗装を行うようにすると、第一の噴射塗装装置3aにおける噴射ノズル2の周回方向と第二の噴射塗装装置3bにおける噴射ノズル2の周回方向とが互いに逆方向となることから、基材1の表面における凹部7の内面などに塗料9が塗布されていない部分が生じるようなことを防止して、凹凸を有する基材1の表面に塗料9を万遍なく行きわたらせることができる。すなわち、周回運動する噴射ノズル2から塗料9が噴射される場合には、噴射時に塗料9自身が有している運動エネルギーと遠心力とに依存する方向に向けて塗料9の噴射方向が傾斜することとなる。このため、互いに逆方向に周回する噴射ノズル2からの塗料9の噴射方向はそれぞれ異なったものとなり、塗料9が基材1の上方側から種々の方向に噴射されることとなる。これにより噴射ノズル2が一方向のみに周回する場合では塗料9が塗布されにくい部分があっても、そのような部分には逆方向に周回する噴射ノズル2にて塗料9を塗布することができるようになり、上記のように凹凸を有する基材1の表面に塗料9を万遍なく行きわたらせることができるものである。
【0032】
噴射塗装装置3を設ける場合には、上記のような形態に限られるものではなく、例えば基材1の搬路5に沿って三つ以上の噴射塗装装置3を設けると共にこのうち少なくとも一つの噴射塗装装置3の噴射ノズル2が他の噴射塗装装置3とは逆方向に周回するようにして各噴射塗装装置3の噴射ノズル2を周回回転させるようにすれば良い。
【0033】
図2に、本発明に係る基材の塗装方法を実施するための工程の他例を示す。この塗装工程は、基材1の搬路5に沿って上流側にロール塗装装置6を、下流側に噴射塗装装置3をそれぞれ設けたものであり、図示の例ではこの搬路5に沿って上流側から順に加熱装置11、ロール塗装装置6、砂散布装置13、噴射塗装装置3、加熱装置14が設けられている。
【0034】
加熱装置11、砂散布装置13及び加熱装置14としては、上記図1に示すものと同様のものが設けられる。
【0035】
また、ロール塗装装置6では、基材1の搬路5の上方側に塗料塗布ロール10とドクターロール22とが配設されており、塗料塗布ロール10とドクターロール22との間にノズル23等から塗料9が供給されるようになっている。この塗料9は塗料塗布ロール10が基材1の表面と接触しながら回転することにより基材1の表面に塗布されるようになっている。塗料塗布ロール10の周面の材質としては、スポンジ、ゴム等のような可撓性のある軟質の材質を採用することが好ましい。
【0036】
また、図示のロール塗装装置6は、裏面シーラー塗布装置12としての機能を兼ね備えている。すなわち、上記塗料塗布ロール10と対向する基材1の搬路5の下方側にはシーラー塗布ロール16及びドクターロール17が配設されており、シーラー塗布ロール16とドクターロール17との間にノズル18等からシーラーが供給され、このシーラーは、シーラー塗布ロール16が基材1の裏面と接触しながら回転することにより基材1の裏面に塗布されるようになっている。またシーラー塗布ロール16に対向する塗料塗布ロール10がバックアップロール19としての機能を果たし、基材1がシーラー塗布ロール16と塗料塗布ロール10との間で挟持された状態で基材1の裏面にシーラーが塗布されるようになっている。
【0037】
また、噴射塗装装置3としては、上記図1に示すものと同様の構成を有するものを設けることができる。
【0038】
このように構成される塗料9の塗布工程において基材1の塗装を施す場合には、まず基材1を上方側に凹凸面が配置されるようにし、搬送方向と直交する方向に複数枚(図示では二枚)並べて配置した状態で上記搬路5の始端に順次供給して搬送する。基材1はまず加熱装置11を通過することにより所定の温度に加熱される。
【0039】
次に、基材1は裏面シーラー塗布装置12を兼ねるロール塗装装置6にて表面に塗料9が塗布されると共に裏面にシーラーが塗布される。シーラーの組成や塗布量は、上記図1に示す実施形態と同様のものとすることができる。
【0040】
このようなロール塗装装置6にて基材1の表面に塗料9の塗布を行う際には、凹凸を有する基材1の表面の凸部8の表面に塗料9が塗布されるが、凹部7の内部にまでは塗料9は行きわたりにくい。しかし、塗料塗布ロール10が基材1の凹部7と接触する際には、前記凹部7と合致する塗料塗布ロール10の表面の塗料9が凹部7の開口縁付近に付着し、この開口縁付近に図4(a)に示すように塗料9の付着量が大きい部分(液溜まり21部)が形成される。特に塗料塗布ロール10として軟質の材質からなるものを用いる場合には、塗料塗布ロール10と基材1とが接触する際に凹部7の位置において塗料塗布ロール10が凹部7の内側へ絞り込まれるように変形し、このため液溜まり21部における塗料9の付着量が特に大きくなる。
【0041】
ロール塗装装置6にて塗布する塗料9としては、図1に示す形態において噴射塗装装置3にて塗装を行うものと同様に適宜のものを用いることができる。また、塗料9の粘度は塗料塗布ロール10による塗布に適し、且つ基材1上面に膜状に塗布されると共に液溜まり21において十分な塗料9の付着量が確保されるように適宜調整されるが、イワタカップNK−2による粘度が40±10秒の範囲となるようにすることが好ましい。またこのロール塗装装置6による塗料9の塗布量も適宜調整されるが、81.7〜92.6g/m2(7.7〜8.5g/尺2)の範囲となるようにすることが好ましい。
【0042】
次に、基材1は砂散布装置13を通過するものであり、このとき基材1に粒状の表面化粧を施す場合には、その上面に砂を散布する。砂の材質、粒子径、散布量等は図1に示す実施形態と同様に適宜調整される。
【0043】
次に、基材1は噴射塗装装置3の下方を通過するものであり、このとき第一の噴射塗装装置3aは回転体24を回転させることにより噴射ノズル2が円周軌道を周回すると共に前記噴射ノズル2から塗料9を基材1に向けて噴射している状態で、基材1を通過させる。このとき噴射ノズル2が基材1の上方を横切るように通過する際には噴射ノズル2を開いて塗料9を噴射するようにし、基材1の上方を横切った後に円周軌道の両側部(基材1の搬送方向と直交する方向の両側部)に位置することによりその下方に基材1が配置されていない状態となったときは噴射ノズル2を閉じて塗料9を噴射しないようにして、塗料9の無駄を削減することが好ましい。
【0044】
このように噴射塗装装置3による塗料9の塗布を行う際には、基材1の表面には上記ロール塗装装置6にて塗布された未硬化の塗料9の塗膜が形成されているが、この塗膜に噴射塗装装置3から塗料9が噴射されると、その噴射圧力が基材1上の塗料9にかけられるために、図4(b)に示すように前記塗膜における塗料9の流動が誘発され、凹部7の内側に塗料9が流入することとなる。このため、ロール塗装装置6による塗装の際に凹部7の内面に十分に塗料9が塗布されていなくても、噴射塗装装置3による塗料9の噴射にて凹部7に塗料9を流入させ、図4(c)に示すように塗料9を凹部7の内面に十分に行きわたらせることができる。しかも、このとき凹部7の開口縁には上記のように液溜まり21が生じているため、この液溜まり21における塗料9が凹部7の内部に流入することにより、凹部7の内面に行きわたらせるために十分な塗料9が凹部7の内部に流入することとなるものである。
【0045】
このような噴射塗装装置3による塗装を行う場合には、噴射ノズル2の周回回転速度は適宜のものとすることができるが、20〜40rpmの範囲にて周回回転させることが好ましい。また、噴射ノズル2からの塗料9の噴射圧力も、この塗料9の噴射によりロール塗装装置6にて塗布された未硬化の塗料9の塗膜における塗料9の流動を十分に促進することができるように適宜調整されるが、例えば噴射ノズル2へ塗料9を10.8MPa(110kg/cm2)の圧力で供給すると同時にこの噴射ノズル2へエアーを0.49MPa(5kg/cm2)の圧力で供給することで噴射ノズル2から前記塗料9をスプレー噴射させることができる。このとき塗料9としては、図1に示す実施形態での噴射塗装装置3(3a,3b)におけるものと同様の適宜のものを用いることができるが、通常はロール塗装装置6と同一の塗料9が用いられる。また、噴射塗装装置3による塗料9の塗布量は例えば81.7〜92.6g/m2(7.7〜8.5g/尺2)の範囲となるようにすることが好ましい。また基材1に塗布される塗料9の全体の塗布量は152〜196g/m2(14〜18g/尺2)の範囲とすることが好ましい。
【0046】
次に、基材1は加熱装置14を通過するものであり、このとき基材1に塗布された塗料9が加熱されることにより成膜する。このときの加熱条件は塗料9の組成や塗布量等に応じて適宜調整されるが、例えば80〜100℃で50秒間加熱することにより基材1の板温が50〜80℃となるようにすることができる。
【0047】
上記のようにして基材1の塗装を行うようにすると、基材1の表面における凹部7の内面などに塗料9が塗布されていない部分が生じるようなことを防止して、凹凸を有する基材1の表面に塗料9を万遍なく行きわたらせることができるものである。
【0048】
これら各実施形態に示す塗装方法は、特に開口幅寸法Wに比して深さ寸法Dが大きい凹部7が形成された基材1の塗装に好適なものである。すなわち、噴射ノズル2を一方向にのみ周回させる場合での噴射塗装装置3による塗装や、ロール塗装装置6のみによる塗装では凹部7の内面まで塗料9を行きわたらせることが難しく、特に凹部7の開口幅寸法Wよりもその深さ寸法Dが大きい場合にはそれが著しく困難となるものであるが、上記各実施形態に示すような塗装方法によれば、凹部7の深さ寸法Dがその開口幅寸法W以上である場合であっても、凹部7の内部に塗料9を確実に塗布することができるものである。このような効果は、特に凹部7の開口幅寸法Wと深さ寸法Dと前者対後者の比が1:1〜3:5の範囲であるときに著しく発揮される。また、凹部7の寸法は例えば開口幅寸法Wを3〜7mm、深さ寸法Dは5〜10mmの範囲とすることが好ましく、具体的な一例を挙げると、凹部7として20mm間隔で開口幅寸法Wを5mm、深さ寸法Dを7mmの溝を縦横複数条設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明の実施の形態の他例を示すものであり(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図3】(a)は基材の一例を示す断面図、(b)は(a)に示す基材に塗料を塗装した状態を示す断面図である。
【図4】図2に示す実施の形態において基材に塗料が塗布される様子を示すものであり、(a)乃至(c)は断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基材
2 噴射ノズル
3 噴射塗装装置
4 周回軌道
5 搬路
6 ロール塗装装置
7 凹部
9 塗料
10 塗料塗布ロール
W 開口幅寸法
D 深さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹凸を有する基材を搬送しながらその表面に塗料を塗布する基材の塗装方法において、略水平方向の周回軌道を周回する噴射ノズルを備える噴射塗装装置を前記基材の搬路の上方にこの基材の搬送方向に沿って複数設け、前記複数の噴射塗装装置のうち少なくとも一つの噴射塗装装置の噴射ノズルが他の噴射塗装装置は逆方向に周回するようにして各噴射塗装装置の噴射ノズルを周回回転させた状態で、前記基材を搬送しながら前記噴射ノズルから基材の上面に向けて塗料を噴射することを特徴とする基材の塗装方法。
【請求項2】
表面に凹凸を有する基材を搬送しながらその上面に塗料を塗布する基材の塗装方法において、塗料塗布ロールを有するロール塗装装置を前記基材の搬路の上方に設けると共に、略水平方向の周回軌道を周回する噴射ノズルを備える噴射塗装装置を前記基材の搬路の上方における前記ロール塗装装置の下流側に設け、前記塗料塗布ロールをその表面に塗料を供給しながら回転させると共に前記噴射ノズルを周回回転させた状態で、前記基材を搬送しながら前記塗料塗布ロールにて塗料を塗布した後、前記噴射ノズルから基材の上面に向けて塗料を噴射することを特徴とする基材の塗装方法。
【請求項3】
基材上面の凹部の深さ寸法が、その開口幅寸法以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−205048(P2006−205048A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20207(P2005−20207)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】