説明

基板表面の処理方法

本発明は、一般的に、基板表面の処理または加工に関する。とりわけ、本発明は、シリコンウエハの表面を改質するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、基板表面の処理または加工に関する。とりわけ、本発明はシリコンウエハの表面を改質するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体および太陽電池産業のためのシリコンスライス、シリコン板またはウエハの製造中、ウエハは、ウエハに所望のサイズおよび製品の特性を付与するために、一連の機械的処理および/または化学的処理工程にさらされる。以下の本文において、先行技術で習慣的な太陽電池の製造の加工工程について記載する。
【0003】
まず、ワイヤソーを使用して、シリコンインゴットをウエハとしても知られるスライスに切る。ウエハの切断後で、切断(sawing)スラリーとして知られるものを除去するためにウエハを洗浄する。この後一般的に、切断工程で生じた欠陥の多い層を除去するための、とりわけアルカリ溶液などの適した薬品を使用した切断ダメージの湿式化学エッチングが続く。次に、ウエハを洗浄して乾燥する。
【0004】
ウエハまたは基板は一般的に単結晶または多結晶シリコンウエハであり、ボロンでp型にドープされる。太陽電池が機能するために必要なp−n接合を作るために、シリコンウエハの片面側をn型にドープする。このn型ドーピングは通常、リンをドーピングすることによって行われる。その過程で、基板やシリコン表面は、リン原子の取り込みによって改質される。使用されるリン原料は、一般的に気体または液体のペースト状組成物である。シリコンウエハを適切に気体中にインキュベーションするか、または組成物で被覆した後、リン原子は、通常800〜1000°Cに加熱することで、シリコン表面に拡散するか、蓄積するかまたは組み込まれる。このリンドーピング後に、シリコン板は厚さ数μm以下の、リンでn+型にドープされている層を有する。
【0005】
この表面改質の問題の1つは、一般的に所望の面(上面)だけでなく対向面(下面)およびとりわけ基板ウエハの周辺端部も、処理によって改質またはドープされてしまい、その後の使用時に、その端部が導電性であるために短絡する危険性をもたらすことである。しかしながら、たとえば気相ドーピングによって行われるような、下面を付加的にドーピングすることは、ほとんどの場合容認できる。なぜなら、板の下面すなわち裏面のn+型ドーピングは次に、要望通りに、たとえば、その後の太陽電池の接点接続のための「アルミニウム裏面電界」の形成により、一般的にp+型ドーピングに変換されるからである。しかしながら、この方法で処理されたウエハは常にリン原子を含みそれゆえ導電性である端部を有し、これは、追加の処理がなくても、その後の使用における短絡する危険性という上述の欠点を有するシリコンウエハをもたらす。
【0006】
先行技術において、この問題を排除するための様々な方法が開発されている。一例として、導電性端部の問題は、端部を機械研磨することで解決されている。しかしながら、切断のように、研磨は、結晶構造に欠陥を生じ得、電気損失をもたらす。しかしながら、この手順の主な欠点は、繊細なウエハが破損する危険が多いことにある。
【0007】
さらに、下面すなわち裏面にある導電層を外側領域または端部でレーザービームの作用により遮断することが提案されている。しかしながら、このレーザーによる端部の分離はまだ確立されたプロセスではなく、とりわけプロセスの自動化および達成できる処理量に関して問題をもたらす。さらに、後の加工工程、およびたとえば、相応して製造されたセルの効率が、ウエハ表面のレーザー処理中に形成された燃焼生成物の蓄積によって悪影響を与えられる危険がある。
【0008】
最後に、複数の板が積重ねられ、板の積層の端部がプラズマによりエッチングされることが提案されている。プラズマによる端部の分離には、ウエハが重なり合って積重ねられる必要がある。積重ねおよび積層の取扱いの両方とも、手動または自動化された方法のどちらかで行われるが、装置に高額な経費がかかる。その結果、積層の加工には常に、具体的には、ウエハがプロセスキャリアで運搬されるバッチ生産において、およびウエハがコンベヤーベルトまたはロールで様々な加工段階を通過するインライン生産の場合など、どちらにおいても生産フローの中断または再編成が伴う。さらに、取り扱いが複雑なことは、ウエハが再度高い破損の危険にさらされることを意味する。
【0009】
端部だけが処理される他のプロセスが、独国特許出願公開第100 32 279A1号明細書で提示されている。独国特許出願公開第100 32 279A1号明細書には、端部の欠陥をエッチング除去することによる、シリコン太陽電池における端部の欠陥の化学的不動態化のためのプロセスが記載されている。この目的のために、エッチング剤を含浸させたフェルト布を使用してシリコン太陽電池の端部にエッチング剤を塗布する。
【0010】
先行技術から知られる他のプロセスは、酸浴でのエッチングによって、基板の端部および片面側の導電層を取り除くことで導電性端部の問題を解決する。一例として、独国特許出願公開第43 24 647A1号明細書および米国特許出願公開第2001/0029978A1号明細書には、基板が完全に酸浴に浸される多段階エッチングプロセスが記載されている。いずれの場合もここでエッチングされているのは基板の裏面および端部だけなので、基板の前面は、耐酸性フォトレジストまたはマスキングで保護されなければならない。
【0011】
とりわけ、独国特許出願公開第43 24 647A1号明細書および米国特許出願公開第2001/0029978A1号明細書に記載されているエッチングプロセスは、保護層の塗布と除去に特別な作業工程が必要なため時間がかかるだけでなく、追加の材料の使用も必要となる。とりわけ、保護層の塗布と除去は、処理される基板が悪影響を受ける危険性を伴う。もし塗布された保護層に欠陥や損傷があったら、エッチング中に基板の前面が損傷され、それにより基板が使用できなくなる危険性がある。
【0012】
それゆえ、先行技術で記載されたこれら全てのプロセスは、導電率に関して2つの表面(上面および下面)を切り離すのに役立つが、一部の例では、上述したタイプの深刻な問題を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、本発明の目的は、処理されない前面すなわち上面の保護またはマスキングを伴う先行技術の加工工程を伴わずに、シリコンウエハの片面側を処理することができ、さらにプロセスが好ましくは生産ラインで行われることができる処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、基板の2つの表面のうちの1つだけを選択的に処理することが可能であることが見出された。このように片面側を処理することは、たとえば、2つの表面の1つをエッチング、被覆または洗浄することを含む。一実施形態によれば、たとえば、シリコンウエハなどの対応する基板の上面または下面だけを、エッチングによって改質することで、短絡するという問題が簡単な方法でなくすことが可能である。より深く理解するために、下記において基板の片面側の処理の例として、表面のエッチングについて言及する。
【0015】
特に好ましい実施形態によれば、本発明によるプロセスは連続工程の一環として行われ、とりわけシリコンウエハなどの基板の下面(所望であれば周辺端部を含む)は、液浴にあるエッチング液で湿潤される。
【0016】
本発明によるプロセスは、所望または必要であれば、基板の片面側だけを処理するのにとりわけ適していることに注目されたい。好ましい実施形態によれば、本発明によるプロセスは、好ましくはシリコンウエハの形態の基板に、リンドーピング後、リンがドープされた層を取り除くために片面エッチングを施す。これは、シリコンウエハの片面側だけを完全にまたは部分的に、好ましくはNaOH、KOH、HF、HNO3、O3を伴うHF、および/またはたとえば酸化性酸などの酸化剤を伴うHFを含む液体組成物と接触させることによってもたらされる。
【0017】
この目的のために、シリコンウエハは実質的に水平に配向され、エッチングされる面側は、液浴にあるエッチング液で湿潤される。エッチング液とシリコンウエハの下面との間の距離は、基板のエッチングされる面側(所望であれば周辺端部を含む)は湿潤されるが、反対側は湿潤されないように選択される。
【0018】
このエッチング工程は、好ましくはリンドーピングの直後に実施されることに注目されたい。なぜなら、リンのガラスエッチングは、一般的に湿潤化学手段により行われ、本発明による端部の分離を次に同じ装置で行うことができるので、スペースを省き、安価な解決法であるからである。しかしながら、本発明による工程が別の時に行うこともできることは、当業者には明らかであろう。唯一重要な要素は、本発明によるエッチは、所定の基板の裏面すなわち下面に金属接触を施す前に行うべきであるということである。
【0019】
本発明によるプロセスの好ましい一実施形態によれば、基板の片面側および基板の周辺端部の両方を、上記の概略のように処理することができる。
【0020】
一実施形態によれば、基板は、液体組成物を含む液浴内に下げられる。その場合どの程度基板を下げるかは、基板の厚さ、重量および表面特性および液体組成物の表面張力に応じて、当業者が容易に設定できる。さらに、たとえば、処理浴のレベルを正確に設定することによって、下面だけでなく端部も処理することができ、これは本発明によれば特に好ましい。
【0021】
本発明による処理は、液浴に入れることによってだけではなく、エッチング剤により湿潤され、結果として改質されるのが実際に片面側だけ(適切な場合には端部も)であることが確実な場合には、他の方法によっても行うことができることが、当業者には明らかであろう。一例として、さらなる実施形態によれば、大きさの異なる2つの容器を提供することが可能である。小さな容器は液体組成物を含み、大きな容器に囲まれている。小さな容器は液体でそのへりまで満たされ、かつ液体は、接続されているために大きな容器に供給される。この液体の供給は、たとえば、ポンプによって連続的に行われてもよく、かなりの量のエッチング液が常に外側のタンク(大きな容器)へあふれ、液体がそこから好ましくは内側のタンク(小さな容器)へポンプで戻されているように設定することもできる。液体組成物のポンピングは、液体のレベルが、常に小さな容器の周辺端部よりもわずかに高く、液体のレベルとコンテナの縁の高さとの差が、とりわけ、使用されるエッチング媒質の表面張力に依存していることを意味する。この配置を使用すると、生産ラインの一環として、処理されるウエハが液体上を水平に運搬されて、ウエハが小さい内側の容器の側壁にぶつかったり損傷されることなく、ウエハの下面が湿潤されることが容易に可能となる。
【0022】
あるいは、浸漬法を利用することも可能であり、その場合、浴の液体のレベルは、適切な場合端部を含むウエハの下面にとって、ディッピングカーブ(dipping curve)の最低点にある場合にのみ湿潤されるのに十分に低いように設定される。
【0023】
本発明に従って上述の実施形態において提案されている基板の片面の湿潤または処理は、能動的な(直接)湿潤と受身的な(間接)湿潤とを基本的に区別して、様々な方法で達成または助けられ得ることに注目されたい。
【0024】
本発明において、能動的なすなわち直接湿潤は、所望の基板の片面側の処理が、基板を処理液に通すことによって直接的に確実に行われることを意味すると理解されるべきである。本発明によれば、これは、処理される基板下面のレベルが少なくとも短時間、処理液の最高レベルよりも下にあることを要する。能動的な湿潤において、一例として、基板を液体に入れるか、またはタンクの液体のレベルを完全にまたは部分的に上げることができ、本発明は、基板を下げることと、液体のレベルを上げることの組み合わせも包含する。
【0025】
一例として、浴の表面を局所的に上げることは、液体注入口を表面の下の、基板が浴に投入される場所に、それに対応するように配置して向けることによって、行うことができる。さらに、たとえば圧縮空気を使用して、基板の下で気泡が噴き出すことによって、浴の表面を部分的に上げることができるので、同様に基板下面を確実に湿潤することが可能である。
【0026】
一方、本発明において、受身的なすなわち間接湿潤は、処理される基板の下面が全処理期間を通して液体のレベルよりも上にあり、それゆえ湿潤は、システムの構成要素によって間接的にのみ生じ、その構成要素の部分が液体に接触していて、基板下面の湿潤に関与することを意味すると理解されるべきである。これに関連して、基板の処理される側は、湿潤に関与する構成要素と接触することで、完全に(全表面を一面に)または部分的にだけ湿潤される必要があるが、その理由はシリコンウエハの表面の吸湿性によって確実に、構成要素による下面の部分湿潤でも非常に短時間で全表面の湿潤をもたらすからであることに注目すべきである。
【0027】
間接湿潤用に提供され得る構成要素に関しては、これらは、上述したコンベヤーシステムの一部を形成してもよく、または少なくとも一部分において液体から突き出ているまたは延在し得るように液浴内に配置されてもよいことに注目すべきである。それゆえ、本発明によれば、固定された、回転するまたは垂直に変位可能な構成要素は、同様に適切である。構成要素の表面特性および/または成形(たとえば毛管効果を生かすことによる)が、基板下面と接触するように意図された構成要素の領域が、湿潤されるとともに、基板自体は液浴と接触せずに、処理される表面の湿潤をもたらすことを確実にすることが好ましい。一例として、構成要素は、浴の液体内で回転し、しかも回転運動の結果、エッチング液を上昇させ、それにより液面レベルより上に置かれた基板下面を湿潤させる、湿潤ローラーであってもよい。しかしながら、既に説明したように、本発明によれば、驚くべきことに基板下面との点状の接触であっても全表面を確実に湿潤させるのに十分であるため、(垂直に変位可能な)台、ピンまたはラム(rams)などの他の構成の構成要素を使用することも可能である。
【0028】
本発明によるプロセスの一部としての、処理される基板を案内するためのコンベヤーシステムの使用は、原則として能動的な湿潤および受身的な湿潤の両方を可能とする。能動的な湿潤の場合、処理される基板は液体を通って案内される一方で、受身的な湿潤は、相応して構成されたコンベヤーシステムの構成要素によってもたらされる。
【0029】
本発明によるコンベヤーシステムの適切な例について、以下、図1を付加的に参照して、詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、基板は、たとえばローラーコンベヤーシステムなどのコンベヤーシステムに置かれる。この場合、基板は縦に並べられ水平に配向された複数のコンベヤーロール(1)を用いて運搬される。上記で定義されたような能動的な湿潤の状況で、個々のコンベヤーロールは、好ましくは、液浴中では、いずれの場合もロールの上縁をだいたい浴の表面すなわち流体の上縁レベルに位置させて、基板の下面を浴の表面と直接接触して湿潤させるように、配置される。この場合、基板端部にメニスカスが形成されてもよい。そこで重力と表面張力との相互作用によって基板が下方に引かれ、浮動せずにロールと接触したままであることを確実にする。これによってロールコンベヤーシステムを使用した、制御され規定された基板の運搬が可能となる。
【0031】
これに関連して、基板の上面も湿潤されてしまうことなく、基板の下面および適切な場合には基板の端部を湿潤することが可能であるように、液浴の高さをコンベヤーシステムに関して正確に設定することを可能にすることが重要である。同様に、コンベヤーシステムの構成によって、基板と液浴の液体とを接触できるようにする必要がある。
【0032】
特に好ましい実施形態によれば、コンベヤーロール(1)上に少なくとも2つの支持要素(3)があり、これらの支持要素を好都合に、2つの溝(2)の領域内でコンベヤーロール上に配置してもよい。支持要素間の距離は、処理される基板の幅によって予め定められる。能動的な湿潤においては、この実施形態におけるコンベヤーロールの位置決めに関する上述の内容は、支持要素に適用される。
【0033】
上で定義したような受身的な湿潤においては、コンベヤーロール自体または支持要素が基板下面を完全にまたは部分的に湿潤させることに関与する。
【0034】
コンベヤーロールは好ましくは、軸要素と、軸要素を取り囲む少なくとも1つの軌道要素とを含む、少なくとも2部構造体である。軸要素は、純粋に安定材として、または固定ベアリングとして機能してもよい。これは、好ましくはベアリング軸である。軸の材料は、純粋に機械的特徴および熱的特徴に基づいて選択され得る。この軸の材料は、運搬される材料とも、特定の状況下で攻撃的であるかもしれない化学環境とも接触しない。本発明によれば、曲げ性のある剛体である。一方、軌道要素は、固定ベアリング軸のため、ある程度の熱耐性が許される。材料にとっての重大な要素は、部品材料(piece material)とも環境媒質とも反応しないことである。曲げ性のある剛体のベアリング軸によって、運搬される材料を、運搬方向に垂直な方向に、規定された直線上に保持することを確実にする。その結果、コンベヤーロールは全長にわたって同一速度で動き、これはとりわけ複数のコンベヤートラックを有する比較的広いコンベヤーロールの場合に、および破砕に弱い平らな材料が運搬されているときに重要である。
【0035】
好ましい一実施形態においては、軸要素は炭素繊維複合材でできている。炭素繊維複合材は熱的安定性および機械的安定性が高く、それゆえ特に変動温度下で用いられるベアリング軸として使用するのに適している。
【0036】
好ましい一実施形態においては、ベアリング軸は、たとえばシールリングによって、運搬される材料を処理するのに使用される媒質に対して被包される。媒質は、本発明によれば湿式化学浴であり、それゆえ軌道要素の外面としか接触せず、液状媒質は、軌道要素の内部に、ベアリング軸に、またはベアリング軸と軌道要素との間に存在してもよいいかなる固定要素にも浸透できない。シールは液密であってもよいし、またはある程度気密であるように設計されてもよいので、有害な蒸気が軌道要素の内部に浸透するのは不可能である。
【0037】
軌道要素を任意の所望の長さに組み立てることができ、しかも、コンベヤーロールは、たとえば、任意の所望の数の軌道要素を有する軸を含んでいてもよい。コンベヤーロールのメーカーまたは供給業者は、複雑な在庫管理を利用する必要なく、非常に柔軟に顧客の要望を満足することができる。軌道要素は、どのような長さのコンベヤーロールにも使用できるので、大量生産物品であり、よって製造コストを削減できる。
【0038】
軌道要素は、たとえば、差し込まれて一体にされ、互いに螺合され、クリップを使用して接続され、または互いに溶接され得る。
【0039】
好ましい実施形態においては、処理される基板は、加工物に適した静止摩擦特性により実際に支持要素(3)上に支持される。その場合、上述したようにこれらの支持要素を、運搬にだけでなく受身的な湿潤にも使用することができる。これらの要素は、同じく熱的におよび化学的に安定しているべきである。フッ素化ゴムでできたOリングの使用が太陽電池の製造に適していることを証明した。支持要素が及ぶ直径が軌道要素の残りの部分よりも大きいので、運搬されている材料は、点状の接触のみ、および適切な場合には、湿潤を受ける。これは、線状の接触とは違って、運搬されている材料に対し優しく、同時に周囲の媒質との接触を確実に良好にする。
【0040】
さらに有利な実施形態においては、軌道要素はプラスチックでできている。プラスチックは加工するのが簡単で、コンベヤーロールの使用および配備位置に応じて選択される広範囲の異なった性質を提供することが知られている。一例として、ポリエチレン、ポリフルオロアルコキシド(polyfluoroalkoxide)またはポリフッ化ビニリデンを使用するのが好都合であることが分かっている。これらの材料は80℃超まで熱的に安定しており、溶接でき、ある程度の化学安定性があり、いかなる金属汚染の原因にもならず、比較的磨耗しにくい(unabraidable)。
【0041】
本発明の有利な改良形態は、駆動可能な軌道要素からなる、すなわちベアリング軸に駆動が加えられ、次にベアリング軸から軌道要素へ伝達されるのではなく、むしろ駆動が軌道要素に対して直接作動することが可能となる。このタイプの軌道要素を有するコンベヤーロールは、特に同期的なコンベヤーシステムを形成するために組み立てられることができる。運搬される材料に最適な牽引力が伝達される。
【0042】
組み立てられた一連の軌道要素の一実施形態において、第1の端部要素が駆動力を伝達する手段を有し、および第2の端部軌道要素が回転ベアリング手段を有する。駆動軸に適合した連結要素を介して駆動をコンベヤーロールに伝達でき、第1の端部軌道要素に接続できる。連結要素はベアリング軸を保持する手段も有する。コンベヤーロールを運搬位置から移動させる場合、まず第2の端部軌道要素をベアリングから解除しなければならず、コンベヤーロール全体を連結要素を中心に旋回させなければならず、次にコンベヤーロールを連結要素から取り外さなければならない。
【0043】
回転ベアリング手段は、シェル上半部と、シェル下半部とを含んでもよく、シェル下半部はコンベヤーシステムの壁に固定されており、およびコンベヤーロールを支持するのに使用されており、第2のシェル上半部は保持するために解放可能に固定されている。
【0044】
軌道要素の幅は、好都合にも、少なくとも運搬される加工物の幅に対応するので、加工物の広い側は1つの軌道要素だけに載る。各軌道要素が丁度1つの加工物だけ受ける、すなわち軌道要素の幅と運搬される材料の幅がほぼ等しいことが好ましい。
【0045】
コンベヤーロールの有利な実施形態において、ベアリング軸には固定リングが適合しており、少なくとも1箇所における軌道要素の内径は、固定リングの直径よりも小さい。それゆえ固定リングは、軌道要素がベアリング軸で大きく動く可能性を阻止する。これはとりわけ温度が変化する場合に、ベアリング軸および軌道要素の材料が異なる比率で膨張すると、互いに動きあってしまう原因となり得るので重要である。
【0046】
固定リングは好ましくは金属でできている。なぜなら金属は首尾よく軸の方に曲がり、その適所に締め付けることができるからである。
【0047】
異なる温度で使用するために、全体としてコンベヤーロールの安定性に、長さがわずかに変わることによる影響があってはならない。それゆえ、本発明のさらに有利な実施形態において、軌道要素には、熱膨張を補償する補償クリーズ(crease)を備えている。補償クリーズは一般的に軌道要素の材料に内部が中空の凸面部を含み、長手方向に伸張することにより、温度によって誘発された材料の膨張を吸収する。補償クリーズが運搬される材料の支持点間に位置しない場合、支持材の安定性は長さが温度によって誘発されて変わっても安定した状態を保つ。さらに、軌道要素がいずれの場合もベアリング軸に固定されているなら、軌道の直線方向の性質も保持される。
【0048】
運搬される材料を一様に案内することが、本発明によるコンベヤーロールがコンベヤーシステムを形成するために組み立てられる場合には、特に首尾よく保証される。
【0049】
コンベヤーシステムの好ましい一改良形態においては、各コンベヤーロールを駆動する。この場合、各コンベヤーロールは同じ力の伝達を受け、それゆえ等負荷を受ける。
【0050】
本発明に従って提案される、コンベヤーシステムによってもたらされる運搬案内は、処理量を高くさせ、かつ、同時に運搬される材料に非常に対し優しく、本発明によるプロセスにおいて使用するのに特に適している。
【0051】
コンベヤーロールを用いないコンベヤーシステムの代替実施形態を使用することも可能であることに注目すべきである。一例として、基板は回転ベルト、チェーンまたはコードで運搬される。コンベヤーシステムの別の運搬オプションは走行バーによって形成される。このシステムは、基板を交互に前方に運搬する2つ以上のバーを使用する。第1のバーが前方に動く一方で、第2のバーが後方に動く。この場合、第2のバーは液浴の深いところにあり、基板と直接接触していない。第1のすなわち上部バーが予定の運搬動作の終わりに到達し、および第2のすなわち下部バーが開始位置に到達したら、下部バーが上昇して、基板が両方のバーと接触する。次に上部バーが下がるので、それゆえ、上部バーは液浴の開始位置に戻ることができ、一方下部バーは前方への移動を行っている。
【0052】
このタイプのバーコンベヤーシステムの従来の設計においては、これらのバーを偏心した、すなわち絶えず上下運動している回転軸に装着している。しかしながら、基板の片面側の処理を確実にするために、能動的な湿潤においては、基板を常に同じ高さに維持する必要がある。しかしながら、従来のバーコンベヤーシステムに対応する改質および上記で定義された受身的な湿潤においてのその使用は、本説明の知識がある当業者には明白である。
【0053】
それゆえ、本発明によるプロセスは、ワンススルー型装置(once-through installation)で特に有利に行うことができる。なぜならこのタイプのインライン生産においては、ウエハを扱ういかなる追加ステップも必要ないからである。さらに、本発明による裏面/端部の分離は、同一装置内で酸化物エッチングと共に行われ、加工順序を簡潔に、および安価にする。さらに、本発明によるプロセスを使用すると、セル裏面が全領域「アルミニウム裏面電界」(AlBSF)ではないというセル概念を実現することが可能である。本発明によるプロセスにおいて、セル裏面のn型ドープされた層は完全に取り除かれるので、p型ドープされたゾーンを形成するために、このドーピングをAlBSF形成によって補償する必要がもはやない。これによってセル裏面の構成に関してよりオプションの可能性を残し、しかもAlBSFを有さないセル概念の実現を単純化する。
【0054】
特定のプロセス(連続または非連続)によって、液体組成物は、たとえば気泡のサイズが大きくなるのを回避するかまたはサイズを小さくするために、添加剤を必要としてもよい。この場合、このタイプの添加剤は、特別な要望に基づいて当業者に容易に選択され得る。適切な添加剤を選択する場合、とりわけワンススルー方式においては、気泡が形成されうる結果として、ウエハが過度の浮力を得ないように保証しなければならない。過度の浮力は、効率的な運搬に悪影響を及ぼし得る。なぜなら、結果としてウエハが運搬手段との接触を失うかもしれないからである。その結果、好ましい実施形態によれば、エッチング溶液は、化学反応中に形成されるガスを実質的に結合することができる少なくとも1種の添加剤を含むので、ウエハ下面の気泡の形成は実質的に抑制されることが提案されている。
【0055】
本発明によるプロセスは、ウエハまたは太陽電池の両面側を電気的に絶縁するために用いることができるだけではなく、液状媒質で基板の片面側を処理することが要求されるまたは望ましい、たとえば洗浄および被覆する場合など、他の湿潤化学的処理を行うのにも適していることに注目されたい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に従ったコンベヤーシステムの例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が予め保護またはマスキングされていない状態で、シリコンウエハの下面が液浴で処理されることを特徴とする液浴でシリコンウエハの片面側を処理するための方法。
【請求項2】
前記シリコンウエハがワンススルー方式で連続的に加工されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコンウエハの前記下面が、前記液浴内に下げられることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生産ラインの一環として、前記シリコンウエハが前記液浴にある処理液を通って水平に運搬されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
使用される前記液浴がタンクであり、その周辺端部が前記処理液のレベルよりも低いことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコンウエハの端部も処理されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記処理がエッチング工程であり、NaOH、KOH、HF、HNO3、O3を伴ったHF、および/またはたとえば酸化性酸などの酸化剤を伴ったHFを含む液体組成物中で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化剤が酸化性酸であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記液体組成物が、前記エッチング中に形成されたガスを結合するために、少なくとも1種の添加剤を含むことを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
生産ラインの一環として、ウエハが液浴にある処理液を通って水平に運搬され、上面が予め保護またはマスキングされていない状態で、前記ウエハの下面が処理されることを特徴とするシリコンウエハの片面側を処理する方法。
【請求項11】
前記シリコンウエハの前記下面が、前記生産ラインの間中、前記液浴内に下げられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シリコンウエハが、前記生産ラインの間中、前記液浴にある前記処理液を通って水平に運搬されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
使用される前記液浴がタンクであり、その周辺端部が前記処理液のレベルよりも低いことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生産ラインが、多数のコンベヤーロールを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記コンベヤーロールが、いずれの場合も軸要素に配置されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各軸要素が、前記処理液に対して液密な方法で被包されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シリコンウエハの前記端部も処理されることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−529912(P2007−529912A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504241(P2007−504241)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/DE2004/000597
【国際公開番号】WO2005/093788
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(504382349)レナ ゾンデルマシーネン ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】