説明

基材への撥グリース性、撥油性、及び撥水性の付与方法

本発明は、基材への撥グリース性、撥油性及び撥水性の付与方法であって、少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含む組成物を前記基材の表面の少なくとも一部上に印刷法によって塗布する工程を含む方法に関する。本出願人は、本発明の方法を用いて、目標特性のために必要とされるフルオロ含有添加物の総量をかなり低減することにより、選択的処理/コーティングによって好適な撥グリース性、撥油性及び撥水性特性を基材に付与することが可能であることを見いだした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される、2008年7月1日出願の米国仮特許出願第61/007307号明細書の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ある種のフッ素化添加物の使用を伴う、基材への撥グリース性、撥油性及び撥水性の改良された付与方法に関する。
【背景技術】
【0003】
撥グリース性、撥油性、撥ワックス性及び撥溶剤性を付与するためのフルオロケミカルでの基材、特に包装基材(例えばセルロース基材)の添加(additivation)は、ずっと前から知られてきた。
【0004】
これらの化合物は、脂肪食品に短期間(ハンバーガー、ファストフード製品、ポップコーン用のクラムシェルまたはバッグ、チップス用の小厚紙タブなど)用に、及びより長期間(脂肪食品、犬及び猫用食物、ビスケット用の柔軟なパッケージ)用に使用されるのに好適な基材の製造のために使用されている。
【0005】
この用途向けに好適な、商業的に入手可能なフルオロケミカル改質剤のうち、(パー)フルオロポリエーテルをベースとするものは、パーフルオロアルキル含有相当品に対して、より良好なそれらのHSE及び毒性プロフィールならびにそれらの受け入れることができる撥油性及び撥水性特性のために、よりいっそう注目を集めてきた。
【0006】
基材、特にセルロース基材に撥油性を付与するための技法のうちで、ポリウレタン主鎖中にパーフルオロオキシアルキレン鎖を含む(パー)フルオロポリエーテル誘導体での処理(例えば、(特許文献1)(AUSIMONT SPA(イタリア国))2003年1月8日及び(特許文献2)2003年12月10日を参照されたい)またはホスフェート基を含む(パー)フルオロポリエーテル誘導体での処理(例えば(特許文献3)(AUSIMONT SPA(イタリア国))1997年11月25日、(特許文献4)(AUSIMONT SPA(イタリア国))2001年10月4日、(特許文献1)(AUSIMONT SPA(イタリア国))2003年1月8日、及び(特許文献5)(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)2003年12月17日に教示されているように)またはカルボキシル基を有する(パー)フルオロポリエーテル誘導体での処理((特許文献6)(SOLVAY SOLEXIS SPA(イタリア国))2004年12月8日及び(特許文献7)(SOLVAY SOLEXIS SPA(イタリア国))2004年12月22日に示されているように)が公知である。
【0007】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体は典型的には、製紙工場での基材の製造それ自体中にセルロース基材へ組み込まれる。実際、前記誘導体は、抄紙機でのサイズプレス処理、コーティング処理、カレンダー水室処理、ウェットエンド処理のいずれかで用いられる調合物に一般に導入される。
【0008】
抄紙機は実際、一般にヘッドボックス、ワイヤ部分、プレス部分及び乾燥機部分からなる大きな脱水装置であって、それを通して水が流れ去る微細格子上へ均一に供給される、繊維、及びおそらくフィラー、染料及び他の化学薬品の希薄懸濁液から出発して、繊維ウェブがその後の圧締及び乾燥段階へ搬送される脱水装置である。
【0009】
ウェットエンド処理では、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、最初の繊維懸濁分散液に導入され、ウェブ形成中に繊維上へ沈着させられる。
【0010】
サイズプレス処理に使用されるとき、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、紙の繊維ウェブをロールニップの上に置かれたサイジング液溜め中へ通すことによって紙の繊維ウェブに含浸させられる。結果として、紙ウェブは、(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含むサイジング液を吸収する。
【0011】
コーティング処理に使用されるとき、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、紙の繊維ウェブをコーター、典型的にはロッドまたは計量供給ブレードに通すことによって紙の繊維ウェブに含浸させられる。結果として、(パー)フルオロポリエーテル誘導体のコーティングの薄膜が紙ウェブの表面に塗布される。
【0012】
カレンダー水室で使用されるとき、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、紙の繊維ウェブを、水室を備えたカレンダースタックに通すことによって紙の繊維ウェブに含浸させられる。水室は、(パー)フルオロポリエーテル誘導体の希薄溶液をカレンダーロールに塗布し、それは次に紙ウェブに転写される。
【0013】
それにもかかわらず、全てのこれらの方法では、かなりの量の(パー)フルオロポリエーテル誘導体が基材の全体厚さ及び表面に浸透させられるが、撥水性及び撥油性は、製造された基材の、特に紙の特定エリアの表面で必要とされるにすぎない。また、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、破れた、及び化粧裁ちした紙と共に失われる。実際、セルロース基材については、(パー)フルオロポリエーテル誘導体コスト寄与は紙の最終コストの高い割合を示し:乾燥繊維に対して0.1〜1重量%の範囲の量で存在する場合でさえ、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、(プロセス水、エネルギー及びセルロースを含む)総コストの10%〜50%までを示す。従ってこれらの添加物の消費量、それらのリサイクル及び不適切なサイジングを低減することが絶対必要である。
【0014】
さらに、前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、処理基材の接着性及び印刷性を妨げる可能性がある。製紙工場で行われる処理は選択的ではなく、全体厚さ及び表面が完全に変性されるので、それらから得られる紙の接着性及び印刷性は不十分であり、その結果最終部品は、これらの欠点を覆すための追加のコーティング/表面処理を一般に施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1273704 A号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1369442 A号明細書
【特許文献3】米国特許第5,691,000号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1138826 A号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1371676 A号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1484445 A号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1489124 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、撥グリース性、撥油性及び撥水性を基材、特に包装基材に付与するための新規方法であって、最終パッケージング、バッグなどを製造するために必要とされる場合、接着性及び印刷性を維持しながら、より経済的であり、かつ、基材上への添加物のより適合した塗布を提供する方法を提供する必要があると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って本発明の目的は、基材への撥グリース性、撥油性及び撥水性の付与方法であって、少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含む組成物を前記基材の表面の少なくとも一部上に印刷法によって塗布する工程を含む方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本出願人は、本発明の方法を用いて、目標特性のために必要とされるフルオロ含有添加物の総量をかなり低減することにより、選択的処理/コーティングによって好適な撥グリース性、撥油性及び撥水性特性を基材に付与することが可能であることを見いだした。
【0019】
本発明の方法に使用される基材は典型的には、とりわけ本当に好ましいものであるセルロース基材を含む、包装用途に使用されるものである。
【0020】
セルロース基材には、とりわけ紙(例えばクラフト紙)、板紙(例えば中空でない漂白サルファイト板紙)及び他のセルロース繊維アセンブリを含む、全てのタイプ及び種類のセルロース含有材料がとりわけ含まれる。
【0021】
用語「(パー)フルオロポリエーテル誘導体」は、繰り返し単位(R1)を含むポリマーであって、前記繰り返し単位が少なくとも1つのエーテル結合を主鎖中に、及び少なくとも1個のフッ素原子を含むポリマー(フルオロポリオキシアルケン鎖)を意味するために本明細書によって用いられる。
【0022】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体のフルオロポリオキシアルケン鎖の数平均分子量は、一般に少なくとも400、好ましくは少なくとも600である。
【0023】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体のフルオロポリオキシアルケン鎖の数平均分子量は、一般に多くとも100,000、好ましくは多くとも20,000である。
【0024】
良好な結果は、400〜100,000の間に含まれる平均分子量を有するフルオロポリオキシアルキレン鎖を有する(パー)フルオロポリエーテル誘導体で得られた。
【0025】
優れた結果は、500〜10,000の間に含まれる平均分子量を有するフルオロポリオキシアルキレン鎖を有する(パー)フルオロポリエーテル誘導体で得られた。
【0026】
好ましくは、(パー)フルオロポリエーテル誘導体の繰り返し単位R1は、
(I)−CFX−O−(式中、Xは−Fまたは−CFである);及び
(II)−CF−CFX−O−(式中、Xは−Fまたは−CFである);及び
(III)−CF−CF−CF−O−;及び
(IV)−CF−CF−CF−CF−O−;及び
(V)−(CF−CFZ−O−(式中、jは0〜3の整数であり、Zは、本明細書で上のクラス(I)〜(IV)のうちから選択される1〜20個の繰り返し単位を含むフルオロポリオキシアルケン鎖である);
及びそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0027】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体が異なるタイプの繰り返し単位R1を含む場合、有利には前記繰り返し単位は、フルオロポリオキシアルケン鎖に沿ってランダムに分布する。
【0028】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、「中性」または「官能性」であることができる。
【0029】
中性(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、フルオロポリオキシアルケン鎖を含み、官能基を含まないポリマーであり;前記中性(パー)フルオロポリエーテル誘導体の末端基は典型的には、水素またはハロゲン(例えば塩素)原子を任意選択的に含む、フルオロカーボン基である。
【0030】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体は好ましくは、官能性(パー)フルオロポリエーテル、すなわち、上に定義されたような、フルオロポリオキシアルケン鎖と、フッ素以外のヘテロ原子、好ましくはO、S、N、P、Si及びそれらの混合物のうちから選択されるヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基とを含むポリマーである。
【0031】
本明細書で用いるところでは、用語「官能基」は、有機化学において意図されるようなその一般的な意味を有し、それは、特有の反応性及び化学的特性を(パー)フルオロポリエーテル誘導体に付与する、フルオロポリオキシアルケン鎖の炭素骨格に結合した原子または原子の組み合わせを包含する。
【0032】
好ましくは、官能性(パー)フルオロポリエーテルは、本明細書で下の式(I):
−(CFX)−O−R−(CFX)p’−T (I)
(式中、
− Xのそれぞれは独立してFまたはCFであり;
− 互いに等しいかまたは異なる、p及びp’は0〜3の整数であり;
− Rは、上に定義されたようなフルオロポリオキシアルケン鎖であり;
− 互いに同じものまたは異なるものである、T及びTの少なくとも1つは、任意選択的に別のフルオロポリオキシアルケン鎖に結合した、O、S、N、P、Si及びそれらの混合物のうちから選択されるヘテロ原子を含む官能基であり;
− 残りのTまたはTは、もしあれば、H、ハロゲン原子、C〜C30末端基のうちから選択される)
に従う化合物である。
【0033】
本発明の第1実施形態によれば、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、カルボン酸及びその誘導体(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)からなる群から選択される少なくとも1つの官能基[(パー)フルオロポリエーテルカルボキシレート誘導体]を含む。
【0034】
この第1実施形態による(パー)フルオロポリエーテルカルボキシレート誘導体は好ましくは式:
T−O−Rf1−T(式中、
それぞれ等しいかまたは異なる、Tのそれぞれは、−CF−COOXaまたは−CFCF−COOXaであり;
f1は、繰り返し単位(R°)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、鎖に沿って統計的に分布する前記繰り返し単位(R°)は、(CFXO)、(CFCFO)、(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、(CRCFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFCF(CF)O)(ここで、X=F、CFであり;互いに等しいかまたは異なる、R及びRは、H、Cl、または1〜4個の炭素原子のパーフルオロアルキルのうちから選択される)の1つ以上のうちから選択され;XaはH、金属(好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)または式N(R(ここで、それぞれ等しいかまたは異なる、Rのそれぞれは、H、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)のアンモニウム基である)
に従う。
【0035】
(パー)フルオロポリオキシアルキレンRf1は好ましくは、500〜10,000の範囲の数平均分子量を有する。
【0036】
(パー)フルオロポリオキシアルキレンRf1は好ましくは、以下の構造:
(A) −(CFCF(CF)O)(CFYO)−(式中、YはFまたはCFであり;a及びbは、分子量が上記の範囲内であるような整数であり;a/bは10〜100の間である);
(B) (CFCF(CF)O)(CFYO)−CF(R’)CF−O−(CFCF(CF)O)(CFYO)−(式中、R’はC1〜4(パー)フルオロアルキレン基である);
(C) −(CFCFO)(CFO)(CF(CFO)−(式中、c、d及びhは、分子量が上記の範囲内であるような整数≧0であり;c/dは0.1〜10の間であり;h/(c+d)は0〜0.05の間であり;zは2または3である);
(D) −(CFCF(CF)O)(CFCFO)(CFYO)−(式中、YはFまたはCFであり;e、f、gは、分子量が上記の範囲内であるような整数≧0であり;e/(f+g)は0.1〜10の間であり、f/gは2〜10の間である);
(E) −(CF(CFO)−(式中、sは上記の分子量を与えるような整数であり、zは上に定義された意味を有する):
(F) −(CRCFCFO)j’−(式中、R及びRは互いに等しいかまたは異なり、H、Clまたはパーフルオロアルキルから選択され;j’は、分子量が上に示されたものであるような整数≧0である);
(G) −(CRCFCFO)p’−R’−O−(CRCFCFO)q’−(式中、R’はC1〜4(パー)フルオロアルキレン基であり;p’及びq’は、分子量が上述のものであるような整数≧0である);
(H) −(CF(CF)CFO)j’’−(R’)−O−(CF(CF)CFO)j’’’(j’’及びj’’’は、上記の分子量を与えるような整数≧0であり、R’はC1〜4(パー)フルオロアルキレン基である)
のうちから選択される。
【0037】
この第1実施形態による(パー)フルオロポリエーテルカルボン酸誘導体は最も好ましくは、式:
−O−(CFCFO)(CFO)−T
(式中、
=−CF−COOXまたは−CFCF−COOXであり;m及びnは、数平均分子量が500〜10,000の範囲にあるような整数であり、m/nは0.1〜10であり、Xは上に定義されたような意味を有する)
に従う。
【0038】
これらの(パー)フルオロポリエーテルカルボン酸誘導体は、無機または有機塩基、好ましくはNaOH、KOH、NHOH、RN型(式中、互いに等しいかまたは異なる、R、R、Rは、H、アルキルまたはヒドロキシアルキルである)(例えばメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン)での相当する酸の中和によって得られる塩の形態で本発明の方法に好ましくは使用される。
【0039】
本発明の第2実施形態によれば、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、ホスフェート基及びそれらの誘導体(酸、エステルなど)から選択される少なくとも1つの官能基[(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体]を含む。
【0040】
この第2実施形態による(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体は好ましくは、式(P−1)または(P−2)
[Rf1t−CFY−L−O]P(O)(OX3−m (P−1)
(XO)P(O)[O−L−CFY−O−Rf1−CFY−L−O−P(O)(OX)]m’(OX) (P−2)
(式中、Rf1tは、Tが、HまたはClを任意選択的に含む、(パー)フルオロアルキルC1〜3基である、−Rf1−Tに等しく;Rf1は、上に詳述されたものと同じ意味を有し;mは、1〜3(好ましくは1または2)の整数であり;m’は、0〜20(好ましくは0〜4)の整数であり、YはFまたはCFであり;Lは結合または二価有機基であり;Xは、H、金属(好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)または式N(R(ここで、それぞれ等しいかまたは異なる、Rのそれぞれは、H、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)のアンモニウム基である)
に従う。
【0041】
二価基Lは好ましくは、n及びqが0〜8、好ましくは0〜3の整数である、−CH(OCHCH−及びCONR’−(CH−のうちから選択される。
【0042】
この第2実施形態による(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体はより好ましくは、式(P−3)または(P−4):
[T−(CFCF(CF)O)p1(CFYO)p2−CF−CH(OCHCHn’−O]mp’P(O)(OX3−m’ (P−3)
(XO)P(O)[O−(CHCHO)n’CH−CF−O−(CFCFO)p3(CFO)p4−CF−CH(OCHCHn’−O−P(O)(OX)]mp’’(OX) (P−4)
(式中、Tは、1個以上のCl原子を任意選択的に含む、C1〜3(パー)フルオロアルキル基であり、p1>0、p2≧0、p1+p2は、分子量が500〜10,000内にあるようなものであり;p1/p2は好ましくは10〜100であり;n’は0〜3であり;mpは1または2であり;p3>0、p4≧0、p3+p4は、分子量が500〜10,000内にあるようなものであり;p3/p4は好ましくは0.1〜10であり;mp’’は1〜10である)
に従う。
【0043】
本発明の第3実施形態によれば、(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、式(U−1):
【化1】

(式中、Eは、1つ以上の芳香環を任意選択的に含む、線状または分岐の、二価の炭化水素基である)
のウレタン部分から選択される少なくとも1つの官能基を含む[(パー)フルオロポリエーテルウレタン誘導体]。
【0044】
(パー)フルオロポリエーテルウレタン誘導体は有利には、式(U−1)のウレタン部分に加えて、とりわけ、イオン性基(例えばアニオン性またはカチオン性)、不飽和基(例えば架橋性二重結合)であることができる、少なくともさらなる官能基を含む。
【0045】
この第3実施形態の(パー)フルオロポリエーテルウレタン誘導体は好ましくは、上記のようなフルオロポリオキシアルケン鎖を含む少なくとも1つのフッ素化ブロックと、1つ以上の芳香族または脂環式基を任意選択的に含む、2〜14個の炭素原子を有する炭化水素鎖[鎖(RHC)]を含む少なくとも1つの官能性ブロックとを含む(パー)フルオロポリエーテルイオン性ポリウレタンポリマー[ポリマー(PUR)]であって、前記鎖(RHC)が少なくとも1つのイオン性基を含み、前記ブロックが、上に詳述されたような、式(U−1)のウレタン部分によって連結されているポリマー(PUR)である。
【0046】
表現「フルオロポリオキシアルケン鎖を含む少なくとも1つのフッ素化ブロック」及び「炭化水素鎖[鎖(RHC)]を含む少なくとも1つの官能性ブロック」は、ポリマー(PUR)が1つまたは2つ以上のフッ素化ブロックと1つまたは2つ以上の官能性ブロックとを含んでもよいことを意味すると理解される。一般に、ポリマー(PUR)は、幾つかのフッ素化ブロックと幾つかの官能性ブロックとを含む。任意選択的に、加えて、ポリマー(PUR)は、周知のポリウレタン改質剤に、例えば連鎖延長剤などに由来する追加の繰り返し単位を含む可能性がある。
【0047】
ポリマー(PUR)の鎖(RHC)は、少なくとも1つのイオン性基、すなわち適切なpH条件でカチオン性またはアニオン性基をもたらす基を含む。好適なイオン性基のうち、式−SOHのスルホン酸基を、式−COOHのカルボン酸基を、ならびに式−N(R)−(式中、Rは、H及び1〜6個の炭素原子を有する炭化水素のうちから選択される)の鎖(RHC)主鎖中に含まれるか、−N(RN1)(RN2)(式中、互いに等しいかまたは異なる、RN1及びRN2は独立して、H及び1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基から選択される)として側基中に含まれるかのどちらかの、アミン基をとりわけ挙げることができる。
【0048】
好ましい鎖(R’HC)は、
(j)式:
【化2】

(式中、Tは、2〜12個の炭素原子を含む、線状または分岐の、環式または非環式の、脂肪族または芳香族の、炭化水素三価基であり;式−T(COOH)−の鎖(R’HC)は好ましくは次のもの:
【化3】

のうちから選択される)
のカルボン酸含有鎖(RHC
(jj)式:
【化4】

(式中、RN1及びRN2は、上に定義されたような意味を有し、Qは、2〜12個の炭素原子を含む、線状または分岐の、環式または非環式の、脂肪族または芳香族の、炭化水素三価基であり;式−Q[N(RN1)(RN2)]−の鎖(R’’HC)は好ましくは、本明細書で下の式:
【化5】

(ここで、RN1及びRN2は、上に定義されたような意味を有し、好ましくはRN1及びRN2は独立して、線状または分岐の、C〜Cアルキル基のうちから選択され;m、m’、m’’は0〜4の整数であり、ただし、m及びm’’の少なくとも1つはゼロより大きく;Rは、Hまたは線状または分岐の、C〜Cアルキル基である)
に従う)
のアミン含有鎖(R’’HC)。好ましいアミン含有鎖(R’’HC)は、式−CH(CH−N(C)−CH−及び/または−CH(CH−N(CH)−CH−のものである;
(jjj)式:
【化6】

(式中、RN1は、上に定義されたような意味を有し、好ましくはRN1は、C〜Cアルキル基のうちから選択され;K及びK’は、1〜6個の炭素原子を有する二価の炭化水素基である)
のアミン含有鎖(R’’’HC
のうちから選択される。
【0049】
ウレタン部分の二価の炭化水素基Eはとりわけ、
【化7】

及びそれらの混合物
(式中、
− nは、1〜12、好ましくは6に等しい整数であり;
− Jは、単結合;メチレン基(−CH−);酸素原子(−O−);−C(CH−基;−C(CF−基;−SO−基;−C(O)−基のうちから選択される二価の橋架け基であり;好ましくはJはメチレン基であり;
− それぞれ等しいかまたは異なる、R、R、R、Rのそれぞれは独立して、ハロゲン原子(例えばCl、Br、F)、C〜C炭化水素基(例えばメチル、エチル)、とりわけ−OR、−NRH’H’’、−C(O)−RH’’’(ここで、互いに等しいかまたは異なる、R、RH’、RH’’、RH’’’は独立して、それぞれ水素原子またはC〜C炭化水素基である)のような置換基であり;
− n、n、nは独立して、0〜4から選択される整数であり;
− nは、0〜10の整数である)
から選択される。
【0050】
本発明の組成物のポリマー(PUR)は、
− 本明細書で下の式(U−2):
Z−O−Rf1−Y 式(U−2)
(式中、
− Rf1は、上に定義されたものと同じ意味を有し;
− 互いに等しいかまたは異なる、Z及びYはそれぞれ、独立して、式−CFCHO(CHCHO)s’H(ここで、それぞれ等しいかまたは異なる、s’は、0〜5の整数のうちから選択される)に従う官能性ヒドロキシル基である)に従う少なくとも1つのヒドロキシル末端パーフルオロポリオキシアルキレン;ならびに
− 少なくとも1つのイオン性基を含む式HO−RHC−OH(式中、RHCは、上に定義されたものと同じ意味を有する)の少なくとも1つの官能化ジオールを;
− 式OCN−E−NCO(式中、Eは、上に定義されたような意味を有する)の少なくとも1つのジイソシアネート、ならびに、任意選択的に、
− 式HO−Rジオール−OHのジオール及び/または式HN−Rジアミン−NHのジアミン(式中、Rジオール及びRジアミンは、追加の官能基を任意選択的に含有する、C〜C14炭化水素基である)のうちから選択される60〜450g/モルの分子量の1つ以上の連鎖延長剤と
を反応させることによってとりわけ製造することができる。
【0051】
好ましくは、式OCN−E−NCOのジイソシアネートは、次のもの:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12−MDI)、シクロヘキシル−1,4−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)またはその異性体、トルエン−2,4−ジイソシアネート(TDI)またはその異性体、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、p−フェニレン−ジイソシアネートから選択される。
【0052】
好ましくは、延長連鎖は、例えばエタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、より好ましくは1,4−ブタンジオールなどの2〜14個の炭素原子の脂肪族ジオールまたはジアミン;または例えばイソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−プロピレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、N−メチル−プロピレン−1,3−ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミンなどの(脂環式)脂肪族ジアミンなどである。最も好ましい連鎖延長剤は1,4−ブタンジオールである。
【0053】
本発明の方法に使用される組成物は典型的には、液体キャリア中に(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含む。
【0054】
第1実施形態によれば、液体キャリアは、水性媒体、すなわち主成分(>50%重量)として水を含む媒体である。水性媒体を含む本発明の組成物は、環境影響が考慮されるときに一般に好ましい。
【0055】
(パー)フルオロポリエーテル誘導体は、この実施形態の水性媒体に可溶化されてもまたは乳化されてもよい。水性媒体は、極性有機溶剤、例えばアルコール、グリコール、エーテルの少なくとも1つを任意選択的に含んでもよい。アルコールとして、イソプロパノール、エタノール、メタノール、t−ブタノールを使用することができ;エーテルとして、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができ;グリコールとして、エチレングリコールまたはプロピレングリコールを挙げることができる。
【0056】
第2実施形態によれば、液体キャリアは、溶剤媒体、すなわち主成分(>50%重量)として有機溶剤を含む媒体である。この実施形態の溶剤媒体は、水への不十分な溶解性/分散性を有するPFPE誘導体での処理に本方法が適用されるときに好ましい。
【0057】
前記有機溶剤は、フッ素化されているまたはフッ素化されていないものであることができる。好適な溶剤のうちに、アルコール、グリコール、エーテル、エステル、アルキルカーボネート、ケトン及び(ヘテロ)環式誘導体のうちから典型的には選択される、極性有機溶剤を挙げることができる。とりわけ、イソプロパノール、エタノール、メタノール、t−ブタノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N−メチルピロリドンを挙げることができる。イソプロパノールが、食品認可が必要とされるときには一般に選り抜きの溶剤である。
【0058】
任意選択的に、本組成物は、追加の成分または原料を含んでもよい。
【0059】
本組成物はとりわけ、少なくとも1つの水分散性または水可溶性のカチオン性ポリマーと組み合わせて(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含んでもよい。この組み合わせは、(パー)フルオロポリエーテル誘導体が上記のような(パー)フルオロポリエーテルカルボキシレート誘導体であるときに特に有利である。
【0060】
前記カチオン性ポリマーは典型的には、乾燥ポリマーの1g当たり少なくとも1ミリ当量の電荷密度を有し;それらは、ポリアミン及び/またはポリアミド−アミンのうちから一般に選択される。本発明の目的に好適なカチオン性ポリマーはとりわけ、欧州特許出願公開第1690882 A号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)2006年8月16日に開示されているものである。
【0061】
また、本組成物は、当該技術分野に公知の任意の好適なラテックスを含有してもよい。例として、好適なラテックスには、スチレン−アクリルコポリマー、アクリロニトリルスチレン−アクリルコポリマー、ポリビニルアルコールポリマー、アクリル酸ポリマー、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレン−塩化ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−アクリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー及びアセテート−エチレンコポリマーが含まれ;スチレン−アクリルコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、または酢酸ビニル−アクリルコポリマーが好ましい。
【0062】
また、本組成物は、ヒドロゾル、デンプン、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、タンパク質などの1つ以上を任意選択的に含んでもよい。
【0063】
本組成物は、顔料または染料を任意選択的に含んでもよい。好適な顔料には、カオリン粘土、離層化粘土(delaminated clays)、構造化粘土、か焼粘土、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、タルク、硫酸カルシウム、粉砕炭酸カルシウム、及び沈澱炭酸カルシウムが含まれる。好適な染料は典型的には、例えば、アクリジン、アントラキノン、ジフェニルまたはトリフェニルメタン、アゾ化合物、ニトロ−またはニトロソ−置換化合物、キノン、フタロシアニン、チアジン、チアゾール、オキサジン、オキサゾン、キサンテン、フルオレンの誘導体のような、例えば発色団を含む、有機染料である。
【0064】
また、本組成物は、粘土、分散剤、滑剤、消泡剤、フィルム形成剤、泡止め剤及び架橋剤を含む他の添加剤を含んでもよい。
【0065】
本発明の方法では、少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル添加物を含む組成物が、前記セルロース基材の表面の少なくとも一部上に印刷法によって塗布される。
【0066】
用語「印刷法」は、所定の模様に従って、予め形成されたセルロース基材表面上に化学薬品を選択的に塗布することができる任意の種類の方法を意味することを本明細書で意図される。
【0067】
印刷法はまた乾燥工程を有利には含み;この工程で、基材上へ塗布された組成物は乾燥される、すなわち全ての揮発性成分(例えば液体キャリア、・・・)が取り除かれる。
【0068】
前記乾燥工程は、異なる手段によって行われてもよく;とりわけ、加熱ロール、熱風炉、IR乾燥機またはUV乾燥機を挙げることができる。
【0069】
UV乾燥機の場合には、乾燥と同時に、組成物がUV架橋性部分を含むPFPE誘導体を含む場合、UV触媒架橋を得ることができる。
【0070】
印刷技法のうち、彫刻面または凹版からのセルロース基材への組成物の転写をベースとするもの(凹版技法)が好ましい。それらのうちに、グラビア印刷法及びフレキソ印刷法を挙げることができる。
【0071】
これらの凹版印刷法は、本発明に使用されるものなどの、低粘度を有する組成物をセルロース基材へ転写するために特に好適であり、かつ、水性媒体と相溶性があるので、それらが好ましいと略述されるべきである。
【0072】
グラビア印刷は典型的には、模様がセルロース基材上に複製されるために凹版または窪み面を使用する。模様エリアは一般に、シリンダー、典型的には金属シリンダー(銅が好ましい)へエッチングされているかまたは彫り込まれているハニカム形状セルまたはウェルからなる。シリンダーのエッチングされていないエリアは非画像エリアまたは非印刷エリアを表す。シリンダーは通常、典型的には「インクパン」と呼ばれる、液体組成物の浴中で回転する。
【0073】
彫刻シリンダーが回転するにつれて、過剰の組成物は一般に、柔軟なドクターブレードによってシリンダーから拭い取られる。陥凹セル中に残った組成物は有利には、基材が彫刻シリンダーと、典型的にはゴムコートされた、圧シリンダーとの間を通過するときに基材(紙または他の材料)への直接転写によって模様を形成する。
【0074】
包装材料、例えば段ボール箱、折り畳み式カートン、多壁買い物袋、紙袋、プラスチックバッグ、ミルク及び飲料カートン、使い捨てコップ及び容器、ラベル、接着テープ、封筒、新聞紙、ならびに包み紙(キャンディ及び食品)を印刷するために用いられる主要な方法である、フレキソ印刷は、凹版印刷法の別の例である。
【0075】
典型的なフレキソ印刷法では、必要とされる模様のポジティブミラードマスターは一般に、ゴムまたはポリマー材料ロールまたはプレート(印刷シリンダー)上に3D浮き彫りとして複製される。
【0076】
一般に表面に何百万の非常に微細なディンプルまたはセルを含有する工業的セラミックによって典型的にコートされた彫刻アニロックスロールを使用することによって、その肌理が、組成物の好適な浴に浸漬され、過剰分がドクターブレードによってこすり取られることによって特定量の組成物を保持し、目標量の組成物が印刷プレート(または印刷シリンダー)の表面上に沈着される。そのようにして負荷された印刷シリンダーは、最後に組成物を基材上へ転写する。
【実施例】
【0077】
原材料
Nalco Companyから入手可能なNALKAT(登録商標)2020カチオン性固定剤は、式:
【化8】

の塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(PolyDADMAC)である。
【0078】
Airproductsから商業的に入手可能なAIRVOL(登録商標)125添加剤は、25%w/wの乾燥含有率を有するポリビニルアルコール水分散液である。
【0079】
試験方法
セルロース基材の撥油性の測定
セルロース基材を、TAPPI Test Method T 559 cm−02 standard(TAPPI試験方法T559cm−02標準)(格付けが高ければ高いほど、基材の撥油性がより良好である)に従っていわゆる「キット試験」または「Grease Resistance Test for Paper and Paperboard(紙及び板紙についての耐グリース性試験)」にかけた。
【0080】
脂肪酸試験−NFA試験
脂肪酸へのセルロース基材の耐性は次の通り測定した。1〜11の番号付きの(より少ない攻撃的から最も攻撃的な)脂肪酸溶液を、異なる量のヒマシ油、オレイン酸(C18:1)及びオクタン酸(C8:0)をブレンドして調製し、60℃で順化させた。基材の検体を60℃に維持されたオーブンに導入し、5滴の各試験溶液を各サンプル上へサッと浸けた。60℃で5分後に、油滴を吸収剤ティッシュで除去し、基材を表面の暗色化について調べた。基材の格付けは、表面に変化を全く引き起こさない脂肪酸溶液の最高数に対応するものであった。
【0081】
(パー)フルオロポリエーテル添加物の合成
調製実施例1
アニオン性(パー)フルオロポリエーテルポリウレタン添加物は、
− ヒドロキシル当量761(666ミリ当量)を有する、507gの(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ジオール(FLUOROLINK(登録商標)D10H)と;
− 148gのイソホロンジイソシアネート(1333ミリ当量)と;
− 27gのトリエチルアミン(267ミリ当量)で塩化された46gのジメチルプロピオン酸(DMPA)(671ミリ当量)と
を反応させることによって欧州特許出願公開第1273704 A号明細書(AUSIMONT SPA(イタリア国))2003年1月8日の教示に従って製造した。
アニオン性基を有するポリマーの固形分を、乾燥残留物として測定して25重量%伴う水性分散液が得られた。
【0082】
調製実施例2
(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体は、
− ヒドロキシル当量724(0.138当量)を有する、100gの(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)ジオール(FLUOROLINK(登録商標)E10H)と;
− 0.0025gの水(0.025モル)と;
− 9.9gのP(0.069モル)と
を反応させることによって欧州特許出願公開第1225178 A号明細書(AUSIMONT SPA(イタリア国))2002年7月24日の教示に従って製造した。
アンモニウムホスフェートアニオン性基を有するポリマーの固形分を、乾燥残留物として測定して20重量%伴う水性分散液が得られた。
【0083】
調製実施例3
(パー)フルオロポリエーテルカルボン酸誘導体は、
− 式:
HOOC−CF−O−(CFO)(CFCFO)−CFCOOH
(a及びbは、数平均分子量Mwが1500であるような整数である)
の500gの(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)二酸と;
− 9gの30%重量アンモニア溶液と
を反応させることによって欧州特許出願公開第1484445 A号明細書(SOLVAY SOLEXIS SPA(イタリア国))2004年12月8日の教示に従って製造した。
(パー)フルオロポリエーテル二酸アンモニウム塩の、乾燥残留物として測定して20重量%の固形分を伴う水性分散液が得られた。
【0084】
グラビア印刷法及び機械
粗シリンダーが150 lpi連続シリンダーである、4色Ceruttiウェブ供給グラビアプレス機を使用した。処理溶液を塗布機ロールによって基材に塗布し、過剰をドクターブレードで除去した。シート速度は400フィート/分であった。紙基材を一面のみ処理した。処理紙を、220°Fで運転されるIR乾燥機を使用して乾燥させた。
【0085】
527ポンド/100平方フィート(25.7kg/m)の重量を有する、少なくとも80%のバージン漂白木材パルプを含有する完成紙料から製造された高級板紙グレードである、中空でない漂白サルファイト(SBS)板紙としても知られる、漂白板紙をこの試験に使用した。
【0086】
処理紙の撥性特性の結果を次表にまとめる:
【0087】
【表1】

【0088】
本明細書で上にまとめられたデータは、(パー)フルオロポリエーテル誘導体がこの凹版印刷法によって成功裡に塗布することができ、受け入れることができる撥油性を提供することを実証する。表に示されるように、これらの特性(例えば少なくとも8のキット試験格付け)は、0.1%重量以下ほどに低い(パー)フルオロポリエーテル誘導体の濃度で達成することができる。比較として、(パー)フルオロポリエーテル添加物が類似の重量のSBS紙の製造でサイズプレスまたはウェットエンド処理によって塗布されたとき、類似の性能を達成するために必要とされる(パー)フルオロポリエーテル誘導体の量は0.2〜0.6%重量ほどに高いことが分かった(欧州特許出願公開第1690882 A号明細書、同第1489124 A号明細書、同第1484445 A号明細書を参照されたい)。
【0089】
フレキソ印刷法及び機械
これらの実施形態のために使用されるフレキソ印刷機では、(パー)フルオロポリエーテル含有組成物は、過剰の組成物を除去するためのドクターブレードを備えた、130億立方ミクロンの各セル体積の1平方インチ当たり165セル(165/13BCM)のアニロックスロールによってセルロース基材上に塗布した。セルロース基材を一面のみ処理した。シート速度は300フィート/分(91.4m/分)であった。処理基材を、IR乾燥機を使用して乾燥させた。
【0090】
使用したセルロース基材は、30ポンド/3000平方フィート(48.8g/m)の重量を有する漂白クラフト紙であった。
【0091】
比較として、(パー)フルオロポリエーテル誘導体の代わりに、フルオロアクリレート構造を有する、ZONYL(登録商標)9464添加物として商業的に入手可能なフルオロ含有材料及びパーフルオロアルキル置換カルボン酸である、CIBA製のLODYNE(登録商標)2010として商業的に入手可能なフルオロ含有材料を使用して類似のランを実施した。
【0092】
処理紙の撥性特性の結果を次表にまとめる:
【0093】
【表2】

【0094】
本明細書で上の表に示されるように、本発明の方法の(パー)フルオロポリエーテル添加物を使用して初めて、限定されたフルオロケミカル使用量で受け入れることができる撥油性及び撥水性を有するクラフト紙を得ることが可能である。比較の例は、別の方法で印刷/コーティングプロセスに使用されることについて積極的に宣伝されている、ZONYL(登録商標)またはLODYNE(登録商標)フルオロ含有材料が、増加したフルオロケミカル使用量でさえも、フレキソ印刷法によって受け入れることができる撥グリース性を有するクラフト紙をもたらし得ないことを十分に実証する。
【0095】
本明細書によって提供される結果はこのように、本発明の方法のものとしてのPFPE誘導体のみが、印刷法によって塗布されるときに撥グリース性、撥油性及び撥水性を有利にもたらすことを十分に実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材への撥グリース性、撥油性及び撥水性の付与方法であって、少なくとも1つの(パー)フルオロポリエーテル誘導体を含む組成物を前記基材の表面の少なくとも一部上に印刷法によって塗布する工程を含む方法。
【請求項2】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体が繰り返し単位(R1)を含む官能性(パー)フルオロポリエーテルであって、前記繰り返し単位が少なくとも1つのエーテル結合を主鎖中に及び少なくとも1個のフッ素原子を含み(フルオロポリオキシアルケン鎖)、かつ、フッ素以外のヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基を有する官能性(パー)フルオロポリエーテルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記官能性(パー)フルオロポリエーテルが、下記式(I):
−(CFX)−O−R−(CFX)p’−T (I)
(式中、
− Xのそれぞれは独立してFまたはCFであり;
− 互いに等しいかまたは異なる、p及びp’は0〜3の整数であり;
− Rは、請求項2で定義されたようなフルオロポリオキシアルケン鎖であり;
− 互いに同じものまたは異なるものである、T及びTの少なくとも1つは、任意選択的に別のフルオロポリオキシアルケン鎖に結合した、O、S、N、P、Si及びそれらの混合物のうちから選択されるヘテロ原子を含む官能基であり;
− 残りのTまたはTは、もしあれば、H、ハロゲン原子、C〜C30末端基のうちから選択される)
に従う化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体が、カルボン酸及びその誘導体(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)からなる群から選択される少なくとも1つの官能基を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体が、式:
T−O−Rf1−T
(式中、
それぞれ等しいかまたは異なる、Tのそれぞれは、−CF−COOXaまたは−CFCF−COOXaであり;
f1は、繰り返し単位(R°)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、鎖に沿って統計的に分布する前記繰り返し単位(R°)は、(CFXO)、(CFCFO)、(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、(CRCFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFCF(CF)O)(ここで、X=F、CFであり;互いに等しいかまたは異なる、R及びRは、H、Cl、または1〜4個の炭素原子のパーフルオロアルキルのうちから選択される)の1つ以上のうちから選択され;XaはH、金属(好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)または式N(R(ここで、それぞれ等しいかまたは異なる、Rのそれぞれは、H、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)のアンモニウム基である)
に従う、請求項4の方法。
【請求項6】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体が、ホスフェート基及びそれらの誘導体(酸、エステルなど)から選択される少なくとも1つの官能基[(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体]を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記(パー)フルオロポリエーテルホスフェート誘導体が、式(P−1)または(P−2):
[Rf1t−CFY−L−O]P(O)(OX3−m (P−1)
(XO)P(O)[O−L−CFY−O−Rf1−CFY−L−O−P(O)(OX)]m’(OX) (P−2)
(式中、Rf1tは、Tが、HまたはClを任意選択的に含む、(パー)フルオロアルキルC1〜3基である、−Rf1−Tに等しく;Rf1は、繰り返し単位(R°)を含む(パー)フルオロポリオキシアルキレン鎖であり、鎖に沿って統計的に分布する前記繰り返し単位(R°)は、(CFXO)、(CFCFO)、(CFCFCFO)、(CFCFCFCFO)、(CRCFCFO)、(CF(CF)CFO)、(CFCF(CF)O)(ここで、X=F、CFであり;互いに等しいかまたは異なる、R及びRは、H、Cl、または1〜4個の炭素原子のパーフルオロアルキルのうちから選択される)の1つ以上のうちから選択され;mは、1〜3(好ましくは1または2)の整数であり;m’は、0〜20(好ましくは0〜4)の整数であり、YはFまたはCFであり;Lは結合または二価有機基であり;Xは、H、金属(好ましくはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属)または式N(R(ここで、それぞれ等しいかまたは異なる、Rのそれぞれは、H、アルキル基またはヒドロキシアルキル基である)のアンモニウム基である)
に従う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記(パー)フルオロポリエーテル誘導体が、式(U−1):
【化1】

(式中、Eは、1つ以上の芳香環を任意選択的に含む、線状または分岐の、二価の炭化水素基である)
のウレタン部分から選択される少なくとも1つの官能基[(パー)フルオロポリエーテルウレタン誘導体]を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記(パー)フルオロポリエーテルウレタン誘導体が、フルオロポリオキシアルケン鎖を含む少なくとも1つのフッ素化ブロックと、2〜14個の炭素原子を有する、1つ以上の芳香族または脂環式基を任意選択的に含む炭化水素鎖[鎖(RHC)]を含む少なくとも1つの官能性ブロックとを含む(パー)フルオロポリエーテルイオン性ポリウレタンポリマー[ポリマー(PUR)]であって、前記鎖(RHC)が少なくとも1つのイオン性基を含み、前記ブロックが、請求項8に詳述されるような、式(U−1)のウレタン部分によって連結されているポリマー(PUR)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、彫刻面または凹版からの基材への組成物の転写をベースとする印刷技法(凹版技法)によって塗布される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物がグラビア印刷法またはフレキソ印刷法によって塗布される、請求項8に記載の方法。

【公表番号】特表2011−526537(P2011−526537A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515422(P2011−515422)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058146
【国際公開番号】WO2010/000715
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508305960)ソルヴェイ・ソレクシス・エッセ・ピ・ア (53)
【Fターム(参考)】