説明

基板表面の分析装置

本発明は、基板(2)の透明な、または鏡のような表面を分析するための分析装置(1)に関し、前記装置は、測定されるべき基板表面に対向して位置決めされるラスタ(10)と、測定される基板によって変形されるラスタの少なくとも1つの画像を取得するためのビデオカメラ(3)と、ラスタの照明システム(4)と、ビデオカメラ(3)へ接続される画像処理およびデジタル分析手段(5)とを備える。本発明によれば、ビデオカメラ(3)はマトリクスアレイカメラであり、ラスタ(10)は、矩形形状を有しかつ基板の第1の方向に沿って、かつ基板の最小の広がりに沿って延びる第1のパターン(10a)を有することにおいて二方向性である基板(11)上に設けられ、第1のパターンは最小の広がりに対して横断方向に周期的であり、かつ第2のパターン(10b)は第1のパターンに垂直な第2の方向に、かつ基板の最大の広がりに沿って延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の鏡のような、または透明な表面を分析し、具体的には、この基板の表面上またはその体積内の何れかにおける光学的欠陥の検出を可能にするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
概して、産業界では、製品品質のより一層の管理を達成することが求められる。具体的には、現時点で、グレージングパネルの光学的品質レベルを永続的に評価することが必要とされている。
【0003】
具体的には、生産ラインを出る板ガラスを、それをある具体的な用途に、例えば、科学的応用のためのミラー、建設業のための積層されたグレージングパネル、具体的には高度に傾斜されるためのフロントガラス等の自動車用グレージングパネル、またはディスプレイスクリーンのための薄い板ガラス、等の用途に使用する目的で選択することが望ましい場合がある。
【0004】
概して、最新の自動車車両用フロントガラスは、その光学的品質が特に監視されている。この基準は、自動車車両の運転安全性の問題に具体的に対処している。したがって、フロントガラスの形状、その傾斜角度および製造材料(極薄ガラスまたは透明ポリマでもある)は、光学的品質の極めて慎重な検査を必要とし、これは100%検査でなければならない場合が多い。
【0005】
自動車用の積層グレージングパネルは、強化された、または焼き戻されたモノリシックグレージングパネルに比べて厚さが小さい2枚のガラス板を必要とする。このような薄いガラス板の製造は巧妙であって、表面上または体積内に光学的欠陥が生じる場合がある。これらの欠陥は、第2のガラス板がさらに接合されることに起因して際立たされる光学的歪効果を引き起こすことから、積層グレージングパネルを製造するための組立て後には大きな問題となる場合がある。このような光学的欠陥の存在は、グレージングパネルが不合格であるという理由で廃棄される結果をもたらす場合が多い。グレージングパネルは既に積層されていることから、その再利用は困難であり、よってその製造コストは高騰する。
【0006】
したがって、このような欠陥を可能な限り迅速に、製造ライン上で、かつ具体的には積層グレージングパネルの組立て前に検出することも望ましい。
【0007】
光学的欠陥はしばしば二次元的欠陥であり、これらは例えば基板平面度の欠陥、または例えばガラス組成に起因する基板体積内の欠陥である場合があり、これらの欠陥は、光が基板を通過して反れる原因となる。
【0008】
また、単一方向に沿って、フロートライン上の成形プロセスの痕跡に対応するフロートウェーブ等の欠陥も発見される。これらの欠陥のサイズは、成形プロセスの品質に依存してより大規模、またはサイズ的により大きく、または小さい。
【0009】
欠陥を検出しかつ評価するために一般に使用される技術は、積層グレージングパネルの組立て後に製造ラインを離れて目視すること等により、標準化された技術を用いて透過または反射における積層グレージングパネルを観察することにある。先に説明したように、このような検査は遅速であり、かつ具体的には製造コストを高める。
【0010】
さらに、参照パターンの歪められたパターンを反射するグレージングパネルの反射または透過における測定によって表面の欠陥検出を可能にする鏡のようで透明な表面の検査技術が、商業的に利用可能である。
【0011】
米国特許第6509967号明細書は、透過において観察される二次元参照パターンの歪みを分析することに基づいて光学的欠陥を検出するための方法を記述している。欠陥の場合、参照パターンの画像は歪められ、画像の多くのポイントの歪みが測定されて、測定から較正により二方向に沿った光出力が推定される。その値は、前記欠陥の存在または不在および規模を表す。この文献は、透過における画像取得を担うカメラに対して参照パターンが十分に考察されてカップリングされる必要性について主張している。参照パターンの各ラインは、整数であるカメラのピクセルライン数に一致しなければならない。しかしながら、この米国特許による方法は、参照パターンの特徴(その大きさ、その形状およびその位置)が知られていること、または参照パターンのパターンがカメラのピクセルに適切にアラインされることを保証すべく適合化されていることを必要とする。このようなアラインメントは制限的であり、かつ産業環境(参照パターンの不良な規則性、一日を通じた温度変化による参照パターンの膨張、フロアの振動、他)ではまず不可能である。
【0012】
米国特許第6208412号明細書は、透過において一次元の参照パターンが観察される別の測定方法を提供している。上記文献の測定装置は、常に測定されるべきグレージングパネルのサイズ(典型的には、2×3m)より略大きい大型画面に一定の、または経時的に変わることが可能な一次元の周期的パターンを形成する参照パターンを生成するためのプロジェクタと、分析されるべきグレージングパネルを介する参照パターンを表示するカメラも使用する。
【0013】
しかしながら、後者の文献に記述されている装置は、実験室において、またはサンプルを取って品質管理を行う生産ラインの脇では期待通りである可能性があるが、網羅的でなければならずかつグレージングパネルが瞬時も停止され得ずに実行されなければならないオンライン検査への使用は不可能である。
【0014】
また、産業ラインにプロジェクタおよび大型スクリーンを組み入れることも、空間がないことからほぼ不可能であり、または望ましくない。さらに、プロジェクタによって作られる画像は、概してさほど明るくない。したがって、スクリーンを、スクリーンを大規模に遮蔽しかつ床も黒に塗ることによってスプリアスな周辺光から遮蔽することが不可欠である。
【0015】
さらに、欠陥を空間的な二方向で測定するためには、参照パターンが一次元的であることに起因して、測定装置は参照パターンを所定の方向へ向けて第1の画像を取得し、次に参照パターンを垂直方向へ向けて第2の画像を取得する必要があり、取得の間はグレージングパネルを停止しなければならないが、こうしたことは、そのグレージングパネル運搬システムに一時停止などない自動車車両の場合等、産業ラインでは考えられないことである。
【0016】
最後に、記述されている測定方法は、グレージングパネルが停止された状態で、空間的にオフセットされる典型的には4つである幾つかの参照パターンを連続的に投影し、かつ各参照パターン位置毎に画像を取得することからなるよく知られている位相シフト方法であり、これらの動作が他の測定方向について二回目も繰り返される。したがって、この一連の取得には極めて時間がかかり、さらにグレージングパネルが停止される時間期間も延びる。
【0017】
したがって、グレージングパネルの保持または不合格の決定に際して産業ラインに課される時間が極めて短いことを考慮すれば、この米国特許第6208412号明細書に記載される装置およびその測定手順に伴う測定処理時間は長すぎる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第6509967号明細書
【特許文献2】米国特許第6208412号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
出願人には、上述の技術による欠点がなく、かつ透過または反射においてこの基板の欠陥を簡単、精密かつ反復的な方法で、しかもグレージングパネルを網羅的に検査するための産業ラインでの実装における全ての制約を満たしかつ具体的には、生産ラインでのグレージングパネルの適合性検査のコストを低減することによって検出しかつ定量化することを可能にする、鏡のような、または透明な基板の光学的品質を分析するための装置を設計するという使命が与えられた。この革新的な装置はさらに、分析時間が結果的に最適化される測定方法の使用を可能にしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、基板の透明な、または鏡のような表面を分析するための装置は、測定されるべき基板の表面に面しかつ短い長さおよび長い長さの2つの大きさを有するサポート上へ配置される参照パターンと、測定される基板によって歪められる参照パターンの少なくとも1つの画像を取得するためのカメラと、参照パターンの照明システムと、カメラへ接続される画像処理/デジタル分析手段とを備え、かつサポートは矩形(oblong)形状を有し、かつ参照パターンは二方向性であって、第1の方向に沿って、かつサポートの短い方の長さに沿って存在する、短い長さを横断して周期的である第1のパターンと、第1のパターンに対して垂直である第2の方向に沿って、かつサポートの長い方の長さに沿って存在する第2のパターンとからなることと、カメラはマトリクスカメラであることによって特徴づけられる。
【0021】
マトリクスカメラが、ピクセルの行列を形成するセンサで構成されることは想起される。
【0022】
マトリクスカメラの使用に伴う参照パターンのサポートの矩形形状は、参照パターンにより占有される面積を縮小し、よって生産ライン上での装置に必要な空間を制限することを極めて効果的に可能にする。さらに、異なる二方向に延びる2パターンを有する参照パターンの使用は、基板内で空間的な二方向に沿って配向され得る欠陥の直接的測定を許容する。
【0023】
参照パターンのこれらのパターンの大きさおよび参照パターン、ガラスおよびカメラの位置は、当然ながら、5cm×5cm以内のサイズであるガラスサンプルの検査と全く同様の2m×2m(以上)のサイズのグレージングパネルまたは太陽鏡の検査であり得る各測定タイプに合わせて適合化されるべきものである。
【0024】
ある特徴によれば、第1のパターンおよび第2のパターンは区別可能であり、互いの直近に存在しかつ互いに交わらない。
【0025】
別の特徴によれば、第1のパターンは、交互する明暗ラインの連なりで構成される。
【0026】
別の特徴によれば、第2のパターンは、矩形形の明暗ラインの連なりから形成され、その長い方の寸法はサポートの長い長さに沿って存在する。
【0027】
別の特徴によれば、第2のパターンは1つの矩形形ラインから形成され、その長い方の寸法はサポートの長い長さに沿って存在し、このラインは参照パターンの背景に対してコントラストをつけられたカラーを有する。
【0028】
1つのラインの場合は約1ミリメートル、または数本のラインの連なりの場合は数ミリメートルであり得る第2のパターンは、結果的に参照パターンの最小化を含意する。
【0029】
各パターンを形成するエレメント(例えば、ライン)の幅は、実際には測定条件および欠陥の規模にしたがって適合化される。好ましくは、第1のパターンおよび/または第2のパターンは、その短い長さに沿って約1mmから1cmまでの幅を有する少なくとも1つのラインを備える。太陽鏡上の反射における測定の場合、パターンのラインの幅は例えば約1cmであるのに対して、グレージングパネル上の透過における測定の場合、ラインの幅は約1ミリメートルである。
【0030】
さらに、参照パターンのサポートが照明システムによるバックライト付きのパネルからなれば、参照パターンのサポートパネルの幅は15cm以下であってもよく、よって、本発明の装置を設置するためのサイズは既存の装置に比べて著しく低減される。
【0031】
バックライト付きパネルとしてのパネルは、測定されるべき基板へ向けられる面が半透明かつ散乱性である。例えば、これは白色のプラスチック板である。
【0032】
有利には、かつ具体的にはバックライト付きの場合、照明システムは多くの発光ダイオードから形成される。
【0033】
透過において測定値をとる場合、基板は参照パターンとカメラとの間に位置合わせされるが、反射における測定では、基板は参照パターンおよびカメラに面して置かれ、カメラは参照パターンと同一平面にある。
【0034】
測定されるべき基板に比べて小さい参照パターンの寸法は、全体として、測定中に参照パターンまたは基板を移動できることを意味する。
【0035】
したがって、グレージングパネル等の大型製品を測定するための先行技術に比べて、参照パターンは両方向にグレージングパネルと同じ広さである必要はなく、またはより大きいものである必要はない。本発明によれば、その長い長さがせいぜい測定されるべき対象とする高さに一致し、かつその短い長さがマトリクスカメラと組み合わされた対象とする他の大きさに比べて極端に小さい矩形形の参照パターンを設ければ十分である。
【0036】
欠陥が二(垂直および水平)方向で同時に分析される必要を満たすために、装置は、一方が1つの垂直ラインまたは極めて少ない垂直ラインからなりかつ、もう一方が一連の極めて短い(典型的には、5cm)均一に離隔された水平ラインからなるバックライト付きのダブルパターン参照パターンと、2つの参照パターンの各々に関連づけられるそのピクセルカラムのみが画像取得後にサンプリングされるマトリクスカメラとを使用する。
【0037】
この技術は、透過における測定および反射における測定の両方に適用される。
【0038】
また本発明は、本発明による装置を用いて基板の透明な、または鏡のような表面を分析する方法にも関し、基板または参照パターンは1つの変位方向に沿って互いに相対的に移動し、方法が、
マトリクスカメラを用いて、透過または反射における照明された参照パターンの多くの画像を取得することと、
周期的に、一方では周期的な第1のパターンに関連づけられるピクセルのカラムを、かつ他方では第2のパターンに関連づけられるピクセルの幾つかのカラムを空間的に抽出することと、
基板全体の画像を再構成するように、メモリにパターンの各々に関するピクセルカラムを積層することと、
再構成された画像を、分析から欠陥の位置を推定しかつこれを定量化するようにデジタル処理によって分析すること、にある点にあることを特徴とする。
【0039】
提案方法の原理は、もはや静止している基板を介して大型スクリーンへ投影される多ラインの参照パターンによる単一画像を取得することにはなく、平行移動する基板を介して見られる、または基板から反射して見られる極狭い参照パターンの幾つかの画像の連なりを取得すること、およびこれらの部分的な画像を、基板を介して見られる、または基板によって反射される参照パターンの完全な画像を再構成するようにグループ化することにある。
【0040】
次には、画像のデジタル処理が知られている方法で実行される。これは、例えば、画像の局所位相を抽出することと、これから、欠陥の位置の推定だけでなく、欠陥を表す歪みまたは光出力の規模を提供し得る較正または歪係数によるこれらの定量化を可能にする相変移を推定することを含む。
【0041】
位相抽出のデジタル処理は、フーリエ変換方法または輪郭探索法またはその他、新規方法であるウェーブレット変換法を用いる様々な方法で実行され得ることは留意されるべきである。
【0042】
本発明による方法は、産業ラインで、産業ラインを修正することなく、より低いコストで満足のいく結果をもたらし、かつ先行技術よりはるかに迅速な検査を可能にするように思われる。
【0043】
本発明の装置および実装方法は、様々な(建築、自動車、航空、鉄道)用途向けのモノリシックな、または積層された、平らな、または曲がった任意サイズのグレージングパネル等、またはミラーまたはディスプレイスクリーン等の透明基板に適用されてもよい。具体的には、装置および方法は、自動車車両のフロントガラス、サイドウィンドウおよび熱線入りのリアガラス、建築用途用の平らなグレージングパネルまたは電子用途用の特殊グレージングパネル(プラズマまたはLCDディスプレイ、他)および他の任意の透明基板への透過に適用されてもよい。装置は、板ガラスの光学的品質を例えばこれがフロートバスを出る際にリアルタイムで検定するための反射、または曲がったガラスの光学的品質を例えばこれが焼戻し炉から出る際に検定するための反射、または太陽鏡、他の光学的品質を検定するための反射において使用されてもよい。
【0044】
以下、本発明を、如何なる場合も本発明の範囲を限定しない純粋に例示的な例によって、かつ添付の図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】透過における測定のための本発明による分析装置を示す断面図である。
【図2】反射における測定のための本発明による分析装置を示す断面図である。
【図3】本発明による参照パターンの一例を示す。
【図4】カメラによって記録された参照パターンの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図は、観察を容易にする目的で、一定の縮尺では描かれていない。
【0047】
図1および図2に示されている装置1は、透過および反射の各々において、グレージングパネル等の透明基板2の欠陥の分析を可能にする。装置は、参照パターン10と、マトリクスカメラ等の画像取得手段3と、参照パターンの照明システム4と、適切な処理/計算手段5とを備える。
【0048】
参照パターン10は、サポートパネル11の一面に、測定されるべき基板に面して形成される。これについては、後にさらに詳しく述べる。
【0049】
透過においては(図1)、透明基板2は参照パターン10とカメラ3との間に置かれ、カメラの対物レンズは基板へと方向づけられている。
【0050】
反射においては(図2)、鏡面を有する基板2が参照パターン10およびカメラ3の前に置かれ、カメラの対物レンズは参照パターンと同一平面に存在し、かつ基板表面へと向けられている。例えば車両のフロントガラスとして使用される傾斜されたグレージングパネルである、測定されるべき製品が最終的に使用される条件下に置かれるように観察の角度が課されなければならない場合、基板の変位面に対するカメラの角度は、グレージングパネルのこの変位面に対して参照パターンに課される角度に一致する。
【0051】
照明システム4は、サポートパネル11が白色のプラスチック板のように半透明の場合バックライトシステムであってもよい。好ましくは、この場合の照明システム4は、半透明のサポートパネルの背後へ向けて位置合わせされる多くの発光ダイオードからなる。
【0052】
変形例として、サポートパネル11が不透明の場合、照明システム4は、参照パターンの前側へ向けて置かれる、例えば参照パターンを支えるサポートパネルの前面を照明するように配向されるスポット(図示せず)である光から形成される。
【0053】
カメラ3はマトリクスカメラであり、すなわちこれは、基板の全体画像を形成するためにデジタル処理によって連結される画像フレームを生成する。参照パターンは基板よりも小さいことから、後に分かるように、基板2または参照パターン10は、基板全体に渡って必要な画像取得数を確保するように互いに対して平行移動式に変位されることが可能である。各画像取得毎にカメラをトリガする周波数は、変位の速度にスレーブされる。
【0054】
カメラは、基板全体の広がりを表示するように、基板または参照パターンの変位方向に対して横断的である適切な距離dを隔てて位置合わせされる。したがって、変位の発生が水平面内の場合、カメラは、基板の垂直な広がり全体を撮影するように置かれる。
【0055】
カメラ3は、基板が最終的に使用される条件に合わせて適合化される垂直線に対して角度をなすことも可能であり、例えば、基板が後に車両のフロントガラスとして使用される場合、運転者/観察者が目視する垂直面に対して傾斜されることも可能である。
【0056】
参照パターン10は、図3に示されているように、矩形形状のサポート11上に置かれる。これは二方向性であり、互いに直近して、しかも重なることなく置かれる第1のパターン10aと第2のパターン10bとからなる。
【0057】
本発明による参照パターンは、測定されるべき基板よりも小さい。例えば、寸法1.5m×1.5mのグレージングパネルを測定する場合、参照パターンは、傾斜角ゼロのグレージングパネルの15cm×1.8mを覆って広がる。傾斜角45°のグレージングパネル(運転位置のフロントガラス)を測定する場合、高さは1.3mになる。
【0058】
参照パターンの第1のパターン10aは第1の方向に沿って、かつサポートの短い方の長さに沿って存在し、この短い長さに対して横断的、すなわちサポートの長い長さに沿って周期的に存在する。第2のパターン10bは、第1のパターンに対して垂直な第2の方向に沿って、かつ参照パターンの長い方の長さに沿って存在する。
【0059】
参照パターンが、互いに直近し、但し重ならずに互いに対して垂直である2つの別々のパターンを有するということは、欠陥の位置が精密に診断されかつ微細に定量化されることを可能にする。パターンのこの分離は、具体的には、幅2mmの暗い垂直ライン等の極く狭い幅のパターンを有することを可能にする。
【0060】
第1のパターン10aは、交互する明暗ラインの連なりからなる。
【0061】
第2のパターン10bは、好ましくは、交互する、但し全体としては小さい幅のままである限定数のコントラストをつけられたラインから形成される。したがって、第2のパターンは、例えば約10本の明るいラインと交互する約10本の暗いラインから形成される。暗いラインおよび明るいラインは、例えば、参照パターンの全体高さに渡って1mmから2mmまでの間の幅を有する。
【0062】
変形例として、第2のパターンは、参照パターンの高さに渡って、例えば幅1mmの単一の矩形線を構成してもよく、このラインは参照パターンの背景に対してコントラストをつけられる。
【0063】
処理/計算手段5は、連続する画像取得に続く数学的処理および分析を実行するようにカメラへ接続される。
【0064】
図4は、カメラによって記録された画像を示し、参照パターンの画像は欠陥の存在によって二方向へ歪められている。単一の変位方向に沿って他者と相対的に移動する装置、基板または参照パターンの実装は、
多くのピクセル30を有するマトリクスカメラ3を用いて、透過または反射における照明された参照パターンの多くの画像を取得することと、
周期的に、一方では周期的な第1のパターンに関連づけられるピクセルのカラム31を、かつ他方では第2のパターンに関連づけられるピクセルの幾つかのカラム32を空間的に抽出することと、
基板全体の画像を再構成するように、メモリにパターンの各々に関するピクセルカラムを積層することと、
再構成された画像を、分析から欠陥の位置を推定しかつその規模を決定するようにデジタル処理によって分析すること、にある。
【0065】
参照パターンの前での基板の水平変位の間に、例えば垂直である第2のパターンを形成するラインのn枚の画像の連なりを取得することは、画像の単純な連結によって、基板の背後に置かれるn本のラインからなる参照パターンの画像を1回だけ観察することによって取得されるはずのものに等しい単一の画像を再構成することを可能にする。出願人は、このタイプの参照パターンが、その限定されたサイズに起因して特に有利であることを実証している。
【0066】
参照パターンは、空間周期的な信号である。数学的分析は、この信号をカメラのピクセルにおいて2πを法とするその局所位相によって知られている方法で特徴づけることにあり、位相マップと称される、透過または反射において見られる各画像の位相(全ピクセルに対応)の一次元マップはこうして画定される。
【0067】
2πを法とする位相マップのこの抽出は、様々な方法を用いて達成されることが可能である。
【0068】
ある知られている方法は、文献に広く記述されているフーリエ変換方法である。したがってこれは、下記のように分割されることが可能である。
【0069】
被検物によって歪められた参照パターンの画像の取得、
ピクセルカラム毎の画像のフーリエ変換の計算(一次元変換)、
参照パターンの基本周波数fの特徴ピークの自動探索、
ガウス帯域通過フィルタ、または他のこのようなフィルタを用いる、この基本周波数fの帯域通過フィルタリング。このフィルタリングの効果は、参照パターン画像の連続背景および参照パターンの信号の高調波を除去することにある、
画像参照パターンの特徴ピークを周波数0にするように、fでフィルタリングされたスペクトルをシフトすること。このシフトにより、参照パターンのグリッドラインが消滅され、参照パターンの歪のみが残る、
ピクセルカラム毎の画像の逆フーリエ変換の計算。取得される画像は歪のみを明らかにする。この画像は、実数部Rと虚数部Iとを含む複素画像である、
画像の2πを法とするピクセルにおける局所位相の計算。この位相は、ピクセル毎に逆正接関数の値(I/R)を計算することによって取得される。
【0070】
さらに、出願人は、局所位相を計算する別の方法、すなわち「ウェーブレット変換」の計算方法の有利な使用を実証している。他のアプリケーションにおいて信号処理のために知られている方法で用いられるこのタイプの計算は、本発明のアプリケーションにおいても特に効果的であることが判明している。これは、参照パターンの画像内に含まれる周波数の局所分析のための方法ではないフーリエ変換方法とは違って、ウェーブレット変換法は、信号の位置および周波数が同時的に分析されることを可能にする点に起因する。その結果、画像の縁(基板の縁)における摂動は少なくなり、かつフーリエ変換方法を用いて実行されるフィルタリング位相の間にはしばしば「押し潰される」小さい欠陥の検出度が上がる。
【0071】
ウェーブレット変換技術は、下記の幾つかのステップからなる、
基板によって歪められた参照パターンの画像の取得、
ピクセルカラム毎の(一次元変換)、画像からの、かつスケールパラメータaおよび変換パラメータbの様々な値に関する、ウェーブレット係数W(a、b)の計算。これらの値は、参照パターンのピッチおよび所望の分解能にしたがって慎重に選ばれる。取得されるものは、ウェーブレットスケイロゲラムである、
b値の各々について、絶対値|W(a、b)|を最大化するスケールaを探索する、
ピクセルにおいて2πを法とする所望の局所位相を与えるW(a0、b)の引数の計算、
絶対位相マップを取得するための2πを法とする位相マップの積分または展開。
【0072】
1つの方法または他の方法によって、画像の2πを法とする位相の計算ステップがピクセル毎に実行されると、これから、勾配マップとも呼ばれる位相導関数のマップが容易に推定される。画像の位相勾配のこの計算は、ピクセルに対する位相ピクセルの単純な差分によって達成され、2πの位相ジャンプは容易に解消される。
【0073】
カメラによって取得された一連の画像から完全な再構成画像の位相マップが推定された後は、一般的な円柱レンズ(透過の場合)または一般的な円筒鏡(反射の場合)を用いて、またはその他、光出力Piがこの位相の導関数から計算されることを可能とする光学計算モデル用いてシステムを予め較正することにより、画像の各点における位相の導関数を、これらの局所位相変動を生じさせるグレージングパネルの欠陥の光出力Piに連結することが可能である。光出力を決定しかつこれをしきい値と比較すれば、欠陥を定量化することが可能である。
【0074】
変形例として、位相導関数はむしろ、同じく欠陥の規模を表す歪の幅を与える局所較正幅と比較されることが可能である。
【0075】
欠陥を定量化すれば、実際の使用条件下にあるグレージングパネルの光学的品質を製造ライン上で直に確立することが可能である。
【0076】
結果的に、基板を分析するための本発明による方法は、
前記基板上で透過または反射する狭い二重パターンの参照パターンの一連の画像を、先行技術の場合のように参照パターンをカメラに対して慎重にカップリングする必要なしに、またはプロジェクタおよび大型スクリーンを使用する必要なしにマトリクスカメラを用いて取得することと、
このマトリクス画像から、二重パターンの参照パターンに関連づけられる幾つかのピクセルカラム(例えば、水平参照パターン用に1つと、垂直参照パターン用に5つ)を抽出することと、
グレージングパネルが参照パターンの前を完全に移動した後(またはこの逆)に、再構成のためにこれらのピクセルカラムを処理するための処理ユニットの2つの別々のメモリ(一方は水平の参照パターン専用、もう一方は垂直の参照パターン専用)に、グレージングパネルを介して見られる各参照パターンの完全な画像を積層することと、
デジタル処理によって局所位相を抽出し、これらの位相の導関数を計算し、かつ数学的計算によって(好ましくは、光出力の計算およびしきい値とのその比較を用いて)欠陥の存在を推定すること、にある。
【0077】
最後に、提案している測定装置は、産業ライン上に存在するグレージングパネルの網羅的な検査を、グレージングパネルのサンプリングを行うことなく、グレージングパネルを停止または遅速させることなく、運搬システム上のグレージングパネルの位置を修正することなく、かつ2つの参照パターンを投影するためのシステムを使用することなく可能にする。装置は、既存のものよりはるかに小さい参照パターンの寸法に比べてもまだ小さい面積を使用し、典型的には、本発明の参照パターンのサポートパネルは高さ1.8メートル、幅15cmである。さらに、本発明は、欠陥の二方向的分析のための取得数を制限することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(2)の透明な、または鏡のような表面を分析するための装置(1)であって、測定されるべき基板の表面に面しかつ短い長さと長い長さによるサポート(11)上へ配置される参照パターン(10)と、測定される基板によって歪められる参照パターンの少なくとも1つの画像を取得するためのカメラ(3)と、参照パターンの照明システム(4)と、カメラ(3)へ接続される画像処理/デジタル分析手段(5)とを備え、サポート(11)が矩形形状を有し、かつ参照パターンが二方向性であって、第1の方向に沿って、かつサポートの短い方の長さに沿って存在する、短い長さを横断して周期的である第1のパターン(10a)と、第1のパターンに対して垂直である第2の方向に沿って、かつサポートの長い方の長さに沿って存在する第2のパターン(10b)とからなることと、カメラがマトリクスカメラであることを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
第1のパターンと第2のパターンとは区別可能であり、互いの直近に存在しかつ互いに交わらないことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第2のパターンが矩形の明暗ラインの連なりから形成され、その長い方の寸法がサポートの長い長さに沿って存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
第2のパターンが1つの矩形形ラインから形成され、その長い方の寸法がサポートの長い長さに沿って存在し、このラインが参照パターンの背景に対してコントラストをつけられたカラーを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
第1のパターンおよび/または第2のパターンが、その短い長さに沿って約1mmから1cmまでの幅を有する少なくとも1つのラインを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1のパターンが、交互する明暗ラインの連なりで構成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
参照パターンのサポート(11)が照明システム(4)によってバックライトされるパネルからなることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
サポートが、その測定されるべきグレージングパネルへ向けられた面が白色のプラスチック板のように半透明かつ散乱性であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
照明システム(4)が多くの発光ダイオードから形成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
透過における測定では、基板(2)が参照パターン(10)とカメラ(3)との間に位置合わせされるが、反射における測定では、基板(2)が参照パターン(10)およびカメラ(3)に面して置かれ、カメラが参照パターンと同一平面にあることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
参照パターン(10)または基板(2)が測定の間に移動されることが可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置を用いて基板(2)の透明な、または鏡のような表面を分析する方法であって、基板(2)または参照パターン(10)が1つの変位方向に沿って互いに相対的に移動し、
マトリクスカメラ(3)を用いて、透過または反射における照明された参照パターン(10)の多くの画像を取得することと、
周期的に、カメラによって、一方では周期的な第1のパターンに関連づけられるピクセルのカラムを、かつ他方では第2のパターンに関連づけられるピクセルの幾つかのカラムを空間的に抽出することと、
基板全体の画像を再構成するように、メモリにパターンの各々に関するピクセルカラムを積層することと、
再構成された画像を、分析から欠陥の位置を推定しかつこれを定量化するようにデジタル処理によって分析すること、からなることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504757(P2012−504757A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529600(P2011−529600)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051838
【国際公開番号】WO2010/037958
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】