基板表面の加工方法
【課題】 エッチング溶液の再利用が可能であり、また、不純物の混入による加工表面の汚染を抑制できる、新たな基板表面の加工方法を提供する。
【解決手段】 陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板に接触させて、前記基板表面を加工する。基板の加工は、前記超純水液に前記基板を接触させ、無電界で行ってもよいし、電界を印加して行ってもよい。前記陰イオン交換物質の具体例としては、ポリ-エチレン-ポリ-アミン、陽イオン交換物質の具体例としては、ポリ-スチレン-スルホン酸がそれぞれあげられる。
【解決手段】 陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板に接触させて、前記基板表面を加工する。基板の加工は、前記超純水液に前記基板を接触させ、無電界で行ってもよいし、電界を印加して行ってもよい。前記陰イオン交換物質の具体例としては、ポリ-エチレン-ポリ-アミン、陽イオン交換物質の具体例としては、ポリ-スチレン-スルホン酸がそれぞれあげられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の加工方法にする。
【背景技術】
【0002】
シリコンのウェットエッチング法としては、一般に、2つの方法が知られている(特許文献1〜3参照)。1つ目の方法は、シリコン基板の表面を酸化させてSiO2を形成し、これをマスク材として、フッ酸(HF)によりエッチングする方法であり、2つ目の方法は、シリコン基板を、例えば、水酸化カリウム水溶液(KOH)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール水溶液(EDP)等のアルカリ水溶液に浸漬させ、Si+2OH-+2H2O→SiO(OH)22-+H2という反応経路により、シリコン表面をエッチングする方法である。
【0003】
前者の方法は、エッチング現象が等方性であり、SiO2マスクの内側までエッチングされるため、アスペクト比の高い溝を形成することができないという問題がある。他方、後者の方法は、結晶面(111)のエッチング速度が他の結晶面に比べて遅いため、異方性エッチングとなり、また、アルカリ溶液の濃度によってエッチング速度を変えることができると言われている。しかしながら、これらのアルカリ溶液中に重金属イオンが含まれると、平滑面の形成が困難となり、また、ナトリウムイオン等の金属イオンが含まれると、これらの不純物の混入によって電気特性が劣化するため、半導体等の電子デバイスの加工プロセスとしては採用することができない。また、EDP、TMAH等は、急性毒性物質であるため、作業面、環境面において安全性に問題があり、KOHについても、例えば、高温処理によって蒸発するため、作業上の安全性が問題となっている。
【0004】
また、前述のような従来の方法では、例えば、エッチングに使用した溶液にSiO(OH)22-等のシリコン系イオンが含まれるため、エッチング溶液を再利用ができず、廃液処理が必要となってしまう。
【特許文献1】特開平9−129636号公報
【特許文献2】特開2004‐326083号公報
【特許文献3】特開2004‐288920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、エッチング溶液の再利用が可能であり、また、不純物の混入による加工表面の汚染を抑制できる、新たな基板表面の加工方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板に接触させて、前記基板表面を加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させることによって、前記基板表面をエッチングできることを見出した。そして、この方法によれば、陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を使用するため、これらの物質を含む超純水液が、元来、金属イオン等の不純物を含む場合や、前述のようにエッチングにより生成したSiO(OH)22-等のシリコン系イオンを含む場合であっても、例えば、透析等によって予めこれらの物質を除去することが可能である。このため、従来のような不純物の混入による加工表面の平滑性の問題や電気特性の問題も抑制できる。したがって、優れた電気特性が求められるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの製造にも有用な方法と考えられる。また、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液は、前述のような物質の除去により、再利用が可能であるため、従来のような廃液処理の問題も回避できる。さらに、前述のような物理的に表面を除去する機械を用いた加工等とは異なり、加工表面のダメージが少なく、実用上十分な平滑性が実現できる。
【0008】
なお、本発明においては、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を超純水に分散することによって、水分子が水酸化物イオンと水素イオンに電離され、電離度の高い状態となる。これによって、水酸化物イオンや水素イオンが被加工基板の表面に供給され、これらのイオンと被加工基板表面との間で化学反応が生じ、エッチングが行われると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前述のように、基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質(以下、両者をそれぞれ「イオン交換物質」ともいう)の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させて、前記基板表面を加工することを特徴とする。前記イオン交換物質は、陰イオン交換物質と陽イオン交換物質のいずれか一方でもよいし、両方を併用してもよい。
【0010】
前記基板表面の加工は、例えば、前記超純水液に基板を接触させることによって、無電界状態で行うことができる。また、例えば、前記基板表面の加工速度を促進できることから、前記超純水液に基板を接触させて、さらに電界を印加してもよい。
【0011】
前記イオン交換物質の分子量(重量平均分子量)は、特に制限されずい、低分子でも高分子でもよい。具体例として、その下限は、特に制限されないが、例えば、100以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは500以上であり、特に好ましくは、10,000以上である。また、分子量の上限も特に制限されない。実用上、後述するような透析を考慮すると、その分子量は、例えば、透析膜の分画分子量に対して10倍〜100倍であることが特に好ましい。
【0012】
また、前記イオン交換物質の粒径(平均粒径)は、特に制限されないが、例えば、0.7nm以上であり、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは1.2nm以上であり、特に好ましくは、3.3nm以上である。また、その上限も特に制限されず、例えば、10mm以下であり、好ましくは、2mm以下、より好ましくは、5μm以下である。
【0013】
前記イオン交換物質は、イオン伝導性物質であることが好ましい。前記イオン交換物質の種類は、特に制限されないが、陰イオン交換物質の陰イオン交換基としては、例えば、アミノ基;3級アンモニウム基、4級アンモニウム基、2級アンモニウム基、1級アンモニウム基等のアンモニウム基;ピリジン、グルカミン、ポリアミン等があげられる。また、陽イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、CH2SO3‐H+、イミノジ酢酸基、アミノリン酸基、リン酸基等があげられる。陰イオン交換物質の具体例としては、ポリ-エチレン-ポリ-アミン、ポリアミン、スペルミン、スペルミジン、プトレスシン等があげられ、陽イオン交換物質の具体例としては、ポリ-スチレン-スルホン酸等があげられる。なお、イオン交換物質は、これらには限定されず、イオン交換能を有する物質であれば使用可能であり、また、一種類でもよいし二種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記陰イオン交換物質を含む超純水液は、そのpHが、例えば、7〜14である。また、陽イオン交換物質を含む超純水液は、そのpHが、例えば、1〜7である。
【0015】
本発明は、イオン交換物質を含む超純水液に基板を接触するのに先立って、前記陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を透析またはろ過する工程を含むことが好ましい。これによって、前記超純水液に含まれる不純物を十分に除去できるため、例えば、より一層平滑性にすぐれた加工面を得ることが可能となる。透析またはろ過に使用する透析膜またはろ過膜の分画分子量は、特に制限されず、除去したい不純物の大きさや使用するイオン交換物質の大きさに応じて適宜決定できる。前記分画分子量は、通常、不純物を外部に透過し、且つ、イオン交換物質を透過させない分画分子量であり、例えば、イオン交換物質の分子量の1倍以下、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/10〜1/100倍である。
【0016】
本発明によって表面加工できる基板の種類は、特に制限されず、例えば、導電性材料基板があげられ、例えば、n型シリコン基板やp型シリコン基板等のシリコン基板;チタン、鉄、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銅、ゲルマニウム等の各種金属基板;SUSやジェラルミン等の合金基板;導電性高分子、SiC、GaN等に代表されるワイドバンドギャップ半導体等があげられる。基板の種類とイオン交換物質との組合せは特に制限されないが、前記シリコン基板、SiC基板、GaN基板等には、例えば、陰イオン交換物質を使用することが好ましい。
【0017】
以下に、本発明の加工方法の具体例について説明する。なお、本発明は、前述のようなイオン交換物質を含む超純水液を使用する以外は、何ら制限されず、以下の具体例には限定されない。
【0018】
まず、イオン交換物質を酸やアルカリで処理する。市販のイオン交換物質は、一般に、陰イオン交換物質であれば、塩素イオン(Cl-)等、陽イオン交換物質であれば、ナトリウムイオン(Na+)等が、それぞれカウンターイオンとして結合している。このため、陰イオン交換物質は、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで処理し、不純物となるCl-を解離させて水酸化物イオン(OH-)を結合させ、陽イオン交換物質は、例えば、硫酸や塩酸等の酸で処理し、不純物となるNa+を解離させて水素イオン(H+)を結合させる。添加するアルカリや酸の量は、特に制限されないが、例えば、少なくともイオン交換物質におけるイオン交換基に相当する量である。
【0019】
そして、解離したイオンや過剰の酸・アルカリ、イオン交換物質に元来含まれていた不純物等を除去するために、イオン交換物質を透析またはろ過に供する。透析膜またはろ過膜としては、前述のような分画分子量のものが使用でき、その材質等は何ら制限されず、従来公知のものが使用できる。
【0020】
透析液としては、超純水が好ましい。透析の条件(例えば、透析回数、1回当たりの透析液量等)は、特に制限されず、前記イオン交換物質の体積や、これに元来含まれる不純物量等に応じて適宜決定できる。なお、不純物等の除去程度は、例えば、透析後の透析液をICP-MS(Inductively Coupled Plasma −Mass Spectroscopy)等で分析することによって確認できる。また、透析は、透析液を攪拌しながら行うことが好ましい。
【0021】
つぎに、透析後またはろ過後(以下、同様)のイオン交換物質を用いて基板表面のエッチング処理を行う。本発明において、エッチング処理は、前述のように無電界状態で行ってもよいし、電界を印加した状態で行ってもよい。
【0022】
無電界状態の場合は、例えば、加工する基板を、透析後のイオン交換物質を含む超純水液に接触させればよい。これによって、前述のように水が水酸化物イオンと水素イオンとに分解され、水酸化物イオンまたは水素イオンもしくはその両方と基板表面とが反応してエッチングが行われる。
【0023】
また、電界を印加する場合は、調製した透析後のイオン交換物質を含む超純水液に接触させ、前記基板と電極との間に電圧を印加すればよい。このように電界を印加することによって、さらに加工速度を促進することができる。前記電極は、例えば、陽極、陰極のいずれでもよく、加工する基板の種類に応じて適宜決定でき、また、加工基板も、その種類に応じて、例えば、陽極、陰極として機能することができる。
【0024】
電極としては、特に制限されず、白金電極等の従来公知の電極が使用できる。また、印加条件は、特に制限されず、電圧は、例えば、5〜100Vであり、電極と基板との間の距離は、例えば、100〜1000μmである。本発明の加工方法によれば、例えば、前記条件における深さ方向のエッチング速度は、例えば、0.2nm/min〜3nm/minである。
【0025】
エッチングに使用する装置の一例を図1の断面図に示す。同図に示す装置は、被加工基板1、中空の電極2、イオン交換物質を含む超純水液3を入れる加工槽4、および、パイプ5を備える。加工槽4内には、被加工基板1が配置され、加工槽4の上部に中空の電極2が配置されている。中空の電極2は、回転可能な固定部材7に固定され、固定部材7を介してパイプ5と連通している。そして、固定部材7の回転により、電極2を回転させることができる。また、パイプ5の途中にはポンプ6が配置されている。被加工基板1は電極を兼ねており、また、被加工基板1と電極2との間には、陰極および陽極それぞれのバイアスを加えることもできる。
【0026】
まず、加工槽4内部に超純水液3を注入し、被加工基板1を超純水液液3中に浸漬させ、電極2の一端を加工槽4内の超純水液3と接触させる。そして、ポンプ6を駆動させて、加工槽4内から超純水液3を排出し、パイプ5を通じて、電極2の中空部分から加工槽4に超純水液3を循環させる。これと同時に、電極2を回転させ、被加工基板1と電極2との間に電界を印加する。印加によって超純水液中の水が水酸化物イオンと水素イオンとに分解され、且つ、前述の循環によって電極2を通過した電解液(超純水液3)が被加工基板1表面に吹き付けられ、エッチングが行われる。ポンプの制御によって、超純水液3の流れ(流量)をコントロールできる。超純水液3に浸漬した被加工基板1表面にさらに吹き付けられる超純水液3の流量は、特に制限されず、電極2の回転速度も何ら制限されない。
【0027】
前述のようなイオン交換物質を含む超純水液を使用する以外は、従来公知のリソグラフィー技術が採用できる。例えば、エッチング処理においてマスク材を使用してもよく、その場合、マスク材の種類は特に制限されず、例えば、マスク材自体が前記超純水液中で(無電界状態もしくは電界の印加状態)エッチングされないものがあげられる。具体例としては、被加工基板が、シリコン基板やSiC基板、アルミニウム基板の場合、例えば、それらの酸化膜(例えば、SiO2、Al2O3)があげられる。
【0028】
基板の表面加工に使用した前記超純水液は、表面加工の結果、前述のように、例えば、シリコン系イオン等を含むと考えられる。しかしながら、本発明の場合、表面加工前と同様に、使用済みのイオン交換物質を含む超純水を透析することによって、シリコン系イオン等の不純物を除去できるため、基板の表面加工に再利用することが可能であり、排液処理の必要がない。
【0029】
なお、本発明の表面加工方法は、従来のエッチング方法にかえて、MEMSデバイスの製造等、各種分野で適用できる。
【実施例1】
【0030】
(1)PA分散液の調製
陰イオン交換物質として、分子量25万のポリ-エチレン-ポリ-アミン(以下、「PA」という)を使用した。まず、Cl-がカウンターイオンとして結合している1×10‐5mol(イオン交換基換算2.5×10-2mol)のPA−Cl(商品名アコフロックC581;三井化学アクアポリマー社製)を、過剰のNaOH(0.13mol)を含む水溶液で処理することによって、PAの陰イオン交換基に結合しているCl-イオンを除去し、陰イオン交換基のカウンターイオンとしてOH-を結合させた。そして、PAに元来含まれる不純物、処理によって発生したNaCl、余剰のNaOH等を除去するために、分画分子量12,000の透析膜(商品名Spectra/Por;Spectrum Laboratories社製)を用いて、透析を15回行った。透析には、1回あたり2Lの超純水(18.25MΩcm)を使用し、1回の処理時間を約2.9時間とした。合計15回の透析を行ったPA分散液について、pH試験紙を用いてpHを測定した結果、約13程度であった。
【0031】
(2)電流電圧特性の評価
つぎに、15回の透析後のPA分散液を超純水で希釈して、PA濃度を6.7×10-5M(イオン交換基換算1.6×10-1M)に調整し、平行平板型の実験装置を用いて電流電圧特性を調べた。なお、平行平板型装置は、陰極および陽極として白金電極を使用し、前記両電極の一端をそれぞれ前記PA分散液に浸漬させ、両電極間に電界を印加することによって前記特性を測定した。その結果を図2のグラフに示す。同図から、電極間に電流が流れていることが確認できた。
【0032】
さらに、図2に示すPA分散液の電解電流の結果が、前記PA分散液に含まれる不純物イオンによるか否かを確認した。具体的には、15回目の透析液に含まれる金属イオン濃度を、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma −Mass Spectroscopy)により、陰イオン濃度を、イオンクロマトグラフ(商品名PMS2000:横河アナリティカルシステムズ社製、以下同様)により、それぞれ測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
そして、得られた結果を下記式(A.J.Bard, L.R.Faulkner, Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, p96, John Wiley & Sons, New York(1980)参照)に代入し、不純物イオンの影響により流れる電流を見積もった。この結果を前記表1にあわせて示す。下記式において、Iは、電流値、nは、イオンの価数、Aは、有効電極面積(3cm2)、uは、移動度(R.A.Robinson, R.H.Stoles, Electrolyte Solutions, 2nd ed., p463, Butterworths (1959)参照)、Fは、ファラディー定数(96,500C/mol)、cは、イオン濃度(測定値)、Vは、印加電圧(90V)、dは、電極間距離(9mm)である。
【0035】
I=n・Au・Fc・V/d
【0036】
前記式(1)を用いた見積もりの結果、前記表1に示すように、不純物イオンによる電流密度は10μA/cm2以下となった。このため、図2で得られた電解電流は、PA分散液に含まれる不純物イオンが原因ではなく、PAのイオン交換基の水分解効果によることが確認された。
【0037】
(3)シリコンパターニングウェハの加工
透析後のPA分散液を用いて、シリコン基板の加工を行った。
【0038】
まず、n型シリコンウェハを超純水で10分間洗浄し、98重量%硫酸と50重量%過酸化水素とを体積比4:1で混合した混合液に10分間浸漬した後、超純水で10分間洗浄した。そして、0.5体積%のHF水溶液に2分間浸漬した後、超純水で洗浄することによって、ウェハ上に100nmの酸化膜(SiO2)を形成した。続いて、ウェハ上にフォトレジストをスピンコーティングし、露光によりパターニングを行った。ウェハを超純水で10分間洗浄して、露光していない領域のフォトレジストを除去し、ウェハにおけるフォトレジストが除去された領域の酸化膜を、バッファードフッ酸(BHF)を用いてエッチングし、超純水で10分間洗浄した。そして、ウェハをアセトンに浸漬して残存するフォトレジストを除去した後、超純水で10分間洗浄し、さらに、0.5重量%のHF水溶液に1分間浸漬してから、超純水で10分間洗浄した。
【0039】
ウェハ上にはパターニングされた100nmの酸化膜が残っているため、この酸化膜をマスクとし、酸化膜が存在しないシリコンが露出した領域を、前述のPA分散液を用いて、電気化学的にエッチングした。なお、透析後のPA溶液は、PA濃度が1.12×10-5M(イオン交換基換算2.7×10-2M)となるように超純水で希釈して、シリコン基板の加工に使用した。
【0040】
このPA分散液を用いたエッチングには、前述の図1に示す装置を使用した。前記装置において、加工電極(陽極)としては、外径φ4mm、内径φ3mmのチューブ型(中空型)のPt電極を使用し、前記電極の中空部分からPA溶液が吐出する構成とし、前記ウェハを陰極としてエッチングを行った。前記装置において、PA溶液が通過する領域は全て、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製であり、PA溶液中への金属イオンの混入を防止した。加工条件は、印加電圧40V、電極回転速度60rpm、PA分散液の吐出流量0.5L/min、電極間距離150μm、加工時間10,000秒とした。なお、この条件により流れた電流は、11mA〜14mAであった。
【0041】
エッチング後のウェハの表面を観察するため、加工後に、濡れ性であったウェハサンプルを0.5重量%のHF水溶液に浸漬し、全面が疎水性になるまで放置した(約120分)。これによって、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡(商品名New View 200CHR:Zygo社製、以下同様)での表面観察において、マスクとして用いた酸化膜の影響を無視できるようになった。その結果、PA分散液を用いたエッチング処理を行った表面が鏡面であることを確認できた。
【0042】
PA分散液による加工後のウェハ表面について、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による観察結果を図3および図4に示す。図3において、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフ、図4において、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。これらの結果から、最も深い部分(深さ34・182nm)の加工速度は0.21nm/minであることがわかった。なお、加工速度とは、加工量(深さ)を加工時間で割った値である。
【0043】
さらに、加工後のウェハにおける段差部分を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)で観察した。この結果を図5に示す。なお、加工領域と未加工領域の表面粗さの解析は、4.3μm×4.3μmの領域で行った。その結果、加工領域では中心線平均粗さRa=0.1821nm、PV(peak to valley)=1.146nmであり、未加工領域では、中心線平均粗さRa=0.1103nm、PV=0.5369nmであった。このように、本実施例の方法により、実用上、十分な表面粗さの加工表面を得ることができた。
【実施例2】
【0044】
p型シリコンウェハを使用した以外は、前記実施例1と同様にしてPA分散液を用いたエッチングを行った。なお、エッチングは、二種類の形状でおこなった。加工後のウェハ表面について、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による観察結果を、図6〜図9にそれぞれ示す。これらの図において、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜厚を示すグラフ、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。このように、本実施例の方法により、実用上、十分な表面粗さの加工表面を得ることができた。
【実施例3】
【0045】
(1)PSS分散液の調製
陽イオン交換物質として、分子量100万のポリ-スチレン-スルホン酸(以下、「PSS」という)を使用した。まず、Na+がカウンターイオンとして結合している6.5×10‐6mol(イオン交換基換算3.5×10-2mol)のPSS−Na(商品名Alfa Aesar;A Johnson Matthey Company社製)に硫酸(6.5×10-2mol)を加えて、PSSの陽イオン交換基に結合しているNa+イオンを除去し、陽イオン交換基のカウンターイオンとしてH+を結合させた。そして、PSSに元来含まれる不純物、処理によって発生したNa2SO4、余剰のH2SO4等を除去するために、分画分子量12,000の透析膜(商品名Spectra/Por;Spectrum Laboratories社製)を用いて、透析を14回行った。透析には、1回あたり2Lの超純水(18.25MΩcm)を使用し、1回の処理時間を1.8時間とした。合計14回の透析を行ったPSS分散液について、pH試験紙を用いてpHを測定した結果、約2程度であった。
【0046】
(2)電流電圧特性の評価
つぎに、14回の透析後のPSS分散液を超純水で希釈して、PSS濃度を2.2×10-5M(イオン交換基換算1.0×10-1M)に調整し、前記実施例1と同様にして電流電圧特性を調べた。その結果を図10に示す。同図から、電極間に電流が流れていることが確認できた。
【0047】
さらに、図10に示すPSS分散液の電解電流の結果が、前記PA分散液に含まれる不純物イオンによるか否かを確認した。具体的には、14回目の透析液に含まれる金属イオン濃度を、ICP-MSにより、陰イオン濃度をイオンクロマトグラフにより、それぞれ測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
そして、得られた結果を下記式(A.J.Bard, L.R.Faulkner, Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, p96, John Wiley & Sons, New York(1980)に代入し、不純物イオンの影響により流れる電流を見積もった。この結果を前記表1にあわせて示す。下記式において、Iは、電流、nは、イオンの価数、Aは、有効電極面積(3cm2)、uは、移動度(R.A.Robinson, R.H.Stoles, Electrolyte Solutions, 2nd ed., p463, Butterworths (1959)参照)、Fは、ファラディー定数(96,500C/mol)、cは、イオン濃度(測定値)、Vは、印加電圧(30V)、dは、電極間距離(9mm)である。
【0050】
I=n・Au・Fc・V/d
【0051】
前記式(2)を用いた見積もりの結果、前記表2に示すように、不純物イオンによる電流密度は60μA/cm2以下となった。このため、図10で得られた電解電流は、PSS分散液に含まれる不純物イオンが原因ではなく、PSSのイオン交換基の水分解効果によることが確認された。
【0052】
(3)シリコンパターニングウェハの加工
透析後のPSS分散液を用いて、シリコン基板の加工を行った。PA分散液に代えて、透析後のPA分散液を超純水で希釈して、PA濃度を2.9×10-6M(イオン交換基換算1.4×10-2M)に調整したものを使用し、加工時間を1800秒とした以外は、前記実施例1と同様にして行った。なお、電極として、外径(直径)4mm、内径(直径)3mmのリング状Pt電極を使用した。この条件により流れた電流は、平均して35mAであった。
【0053】
そして、PSS分散液による加工後のウェハ表面を、前記実施例1と同様にして観察した。マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による表面の観察結果を図11に示す。同図(a)は、ウェハにおける5.2mm×3.9mmの領域の画像であり、(b)は、前記(a)の中心である258μm×194μmの領域の画像、(c)は、前記(a)および(b)の中心である64μm×48μmの領域の画像である。この結果、同図(b)では、中心線平均粗さRaが0.282nm、RMS0.359nm、PV3.372nmであった。同図(c)では、中心線平均粗さRaが0.136nm、RMS0.171nm、PV1.651nmであった。これらの図8〜10から、電極形状が転写されたようなリング状の加工痕を観察でき、また、その平滑性も実用上十分であった。電極形状が転写されることから、ナノインプリント技術に適用できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
このように、本発明によれば、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板に接触ることにより、前記基板表面をエッチングできる。そして、この方法によれば、陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を使用するため、これらの物質が含まれる超純水液が不純物を含む場合であっても、例えば、透析等によって予めこれらの物質を除去することが可能である。このため、従来のような不純物の混入による加工表面の平滑性の問題や電気特性の問題も抑制でき、例えば、優れた電気特性が求められるMEMSデバイスの製造にも有用と考えられる。また、前記超純水液は、前述のような物質の除去により、再利用が可能であるため、従来のような廃液処理の問題も回避できる。さらに、物理的に表面を除去する機械を用いた加工等とは異なり、加工表面のダメージがより少なく、実用上十分な平滑性が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の加工方法を実施するための装置の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例におけるPA分散液の電流電圧特性を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図5】図5は、本発明の前記実施例における加工後のウェハのAFM画像である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図8】図6は、本発明のさらにその他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図10】図10は、本発明のさらにその他の実施例におけるPSS分散液の電流電圧特性を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のさらにその他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記(a)の中心である258μm×194μmの領域の画像、(c)は、前記(a)および(b)の中心である64μm×48μmの領域の画像である。
【符号の説明】
【0056】
1 陰極(被加工基板)
2 陽極
3 イオン交換物質を含む超純水液
4 加工槽
5 パイプ
6 ポンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の加工方法にする。
【背景技術】
【0002】
シリコンのウェットエッチング法としては、一般に、2つの方法が知られている(特許文献1〜3参照)。1つ目の方法は、シリコン基板の表面を酸化させてSiO2を形成し、これをマスク材として、フッ酸(HF)によりエッチングする方法であり、2つ目の方法は、シリコン基板を、例えば、水酸化カリウム水溶液(KOH)、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(TMAH)、エチレンジアミンピロカテコール水溶液(EDP)等のアルカリ水溶液に浸漬させ、Si+2OH-+2H2O→SiO(OH)22-+H2という反応経路により、シリコン表面をエッチングする方法である。
【0003】
前者の方法は、エッチング現象が等方性であり、SiO2マスクの内側までエッチングされるため、アスペクト比の高い溝を形成することができないという問題がある。他方、後者の方法は、結晶面(111)のエッチング速度が他の結晶面に比べて遅いため、異方性エッチングとなり、また、アルカリ溶液の濃度によってエッチング速度を変えることができると言われている。しかしながら、これらのアルカリ溶液中に重金属イオンが含まれると、平滑面の形成が困難となり、また、ナトリウムイオン等の金属イオンが含まれると、これらの不純物の混入によって電気特性が劣化するため、半導体等の電子デバイスの加工プロセスとしては採用することができない。また、EDP、TMAH等は、急性毒性物質であるため、作業面、環境面において安全性に問題があり、KOHについても、例えば、高温処理によって蒸発するため、作業上の安全性が問題となっている。
【0004】
また、前述のような従来の方法では、例えば、エッチングに使用した溶液にSiO(OH)22-等のシリコン系イオンが含まれるため、エッチング溶液を再利用ができず、廃液処理が必要となってしまう。
【特許文献1】特開平9−129636号公報
【特許文献2】特開2004‐326083号公報
【特許文献3】特開2004‐288920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、エッチング溶液の再利用が可能であり、また、不純物の混入による加工表面の汚染を抑制できる、新たな基板表面の加工方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板に接触させて、前記基板表面を加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させることによって、前記基板表面をエッチングできることを見出した。そして、この方法によれば、陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を使用するため、これらの物質を含む超純水液が、元来、金属イオン等の不純物を含む場合や、前述のようにエッチングにより生成したSiO(OH)22-等のシリコン系イオンを含む場合であっても、例えば、透析等によって予めこれらの物質を除去することが可能である。このため、従来のような不純物の混入による加工表面の平滑性の問題や電気特性の問題も抑制できる。したがって、優れた電気特性が求められるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスの製造にも有用な方法と考えられる。また、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液は、前述のような物質の除去により、再利用が可能であるため、従来のような廃液処理の問題も回避できる。さらに、前述のような物理的に表面を除去する機械を用いた加工等とは異なり、加工表面のダメージが少なく、実用上十分な平滑性が実現できる。
【0008】
なお、本発明においては、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を超純水に分散することによって、水分子が水酸化物イオンと水素イオンに電離され、電離度の高い状態となる。これによって、水酸化物イオンや水素イオンが被加工基板の表面に供給され、これらのイオンと被加工基板表面との間で化学反応が生じ、エッチングが行われると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、前述のように、基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質(以下、両者をそれぞれ「イオン交換物質」ともいう)の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させて、前記基板表面を加工することを特徴とする。前記イオン交換物質は、陰イオン交換物質と陽イオン交換物質のいずれか一方でもよいし、両方を併用してもよい。
【0010】
前記基板表面の加工は、例えば、前記超純水液に基板を接触させることによって、無電界状態で行うことができる。また、例えば、前記基板表面の加工速度を促進できることから、前記超純水液に基板を接触させて、さらに電界を印加してもよい。
【0011】
前記イオン交換物質の分子量(重量平均分子量)は、特に制限されずい、低分子でも高分子でもよい。具体例として、その下限は、特に制限されないが、例えば、100以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは500以上であり、特に好ましくは、10,000以上である。また、分子量の上限も特に制限されない。実用上、後述するような透析を考慮すると、その分子量は、例えば、透析膜の分画分子量に対して10倍〜100倍であることが特に好ましい。
【0012】
また、前記イオン交換物質の粒径(平均粒径)は、特に制限されないが、例えば、0.7nm以上であり、好ましくは1nm以上であり、より好ましくは1.2nm以上であり、特に好ましくは、3.3nm以上である。また、その上限も特に制限されず、例えば、10mm以下であり、好ましくは、2mm以下、より好ましくは、5μm以下である。
【0013】
前記イオン交換物質は、イオン伝導性物質であることが好ましい。前記イオン交換物質の種類は、特に制限されないが、陰イオン交換物質の陰イオン交換基としては、例えば、アミノ基;3級アンモニウム基、4級アンモニウム基、2級アンモニウム基、1級アンモニウム基等のアンモニウム基;ピリジン、グルカミン、ポリアミン等があげられる。また、陽イオン交換基としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、CH2SO3‐H+、イミノジ酢酸基、アミノリン酸基、リン酸基等があげられる。陰イオン交換物質の具体例としては、ポリ-エチレン-ポリ-アミン、ポリアミン、スペルミン、スペルミジン、プトレスシン等があげられ、陽イオン交換物質の具体例としては、ポリ-スチレン-スルホン酸等があげられる。なお、イオン交換物質は、これらには限定されず、イオン交換能を有する物質であれば使用可能であり、また、一種類でもよいし二種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記陰イオン交換物質を含む超純水液は、そのpHが、例えば、7〜14である。また、陽イオン交換物質を含む超純水液は、そのpHが、例えば、1〜7である。
【0015】
本発明は、イオン交換物質を含む超純水液に基板を接触するのに先立って、前記陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を透析またはろ過する工程を含むことが好ましい。これによって、前記超純水液に含まれる不純物を十分に除去できるため、例えば、より一層平滑性にすぐれた加工面を得ることが可能となる。透析またはろ過に使用する透析膜またはろ過膜の分画分子量は、特に制限されず、除去したい不純物の大きさや使用するイオン交換物質の大きさに応じて適宜決定できる。前記分画分子量は、通常、不純物を外部に透過し、且つ、イオン交換物質を透過させない分画分子量であり、例えば、イオン交換物質の分子量の1倍以下、好ましくは1/10以下、より好ましくは1/10〜1/100倍である。
【0016】
本発明によって表面加工できる基板の種類は、特に制限されず、例えば、導電性材料基板があげられ、例えば、n型シリコン基板やp型シリコン基板等のシリコン基板;チタン、鉄、アルミニウム、タングステン、モリブデン、銅、ゲルマニウム等の各種金属基板;SUSやジェラルミン等の合金基板;導電性高分子、SiC、GaN等に代表されるワイドバンドギャップ半導体等があげられる。基板の種類とイオン交換物質との組合せは特に制限されないが、前記シリコン基板、SiC基板、GaN基板等には、例えば、陰イオン交換物質を使用することが好ましい。
【0017】
以下に、本発明の加工方法の具体例について説明する。なお、本発明は、前述のようなイオン交換物質を含む超純水液を使用する以外は、何ら制限されず、以下の具体例には限定されない。
【0018】
まず、イオン交換物質を酸やアルカリで処理する。市販のイオン交換物質は、一般に、陰イオン交換物質であれば、塩素イオン(Cl-)等、陽イオン交換物質であれば、ナトリウムイオン(Na+)等が、それぞれカウンターイオンとして結合している。このため、陰イオン交換物質は、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで処理し、不純物となるCl-を解離させて水酸化物イオン(OH-)を結合させ、陽イオン交換物質は、例えば、硫酸や塩酸等の酸で処理し、不純物となるNa+を解離させて水素イオン(H+)を結合させる。添加するアルカリや酸の量は、特に制限されないが、例えば、少なくともイオン交換物質におけるイオン交換基に相当する量である。
【0019】
そして、解離したイオンや過剰の酸・アルカリ、イオン交換物質に元来含まれていた不純物等を除去するために、イオン交換物質を透析またはろ過に供する。透析膜またはろ過膜としては、前述のような分画分子量のものが使用でき、その材質等は何ら制限されず、従来公知のものが使用できる。
【0020】
透析液としては、超純水が好ましい。透析の条件(例えば、透析回数、1回当たりの透析液量等)は、特に制限されず、前記イオン交換物質の体積や、これに元来含まれる不純物量等に応じて適宜決定できる。なお、不純物等の除去程度は、例えば、透析後の透析液をICP-MS(Inductively Coupled Plasma −Mass Spectroscopy)等で分析することによって確認できる。また、透析は、透析液を攪拌しながら行うことが好ましい。
【0021】
つぎに、透析後またはろ過後(以下、同様)のイオン交換物質を用いて基板表面のエッチング処理を行う。本発明において、エッチング処理は、前述のように無電界状態で行ってもよいし、電界を印加した状態で行ってもよい。
【0022】
無電界状態の場合は、例えば、加工する基板を、透析後のイオン交換物質を含む超純水液に接触させればよい。これによって、前述のように水が水酸化物イオンと水素イオンとに分解され、水酸化物イオンまたは水素イオンもしくはその両方と基板表面とが反応してエッチングが行われる。
【0023】
また、電界を印加する場合は、調製した透析後のイオン交換物質を含む超純水液に接触させ、前記基板と電極との間に電圧を印加すればよい。このように電界を印加することによって、さらに加工速度を促進することができる。前記電極は、例えば、陽極、陰極のいずれでもよく、加工する基板の種類に応じて適宜決定でき、また、加工基板も、その種類に応じて、例えば、陽極、陰極として機能することができる。
【0024】
電極としては、特に制限されず、白金電極等の従来公知の電極が使用できる。また、印加条件は、特に制限されず、電圧は、例えば、5〜100Vであり、電極と基板との間の距離は、例えば、100〜1000μmである。本発明の加工方法によれば、例えば、前記条件における深さ方向のエッチング速度は、例えば、0.2nm/min〜3nm/minである。
【0025】
エッチングに使用する装置の一例を図1の断面図に示す。同図に示す装置は、被加工基板1、中空の電極2、イオン交換物質を含む超純水液3を入れる加工槽4、および、パイプ5を備える。加工槽4内には、被加工基板1が配置され、加工槽4の上部に中空の電極2が配置されている。中空の電極2は、回転可能な固定部材7に固定され、固定部材7を介してパイプ5と連通している。そして、固定部材7の回転により、電極2を回転させることができる。また、パイプ5の途中にはポンプ6が配置されている。被加工基板1は電極を兼ねており、また、被加工基板1と電極2との間には、陰極および陽極それぞれのバイアスを加えることもできる。
【0026】
まず、加工槽4内部に超純水液3を注入し、被加工基板1を超純水液液3中に浸漬させ、電極2の一端を加工槽4内の超純水液3と接触させる。そして、ポンプ6を駆動させて、加工槽4内から超純水液3を排出し、パイプ5を通じて、電極2の中空部分から加工槽4に超純水液3を循環させる。これと同時に、電極2を回転させ、被加工基板1と電極2との間に電界を印加する。印加によって超純水液中の水が水酸化物イオンと水素イオンとに分解され、且つ、前述の循環によって電極2を通過した電解液(超純水液3)が被加工基板1表面に吹き付けられ、エッチングが行われる。ポンプの制御によって、超純水液3の流れ(流量)をコントロールできる。超純水液3に浸漬した被加工基板1表面にさらに吹き付けられる超純水液3の流量は、特に制限されず、電極2の回転速度も何ら制限されない。
【0027】
前述のようなイオン交換物質を含む超純水液を使用する以外は、従来公知のリソグラフィー技術が採用できる。例えば、エッチング処理においてマスク材を使用してもよく、その場合、マスク材の種類は特に制限されず、例えば、マスク材自体が前記超純水液中で(無電界状態もしくは電界の印加状態)エッチングされないものがあげられる。具体例としては、被加工基板が、シリコン基板やSiC基板、アルミニウム基板の場合、例えば、それらの酸化膜(例えば、SiO2、Al2O3)があげられる。
【0028】
基板の表面加工に使用した前記超純水液は、表面加工の結果、前述のように、例えば、シリコン系イオン等を含むと考えられる。しかしながら、本発明の場合、表面加工前と同様に、使用済みのイオン交換物質を含む超純水を透析することによって、シリコン系イオン等の不純物を除去できるため、基板の表面加工に再利用することが可能であり、排液処理の必要がない。
【0029】
なお、本発明の表面加工方法は、従来のエッチング方法にかえて、MEMSデバイスの製造等、各種分野で適用できる。
【実施例1】
【0030】
(1)PA分散液の調製
陰イオン交換物質として、分子量25万のポリ-エチレン-ポリ-アミン(以下、「PA」という)を使用した。まず、Cl-がカウンターイオンとして結合している1×10‐5mol(イオン交換基換算2.5×10-2mol)のPA−Cl(商品名アコフロックC581;三井化学アクアポリマー社製)を、過剰のNaOH(0.13mol)を含む水溶液で処理することによって、PAの陰イオン交換基に結合しているCl-イオンを除去し、陰イオン交換基のカウンターイオンとしてOH-を結合させた。そして、PAに元来含まれる不純物、処理によって発生したNaCl、余剰のNaOH等を除去するために、分画分子量12,000の透析膜(商品名Spectra/Por;Spectrum Laboratories社製)を用いて、透析を15回行った。透析には、1回あたり2Lの超純水(18.25MΩcm)を使用し、1回の処理時間を約2.9時間とした。合計15回の透析を行ったPA分散液について、pH試験紙を用いてpHを測定した結果、約13程度であった。
【0031】
(2)電流電圧特性の評価
つぎに、15回の透析後のPA分散液を超純水で希釈して、PA濃度を6.7×10-5M(イオン交換基換算1.6×10-1M)に調整し、平行平板型の実験装置を用いて電流電圧特性を調べた。なお、平行平板型装置は、陰極および陽極として白金電極を使用し、前記両電極の一端をそれぞれ前記PA分散液に浸漬させ、両電極間に電界を印加することによって前記特性を測定した。その結果を図2のグラフに示す。同図から、電極間に電流が流れていることが確認できた。
【0032】
さらに、図2に示すPA分散液の電解電流の結果が、前記PA分散液に含まれる不純物イオンによるか否かを確認した。具体的には、15回目の透析液に含まれる金属イオン濃度を、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma −Mass Spectroscopy)により、陰イオン濃度を、イオンクロマトグラフ(商品名PMS2000:横河アナリティカルシステムズ社製、以下同様)により、それぞれ測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
そして、得られた結果を下記式(A.J.Bard, L.R.Faulkner, Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, p96, John Wiley & Sons, New York(1980)参照)に代入し、不純物イオンの影響により流れる電流を見積もった。この結果を前記表1にあわせて示す。下記式において、Iは、電流値、nは、イオンの価数、Aは、有効電極面積(3cm2)、uは、移動度(R.A.Robinson, R.H.Stoles, Electrolyte Solutions, 2nd ed., p463, Butterworths (1959)参照)、Fは、ファラディー定数(96,500C/mol)、cは、イオン濃度(測定値)、Vは、印加電圧(90V)、dは、電極間距離(9mm)である。
【0035】
I=n・Au・Fc・V/d
【0036】
前記式(1)を用いた見積もりの結果、前記表1に示すように、不純物イオンによる電流密度は10μA/cm2以下となった。このため、図2で得られた電解電流は、PA分散液に含まれる不純物イオンが原因ではなく、PAのイオン交換基の水分解効果によることが確認された。
【0037】
(3)シリコンパターニングウェハの加工
透析後のPA分散液を用いて、シリコン基板の加工を行った。
【0038】
まず、n型シリコンウェハを超純水で10分間洗浄し、98重量%硫酸と50重量%過酸化水素とを体積比4:1で混合した混合液に10分間浸漬した後、超純水で10分間洗浄した。そして、0.5体積%のHF水溶液に2分間浸漬した後、超純水で洗浄することによって、ウェハ上に100nmの酸化膜(SiO2)を形成した。続いて、ウェハ上にフォトレジストをスピンコーティングし、露光によりパターニングを行った。ウェハを超純水で10分間洗浄して、露光していない領域のフォトレジストを除去し、ウェハにおけるフォトレジストが除去された領域の酸化膜を、バッファードフッ酸(BHF)を用いてエッチングし、超純水で10分間洗浄した。そして、ウェハをアセトンに浸漬して残存するフォトレジストを除去した後、超純水で10分間洗浄し、さらに、0.5重量%のHF水溶液に1分間浸漬してから、超純水で10分間洗浄した。
【0039】
ウェハ上にはパターニングされた100nmの酸化膜が残っているため、この酸化膜をマスクとし、酸化膜が存在しないシリコンが露出した領域を、前述のPA分散液を用いて、電気化学的にエッチングした。なお、透析後のPA溶液は、PA濃度が1.12×10-5M(イオン交換基換算2.7×10-2M)となるように超純水で希釈して、シリコン基板の加工に使用した。
【0040】
このPA分散液を用いたエッチングには、前述の図1に示す装置を使用した。前記装置において、加工電極(陽極)としては、外径φ4mm、内径φ3mmのチューブ型(中空型)のPt電極を使用し、前記電極の中空部分からPA溶液が吐出する構成とし、前記ウェハを陰極としてエッチングを行った。前記装置において、PA溶液が通過する領域は全て、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製であり、PA溶液中への金属イオンの混入を防止した。加工条件は、印加電圧40V、電極回転速度60rpm、PA分散液の吐出流量0.5L/min、電極間距離150μm、加工時間10,000秒とした。なお、この条件により流れた電流は、11mA〜14mAであった。
【0041】
エッチング後のウェハの表面を観察するため、加工後に、濡れ性であったウェハサンプルを0.5重量%のHF水溶液に浸漬し、全面が疎水性になるまで放置した(約120分)。これによって、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡(商品名New View 200CHR:Zygo社製、以下同様)での表面観察において、マスクとして用いた酸化膜の影響を無視できるようになった。その結果、PA分散液を用いたエッチング処理を行った表面が鏡面であることを確認できた。
【0042】
PA分散液による加工後のウェハ表面について、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による観察結果を図3および図4に示す。図3において、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフ、図4において、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。これらの結果から、最も深い部分(深さ34・182nm)の加工速度は0.21nm/minであることがわかった。なお、加工速度とは、加工量(深さ)を加工時間で割った値である。
【0043】
さらに、加工後のウェハにおける段差部分を原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)で観察した。この結果を図5に示す。なお、加工領域と未加工領域の表面粗さの解析は、4.3μm×4.3μmの領域で行った。その結果、加工領域では中心線平均粗さRa=0.1821nm、PV(peak to valley)=1.146nmであり、未加工領域では、中心線平均粗さRa=0.1103nm、PV=0.5369nmであった。このように、本実施例の方法により、実用上、十分な表面粗さの加工表面を得ることができた。
【実施例2】
【0044】
p型シリコンウェハを使用した以外は、前記実施例1と同様にしてPA分散液を用いたエッチングを行った。なお、エッチングは、二種類の形状でおこなった。加工後のウェハ表面について、マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による観察結果を、図6〜図9にそれぞれ示す。これらの図において、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜厚を示すグラフ、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。このように、本実施例の方法により、実用上、十分な表面粗さの加工表面を得ることができた。
【実施例3】
【0045】
(1)PSS分散液の調製
陽イオン交換物質として、分子量100万のポリ-スチレン-スルホン酸(以下、「PSS」という)を使用した。まず、Na+がカウンターイオンとして結合している6.5×10‐6mol(イオン交換基換算3.5×10-2mol)のPSS−Na(商品名Alfa Aesar;A Johnson Matthey Company社製)に硫酸(6.5×10-2mol)を加えて、PSSの陽イオン交換基に結合しているNa+イオンを除去し、陽イオン交換基のカウンターイオンとしてH+を結合させた。そして、PSSに元来含まれる不純物、処理によって発生したNa2SO4、余剰のH2SO4等を除去するために、分画分子量12,000の透析膜(商品名Spectra/Por;Spectrum Laboratories社製)を用いて、透析を14回行った。透析には、1回あたり2Lの超純水(18.25MΩcm)を使用し、1回の処理時間を1.8時間とした。合計14回の透析を行ったPSS分散液について、pH試験紙を用いてpHを測定した結果、約2程度であった。
【0046】
(2)電流電圧特性の評価
つぎに、14回の透析後のPSS分散液を超純水で希釈して、PSS濃度を2.2×10-5M(イオン交換基換算1.0×10-1M)に調整し、前記実施例1と同様にして電流電圧特性を調べた。その結果を図10に示す。同図から、電極間に電流が流れていることが確認できた。
【0047】
さらに、図10に示すPSS分散液の電解電流の結果が、前記PA分散液に含まれる不純物イオンによるか否かを確認した。具体的には、14回目の透析液に含まれる金属イオン濃度を、ICP-MSにより、陰イオン濃度をイオンクロマトグラフにより、それぞれ測定した。測定結果を下記表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
そして、得られた結果を下記式(A.J.Bard, L.R.Faulkner, Electrochemical Methods, Fundamentals and Applications, p96, John Wiley & Sons, New York(1980)に代入し、不純物イオンの影響により流れる電流を見積もった。この結果を前記表1にあわせて示す。下記式において、Iは、電流、nは、イオンの価数、Aは、有効電極面積(3cm2)、uは、移動度(R.A.Robinson, R.H.Stoles, Electrolyte Solutions, 2nd ed., p463, Butterworths (1959)参照)、Fは、ファラディー定数(96,500C/mol)、cは、イオン濃度(測定値)、Vは、印加電圧(30V)、dは、電極間距離(9mm)である。
【0050】
I=n・Au・Fc・V/d
【0051】
前記式(2)を用いた見積もりの結果、前記表2に示すように、不純物イオンによる電流密度は60μA/cm2以下となった。このため、図10で得られた電解電流は、PSS分散液に含まれる不純物イオンが原因ではなく、PSSのイオン交換基の水分解効果によることが確認された。
【0052】
(3)シリコンパターニングウェハの加工
透析後のPSS分散液を用いて、シリコン基板の加工を行った。PA分散液に代えて、透析後のPA分散液を超純水で希釈して、PA濃度を2.9×10-6M(イオン交換基換算1.4×10-2M)に調整したものを使用し、加工時間を1800秒とした以外は、前記実施例1と同様にして行った。なお、電極として、外径(直径)4mm、内径(直径)3mmのリング状Pt電極を使用した。この条件により流れた電流は、平均して35mAであった。
【0053】
そして、PSS分散液による加工後のウェハ表面を、前記実施例1と同様にして観察した。マイケルソン型位相シフト干渉顕微鏡による表面の観察結果を図11に示す。同図(a)は、ウェハにおける5.2mm×3.9mmの領域の画像であり、(b)は、前記(a)の中心である258μm×194μmの領域の画像、(c)は、前記(a)および(b)の中心である64μm×48μmの領域の画像である。この結果、同図(b)では、中心線平均粗さRaが0.282nm、RMS0.359nm、PV3.372nmであった。同図(c)では、中心線平均粗さRaが0.136nm、RMS0.171nm、PV1.651nmであった。これらの図8〜10から、電極形状が転写されたようなリング状の加工痕を観察でき、また、その平滑性も実用上十分であった。電極形状が転写されることから、ナノインプリント技術に適用できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
このように、本発明によれば、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板に接触ることにより、前記基板表面をエッチングできる。そして、この方法によれば、陰イオン交換物質や陽イオン交換物質を使用するため、これらの物質が含まれる超純水液が不純物を含む場合であっても、例えば、透析等によって予めこれらの物質を除去することが可能である。このため、従来のような不純物の混入による加工表面の平滑性の問題や電気特性の問題も抑制でき、例えば、優れた電気特性が求められるMEMSデバイスの製造にも有用と考えられる。また、前記超純水液は、前述のような物質の除去により、再利用が可能であるため、従来のような廃液処理の問題も回避できる。さらに、物理的に表面を除去する機械を用いた加工等とは異なり、加工表面のダメージがより少なく、実用上十分な平滑性が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の加工方法を実施するための装置の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例におけるPA分散液の電流電圧特性を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図5】図5は、本発明の前記実施例における加工後のウェハのAFM画像である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図8】図6は、本発明のさらにその他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記ウェハの斜視方向の画像、(c)は、前記(a)における△−▽方向の断面における膜圧を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明の前記実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(d)は、Y方向の高さの微分像の写真、(e)はX方向の高さの微分像の写真である。
【図10】図10は、本発明のさらにその他の実施例におけるPSS分散液の電流電圧特性を示すグラフである。
【図11】図11は、本発明のさらにその他の実施例における加工後のウェハ表面の結果であり、(a)は、加工後のウェハ表面の画像、(b)は、前記(a)の中心である258μm×194μmの領域の画像、(c)は、前記(a)および(b)の中心である64μm×48μmの領域の画像である。
【符号の説明】
【0056】
1 陰極(被加工基板)
2 陽極
3 イオン交換物質を含む超純水液
4 加工槽
5 パイプ
6 ポンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させて、前記基板表面を加工する加工方法。
【請求項2】
前記超純水液に前記基板を接触させ、電界の印加によって、前記基板表面を加工する、請求項1記載の加工方法。
【請求項3】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、分子量100以上である、請求項1または2記載の加工方法。
【請求項4】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、粒径0.7nm以上の粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、イオン伝導性物質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項6】
陰イオン交換物質が、ポリ-エチレン-ポリ-アミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項7】
陽イオン交換物質が、ポリ-スチレン-スルホン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項8】
陰イオン交換物質を含む超純水液のpHが、7〜14である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項9】
陽イオン交換物質を含む超純水液のpHが、1〜7である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項10】
超純水液が、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の両方を含む超純水液である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項11】
陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板を接触するのに先立って、前記陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を透析またはろ過する工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項12】
前記透析工程またはろ過工程に使用する透析膜またはろ過膜の分画分子量が、使用する陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方の分子量の1倍以下である、請求項11記載の加工方法。
【請求項13】
基板の加工に使用した陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液を透析またはろ過し、再度、基板の加工に使用する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項14】
前記基板が、シリコン基板、金属基板および半導体基板からなる群から選択された少なくとも一つの導電性材料基板である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項15】
基板と加工電極との間に電圧を印加する、請求項2〜14のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項1】
基材表面を加工する方法であって、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に前記基板を接触させて、前記基板表面を加工する加工方法。
【請求項2】
前記超純水液に前記基板を接触させ、電界の印加によって、前記基板表面を加工する、請求項1記載の加工方法。
【請求項3】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、分子量100以上である、請求項1または2記載の加工方法。
【請求項4】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、粒径0.7nm以上の粒子である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項5】
前記陰イオン交換物質または陽イオン交換物質が、イオン伝導性物質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項6】
陰イオン交換物質が、ポリ-エチレン-ポリ-アミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項7】
陽イオン交換物質が、ポリ-スチレン-スルホン酸である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項8】
陰イオン交換物質を含む超純水液のpHが、7〜14である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項9】
陽イオン交換物質を含む超純水液のpHが、1〜7である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項10】
超純水液が、陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の両方を含む超純水液である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項11】
陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液に基板を接触するのに先立って、前記陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を透析またはろ過する工程を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項12】
前記透析工程またはろ過工程に使用する透析膜またはろ過膜の分画分子量が、使用する陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方の分子量の1倍以下である、請求項11記載の加工方法。
【請求項13】
基板の加工に使用した陰イオン交換物質および陽イオン交換物質の少なくとも一方を含む超純水液を透析またはろ過し、再度、基板の加工に使用する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項14】
前記基板が、シリコン基板、金属基板および半導体基板からなる群から選択された少なくとも一つの導電性材料基板である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の加工方法。
【請求項15】
基板と加工電極との間に電圧を印加する、請求項2〜14のいずれか一項に記載の加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−186746(P2007−186746A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5121(P2006−5121)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]