説明

基板トレイ及び基板処理装置

【課題】基板搬送システムの構造設計上の自由度を向上させる基板トレイ及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】基板Wを内側に収容する収容孔11を複数有し、複数の基板Wと共にロボットアーム20により搬送される円形状の基板トレイ10において、ロボットアーム20の挿入方向Dと反対の方向側となる一方の半円の領域10bで、他方の半円の領域10aより収容孔11の数を少なくすることにより、一方の半円の領域10bの重さを、他方の半円の領域10aの重さより重くし、これにより、基板トレイ10及び複数の基板Wによる重心G2の位置を、基板トレイ10の中心Cから、ロボットアーム20の挿入方向Dと反対の方向に移動させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を搬送する基板トレイ及びその基板トレイを用いた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の基板を搬送する基板搬送システムとして、複数枚の基板を基板トレイの収容孔に載置し、その状態で、搬送ロボットを用いて、基板トレイを基板処理装置内の基板サセプタ上に搬送するものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4361045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に開示された基板トレイの問題点について、図5を参照して説明を行う。なお、図5において、符号60は基板トレイ、符号61は収容孔、70は搬送ロボットのロボットアーム、71はロボットアーム70のハンド部、72はロボットアーム70のアーム部、Cは基板トレイ60の中心、Wは基板を示している。又、Dはロボットアーム70の基板トレイ60への挿入方向であり、L1は、中心Cを通り、かつ、挿入方向Dに沿う線であり、L2は、中心Cを通り、かつ、線L1に垂直な線である。
【0005】
図5に示すように、基板トレイ60において、その収容孔61は、基板トレイ60の線L1、L2に対して線対称に形成されており、基板Wの有無に拘わらず、基板トレイ60の中心Cは、その重心Gと一致する。そして、ロボットアーム70を用いて、基板トレイ60を搬送する際には、ロボットアーム70を挿入方向Dへ移動して、基板トレイ60の下方にハンド部71を挿入し、その後、基板トレイ60をハンド部71上に載置させている。このとき、基板トレイ60の中心C、つまり、重心Gを含む、基板トレイ60の半円以上に相当する領域を、ハンド部71上に載置する必要があり、これが、基板搬送システムの構造設計上の制限となっていた。
【0006】
基板トレイ60が載置されるハンド部71は、基板トレイ60が大きいと、その大きさに対応して、大きく形成する必要がある。ハンド部71は、基板処理(例えば、プラズマ処理)に伴う耐熱性や真空に対する低ガス放出性等を考慮して、セラミクスやエンジニアリングプラスチック等で形成されているが、ハンド部71の大きさが大きくなると、加工上の寸法精度を向上させることが難しくなり、又、選定できる素材も限られてくる。又、ハンド部71の大きさに対応して、ロボットアーム部72や搬送ロボットも大型のものが必要となる。
【0007】
又、図5に示した基板トレイ60のように、基板トレイ60を貫通する収容孔61に基板Wを収容する場合には、収容孔61に収容した基板Wへの汚染や接触等を避けるため、基板Wとハンド部71とが干渉しないように、基板トレイ60の外縁部分をハンド部71が保持する構造としている。そのため、ハンド部71の形状を円弧状に形成する必要があり、簡素な形状では無いため、加工上の寸法精度を向上させることが更に難しくなる。又、基板トレイ60における基板Wの配置の自由度も制限され、最大収容枚数も制限されてしまう。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、基板搬送システムの構造設計上の自由度を向上させる基板トレイ及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する第1の発明に係る基板トレイは、
基板を内側に収容する収容孔を複数有し、複数の前記基板と共にロボットアームにより搬送される円形状の基板トレイにおいて、
当該基板トレイ及び複数の前記基板による重心の位置を、当該基板トレイの中心から、前記ロボットアームの挿入方向と反対の方向に移動させたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第2の発明に係る基板トレイは、
上記第1の発明に記載の基板トレイにおいて、
前記ロボットアームの挿入方向と反対の方向側となる一方の半円の領域の重さを、他方の半円の領域の重さより重くしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第3の発明に係る基板トレイは、
上記第2の発明に記載の基板トレイにおいて、
前記収容孔の数を、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で少なくしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第4の発明に係る基板トレイは、
上記第2又は第3の発明に記載の基板トレイにおいて、
前記他方の半円の領域に当該基板トレイを貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第5の発明に係る基板トレイは、
上記第2〜第4のいずれか1つの発明に記載の基板トレイにおいて、
前記一方の半円の領域に錘を設けたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第6の発明に係る基板トレイは、
上記第2〜第5のいずれか1つの発明に記載の基板トレイにおいて、
当該基板トレイを前記他方の半円の領域と前記一方の半円の領域で異なる材料により形成すると共に、前記異なる材料の比重を、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で重くしたことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第7の発明に係る基板トレイは、
上記第2〜第6のいずれか1つの発明に記載の基板トレイにおいて、
当該基板トレイの厚さを、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で厚くしたことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第8の発明に係る基板処理装置は、
上記第1〜第7のいずれか1つの発明に記載の基板トレイを用いて、複数の基板の搬送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板トレイ及び複数の基板による重心の位置を、基板トレイの中心から、ロボットアームの挿入方向と反対の方向に移動させたので、搬送ロボットのロボットアームの小型化、簡素化を図ることができる。その結果、ロボットアーム作製時の寸法精度を向上させることができ、基板トレイとして選定できる素材を拡大することができる。又、ロボットアームの保持部と基板との干渉を避けることができ、基板の配置の自由度も向上する。更には、ロボットアームを動かす搬送ロボットの軽量化、小型化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る基板トレイの実施形態(実施例1)を示す図であり、(a)は、基板トレイの上面図、(b)は、複数の基板を載置した基板トレイとロボットアームの上面図である。
【図2】本発明に係る基板トレイの他の実施形態(実施例2)を示す図であり、(a)は、基板トレイの上面図、(b)は、複数の基板を載置した基板トレイとロボットアームの上面図である。
【図3】本発明に係る基板トレイの他の実施形態(実施例3)を示す図であり、(a)は、基板トレイの上面図、(b)は、複数の基板を載置した基板トレイとロボットアームの上面図である。
【図4】本発明に係る基板トレイの他の実施形態(実施例4)を示す図であり、(a)は、基板トレイの上面図、(b)は、複数の基板を載置した基板トレイとロボットアームの上面図である。
【図5】従来における複数の基板を載置した基板トレイとロボットアームの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る基板トレイ及び基板処理装置の実施形態について、図1〜図4を参照して説明を行う。
【0020】
なお、図示及び詳細な説明は省略するが、本発明に係る基板トレイは、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む半導体製造装置やLED(Light Emitting Diode)製造用のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製造装置等の基板処理装置の基板搬送システムに使用可能である。
【0021】
(実施例1)
図1(a)は、本実施例の基板トレイの上面図であり、図1(b)は、複数の基板を載置した本実施例の基板トレイとロボットアームの上面図である。
【0022】
本実施例の基板トレイ10は、円板状に形成されており、この基板トレイ10を貫通して、円形状の収容孔11が複数(本実施例では5つ)形成されている。基板トレイ10は、全て同一の材料のセラミクス材からなり、全て同一の厚さとなっている。セラミクス材としては、例えば、アルミナ(Al23)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)等が適用可能である。
【0023】
なお、図示は省略するが、収容孔11の内壁には、内側に向かって突設された保持部が形成されている。この保持部が、小径の円形状の基板Wを保持することになる。保持部としては、収容孔11の内壁全周に設けてもよいし、収容孔11の内壁に複数(例えば、等間隔に3つ)設けてもよい。基板Wは、基板トレイ10より小さい直径(基板トレイ10の半径未満の直径)であり、ここでは、円形状のものを例示するが、他の形状のもの、例えば、正方形状でもよい。又、小径の基板Wとしては、Siに限らず、GaAs等の化合物半導体、サファイヤ、石英等があり、例えば、2インチや3インチ等の大きさとなる。
【0024】
前述したように(図5参照)、従来、基板トレイは、線L1、L2に対して線対称に複数の収容孔を形成していた。ここで、線L1は、中心Cを通り、かつ、ロボットアーム20の基板トレイ10への挿入方向Dに沿う線であり、線L2は、中心Cを通り、かつ、線L1に垂直な線である。これに対して、本実施例の基板トレイ10では、従来とは異なり、線L1に対しては、収容孔11同士を線対称に形成しているが、線L2に対しては、収容孔11同士を非対称に形成している。
【0025】
つまり、線L2を境界として、基板トレイ10を半円の領域10aと領域10bに分けると、収容孔11数が、領域10a側で多く、領域10b側で少なくなっている。言い換えると、収容孔11の領域10a側での総開口面積(領域10aにおける収容孔11の開口面積の総計)が大きく、収容孔11の領域10b側での総開口面積(領域10bにおける収容孔11の開口面積の総計)が小さくなっている。その結果、基板トレイ10の重心G1を、中心Cから見て、挿入方向Dと反対の方向(ロボットアーム20のアーム部22側の方向)へ移動させている。このように、基板トレイ10における基板Wの載置位置を工夫することにより、重心G1が領域10b側に位置し、基板トレイ10において偏心することになる。
【0026】
基板トレイ10に複数の基板Wを載置した場合、基板Wの重さにより、基板トレイ10及び基板Wの重心G2は、重心G1より中心C寄りに移動するが、基板Wの比重に比較して、基板トレイ10の比重が重いため、その移動は大きくなく、重心G2は領域10b側の位置に止まることになる。
【0027】
基板トレイ10は、ロボットアーム20を用いて、搬送が行われる。ロボットアーム20のハンド部21は、通常、セラミクスやエンジニアリングプラスチック等により形成されており、U字状等の二股形状に形成されている。そして、搬送の際には、ロボットアーム20を挿入方向Dへ移動して、基板トレイ10の下方にハンド部21を挿入し、その後、基板トレイ10をハンド部21上に載置して搬送する。
【0028】
基板トレイ10をハンド部21上に載置して搬送する際には、図1(b)に示すように、重心G2を含むように、ロボットアーム20のハンド部21を挿入することで、複数の基板Wを載置した基板トレイ10を、基板トレイ10の半円未満に相当する領域のみで保持することができる。そのため、従来のように、基板トレイ10の半円以上に相当する領域をロボットアーム20のハンド部21で保持する必要はない。
【0029】
又、基板トレイ10において、領域10bは、収容孔11が形成されていない面積が広いため、つまり、基板Wを載置する面積が少ないため、ロボットアーム20のハンド部21の配置の自由度が高くなる。例えば、ハンド部21は、基板Wとの干渉を避けて、基板トレイ10の外縁部分に配置しているが、ハンド部23のように、基板Wとの干渉を避けることができる中心C寄りの位置に幅を狭めた配置とすることができる。
【0030】
又、基板トレイ10の外縁には、その1箇所を切り欠くように形成したノッチ13が設けられており、このノッチ13を用いて、基板トレイ10の方向決めが行われる。例えば、既存の基板処理装置が備えているアライメント機構を用いて、基板トレイ10の外周及びノッチ13を検出することにより、基板トレイ10のセンタリング及び方向決めを行うことが可能である。ノッチ13と重心G1、G2との位置関係は予め定めることができるので、ノッチ13を検知することにより、重心G1、G2がある領域10b側を、ハンド部21、23を挿入する側に方向決めすることができる。例えば、本実施例では、図1(a)、(b)に例示するように、中心C、重心G1、G2を通る線L2上であり、かつ、中心Cを挟んで、重心G1、G2と反対側の外縁にノッチ13を設けている。
【0031】
なお、収容孔11の数は、基板トレイ10の大きさ及び載置する基板Wの大きさに応じて設定すればよいが、本実施例では、これに加えて、収容孔11の領域10a側での総開口面積が大きく、収容孔11の領域10b側での総開口面積が小さくなるように、収容孔11の数及びその配置位置を設定している。
【0032】
例えば、基板トレイ10に最大6枚の基板Wを載置可能であるとすると、本実施例では、図1(a)、(b)に例示するように、収容孔11の数を6つとするのではなく、1つ減らして、5つとすると共に、線L2に対して、収容孔11同士を非対称に配置している。このように、収容孔11の領域10a側での総開口面積を大きく、収容孔11の領域10b側での総開口面積を小さくできれば、収容孔11の数及びその配置位置は、図1(a)、(b)の例示に限らず、他の設定としてもよい。
【0033】
(実施例2)
図2(a)は、本実施例の基板トレイの上面図であり、図2(b)は、複数の基板を載置した本実施例の基板トレイとロボットアームの上面図である。
【0034】
本実施例の基板トレイ30も、円板状に形成されており、この基板トレイ30を貫通して、円形状の収容孔31が複数(本実施例では6つ)形成されている。基板トレイ30は、全て同一の材料のセラミクス材からなり、全て同一の厚さとなっている。セラミクス材としては、実施例1で例示したものが適用可能である。
【0035】
なお、図示及び詳細な説明は省略するが、実施例1と同様に、収容孔31の内壁にも、小径の円形状の基板Wを保持する保持部が形成されている。又、基板Wの形状、材料、大きさとしては、実施例1で例示したものが適用可能である。収容孔31の数は、基板トレイ30の大きさ及び載置する基板Wの大きさに応じて、適宜に設定すればよい。
【0036】
本実施例の基板トレイ30では、前述した基板トレイ60と同様に(図5参照)、線L1、L2に対して線対称に複数の収容孔31を形成しているが、従来とは異なり、更に、基板トレイ30を貫通する複数の貫通孔32を形成している。
【0037】
具体的には、線L2を境界として、基板トレイ30を半円の領域30aと領域30bに分けると、領域30a側であり、かつ、収容孔31が形成されていない部分に貫通孔32を設けており、線L1に対しては線対称に配置している。領域30a側に貫通孔32を設けることにより、収容孔31及び貫通孔32の領域30a側での総開口面積(領域30aにおける収容孔31及び貫通孔32の開口面積の総計)が大きく、収容孔31の領域30b側での総開口面積(領域30bにおける収容孔31の開口面積の総計)が小さくなっており、その結果、基板トレイ30の重心G1を、中心Cから見て、挿入方向Dと反対の方向(ロボットアーム20のアーム部22側の方向)へ移動させている。このように、貫通孔32を設けることにより、重心G1が領域30b側に位置し、基板トレイ30において偏心することになる。
【0038】
基板トレイ30に複数の基板Wを載置した場合も、実施例1と同様に、基板Wの重さにより、基板トレイ30及び基板Wの重心G2は、重心G1より中心C寄りに移動するが、その移動は大きくなく、重心G2は領域30b側の位置に止まることになる。
【0039】
基板トレイ30をハンド部21上に載置して搬送する際には、図2(b)に示すように、重心G2を含むように、ロボットアーム20のハンド部21を挿入することで、複数の基板Wを載置した基板トレイ30を、基板トレイ30の半円未満に相当する領域のみで保持することができる。そのため、従来のように、基板トレイ30の半円以上に相当する領域をロボットアーム20のハンド部21で保持する必要はない。
【0040】
又、基板トレイ30の外縁にも、実施例1と同様に、基板トレイ30の方向決めを行うためのノッチ33が設けられており、例えば、既存の基板処理装置に備えられているアライメント機構を用い、ノッチ33を検知することにより、重心G1、G2がある領域30b側を、ハンド部21を挿入する側に方向決めすることができる。本実施例でも、図2(a)、(b)に例示するように、中心C、重心G1、G2を通る線L2上であり、かつ、中心Cを挟んで、重心G1、G2と反対側の外縁にノッチ33を設けている。
【0041】
なお、本実施例では、基板トレイ30に複数の貫通孔32を設けたが、貫通孔32に代えて、例えば、複数の切欠部を領域30a側に設け、収容孔31及び切欠部の領域30a側での総開口面積(領域30aにおける収容孔31及び切欠部の開口面積の総計)を大きく、収容孔31の領域30b側での総開口面積を小さくするようにしてもよい。
【0042】
(実施例3)
図3(a)は、本実施例の基板トレイの上面図であり、図3(b)は、複数の基板を載置した本実施例の基板トレイとロボットアームの上面図である。
【0043】
本実施例の基板トレイ40も、円板状に形成されており、この基板トレイ40を貫通して、円形状の収容孔41が複数(本実施例では6つ)形成されている。基板トレイ40は、全て同一の材料のセラミクス材からなり、全て同一の厚さとなっている。セラミクス材としては、実施例1で例示したものが適用可能である。
【0044】
なお、図示及び詳細な説明は省略するが、実施例1と同様に、収容孔41の内壁にも、小径の円形状の基板Wを保持する保持部が形成されている。又、基板Wの形状、材料、大きさとしては、実施例1で例示したものが適用可能である。収容孔41の数は、基板トレイ40の大きさ及び載置する基板Wの大きさに応じて、適宜に設定すればよい。
【0045】
本実施例の基板トレイ40でも、前述した基板トレイ60と同様に(図5参照)、線L1、L2に対して線対称に複数の収容孔41を形成しているが、従来とは異なり、更に、複数の錘42を基板トレイ40に設けている。
【0046】
具体的には、線L2を境界として、基板トレイ40を半円の領域40aと領域40bに分けると、領域40b側であり、かつ、収容孔41が形成されていない部分の基板トレイ40上に、基板トレイ40と同一の材料のセラミクス材からなる錘42を貼り付けており、線L1に対しては線対称に配置している。領域40b側に錘42を設けることにより、領域40a側より領域40b側が重くなり、その結果、基板トレイ40の重心G1を、中心Cから見て、挿入方向Dと反対の方向(ロボットアーム20のアーム部22側の方向)へ移動させている。このように、錘42を配置することにより、重心G1が領域40b側に位置し、基板トレイ40において偏心することになる。
【0047】
基板トレイ40に複数の基板Wを載置した場合も、実施例1と同様に、基板Wの重さにより、基板トレイ40及び基板Wの重心G2は、重心G1より中心C寄りに移動するが、その移動は大きくなく、重心G2は領域40b側の位置に止まることになる。
【0048】
基板トレイ40をハンド部21上に載置して搬送する際には、図3(b)に示すように、重心G2を含むように、ロボットアーム20のハンド部21を挿入することで、複数の基板Wを載置した基板トレイ40を、基板トレイ40の半円未満に相当する領域のみで保持することができる。そのため、従来のように、基板トレイ40の半円以上に相当する領域をロボットアーム20のハンド部21で保持する必要はない。
【0049】
又、基板トレイ40の外縁にも、実施例1と同様に、基板トレイ40の方向決めを行うためのノッチ43が設けられており、例えば、既存の基板処理装置に備えられているアライメント機構を用い、ノッチ43を検知することにより、重心G1、G2がある領域40b側を、ハンド部21を挿入する側に方向決めすることができる。本実施例でも、図3(a)、(b)に例示するように、中心C、重心G1、G2を通る線L2上であり、かつ、中心Cを挟んで、重心G1、G2と反対側の外縁にノッチ43を設けている。
【0050】
なお、本実施例では、基板トレイ40と同一の材料のセラミクス材からなる錘42を基板トレイ40上に貼り付けているが、基板トレイ40の材料より比重の重いセラミクス材からなる錘を形成し、この錘と同じ形状の穴を基板トレイ40に形成し、この穴の部分に錘を埋め込むように設けてもよい。この場合、基板トレイ40の上面の高さ位置と埋め込んだ錘の上面の高さ位置を一致するようにすれば、通常の基板トレイと同様に搬送可能であり、例えば、搬送時に通過するゲートドアとの接触を心配する必要はない。
【0051】
(実施例4)
図4(a)は、本実施例の基板トレイの上面図であり、図4(b)は、複数の基板を載置した本実施例の基板トレイとロボットアームの上面図である。
【0052】
本実施例の基板トレイ50も、円板状に形成されており、この基板トレイ50を貫通して、円形状の収容孔51が複数(本実施例では6つ)形成されている。基板トレイ50は、全て同一の厚さとなっているが、後述するように、領域によって使用するセラミクス材の材料を変えている。セラミクス材としては、実施例1で例示したものが適用可能である。
【0053】
なお、図示及び詳細な説明は省略するが、実施例1と同様に、収容孔51の内壁にも、小径の円形状の基板Wを保持する保持部が形成されている。又、基板Wの形状、材料、大きさとしては、実施例1で例示したものが適用可能である。収容孔51の数は、基板トレイ50の大きさ及び載置する基板Wの大きさに応じて、適宜に設定すればよい。
【0054】
本実施例の基板トレイ50でも、前述した基板トレイ60と同様に(図5参照)、線L1、L2に対して線対称に複数の収容孔51を形成しているが、従来とは異なり、基板トレイ50の材料を領域によって変えている。
【0055】
具体的には、線L2を境界として、基板トレイ50を半円の領域50aと領域50bに分けると、領域50b側の基板トレイ50の材料を、領域50a側の基板トレイ50の材料より比重の重いセラミクス材で形成している。領域50b側の基板トレイ50の材料を比重の重いセラミクス材で形成することにより、領域50a側より領域50b側が重くなり、その結果、基板トレイ50の重心G1を、中心Cから見て、挿入方向Dと反対の方向(ロボットアーム20のアーム部22側の方向)へ移動させている。このように、基板トレイ50の材料を変えることにより、重心G1が領域50b側に位置し、基板トレイ50において偏心することになる。
【0056】
基板トレイ50に複数の基板Wを載置した場合も、実施例1と同様に、基板Wの重さにより、基板トレイ50及び基板Wの重心G2は、重心G1より中心C寄りに移動するが、その移動は大きくなく、重心G2は領域50b側の位置に止まることになる。
【0057】
基板トレイ50をハンド部23上に載置して搬送する際には、図4(b)に示すように、重心G2を含むように、ロボットアーム20のハンド部23を挿入することで、複数の基板Wを載置した基板トレイ50を、基板トレイ50の半円未満に相当する領域のみで保持することができる。そのため、従来のように、基板トレイ50の半円以上に相当する領域をロボットアーム20のハンド部23で保持する必要はない。
【0058】
又、基板トレイ50の外縁にも、実施例1と同様に、基板トレイ50の方向決めを行うためのノッチ53が設けられており、例えば、既存の基板処理装置に備えられているアライメント機構を用い、ノッチ53を検知することにより、重心G1、G2がある領域50b側を、ハンド部23を挿入する側に方向決めすることができる。本実施例でも、図4(a)、(b)に例示するように、中心C、重心G1、G2を通る線L2上であり、かつ、中心Cを挟んで、重心G1、G2と反対側の外縁にノッチ53を設けている。
【0059】
なお、本実施例では、基板トレイ50を全て同一の厚さとし、半円の領域50aと領域50bとにおいて、互いに異なる材料のセラミクス材を用いているが、逆に、基板トレイ50を全て同一の材料のセラミクス材から形成し、半円の領域50aと領域50bとにおいて、互いに異なる厚さとし、領域50b側の基板トレイ50の厚さを、領域50a側の基板トレイ50の厚さより厚くするようにしてもよい。
【0060】
なお、実施例1〜4同士は、互いに組み合わせてもよく、更に、複数の実施例同士を組み合わせてもよい。例えば、実施例1と実施例2とを組み合わせたり、実施例1と実施例2と実施例3とを組み合わせたり、実施例1と実施例2と実施例3と実施例4とを組み合わせたりしてもよい。
【0061】
上記実施例1〜4で示した基板トレイ10、30、40、50に対応して、基板処理装置には、基板トレイ10、30、40、50を載置する載置部材(図示省略;プラズマCVD装置では、サセプタ等と呼ばれている。)が設けられている。載置部材は、基板トレイ10、30、40、50の形状、特に、収容孔11、31、41、51の数、位置、形状、大きさ等に対応して形成されており、基板処理装置、例えば、プラズマCVD装置の処理容器内に配置されている支持台上に取り付け可能である。そのため、使用する基板Wの大きさに応じて、基板トレイ10、30、40、50及び対応する載置部材を交換することにより、既存の基板処理装置にも装着可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、プラズマCVD装置を含む半導体製造装置及びMEMS製造装置等の基板処理装置に適用可能であり、これらの装置において、基板トレイを用いた基板の搬送システム全般に使用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10、30、40、50 基板トレイ
10a、30a、40a、50a 領域(他方の半円の領域)
10b、30b、40b、50b 領域(一方の半円の領域)
11、31、41、51 収容孔
20 ロボットアーム
32 貫通孔
42 錘
C 基板トレイの中心
D ロボットアームの挿入方向
G1 基板トレイの重心
G2 基板トレイ及び複数の基板の重心
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を内側に収容する収容孔を複数有し、複数の前記基板と共にロボットアームにより搬送される円形状の基板トレイにおいて、
当該基板トレイ及び複数の前記基板による重心の位置を、当該基板トレイの中心から、前記ロボットアームの挿入方向と反対の方向に移動させたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板トレイにおいて、
前記ロボットアームの挿入方向と反対の方向側となる一方の半円の領域の重さを、他方の半円の領域の重さより重くしたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項3】
請求項2に記載の基板トレイにおいて、
前記収容孔の数を、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で少なくしたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の基板トレイにおいて、
前記他方の半円の領域に当該基板トレイを貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか1つに記載の基板トレイにおいて、
前記一方の半円の領域に錘を設けたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1つに記載の基板トレイにおいて、
当該基板トレイを前記他方の半円の領域と前記一方の半円の領域で異なる材料により形成すると共に、前記異なる材料の比重を、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で重くしたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか1つに記載の基板トレイにおいて、
当該基板トレイの厚さを、前記他方の半円の領域より前記一方の半円の領域で厚くしたことを特徴とする基板トレイ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の基板トレイを用いて、複数の基板の搬送を行うことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate