説明

基板折り曲げ装置及び電気光学装置の製造方法

【課題】基板折り曲げ装置において、可撓性を有する基板の折り曲げ部分に対して確実に折癖を付与する。
【解決手段】基板折り曲げ装置は、基板折り曲げ部、受台及び移動機構を備える。基板折り曲げ部の先端部(係合部)は、V字状又は湾曲状の断面形状を有する。受台は、基板折り曲げ部の先端部と係合する溝を有し、金属より強度の小さい素材にて形成されている。移動機構は、基板折り曲げ部と受台とを相対的に移動させて、基板折り曲げ部の先端部と受台の溝とを係合させる。基板折り曲げ部の少なくとも先端部の表面は、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成されている。これにより、基板折り曲げ部の少なくとも先端部の耐久性を向上させることができる。よって、基板の折り曲げ回数が増加したとしても、その先端部は磨耗し難くなる。よって、基板折り曲げ装置の使用回数の増加に依ることなく、基板に折癖を確実に付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置に好適に用いられる基板の折り曲げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話機、携帯情報端末機、コンピュータディスプレイなどの電子機器において、液晶装置に代表される電気光学装置が表示装置として好適に用いられている。
【0003】
このような液晶装置として、例えば、一対の基板間に液晶を挟持する液晶表示パネルと、液晶表示パネルを照明する照明装置と、液晶表示パネル及び照明装置を収容する箱状のフレームと、を備えるものが知られている。かかる液晶装置では、一対の基板のうち一方の基板に液晶を駆動するためのドライバIC(Integrated Circuit)が実装されている。そして、ドライバICは、基板の一例としてのFPC(Flexible Printed Circuit)を介して電子機器に電気的に接続されている。また、液晶表示パネル及びFPCは、当該FPCがドライバIC側から照明装置側に折り返された状態でフレームに収容されている。
【0004】
なお、特許文献1には、シールドケースを用いることなく、FPCの折り曲げによって電磁シールド構造を実現することが可能な高周波モジュールが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、FPCなどのフラットケーブルを簡易に折り曲げることが可能なフラットケーブル折り曲げ治具が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−100302号公報
【特許文献2】特開2004−15966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、可撓性を有する基板の折り曲げ部分に対して確実に折り曲げの癖(折癖)を付与することが可能な基板折り曲げ装置及びその基板折り曲げ装置を用いた電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの観点では、第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、前記第2の部材に設けた溝と、前記第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げる基板折り曲げ装置において、前記係合部、および前記溝の少なくとも一方の表面が樹脂より強度の大きい素材にて形成されている。
【0009】
上記の基板折り曲げ装置は、第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、第2の部材に設けた溝と、第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げることができる。好適な例では、前記係合部及び前記溝は、断面湾曲形状又は断面V字形状を有することが好ましい。
【0010】
特に、この基板折り曲げ装置において、係合部、および溝の少なくとも一方の表面が樹脂より強度の大きい素材にて形成されている。好適な例では、前記素材は、金属又は樹脂と前記樹脂の表面を覆う金属とを含む素材であることが好ましい。
【0011】
これにより、係合部、および溝の少なくとも一方の耐久性を向上させることができる。これにより、基板の折り曲げ回数が増えたとしても、当該少なくとも一方は磨耗し難くなる。よって、基板折り曲げ装置の使用回数の増加に依存することなく、基板に対して確実に折り曲げの癖(折癖)を付与することができる。ここで、基板に折癖を付与することの利点としては、基板を折り曲げた状態で接着要素を介して基材に取り付けた場合に、その基板を基材から剥離し難くできるといった利点が挙げられる。
【0012】
本発明の他の観点では、第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、前記第2の部材に設けた溝と、前記第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げる基板折り曲げ装置において、前記係合部、および前記溝の表面は各々異なる素材により形成されており、少なくとも一方の表面が金属を含む素材を含み、他方の表面が樹脂を含んでなる。
【0013】
上記の基板折り曲げ装置は、第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、第2の部材に設けた溝と、第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げることができる。好適な例では、前記係合部及び前記溝は、断面湾曲形状又は断面V字形状を有することが好ましい。
【0014】
特に、この基板折り曲げ装置において、係合部、および溝の表面は各々異なる素材により形成されており、少なくとも一方の表面が金属を含む素材を含み、他方の表面が樹脂を含んでなる。
【0015】
これにより、係合部、および溝の少なくとも一方の耐久性を向上させることができる。これにより、基板の折り曲げ回数が増えたとしても、当該少なくとも一方は磨耗し難くなる。よって、基板折り曲げ装置の使用回数の増加に依存することなく、基板に対して確実に折り曲げの癖(折癖)を付与することができる。ここで、基板に折癖を付与することの利点としては、基板を折り曲げた状態で接着要素を介して基材に取り付けた場合に、その基板を基材から剥離し難くできるといった利点が挙げられる。
【0016】
上記の基板折り曲げ装置の一つの態様では、前記第2の部材は、前記溝に対して前記基板の移動を規制する移動規制部を備える。これによれば、第2の部材の溝に対して基板の移動を規制することができるので、基板の折り曲げ部分に対して正確に折癖を付与することが可能となる。
【0017】
上記の基板折り曲げ装置の他の態様では、前記第1の部材と前記第2の部材とを相対的に移動させて、前記係合部を前記溝に係合させる移動機構を更に備える。これによれば、移動機構を通じて、第1の部材と第2の部材とを相対的に移動させて、係合部を溝に係合させることが可能となる。
【0018】
本発明の更に他の観点では、第1の部材の係合部と、第2の部材の溝とを係合させて可撓性を有する基板を折り曲げる電気光学装置の製造方法は、前記係合部および前記溝のうち少なくともいずれか一方の表面が金属を含む素材により形成されてなり、電気光学パネルに可撓性を有する基板を接続する工程と、前記係合部と前記溝との間に、前記可撓性を有する基板を配置する工程と、前記可撓性を有する基板を挟んで前記係合部と前記溝とを係合させて前記可撓性を有する基板を折り曲げる工程と、を具備する。
【0019】
上記の電気光学装置の製造方法では、第1の部材の係合部と、第2の部材の溝とを係合させて可撓性を有する基板を折り曲げる。具体的に、この電気光学装置の製造方法では、係合部および溝のうち少なくともいずれか一方の表面が金属を含む素材により形成されてなり、電気光学パネルに可撓性を有する基板を接続する。続いて、係合部と溝との間に、可撓性を有する基板を配置する。続いて、可撓性を有する基板を挟んで係合部と溝とを係合させて可撓性を有する基板を折り曲げる。こうして、基板の折り曲げ部分に対して確実に折癖を付与された電気光学装置が製造される。
【0020】
これによれば、例えば、基板を折り曲げた状態で接着要素を介して照明装置の構成要素である導光板に取り付けた場合に、基板の弾性力(導光板に接合されている接着要素に対して剥離する方向に作用する力)を低減することができる。その結果、基板が接着要素の接着力に抗して導光板から剥がれることを防止できる。また、光源が実装された基板を折り曲げることによって光源が導光板の端面に配置される構成の場合、上記のように基板が導光板から剥がれなくなることにより、光源を導光板の規定の位置に配置することができる。そのため、光源と導光板との位置ずれに起因して生じる照明装置の輝度低下を防止することができ、電気光学装置の光学特性に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0021】
好適な例では、電気光学装置の製造方法は、第1の部材と、前記第1の部材の先端部に係合する溝を有する第2の部材とを備え、前記第1の部材の少なくとも前記先端部及び前記第2の部材の少なくとも前記溝に対応する部分のうち少なくとも一方の表面が樹脂より強度の大きい素材にて形成され、且つ前記先端部と前記溝との係合により前記基板を折り曲げる基板折り曲げ装置と、可撓性を有する基板が実装された電気光学装置とをそれぞれ準備する準備工程と、前記基板の折り曲げるべき部分を前記第1の部材の前記先端部と前記第2の部材の前記溝とにより挟み込むことが可能な位置に配置する基板配置工程と、前記第1の部材と前記第2の部材とを相対的に移動させつつ、前記第1の部材の前記先端部を前記第2の部材の前記溝に係合させて、前記基板を挟み込んで折り曲げる基板折り曲げ工程と、を備える。
【0022】
上記の電気光学装置の製造方法によれば、準備工程と、基板配置工程と、基板折り曲げ工程とにより電気光学装置を製造することができる。
【0023】
まず、準備工程は、基板折り曲げ装置と、可撓性を有する基板が実装された電気光学装置をそれぞれ準備する。ここで、基板折り曲げ装置は、第1の部材と第1の部材の先端部に係合する溝を有する第2の部材とを備える。そして、第1の部材の少なくとも先端部及び第2の部材の少なくとも溝に対応する部分のうち少なくとも一方の表面が樹脂より強度の大きい素材にて形成され、且つ先端部と溝との係合により基板を折り曲げる。一方、電気光学装置は、一対の基板間に電気光学層を挟持して構成される。
【0024】
次に、基板配置工程は、基板の折り曲げるべき部分を第1の部材の先端部と第2の部材の溝とにより挟み込むことが可能な位置に配置する。次に、基板折り曲げ工程は、第1の部材と第2の部材とを相対的に移動させつつ、第1の部材の先端部を第2の部材の溝に係合させて基板を挟み込んで折り曲げる。これにより、基板の折り曲げるべき部分に対して確実に折癖が付与された電気光学装置が製造される。
【0025】
上記の電気光学装置の製造方法の一つの態様では、前記係合部、および前記溝のうち表面が前記金属を含む素材で形成された側を、加熱する工程を更に備えてなる。
【0026】
これによれば、係合部、および溝のうち表面が金属を含む素材で形成された側を加熱する。これにより、基板の折り曲げ部分が加熱され、その折り曲げ部分に対して折癖がより付与しやすくなる。なお、この工程における加熱手段としては、ヒータなどが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0028】
[基板折り曲げ装置の構成]
まず、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る基板折り曲げ装置の構成について説明する。
【0029】
図1(a)は、基板折り曲げ装置100の高さ方向に沿った概略断面図を示す。図1(b)は、基板折り曲げ装置100の構成要素である受台3を、図1(a)の矢印Y2方向からみた平面図を示す。図2は、図1(b)の切断線A−A’に対応する基板折り曲げ装置100の概略断面図を示す。なお、図2では、基板折り曲げ装置100を構成する必要最小限の要素のみ図示し、筐体7等の図示は省略している。
【0030】
基板折り曲げ装置100は、FPCなどの可撓性を有するシート状の基板に対して、折り曲げの癖(折癖)を付与する点に特徴を有する。具体的に、基板折り曲げ装置100は、基板折り曲げ部(第1の部材)1と、支持部2と、受台(第2の部材)3と、移動機構4と、筐体7と、を備える。
【0031】
基板折り曲げ部1は、例えば板状の形状を有する。係合部の一例としての基板折り曲げ部1の先端部1aは、V字状又は湾曲状の断面形状を有する。基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aの表面は、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成されている。好適な例では、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aの表面は、金属により形成され、或いは基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aは樹脂とその樹脂の表面を覆う金属とを含む素材にて形成されることが好ましい。ここで、金属としては、例えば、アルマイト処理を施したアルミニウムなどが挙げられる。基板折り曲げ部1の先端部1aとは逆側の端部は、後述する支持部2に取り付けられている。
【0032】
支持部2は、後述する一対のレール5に支持されていると共に、基板折り曲げ部1を支持している。受台3は、台座3aと、溝3bと、収容部3cと、一対の移動規制部3dと、を有する。台座3aは、板状の形状を有し、金属より強度の小さい素材、例えば樹脂により形成されている。溝3bは、基板折り曲げ部1の先端部1aと係合又は嵌合する形状(例えば、断面湾曲形状又は断面V字形状)を有し、台座3a上において基板折り曲げ部1の先端部1aと係合又は嵌合する位置に形成されている。収容部3cは、凹状の形状を有し、後述する液晶装置200を収容する。
【0033】
一対の移動規制部3dは、それぞれ、台座3aの面から突出する形状を有すると共にコの字状の平面形状を有する。一対の移動規制部3dは、それぞれ、台座3a上において溝3bの近傍位置に形成される。一対の移動規制部3dは、それぞれ、台座3aの収容部3cに液晶装置200を収容した場合に、液晶装置200の4隅のうち2隅を支持する。これにより、溝3bに対して、液晶装置200の基板16の移動を規制する役割を果たす。なお、一対の移動規制部3dは、液晶装置200のガラス基板と接触する場合もあり得るので、一対の移動規制部3dは、剛性の高い素材(例えば、金属など)により形成されていることが好ましい。
【0034】
移動機構4は、基板折り曲げ部1と受台3とを相対的に移動させて、基板折り曲げ部1の先端部1aを受台3の溝3bに係合及びそれらの係合を解除させる役割を有する。本例では、移動機構4は、受台3に対して、基板折り曲げ部1を係合させる方向Y2及び当該係合を解除する方向Y1に移動させる役割を有する。
【0035】
例えば、移動機構4は、一対のレール5と、一対の摺動部6と、を有して構成される。
【0036】
一対のレール5は、それぞれ、円柱状又は円筒状の形状を有する。一対のレール5は、相互に適宜の間隔を置いて配置され、且つ後述する筐体7の底面側から当該底面側とは逆側に向かって起立している。一対の摺動部6は、それぞれ、一対のレール5より若干大きな直径を有する環状部材であり、一対のレール5に嵌め込まれ且つ一対のレール5に沿って移動自在に取り付けられている。なお、一対の摺動部6は、図示しない駆動機構又は手動により、一対のレール5に沿って高さ方向Y1又は高さ方向Y1とは逆方向Y2に移動可能に構成されている。
【0037】
筐体7は、箱状の形状を有し、基板折り曲げ部1、支持部2、受台3及び移動機構4をそれぞれ収容している。
【0038】
以上の構成を有する基板折り曲げ装置100では、図示しない可撓性を有するシート状の基板を、基板折り曲げ部1の先端部1aと受台5の溝5bとにより挟まれる位置に載置して、移動機構4を通じて、基板折り曲げ部1の先端部1aを受台5の溝5bに係合させることで、当該基板を挟み込んで折り曲げる。
【0039】
ところで、基板折り曲げ部1の先端部1aが、例えば樹脂単体にて形成されている場合、その耐久性は低い。よって、基板の折り曲げ回数が増えると、その先端部1aが徐々に磨耗してゆき、基板が折れ曲がり難くなり、基板に対して折癖を付与することができなくなってしまう虞があるといった課題がある。ここで、基板に折癖を付与することの利点としては、基板を折り曲げた状態で接着要素を介して基材に取り付けた場合に、その基板を基材から剥離し難くできるといった利点が挙げられる。
【0040】
この点、本実施形態に係る基板折り曲げ装置100では、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aの表面が、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成されている。これにより、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aの耐久性を向上させることができる。これにより、基板の折り曲げ回数が増えたとしても、その先端部1aは磨耗し難くなる。よって、基板折り曲げ装置100の使用回数の増加に依存することなく、基板に対して確実に折癖を付与することができる。その結果、かかる基板を折り曲げた状態で接着要素を介して基材に取り付けた場合に、その基板を基材から剥離し難くすることができる。
【0041】
なお、本発明では、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1a、および受台3の溝3bの表面は各々異なる素材により形成されており、それらのうち少なくとも一方の表面が金属を含む素材を含み、他方の表面が樹脂を含んでいてもよい。例えば、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1aを樹脂により形成し、受台3の溝3bに対応する部分の表面を、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成するようにしてもよい。これによれば、受台3の溝3bに対応する部分の耐久性を向上させることができる。よって、基板の折り曲げ回数が増えたとしても、受台3の溝3bに対応する部分は磨耗し難くなり、基板折り曲げ装置100の使用回数の増加に依存することなく、基板に対して確実に折癖を付与することができる。
【0042】
以上のように、基板に対して確実に折癖を付与するためには、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1a及び受台3の溝3bに対応する部分のうち少なくとも一方の表面が、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成されていればよい。
【0043】
上記実施形態においては、先端部1a及び受台3の溝3bの各表面に対応する部分の一方を、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成し、他方を樹脂にて形成した。もちろん、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1a及び受台3の溝3bの各表面に対応する部分の両方を、樹脂単体より剛性又は強度の大きい素材にて形成してもよい。両者を剛性又は強度の大きい素材としたことによって、基板折り曲げ時に、基板の断線を引き起こしたり、基板の折り曲げ部分に亀裂などが生じたりしてしまうようなら、基板折り曲げの際の押圧力を調整する等するとよい。
【0044】
(折癖の付与された基板の電気光学装置への適用例)
次に、図3を参照して、基板折り曲げ装置100により折癖が付与された基板を、電気光学装置に適用した例について説明する。図3は、電気光学装置の一例としての液晶装置200の概略断面図を示す。
【0045】
液晶装置200は、液晶表示パネル150と、液晶表示パネル150の表示側とは逆側に配置され、液晶表示パネル150を照明する照明装置19と、を備える。
【0046】
液晶表示パネル150は、第1の基板11と第2の基板12とを枠状のシール材13を介して貼り合わせ、シール材13で区画される領域内に、電気光学層の一例としての液晶層14を狭持して構成される。第1の基板11は、第2の基板12の一辺から外側に張り出す実装領域11hを有し、実装領域11hには、液晶を駆動するドライバIC15及び可撓性を有するシート状の基板(例えば、FPC)16が夫々実装されている。基板16は、図示しない配線を介してドライバIC15と電気的に接続される。基板16の一方の面には、発光ダイオードなどの光源18が実装されている。基板16は、基板折り曲げ装置100により折り曲げられており、その折り曲げ部分16xに折癖が付与されている。そして、基板16は、液晶表示パネル150の実装領域11h側から導光板17側に折り曲げられ又は折り返され、さらに、図示しない接着要素(粘着テープなど)を介して導光板17に取り付けられている。
【0047】
その他、液晶表示パネル150の液晶層14側の面上には、例えば、ブラックマトリックス、カラーフィルタ、電極その他の多くの構成要素がマトリクス状(格子状)又はストライプ状(線状)に形成されるが、図3ではそれらの要素の図示を省略している。そして、液晶表示パネル150におけるシール材13の内側には、画像を表示するための表示領域が形成される。なお、本発明では、液晶表示パネル150は、特定の構成に限定されず、周知の種々の構成を採り得る。
【0048】
照明装置19は、上記した光源18と、導光板17と、図示しない各種の光学シートと、を有する。光源18は、基板16の折り曲げによって、導光板17の一端面と対面する位置に配置されている。導光板17は、光源18から出射された光を液晶表示パネル150に向けて導く役割を有し、第1の基板11の液晶層4側とは逆側に配置されている。各種の光学シートは、導光板17と液晶表示パネル150との間に配置される。各種の光学シートには、例えばプリズムシート、拡散シートなどが含まれる。
【0049】
以上の構成を有する液晶装置200では、光源18から出射された光は、導光板17及び各種の光学シート等を通じて、液晶表示パネル150に向けて照射される。この際、液晶表示パネル150において液晶層14の液晶分子の配向が制御されて、所望の表示画像がユーザによって視認される。
【0050】
次に、折癖が付与された折り曲げ部分16xを有する基板16が実装された液晶装置200の特有の作用効果について説明する。
【0051】
ここで、比較例として、上記した液晶装置200と同様の構成を有するが、折り曲げ部分16xに対して折癖が全く付与されていないか、或いは折癖が確実に付与されていない基板が実装された液晶装置を想定する。比較例において、基板と導光板とを接合している接着要素の接着力よりも基板の持つ弾性力(基板が導光板から剥離する力)の方が大きいと、その弾性力が接着要素の接着力に打ち勝って、基板が導光板から剥がれてしまうといった課題がある。また、基板が導光板から剥がれることにより、光源が導光板の規定の位置に配置されなくなり、照明装置の輝度が低下して、液晶装置の光学特性に悪影響を与えるといった課題がある。
【0052】
この点、本実施形態に係る液晶装置200では、折癖の付与された折り曲げ部分16xを有する基板16を、液晶表示パネル150の実装領域11h側から導光板17側に折り曲げ又は折り返し、さらに、接着要素を介して導光板17に取り付けている。
【0053】
このように、液晶装置200に実装された基板16は、折り曲げ部分16xに対して折癖が付与されているので、基板16の弾性力(導光板17に接合された接着要素から剥離する方向に作用する力)を低減することができる。その結果、基板16が接着要素の接着力に抗して導光板17から剥がれるといったことを防止することができる。また、基板16が導光板17から剥がれなくなることにより、光源18を導光板17の規定の位置に配置することができる。そのため、光源18と導光板17との位置ずれに起因して生じる照明装置19の輝度低下を防止することができ、液晶装置200の光学特性に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0054】
(液晶装置の製造方法)
次に、図1、図4及び図5を参照して、本実施形態に係る基板折り曲げ装置100を用いた液晶装置200の製造方法の一例について説明する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る基板折り曲げ装置100を用いた液晶装置200の製造方法のフローチャートを示す。図5は、図2に対応する基板折り曲げ装置100の要部断面図であり、液晶装置200の製造工程を示す。なお、図5の一点鎖線は、折り曲げられた基板16を示す。
【0056】
まず、基板折り曲げ装置100と、可撓性を有する基板16が実装された半完成品たる液晶装置200をそれぞれ準備する(準備工程S1)。なお、この準備工程S1では、図示を省略しているが、液晶表示パネル150に可撓性を有する基板16を接続するための基板接続工程を含んでいる。次に、図1(b)及び図5に示すように、液晶装置200を受台3の収容部3c内に収容すると共に、液晶表示パネル150における第1の基板11の4隅のうち2隅を一対の移動規制部3dに係合させ、基板16の折り曲げるべき部分を、基板折り曲げ部1の先端部(係合部)1aと受台3の溝3bとの間に配置して、受台3の溝3bに対して基板16の移動を規制する(基板配置工程S2)。
【0057】
次に、移動機構4を通じて、基板折り曲げ部1を受台3側(矢印Y2方向)に移動させつつ、基板折り曲げ部1の先端部1aを受台3の溝3bに係合させて、基板16を挟み込んで折り曲げる(基板折り曲げ工程S3)。これにより、基板折り曲げ部1の折り曲げ部分16xに対して折癖を付与することができる。
【0058】
次に、その他の工程S4を実行する。その他の工程S4には、基板折り曲げ工程S3において折癖の付与された折り曲げ部分16xを有する基板16を、液晶表示パネル150の実装領域11h側から導光板17側に折り曲げつつ、接着要素(粘着テープなど)を介して導光板17に取り付ける工程が含まれる。
【0059】
以上、準備工程S1、基板配置工程S2、基板折り曲げ工程S3及びその他の工程S4を経て液晶装置200が製造される。
【0060】
こうして製造された液晶装置200では、基板16の折り曲げ部分16xに対して折癖が付与されていることにより、導光板17に接合された接着要素から剥離する方向に作用する基板16の弾性力を低減することができる。その結果、基板16が接着要素の接着力に抗して導光板17から剥がれることを防止できる。また、基板16が導光板17から剥がれなくなることにより、光源18を導光板17の規定の位置に配置することができる。そのため、光源18と導光板17との位置ずれに起因して生じる照明装置19の輝度低下を防止することができ、液晶装置200の光学特性に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0061】
なお、本発明では、例えば基板配置工程S2と基板折り曲げ工程S3との間に、基板折り曲げ部1の少なくとも先端部1a及び受台3の溝3bに対応する部分のうち表面が金属を含む素材で形成された側を加熱する加熱工程S5を更に備えていてもよい。ここで、加熱工程S5における加熱手段としては、ヒータなどが挙げられる。これにより、基板16の折り曲げ部分16xが加熱され、基板折り曲げ工程S3において、その折り曲げ部分16xに対して折癖がより付与しやすくなる。
【0062】
[変形例]
本発明では、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形をすることが可能である。
【0063】
例えば、上記の実施形態に係る基板折り曲げ装置100では、基板折り曲げ部1の先端部1aを、基板折り曲げ装置100の高さ方向Y1とは逆方向Y2に移動させることにより、基板折り曲げ部1の先端部1aを受台3の溝3bに係合させる構成であった。
【0064】
これに限らず、本発明では、基板折り曲げ部1の先端部1aを、基板折り曲げ装置100の高さ方向Y1と略直交する方向(水平方向)に移動させることが可能な構成にすると共に、受台3の溝3bが当該基板折り曲げ部1の先端部1aと係合することが可能な位置に配置する構成としてもよい。これによれば、基板折り曲げ部1の先端部1aを水平移動させることにより、当該基板折り曲げ部1の先端部1aが受台3の溝3bに係合されることになる。よって、この構成によれば、上記した実施形態と同様に、基板16の折り曲げるべき部分に対して確実に折癖を付与することが可能となる。
【0065】
また、上記の実施形態では、基板折り曲げ装置100は、受台3の溝3bは1つだけ設けられていた。これに限らず、本発明では、受台3の溝3bを複数設けると共に各溝3bを並列に配置して、さらに、基板折り曲げ部1の先端部1aが各溝3bに順次係合できるように、基板折り曲げ部1を移動可能な構成としてもよい。これにより、1つの基板折り曲げ装置100により、基板16に対して複数の折癖を付与することが可能となる。或いは、本発明では、基板16の複数箇所に対しての折り曲げ時間の短縮を図るため、基板折り曲げ部1を複数設けて、各基板折り曲げ部1の先端部1aが、対応する各溝3bに対して一括して係合できる構成としてもよい。
【0066】
また、本発明では、基板折り曲げ部1の先端部1a及び受台3の溝3bの各形状に工夫を凝らすことにより、基板16を複数の方向又は多段状に折り曲げるようにしてもよい。例えば、図6は、その構成例を示す。図6(a)は、図2に対応する、複数の方向又は多段に基板16を折り曲げることが可能な基板折り曲げ装置100xの断面図を示す。図6(b)は、基板折り曲げ装置100xを用いて折り曲げた基板16を液晶装置200に適用した例を示す断面図である。
【0067】
基板折り曲げ装置100xは、基板折り曲げ装置100と比較して、基板折り曲げ部及び受台3の溝に対応する部分の各形状が異なり、それ以外は同様である。具体的に、基板折り曲げ装置100xは、基板16を2段に折り曲げる構成を有する。即ち、基板折り曲げ装置100xにおいて、基板折り曲げ部1xは、断面湾曲形状又は断面V字形状の先端部1aと、先端部1aに連なる位置に形成され、先端部1aの突出方向とは逆方向に窪む凹部1bと、を有する。一方、受台3の溝に対応する部分は、基板折り曲げ部1xの先端部1aに係合する溝3bと、溝3bに連なる位置に形成され、基板折り曲げ部1xの凹部1bに係合する突状の凸部3eと、を有する。
【0068】
この構成によれば、基板16の折り曲げの際に、移動機構4を通じて、基板折り曲げ部1xの先端部1a及び凹部1bと、受台3の溝3b及び凸部3eとを係合させて、基板16を挟み込むことにより、複数の異なる方向に基板6を折り曲げることができる。つまり、これにより、相互に折り曲げ方向が異なる折癖が付与された折り曲げ部分16xを有する基板16が作製される。
【0069】
こうして作製された基板16は、例えば、図6(b)に示すように、その一端が液晶装置200の実装領域11hに実装され、さらに照明装置19側に略直角に折り曲げられ、さらに液晶装置200から離隔する方向に略直角に折り曲げられた状態で用いられる。
【0070】
こうした構成により、次のような利点が得られる。このような液晶装置200を電子機器に組み込んだ場合において、もし、実装領域11h側に実装された基板16の一端側付近に障害物A10が存在するような場合、基板16を、その障害物A10と干渉しない位置に配置することができる。しかも、基板16は相互に折り曲げ方向が異なる折癖が付与された折り曲げ部分16xを有するので、上記した折り曲げ形状を維持することができる。よって、障害物A10が導通体(電流が流れている配線など)であるような場合には、基板16と導通体との接触(例えば短絡など)を防止することができる。
【0071】
その他、本発明では、電気光学装置の一例としての表示装置は、液晶装置に限定されず、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマディスプレイ装置、及びフィールドエミッション表示装置などであってもよい。また、折癖が付与された折り曲げ部分16xを有する基板16を実装する液晶装置200は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、液晶テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ディジタルスチルカメラなどの電子機器に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施形態に係る基板折り曲げ装置の高さ方向に沿った断面構成等を示す。
【図2】図1の切断線A−A’に対応する基板折り曲げ装置の断面構成を示す。
【図3】基板折り曲げ装置にて折癖が付与された基板を実装する液晶装置の断面図。
【図4】基板折り曲げ装置を用いた液晶装置の製造方法を示すフローチャート。
【図5】基板折り曲げ装置を用いた液晶装置の製造工程を示す断面図。
【図6】変形例の基板折り曲げ装置による液晶装置の製造工程に係る断面図。
【符号の説明】
【0073】
1、1x 基板折り曲げ部(第1の部材)、 1a 先端部(係合部)、 1b 凹部、 3 受台(第2の部材)、 3a 台座、 3b 溝、 3c 収容部、 3d 移動規制部、 3e 凸部、 4 移動機構、 16 基板、 16x 折り曲げ部分、 17 導光板、 18 光源、 19 照明装置、 100、100x 基板折り曲げ装置、 150 液晶表示パネル、 200 液晶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、前記第2の部材に設けた溝と、前記第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げる基板折り曲げ装置であって、
前記係合部、および前記溝の少なくとも一方の表面が樹脂より強度の大きい素材にて形成されていることを特徴とする基板折り曲げ装置。
【請求項2】
前記素材は、金属又は樹脂と前記樹脂の表面を覆う金属とを含む素材であることを特徴とする請求項1に記載の基板折り曲げ装置。
【請求項3】
第1の部材と第2の部材との間に配置する可撓性を有する基板を、前記第2の部材に設けた溝と、前記第1の部材に設けられた係合部とを係合させることにより折り曲げる基板折り曲げ装置であって、
前記係合部、および前記溝の表面は各々異なる素材により形成されており、少なくとも一方の表面が金属を含む素材を含み、他方の表面が樹脂を含んでなることを特徴とする基板折り曲げ装置。
【請求項4】
前記係合部及び前記溝は、断面湾曲形状又は断面V字形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の基板折り曲げ装置。
【請求項5】
前記第2の部材は、前記溝に対して前記基板の移動を規制する移動規制部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基板折り曲げ装置。
【請求項6】
前記第1の部材と前記第2の部材とを相対的に移動させて、前記係合部を前記溝に係合させる移動機構を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の基板折り曲げ装置。
【請求項7】
第1の部材の係合部と、第2の部材の溝とを係合させて可撓性を有する基板を折り曲げる電気光学装置の製造方法において、
前記係合部および前記溝のうち少なくともいずれか一方の表面が金属を含む素材により形成されてなり、
電気光学パネルに可撓性を有する基板を接続する工程と、
前記係合部と前記溝との間に、前記可撓性を有する基板を配置する工程と、
前記可撓性を有する基板を挟んで前記係合部と前記溝とを係合させて前記可撓性を有する基板を折り曲げる工程と、を具備することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項8】
前記係合部、および前記溝のうち表面が前記金属を含む素材で形成された側を、加熱する工程を更に備えてなることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−13226(P2010−13226A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174251(P2008−174251)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】