説明

基板および基板の製造方法

【課題】透明であっても従来のSi基板と同様の手法により存在を検出することが可能な基板、および当該基板の製造方法を提供する。
【解決手段】透明な基板1の端部(図1における基板1の左右側)に入射する光線10は、基板1の中央部分に入射する光線10のように基板1を透過せず、基板1の端部の少なくとも一部に存在する検出領域の全反射面2によって全反射される。基板1の端部において光線10の透過する割合が小さくなったことを光電センサ30が認識することにより、基板1の存在を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板および基板の製造方法に関するものであり、より特定的には、透明であってもセンサによりその存在を認識することが可能な基板、および当該基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板の主表面上にたとえばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子を形成する場合、通常は主表面上において、半導体基板の外周から一定の距離(通常は5mm程度)以上離れた、中心部の領域に半導体素子を形成する。なお、ここで主表面とは、表面のうち最も面積の大きい面をいうこととする。したがって、半導体基板の外周から一定の距離以内の領域には半導体素子を形成しない。このような主表面の外周に近い、すなわち端部の領域に形成した半導体素子は、その電気的特性等の信頼性が低下することがあるためである。
【0003】
半導体素子を形成しない、上述した半導体基板の主表面の外周近傍の領域、すなわち端部には、半導体基板の主表面上に半導体素子が多数形成された半導体装置を製造ための工程を行なう際に、一貫した生産管理を行なうために用いる、たとえばIDマークを形成することが多い。すなわち、半導体基板の主表面の端部に、各半導体基板を識別するための数字や文字、バーコードなどをIDマークとして配置する場合がある。
【0004】
IDマークとしては従来より、たとえば半導体基板の主表面の端部にドット(凹部)を多数形成したものを用いてきた。これは、たとえばレーザビームを半導体基板の主表面上に照射させて半導体基板を構成する材質を部分的に除去させることにより、当該半導体基板の主表面の端部の領域に、当該半導体基板を識別するためのドットの集合体を配置したものである。たとえば特開2004−200635号公報(以下、「特許文献1」という)には、形成した当該ドットが、後工程である化学的機械的研磨工程(CMP工程)により研磨されて平坦化され、当該ドットの存在をセンサで認識することが困難になることを抑制するため、CMP工程を行なう研磨布が接触しない窪みを形成し、当該窪みの底面上にドットを形成した半導体ウェハが開示されている。
【特許文献1】特開2004−200635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば特許文献1に開示されているように、これまで基板の主表面の端部の形状としては、チッピングを抑制するために主表面に対して一定の傾き角度を有する端面となるよう加工されたベベルカットが主に用いられてきた。これは具体的には、基板の一方の主表面と、当該一方の主表面に対向する基板の他方の主表面とのそれぞれに交差するように、両主表面と所定角度をなす面を、基板の端部に形成して当該基板の端面としたものである。このベベルカットの他にも、たとえば応力が加わることにより、半導体基板やガラス基板などの端部から、結晶格子に沿った方向へのへき開(割れ)やチッピングが発生することを抑制するために、基板の主表面の端部に対して、たとえば平面状や球面状の端面を形成する加工を行なうこともある。たとえば図15は、基板の端部にラウンドを施した状態を示す概略図である。図15に示す基板20は、主表面の端部にラウンドと呼ばれる曲面状の特殊端部加工が施されている。すなわち基板20の一方の主表面(図15における上側の面)および一方の主表面の反対側に位置する他方の主表面(図15における下側の面)とを結ぶ曲面(図15における左側の半円部分である端部)を設け、当該曲面を基板の端面としたものである。
【0006】
ところで、半導体装置を生産する際には、当該生産に用いる製造装置において半導体基板のハンドリングや搬送を行なう過程で、半導体基板の存在をセンサにより認識し、同時にその半導体基板のIDマークを認識し、それらを照合することにより当該半導体基板の管理や自動シーケンスの実行を行なう方法が一般的に行なわれている。ここで、半導体基板の存在を認識する工程では、一般的に赤色または赤外LED(発光ダイオード)あるいはLD(レーザダイオード)が光源として用いられる。これは、従来半導体基板として主に用いられていたシリコン(Si)は赤色光または赤外光を吸収するため、これらの光を用いてシリコンからなる半導体基板を容易に検出することができるためである。
【0007】
たとえば図15に示すように、基板20(たとえばSiなどの半導体基板)の一方の主表面に対向する領域から、当該一方の主表面(図15における上側の面)に対して赤色光または赤外光を照射する。ここで基板20の一方の主表面と反対側の主表面(図15における下側の面)に対向する領域に、入射される赤色光などの光線10を認識するための光電センサ30を設置しておく。すると基板20が存在しない場合は、図15に示すように基板20の一方の主表面の上方から照射される光線10は、光電センサ30に入射する。このとき、光電センサ30が光線10を検出することによって基板20が存在しないと認識できる。しかしここにたとえばSiなど、赤色光または赤外光を吸収する材料からなる基板20が存在すると、図15の上方から照射される光線10は基板20の主表面上にてその多くが吸収・反射される。このため図15の下方に存在する光電センサ30に到達する光線10の光量が、基板20が存在しない場合に比べて少なくなる。つまり、図15において基板20の下方に存在する光電センサ30が受光する光線10の強度が、基板20が存在しない場合に比べて弱くなれば、光電センサ30により、基板20の存在を検出できる。
【0008】
近年、Siに代わって、炭化珪素(SiC)などの化合物半導体を用いた半導体素子(半導体装置)が、高周波パワーデバイスや、耐熱・耐放射線デバイスを実現するための材料として注目されている。これは、SiCやGaNなどの化合物半導体はSiと比べて、バンドギャップ(禁止帯幅)が広く、絶縁破壊電界強度が大きいため、当該化合物半導体を用いた半導体装置は、たとえばSiを用いた半導体装置に比べてスイッチング特性に優れ、耐電圧が大きくなることなどによる。しかし、このような化合物半導体からなる基板のうち、SiCやGaNなどからなる基板は透明であるため、当該基板に照射した光は、基板により反射されることが少なく、その多くは基板を透過する。このため、仮に図15における基板20が上述のような透明な基板であるとすれば、図15に示すように赤色光または赤外光などの光線10を基板20に照射しても、たとえばSiからなる基板に光線10を照射した場合に比べて、光線10は基板20にて反射される割合が少なくなる(つまり基板20を透過する光線10の割合が大きくなる)。このため光電センサ30は、光線10の強度変化により基板20の存在を認識することが困難となる。
【0009】
ここで、上述した化合物半導体などからなる透明基板を用いた半導体装置の製造工程では、従来のSi基板を用いた半導体装置の製造工程と類似する工程もあるため、従来のSi基板を用いた半導体装置の製造に用いていた製造装置を流用することが考えられる。しかし、上述のようにSi基板の存在を検出する従来の方法では、透明基板の存在を正確に検出することが難しい。このため、従来のSi基板を用いた半導体装置の生産に用いていた製造装置を、上述した透明基板を用いた半導体装置の製造にそのまま流用することは困難であった。また、透明基板の存在を検出するために従来と異なる検出方法を採用しようとすると、製造装置の大幅な改造が必要となるため、結果的に製造装置のコストの増大などの問題を招くことになる。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みなされたものであり、その目的は、透明であっても従来のSi基板と同様の手法により存在を検出することが可能な基板、および当該基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基板は、透明な基板であり、基板の端部の少なくとも一部に形成され、基板の中央部における光の透過率よりも小さい光の透過率を有する検出領域を備える基板である。
【0012】
ここで透明な基板とは、所定の波長の光(たとえば可視光(赤色光)や赤外光など)の当該基板における吸収率が低い(透過率が高い)基板を言い、たとえば所定の波長の光の吸収率が0%を超え90%以下である基板を言う。また、異なる観点から言えば、たとえば可視光について透明な基板とは、基板の一方の主表面に対向する領域から、基板の一方の主表面の反対側に位置する他方の主表面に対向する領域を、当該基板を介して目視することが可能な基板を意味する。基板の主表面のうち一部の領域(ここでは端部)を検出領域とし、検出領域において、基板の一方の主表面に対向する領域から、当該主表面の反対側に位置する他方の主表面に対向する領域へ光が透過する割合(透過率)を、基板の主表面のうち検出領域以外の領域(ここでは中央部)における同様の透過率よりも小さくする。このようにすれば、光の透過を感知するセンサ(たとえば光電センサ)は、検出領域において、当該基板の主表面に入射された光が検出領域以外の領域と比べてより遮断される(透過しなくなる)ことを認識することができる。この結果、センサは当該透明な基板の存在を認識(検出)することができる。このため、従来のSi基板の検出装置を上記基板の検出に流用することができる。したがって、従来のSi基板を用いた半導体装置の製造工程において用いていた製造装置を、上述した透明基板を用いた半導体装置の製造工程に流用することができる。なお、上述のように基板の端部には通常半導体素子などは形成されないため、基板の端部に上記のような検出領域を形成しても、基板から得られる素子の数が減る(素子の製造効率が低下する)可能性は少ない。
【0013】
本発明に係る基板において、上述した検出領域は、検出領域に入射する光を全反射する全反射面を含むことが好ましい。検出領域に入射する光を全反射させれば、検出領域に入射する光はほぼすべて、光が入射した検出領域の表面上にて反射される。このため検出領域に入射する光は、検出領域から基板の内部に侵入し、基板の裏面(光が入射した側と反対側の主表面)から基板の外部に透過することはほとんどない。以上のように、基板において、基板の主表面に交差する方向に進行する光が遮断されるため、光の透過を感知するセンサは、基板の存在を認識(検出)することができる。
【0014】
なお、本発明に係る基板において、上述した検出領域は、検出領域に入射する光を乱反射する乱反射面を含んでいてもよい。検出領域に入射する光を乱反射させれば、検出領域に入射する光の大部分は、光が入射した検出領域の表面上にて反射される。このため上述した全反射面を含んでいる場合と同様に、検出領域に入射する光は、その多くが基板の存在により反射されるため、光電センサは、基板の存在を認識(検出)することができる。
【0015】
本発明に係る基板は、SiC、GaN(窒化ガリウム)、サファイア、AlN(窒化アルミニウム)、ダイアモンドからなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。これらはいずれも透明な基板であるため、これらの基板を用いて半導体装置を形成する際に、上述したように光の透過率を小さくした検出領域を備えることにより、センサによって当該基板の存在を容易に検出することができるようになる。
【0016】
次に、本発明に係る基板の製造方法は、透明な基板を準備する工程と、基板の端部の少なくとも一部における光の透過率を、基板の中央部における光の透過率よりも小さくする加工を行なう工程とを備える。上述のように、透明な基板においては通常、その一方の主表面に入射した、可視光(たとえば赤色光)や赤外光などの光は、その多くが当該基板の内部を通過して、一方の主表面と反対側の主表面(裏面)から出射する。このため透明な基板は、光電センサなどのセンサを用いてその存在を検出することが困難である。これを回避するため、透明な基板を形成する工程の中で、上述したように基板の一部に、入射された光の透過率を小さくした領域(検出領域)を形成する工程を備えるようにする。なお、ここで基板の一部に入射された光の透過率を小さくするとは、具体的には、基板のうち当該領域における光の透過率が、基板のうち当該領域以外の(すなわち透過率を小さくする加工を施していない領域の)光の透過率の10%以下となるように加工を行なうこととする。
【0017】
このようにすれば、形成される基板は、たとえ透明であっても、一部の領域(検出領域)において入射した光の透過率が相対的に小さくなる。このため、検出領域を介して、当該基板の内部を通過して基板の外部に透過する光が少なくなったことをセンサが認識できる。そのため、当該センサは透明な基板の存在を検出することができる。
【0018】
上記本発明に係る基板の製造方法において、上述した加工を行なう工程には、端部の少なくとも一部に入射する光を全反射する全反射面を形成する工程を含むことが好ましい。このように全反射面を形成することで、上述した検出領域において入射光を全反射させれば、検出領域に入射した光は基板を透過しなくなる。このため、センサは検出領域における光の透過率の変化から、基板の存在を検出することができる。上述したように全反射面を形成する工程を含む基板の製造方法を用いれば、センサにより(光の透過率の変化を検出することで)基板の存在を容易に検出できる透明な基板を形成することができる。
【0019】
なお、上述した全反射面を形成する工程には、端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含むことが好ましい。または、上述した全反射面を形成する工程には、端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含んでもよい。これらの加工法を用いれば、基板の表面上の任意の領域を、(上記全反射面となるように)任意の形状へと容易に加工することができる。したがって、これらの加工法を用いることにより、容易に全反射面を形成することができるため、基板の一方の主表面から入射した光が基板の外部へ透過する割合(透過率)を小さくする検出領域を容易に形成することができる。
【0020】
なお、本発明に係る基板の製造方法において、上述した加工を行なう工程には、端部の少なくとも一部に入射する光を乱反射する乱反射面を形成する工程を含んでいてもよい。乱反射面についても全反射面と同様に、基板の端部の一部(検出領域)に入射した光を基板の当該乱反射面にて反射するので、当該光が基板の内部を通過して裏面側へ透過することを抑制する。このため、乱反射面を形成した場合についても、全反射面を形成した場合と同様に、センサによって基板の存在を容易に検出することができる。
【0021】
上述した乱反射面を形成する工程についても、上述した全反射面を形成する工程と同様に、端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含むことが好ましい。または、上述した乱反射面を形成する工程には、端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含んでもよい。これらの加工法を用いれば、基板の表面上の任意の領域を、乱反射面となるような任意の形状へと容易に加工することができる。したがって、これらの加工法を用いることにより、容易に乱反射面を形成することができる。このため、基板の主表面から入射した光の透過率を小さくする検出領域を容易に形成することができる。
【0022】
また、本発明に係る基板の製造方法において、乱反射面を形成する工程には、端部の少なくとも一部に不純物の導入を行なう工程と、不純物を導入した領域の表面の面粗度を上げる工程とを含んでいてもよい。たとえば、表面の面粗度を上げる工程は、不純物の導入を行なった領域の表面層をエッチングする工程、または不純物の導入を行なった領域の表面層を熱処理する工程を含んでいてもよい。エッチングや熱処理を行なうことにより、不純物の導入を行なった領域の表面に凹凸部を形成し、面粗度を上げることができる。したがって、当該領域の面粗度が上がることにより、当該領域を乱反射面とすることができる。このため、上述した加工方法を用いることにより、容易に検出領域となるべき乱反射面を形成することができる。この結果、基板の主表面から入射した光の透過率を小さくする検出領域を容易に形成することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る基板の製造方法において、乱反射面を形成する工程には、端部の少なくとも一部に薄膜を成膜する工程を含むことが好ましい。つまり、上述したように基板の主表面の所定領域の面粗度を上げることにより、当該領域を乱反射面とする代わりに、乱反射面として用いることのできる薄膜を基板の主表面上に形成してもよい。このように形成した薄膜からなる乱反射面についても、面粗度を上げることにより形成した乱反射面と同様の効果を奏することができる。また、上記本発明に係る基板の製造方法において、全反射面を形成する工程が、端部の少なくとも一部に薄膜を成膜する工程を含んでいてもよい。薄膜としては、表面が全反射面となるような任意の薄膜を用いることができる。この場合も、機械加工などにより全反射面を形成する場合と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、透明であってもセンサによりその存在を認識することが可能な基板、および当該基板の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る基板の態様を示す概略断面図である。本発明の実施の形態1に係る基板1は所定厚み(図1の上下方向)を有する、たとえば高周波パワーデバイスや、耐熱・耐放射線デバイスなどの半導体装置に用いる透明の基板である。また図1においては説明の便宜上、基板1は台形状に描写しているが、実際は厚み(図1の上下方向)がたとえば1mm前後、径(図1の左右方向)がたとえば2インチ前後の平板状をなしている。このため図1においては二重波線を用いて、左右方向の幅を省略していることを表わしている。
【0027】
図1における基板1は、上述したように透明な基板であるが、具体的にはたとえばSiC、GaN、サファイア、AlN、ダイアモンドからなる群から選択された少なくとも1種を含む材質で構成されることが好ましい。これらの材質にて構成された基板1は、化合物半導体を用いたパワーデバイスなどの半導体素子(半導体装置)の基板として利用され得る。
【0028】
図1の基板1は透明なため、基板1の上方の主表面側から下方の主表面(裏面)側へ、当該主表面に交差する(ほぼ垂直な)方向に透過する光線10(光)は、図1の中央部分(図1の左右方向の中央部分)においては高い割合で基板1の内部を通過し、下方の主表面から基板1の外部に出射する。ここで光線10は、たとえば赤色光などの可視光でもよいし、赤外光などの非可視光でもよい。ただし特に、上述した各種の材質からなる基板1を用いた場合は、当該基板1は200nm以上800nm以下の波長の光に対して透明であることが好ましい。なお、当該基板1は300nm以上700nm以下の波長の光に対して透明であることが特に好ましい。光線10として上述した波長の光を用いれば、精度の高いセンサとして作動させることができる。
【0029】
これに対し、基板1の端部(図1における基板1の左右側)に入射する光線10は、たとえ基板1の中央部分に入射する光線10と同一波長、同一強度であったとしても、基板1の中央部分に入射する光線10のように基板1を透過せず、図1に示すように基板1の端部の少なくとも一部に存在する検出領域の全反射面2によって全反射される。ここで、検出領域は、基板1の中央部における光線10の透過率よりも小さい光線10の透過率を有する領域のことである。図1の基板1においては、全反射面2が形成されている、図1における左右方向(基板2の外周端部)の全領域を検出領域ということにする。具体的には、全反射面2のみならず、たとえば図1において光電センサ30が対向する基板1の裏面側の外周端部も検出領域に含めることとする。
【0030】
図1の基板1において検出領域は、基板1の主表面に対して所定角度を有する全反射面2を備えることにより形成されている。すなわち、当該全反射面2は、検出領域における光線10を全反射することにより、検出領域に照射された光線10が基板1を透過する割合(透過率)を、検出領域以外の領域における光線10が基板1を透過する割合よりも小さくするという機能を発揮する。したがって、たとえば図1に示すように基板1の主表面に対して交差する(垂直な)方向から基板1に対して光線10を入射する場合に、全反射面2に入射した光線10が全反射面2にて全反射を起こすことができる角度となるように、全反射面2は基板1の主表面(図1の左右方向)に対して所定の角度αを有する傾斜面となっている。また、全反射面2の表面は、当該全反射面2に入射した光線10が乱反射を起こすことなく全反射することが可能な程度に面粗度を小さくすることが好ましい。このようにすれば、全反射面2に入射した光線10は、図1に示すように全反射される。
【0031】
全反射面2に入射する光線10は全反射面2にて反射されるため、図1に示すように、検出領域の全反射面2と平面的に重なる位置(すなわち全反射面2の真下)に配置された、入射される光線10を認識(検出)する光電センサ30には光線10がほとんど到達しない。このことから、光電センサ30は、光電センサ30の上部に配置される基板1の存在により光線10が遮断されたと認識することができる。この結果、光電センサ30の検出する光量の変化により、基板1の存在を検出することができる。このように全反射面2を備えることにより、光線10が透過する材質で基板1が構成される場合であっても、光電センサ30は基板1の存在を認識(検出)することができる。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1に係る基板の全反射面の態様を示す概略断面図である。具体的には図2は、図1の基板1における左側の全反射面2を拡大した断面図である。したがって図1の基板1における右側の領域においては図2においては省略しているため、そのことを表わすために図2の右側に波線を施している。
【0033】
図2に示す基板1の全反射面2は、図1に示すように基板1の主表面(図1の左右方向に延在する面)と角度αをなしている。この角度αは、上述したようにたとえば基板1の主表面に垂直な方向から基板1に入射する光線10を全反射面2にて全反射させることができる角度である。
【0034】
なお、全反射面2が配置されている検出領域は、図2に示すように基板1の外周端(図2における左端)からの主表面方向の距離(図2における左端から右側への距離)が0.1mm以上5mm以下の領域に形成されることが好ましい。すなわち、図2におけるA点からB点までを全反射面2とすれば、基板1の外周端からA点までの、主表面方向の距離L1は0.1mm以上、また基板1の外周端からB点までの、主表面方向の距離L2は5mm以下であることが好ましい。基板1の端面から0.1mm未満の領域を含め、図2における下側の主表面に交差するように全反射面2を配置すると、全反射面2と、図2における下側の主表面とのなす角度が小さくなる(鋭角となる)場合がある。この場合、当該外周端(鋭利な角度をなす基板1の端部)を起点として基板1がチッピングやへき開を起こす可能性がある。これを抑制するため、図2に示すように、外周端からの主表面方向の距離L1が0.1mm未満の領域についてはたとえば全反射面2よりも主表面に対する角度が大きな角度となるように端面を設けることが好ましい。また、外周端からA点までの端面の形状としては、図2に示すような平面であってもよいが当該端面の表面形状を曲面状としてもよい。なお、角度αの値によっては、上述した図2に示した外周端からA点までの端面を設けない構成(B点より外周側がすべて全反射面2となっている構成)としてもよい。
【0035】
また、基板1の外周端から5mm以上の領域は基板1の主表面の中心部分に相当し、半導体素子などを形成する領域である。したがって、基板1の端面から5mm以上の領域に全反射面2を設けると、基板1の主表面上において半導体素子などを形成する領域が小さくなるため、半導体素子の生産性が低下することになる。このため、距離L2を5mm以下となるよう設定することが好ましい。
【0036】
ここで、全反射面2は、基板1の主表面の端部の少なくとも一部に形成されていればよい。すなわち、基板1の主表面の端面からの距離がたとえば0.1mm以上5mm以下の領域の全体に、基板1の主表面の外周部を1周するように全反射面2を形成してもよいし、当該外周部の周方向における一部のみに全反射面2を形成してもよい。
【0037】
続いて、本発明の実施の形態1に係る基板の製造方法について説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る基板の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、本発明の実施の形態1に係る上述した基板1を形成する際には、まず基板を準備する工程(S10)を実施する。これは具体的には、半導体装置の製造装置(たとえば成膜装置やエッチング装置など)といった装置において基板の検出のために照射される光線10(図1参照)を用いて、当該装置において存在を認識することができる透明な基板1(図1参照)を形成する元となる透明基板を準備する工程である。
【0038】
ここで準備する基板は、当該基板の一方の主表面上に半導体素子などを形成してパワーデバイスなどの半導体装置を形成するための半導体基板であり、たとえば可視光(赤色光)や赤外光などの光線10を10%以上透過する透明な半導体基板が好ましい。具体的には、たとえばSiC、GaN、サファイア、AlN、ダイアモンドからなる群から選択された少なくとも1種を含む材質からなる基板である。
【0039】
なお、この基板を準備する工程(S10)では、所定厚み、所定の主表面の大きさを有する上述した基板を外部から購入するなどして準備してもよいが、たとえばチョクラルスキー法やボート法、溶液成長法などを用いて当該半導体基板を構成する結晶からなるインゴットを形成し、当該インゴットをたとえばワイヤソーを用いて所定の厚み、所定の主表面の大きさを有する基板としての形状に切断することにより、基板を準備してもよい。
【0040】
上述したように半導体装置の基板として用いる透明な基板が準備できたところで、加工工程(S20)を行なう。これは具体的には、基板を準備する工程(S10)にて準備した基板の端部の少なくとも一部の領域における光の透過率を検出領域として機能させるために、基板の主表面の中央部における光の透過率よりも当該領域の透過率を小さくするための加工を行なう工程である。ここで光の透過率を小さくするとは具体的に、上述したように基板のうち当該領域における光の透過率が、基板のうち当該領域以外の(すなわち透過率を小さくする加工を施していない領域の)光の透過率より小さくなるように加工を行なうことを意味する。また、好ましくは、当該領域における光の透過率が、当該領域以外の光の透過率の10%以下となるように加工を行なうことを意味する。このようにすれば、製造装置にて当該基板を処理する際に、基板が透明であっても、光の透過が遮断されたことをたとえば光電センサ30(図1参照)にて認識することが可能となる。したがって、基板の存在を検出することが可能となる。
【0041】
この加工工程(S20)では、基板の主表面の端部の少なくとも一部の領域における光の透過率を、基板の主表面の中央部における光の透過率よりも小さくするために、基板の端部の少なくとも一部に入射する光を全反射する全反射面を形成する工程を行なう。この結果、図1に示す、基板1の主表面(図1の左右方向)に交差する方向、たとえば垂直な方向に進む光線10を照射した場合に全反射を起こすことができる条件を満たす所定の角度αを有する全反射面2が形成される。図1に示すように、基板1の表面のうち全反射面2以外の領域に照射された光線10は、基板1が透明なためほとんどが基板1を透過するが、検出領域の全反射面2に照射した光線10は全反射するため、図1に示すように基板1に関して全反射面2と平面的に重なる位置(すなわち全反射面2の真下)に配置された光電センサ30にはほとんど光線10が到達しない。このため、光電センサ30は基板1の存在により光線10が遮断されたと認識することができるので、基板1の存在を検出することができる。
【0042】
図4は、本発明の実施の形態1に係る、検出領域における基板の態様の変形例を示す断面図である。図5は、本発明の実施の形態1に係る、検出領域における基板の態様の別の変形例を示す断面図である。図4および図5を参照して、本発明の基板の形態の変形例を説明する。
【0043】
全反射面2は、図1に示すように、基板1の外周部の端面のほぼ全体が全反射面2となるように形成されていてもよいが、たとえば図4に示す基板3のように、検出領域に全反射面2と、従来から用いられる通常のベベルカット面4とが共存した構造となっていてもよい。すなわち光線10が入射する側(図4における上側)に全反射面2を、基板3の主表面(図4における左右方向)とのなす角度が光線10を全反射する条件を満たす角度となるように形成し、光線10が入射する側と反対側(図4における下側)には通常の、たとえば基板3のチッピングやへき開を抑制するためのベベルカット面4を形成した構造であってもよい。なお、ベベルカット面4は、図4に示すように全反射面4との接続部の角部の角度が鋭角となるように、基板3の全反射面2が形成された側の主表面と反対側の主表面(裏面)に向かうにつれて基板3の幅が小さくなるように、全反射面2とは逆方向に傾斜するよう形成されている。
【0044】
またはたとえば図5に示す基板5のように、全反射面2を、上述した基板5の全反射面2と同様の条件を満足する角度となるように形成し、光線10が入射する側と反対側(図5における下側)には基板5の主表面(図5における左右方向)とほぼ垂直をなす端面6および通常のベベルカット面7を形成した構造であってもよい。つまり、ことなる観点から言えば、基板5の外周端は、全反射面2とベベルカット面7とが、主表面に対してほぼ垂直な端面6をはさんで配置された構成となっていてもよい。
【0045】
その他、図示しないが、図4および図5における各基板の検出領域において、全反射面2の下側(光線10が入射される側の反対側)には、ベベルカット面4、7や端面6の代わりに、たとえば全反射面2に連なるように、図15の基板の端部(図15における左側)に形成されたラウンド(表面が曲面状の部分)を形成してもよい。このように各基板の全反射面2の下側には、たとえば応力による基板のへき開やチッピングなどを抑制するための任意の形状を設けることができる。
【0046】
以上に述べた、本発明の実施の形態1に係る各基板の全反射面2を形成する工程には、たとえば端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含んでいてもよいし、端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含んでいてもよい。たとえば研削用の砥石を用いて、基板1の主表面の端部の所定の領域を、主表面にほぼ垂直な方向から照射される光線10を全反射する条件を満たす角度となるように除去加工することにより全反射面2を形成することができる。またはレーザを用いて、同様に基板1の端部を除去加工することにより全反射面2を形成してもよい。
【0047】
ここで、照射される光線10を全反射することができる程度に、形成する全反射面2の面粗度が小さくなるよう加工することが好ましい。具体的には当該面粗度はRaで0.5nm以下となるように加工することが好ましく、そのなかでもRaで0.1nm以下であることがさらに好ましい。上述した面粗度とすることにより、照射される光線10を容易に全反射することができる。そのように加工するためには、たとえば機械加工により全反射面2を形成する場合、仕上げ加工において用いる砥石の粒度が100nm以下であることが好ましい。また、レーザを用いて全反射面2を形成する場合においては、波長266nmのUVレーザを照射することが好ましい。
【0048】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る基板の態様を示す概略断面図である。図6に示す本発明の実施の形態2に係る基板8は、図1に示す本発明の実施の形態1に係る基板1と基本的に同様の態様を備えている。しかし、図6に示す基板8は、図1などに示す全反射面2に代えて、検出領域において入射する光線10を乱反射させる乱反射面9を備えている。この点において、基板8と基板1とは相違している。
【0049】
基板8の一方の主表面に対向する領域(図6における上側)から照射される光線10が基板8の一方の主表面と反対側に位置する他方の主表面(図6における下側)へ透過することを抑制できれば、基板8の下側に位置する光電センサ30は光線10が基板8により遮断されたことを認識することができるので、基板8の存在を検出することができる。したがって基板8における光線10の透過を抑制するためには、図1に示す基板1のように入射した光線10を全反射させてもよいが、図6に示す基板8のように乱反射面9により光線10を乱反射させることによっても、全反射させる場合と同様の効果を奏することができる。
【0050】
図7は、本発明の実施の形態2に係る基板の乱反射面の態様を示す概略断面図である。具体的には図7は、図6の基板8における左側の乱反射面9を拡大した断面図である。したがって図6の基板8における右側の領域について、図7においては記載していない。そのため、図7の右側に波線を記載し、基板8が右側へと延在していることを示唆している。
【0051】
図7に示す乱反射面9は、図2に示す全反射面2に対して面粗度を上げる加工を施した構成となっている。すなわち図2と同様に、図7に示すように基板8の乱反射面9は、基板8の主表面(図7の左右方向に延在する面)と角度αをなしている。なお、ここで面粗度を上げるとは、当該面に入射する光線10を乱反射させることができる面粗度となるように表面を荒らすように(凹凸形状を形成するように)加工することをいうが、より具体的には当該面の面粗度がRaで0.1μm以上となるように加工することをいう。
【0052】
乱反射面9としての機能を発揮するために表面の面粗度を上げる加工が施されている領域である検出領域は、図7に示すように基板8の外周端(図7における左端)からの主表面方向の(図7における左端から右側への)距離が0.1mm以上5mm以下の領域に形成されることが好ましい。すなわち、図7におけるC点からD点までを乱反射面9とすれば、基板8の外周端からC点までの、主表面方向の距離L3は0.1mm以上、基板8の外周端からD点までの、主表面方向の距離L4は5mm以下であることが好ましい。
【0053】
乱反射面9についても、基板8の主表面の端部の少なくとも一部に形成されていればよい。すなわち、基板8の主表面の端面からの距離がたとえば0.1mm以上5mm以下の領域の全体に、基板8の主表面の外周部を1周するように乱反射面9を形成してもよいし、当該外周部における周方向の一部のみに乱反射面9を形成してもよい。
【0054】
なお、図7に示すような、全反射面2の面粗度を上げることにより乱反射面9を形成する例は一例である。他にはたとえば図示しないが、全反射面を一旦形成することなく(つまり基板8の端部については傾斜部など形成せず)、基板8の主表面の端部に面粗度の大きい乱反射面9を形成した構造としてもよい。また、乱反射面9を形成するために基板8の一方の主表面(図6、7の上側の主表面)および他方の主表面(図6、7の下側の主表面)と交差する面を形成する場合においても、当該交差する面と基板8の主表面とのなす角が、たとえば図7に示す角度αのように、光線10が全反射を起こす条件を満たす角度である必要はない。
【0055】
図8は、本発明の実施の形態2に係る、検出領域における基板の態様の変形例を示す断面図である。図9は、本発明の実施の形態2に係る、検出領域における基板の態様の別の変形例を示す断面図である。本発明の実施の形態2に係る基板においても、たとえば上述した図4に示す基板3と同様に、図8に示す基板11のように、乱反射面9と、従来から用いられる通常のベベルカット面4とが共存した構造となっていてもよい。またはたとえば図9に示す基板12のように、上述した図5における基板5と同様に、乱反射面9と、端面6およびベベルカット面7とが共存した構造であってもよい。その他、各基板の乱反射面9の下側には、たとえば応力による基板のへき開やチッピングなどを抑制するための任意の形状を設けることができる。
【0056】
続いて、本発明の実施の形態2に係る基板の製造方法について説明する。本発明の実施の形態2に係る基板8の製造方法についても、上述した図3に示すように、まず基板を準備する工程(S10)において、半導体装置の基板として用いる透明な基板を準備する。次に加工工程(S20)において、基板の端部の少なくとも一部の領域における光の透過率を、基板の主表面の中央部における光の透過率よりも小さくするための加工を行なう。ここで本発明の実施の形態2においては、たとえば図6に示す基板8のように、加工工程(S20)には、基板8の主表面の端部の少なくとも一部に入射する光を乱反射する乱反射面9を形成する工程を含む。
【0057】
図6に示すように、基板8の乱反射面9以外の領域に照射された光線10は、基板8が透明なためほとんどが基板8を透過するが、検出領域に配置された乱反射面9に照射した光線10は当該乱反射面9において乱反射するため、図6における基板8の下側に配置された光電センサ30にはほとんど光線10が到達しない。このため、光電センサ30は基板8の存在により光線10が遮断されたと認識することができるので、基板8の存在を検出することができる。
【0058】
このとき、たとえば図7に示す基板8のように、まず乱反射面9を形成するために基板8の一方の主表面(図7の上側の主表面)および他方の主表面(図7の下側の主表面)と交差する面を形成し、形成した面の面粗度を上げる加工を施してもよい。ここで、当該交差する面が基板8の主表面となす角度はたとえば主表面に垂直な方向から入射する光線10が全反射する条件を満たす角度α(図1参照)であってもよいが、それ以外の任意の角度とすることができる。また、上述した交差する面を形成することなく、基板8の主表面の端部に面粗度の大きい乱反射面9を形成してもよい。いずれの場合においても、乱反射面9としての機能を発揮するための面粗度の大きい領域は、基板8の主表面の端面から0.1mm以上5mm以下の領域に形成することが好ましい。
【0059】
以上に述べた、本発明の実施の形態2に係る基板の乱反射面9を形成する工程には、本発明の実施の形態1に係る基板の全反射面2を形成する工程と同様に、たとえば端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含んでいてもよいし、端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含んでいてもよい。たとえば上述した機械加工する工程を用いる場合は、砥石を用いて、基板8に示すような乱反射面9を形成するための形状(基板8の主表面に対して傾斜した端面形状)を加工し、かつ面粗度を大きくする加工を施すという方法を用いる。また、端面の少なくとも一部をレーザ加工する工程を用いる場合には、所定の領域にレーザを照射することにより面粗度を大きくする加工を行なう。具体的には、波長266nmのUVレーザを照射することが好ましい。
【0060】
その他、乱反射面9を形成する方法としては、たとえば以下に述べる方法を用いることもできる。図10は、本発明の実施の形態2に係る乱反射面を形成する別の方法を示すフローチャートである。図10に示すように、当該方法においてはまず不純物を導入する工程(S21)として、基板のうち乱反射面を形成する領域、すなわち基板の端部の少なくとも一部の領域に対して不純物の導入を行なう工程を実施する。
【0061】
図11は、図10のフローチャートの不純物を導入する工程(S21)の態様を示す概略断面図である。図11に示すように、基板8のうち乱反射面を形成したい領域、すなわち基板8の主表面の端部(たとえば図11の基板8における左端)から0.1mm以上5mm以下の領域に対し、主表面から基板8の内部にイオン注入を行なうことにより、基板8を構成する結晶の欠陥13を形成する。ここでイオン注入する物質としては、たとえばB(ボロン)、N(窒素)、Al(アルミニウム)、P(リン)などを用いることが好ましい。ここで、イオン注入を行なう場合に、導入される不純物の密度(濃度)は、1.0E17cm−3以上1.0E21cm−3以下であることが好ましく、そのなかでも1.0E19cm−3以上1.0E20cm−3以下であることがより好ましい。上記範囲の密度(濃度)とすれば、当該領域に入射する光線10を乱反射する作用を大きくすることができる。
【0062】
続いて図10に示すようにエッチングする工程(S22)を行なう。具体的には、上述した不純物を導入する工程(S21)にてイオン注入を行なった基板の表面層にウェットエッチング処理を行なう工程である。
【0063】
図12は、図10のフローチャートのエッチングする工程(S22)の態様を示す概略断面図である。図12に示すように、たとえばイオン注入により欠陥13を形成した基板8を、KOH溶液14中に浸漬する。ここでKOHとは水酸化カリウムで、強アルカリ性であり強いエッチング性を有する物質である。すると基板8のうち欠陥13が形成された領域においては、欠陥13が存在することにより基板8の主表面のエッチング速度が局所的に変わる(均一ではない)ため、エッチングされた面に凹凸が形成される。その結果、当該欠陥が形成された領域における表面の面粗度が増加する。また、基板8のうち欠陥13が存在しない領域においては上記のような欠陥の影響が無いため、均一なエッチングが行なわれる。そのため、主表面がエッチングされる量は当該領域内においてほぼ同一であり、主表面の面粗度は大きく変化しない。
【0064】
以上の手順により、基板8の主表面のうち、イオン注入を行なって結晶の欠陥13が発生した領域のみ面粗度を大きくすることができる。このため、イオン注入を行なった領域の主表面を乱反射面として利用することができる。
【0065】
また、不純物を導入する方法として、上述したイオン注入法の代わりに、たとえば熱拡散法を用いてもよい。図13は、熱拡散法を用いて本発明の実施の形態2における乱反射面を形成する方法を示すフローチャートである。図13に示すように、この場合においても図10に示したイオン注入法を用いる場合と同様に、まず不純物を導入する工程(S21)を実施する。この後、図13に示すように、図10に示すイオン注入法におけるエッチングする工程(S22)の代わりに、熱処理する工程(S23)を行なう。この結果、導入された不純物の存在に起因して、不純物を導入した領域に欠陥が形成され、結果的に不純物を導入した領域の表面に凹凸が形成される。
【0066】
なお、上述した不純物を導入する工程では、図10に示したイオン注入法を用いてもよいが、他の方法を用いてもよい。具体的には、たとえば不純物を含む物体を、基板の不純物を導入したい領域に接触した状態で、基板および当該物体を過熱する。その結果、当該物体から固体拡散により不純物が基板の内部へと拡散する。
【0067】
あるいは、基板において不純物を導入したい領域のみが露出するようにマスク層を形成し、当該マスク層が形成された基板を熱処理炉において加熱する。この加熱時に、熱処理炉の雰囲気ガスとして、導入したい不純物を含有するガスを用いる。このようにすれば、熱処理により基板の所定の領域(マスク層が形成されていない領域)に不純物を導入することができる。
【0068】
以上の方法(熱拡散法)を用いて不純物を導入した後、上記熱処理する工程(S23)を行なえば、基板の主表面のうち不純物を導入した領域の凹凸を増加させることができるため、イオン注入法を用いた場合と同様に乱反射面を形成することができる。
【0069】
本発明の実施の形態2は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態1と異なる。すなわち、本発明の実施の形態2について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態1に順ずる。
【0070】
(実施の形態3)
図14は、本発明の実施の形態3に係る基板の態様を示す概略断面図である。図14に示す基板15は、検出領域として用いる、たとえば基板15の一方の主表面(図14における上側の主表面)のうち端面から0.1mm以上5mm以下の領域に薄膜16を備えている。この薄膜16は、基板15の上側から基板15の主表面に対して基板15の主表面にほぼ垂直な方向に入射する光線10を乱反射させるものである。ここで薄膜16の材質としては、たとえばCr(クロム)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)など、可視光(赤色光)や赤外光などを高い割合で反射することができる金属薄膜を用いることが好ましい。
【0071】
したがって、本発明の実施の形態3に係る基板15においても、たとえば上述した本発明の実施の形態2に係る基板8と同様に、検出領域に入射する光を薄膜16により乱反射することができる。このため基板15の下側(図14参照)に配置される光電センサ30に入射する光線10が減少する。このとき光電センサ30は光線10の遮断を認識することにより、基板15の存在を検出することができる。
【0072】
本発明の実施の形態3に係る基板の製造方法は、上述した図3に示す本発明の実施の形態1に係る基板の製造方法の手順に順ずる。ただし、図3の加工工程(S20)において、基板の端部の少なくとも一部の領域における光の透過率を、基板の主表面の中央部における光の透過率よりも小さくする加工として、図14に示すように基板15の一方の主表面上に薄膜16を成膜する。この薄膜16は、乱反射面として使用するものであるため、たとえば上述した図6に示す基板8と同様に、基板15の主表面の端面からの主表面方向の距離が0.1mm以上5mm以下の領域に対して成膜を行なうことが好ましい。上述したように、薄膜16の材質としてはたとえばCr、W、Alなど、可視光(赤色光)や赤外光などを高い割合で反射することができる金属薄膜を用いることが好ましい。また、薄膜16の膜厚は0.05μm以上1.0μm以下とすることが好ましく、その中でも特に0.1μm以上0.5μm以下とすることがより好ましい。そして、このような薄膜16を成膜する方法としては、たとえば真空蒸着法やCVD法、スパッタリング法などを用いることが好ましい。
【0073】
なお、本発明の実施の形態3においても、図示しないがたとえば図8に示す基板11のように、乱反射面として用いる薄膜16と、従来から用いられる通常のベベルカット面4とが共存した構造となっていてもよい。またはたとえば図9に示す基板12と同様に、乱反射面として用いる薄膜16と、端面6およびベベルカット面7とが共存した構造であってもよい。その他、各基板の乱反射面として用いる薄膜16の下側には、たとえば応力による基板のへき開やチッピングなどを抑制するための任意の形状を設けることができる。
【0074】
また、上述した薄膜16は乱反射面として形成されているが、薄膜16の表面状態などを制御して全反射面となるように薄膜16を形成してもよい。
【0075】
本発明の実施の形態3は、以上に述べた各点についてのみ、本発明の実施の形態2と異なる。すなわち、本発明の実施の形態3について、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、全て本発明の実施の形態2に順ずる。
【0076】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、透明な基板を用いて半導体装置の製造などのプロセスを行なう場合に、当該透明な基板の存在をセンサに認識させることを可能とする技術として、特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1に係る基板の態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る基板の全反射面の態様を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に係る、検出領域における基板の態様の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る、検出領域における基板の態様の別の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る基板の態様を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る基板の乱反射面の態様を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る、検出領域における基板の態様の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る、検出領域における基板の態様の別の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る乱反射面を形成する別の方法を示すフローチャートである。
【図11】図10のフローチャートの不純物を導入する工程(S21)の態様を示す概略断面図である。
【図12】図10のフローチャートのエッチングする工程(S22)の態様を示す概略断面図である。
【図13】熱拡散法を用いて本発明の実施の形態2における乱反射面を形成する方法を示すフローチャートである。
【図14】本発明の実施の形態3に係る基板の態様を示す概略断面図である。
【図15】基板の端部にラウンドを施した状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0079】
1,3,5,8,11,12,15,20 基板、2 全反射面、4,7 ベベルカット面、6 端面、9 乱反射面、10 光線、13 欠陥、14 KOH溶液、16 薄膜、30 光電センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基板であり、
前記基板の端部の少なくとも一部に形成され、前記基板の中央部における光の透過率よりも小さい前記光の透過率を有する検出領域を備える基板。
【請求項2】
前記検出領域は、前記検出領域に入射する前記光を全反射する全反射面を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記検出領域は、前記検出領域に入射する前記光を乱反射する乱反射面を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記基板はSiC、GaN、サファイア、AlN、ダイアモンドからなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載された基板。
【請求項5】
透明な基板を準備する工程と、
前記基板の端部の少なくとも一部における光の透過率を、前記基板の中央部における前記光の透過率よりも小さくする加工を行なう工程とを備える、基板の製造方法。
【請求項6】
前記加工を行なう工程には、前記端部の少なくとも一部に入射する前記光を全反射する全反射面を形成する工程を含む、請求項5に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
前記全反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含む、請求項6に記載の基板の製造方法。
【請求項8】
前記全反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含む、請求項6に記載の基板の製造方法。
【請求項9】
前記加工を行なう工程には、前記端部の少なくとも一部に入射する光を乱反射する乱反射面を形成する工程を含む、請求項5に記載の基板の製造方法。
【請求項10】
前記乱反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部を機械加工する工程を含む、請求項9に記載の基板の製造方法。
【請求項11】
前記乱反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部をレーザ加工する工程を含む、請求項9に記載の基板の製造方法。
【請求項12】
前記乱反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部に不純物の導入を行なう工程と、前記不純物を導入した領域の表面の面粗度を上げる工程とを含む、請求項9に記載の基板の製造方法。
【請求項13】
前記面粗度を上げる工程には、前記領域の表面層をエッチングする工程または前記領域の表面層を熱処理する工程を含む、請求項12に記載の基板の製造方法。
【請求項14】
前記乱反射面を形成する工程には、前記端部の少なくとも一部に薄膜を成膜する工程を含む、請求項9に記載の基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−141124(P2010−141124A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315919(P2008−315919)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】