説明

基板の搬送装置

【課題】水中に積層されたウエハ等の基板を精度良く1枚ずつ分離させてカセットに収納する分離収納装置を提供する。
【解決手段】ウエハ載置部5と、第1噴射ノズル13と、第2噴射ノズル14と、第3噴射ノズル22とを備えたウエハ3の搬送装置1である。ウエハ載置部5に多数枚のウエハ3が水中に積層状態で載置される。ウエハ3の前方側面部と対向して水面下に設けられた第3噴射ノズル22から水18を噴射して前記ウエハ3の上位複数枚を1枚ずつ分離させる。ウエハ載置部5は上下動自在に構成され、第3噴射ノズル22からの水18をウエハ3の上位複数枚に当たるようにウエハ載置部5を上下させる。分離されたウエハ3を第1噴射ノズル13と第2噴射ノズル14とで分離させて前方に搬送する。分離されたウエハ3は、水中内で1枚ずつ搬送され、カセット74へと収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層されたウエハ等の基板を一枚ずつ分離して搬送する基板の搬送装置に関する。さらに詳しくは、積層された基板を水等の液中に浸漬した状態で分離させて搬送する基板の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池や半導体チップ等の製造にあたり、シリコン等のインゴットがワイヤソーや内周刃等の切断装置で枚葉状に切断され、多数のウエハが形成されている。
【0003】
例えばワイヤソーで切断され、櫛状となったインゴットは、加工液、砥粒及び切断屑によって汚染されているため、まず各種の洗浄液で粗洗浄され、その後、切断時に固定されていたカーボンやセラミック等のダミー部材が剥離されることで、多数枚のウエハが得られる。
【0004】
そして、上記ウエハは、洗浄工程で残った汚れの乾燥による固着やウォータースポットによるシミの残りを防止するために水中で1枚ずつ分離される。そして、前記分離されたウエハは、カセットに収納された後、さらなる洗浄工程や乾燥工程等の次工程に搬送される(例えば特許文献1)。
【0005】
しかし、上記特許文献1のようなウエハの処理システムは、大掛かりでコストが高くなるため、太陽電池の製造においては、上記のような処理システムは導入せずに一連の工程を多くの所が未だ手作業で行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−237770号公報、図3、図14、図22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1においては、積層されたウエハを一枚ずつ分離するにあたり、水中に積層されたウエハに搬送方向とは反対側の斜め上方から第1噴射ノズルで水を噴射し、最上部のウエハの浮き上がりを防止しながら、第2の噴射ノズルで積層されたウエハの最上部の上面に対して搬送方向の斜め上方から水を噴射して、積層されたウエハを最上部から1枚ずつ分離するようになっている。
【0008】
しかしながら、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルの噴射方向が互いに打ち消し合うように作用するため、第1噴射ノズルと第2噴射ノズルの噴射する水圧や噴射方向の調整がシビアであり、調整に時間を要する問題があった。
【0009】
また、上記のように単に第1噴射ノズルによるウエハの浮き上がり防止と、第2噴射ノズルでのウエハの搬送方向への押し出しだけでは、積層されたウエハ間の表面張力等でウエハ同士が張り付いていた場合、ウエハが複数枚取り出される問題があった。さらに分離ローラがウエハ上面から押えるようになっており、ウエハの表面に接触するためにウエハを破損する問題があった。
【0010】
そこで、上記のウエハの複数枚取り出しを防止するために、図10のように積層されたウエハの取り出し側の側端面前方から噴射ノズルで水流を与え、積層されたウエハの隙間に水や気泡を介在させてウエハ間の張り付きを防止することが行なわれている。
【0011】
上記の分離を図10(a)乃至(c)に基づいて説明すると、図10(a)のように第3噴射ノズル96でウエハ92の取り出し側の側端面前方から水流を与えると、ウエハ92は、薄いため水流に乗って1枚ずつ浮上し、ウエハ92が分離されることになる。
【0012】
図10(b)のように、ウエハ92が分離された後、最上段のウエハ92は、第3噴射ノズル96の水流よりも上段に位置し、さらに、2段目以降のウエハも上昇し、次第に最上段のウエハ92の下面に順次張り付いていくことになる。
【0013】
この状態で図10(c)のように第1噴射ノズル93及び第2噴射ノズル94を作用させると、重なったウエハ92が複数枚前方に送り出されることになる。このように、水中で積層されたウエハを分離搬送するには、複数枚のウエハの取り出しを防止する必要があるが、未だ効率良く複数枚のウエハの取り出しを防止する手段がない。
【0014】
また、特許文献1の分離収容装置において、シュータの内側下部に噴出ノズルを設け、上層のウエハを浮上させて分離を行ない易くすることが行なわれているが、下層のウエハも上層に押し上げられるので、上記図10のようにウエハ同士が張り付いて複数枚取り出される問題があった。
【0015】
また、上記の水中での分離に代えて吸着パッドでウエハを吸着して搬送する場合は、ウエハに吸着痕が残ったり、また、水中から取り出した場合は、ウエハの表面が乾燥して汚れが固着したり、ウォータースポットが生じたりして、その後の工程で取り除くことが非常に困難になる問題があった。
【0016】
そこで、本発明の課題は、水中に多数枚積層されたウエハ等の基板を確実に1枚ずつ分離して搬送する基板の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで請求項1の発明は、多数枚の基板を水中に積層状態で載置する基板載置部と、 この基板載置部の水面上に前下がり傾斜状態で配置され、前記基板上面の水面に向けて水を噴射させることにより該基板を前方に送り出す第1噴射ノズルと、前記第1噴射ノズルより前方位置に前下がり傾斜状態で配置され、前記基板載置部より前方の水面に向けて水を噴射することで前記第1の噴射ノズルで前方に送り出された基板を更に前方へと案内する第2噴射ノズルと、前記基板載置部の前方水面下に前記基板の前方側面部と対向して設けられ、前記基板の前方側面部に水を噴射することによって該基板の上位複数枚を1枚ずつ分離させる第3噴射ノズルとを備えた基板の搬送装置において、前記基板載置部を上下動自在にした構成を採用する基板の搬送装置である。
【0018】
また、請求項2の発明は、前記基板載置部の上方に最上段の基板が所定高さに位置したことを検知するセンサを設け、該センサで最上段の基板を検知した際に、前記第1噴射ノズルで水を噴射させて最上段の基板を前方に送り出すようにした請求項1記載の構成を採用した基板の搬送装置である。
【0019】
また、請求項3の発明は、前記基板載置部の上方で水面とほぼ同じ高さとなるように整流板を設けた請求項1または2記載の構成を採用した基板の搬送装置である。
【0020】
また、請求項4の発明は、前記第3噴射ノズルと平行に第4噴射ノズルを設け、第1及び第2噴射ノズルで前記最上段の基板を前方に送り出した後、第4噴射ノズルを噴射することで積層された2段目以降の基板が前方に飛び出すことを防止するようにした請求項1から3記載の構成を採用した基板の搬送装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、基板を分離するに先立って積層部分の基板の前方側面部に第3噴射ノズルから水流を与えるようにしたので長く積層状態で保持することによる基板同士の張り付きを防止できる。
【0022】
また、本発明によれば、基板載置部を上下に昇降させるようにしたので、基板載置部で1枚ずつ分離した基板が再度張り付いても第3噴射ノズルからの水の噴射により水流が再度与えられるので、確実に1枚ずつ基板を分離させることができる。
【0023】
また、本発明によれば、基板載置部上に設けたセンサにより、積層載置された基板の最上段の基板が所定位置に達したことを検知してから、第1及び第2噴射ノズルを作用させるようにしたので、第3噴射ノズルで基板が分離された直後に基板を送り出す動作を行うことができ、確実に基板を1枚ずつ分離することができる。
【0024】
また、本発明によれば、基板載置部上に設けた整流板により、水面の乱れによる基板の揺れを防止でき、水面の動きに依存せずに基板を安定に前方に送り出すことができる。また、前記整流板は直接基板と接触することがないので基板を傷付けることもない。
【0025】
また、本発明によれば、基板面とは非接触に、しかも、基板を乾燥させること無く分離搬送できるので、基板面へのウォータースポット等のシミの残存や汚れの焼き付きを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、本発明の一実施形態を表すウエハの搬送装置の全体平面図である。
【図2】は、図1のA−A方向の矢視断面図である。
【図3】は、本発明のウエハの搬送装置における搬送ユニットの説明正面図である。
【図4】は、本発明のウエハの搬送装置における搬送ユニットの説明平面図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明のウエハの搬送装置の動作説明図である。
【図6】(c)及び(d)は、本発明のウエハの搬送装置の動作説明図である。
【図7】(e)及び(f)は、本発明のウエハの搬送装置の動作説明図である。
【図8】(a)及び(b)は、本発明のウエハの搬送装置の動作説明図である。
【図9】(a)及び(b)は、本発明のウエハの搬送装置における不良ウエハの排出を表す説明図である。
【図10】は、従来のウエハの搬送装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の基板の搬送装置の一実施形態について図1乃至図4に基づいて説明する。なお、噴射ノズル等の固定部材については一部省略して描いてある。
【0028】
図1は、本発明の基板(ウエハ)の搬送装置の一実施形態を表す全体平面図であり、図2は図1のA−A方向から見た矢視断面図である。
【0029】
図1及び図2のようにウエハ3の搬送装置1は、全体が貯水槽2内に形成され、ウエハ3の一連の分離収納工程は、水18にウエハ3が浸漬された状態で行われるようになっている。この貯水槽2においては、図示しないヒーター等の加熱手段が設けられ、適時、加温された状態でウエハ3の搬送工程を行うようになっている。
【0030】
前記搬送装置1は、多数枚のウエハ3を積層状態で載置するウエハ供給部5と、ウエハ供給部5から分離されたウエハ3の複数枚取りや破損を検知すると共に一時的にウエハ3を停止保持させるウエハ検査部20と、ウエハ検査部20で検知されたウエハ3を受け取って搬送する搬送ユニット30と、該搬送ユニット30で搬送されるウエハ3を受け取って前方へ送り出すウエハ送出部60と、ウエハ3を順次収納するウエハ収納部70とから構成されている。
【0031】
前記ウエハ供給部5には、積層されたウエハ3を載置するL字形状のウエハ載置枠6が設けられ、このウエハ載置枠6には、背板の背面にスライドガイド7が設けられている。前記スライドガイド7は、貯水槽2の壁面に沿って上下方向に設けられたレール8と摺動可能に嵌合し、図示しない適宜の駆動源によってレール8に沿った昇降動と所定範囲での上下昇降が可能になっている。
【0032】
前記ウエハ載置枠6の底板上には積層されたウエハ3を前上がり傾斜状態で載置する傾斜板17が設けられ、この傾斜板17の両側にはウエハ3の両側を支持する側板10、10が立設されると共に傾斜板17の搬送方向後方にはウエハ3の後端を支持する2本の支柱9、9が立設されている。
【0033】
また、前記ウエハ載置枠6の中央付近上方で水面19上には、載置されたウエハ3の上方水面19上に向けて水18を噴射する第1噴射ノズル13が、前下がり傾斜状に配置されており、前記第1噴射ノズル13から噴射される水18によって最上段のウエハ3が分離されて前方に送り出されるようになっている。
【0034】
また、前記第1噴射ノズル13の前方位置には、該第1噴射ノズル13によって分離されたウエハ3を前方に案内する第2噴射ノズル14が前下がり傾斜状に設けられている。
【0035】
また、ウエハ載置枠6の上方で水面19とほぼ同じ高さに、前記傾斜板17の傾斜に沿って整流板11が設けられている。前記整流板11は、前記ウエハ載置枠6の昇降動とは独立して設けられており、図示しない適宜の調整手段により、傾斜角と高さの調整が可能になっている。
【0036】
前記整流板11は、水面19とほぼ同じ高さに調整して固定され、後述する第1噴射ノズル13で最上段のウエハ3を分離して前方に送り出す際に、水面19が乱れてウエハ3の搬送方向や浮上状態が乱れることを防止するようになっている。また、前記整流板11は、前記第1噴射ノズルの噴射水が通過できるように前方中央に開口部12が設けられている。
【0037】
前記整流板11の前方上方には、最上段のウエハ3が所定高さに達したことを検知するセンサ15が適宜な固定手段に固定されて設けられている。前記傾斜板17及びウエハ載置枠6は、前記センサ15と対向する位置に切欠きが設けられ、載置されたウエハ3が全て取り出された際に、前記傾斜板17及びウエハ載置枠6をウエハ3として誤検知しないようになっている。
【0038】
また、積層されたウエハ3の前方側面部とやや間隔を開けてその前方水面下にはストッパ16が搬送方向と直交するように適宜の固定手段に固定して設けられ、ウエハ3が分離して送り出される際に下段部のウエハ3が飛び出さないようになっている。
【0039】
前記ウエハ供給部5の搬送方向前方には、ウエハ供給部5で分離されたウエハ3を検査するウエハ検査部20が設けられている。
【0040】
前記ウエハ検査部20は、ウエハ供給部5と搬送テーブル45までの間に渡ってウエハ3の幅方向両端を案内するように設けられた搬送レール21、21と、載置されたウエハ3を分離させる第3噴射ノズル22と、下段のウエハ3が送り出されないようにウエハ供給部5側に押し戻す第4噴射ノズル23と、ウエハ3の複数枚取りを検知するセンサ24と、ウエハ3の割れや欠けを検知するセンサ25とで形成されている。
【0041】
前記第3噴射ノズル22は、前記搬送レール21、21のウエハ供給部5側の水面下に配置され、前記ウエハ供給部5に載置されたウエハ3の前方側面部と対向するように2本設けられている。また、前記第3噴射ノズルは、ウエハ3の前方側面部に向けて水18を噴射するようになっており、ウエハ供給部5に載置されたウエハ3の前方側面部に向けて水18を噴射することで、積層されたウエハ3同士の隙間に水18を進入させてウエハ3を浮上させるようになっている。このことにより、ウエハ3同士が表面張力によって張り付くことを防止し、ウエハ3が分離されて間隔を保った浮上状態となる。
【0042】
前記第4噴射ノズル23は、前記第3噴射ノズル22、22間の中央に設けられ、ウエハ供給部5に載置されたウエハ3の前方側面に向けて水18を噴射するようになっている。前記第4噴射ノズル23からウエハ供給部5に載置されたウエハ3の前方側面に向けて水18を噴射することで、前記第1噴射ノズル13及び第2噴射ノズル14によって、最上段のウエハ3が前方に送り出される際に下段のウエハ3がウエハ供給部5から飛び出さないようになっている。
【0043】
前記第3噴射ノズル23からの水18の噴射は、ウエハ供給部5に積層して載置されたウエハ3を分離して間隔を保たせるために比較的弱い水流を与えるようになっている。また、前記第4噴射ノズル23からの水18の噴射は、下段のウエハ3が飛び出さないようにするためのものであり、比較的強い水流を瞬間的に与えるものである。従って、2種類のノズルを用いているが、これらの機能を切替できるノズルであれば、1種類のノズルを用いても良い。
【0044】
前記センサ24は、前記搬送レール21、21間で、前記第3噴射ノズル22の側方に設けられ、透過光でウエハ3が複数枚取りされていないかどうかを検知するようになっている。前記センサ24は、水面19を挟んで上下方向に設けられた発光部と受光部とからなり、該発光部と受光部との間を通過したウエハ3が1枚であることを検知する波長に設定されている。
【0045】
前記センサ25は、前記搬送レール21、21間で搬送テーブル25の隣接位置に、ウエハ3のほぼ四隅に位置するように4つ設けられている。また、前記センサ25は、前記センサ24と同様に発光部と受光部とからなり、ウエハ検査位置に位置するウエハ3の有無を透過光で検知することで、ウエハ3の割れや欠け等の破損の有無を検知するようになっている。また、ウエハ検査部20の前方端付近下方には図示しない適宜の噴射ノズルが設けられ、ウエハ3の両端を搬送レール21、21に密着させないようにすると共に該ウエハ3を前方に送り出すようになっている。
【0046】
なお、前記センサ24、25は、本実施形態においては透過光を利用して検知するセンサを使用したが、ウエハ3の複数枚取りや破損を検知できるものであれば各種のものが使用できる。
【0047】
前記搬送レール21の前方の水中には、矩形状の搬送テーブル45が水面19と平行に設けられ、水面19の上方にはウエハ3を搬送する搬送ユニット30が設けられている。
【0048】
前記搬送テーブル45は、搬送レール21と隣接する中央にコの字状の切欠部46が設けられ、該切欠部46にはストッパ49が設けられている。前記ストッパ49は、図2のようにガイドブロック48の先端に搬送方向と垂直となるように固定されている。前記ガイドブロック48は、前記切欠部46に軸支された軸47に軸止されている。また、前記軸47は、図示しない適宜な駆動手段により、実線から二点鎖線位置のように回転するようになっている。
【0049】
また、搬送テーブル45の側方には、前記ウエハ検査部20で検査された破損ウエハ54を排出する排出部53が設けられている。
【0050】
また、前記搬送テーブル45上には排出部53と対向するように排出ノズル50が設けられている。前記排出ノズル50は、前記破損ウエハ54の側方位置から排出部53に向けて水18を噴射するようになっており、この水18の噴射により前記破損ウエハ54は、排出部53に排出されるようになっている。
【0051】
また、前記搬送テーブル45上の排出部53側には円弧状のガイド支柱51及び52が設けられ、前記破損ウエハ54がスムーズに排出部53に排出されるようになっている。
【0052】
前記搬送ユニット30は、保持するウエハ3の後方上面に水18を噴射して浮上させる噴射ノズル41と該ウエハ3の前端と当接して受け止めるストッパ42と、該噴射ノズル41及びストッパ42を支持するベース板34とを備える。
【0053】
前記噴射ノズル41は、前下がり傾斜状態でノズル支持枠40に支持され、該ノズル支持枠40は、傾斜枠39に支持され、この傾斜枠39を介してベース板34に傾斜状態で固定されている。なお、前記ノズル41の傾斜角は、搬送するウエハ3の厚みや形状、大きさに応じて角度及び位置の調節が可能になっている。
【0054】
また、前記ベース板34の下方前端部から直行するように懸架されたストッパ支持枠36が設けられ、このストッパ支持枠36に沿って軸35が設けられ、該軸35が、前記ストッパ支持枠36に軸支されている。前記軸35の中央付近に間隔を開けて2個のL字状のガイドブロック38、38が設けられている。前記両ガイドブロック38、38の下端には、水面19と垂直に前記ストッパ42、42が固定されている。また、前記軸35のベース板34側には、ストッパ支持枠36の側板を介してモータ37が接続されており、該モータ37を駆動することで、ストッパ42、42が、水面19と垂直位置に位置するウエハ3の保持位置と、水面19上に前記ストッパ42、42が位置する開放位置との間を回動するようになっている。
【0055】
また、前記ベース板34の上部に直交してユニット支持枠33の一端が固定されており、他端側の下面にはスライドガイド32が固定されている。また、前記ユニット支持枠33の他端側には、該ユニット支持枠33と直交するように、前記貯水槽2の上部に支持枠4が懸架され、この支持枠4上にレール31が敷設されている。前記スライドガイド32は、前記レール31と摺動可能に嵌合されており、前記搬送ユニット30は、図示しない適宜の駆動源によって、前記レール31に沿って図2のように二点鎖線位置から実線位置までの移動が自在になっている。
【0056】
図3及び図4のように搬送ユニット30が、搬送するウエハ3上に位置した際、前記ストッパ42が下方に向けて回動し、ウエハ3の保持位置に位置するようになっている。前記ストッパ42がウエハ3の保持位置に位置した状態で、前記噴射ノズル41から水18を噴射させてウエハ3を浮上させると共に付与される前方への推進力によって、ウエハ3を前記両ストッパ42、42に当接させて保持するようになっている。
【0057】
前記噴射ノズル41からウエハ3の上方水面上に水18を噴射することにより、ウエハ3は、その上面に流れる水流と下面に流れる水流の速度差(ベルヌーイ効果)によって浮上させられる。さらに前記噴射ノズル41は前下がり傾斜状態で設けられているので、ウエハ3は水流によって前方への推進力が付与される。この搬送方向への推進力によって前記ストッパ42にウエハ3を当接させることでウエハ3は搬送ユニット30に保持されるようになっている。
【0058】
上記のように前記ウエハ3を保持した搬送ユニット30をレール31に沿って移動させることでウエハ3は、表面と非接触の状態で搬送されるので、ウエハ3の表面に吸着痕や汚れが付着せず、さらにウエハ3を破損することがない。
【0059】
図1及び図2のように前記ウエハ送出部60は、搬送テーブル45の搬送方向前方に隣接して設けられ、ウエハ3の両側をガイドする搬送レール61、61と、前記両搬送レール61、61上に該両搬送レール61、61に沿って設けられた複数のガイドローラ62を備える。前記ガイドローラ62は、自由回転となるように軸支され、ウエハ3の両側面と軽く接触することで自由回転しながら該ウエハ3を収納カセット74へと導くようになっている。
【0060】
また、前記ウエハ送出部60の搬送レール61、61間の中央付近で水面下に噴射ノズル63がウエハ収納部70に向けて水面19と垂直となるように設けられている。また、前記搬送レール61、61の搬送方向前方端付近には、噴射ノズル64が、搬送方向斜め前方に向けて設けられ、搬送レール61上に位置したウエハ3をウエハ収納部70に向けて送り出すようになっている。
【0061】
前記ウエハ収納部70は、カセット載置部71とその上部に載置される収納カセット74とから構成されている。前記カセット載置部71は、逆L字状の支持枠からなり、該支持枠の底板上に前記収納カセット74を図示しない適宜な支持ピンで位置決めするようになっており、該支持枠の背面にはスライドガイド72が設けられている。前記スライドガイド72は、貯水槽2の内面に設けられたレール73に沿って図示しない適宜の駆動源によって昇降動するようになっている。
【0062】
前記収納カセット74は、多段状のスリットが設けられ、該カセット載置部71を昇降動させることで順次収納カセット74内にウエハ3を収納していくようになっている。
【0063】
本発明のウエハ分離装置1の構成は以上のようになっており、次に該ウエハ分離装置1の動作について、図5乃至図9に基づいて以下に説明する。
【0064】
図5乃至図7は、前記ウエハ供給部5でのウエハ3の分離及び送り出しに関する説明図である。
【0065】
図5(a)は、粗洗浄が済んだウエハ3を積層状態でウエハ供給部5の傾斜板17上に載置し、ウエハ3の分離動作を開始させた状態を表わす説明図である。
【0066】
前記第3噴射ノズル22から水18を噴射することで、この噴射水はストッパ16の間隙部を通過してウエハ3の前方側面部に吹き付けられる。これにより、ウエハ3同士の隙間に噴射水が進入し、ウエハ3の上位複数枚が順次上方に浮上する。分離動作の開始後、しばらく時間が経過すると最上段のウエハ3は、下段から浮上するウエハ3に順次押し上げられ、噴射水が当たる部分よりも上方で再びウエハ3同士が張り付いた状態となっていく。なお、ウエハ搬送装置1の起動と共にセンサ15から絶えず反射光を発して最上段のウエハ3の位置が所定位置にあるかどうかを確認する(図示では、所定位置よりも上にウエハ3がある状態を表している)。
【0067】
図5(a)のように、センサ15で最上段のウエハ3が所定位置よりも上にあることを検知した場合、図5(b)のごとく、ウエハ載置枠6を下降させ、上位複数枚のウエハ3に第3噴射ノズル22の噴射水が当たるようにする。(図では理解が容易なように描いてあるが、実際には3〜5mm程度を約1秒程度で下降させている)。
【0068】
図6(c)のように、一度張り付いた上位複数枚のウエハ3に第3噴射ノズル22からの噴射水が吹き付けられるとこれら上位複数枚のウエハ3は再び分離される。この分離と共にウエハ載置枠6を上昇させ、最上段のウエハ3が所定位置に達したことをセンサ15が検知すると該ウエハ載置枠6の上昇を停止させる。
【0069】
図6(d)のように、最上段のウエハ3が所定位置に達すると第1噴射ノズル13及び第2噴射ノズル14から水18を噴射させる。このことにより、最上段のウエハ3は、前方に送り出される。なお、この時、第1噴射ノズル13及び第2噴射ノズル14からの噴射水により水面19が乱れてウエハ供給部5に積層されたウエハ3が揺らぐことを整流板11によって防止するようになっている。前記整流板11は、水面19が乱れて発生する水流がウエハ3に達することを制限し、該ウエハ3が水流によって揺れて不安定な状態になることを防止する。
【0070】
図7(e)のように、ウエハ3は二点鎖線位置から実線位置へとウエハ検査部20に向けて送り出される。このウエハ3の送り出しの直後またはほぼ同時に第4噴射ノズル23から水18を噴射させ、下段のウエハ3が同時に送り出されることを防止する。なお、この複数枚取り出しの防止として前記ストッパ16が堰き止めの役割を果たすが、それを補うために第4噴射ノズル23が作用する。
【0071】
また、センサ24は、ウエハ3の1枚だけを透過する波長の赤外線等を照射しているので、送り出されたウエハ3が1枚だけ通過したのか、複数枚通過したのかを検知し、ウエハ3が1枚だけ通過したことを検知した場合は、正常と判断する。前記センサ24が、複数枚のウエハ3を検知した場合は、複数枚取りが発生したとして後述する排出部53へウエハ3を排出する。また、ウエハ3の送り出し動作をしたにもかかわらず、ウエハ3が所定時間検知されない場合は、ウエハ3の送り出し動作が失敗したとして、再度上記工程を行なうようになっている。なお、センサ24は、間に介在する水18の影響を除外する波長の光源を利用するのが誤動作防止の観点から好ましい。
【0072】
次に図7(f)のように、前方に送り出されたウエハ3は、ウエハ検査部20の前端部分で搬送テーブル45に設けられたストッパ49によって停止され、ウエハ3の四隅近傍でセンサ25によってウエハ3の破損が検査される。
【0073】
センサ25でのウエハ3の検査は、前述のセンサ24と同様に行なわれ、ウエハ3がセンサ25の部分に存在するかどうかを検知して行なわれる。この検査の際にセンサ25の何れかでウエハ3が検知されない場合は、ウエハ3に割れや欠けがあると判断し、後述する排出部3へとウエハ3を排出する。この検査で正常と判断された場合は、ウエハ3の収納動作が継続される。
【0074】
図8(a)及び(b)は、ウエハ検査部20で検査されたウエハ3を搬送ユニット30で搬送し、ウエハ収納部70に収納する動作を表す説明図である。
【0075】
図8(a)のようにウエハ検査部20で検査され、ストッパ49で停止させられたウエハ3上に搬送ユニット30が二点鎖線位置から実線位置まで後退動し、搬送ユニット30のストッパ42がウエハ3の前端側面と当接した時点で搬送ユニット30を停止させる。なお、ストッパ42、49は、互いに干渉しないように配列されている。
【0076】
前記搬送ユニット30が、ウエハ検査部20のウエハ3上に位置すると、噴射ノズル41から水18が噴射され、該ウエハ3が、浮上すると共にストッパ42に向けて付勢されて前記搬送ユニット30に保持される。前記ウエハ3が搬送ユニット30に保持されるとストッパ49を図示二点鎖線のウエハ保持位置から実線のウエハ開放位置へと回転させ、ウエハ3の搬送を許容する。
【0077】
図8(b)のように、ウエハ3を保持した搬送ユニット30が、搬送テーブル45の前端部まで移動し、この状態でストッパ42を二点鎖線の保持位置から実線の開放位置へと回転させることでウエハ3は、噴射ノズル41による前方への付勢力によって、前方へと送り出される。
【0078】
前記搬送ユニット30から開放されて前方に送り出されたウエハ3が、ウエハ送出部60の搬送レール61上に達する。前記搬送レール61上に達したウエハ3は、ガイドローラ62によって幅方向側端がガイドされながら、前記搬送レール61の前方端に達する。前記ウエハ3は、噴射ノズル63及び64から噴射される水18の水流により収納カセット71の所定の位置に収納される。この後、ウエハ収納部70を下降させて次のウエハ3の収納位置に収納カセット71を位置させる。このように収納カセット71は、順次水中に向かって下降しながらウエハ3を収納していくのでウエハ3が乾燥してウォータースポットが発生することがない。
【0079】
以上が、ウエハ3の収納動作であり、上記を繰り返しながら順次ウエハ3を収納カセット71に収納していく。なお、本搬送装置1を並列に複数台設置することで、さらに効率良くウエハ3の分離収納が行なえる。
【0080】
図9(a)及び(b)は、ウエハ検査部20でウエハ3の複数枚取りや破損が検知された場合の該ウエハ3の排出部53への排出動作を表す説明図である。
【0081】
図9(a)のように、ウエハ検査部20で欠けがあることが検知されたウエハ3は、破損ウエハ54として図示二点鎖線位置から搬送テーブル45上の実線位置へと搬送ユニット30で搬送される。
【0082】
次に図9(b)のように搬送ユニット30のストッパ42を保持位置から開放位置へと開放すると共に、噴射ノズル41を停止させ、排出ノズル50から排出部53へ向けて水18を噴射する。この排出ノズル50からの噴射による水流により、破損ウエハ54は、排出部54に排出される。ウエハ3が複数枚取りで合った場合も上記のように排出部3へ複数枚のウエハ3を排出し、この場合は、複数枚のウエハ3を回収して再度、ウエハ供給部5に供給すれば良い。
【0083】
以上が、本発明の搬送装置の実施形態であるが、これに限定されず、発明の範囲内で適宜の変更を行うことができる。
【0084】
例えば、本発明の実施形態においては、ウエハ供給部5へのウエハ3の載置を前方上がりに傾斜させたが、平坦であっても良く、供給する基板に応じて適宜調整することができる。
【0085】
また、第1噴射ノズル13や第2噴射ノズル14の傾斜角度や噴射圧も搬送する基板の厚み、形状、材質に応じて適宜変更できる。
【0086】
前記センサ15も搬送する基板の厚みや材質に応じて、基板を検知できるものであれば限定されない。
【符号の説明】
【0087】
1 搬送装置
2 貯水槽
3 ウエハ
4 支持枠
5 ウエハ供給部
6 ウエハ載置枠
7 スライドガイド
8 レール
9 支柱
10 側板
11 整流板
12 開口部
13 第1噴射ノズル
14 第2噴射ノズル
15 センサ
16 ストッパ
17 傾斜板
18 水
19 水面
20 ウエハ検査部
21 搬送レール
22 第3噴射ノズル
23 第4噴射ノズル
24 センサ
25 センサ
30 搬送ユニット
31 レール
32 スライドガイド
33 ユニット支持枠
34 ベース板
35 軸
36 ストッパ支持枠
37 モータ
38 ガイドブロック
39 傾斜枠
40 ノズル支持枠
41 噴射ノズル
45 搬送テーブル
46 切欠部
47 軸
48 ガイドブロック
49 ストッパ
50 排出ノズル
51 ガイド支柱
52 ガイド支柱
53 排出部
54 破損ウエハ
60 ウエハ送出部
61 搬送レール
62 搬送ローラ
63 収納ノズル
64 案内ノズル
70 ウエハ収納部
71 カセット載置部
72 スライドガイド
73 レール
74 収納カセット
90 ウエハ載置部
91 支柱
92 ウエハ
93 第1噴射ノズル
94 第2噴射ノズル
95 ストッパ
96 第3噴射ノズル
97 レール
98 水面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数枚の基板を水中に積層状態で載置する基板載置部と、
この基板載置部の水面上に前下がり傾斜状態で配置され、前記基板上面の水面に向けて水を噴射させることにより該基板を前方に送り出す第1噴射ノズルと、
前記第1噴射ノズルより前方位置に前下がり傾斜状態で配置され、前記基板載置部より前方の水面に向けて水を噴射することで前記第1の噴射ノズルで前方に送り出された基板を更に前方へと案内する第2噴射ノズルと、
前記基板載置部の前方水面下に前記基板の前方側面部と対向して設けられ、前記基板の前方側面部に水を噴射することによって該基板の上位複数枚を1枚ずつ分離させる第3噴射ノズルとを備えた基板の搬送装置において、
前記基板載置部を上下動自在に構成したことを特徴とする基板の搬送装置。
【請求項2】
前記基板載置部の上方に最上段の基板が所定高さに位置したことを検知するセンサを設け、該センサで最上段の基板を検知した際に、前記第1噴射ノズルで水を噴射させて最上段の基板を前方に送り出すようにした請求項1記載の基板の搬送装置。
【請求項3】
前記基板載置部の上方で水面とほぼ同じ高さとなるように整流板を設けた請求項1または2記載の基板の搬送装置。
【請求項4】
前記積層された基板の前方側面と対向するように第4噴射ノズルを設け、第1及び第2噴射ノズルで前記最上段の基板を前方に送り出した後、第4噴射ノズルから水を噴射することで積層された2段目以降の基板が前方に飛び出すことを防止するようにした請求項1から3記載の基板の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−119526(P2012−119526A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268583(P2010−268583)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000132954)株式会社タカトリ (65)
【Fターム(参考)】