説明

基板収納容器および当該容器を搬送するための搬送容器

【課題】基板の表面およびエッジ部分を汚染することなく、且つ、基板を容易に容器に着脱させることを可能にした基板収納容器およびそれを搬送するための搬送容器を提供する。
【解決手段】本発明の基板収納容器50は、周縁部同士を対向配置することによって中空部13を形成することができる一対のプレート体1を備え、下側プレート体11には収納する基板の片面におけるエッジ部分よりも内側において貼着して当該基板を支持固定する台座14であって、下側プレート体11の下側周縁部11aよりも、対向配置させた上側プレート体12に向けて突出している台座14を有している。これにより、基板のエッジ部分と下側周縁部11aとの間に比較的広い隙間を形成することができ、治具を挿入することによって、容易に、且つ基板のエッジ部分を汚染することなく、基板を台座14から取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハなどの基板を収納するための容器と、当該容器を搬送するための搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウエハ搬送に用いられる容器は、その容器形状によらず、回路が形成されているウエハ表面を汚染することなく搬送するために設計されている。したがって、回路が形成されていないウエハのエッジ部分を、例えば容器に設けられた溝に挿入したり、容器に取り付けられたバネなどに接触させたりすることで、ウエハを固定し、容器内に保持している。このような思想に基づいた技術は、市販品のFOUP(Front Opening Unified Pod)やFOSB(Front Opening Shipping Box)や、枚葉ケースなどがある。
【0003】
ところが、これらの構成は、何れも、ウエハエッジを汚染してしまう虞が高く、且つ、ウエハを容器から取り出すプロセスが煩雑であるという問題がある。また、ウエハに搭載する回路の微細化に伴い、ウエハエッジに加え、ウエハ外周部端面であるウエハベベルの状態が半導体製造プロセスに影響を与え、液浸リソグラフィー工程ではウエハエッジに付着した汚染物質が露光に影響を及ぼす虞がある。
【0004】
そこで、これらの問題を解消させた容器が、例えば、特許文献1〜4に開示されている。特許文献1〜4の各技術について、簡単に説明する。
【0005】
特許文献1には、ウエハ製造後からチップ切断までの工程でウエハが割れてしまうことを防止することを目的とした、ウエハを搬送する容器について記載している。特許文献1の容器は、図16が示すように、ウエハ保持部101上の数箇所に配置した導電性粘着材102により、ウエハ103を固定する、また剥離の際は剥離用穴104下からウエハ103を突き上げて剥離するように構成されている。また容器の外周部には、ウエハの向きを認識するための切り欠き等の目印を付けて、これを自動で検査するための自動検査装置での位置合わせを容易にし、機械式固定ができるよう溝105が設けられている。
【0006】
特許文献2〜4には、基材201に設けられた複数の突起204が、保持層210を介して、ウエハ220を間接的に支持する基板収納容器230について記載されている。具体的には、図17および図18に示すように、基材201の周縁部202を除く表面203は浅く凹み形成され、この凹んだ表面203から複数の突起204が間隔をおき上方に突出してその平坦な先端面を保持層210の裏面211に接触させており、これら複数の突起204と保持層210の裏面211との間には、空気流動用の区画空間205が形成される。複数の突起204は、基材201の周縁部202と略同じ高さに揃えられ、各突起204が剛性の円柱形あるいは円錐台形に形成されており、ウエハ220を、保持層210を介し間接的に支持する。基材201の厚さ方向には、区画空間205に連通するウエハ220取り外し用の給排孔206が穿孔され、この複数の突起204間に位置する給排孔206には、バキューム装置207が着脱自在に接続される。そして、このバキューム装置207が動作し、保持層210が複数の突起204のパターンに応じて凸凹に変形するとともに、この凸凹の保持層210とウエハ220との間に空気流入用の隙間が生じることにより、保持層210に粘着保持されたウエハ220が取り外し可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−109879号公報(1993年4月30日公開)
【特許文献2】特開2006−319012号公報(2006年11月24日公開)
【特許文献3】特開2006−315695号公報(2006年11月24日公開)
【特許文献4】特開2006−318984号公報(2006年11月24日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば図16に示すように、容器に固定したウエハ103のエッジ部分(ウエハエッジおよびウエハベベル)が、溝105が形成されたウエハ保持部101の周縁部が接近しているため、特許文献1に記載のように、ウエハ103を取り外す際には、剥離用穴104を利用しなければならず、プロセスが煩雑であるとともに、仮に、ウエハ103のエッジ部分とウエハ保持部101の周縁部との間に治具を差し込んでウエハ103を剥離しようとしても、治具がウエハ103のエッジ部分に接触し、エッジ部分を汚染してしまう。また、剥離用穴104が容器内部と外部とを連通するように設けられていることから、図16の容器は、ウエハを収納して外部に持ち出すための収納容器としては適さない。
【0009】
また、図17に示した技術においても、ウエハ220のエッジ部分まで、基材201の周縁部202上に設けられた保持層210が密着しており、ウエハを取り外す際には、給排孔206およびバキューム装置207が必須構成である。また、保持層210の粘着物質が、ウエハ220のエッジ部分を汚染する虞がある。また、給排孔206が設けられていることから、図16の場合と同様に、ウエハ220を外部に持ち出すための収納容器としては適さない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板(ウエハ)を密閉した状態で輸送することが可能で、且つ、基板の表面およびエッジ部分を汚染することなく、容易に容器への着脱を可能にした基板収納容器およびそれを搬送するための搬送容器を提供することにある。
【0011】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明に係る基板収納容器は、
周縁に位置する周縁部同士を対向配置することによって、基板を収納するための中空体を形成することができる一対のプレート体と、
対向配置させたプレート体同士を互いに固定するクランプとを備えており、
一方の上記プレート体における他方の上記プレート体と対向する側の面には、上記基板の片面における外周部分よりも内側において貼着して当該基板を支持固定する台座であって、当該一方のプレート体の上記周縁部よりも、対向配置させた他方の上記プレート体に向けて突出している台座を有していることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、一方の上記プレート体における他方の上記プレート体と対向する側の面に、対向配置させた上記他方のプレート体に向けて突出した台座が設けられており、基板の片面に貼着することによって当該基板を支持固定することができることから、片面保持型の基板(ウエハ)収納容器として用いることができる。そのため、基板の表面に接触することなく容器に収納することができるので、当該表面を汚染することがない。
【0013】
また、特に、この台座が、基板の片面における外周部分よりも内側に貼着するように構成されており、一方のプレート体の上記周縁部よりも、他方の上記プレート体に向けて突出していることから、一方のプレート体の周縁部と基板の外周部分(エッジ部分)との間に比較的広い隙間ができる。そのため、貼着させた基板を取り外す際に、適切な治具を、その隙間から当該貼着させた面に容易に挿入することができ、当該面を支持することにより、基板を容易に台座から取り外すことができる。すなわち、従来構成のように、剥離用穴や給排孔を設けることなく、従来構成に比べて基板の台座への着脱を簡易な操作によって実施することができる。
【0014】
また、上記の構成によれば、プレート体に剥離用穴や給排孔を設ける必要がない。そのため、中空部分を密閉できるので、ウエハを収納して外部に持ち出す場合であっても、当該ウエハが外部にある物質によって汚染されることがない。
【0015】
また、クランプを設けることによって、一方のプレート体と他方のプレート体とを対向配置させた際に、その対向構造を確実に維持することができる。
【0016】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記周縁部は、対向配置させた上記他方のプレート体に向けて突出していることが好ましい。
【0017】
上記の構成によれば、上記周縁部が突出した構造となっているため、上記クランプを上記周縁部に取り付ける場合であっても、周縁部の強度を補強し、プレート体に耐久性を付与することができる。
【0018】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
対向配置させた上記一方のプレートと上記他方のプレートとの接合部分には、上記中空体を密閉するための弾性体が設けられていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記中空体をより確実に密閉することができ、当該ウエハが外部による汚染に曝されることがない。
【0020】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記一方のプレート体の上記周縁部は、上記台座を中心として円形に構成されており、
上記他方のプレート体の上記周縁部は、上記一方のプレート体の上記周縁部と合致する形状を有しており、
上記弾性体は、上記円形の周縁部の上に配置されるOリングであることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、Oリングという比較的シンプルな部材によって、中空体をより確実に密閉することができる。
【0022】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記円形の周縁部の上には、上記Oリングに沿って、凹溝が形成されていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、上記凹溝に上記Oリングを嵌めることによって、Oリングが所定位置から外れることを防ぐことができるため、操作性を更に容易にすることができる。
【0024】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記台座は、上記一方のプレートの中央に配置されていることが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、台座を一方のプレートの中央に配置することにより、台座に支持固定された基板の貼着面の外周領域を広く確保することができ、台座への着脱操作性をより一層簡便なものとすることができる。
【0026】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記台座における当該基板との対向面の一部分が基板に対して貼着性を有するように、上記基板の片面を貼着する粘着シートが、当該対向面に散在していることが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、台座の全面に粘着シートが設けられている場合と比較して、台座から基板を容易に取り外すことができる。
【0028】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記粘着シートは、上記基板の側の面が、上記台座の側の面に比べて弱い粘着力を示すシートであることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、基板を取り外す際に粘着シートが基板に粘着して台座から剥がれることを防ぐことができる。
【0030】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記クランプは、対向配置させた上記一対のプレート体の外周部分を挟持することによって、プレート体同士を互いに固定するように構成されていることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、周縁部が設けられているプレート体の外周部分を挟持するという簡易な構成によって、上記中空体の形状を維持することができる。
【0032】
また、本発明に係る基板収納容器は、上記の構成に加えて、
上記他方のプレート体における上記一方のプレート体と対向する側の面には、対向配置させた上記一方のプレートの上記台座に貼着された上記基板を当該台座に向けて押さえる押さえ治具が設けられていることが好ましい。
【0033】
上記の構成によれば、収納する基板の表面に対して分析処理などを行なう必要がない場合には、基板の表面に、他方のプレート体に設けた上記押さえ治具を接触させて、基板を台座に向けて押さえつけることができるので、中空体の内部において基板を台座に確実に固定させることができる。
【0034】
また、本発明には、上述した構成の基板収納容器を複数個収納することが可能な搬送用の搬送容器も含まれる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明に係る基板収納容器は、
周縁に位置する周縁部同士を対向配置することによって、基板を収納するための中空体を形成することができる一対のプレート体と、
対向配置させたプレート体同士を互いに固定するクランプとを備えており、
一方の上記プレート体における他方の上記プレート体と対向する側の面には、上記基板の片面における外周部分よりも内側において貼着して当該基板を支持固定する台座であって、当該一方のプレート体の上記周縁部よりも、対向配置させた他方の上記プレート体に向けて突出している台座を有していることを特徴としている。
【0036】
これにより、基板(ウエハ)を密閉した状態で輸送することが可能で、且つ、基板の表面およびエッジ部分を汚染することなく、容易に容器への着脱を可能にした基板収納容器およびそれを搬送するための搬送容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る基板収納容器の構成を示す上面図である。
【図2】図1に示した基板収納容器の構成を示す断面図である。
【図3】図中の(a)は図1に示した基板収納容器の一部の構成を示す上面図であり、図中の(b)は(a)に示した構成の断面図である。
【図4】図1に示した基板収納容器の一部の構成を示す上面図である。
【図5】図1に示した基板収納容器の構成を示す断面図である。
【図6】図1に示した基板収納容器の一部の構成を示す断面図である。
【図7】図中の(a)は図1に示した基板収納容器の一部の構成を示す上面図であり、図中の(b)は(a)に示した構成の断面図である。
【図8】図中の(a)は図1に示した基板収納容器の一部の別例の構成を示す上面図であり、図中の(b)は(a)に示した構成の断面図である。
【図9】図中の(a)および(b)は図1に示した基板収納容器の一部の構成を示す上面図であり、図中の(c)はその断面図である。
【図10】本発明に係る基板収納容器の別例の構成を示した断面図である。
【図11】図1に示した基板収納容器を搬送するために収納する搬送容器の構成を示す図である。
【図12】本実施形態における汚染評価機構の構成を示す斜視図である。
【図13】図12に示した汚染評価機構の一部の構成を示す断面図である。
【図14】図12に示した汚染評価機構の一部の構成を示す断面図である。
【図15】実施例に用いた基板収納容器の構成および寸法を示した断面図である。
【図16】従来構成の図である。
【図17】従来構成の図である。
【図18】従来構成の図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係る一実施形態について、図1から図14を参照して以下に説明する。なお、以下の説明では、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲が以下の実施形態及び図面に限定されるものではない。
【0039】
本発明に係る基板収納容器は、半導体回路を実装するウエハなどの基板を収納するための容器として使用することができる。特に、本発明の基板収納容器によれば、基板のエッジ部分(ウエハの場合、ウエハエッジおよびウエハベベル)を汚染することがない。そこで以下では、まず基板収納容器の構成について説明し、続いて、エッジ部分の汚染の有無および汚染の度合いを評価する方法についても触れておく。
【0040】
[基板収納容器の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る基板収納容器50の構成を示した上面図である。また、図2は、図1に示す切断線A−A´において基板収納容器50を切断した状態を示した矢視断面図である。基板収納容器50は、図2に示すように、対をなす2枚のプレート体(図1では片方のプレート体が示されている)11・12と、クランプ2とをその基本構成としている。本発明は、下側プレート体11の構造に特徴を有している。以下、一対のプレート体1、およびクランプ2の構成について詳述する。
【0041】
(一対のプレート体)
図2に示すように、一対のプレート体1は、下側プレート体11(一方のプレート体)と、上側プレート体12(他方のプレート体)とによって構成されている。
【0042】
下側プレート体11と上側プレート体12とは円形であって、その大きさが合致しており、下側プレート体11と上側プレート体12とを対向配置することによって、円形を有した基板収納容器50の外形が構成されている。
【0043】
下側プレート体11と上側プレート体12として用いられる材料としては、収納する基板を汚染しない素材であればよく、収納する基板によって適宜選択すればよい。
【0044】
下側プレート体11の周縁には下側周縁部11a(一方のプレート体の周縁部)が設けられており、上側プレート体12の周縁には上側周縁部12a(他方のプレート体の周縁部)が設けられている。そのため、下側周縁部11aと上側周縁部12aとを対向させて接合することによって、下側プレート体11と上側プレート体12との対向部分に、下側プレート体11と上側プレート体12と下側周縁部11aと上側周縁部12aとによって囲まれた中空部13を形成することができる。
【0045】
この中空部13には、基板(不図示)を収納することができる。中空部13の大きさとしては、基板の規格に併せて適宜設計すればよい。
【0046】
以下、下側プレート体11および上側プレート体12それぞれについて、その構成の詳細を説明する。
【0047】
(下側プレート体)
図3の(a)は下側プレート体11の上面図であり、図3の(b)は(a)に示す切断線A−A´において下側プレート体11を切断した状態を示した矢視断面図である。図3の(b)において紙面上側が上側プレート体12との対向側に相当し、紙面下側が基板収納容器50の外面の一部に相当する。
【0048】
下側プレート体11には、図3の(b)に示すように、上述した下側周縁部11aに加えて、台座14が設けられている。
【0049】
台座14は、下側プレート体11の中心部にあり、対向配置させる上側プレート体12に向けて突出した構造を有している。
【0050】
なお、本実施形態では、図2および図3の(b)に示すように、台座14が下側プレート体11の一体的に構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれが別体から構成されていてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、図2および図3の(b)に示すように、下側プレート体11における台座14の背面部分が凹構造になっているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、台座14の背面部分に凹構造を設けず、下側プレート体11の外面が平面になっていてもよい。
【0052】
台座14が下側プレート体11とは別体から構成されている場合、台座14は下側プレート体11と同一材料から構成されていてもよいが、別材料から構成してもよい。別材料から構成する場合も、台座14は、収納する基板を汚染しない素材であればよく、収納する基板によって適宜選択すればよい。
【0053】
台座14の上面形状は、例えば図3の(a)に示すように円形とすることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、後述するように、粘着シートを介して基板を支持固定することができれば良く、例えば、楕円であっても矩形であってもよく、リング状(環状)であってもよい。
【0054】
台座14の上面(円形)の直径は、収納する基板の直径の2分の1〜5分の1とすることができるが、これに限定されるものではなく、基板より小さく、基板をのせたときに基板を水平に保つことができればよい。
【0055】
台座14の上面図を、図4に示す。図4に示すように、台座14の上面には、粘着シート18が貼り付けられている。粘着シート18は、台座14の上面の全面に配設されているのではなく、散在するように構成されている。例えば、5mm角の粘着シート18を4枚、図4に示すように、台座14の上面貼り付けることができる。これにより、台座14の全面に粘着シート18が設けられている場合と比較して、台座14から基板(不図示)を容易に取り外すことができる。しかし、粘着シート18の大きさ、散在数、および散在位置については、これに限定されるものではなく、粘着シート18を構成する粘着材の粘着強度などによって適宜設定することができる。
【0056】
粘着シート18としては、基材と、当該基材における基板に接触する側の面に設けられた基板側粘着材と、当該基材における台座14に接触する側の面に設けられた台座側粘着材とによって構成されている。ここで、基板側粘着材は台座側粘着材に比べて弱い粘着力を示す粘着材から構成されている。これにより、基板を取り外す際に粘着シート18が基板に粘着して台座14から剥がれたり、基板側粘着材が基板に移行したりすることを防ぐことができる。
【0057】
下側周縁部11aは、図3の(a)に示すように、円形を有する下側プレート体11の外周において、台座14と同じく、対向配置させる上側プレート体12に向けて突出した構造を有している。すなわち、下側周縁部11aを上面からみると、図3の(a)に示すように、リング状に設けられている。
【0058】
下側周縁部11aは、下側プレート体11と上側プレート体12とを対向配置させた際に、上側プレート体12に設けられた上側周縁部12aと対向するように構成されており、各々の対向面は接合できる構造となっている。下側周縁部11aの当該対向面は、後述する凹溝15を除いて平面であってもよいが、図2に示すように、上側プレート体12の上側周縁部12aとの接合を容易にするべく、ガイドとなるような構造を有していてもよい。例えば、図3の(b)では、下側周縁部11aにおける台座14に近い側の端部がガイド構造17となっている。このガイド構造17は、上側プレート体12との対向配置時に、上側周縁部12aの台座14に近い側の端部よりも台座14側に位置し、対向配置を容易におこなうことができるように構成されており、基板収納容器50の操作性を簡便なものとしている。
【0059】
下側周縁部11aが下側プレート体11とは別体から構成されている場合、下側周縁部11aは下側プレート体11と同一材料から構成されていてもよいが、別材料から構成してもよい。別材料から構成する場合、下側周縁部11aとして用いられる材料は、収納する基板を汚染しない素材であればよく、収納する基板によって適宜選択すればよい。
【0060】
下側周縁部11aにおける、台座14に近い側の端部とは反対側の端部は、後述するクランプ2の構造に併せた構造となっている。
【0061】
また、下側周縁部11aにおける上側周縁部12aとの対向面には、凹溝15が形成されている。この凹溝15は、図3の(a)に示すように、下側周縁部11aに沿ってリング状に設けられており、内部にはOリング16(弾性体)が挿入されている。このように凹溝15を設けることによって、Oリング16が所定位置から外れることを防ぐことができるため、操作性を更に容易にすることができる。
【0062】
Oリング16は、下側プレート体11と上側プレート体12とを対向配置させた際に、中空部13を密閉するために設けられている。Oリング16としては、耐薬品性、耐熱性、シール性に優れたものと用いることが好ましく、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどを用いることができる。
【0063】
本発明の特徴的構成は、台座14が、下側周縁部11aよりも、対向配置させた上側プレート体12に向けて突出している点にある。換言すれば、台座14の上記上面が、下側周縁部11aの上記上面よりも、対向配置させた上側プレート体12の側に近い位置にある。図3の(b)は、この点を明示している。図3の(b)に示すように、台座14の上記上面は、下側周縁部11aの端部17の上端よりも、図中にCで示した高さほど、上側プレート体12の側に位置している。高さCとしては、収納した基板を取り出す際に取り出し用の治具を挿入することができる程度であればよい。
【0064】
このように、台座14が下側周縁部11aよりも、対向配置させた上側プレート体12に向けて突出している構成とすることにより、基板を台座14に支持固定した際に、基板のエッジ部分40aが上側プレート体12の上側周縁部12aに対向する位置となる。この状態を図5に示す。図5は、図2に示した断面構造において、基板40を台座14に支持固定した状態を示す。
【0065】
ここで「基板のエッジ部分」とは、基板の外周部端面と、それに隣接する基板表面および裏面の外周部分に相当し、ウエハではウエハエッジおよびウエハベベルをさす。
【0066】
基板40と下側周縁部11aとを、図5に示す位置関係で実現することによって、基板40のエッジ部分と下側周縁部11aとの間に、治具を挿入するスペースが充分に確保される。そのため、図6に示すような、治具30を、基板40のエッジ部分と下側周縁部11aとの間から挿入することができる。これにより、治具30を用いて、基板40の台座14側の面に吸着するなどして、基板40を台座14から容易に取り外すことができ、取り外しの際に、下側周縁部11aが基板40のエッジ部分に接触したり、治具30が基板40のエッジ部分に接触したりする虞がなく、基板40のエッジ部分を汚染する虞がない。
【0067】
(上側プレート体)
図7の(a)は上側プレート体12の上面図であり、図7の(b)は(a)に示す切断線A−A´において上側プレート体12を切断した状態を示した矢視断面図である。図7の(b)において紙面下側が下側プレート体11との対向側に相当し、紙面上側が基板収納容器50の外面の一部に相当する。
【0068】
上側プレート体12は下側プレート体11と同径を有している。上側プレート体12における下側プレート体11との対向側の外周部分には、上側周縁部12aは設けられているが、下側プレート体11にあるような台座14はなく、図5に示すように、下側プレート体11の台座14に支持固定された基板40を覆う空間が設けられていればよい。
【0069】
また、上側プレート体12における上面(下側プレート体11との対向側とは反対側の面)には、図7の(a)および(b)に示すようにリング状の突起部12bが設けられていてもよい。このリング状の突起部12bは、下側プレート体11の台座14の裏側に凹部分に挿入できる径のリングであり、収納容器を複数個重ね合わせたときの位置合わせ部として機能する。
【0070】
なお、本実施形態では、上側周縁部12aには下側周縁部11aに設けられている凹溝15はないが、本発明はこれに限定されるものではなく、凹溝が上側周縁部12aにもあってもよく、下側周縁部11aの代わりに上側周縁部12aのみに凹溝が設けられていてもよい。
【0071】
上側プレート体12としては、下側プレート体11と同一材料から構成されていてもよいが、別材料から構成してもよい。
【0072】
(上側プレート体の別例)
ここで、上側プレート体12の変形例を説明する。
【0073】
図8は、上側プレート体の変形形態を示した断面図である。図8に示す上側プレート体12´は、その下側プレート体11との対向側に、台座14に支持固定した基板40の表面に接触して、基板40を台座14に向けて押さえる押さえ治具19が設けられている点で、上述した上側プレート体12とは異なっている。
【0074】
この変形例は、基板40の表面が汚染されることを問わない場合、すなわち基板40のうち、汚染を回避しなければならない箇所がエッジ部分のみの場合、に適用することができる。
【0075】
押さえ治具19は、図8に示すように、弾性体から構成される複数の羽部19aを有しており、この羽部19aの一端である自由端が、基板40の表面に接触する構造となっている。
【0076】
押さえ治具19は、上側プレート体の中央、すなわち、台座14の上面に対向する位置に設けられていれば、効果的に基板40を押さえることができるので好ましい。なお、図8では、中央に1つの押さえ治具19が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば台座14の対向領域に複数個設けられてもよい。
【0077】
押さえ治具19を構成する材料としては、耐摩耗性、耐薬品性などが優れており、且つ、基板を汚染しない素材のものを用いる。
【0078】
(クランプ)
クランプ2は、対向配置させた下側プレート体11と上側プレート体12とを固定するために設けられている。
【0079】
図9の(a)および図9の(b)は、クランプ2の上面図であり、図9の(c)は、図9の(a)に示す切断線A−A´においてクランプ2を切断した状態を示した矢視断面図である。
【0080】
図9の(a)および図9の(b)に示すように、クランプ2は開裂可能な環状の固定具である。図9の(a)は開裂した状態のクランプ2であり、中央にヒンジ2aを設けることによって、クランプ2が開閉自在になっている。図9の(b)は環状のクランプ2を示しており、端部同士を固定するための固定部2bが設けられている。
【0081】
図9の(c)に示す断面図には、説明の便宜上、下側プレート体11の下側周縁部11aおよび上側プレート体12の上側周縁部12aとを破線で示している。クランプ2における下側周縁部11aおよび上側周縁部12aとの接続部分は、図9の(c)に示すように、下側周縁部11aおよび上側周縁部12aの端部構造に合致する構造とすればよい。図9の(c)では、クランプ2の上記接続部分には、下側周縁部11aおよび上側周縁部12aの端部構造に合致する凹溝が設けられている。
【0082】
クランプ2を、対向配置させた下側プレート体11および上側プレート体12に固定するためには、図9の(a)に示すようにクランプ2を開裂させた状態で、対向配置させた下側プレート体11および上側プレート体12の外周部に配置し、クランプ2の上記凹溝に、下側周縁部11aおよび上側周縁部12aの端部構造を挿入しながら、クランプ2を環状に変形させ、最後に固定部2bで固定すればよい。
【0083】
[基板収納容器の構成による作用効果]
以上のような基板収納容器の構成によれば、下側プレート体11に台座14を設けることにより、基板40と下側周縁部11aとを、図5に示す位置関係で実現することによって、基板40のエッジ部分と下側周縁部11aとの間に、比較的広い隙間を形成することができる。これにより、この隙間に図6に示すような治具を挿入し、基板40の台座14側の面に治具を接触させたり、吸着させたりするなどして、基板40を台座14から容易に取り外すことができる。この取り外しの際に、台座14によって基板40のエッジ部分が下側周縁部11aから離された位置に支持されるので、下側周縁部11aが基板40のエッジ部分に接触したり、治具30が基板40のエッジ部分に接触したりする虞がなく、基板40のエッジ部分を汚染する虞がない。
【0084】
また、上記の構成によれば、下側プレート体11にも上側プレート体12にも従来構成にあるような剥離用穴や給排孔を設ける必要がない。すなわち、対向配置された下側プレート体11と上側プレート体12とによって密閉された中空部分を形成することができるので、基板収納容器50ごと基板40を外部に持ち出す場合であっても、基板40が外気に触れることはなく、基板40が汚染される虞がない。
【0085】
また、クランプ2を設けることによって、下側プレート体11と上側プレート体12とを対向配置させた際に、その対向構造を確実に維持することができ、信頼性のある基板収納容器50を提供することができる。
【0086】
[基板収納容器の別例]
上述した実施形態では、下側プレート体11に、対向させた上側プレート体12に向けて突出した下側周縁部11aが設けられた構成を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図10に示す下側プレート体11´と上側プレート体12´との組み合わせであってもよい。図10に示す形態では、下側プレート体11´は、台座14以外は、面一となっており、下側周縁部11a´は突出していない。一方、上側プレート体12´の上側周縁部12a´は、上述した実施形態の上側周縁部12aに比べて対向させた下側プレート体11に向けてより大きく突出した構造となっている。上側周縁部12a´の突出量は、上述した実施形態の下側周縁部11aの突出量と上側周縁部12aの突出量とを合わせた長さがある。
【0087】
図10の基板収納容器であっても、従来構成の課題を解決することができ、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0088】
以下に、上述した基板収納容器50を複数個収納することが可能な搬送用の搬送容器について説明する。
【0089】
[搬送容器]
図11(a)および図11(b)は、基板収納容器50を複数個収納することが可能な搬送用の搬送容器を示した図であり、図11(a)は搬送容器の蓋が開封された状態の図であり、図11(b)は搬送容器の蓋が閉じられている状態の図である。
【0090】
搬送容器20は、開口している本体20aと、その開口部分を覆う蓋20bとを有している。
【0091】
図11(a)に示すように、搬送容器20の本体20aには、基板収納容器50を収納するスペースである窪み21aが設けられた梱包部21が設けられている。図11(a)では窪み21aが1つだけ示されており基板収納容器50を1つだけ収納することしかできないようにみえるが、本実施形態の搬送容器20では、1つの窪み21aに1つの基板収納容器50(図1)を収納したものが搬送容器20の本体20a内で複数積み重なっている。
【0092】
窪み21aは、基板収納容器50の外形と略合致しており、窪み21aに収納した基板収納容器50が搬送中に振動することを防いでいる。
【0093】
梱包部21としては、振動吸収性などが優れているものが好ましい。
【0094】
搬送容器20の蓋20bは、図11(b)に示すように本体20aの開口部分を覆うことができる。また、蓋20bが不都合に開かないように、搬送容器20には、ベルト22が本体20aと蓋20bとに渡って設けられている。
【0095】
また、搬送容器20の本体20aの側面には、図11(b)に示すように袋取手部23を設けることができる。これにより、人が搬送容器20を持ち上げたりする際に、その作業がおこない易い。
【0096】
最後に、基板収納容器50(図1)に収納される基板のエッジ部分の汚染評価方法の一例について説明する。
【0097】
[汚染評価機構]
汚染評価機構の一形態について図12から図14に基づいて説明する。図12は、本実施形態における汚染物回収機構の構成を示した図である。
【0098】
本実施形態の汚染物回収装置60は、図1に示すように、ウエハ回転体61と、回収治具70とを備えており、基板40のエッジ部分に付着または含有した汚染物を、回収用の液体を、基板40のエッジ部分のみに接触させることによって回収することができる。
【0099】
ウエハ回転体61は、基板40の表面が水平になるように基板40の下面(基板収納容器50の台座14と接触する面)を下方から保持し、垂直方向の回転中心軸を中心として、基板40の表面を水平に維持した状態で回転させることができる。
【0100】
回収治具70は、基板40のエッジ部分に付着または含有した汚染物を捕集することができる液体を、内部に貯留させることができるように構成されている。
【0101】
ここで、汚染物とは、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、マンガン、亜鉛などの金属元素が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体に捕集されるのことが可能な物質であれば適用することができる。
【0102】
回収治具70は、このような液体を、基板40のエッジ部分に接触させるのとと同時に回収することができるように構成されている。
【0103】
以下に、図13を用いて、回収治具70の具体的な構成について説明する。図13は、図12に示す切断線A−A´において回収治具70を切断した状態を示した矢視断面図である。
【0104】
回収治具70は、図13に示すように、回収本体71と、制御手段72とから構成されている。
【0105】
回収本体71は、内径が互いに異なる円筒構造であって、互いに連通した本体下部71aと本体上部71bとから構成されている。
【0106】
本体下部71aと本体上部71bとは、各々の軸心が、水平に対して垂直である軸Xに沿って並んだ構成となっている。本体下部71aと本体上部71bとの境界部分には、その外形が、当該軸心から放射状に突出しているフランジ部73が形成されている。
【0107】
本体下部71a、本体上部71b、および、フランジ部73の材質は、耐薬品性を考慮するとともに、後述する液体を貯留可能な貯留部を制御手段によって密閉する際の密閉性を確保することを考慮すればよく、また、汚染物の分析処理において分析に影響を与えない材料であれば、特に限定されるものではない。また、製造方法も特に限定されるものではないが、例えば、射出成型によって一体成型することができほか、押し出し成型や圧縮成型等を用いることもできる。
【0108】
本体下部71aには、上記液体を貯留可能な貯留部74と、貯留部74に貯留されている液体の一部を外部に露出させるための、貯留部74と外部とを連通する貫通部75とが設けられている。
【0109】
貯留部74は、円筒構造の中空部に相当し、液体を、本体下部71aの下端から、フランジ部73の高さの水位まで貯留することができる。特に限定されるものではないが、500μL程度の容積とすることができる。
【0110】
上記貫通部75は、上記円筒構造の曲面部に形成されており、図13に示すように、貯留部74と外部とを水平方向に連通しており、後述するように基板40のエッジ部分を挿入させることができる。貫通部75の大きさは、貯留部74に貯留した液体が漏れ出ない程度の大きさを有している。貫通部75の形成位置としては、特に限定されないが、本体下部71aの高さの中間位置に配置することができる。
【0111】
上記本体上部71bは、図13に示すように、軸Xに沿って、本体下部71aの上方に設けられており、本体上部71bの上端は、後述する制御手段72を挿入することができるように開口している。また、上記円筒構造の中空部に相当する空間の内径は、上記貯留部74の内径よりも大きく構成されており、且つ、内壁の曲面部分の少なくとも一部分には、図13に示すようにネジ山76が形成されている。また、一例はネジ式であるが、注射器状のピストン式でも同様の効果を得ることができる。
【0112】
制御手段72は、上記本体上部71bの内壁に形成されたネジ山76に螺合するネジ山77を外面に有しており、螺合することによって、本体上部71bの所定の位置に螺着することができる。また、制御手段72は、軸心が、本体上部71bの軸心と一致しており、外面にネジ山77を有し、且つ軸心部分が雌ネジ78となっている枠部72aと、当該雌ネジ78のネジ山に螺合するネジ山を有した雄ネジ構造を有した芯部72bとを有している。
【0113】
上記枠部72aは、その底面79の外径は、貯留部74の径よりも大きく構成されている。そのため、芯部72bを枠部72aの雌ネジ78に螺着させた状態で、ネジ山77とネジ山76とを螺合させて底面79を本体上部71bの内側の底面80に接触させることにより、貯留部74は、貫通部75を除いて閉鎖空間となる。すなわち、ここに、貫通部75を覆う高さまで貯留部74に液体が貯留されていれば、貯留部74の液体の液面と、底面79との間に形成された密閉状態となる。
【0114】
上記芯部72bは、雌ネジ78と完全に螺着した状態で、底面が、枠部72aの底面79と面一になるように構成されているが、雌ネジ78との螺合の程度を変化させることによって、底面を、底面79よりも上昇させることができる。芯部72bと雌ネジ78との螺合の調節は、芯部72bを軸心を回転軸として回転させることによって行なうことができ、回転は、図示しない機器が行なってもよく、手動で行なってもよい。
【0115】
枠部72a及び芯部72bの材質は、耐薬品性を考慮するとともに、後述するように貯留部74を密閉した際に密閉性を確保することを考慮すればよく、また、汚染物の分析処理において分析に影響を与えない材料であれば、特に制限されるものではない。
【0116】
本実施形態の汚染物回収装置60(図12)は、このような構成を具備した制御手段72を回収治具70に設けたことにより、貫通部75に露出した液体を、基板40のエッジ部分のみに接触させることができる。以下、図14の(a)〜(c)を用いて、制御手段72の作用を詳述する。なお、図14の(a)〜(c)は、何れも、図13に示した回収治具70の断面に相当する。
【0117】
図14の(a)は、基板40に液体を接触させる接触工程の前の工程を示している。図14の(a)の状態は、本体上部71bの開口端に制御手段72が挿入されて、本体上部71bのネジ山76と、制御手段72のネジ山77との螺合が開始された状態である。ここでの制御手段72は、芯部72bが枠部72aの雌ネジ78と完全に螺着している。
【0118】
なお、この図14の(a)の段階で、貯留部74には、既に液体が貯留されている。貯留させる液体は、基板40のエッジ部分に付着している汚染物、またはエッジ部分を構成している膜の内部に含まれている汚染物を回収できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、希王水溶液、フッ化水素酸溶液を挙げることができる。特に注目すべきは、回収治具70が、膜(エッジ部分を構成している膜)に対して溶解性のある薬液を用いることができる点にある。具体的には、回収治具70であれば、SiO膜に対してはフッ過水素酸、Cu膜に対しては硝酸や王水を、回収液として用いることができる。
【0119】
また、本体上部71bと制御手段72とを螺合させる前に、各部材を適切な方法で洗浄しておく。これにより、各部材からの対象の汚染物の溶出を抑えることができる。特に、評価対象成分が金属元素であれば適切な酸及び超純水などで洗浄する。
【0120】
ここで、図14の(a)では、一見すると、制御手段72が螺合を開始して回収本体71の中空部の容積が徐々に減少していくのに伴って、貯留部74の液体の液面と、制御手段72の底面(底面79、及び芯部72bの底面)との間に形成された空間の圧力が圧縮されることによって、当該液面を押し下げて、貫通部75から液体が流出する虞が懸念されるところである。しかしながら、この制御手段72には、図14の(a)に示すように、枠部72aに通気孔81が設けられている。そのため、制御手段72の螺合によって上記空間の容積が徐々に減少しても、中空部の空気は通気孔81を通じて外部に排出されるため、述したような流出の虞はない。
【0121】
ここで、図14の(a)に示す状態では、貫通部75にて外部に露出している液体は、露出部分の表面張力と、貫通部75から流出しようとする圧力とがつり合った状態となっているだけで、その他の圧力は何ら受けていない。従って、仮に、この状態のもとで基板40を貫通部75に挿入して、貫通部75の液体を基板40のエッジ部分のみに接触させようとしても、基板40の表面の比較的高い濡れ性の影響によって、貫通部75の液体に対してかかる‘貫通部75から流出しようとする圧力’が高くなるので、液体が半導体ウエハの表面に流れてしまい、基板40のエッジ部分のみに接触させることはできない。そこで、図14の(b)は、図14の(a)の状態から、本体上部71bのネジ山76と、制御手段72のネジ山77との螺合を更に進めて、制御手段72の底面を本体上部71bの内側の底面80に接触させて螺着を完了させている。
【0122】
図14の(b)の工程では、枠部72aの通気孔81は、底面80によって封止されており、よって、液面から底面79までの空間が完全な密閉状態となっている。
【0123】
このように液面から底面79までの空間が完全な密閉状態となっていると、貫通部75に露出している液体に対して、貯留部74の液体からかかる圧力が、図14の(a)の段階のそれと比較して、小さくなっている。そのため、図14の(b)の段階で基板40を貫通部75に挿入した場合、基板40への液体の接触範囲を基板40のエッジ部分に限定するように制御することができる場合がある。しかしながら、例えば基板40表面に厚さ100nmのSiOの膜が形成され、当該膜の基板40のエッジ部分の汚染物をフッ化水素酸溶液などを用いて接触溶解させる場合には、SiOによってフッ化水素酸溶液がウエハの表裏面に引き出される虞が高い。従って、このような場合は、図14の(b)の段階であっても基板40への液体の接触範囲を正確に制御することは困難である。そこで、本実施形態では、図14の(b)の段階に続けて、図14の(c)に示すように、芯部72bを、枠部72aの雌ネジ78との螺合を解除させる方向に回転させて、芯部72bの底部を引き上げることができる。
【0124】
この図14の(c)の工程によって、上述した密閉された空間が減圧され、これに伴って、貯留部74の液体の液面が制御手段72の底面のほうへ引き上げられて、図14の(b)の段階で貫通部75に露出した液体の露出液面が、貯留部74側に引き込まれる。
【0125】
この図14の(c)の状態とすることで、図14の(b)の状態と比較して、貫通部75に露出している液体が貯留部74側に強く引き込まれている。そのため、上述したようなSiOの膜が形成された基板40を貫通部75に挿入した場合であっても、貫通部75に露出している液体をSiOの膜の表面に引き出そうとする力に比べて、制御手段72による、貫通部75に露出している液体を貯留部74側に留めようとする力のほうが上回っている状態を実現することができる。
【0126】
この図14の(c)の状態を実現した後、または実現している間に、基板40を貫通部75に挿入すると、基板40の表面状態に影響を受けることなく、基板40のエッジ部分のみに液体を接触させることができる。このように貫通部75に露出している液体を基板40に接触させている間、制御手段72の枠部72a及び芯部72bの位置を変化させる必要はない。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、基板40と液体とが接触している最中に、制御手段72の枠部72aを回転させて、貫通部75への液体の露出状態を制御してもよい。
【0127】
図14の(c)の状態で実現することができる基板40のエッジ部分への液体の接触範囲は、液体の種類や、貫通部75の大きさ、基板40の表面の性質にもよるが、後述する実施例に示すように、基板40のエッジ部分の端部から、基板40の中心に向けて、例えば長さ300μmで示される範囲を実現することができる。
【0128】
このように、本実施形態の汚染物回収機構によれば、制御手段72が回収治具70に設けられたことによって、貫通部75にて基板40と貫通部75に露出した液体とが接触したときの、基板40への液体の接触範囲を限定することができる。また、接触させた液体を効率良く回収することができる。このような回収治具70を具備することによって、汚染物回収機構は、基板40のエッジ部分のみから汚染物の有無などを分析することができる。
【0129】
回収治具70によって回収された液体は、貯留部74から取り出され、適切な測定装置を用いて汚染物を定量することにより、汚染状況の評価、判定をすればよい。定量操作は、評価対象成分毎に異なるが、特に評価対象成分が金属元素であれば、一般的には誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、黒鉛炉原子吸光分析装置などにより測定する方法が用いられる。イオン成分、有機酸等についても、適切な溶解液(例えば超純水)の選択、イオンクロマトグラフ法などによって測定することができる。
【0130】
以下、実施例に基づいて、本発明に係る基板収納容器の効果について説明する。
【実施例】
【0131】
(本発明の基板収納容器)
図15に、本実施例で用いた基板収納容器の断面とその寸法を示す。上側プレート体12および下側プレート体11は、ポリプロピレンによって構成されており、台座14は下側プレート体11と一体的に構成されている。クランプは、ポリアセタール製のものを用いた。
【0132】
この基板収納容器内に、300mm径のシリコンウエハを基板として収納し、ウエハのエッジ部分が容器および容器中の気体によって金属元素に汚染されるか否かを評価した。ここで、収納前に、容器内の汚染を洗浄するために、台座14上に粘着シート18を配設する前の基板収納容器を希塩酸溶液中に1晩浸漬した後、超純水で洗浄し、クリーンルーム内で乾燥させた。粘着シート18は、洗浄後にクリーンルーム内で台座14上に配設した。
【0133】
基板は、この基板収納容器に収納した状態で、1週間、陸送輸送および空輸を複数回繰り返した。
【0134】
1週間経過後、真空ピンセットを取り外し用の治具30(図6)を用いて、クリーンルーム内で、基板収納容器に収納した基板を取り外し、汚染の評価をおこなった。汚染の評価にあたっては、上述した汚染評価機構に基づいて評価をおこなった。
【0135】
(評価結果)
実施例の基板収納容器に収納した基板の汚染評価結果は、基板のエッジ部分の金属元素汚染が不検出(0.02ng以下)であった。
【0136】
これにより、実施例の基板収納容器は、非接触、且つ、汚染に曝すことなく、基板を収納することができることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明は、半導体ウエハといった基板の収納容器として利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 一対のプレート体
2 クランプ
2a ヒンジ
2b 固定部
11、11´ 下側プレート体
11a、11a´ 下側周縁部
12、12´ 上側プレート体
12a、12a´ 上側周縁部
12b リング状の突起部
13 中空部
14 台座
15 凹溝
16 Oリング
17 端部(ガイド構造)
18 粘着シート
19 治具
19a 羽部
20 搬送容器
20a 本体
21 梱包部
22 ベルト
23 袋取手部
30 治具
40 基板
40a エッジ部分
50 基板収納容器
60 汚染物回収装置
61 ウエハ回転体
70 回収治具
71 回収本体
71a 本体下部
71b 本体上部
72 制御手段
72a 枠部
72b 芯部
73 フランジ部
74 貯留部
75 貫通部
76 ネジ山
77 ネジ山
78 雌ネジ
79 底面
80 底面
81 通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁に位置する周縁部同士を対向配置することによって、基板を収納するための中空体を形成することができる一対のプレート体と、
対向配置させたプレート体同士を互いに固定するクランプとを備えており、
一方の上記プレート体における他方の上記プレート体と対向する側の面には、上記基板の片面における外周部分よりも内側において貼着して当該基板を支持固定する台座であって、当該一方のプレート体の上記周縁部よりも、対向配置させた他方の上記プレート体に向けて突出している台座を有していることを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
上記周縁部は、対向配置させた上記他方のプレート体に向けて突出していることを特徴とする請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
上記周縁部同士の対向部分には、上記中空体を密閉するための弾性体が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
上記一方のプレート体の上記周縁部は、上記台座を中心として円形に構成されており、
上記他方のプレート体の上記周縁部は、上記一方のプレート体の上記周縁部と合致する形状を有しており、
上記弾性体は、上記円形の周縁部の上に配置されるOリングであることを特徴とする請求項3に記載の基板収納容器。
【請求項5】
上記円形の周縁部の上には、上記Oリングに沿って、凹溝が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の基板収納容器。
【請求項6】
上記台座は、上記一方のプレートの中央に配置されていることを特徴とする請求項1から5までの何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
上記台座における当該基板との対向面の一部分が基板に対して貼着性を有するように、上記基板の片面を貼着する粘着シートが、当該対向面に散在していることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項8】
上記粘着シートは、上記基板の側の面が、上記台座の側の面に比べて弱い粘着力を示すシートであることを特徴とする請求項7に記載の基板収納容器。
【請求項9】
上記クランプは、対向配置させた上記一対のプレート体の外周部分を挟持することによって、プレート体同士を互いに固定するように構成されていることを特徴とする請求項1から8までの何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項10】
上記他方のプレート体における上記一方のプレート体と対向する側の面には、対向配置させた上記一方のプレートの上記台座に貼着された上記基板を当該台座に向けて押しつける押さえ治具が設けられていることを特徴とする請求項1から9までの何れか1項に記載の基板収納容器。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか1項に記載の基板収納容器を複数個収納することができる搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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