説明

基板乾燥方法、基板乾燥装置、基板の製造方法、及びフラットパネルディスプレイ

【課題】基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、また乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板乾燥方法、基板乾燥装置を提供する。
【解決手段】上方に設けられたハロゲンヒータ40から放射される電磁波を輻射板50、60に照射して加熱し、輻射板50から放射される遠赤外線を基板1の上面側に照射して加熱し、同時に、下方に設けられた反射板60で反射される遠赤外線を基板1の下面側に照射してて加熱し基板1を乾燥すること。基板1を水平に搬送する搬送手段5、ハロゲンヒータ40、ハロゲンヒータ40と搬送手段5間に設けられた輻射板50、下方に設けられた反射板60を具備し、輻射板50、60がハロゲンヒータ40から放射される電磁波を受け遠赤外線を放射する輻射板であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にパターンを形成する際の洗浄後の乾燥において、熱源としてのハロゲンヒータを用いた場合に発生する形成層の分解・劣化を解消し、更には乾燥時間を短縮することが可能な基板乾燥方法、基板乾燥装置、基板の製造方法、並びにフラットパネルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示装置やプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用のパネル基板の製造工程では、基板上に回路やカラーフィルタなど様々なパターンを形成する際に、現像やエッチングなどの薬液処理が施される。この薬液処理の前又は後には、純水などの洗浄液を用いた基板の洗浄、及び洗浄後の乾燥が行われる。
基板の洗浄、及び乾燥を含むこれら一連の処理は、ローラーコンベアなどの搬送手段を用いて基板を搬送しながら行われることが多く、また、基板の乾燥は、エアナイフを用いて基板の搬送方向と対向する方向へエアを吹き付け、洗浄液を基板の表面から押し流して除去する、液切り乾燥が一般的である。
【0003】
しかし、エアナイフを用いた基板の液切り乾燥では、基板を乾燥させる能力が高い反面、エアナイフからのエアによって基板の表面から吹き飛ばされた洗浄液の水滴が基板の表面に再付着し、基板の表面に水滴痕が残ることがある。
また、例えば、画素などのパターニングされた形成層においては、レジスト中に含まれるモノマーの遊離に起因するシミが生じることがあり、その後の検査工程にて疑似欠陥として検知されてしまうことがある。
【0004】
これらの対策としては、エアナイフによる液切り乾燥後に、基板の表面に残留する若干の液体を除去するため、セラミックヒータ或いは遠赤外パネルヒータなどの熱源を用いた乾燥方法による対応が知られている。
【0005】
図1は、このような熱源を採用した乾燥に用いられる、従来の乾燥装置の一例を示す断面図である。図1に示すように、乾燥装置(K)は、処理チャンバー(10)を貫くように基板(1)を搬送する搬送ローラ(5)が設けられており、搬送ローラ(5)の上方に上部遠赤外パネルヒータ(20A)が設けられ、また、基板(1)を搬送する搬送ローラ(5)の下方に下部遠赤外パネルヒータ(20B)が設けられている。
図1中、白太矢印で示すように、エアナイフが用いられた液切り乾燥装置(E)から搬送された基板(1)は、上部遠赤外パネルヒータ(20A)からの輻射熱と、下部遠赤外パネルヒータ(20B)からの輻射熱とにより加熱され、基板(1)の表面に残留する水分、或いは遊離したモノマーが蒸発する。
【0006】
しかし、図1に示す従来の乾燥装置(K)では、遠赤外パネルヒータは瞬時点灯が出来ず、装置を始動する際に設定した恒温に達するのに長時間を要するといった問題がある。また、これにより、例えば、品種の切り替え時のように、基板が搬送されていない場合でも恒温に保つため継続して点灯するので、消費する電力のランニングコストが嵩むといった問題が生じている。
【0007】
また、従来の乾燥装置(K)は、上部遠赤外パネルヒータ(20A)からの輻射熱と、下部遠赤外パネルヒータ(20B)からの輻射熱とにより基板(1)を加熱するのであるが、基板を加熱し乾燥するのに長時間を要するといった問題がある。
この問題は、基板を搬送しながら乾燥処理を行う工程で、1枚の基板を処理する時間を短縮しようとすると、基板の搬送速度を速める必要があるので大きな問題となってくる。
【0008】
特に近年、フラットパネルディスプレイの大画面化に伴い基板のサイズが大型化している。1枚の大型化した基板を処理する時間を短縮しようとすると、基板の搬送速度を更に速める必要があるといった状況にある。
【0009】
このような、従来の熱源である遠赤外パネルヒータに替わり、近年、エネルギー密度が高く、且つ瞬時点灯が可能なハロゲンヒータが熱源として用いられるようになってきた。このハロゲンヒータは遠赤外パネルヒータと比較して、設定した恒温に達するのに長時間を要しないので装置の省スペース化が可能であり、また、品種の切り替え時には消灯できるので省エネルギー化が可能であるといった点で優位にある。
【0010】
このハロゲンヒータの多くは、色温度が2500K付近であり、分光分布の極大波長が0.5μm〜1.5μmの範囲にある。このため、ハロゲンヒータを熱源として用いた乾燥処理を行うと、ハロゲンヒータから放射される電磁波によって、基板上に形成された形成層の構成物質が分解、或いは劣化することがある。この分解、或いは劣化は、ハロゲンヒータから放射される電磁波中の近赤外線によるものと推量されている。
つまり、ハロゲンヒータを熱源として用いた際には、乾燥の対象となる物質に制約が伴うといった新たな問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−354487号公報
【特許文献2】特開平9−148297号公報
【特許文献3】特開平1−135025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、熱源として遠赤外パネルヒータより優位にある、瞬時点灯が可能なハロゲンヒータを用いることによって、先ずは、装置を始動する際の恒温に達する時間を短縮し、また、品種の切り替え時には消灯して電力のランニングコストを低減した上で、基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、更には、熱源としてのハロゲンヒータが抱える問題である、乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板乾燥方法を提供することを課題とするものである。
また、基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、またハロゲンヒータが抱える問題である、乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板乾燥装置、並びに上記基板乾燥方法を用いて製造する基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥方法において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段とハロゲンヒータ間に設けられた輻射板に照射して加熱し、
2)a)該輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、
b)同時に、上記輻射板から放射され、搬送手段の下方に設けられた反射板で反射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の下面側に基板の下方から照射して
加熱し、基板を乾燥することを特徴とする基板乾燥方法である。
【0014】
また、本発明は、基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥方法において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段の上方に設けられた上部ハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段と上部ハロゲンヒータ間に設けられた上部輻射板に照射して加熱し、
2)該上部輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、
3)同時に、前記基板を水平に搬送する搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段と下部ハロゲンヒータ間に設けられた下部輻射板に照射して加熱し、
4)該下部輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の下面側に基板の下方から照射して加熱し、基板を乾燥することを特徴とする基板乾燥方法である。
【0015】
また、本発明は、上記発明による基板乾燥方法において、前記輻射板、又は前記上部輻射板及び下部輻射板が、金属板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板であることを特徴とする基板乾燥方法である。
【0016】
また、本発明は、基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥装置において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段、該搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータ、該ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた輻射板、及び上記搬送手段の下方に設けられた反射板を少なくとも具備し、
2)前記輻射板が、ハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であることを特徴とする基板乾燥装置である。
【0017】
また、本発明は、基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥装置において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段、該搬送手段の上方に設けられた上部ハロゲンヒータ、該上部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた上部輻射板、
2)及び、該搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータ、該下部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた下部輻射板を少なくとも具備し、
3)前記上部輻射板又は下部輻射板が、上部ハロゲンヒータ又は下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であることを特徴とする基板乾燥装置である。
【0018】
また、本発明は、上記発明による基板乾燥装置において、前記輻射板、又は前記上部輻射板及び下部輻射板が、金属板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板であることを特徴とする基板乾燥装置である。
【0019】
また、本発明は、請求項1、請求項2、又は請求項3記載の基板乾燥方法を用いて製造することを特徴とする基板の製造方法である。
【0020】
また、本発明は、請求項7記載の基板の製造方法によって製造された基板を用いたことを特徴とするフラットパネルディスプレイである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送
手段とハロゲンヒータ間に設けられた輻射板に照射して加熱し、輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、同時に、輻射板から放射され、搬送手段の下方に設けられた反射板で反射される遠赤外線を基板の下面側に基板の下方から照射してて加熱し基板を乾燥するので、
或いは、上記、基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、同時に、搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段と下部ハロゲンヒータ間に設けられた下部輻射板に照射して加熱し、下部輻射板から放射される遠赤外線を基板の下面側に基板の下方から照射して加熱し基板を乾燥するので、装置を始動する際の恒温に達する時間を短縮し、また、品種の切り替え時には消灯して電力のランニングコストを低減した上で、基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、更には、乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板乾燥方法となる。
【0022】
また、本発明は、基板を水平に搬送する搬送手段、搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータ、ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた輻射板、及び上記搬送手段の下方に設けられた反射板を具備し、輻射板がハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であるので、
或いは、基板を水平に搬送する搬送手段、搬送手段の上方に設けられた上部ハロゲンヒータ、上部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた上部輻射板、及び、搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータ、下部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた下部輻射板を、上部輻射板又は下部輻射板が、上部ハロゲンヒータ又は下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であるので、基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、またハロゲンヒータが抱える問題である、乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板乾燥装置となる。
【0023】
また、本発明は、上記基板乾燥方法を用いた基板の製造方法であるので、基板の乾燥処理に要する時間を短縮することが可能な、更には、熱源としてのハロゲンヒータが抱える問題である、乾燥の対象となる物質の制約を解消することが可能な基板の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の乾燥装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明による基板乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【図3】図2に示す基板乾燥装置の内部の平面図である。
【図4】本発明による基板乾燥装置の他の例の概略を示す断面図である。
【図5】請求項5に係わる基板乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図2は、本発明による基板乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。また図3は、図2に示す基板乾燥装置の内部の平面図である。図3に示すX−X線での断面が図2に相当する。図2及び図3に示すように、この基板乾燥装置(K2)は、処理チャンバー(30)、処理チャンバーを貫くように設けられた搬送手段としての搬送ローラー(5)、搬送ローラーの上方に設けられたハロゲンヒータ(40)、ハロゲンヒータと搬送ローラー間に設けられた輻射板(50)、及び搬送ローラーの下方に設けられた反射板(60)で構成されている。
【0026】
この一例に示す基板乾燥装置(K2)の搬送ローラー(5)は、コロ状のものであり、その長手方向を基板(1)の搬送方向(X軸)と直交するY軸と平行にして、複数個が設けられている。図2及び図3中、白太矢印で示すように、搬送ローラー(5)は、処理チャンバーを貫くように左方から右方(X軸方向)へ基板(1)を水平に搬送する。なお、符号(PL)は基板の搬送路を表している。
【0027】
ハロゲンヒータ(40)は、管状のものであり、その長手方向をY軸と平行にして複数個が水平に設けられている。ハロゲンヒータ(40)は、電磁波を放射し下方の輻射板(50)に照射して輻射板を加熱する。
【0028】
また、輻射板(50)は、板状のものであり、ハロゲンヒータ(40)と搬送ローラー(5)との間に水平に設けられている。輻射板(50)の幅(Y軸方向)は、ハロゲンヒータ(40)の長さより大きく、長さ(X軸方向)は、ハロゲンヒータの配列長より大きなものである。輻射板(50)は、ハロゲンヒータ(40)の配列に対向して設けられている。この輻射板(50)は、上方のハロゲンヒータ(40)から放射された電磁波を受け、遠赤外線を放射し下方の基板(1)へ照射して基板を加熱する。
【0029】
また、反射板(60)は、板状のものであり、搬送ローラー(5)の下方に水平に設けられている。反射板(60)の幅(Y軸方向)及び長さは、共に輻射板(50)の幅及び長さより大きなものであり、輻射板(50)に対向した位置に設けられている。反射板(60)は、例えば、アルミニウム板であり上方の輻射板(50)からの遠赤外線を、その表面で上方へと反射する。
【0030】
本発明において用いられるハロゲンヒータは、石英ガラス管内にフィラメントを配設し、微量のハロゲンを封入した管状のものである。色温度は2500K付近にあり、分光分布の極大波長が0.5μm〜1.5μmの範囲にある。つまり、ハロゲンヒータから放射される電磁波には近赤外線が多い。
【0031】
また、本発明における輻射板は、例えば、金属板としてアルミニウム板を用い、アルミニウム板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布したものである。輻射板は、近赤外線の多いハロゲンヒータからの電磁波を受け、遠赤外線を放射する。
本発明においては、基板には、この輻射板からの遠赤外線が照射されるので、前述した、基板上に形成された形成層の構成物質が分解、或いは劣化することはなくなる。
【0032】
基板(1)への乾燥処理は、図2及び図3の左方から処理チャンバー(30)に搬送されてきた搬送ローラー(5)上の基板(1)の上面側に、基板の上方の輻射板(50)から放射される遠赤外線を照射して基板を加熱する。また、同時に、基板(1)の下面側に、基板の下方の反射板(60)から遠赤外線を照射して基板を加熱することによって行われる。
【0033】
上記輻射板(50)からの遠赤外線は、輻射板(50)の上方のハロゲンヒータ(40)から放射された電磁波の照射によって、輻射板(50)が加熱され放射される遠赤外線である。
また、上記反射板(60)からの遠赤外線は、輻射板(50)から放射される遠赤外線が、反射板(60)で反射された遠赤外線である。
【0034】
ハロゲンヒータ(40)を熱源として輻射板(50)を介して遠赤外線を照射する本発明では、遠赤外パネルヒータと同等の投入電力において、遠赤外パネルヒータの温度に比べ輻射板(50)の温度は、より高温に加熱される。赤外線などの輻射熱の伝達熱量は、
絶対温度の4乗に比例することが、下式に示すStefan-Boltzmannの法則により知られている。本発明では、遠赤外線の放射エネルギー強度が高いため、より短時間で基板の乾燥を行うことができる。

E(T)=σT4 ・・・・・・・・・(式)
E:黒体輻射熱流束[W/m2
T:絶対温度[K]
σ:Stefan-Boltzmann定数[m2 /T4 ]。
【0035】
上記のように、本発明によれば、熱源として遠赤外パネルヒータより優位にある、瞬時点灯が可能なハロゲンヒータを用いることによって、先ずは、装置を始動する際の恒温に達する時間を短縮することが可能となる。
また、品種替えなどの加熱の不要時には消灯することができ、電力のランニングコストを低減することが可能となる。
【0036】
更には、本発明によれば、輻射板の温度は、より高温に加熱することができるので、より短時間での基板の乾燥が可能となる。このことは、基板の搬送速度を速めて、1枚の基板を乾燥する時間を短縮することが可能となり、能力の向上を図ることができる。また、これに伴い、乾燥処理における省スペース、低コストを図ることができる。
【0037】
また、更には、本発明では、ハロゲンヒータにて加熱された、遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板からの遠赤外線が基板へ照射されるので、基板上に形成された形成層が、近赤外線の多い電磁波の照射に起因した、分解、或いは劣化をするといった構成物質であっても、乾燥処理に用いることが可能となる。
輻射板を介さずハロゲンヒータを用いた際のように、乾燥の対象となる物質に制約が伴うといった問題は解消される。
【0038】
上述した説明は、フラットパネルディスプレイ用の基板上にパターンを形成する場合を例にして説明したが、本発明による基板乾燥方法、及び基板乾燥装置は、フラットパネルディスプレイ用の基板に限らず、例えば、半導体基板上にパターンを形成する際の、基板の洗浄、或いは現像やエッチングなどの薬液処理を施した後の基板の乾燥においても好適に適用できるものである。
【0039】
また、ハロゲンヒータの温度は、ハロゲンサイクルが機能する下限は250℃付近、上限は800℃付近であるので、250℃〜800℃程度まで昇温可能なものを用い任意の温度に設定して使用することができる。
また、ハロゲンヒータは、エネルギー密度が高く、且つ瞬時点灯が可能であり、熱源として遠赤外パネルヒータと比較すると優位にあるために用いたものである。乾燥処理の対象となる基板上に形成された形成層の構成物質の種類によっては、例えば、中間赤外線(波長2.5μm〜25μm)を放射する熱源を用いることもできる。
【0040】
図2及び図3に例示する乾燥処理は、搬送ローラー上を水平に搬送される基板に行われるので、管状のハロゲンヒータが複数配設される配設状態に起因する遠赤外線の照射ムラは受けにくいのであるが、本発明ではハロゲンヒータと搬送ローラーとの間に設けられた輻射板が板状であるため、遠赤外線の照射ムラは、より向上したものとなっている。
【0041】
また、図2及び図3には、搬送手段として搬送ローラーを例示してあるが、例えば、輻射板から放射される遠赤外線が搬送ローラーにて遮蔽されるのを防ぐために、基板の搬送方向と直交する両端を保持した送り機構により基板を搬送するものでもよい。搬送手段は適宜に選択したものを用いることができる。
【0042】
図2及び図3においては、輻射板としてアルミニウム板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板を例示してあるが、ステンレス板などの金属板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板、各種金属板に金属酸化物セラミックス塗布した輻射板、金属酸化物セラミックス輻射板、その他の材料により遠赤外線が放射されるように施された輻射板を配設してもよい。つまり、ハロゲンヒータなどの照射に応じて、効率よく基板に対して適切な赤外波長帯の電磁波を発生させることのできる輻射板を使用する。
【0043】
具体的には、本発明による基板乾燥装置の乾燥効果を評価するために、図2及び図3に示す構造の基板乾燥装置を用い、ガラス基板上にカラーフィルタのパターンを形成する際の、洗浄後の乾燥処理を行ったところ、基板の表面に水滴痕、或いは遊離したモノマーなどに起因するシミを残すことなく良好に、従来より短時間で乾燥させることができた。
【0044】
この評価にはハロゲンヒータとして500℃程度まで昇温可能なものを用いた。従来の遠赤外パネルヒータの昇温可能な温度は250℃程度であるのに対して、ハロゲンヒータは500℃程度まで昇温可能であるので、ハロゲンヒータと対向して配設される輻射板は500℃程度に加熱された。
前記のように、輻射熱の伝達熱量は絶対温度の4乗に比例するので、遠赤外パネルヒータと比較して輻射効果は大きくなり、遠赤外パネルヒータと同じ加熱性能を得るにも省電力ですむことが確認された。
【0045】
図4は、本発明による基板乾燥装置の他の例の概略を示す断面図である。図4に示すように、この基板乾燥装置(K3)は、前記図2に示す基板乾燥装置(K2)のハロゲンヒータ(40)の上方に、断面が抛物線状の反射鏡(70)を設けたものである。
この反射鏡(70)によって、ハロゲンヒータ(40)から放射された電磁波が下方へ反射されるので、一層効率よく輻射板から放射される遠赤外線、及び反射板(60)で反射される遠赤外線が、搬送ローラーにて搬送される基板に照射されるようになり乾燥の効率が向上する。
【0046】
また、図5は、請求項5に係わる基板乾燥装置の一例の概略を示す断面図である。図5に示すように、この基板乾燥装置(K4)は、基板を水平に搬送する搬送手段としての搬送ローラー(5)、搬送ローラー(5)の上方に設けられた上部ハロゲンヒータ(40A)、上部ハロゲンヒータ(40A)と搬送ローラー(5)との間に設けられた上部輻射板(50A)、及び、搬送ローラー(5)の下方に設けられた下部ハロゲンヒータ(40B)、下部ハロゲンヒータ(40B)と搬送ローラー(5)との間に設けられた下部輻射板(50B)で構成されている。上部ハロゲンヒータ(40A)及び下部ハロゲンヒータ(40B)には、各々上部反射鏡(70A)及び下部反射鏡(70B)が設けられている。
【0047】
この基板乾燥装置(K4)においては、基板(1)への乾燥処理は、図5中、白太矢印で示すように、図5の左方から処理チャンバー(30)に搬送されてきた搬送ローラー(5)上の基板(1)の上面側に、基板の上方の上部輻射板(50A)から放射される遠赤外線を照射して基板を加熱する。また、同時に、基板(1)の下面側に、基板の下方の下部輻射板(50B)から放射される遠赤外線を照射して基板を加熱する。
【0048】
上記上部輻射板(50A)からの遠赤外線は、上部輻射板(50A)の上方の上部ハロゲンヒータ(40A)から放射された電磁波の照射によって、上部輻射板(50A)が加熱され放射された遠赤外線である。
また、上記下部輻射板(50B)からの遠赤外線は、下部輻射板(50B)の下方の下部ハロゲンヒータ(40B)から放射された電磁波の照射によって、下部輻射板(50B)が加熱され放射された遠赤外線である。
【0049】
搬送ローラー上の基板は、その上面側には上方の上部輻射板(50A)から放射される遠赤外線が照射され、また、その下面側には下方の下部輻射板(50B)から放射される遠赤外線が照射されるので、乾燥の効率はより一層向上したものとなる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・基板
5・・・搬送ローラ
10・・・処理チャンバー
20A・・・上部遠赤外パネルヒータ
20B・・・下部遠赤外パネルヒータ
30・・・本発明の処理チャンバー
40・・・ハロゲンヒータ
40A・・・上部ハロゲンヒータ
40B・・・下部ハロゲンヒータ
50・・・輻射板
50A・・・上部輻射板
50B・・・下部輻射板
60・・・反射板
70・・・抛物線状の反射鏡
70A・・・上部反射鏡
70B・・・下部反射鏡
K2、K3・・・本発明による基板乾燥装置
K4・・・請求項5に係わる基板乾燥装置
PL・・・基板の搬送路
E・・・液切り乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥方法において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段とハロゲンヒータ間に設けられた輻射板に照射して加熱し、
2)a)該輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、
b)同時に、上記輻射板から放射され、搬送手段の下方に設けられた反射板で反射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の下面側に基板の下方から照射して加熱し、基板を乾燥することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項2】
基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥方法において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段の上方に設けられた上部ハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段と上部ハロゲンヒータ間に設けられた上部輻射板に照射して加熱し、
2)該上部輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の上面側に基板の上方から照射して加熱し、
3)同時に、前記基板を水平に搬送する搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を、搬送手段と下部ハロゲンヒータ間に設けられた下部輻射板に照射して加熱し、
4)該下部輻射板から放射される遠赤外線を、搬送手段上を水平に搬送されている基板の下面側に基板の下方から照射して加熱し、基板を乾燥することを特徴とする基板乾燥方法。
【請求項3】
前記輻射板、又は前記上部輻射板及び下部輻射板が、金属板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の基板乾燥方法。
【請求項4】
基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥装置において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段、該搬送手段の上方に設けられたハロゲンヒータ、該ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた輻射板、及び上記搬送手段の下方に設けられた反射板を少なくとも具備し、
2)前記輻射板が、ハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項5】
基板上にパターンを形成する際の、基板を洗浄した後の基板乾燥装置において、
1)前記基板を水平に搬送する搬送手段、該搬送手段の上方に設けられた上部ハロゲンヒータ、該上部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた上部輻射板、
2)及び、該搬送手段の下方に設けられた下部ハロゲンヒータ、該下部ハロゲンヒータと搬送手段間に設けられた下部輻射板を少なくとも具備し、
3)前記上部輻射板又は下部輻射板が、上部ハロゲンヒータ又は下部ハロゲンヒータから放射される電磁波を受け、遠赤外線を放射する輻射板であることを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項6】
前記輻射板、又は前記上部輻射板及び下部輻射板が、金属板に遠赤外波長領域放射型塗料を塗布した輻射板であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の基板乾燥装置。
【請求項7】
請求項1、請求項2、又は請求項3記載の基板乾燥方法を用いて製造することを特徴とする基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の基板の製造方法によって製造された基板を用いたことを特徴とするフラ
ットパネルディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−106747(P2011−106747A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262607(P2009−262607)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】