説明

基板アライメント方法、基板アライメント装置、レーザ加工裝置及びソーラパネル製造方法

【課題】基板上にアライメントマークを設けることなく正確にアライメントを行なうことができるようにする。
【解決手段】レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、その加工処理によって形成された形状変化部分と基板の縁部の両方を含む箇所の画像を取得し、その画像を次回以降の加工処理前のアライメント処理に利用するようにした。画像の中に形状変化部分と基板縁部の両方の画像を含んでいるので、画像認識処理が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の薄膜等をレーザ光を用いて加工する際に基板を所定位置にアイラメントする基板アライメント方法及び装置並びにソーラパネル製造方法に係り、特に基板上にアライメントマークを設けることなく正確にアライメント処理を行なうことのできる基板アライメント方法、基板アライメント装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソーラパネル製造工程では、透光性基板(ガラス基板)上に透明電極層、半導体層、金属層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光を用いて短冊状に加工してソーラパネルモジュールを完成している。これらの各工程を行なう際に、ガラス基板をレーザ加工装置内に正確にアライメントしなければならない。ガラス基板をアライメントする方法については、特許文献1,2に記載のようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−353816号公報
【特許文献2】特開2001−232486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のものは、レーザ光でガラス基板の隅にアライメントマークを形成し、このアライメントマークを参照してアライメント処理を行なっている。特許文献2に記載のものは、ガラス基板を載置した状態で上下に移動する位置決めピンを用いて基板を突き当てて所定の位置に固定している。しかしながら、ソーラパネルを製造する場合、ガラス基板上の薄膜に例えば約10mmピッチでスクライブ線が形成され、このスクライブ線の線幅は約30μmで、線と線の間隔は約30μmとなるような3本の線で構成されている。従って、特許文献2のような突き当てによる位置決めでは、線と線が重なってしまい、所望のスクライブ線を形成することが困難である。また、特許文献1のようにガラス基板上にアライメントマークを形成した場合、その部分をソーラモジュールとして利用することができなくなるため、ソーラパネルの高効率化という観点から問題であった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、基板上にアライメントマークを設けることなく正確にアライメントを行なうことのできる基板アライメント方法、基板アライメント装置、レーザ加工装置及びソーラパネル製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基板アライメント方法の特徴は、基板にレーザ光を照射する加工処理を施す際に、前記基板を前記加工位置にアライメント処理する基板アライメント方法において、前記レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、前記最初の加工処理によって形成された前記基板の形状変化部分と前記基板の縁部との両方を含む箇所の画像を取得し、前記画像を前記基板のIDデータとして記憶しておき、2回目以降の加工処理を施す際は前記IDデータに基づいて前記アライメント処理を行なうことにある。
基板にレーザ光を照射する加工処理としては、透光性基板(ガラス基板)上に金属層、半導体層、透明電極層を順次形成し、形成後の各工程で各層をレーザ光を用いて短冊状に加工してソーラパネルを作成するソーラパネル製造などが該当する。このようなレーザ加工においては、各工程でアライメント処理が行なわれる。この発明では、レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、その加工処理によって形成された形状変化部分と基板の縁部の両方を含む箇所の画像を取得し、その画像を次回以降の加工処理前のアライメント処理に利用するようにした。例えば、ソーラパネル製造の場合、レーザ加工によって形成されたスクライブ線と基板縁部との両方を含む箇所の画像を取得し、取得した画像に基づいてレーザ加工処理の前にアライメント処理を行なうようにした。画像の中に形状変化部分と基板縁部の両方の画像を含んでいるので、画像認識処理が容易となるという効果がある。例えば、ソーラパネル製造の場合、スクライブ線の画像と基板縁部の形状の画像の両方を含んでいるので、画像認識処理が容易となる。これによって、基板上にアライメントマークを設けることなく正確にアライメントを行なうことができる。
【0007】
本発明に係る基板アライメント装置の特徴は、基板を保持する保持手段と、前記基板にレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、前記基板を前記保持手段の所定位置にアライメント処理するアライメント手段と、前記レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、前記最初の加工処理によって形成された前記基板の形状変化部分と前記基板の縁部との両方を含む箇所の画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された前記画像を前記基板のIDデータとして記憶する記憶手段と、2回目以降の加工処理を施す際は、前記IDデータに基づいて前記アライメント手段によるアライメント処理を制御する制御手段とを備えたことにある。これは、前述の基板アライメント方法を具現化した装置の発明である。
【0008】
本発明に係るレーザ加工装置の特徴は、前記基板アライメント方法又は前記基板アライメント装置を用いてワークに対してレーザ光による加工処理を行なうことにある。これは、前述の基板アライメント方法又は基板アライメント装置のいずれか1を用いて、レーザ光による加工処理を行なうようにしたものである。
【0009】
本発明に係るソーラパネル製造方法の特徴は、前記基板アライメント方法、前記基板アライメント装置又は前記レーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することにある。これは、前述の基板アライメント方法、基板アライメント装置又はレーザ加工装置のいずれか1を用いて、ソーラパネルを製造するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板上にアライメントマークを設けることなく正確にアライメントを行なうことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のXYテーブル上にワークをアライメントする基板アライメント方法の概念を示す図であり、最初のスクライブ処理前のアイランメト処理を示す図である。
【図3】図1のXYテーブル上にワークをアライメントする基板アライメント方法の概念を示す図であり、2回目以降のスクライブ処理前のアライメント処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るレーザ加工装置の概略構成を示す図である。このレーザ加工装置は、ソーラパネル製造装置のレーザ光加工処理(レーザスクライブ)工程を行なうものである。
【0013】
図1のソーラパネル製造装置は、台座10、XYテーブル20、レーザ発生装置40と、光学系部材50、アライメントカメラ装置60、リニアエンコーダ70、制御装置80及び検出光学系部材等によって構成されている。台座10上には台座10上でX軸方向及びY軸方向(XY平面)に沿って駆動制御されるXYテーブル20が設けられている。
【0014】
XYテーブル20は、X方向及びY方向へ移動制御される。なお、XYテーブル20の駆動手段としては、ボールネジやリニアモータ等が用いられるが、これらの図示は省略してある。XYテーブル20の上側にはレーザ加工の対象となるワーク1が保持されている。また、台座10の上には光学系部材を保持しながらY軸方向にスライド駆動されるスライドフレーム30が設けられている。XYテーブル20は、Z軸を回転軸としてθ方向に回転可能に構成されている。なお、スライドフレーム30によりY軸方向の移動量が十分に確保できる場合には、XYテーブル20は、X軸方向の移動だけを行なう構成であってもよい。この場合、XYテーブル20はX軸テーブルの構成でもよい。
【0015】
スライドフレーム30は、台座10上の四隅に設けられた移動台に取り付けられている。スライドフレーム30は、この移動台によってY軸方向へ移動制御される。ベース板31と移動台との間には除振部材(図示せず)が設けられている。スライドフレーム30のベース板31には、レーザ発生装置40、光学系部材50、制御装置80及び検出光学系部材が設置されている。光学系部材50は、ミラーやレンズの組み合わせで構成され、レーザ発生装置40で発生したレーザ光を4系列に分割してXYテーブル20上のワーク1上に導くものである。なお、レーザ光の分割数は4系列に限るものではなく、2系列以上であればよい。
【0016】
アライメントカメラ装置60は、XYテーブル20上であってワーク1の両端部(X軸方向の前後縁部)付近の画像を取得する。このアライメントカメラ装置60で取得された画像は、制御装置80に出力される。制御装置80は、アライメントカメラ装置60からの画像を、ワーク1のIDデータと共にデータベース手段に格納し、これ以降のワーク1のアライメント処理に利用する。リニアエンコーダ70は、XYテーブル20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と検出部とから構成される。
【0017】
リニアエンコーダ70は、XYテーブル20のX軸移動テーブルの側面に設けられたスケール部材と検出部とか構成される。リニアエンコーダ70の検出信号は、制御装置80に出力される。制御装置80は、リニアエンコーダ70からの検出信号に基づいてXYテーブル20のX軸方向の移動速度(移動周波数)を検出し、レーザ発生装置40の出力(レーザ周波数)を制御する。
【0018】
光学系部材50は、図示のように、ベース板31の下面側に設けられている。レーザ発生装置40から出射されるレーザ光を光学系部材50に導くための反射ミラー33,35がベース板31上に設けられている。レーザ発生装置40から出射されたレーザ光は、反射ミラー33によって反射ミラー35へ向かって反射され、反射ミラー35は、反射ミラー33からの反射レーザ光をベース板31に設けられた挿通穴を介して光学系部材50に導く。なお、レーザ光発生装置40から出射されたレーザ光は、ベース板31に設けられた挿通穴から光学系部材50に対して上側から導入されるように構成されれば、どのような構成のものであってもよい。例えば、レーザ発生装置40を挿通穴の上側に設け、挿通穴を介して光学系部材50に直接レーザ光を導くようにしてもよい。
【0019】
図2及び図3は、図1のXYテーブル上にワークをアライメントする基板アライメント方法の概念を示す図であり、図2は最初のスクライブ処理前のアイランメト処理を示し、図3は2回目以降のスクライブ処理前のアライメント処理の一例をそれぞれ示す図である。まず、図2に示すようにワーク1を載置した状態でワーク1の左側端部の下側縁部を位置決めピン21に、ワーク1の下側端部の左側縁部を位置決めピン22に、ワーク1の下側端部の右側縁部を位置決めピン23に、それぞれ突き当て、ワーク1をXYテーブル20上の所定位置に位置決めする。この状態でワーク1上の金属層にレーザ光を照射し、スクライブ処理を実行する。最初のスクライブ処理の結果、ワーク1上には、ピッチ10mmでスクライブ線が形成される。
【0020】
図2は複数のスクライブ線のうち、ワーク中央付近の1本のスクライブ線25を示す。このスクライブ線25の両端部付近、すなわちスクライブ線25とワーク1の縁部との両方を含む箇所27,29付近の画像27a,29aを前述のアライメントカメラ装置60で取得する。画像27a,29aを見ると分かるように、画像の中にスクライブ線25の画像とワーク1の縁部の形状の画像の両方を含んでいるので、画像認識処理が容易となる。取得された画像27a,29aは制御装置によってワーク1のIDデータとしてデータベース手段70に順次記憶される。
【0021】
図2のように、レーザ加工によるスクライブ処理と共に画像27a,29aの取得処理が終了すると、次は、この金属層の上に半導体層を形成する処理が行なわれる。半導体層形成処理が終了した後、ワーク1に対して前述と同様のレーザ光によるスクライブ処理が実行される。この2回目のスクライブ処理の前に図3に示すような方法でアライメント処理が行なわれる。
【0022】
図3では、最初のアライメント処理と同じようにワーク1を載置した状態でワーク1の左側端部の下側縁部を位置決めピン21に、ワーク1の下側端部の左側縁部を位置決めピン22に、ワーク1の下側端部の右側縁部を位置決めピン23に、それぞれ突き当て、ワーク1をXYテーブル20上の所定位置に位置決めする。この状態で、スクライブ線25の両端部付近、すなわちスクライブ線25とワーク1の縁部との両方を含む箇所27,29付近の画像27b,29bをアライメントカメラ装置60で取得する。一方、制御装置は、データベース手段70からワーク1のIDデータの画像27a,29aを読みだす。制御装置によって、読み出された画像27a,29aと、アライメントカメラ装置60で取得された画像27b,29bとが比較され、両者が一致するように、XYテーブル20のX軸,Y軸及びθ軸が制御され、正確なアライメント処理が行なわれる。
【0023】
図3のようにして、画像27a,29aと画像27b,29bの比較処理によるアライメント処理が終了すると、前回のスクライブ線25から約30μmはなれた位置でレーザ光によるスクライブ処理が実行される。このスクライブ処理が終了すると、別の装置で半導体層の上に透明電極層を形成する処理が行なわれる。再び、レーザ加工装置にワークが搬入され、図3と同様のアライメント処理が行なわれ、ワーク1に対して同様にレーザ光によるスクライブ処理が実行される。これによって、ワーク1には、3本のスクライブ線が形成される。
【0024】
上述の実施の形態では、薄膜の形成されたワーク1の表面からレーザ光を照射して薄膜にスクライブ線(溝)を形成する場合について説明したが、ワーク1の裏面からレーザ光を照射して、ワーク表面の薄膜にスクライブ線を形成するようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、最初のスクライブ処理の結果、ワーク1上に形成されたスクライブ線を含む画像を取得する場合について説明したが、2回目のスクライブ処理の結果、ワーク1上に形成された2本のスクライブ線を含む画像を取得して、それを用いてアライメント処理を行なうようにしてもよい。
【0025】
上述の実施の形態では、ソーラパネル製造装置を例に説明したが、本発明はELパネル製造装置、ELパネル修正装置、FPD修正装置などのレーザ加工を行なう装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1…ワーク
10…台座
20…XYテーブル
30…スライドフレーム
31…ベース板
40…レーザ発生装置
50…光学系部材
60…アライメントカメラ装置
70…リニアエンコーダ
80…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にレーザ光を照射する加工処理を施す際に、前記基板を前記加工位置にアライメント処理する基板アライメント方法において、
前記レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、前記最初の加工処理によって形成された前記基板の形状変化部分と前記基板の縁部との両方を含む箇所の画像を取得し、前記画像を前記基板のIDデータとして記憶しておき、2回目以降の加工処理を施す際は前記IDデータに基づいて前記アライメント処理を行なうことを特徴とする基板アライメント方法。
【請求項2】
基板を保持する保持手段と、
前記基板にレーザ光を照射して所定の加工処理を施すレーザ光照射手段と、
前記基板を前記保持手段の所定位置にアライメント処理するアライメント手段と、
前記レーザ光による最初の加工処理が終了した時点で、前記最初の加工処理によって形成された前記基板の形状変化部分と前記基板の縁部との両方を含む箇所の画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記画像を前記基板のIDデータとして記憶する記憶手段と、
2回目以降の加工処理を施す際は、前記IDデータに基づいて前記アライメント手段によるアライメント処理を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする基板アライメント装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板アライメント方法又は請求項2に記載の基板アライメント装置を用いてワークに対してレーザ光による加工処理を行なうことを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板アライメント方法、請求項2に記載の基板アライメント装置又は請求項3に記載のレーザ加工装置を用いて、ソーラパネルを製造することを特徴とするソーラパネル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−184290(P2010−184290A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31903(P2009−31903)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】