説明

基板表面高さ測定装置および基板表面高さ測定方法、作業装置、作業方法

【課題】基板の素材等に影響されることなく基板表面の任意箇所の高さを測定する基板表面高さ測定装置および基板表面高さ測定方法と、測定された任意箇所の高さに基づいて作業部の高さ制御を行う作業装置および作業方法を提供する。
【解決手段】基板表面の測点に対して空気の塊を衝突させて衝撃荷重を印加する空気発砲装置8と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する超音波センサ9と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて測点の基板基準面に対する高さh1を測定する制御部10と、基板基準面を基準として予め設定された実装高さh2から測点の基板基準面に対する高さh1を減じて実装高さh3を算出し、この実装高さh3に基づいてノズル7の高さ制御を行う実装高さ制御部13を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の任意箇所の高さを測定する基板表面高さ測定装置および基板表面高さ測定方法と、測定された任意箇所の高さに基づいて作業部の高さ制御を行う作業装置および作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品の表面実装においては、実装ヘッドを基板表面に向けて下降させることで実装ヘッドにピックアップされた部品を基板表面に装着する手法がとられている。実装ヘッドの下降距離すなわち実装高さは、基板表面に部品を過不足のない荷重で装着することができるように制御されるが、基板の反り等により基板表面に凹凸が生じている場合、凹部に対しては荷重が不足し、凸部に対しては荷重が過大となり、いずれにしても実装品質の上で好ましくない状況を招くことになる。そこで従来、レーザ光を基板表面に照射してから反射光を受光するまでの経過時間の長短により基板表面の凹凸形状を検出し、この凹凸形状に基づいて実装高さを補正する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−299597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、基板が透光性の高い素材で形成されていたり、基板表面に鏡面状の電極等が形成されていたりする場合、レーザ光が基板表面で適切に反射しないことがあるため、凹凸が正確に検出できないという問題がある。一方、レーザ光に代えて超音波を使用する方法も知られており、超音波であれば基板の素材を問わないが、レーザ光と異なり超音波は指向性がないため、基板表面の任意の個所のみを検出対象とすることができないという問題がある。
【0004】
そこで本発明は、基板の素材等に影響されることなく基板表面の任意箇所の高さを測定する基板表面高さ測定装置および基板表面高さ測定方法と、測定された任意箇所の高さに基づいて作業部の高さ制御を行う作業装置および作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の基板表面高さ測定装置は、基板表面の任意個所に対して衝撃荷重を印加する衝撃荷重印加手段と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する振動波検知手段と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて基板表面の任意個所の高さを測定する測定手段を備えた。
【0006】
請求項2記載の基板表面高さ測定装置は請求項1に記載の基板表面高さ測定装置であって、前記衝撃荷重印加手段が、空気の塊を基板表面の任意個所に衝突させることで衝撃荷重を印加する。
【0007】
請求項3記載の基板表面高さ測定方法は、基板表面の任意個所に対して衝撃荷重を印加する工程と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する工程と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて基板表面の任意個所の高さを測定する工程を含む。
【0008】
請求項4記載の作業装置は、前記測定手段により測定された基板表面の任意個所の高さに基づいて基板表面の任意個所に対して作業する作業部の高さ制御を行う。
【0009】
請求項5記載の作業方法は、前記測定手段により測定された基板表面の任意個所の高さに基づいて基板表面の任意個所に対して作業する作業部の高さ制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板表面の任意箇所に印加された衝撃荷重により励起された振動から生じる振動波を検知することで基板表面の任意箇所の高さをスポット的に測定するので、基板の素材や測定箇所の周辺状況に影響されることなく正確な高さを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の部品実装装置の斜視図、図2は本発明の実施の形態の基板表面高さ測定装置の構成図である。
【0012】
最初に本発明の実施の形態の部品実装装置について説明する。図1において、部品実装装置1は基板に部品を表面実装する装置である。基板2は基板搬送レール3により部品実装装置1の所定位置に搬入される。部品は部品供給装置4に複数個収納されている。実装ヘッド5は直交ロボット6により基板2と部品供給装置の上方で水平移動可能であり、部品供給装置4からピックアップした部品を所定位置にある基板2に実装する。なお、図1では1つの基板2に対し実装ヘッド5と部品供給装置4が2つずつ設けられたデュアルヘッド型実装装置を示している。
【0013】
図2において、実装ヘッド5には複数のノズル7が設けられている。各ノズル7はそれぞれ独立して昇降動作が可能であり、実装時には基板表面に向けて下降し、部品が基板表面に接した後は部品を基板表面に対して押下することで荷重を印加し、部品と基板の接合強度を確保するようになっている。
【0014】
さらに実装ヘッド5には空気発砲装置8と超音波センサ9が併設されている。空気発砲装置8は基板表面の任意箇所を測点として空気の塊(矢印a)を発砲する装置であり、基板基準面から所定の高さ位置となる箇所から空気塊を発砲する。測点には空気塊が衝突した際に衝撃荷重が印加され、これにより基板表面に振動が励起される。この振動により測点を発信源とする振動波(破線b)が発生し、空気発砲装置8に併設された超音波センサ9により検知される。超音波センサ9は基板基準面から所定の高さ位置となる箇所に振動波を検知するセンサ部が設けられている。
【0015】
基板基準面は表面に凹凸がなく平坦な状態にある基板2の表面高さに設定されている。この基板基準面は部品の実装高さを決定するための基準となっており、基板基準面と一致した高さにある基板2の表面に部品を過不足ない荷重を印加しながら実装することができるようにノズル7の下降量が設定されている。基板2の表面に凹凸がある場合、基板基準面より高い箇所では印加荷重が過大となり、基板基準面より低い箇所では印加荷重の不足が発生するので、実装に先立って実装予定の箇所を測点として基板基準面に対する高さを測定し、測定結果に基づいて実装高さの補正を行うことが必要となる。
【0016】
次に本発明の実施の形態の基板表面高さ測定装置について説明する。図2において、基板表面高さ測定装置は、基板表面の任意個所に対して衝撃荷重を印加する衝撃荷重印加手段である空気発砲装置8と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する振動波検知手段である超音波センサ9と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて基板表面の任意個所の高さを測定する測定手段である制御部10とで構成されている。
【0017】
制御部10から出力部11に出力信号が送信されると、空気発砲装置8から測点に向けて空気塊が発砲される。超音波センサ9が測点から発信された振動波を検知すると、入力部12から制御部10に入力信号が送信される。制御部10では、空気塊の速度が既知なので基板基準面までの空気塊の航続距離から空気塊の航続時間が算出し、出力信号の送信時から入力信号の受信時までの経過時間から空気塊の航続時間を減じた時間に温度補正をした音速を乗ずることで測点から超音波センサ9のセンサ部までの距離が測定される。センサ部と基板基準面との距離は既知であるので、制御部10は測点の基板基準面に対する高さh1を測定し、測定結果をノズルの昇降動作の制御を行う実装高さ制御部13に送信する。
【0018】
実装高さ制御部13は、基板基準面を基準として予め設定された実装高さh2から実装高さの補正量となる測点の基板基準面に対する高さh1を減ずる演算を行い、測点となった箇所に部品を実装する際の実装高さh3を算出し、この実装高さh3に基づいて測点となった箇所に部品を実装する際の実装高さ制御を行う。なお、図2に示すように基板表面が凸状に変形し、測点が基板基準面より上位にある場合はh2からh1を減じる演算を行うが、これとは逆に基板表面が凹状に変形し、測点が基板基準面より下位にある場合はh2にh1を加える演算を行うことになる。
【0019】
なお、空気塊の航続時間の演算には、厳密にいえば測点の基板基準面に対する変位量(図2では測点の基板基準面に対する高さh1)を考慮するべきであるが、基板表面の変形の度合いは実際には極めて微小なものであるので、上記の演算において考慮していない。また、上記の演算において測定された測点から超音波センサ9のセンサ部までの距離は、超音波センサ9が測点の鉛直上方に位置する場合に測点から超音波センサ9のセンサ部までの高さとすることができる。超音波センサ9は測点の鉛直上方に位置することが必須ではなく、適宜補正を行うことで測定距離を高さに変換することは可能である。
【0020】
また、空気発砲装置8は測点に確実に空気塊を衝突させることが可能であれば配置は問われない。望ましくは、空気発砲装置8と超音波センサ9を測点の略鉛直上方となる位置に配置することで、測点周辺に遮蔽物があっても測定結果に与える影響を最小限に抑えることが可能である。なお、衝撃荷重印加手段として、空気塊を発砲する空気発砲装置8の他に基板表面の任意個所に対してスポット的衝撃荷重を印加することが可能な装置であれば使用することができる。また、振動波検知手段として、振動波に含まれる超音波成分を検知する超音波センサ9の他に振動波の到達を検知可能な装置であれば使用することができる。
【0021】
さらに、基板表面高さ測定装置は、基板表面に対して作業する作業部の高さ制御を行う必要がある作業装置、例えば、作業部となる実装ヘッドの実装高さ制御を行って基板表面に過不足のない荷重を印加しながら部品を実装する部品実装装置1を始め、作業部となる塗布ノズルの塗布高さ制御を行って基板表面に適正な厚さの接着用ボンドを塗布するボンド塗布装置等に適用することが可能である。この場合、基板表面高さ装置は様々な装置から発せられるノイズに囲まれた環境下で振動波のセンシングを行うことになり、ノイズが外乱となって振動波を正確に検知することが困難になる場合も考えられる。この場合、振動波のパターンを周囲のノイズパターンから明確に区別することができるように、レーザ光の出力パターンを調整することで対応することができる。また、超音波センサ9に通過帯域の外のすべての周波数を完全に減衰させるバンドパスフィルタを適用し、測点からのみ発信され得る周波数帯のみを検知できるようにすることでもセンシングの信頼性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明によれば、基板表面の任意箇所に印加された衝撃荷重により励起された振動から生じる振動波を検知することで基板表面の任意箇所の高さをスポット的に測定するので、基板の素材や測定箇所の周辺状況に影響されることなく正確な高さを測定することができるという利点を有し、基板表面の高さを正確に測定する必要のある表面実装分野やボンド塗布分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の部品実装装置の斜視図
【図2】本発明の実施の形態の基板表面高さ測定装置の構成図
【符号の説明】
【0024】
2 基板
8 空気発砲装置
9 超音波センサ
10 制御部
11 出力部
12 入力部
13 実装高さ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の任意個所に対して衝撃荷重を印加する衝撃荷重印加手段と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する振動波検知手段と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて基板表面の任意個所の高さを測定する測定手段を備えた基板表面高さ測定装置。
【請求項2】
前記衝撃荷重印加手段が、空気の塊を基板表面の任意個所に衝突させることで衝撃荷重を印加する請求項1に記載の基板表面高さ測定装置。
【請求項3】
基板表面の任意個所に対して衝撃荷重を印加する工程と、印加された衝撃荷重により基板表面に励起された振動から生じる振動波を所定の高さ位置で検知する工程と、基板表面に衝撃荷重を印加してから振動波を検知するまでの経過時間に基づいて基板表面の任意個所の高さを測定する工程を含む基板表面高さ測定方法。
【請求項4】
前記測定手段により測定された基板表面の任意個所の高さに基づいて基板表面の任意個所に対して作業する作業部の高さ制御を行う作業装置。
【請求項5】
前記測定手段により測定された基板表面の任意個所の高さに基づいて基板表面の任意個所に対して作業する作業部の高さ制御を行う作業方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−215903(P2008−215903A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50971(P2007−50971)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】