説明

基板識別方法及び基板識別装置

【課題】基板の識別を、塵埃を発生することなくかつ安価、簡単に行なう。
【解決手段】ステッパで基板に露光されたパターンの複数の所定位置xiの間隔δiを測定し識別情報として保存する。後に識別が必要になったとき、被識別基板の所定位置xiの間隔δiを測定し、保存された識別情報と一致する基板と識別される。他の方法として、所与の識別情報とずれ量Δiとの関係に基づき、所定位置xiの間隔δiにずれ量Δiを加えて露光する。後に識別が必要になったとき、所定位置xiの間隔δiのずれ量Δiを測定し、このずれ量Δiに対応する識別情報を識別情報とずれ量Δiとの関係から求め比較値とする。この比較値と一致する識別情報を有する基板として識別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚の基板上に複数チップを形成する際、ステッパを用いたステップアンドリピート露光により基板上にパターンを露光した後、その基板を加工処理する基板処理工程において、基板に識別標識を形成することなく基板の識別を行なうことができる基板識別方法及びかかる基板識別を行なうことができる基板識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置又は表示装置等の電子機器関連装置あるいは微小機械関連装置では、微細パターンを基板表面に繰り返し形成するために、一つのパターンをステップアンドリピート露光するステッパが用いられている。
【0003】
このように、ステッパにより同一パターンが繰り返し露光された基板は、基板処理工程に投入され、そのパターンに従って回路あるいは微小機構が形成される。
【0004】
近年、ステッパによる露光を用いて製造される装置、とくに半導体装置の製造において、多数の基板を同時に一つの装置で取り扱う工程が増えている。例えば、マルチチャンバを有する処理装置では複数工程の基板処理工程が一つの処理装置で行なわれるため、一つの処理装置内に処理段階が異なる多数の基板が混在する。
【0005】
また、多品種の半導体装置を少量生産することも多く、この場合、一つの処理装置内に、処理段階及び回路パターンが異なる複数種類の基板が混在する。また、半導体装置の開発では、同一種類の半導体装置、即ち同一回路パターンが形成された基板を、幾つかの異なる処理条件下、例えばイオン注入条件や熱処理条件が異なる数個の条件下で処理することも多い。その結果、回路パターンが同一で、処理条件が異なる複数の基板が同一装置内に混在することになる。
【0006】
このように処理段階、回路パターンの種類又は処理条件が異なる多数の基板を同時に処理する装置又は処理システムでは、装置又は処理システムがこれらの装置又は処理システムに投入された全ての基板について、現在の工程及び装置内の位置を管理し、全ての基板が正常な工程を経るように基板の搬送、処理、収納を制御している。
【0007】
しかし、何らかの異常が発生して基板の順序や位置が入れ代わると、装置又は処理システムの管理範囲を逸脱し、基板の識別ができなくなる場合がある。かかる場合、パターンの外観から基板を識別することは非常に難しい。とくに、パターンが同一で処理条件のみ異なる基板、たとえば熱処理条件やイオン注入の濃度又は加速電圧のみが異なる基板では、目視や顕微鏡観察によって基板を識別することは極めて困難になる。また、同一処理工程を終えた基板が複数枚同一処理装置内にあるときは、これらの基板が混じり合うと外観に基づく識別は非常に困難になる。
【0008】
このような事態に備え、各基板を確実に識別できるようにするため、個々の基板に識別標識を設けることが一般的に行なわれている。以下、かかる従来の基板の識別方法を説明する。
【0009】
従来の第1の基板識別方法では、レーザアブレーションを用いて、基板表面に記号、バーコード及び図形等からなる識別標識を刻印する(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この方法はレーザアブレーション時の発塵や刻印部分からの発塵を回避することが難しく、製造歩留りを低下させるおそれがある。
【0010】
従来の第2の基板識別方法では、フォトリソグラフィーを用いて基板表面に識別標識を形成する(例えば、特許文献2、3参照。)。これにより、発塵を回避することができる。
【0011】
しかし、個々の基板を識別するには、個々の基板に対してそれぞれ異なる識別標識を形成しなければならない。それには、識別すべき基板の数だけマスクを用意しなければならずコスト上昇を招く。また、基板上を一つのマスクを移動させ、基板上の異なる位置に識別標識を露光する方法でも、露光を別工程で行なうことによるコスト上昇を免れない。マスクを用いず、光のスキャンにより露光しても、露光を専用の露光装置を用いて別工程で行なわねばならずコスト上昇を招く。
【0012】
従来の第3の基板識別方法では、基板上面に配線パターンの形成と同時に配線パターンと同じ材料からなる抵抗パターンを形成する(例えば、特許文献4参照)。しかし、この方法は、配線パターンの形成工程より前の工程での識別には利用できない。また、個々の基板を識別するには、リソグラフィやレーザアブレーションを用いた抵抗パターンの再パターニングを行なわねばならず、コスト上昇や発塵を招く。
【0013】
従来の第4の基板識別方法では、基板上にマスクを載置して選択成長し、選択成長により識別標識を形成する(例えば、特許文献5参照。)。この方法は、マスクが簡単で、しかも露光及び露光後のパターニングを回避できるという利点がある。しかし、選択成長は、それ自体が大きなコスト上昇を招く。
【0014】
従来の第5の基板の識別方法では、イオン注入により基板表面に識別標識を記入する(例えば、特許文献6参照。)。この方法は、イオンビームのスキャンによりマスクを用いずに識別標識を形成することができ、しかも発塵がないという利点を有する。しかし、イオン注入により形成された識別標識を目視又は顕微鏡により正確に読み取ることは難しく、読み取りに特別な装置を準備しなければならない。さらに、イオン注入工程自体がコスト上昇の要因となる。
【特許文献1】特開2006−527922号公報
【特許文献2】特開2002−43197号公報
【特許文献3】特開2000−208384号公報
【特許文献4】特開2002−83752号公報
【特許文献5】特開平07−94616号公報
【特許文献6】特開平05−55354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、レーザアブレーションにより基板に識別標識を形成する従来の基板識別方法では、発塵が多く製造歩留りを低下させるという問題がある。
【0016】
発塵を回避するために、リソグラフィを用いて基板表面に識別標識を形成する従来の方法では、マスク又はリソグラフィの工程を付加しなければならず、コスト上昇を招くという問題がある。
【0017】
また、配線パターンと同時に識別標識を形成し、その後に個々の基板に対して識別標識を再パターニングする従来の識別方法では、再パターニングによるコスト上昇に加えて、配線パターン形成以前の工程での基板識別ができないという問題がある。
【0018】
マスクを用いた選択成長により識別標識を形成する従来の基板識別方法では、選択成長のコストが高いという問題がある。
【0019】
さらに、イオン注入により識別標識を形成する従来の基板識別方法では、イオン注入のコストが高いことに加えて、識別標識が読み取りにくく確実に読み取るためには特別な装置を要するという問題がある。
【0020】
本発明は、露光されるべきパターンの他に、基板識別のための識別標識を形成することなく個々の基板を識別することができる、低コストの基板識別方法及びその基板識別方法を実施するに適した基板識別装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の構成の基板識別方法では、まず、基板上の所定位置を挟み互いに隣接して形成された第1及び第2のパターンの間隔の幅を測定し、その測定値を識別情報として基板に関連付けて記憶部に記憶する。その後、識別されるべき基板上の上記所定位置を挟み互いに隣接して形成された第3及び第4の前記パターンの間隔の幅を測定し、この測定値を比較値として出力する。次いで、記憶部を検索して、比較値と一致する前記識別情報に関連付けられた基板を抽出する。
【0022】
即ち、本第1の構成では、管理すべき基板上の所定位置のパターン間隔の幅を測定し、それを管理すべき基板の識別情報として記憶する。その後の工程において、基板の識別が要求されたとき、被識別対象とされた基板上の同じ位置(所定位置)にあるパターン間隔の幅を測定する。そして、被識別対象とされた基板は、その測定値(間隔の幅)と一致する識別情報を有する基板であると認識され識別される。
【0023】
本第1の構成では、識別のためにパターン間隔(互いに隣接するパターン間の間隔)の幅以外の情報を必要としない。即ち、従来の基板処理工程に、パターン間隔の測定工程及び記憶・検索工程を付加するのみで識別することができる。従って、従来の方法のように基板上に、回路パターンとは別工程で、識別用のパターンや記号を形成する必要がないので、従来の方法に比べて基板識別に必要なコストが大幅に低減される。また、基板を加工することもないので、発塵も回避される。
【0024】
本明細書において、「パターン」とは一度のショットで露光されるパターンをいい、例えば投影露光に用いられるレチクルのパターンである。かかるパターンには、複数の回路パターン又は複数のその他のパターンが含まれてもよい。
【0025】
本第1の構成では、パターンはステッパの通常のステップアンドリピート露光により露光される。このとき、パターン間の間隔の幅のばらつきが、ステッパの機械的精度や露光位置制御の限界により自然に発生する露光位置の揺らぎに起因して生ずる。他に、制御又は機械的に意図した揺らぎを与え、間隔の幅のばらつきを大きくすることもできる。このように間隔の幅のばらつきを大きくすることで、間隔の幅の相違が容易に判別されるようになり、識別が容易になる。さらに、後述する第2の構成と同様に、基板の識別情報に対応した間隔を生成させることもできる。この場合、識別をより確実にするために、間隔の幅を離散的にかつ容易に読み取り可能な大きな値に設定することもできる。
【0026】
本明細書において、パターンの間隔若しくはチップの間隔の幅とは、互いに隣接するパターンの一方のパターンの特定部位と、他方のパターンの他の特定部位との距離をいう。本第1の構成において、この間隔の幅は、パターンが同一のとき、ステップアンドリピート露光のステップ距離により定まる。
【0027】
かかる間隔の幅として、例えば、露光された2つのパターンのうち、一つのパターンの任意の位置に形成された特定部分と、他のパターンの異なる位置に形成された特定部分との距離をとることができる。
【0028】
かかる特定部位として、パターンの最外側、例えばパターンに含まれる回路パターンの外周部分を採用し、隣接するパターンに含まれる回路パターンの外周部分間の距離をパターン間隔の幅とすることもできる。また、間隔の幅として、隣接する2つのパターンの同一部分の距離(ステップ距離に相当する。)を採用してもよい。
【0029】
測定すべき間隔は、予め決定されている所定位置のパターン間隔である。この所定位置は位置情報として予め与えられる。この位置情報は、基板上に配置されたパターン間の位置を示す指標であればよく、例えば、パターンが配置された平面内の位置座標、又は、その所定位置の左右又は上下に位置する一つのパターンを指示する表示を用いてもよい。
【0030】
この測定すべき間隔は、1個のパターンの周囲に形成された間隔に限られず、複数個のパターンの周囲に形成された複数の間隔を選択することもできる。また、あるパターンの左右上下に形成されるパターンとの間隔のうちから1又は複数の間隔を選択してもよく、左右上下の全ての間隔を選択してもよい。このように測定すべき間隔として複数の間隔を選択する場合、選択される各間隔ごとにその位置を表示する一つの所定位置が予め与えられる。
【0031】
複数の間隔を選択した場合、基板を特徴づける識別情報は複数の間隔の幅からなる組として記憶部に保持され、基板識別工程で比較値と比較される。この場合、選択する間隔の数が多いほど、識別情報の一組を構成する間隔の幅の個数が多くなるので、多くの異なる識別情報が生成する結果、より多数の基板の識別が可能となる。また、識別情報の冗長度が高くなるので、識別の確実性が向上する。
【0032】
選択された間隔は、互いに連続するパターン間の間隔であっても、あるいは互いに隣接することなく基板上に分散する間隔であってもよい。連続するパターン間の間隔を選択すると、測定すべき間隔がほぼ等距離のステップ間隔をおいて存在するので、測定の操作が容易になる。他方、分散していると、上下左右の全ての間隔を識別情報として使用できるので、識別情報を多くすることができる。また、分散することで、基板上の一部領域のパターン間隔が読み取り不能となっても、他の領域のパターン間隔の幅を測定することで識別可能になることも多く、基板識別の確実性が高まる。
【0033】
記憶部に記憶される識別情報を複数の間隔の幅の組として構成し、基板識別工程で測定または比較される間隔(比較値として測定される間隔)の幅の個数を、識別情報の一組に含まれる間隔の幅の個数より少なくすることもできる。即ち、N個の間隔の幅の組からなる識別情報を記憶し、M個(N>M)の間隔の幅からなる比較値と比較することで、基板を識別する。例えば、上下左右の4個の間隔の幅を識別情報として記憶し、識別時には左右上下の何れか1個〜3個の間隔の幅を比較値として用いることができる。あるいは、複数のパターンの周囲に形成された間隔の幅を識別情報として記憶し、識別時には、それらのパターンのうちの一部のパターンの周囲の間隔の幅を比較値として用いる。
【0034】
このようにすると、比較時に最も測定に適した一群のパターン間の間隔を選択して測定することができる。具体的には、基板上の一部に間隔幅の測定が困難な領域、例えばパターンの欠損又は損傷がある領域が発生しても、その領域を避けて測定する。その測定値から識別が可能となることも多いので、これにより基板識別の確実性が向上する。
【0035】
本発明の第2の構成の基板識別方法では、まず、基板の識別情報を基板に関連付けて記憶部に記憶する。また、予め作成された識別情報とずれ量の関係に基づき、基板の識別情報に対応するずれ量を作成する。次いで、基板上の所定位置を挟み、その両側に形成されたパターン間の間隔が、所与の間隔よりずれ量だけずれた幅となるようにバターンを配置して露光する。
【0036】
その後、基板識別時に、識別すべき基板上の所定位置のパターンと隣接するパターンとの間隔の、所定の間隔からのずれ量を測定する。そして、この測定された所定の間隔からのずれ量に対応する識別情報を、識別情報とずれ量の関係から求めて比較値とする。その後、記憶部を検索し、比較値と一致する識別情報を有する基板を抽出する。識別すべき基板は、この抽出された基板として識別される。
【0037】
即ち、上記第2の構成は、識別情報とずれ量の所与の関係に従い、パターン間隔のずれ量(所与の間隔とのずれ量)を変えて露光する。一方、識別時には、測定されたずれ量を識別情報からなる比較値に変換する。そして、この比較値と一致する識別情報を有する基板が識別されたと判定する。
【0038】
なお、識別情報とずれ量の関係は、露光に先立ち予め取得又は生成される。かかる関係は、例えば、数式又は表により与えられる。この識別情報は、識別が必要になる可能性を有する基板の枚数に対して、それぞれ異なる識別情報を割り当てることができる数が作成される。
【0039】
そして、露光工程前に、上記識別情報とずれ量の関係に基づき、一つの識別情報に対して、それぞれの所定位置の間隔の幅に加算するずれ量が決定される。逆に、基板識別工程では、それぞれの所定位置の間隔について測定されたずれ量から、上記識別情報とずれ量の関係に基づき、その測定されたずれ量を決定した識別情報、即ち特定の基板に付与された識別情報が求められる。これにより、測定された基板と特定の基板との同一性が識別される。
【0040】
識別情報は、基板を識別し得る表記であればよい。しかし、識別情報の表記からずれ量を容易に導出できるという観点から、複数個の間隔の各指定位置におけるずれ量を表す表記を要素とする数又は記号の組として構成することが好ましい。
【0041】
この第2の構成では、第1の構成と同様に、識別のためにパターン間の間隔以外の情報を必要としない。また、パターン間隔の測定は高価な装置を用いることなく容易に行なうことができる。このため、識別に要するコストの上昇が抑制される。とくに間隔の測定、比較は異常がないときは行なう必要がないので、基板識別工程が製造工程の大きなコスト増になることは少ない。
【0042】
また、本第2の構成では、ずれ量を、ステッパのステップ間隔精度よりも十分大きな間隔を有する離散値として設定することが好ましい。例えば、離散値の最小間隔をΔとするとき、ずれ量を0、±Δ、±2Δ、・・・、±nΔ(nは整数)と設定する。
【0043】
ずれ量をこのように離散値として設定することで、測定されるずれ量がアナログ値であるにも拘わらず、測定されるずれ量をデジタル値として扱うことができる。通常、識別情報をデジタル情報として取り扱うことが、基板識別の観点から好ましい。このとき、識別情報とずれ量との関係は共にデジタル値間の関係として表される。このため、ずれ量を、識別情報とずれ量の関係に入力して比較値となる識別情報を取得する過程では、全てデジタル値で演算され、デジタル値の比較値が取得される。さらに、記憶部を検索して比較値に一致する識別情報を有する基板の検索・抽出も、デジタル演算でなされる。このように、ずれ量の測定、識別情報とずれ量の関係から比較値(識別情報)を求める過程、及び記憶部に記憶された識別情報の検索が全てデジタル演算でなされるから、これらの工程を迅速かつ正確に実行することができる。
【0044】
さらに、第2の構成では、ずれ量と識別情報の関係は一対一に対応付けられている。このずれ量と識別情報との対応が、その一部分(ずれ量及び識別情報を表す複数の数字又は記号の組の中の一部の数字又は記号)が一致したとき、残りの部分の一致不一致を調べなくても、基板が特定される場合がある。この場合、ずれ量の測定を、基板の識別に必要な最小限の数の間隔を選択して行なうこともできる。これにより、測定回数を少なくし、識別工程の所要時間を短縮することができる。
【0045】
上記第2の構成において、行列状に配置されたパターンのうちの一つの行又は列に配列されたパターン間の間隔に、所定のずれ量のずれ及び修正用ずれを付与することができる。このとき、一つの行又は列に付与された所定のずれ量及び修正用ずれ量の総和が零になるように修正用ずれを設定する。なお、修正用ずれは、一つの行又は列の中に1つ又は複数設けることができる。この修正用ずれは、一行又は一列中に一個でも又は複数を設けてもよい。
【0046】
この修正用ずれを含む構成では、ある行又は列中のずれ量の総和が零に設定されるので、ずれを生じさせるパターンの外側に配置されたパターンは、ずれのない所与の間隔でステップアンドリピート露光される位置に配置される。従って、行列の外側部分、例えば基板上のパターン形成領域の最外側に位置するパターンは、常にずれのない位置に配置される。
【0047】
基板の外周部はCMP(化学的機械的研摩)の際にスクラッチが生りやすく、これを防ぐために外周部に位置するパターンを保護する保護膜が形成されることがある。しかし、パターン形成領域の最外側のパターンの位置がずれると、保護膜により保護されずにパターンにスクラッチが入ることがある。本構成では、最外側のパターン位置は所与の位置に固定されるから、かかるパターン位置のずれに起因する基板の損傷は回避される。
【0048】
上述した本発明の第1又は第2の構成において、間隔測定用のマーカを設けることができる。このマーカは、隣接するパターンの間(間隔の中)に設けられる。
【0049】
これにより、隣接するパターンの特定部分の間の間隔の測定に代えて、マーカとパターン間の間隔、又はマーカ間の間隔を測定することで、パターン間隔又はずれ量を測定することができる。これらの間隔は、マーカがないパターン間の間隔より大幅に狭くすることができる。このため、容易に精密なずれ量の測定をすることができる。
【0050】
マーカは、隣接するパターンに設けられたマーカが互いに近接して配置されるように設けることが、測定するマーカ間の間隔を狭くし測定精度を向上するために好ましい。なお、通常、露光位置の位置決めに用いられる位置決め用マーカを上記マーカとして利用することもできる。しかし、隣接パターン間の間隔をより精密に測定するには、それとは別に上述したマーカを形成することが好ましい。
【0051】
本発明の第3の構成は、上述した第2の構成に係る基板識別方法を実施するに適した基板識別装置に関する。
【0052】
本発明の第3の構成の基板識別装置は、基板の識別情報を生成し基板と関連付けて保持する記憶部と、識別情報に基づき所定量のずれを作成し、所定量のずれを予め設計値として与えられたステップ幅に加えたステップ間隔を作成するステップ間隔作成部と、そのステップ間隔でパターンをステップアンドリピート露光するステッパとを有する。
【0053】
この第3の構成のステッパは、基板に関連付けられた識別情報に従い、所定位置に所定量のずれを生ずるように露光する。従って、このステッパを用いて、第2の構成に係るパターン間隔を有するパターンを露光することができる。
【0054】
このようなずれを有するパターンの露光は、通常のステッパに、外部から与えられるステップ間隔(ずれ量を付加した後の間隔)に従って露光するソフトウエアを組み込むだけで、ステッパの機構の変更、追加をすることなく作製することができる。従って、この構成のステッパは、低コストでかつ容易に製造される。
【発明の効果】
【0055】
本発明によれば、基板上に配置されるパターンの間隔の幅を基板の識別情報として利用するから、基板に識別標識を形成する必要がないので、低コストでかつ発塵を生じない基板識別方法及び基板識別装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態はパターン位置の揺らぎを利用した基板識別方法に関する。
【0057】
図1は本発明の第1実施形態基板識別装置構成図であり、本第1実施形態の基板識別方法に用いられた装置の概要を表している。
【0058】
図1を参照して、本基板識別装置は、ステッパ22、基板処理装置23及びシステムコントローラ21を含む半導体製造システムと、間隔測定装置24、記憶部17及び制御部10を含む識別システムとから構成されている。
【0059】
システムコントローラ21は、ステッパ22及び基板処理装置23を制御して、露光から半導体回路の形成にいたる半導体製造システムを制御すると同時に、ステッパ22、基板処理装置23及び間隔測定装置24に供給された基板の位置を、基板の識別情報と関連付けて監視し管理する。さらに、制御部10を制御することで、識別システムをも管理する。
【0060】
間隔測定装置24は、システムコントローラ21により制御され、基板処理装置23内で識別が必要になった基板のパターン間隔を測定する。記憶部17は基板識別に必要な情報を記憶する。制御部10は、システムコントローラ21により制御され、間隔測定装置24及び記憶部17への基板識別に必要な情報の入出力を制御する。
【0061】
制御部10に含まれる位置情報保持部12は、測定すべき間隔の位置を位置情報として保持する。この位置情報は、制御部10内で予め作成されるか、又はシステムコントローラ21から予め送信される。
【0062】
以下、本第1実施形態の基板識別工程を説明する。
【0063】
図2は、本発明の第1実施形態工程図であり、半導体基板の露光工程、基板処理工程及び基板識別工程を含む基板識別工程のシーケンスを表している。
【0064】
図2を参照して、本第1実施形態では、まず、基板の準備工程S1で、システムコントローラ21は、基板1を準備すると同時に、その基板に基板番号を付与し、基板番号及びその基板に形成されるべき回路情報を制御部10に送信する。制御部10は、基板番号及び回路情報を互いに関連付けて記憶部17に記憶する。さらに、予め位置情報保持部12に保持されている位置情報を記憶部17に記憶する。なお、基板番号及び回路情報は各基板ごとに記憶される。一方、位置情報は最初に記憶された後は変更されず、従って、全ての基板について同一であり、唯一の位置情報が記憶される。
【0065】
基板番号は、少なくとも基板の混合を生ずるおそれがある基板処理工程に、同時に投入される予定の基板の枚数以上の番号、例えば同時に投入される予定の基板の枚数より多い周期で循環する通し番号が用いられる。また、回路情報は、その基板1に形成される回路に従って分類される半導体装置の種類を表している。
【0066】
次いで、基板1は露光工程S2に投入され、ステッパ22により基板1上に回路パターン3がステップアンドリピートで露光される。
【0067】
図3は本発明の第1実施形態パターン配置図であり、円板状の半導体基板1に最初に露光されるパターンの配置を表している。なお、図3(a)は基板1全面に配置されたパターン3を、図3(b)は図3(a)の部分拡大図であり、隣接する2個のパターン3、3’を表している。
【0068】
図3(a)を参照して、本発明の第1実施形態では、直径300mmの半導体基板1に、1辺が10mmの正方形の回路パターン2をステッパを用いて露光した。なお、回路パターン2は、一つの半導体チップに形成される回路のパターンである。露光は、回路パターン2を縦3行、横2列の行列状に配置したレチクルを用い、基板1上に行列状にパターン3(レチクルのパターン)を配置し露光した。従って、図3(b)を参照して、パターン3は、3行2列に配置された回路パターン2から構成される。以後、本明細書では説明を簡明にするため、行方向(図2の紙面内の左右方向)をx軸方向、列方向(図2の紙面内の上下方向)をy軸方向ともいう。
【0069】
回路パターン2間の間隔の設計値は90μmである。また、隣接するレチクル間の回路パターン2、2’間の間隔5も90μmである。即ち、図3(b)を参照して、互いに隣接するパターン3、3’(ステップアンドリピート露光により隣接して配置されたパターン3、3’)内に含まれる回路パターン2、2’間の間隔も設計値として90μmに設定されている。従って、全ての回路パターン2は、基板1上に90μmの間隔を設けて行列状に配置される。なお、図3(b)には、y軸方向の間隔5を図示していないが、y軸方向の間隔5もx軸方向の間隔5と同じく90μmに設定した。
【0070】
図4は本発明の第1実施形態パターン平面図であり、図3に示す基板1上に露光されたパターンを拡大して表している。
【0071】
図4を参照して、一回のショットで露光されたパターン3は、3行2列に配列された回路パターン2−1〜2−6を含む。さらに、パターン3には、回路パターン2−1〜2−6の形成領域の外側でかつパターン3の左右及び上下に、それぞれy軸及びx軸に平行な線状のマーカ4L、4R、4U、4Dが設けられる。
【0072】
パターン3の左右には、それぞれパターン3’及びパターン3”’が露光される。また、パターン3の上下には、それぞれパターン3”及びパターン3””が露光される。従って、これらのパターン3’、3”、3”’、3””に含まれる回路パターン2’−4〜2’−6、2”−3、2”−6、2”’−1〜2”’−3、2””−1、2””−4は、パターン3に含まれる回路パターン2−1〜2−6に隣接して配置される。
【0073】
また、パターン3に含まれるマーカ4L、4R、4U、4Dはそれぞれ、パターン3に隣接するパターン3’〜3””に含まれるマーカ4’R、4”’L、4”D、4””Uに近接して対向するように設けられる。これらのマーカ4は、パターン3と、パターン3に隣接するパターン3’〜3””との間の間隔を測定するために用いられる。
【0074】
具体的には、近接して対向配置された2個のマーカからなるマーカの組(マーカ4Lとマーカ4’R、マーカ4Rとマーカ4”’L、マーカ4Uとマーカ4”D及びマーカ4Dとマーカ4””Uの組)のマーカ4間の距離(例えばマーカ4Lとマーカ4’R間の距離)を測定し、この距離をパターン間隔の幅δ1、δ2、δ’1、δ’2として採用する。(後述するように、本実施形態ではマーカ間距離に定数を加算した値を用いた。)。なお、幅δ1、δ2、δ’1、δ’2は、それぞれパターン3の左、右、上及び下に位置するパターン間隔の幅を表している。
【0075】
隣接するマーカの間隔は、回路パターン2の間隔に比べて狭いから、マーカ4間隔をパターン間隔とすることで、パターン3間隔の相違(即ち、ステップ間隔の変動)を精密に評価することができる。なお、マーカ4を用いずに、回路パターン3間隔を測定することもできる。あるいは、通常、パターン3に含まれる露光の位置合せマークと隣接するパターン3’に含まれる回路パターン2’との距離を測定してもよい。
【0076】
次いで、露光された基板1は、基板処理工程に投入される。
【0077】
再び図2を参照して、露光された基板1は、先ず、パターン形成工程S3において基板処理装置23に搬入され、現像、エッチングを経て、基板1上面にパターン3が形成される。基板処理装置に搬入された基板1は、その基板番号に基づきシステムコントローラ21により管理される。
【0078】
次いで、間隔の測定工程S4では、基板1を間隔測定装置24に搬送し、基板1上に形成されたパターン3の間隔の幅を測定する。間隔測定では、マーカ4間の距離を測定し、その測定値に定数を加えてパターン間隔とした。この定数は、測定されたパターン間隔の平均値が設計値のほぼ90μmになるように加算するもので、予め実験的に又はレチクル設計の際に与えられる。もちろん、直接にマーカ4間の距離をパターン間隔の幅として用いても差し支えない。間隔測定装置は、例えば通常のパターン間隔を測定する装置あるいは顕微鏡が用いられる。
【0079】
この工程S4で測定されるパターン3は、基板1に最も早く形成されるパターン3とすることが、それより早い工程であるために本発明による基板1の識別をすることができなくなるという事態を回避する点で望ましい。半導体装置の製造では、通常は素子分離帯の形成工程が最も早いので、本第1実施形態では、素子分離帯の回路パターン2の形成の後に、パターン3間隔の測定工程S4を行なった。
【0080】
また、この間隔の測定工程S4は、レジストパターンが現像された直後でも良いが、後の変形が少ないという観点から、基板1上にパターンが形成されたとき、例えば基板にトレンチ又はフィールド酸化膜が形成されたときに行なうことが好ましい。マーカ4は、基板1にパターンを形成するとき、同時に同一工程で形成される。
【0081】
間隔の幅の測定は、位置情報保持部12から送信された位置情報に基づき、その位置情報が指示する場所x1〜xnに位置する間隔5を選びだし、その選出された間隔5内に形成されたマーカ4間の間隔を測定した。その測定結果は記憶部17に記憶される。
【0082】
ここでは位置情報を、パターン3により特定した。この特定されたパターンの位置(例えば中心位置)に、パターン内のその位置(例えば中心位置)からマーカの位置に至るベクトルを加えて、具体的な所定位置の位置座標を算出する。この特定方法では、例えば選択されたパターンの番号と1個のマーカ位置を表す座標とを記憶すれば足り、複数のマーカ又は間隔のx及びy座標を記憶する方法に比べ取り扱いが簡便である。もちろん、位置情報として所定位置の座標(x、y)を用いてもよい。
【0083】
図5は本発明の第1実施形態記憶データ構造図であり、図5(a)は記憶部17に記憶された各基板ごとのデータ構造を、図5(b)は位置情報のデータ構造を、図5(c)は図5(a)のデータ構造にさらにy軸方向のパターン間隔に関するデータを付加したデータ構造を表している。
【0084】
図5(a)を参照して、記憶部17には、基板番号、n個のパターン間隔の幅δ1〜δ、プロセス情報及び回路情報が一組のデータとして、互いに関連づけられて記憶されている。なお、パターン間隔の幅δ1〜δnは、それぞれ位置情報により示されるn個の所定位置x1〜xnのパターン間隔の幅を表す。
【0085】
図5(b)を参照して、記憶部17には、位置情報として、パターン間隔の位置x1〜xnを表すn個の表記が記憶されている。なお、表記は、上述したように、n個のパターン3を特定するn個の表示と、マーカ位置を表すベクトルとから構成される。なお、このベクトルは、マーカの数だけ用意される。
【0086】
本第1実施形態では、図3(a)を参照して、6個のパターンA〜Fが選択されて特定されている。このとき所定位置は、特定されたパターンA〜FとパターンA〜Fの左に隣接するパターン3との間である。位置情報はパターンA〜Fの中の一点の座標とその座標位置からパターン3内の左右に設けられたマーカ4R、4Lまでの2個の距離とから構成される。そして、所定位置x1〜xn(n=6)は、パターンA〜Fの座標位置とマーカ4までのベクトルの和として算出され、そこに設けられた対向する一対のマーカ4L、4’R間の距離が測定される。かかる測定は、パターンA〜Fについて順次実行される。
【0087】
なお、図5(c)を参照して、位置x1〜xnのx軸方向の間隔の幅δ1〜δnに加えて、y軸方向のパターン間隔、例えばパターン3の上下にそれぞれ形成されたマーカ4U及びマーカ4Dに近接して形成されるマーカ4”D及びマーカ4””Uの間隔の上下何れか一方を測定し、その測定されたパターン間隔の幅δ’1〜δ’nを識別情報に追加することもできる。さらに、分散して配置されたn個のパターン3の左右及び上下の間隔の幅を測定し、この幅を識別情報とすることもできる。
【0088】
図6は本発明の第1実施形態記憶データ構成図であり、記憶部17に記憶されている複数枚の基板のデータ構成を表している。
【0089】
図6を参照して、記憶部17に、位置情報により指定されたパターンA〜F(図3参照)の左側に位置するパターン3間の間隔の幅δ1〜δ6(図5(a)においてn=6の場合)の測定値が、各基板1を表示する基板番号に関連付けられ、識別情報として記憶される。さらに、各基板1のプロセス段階及び形成されるべき回路の種類が、それぞれプロセス情報及び回路情報として基板番号に関連付けられて記憶される。
【0090】
間隔δ1〜δ6のばらつきは、ステッパ及びその後のパターン形成の工程で生じる。その大きさは、90μmを中心に±0.2μmの範囲でばらついていた。ここでは、測定値を0.1μm単位で分離する離散値に丸めた。この0.1μmの値は、間隔測定装置24の分解能より十分に大きい。必要ならば、間隔測定装置24の分解能より大きな範囲で、より小さい分離単位とすることもできる。
【0091】
離散値の最小分離値は0.1μmであるから、各間隔の幅δ1〜δ6について、−0.2μm〜0.2μmの間に5個の離散値を採り得る。従って、56 個の異なる間隔の幅δ1〜δ6の組が生じ得る。しかし、この間隔δ1〜δ6のばらつきは、単なるステッパ及びパターン形成工程でのばらつきに起因するものであるから、任意に制御されていない。このため、間隔の組(δ1〜δ6)には重複するものも多く、現実に識別に利用し得る間隔の組(δ1〜δ6)はこれよりかなり少ない。それにも拘わらず、通常の処理装置又は処理システムに投入され、識別が必要となる基板1を識別するには通常は十分な組が存在する。もし、必要ならば、y軸方向の間隔の幅δ’1〜δ’nを加え、さらにより多数のパターン3を指定して所定位置の間隔の個数を増やすこともできる。
【0092】
この工程S4で、同一の識別情報(間隔の幅δ1〜δ6の測定値が同一のもの)を有する基板1が複数存在し、かつそれらが他の情報、例えば回路情報及びプロセス情報等からも識別不能となる場合もある。この場合、工程への投入時期を変える、あるいは1枚の基板の処理終了後に次の基板を投入する等の処置をとることで、基板の識別が不能になる事態を回避することができる。
【0093】
次いで、通常の基板処理工程(露光工程を含んでいても差し支えない)を進めて、半導体装置を製造する。その途中で、何らかの異常が発生し、基板の識別が必要になったとシステムコントローラ21が判断したとき、システムコントローラ21は、基板処理工程を中断し、基板識別工程に入る。
【0094】
基板識別工程では、まず、システムコントローラによる管理が不能となったために、システムコントローラにより識別が必要と判断された基板1を基板処理工程から搬出し、回路識別工程S5に供給する。
【0095】
回路識別工程S5では、識別すべき基板1に形成されている回路パターン2の外観を観察して、基板1上に形成しつつある半導体装置の種類を判定する。観測は目視でもよく、その他の簡便な識別方法、例えばパターン比較装置を用いてもよい。
【0096】
次いで、判定された半導体装置の種類に一致する回路情報を有する基板1の基板番号を、記憶部17を検索して抽出する。抽出された基板番号が一つの場合、被識別基板はこの基板番号を有する基板1であると識別される。同じ回路情報を有する基板が複数抽出されても、関連付けられたプロセス情報により識別される場合もある。
【0097】
種類が判定できなかった場合、又は回路情報(種類)及びプロセス情報からでは識別できなかった場合は、以下に説明する間隔の測定工程S6を行なう。
【0098】
パターン間隔の測定工程S6では、まず、記憶部17又は位置情報保持部12から間隔測定装置24へ位置情報が送信される。間隔測定装置24は、位置情報が指示する所定位置x1〜x6のパターン間隔の幅δ1〜δ6を測定し、その測定値を制御部10の検索抽出部16に送信する。例えば、測定されたパターン間隔の幅δ1〜δ6が、δ1=89.9μm、δ2=90.1μm、δ3=89.9μm、δ4=89.8μm、δ5=89.9μm、δ6=90.1μmであるとき、間隔の幅を表す数字の組(89.9、90.1、89.9、89.8、89.9、90.1)が送信される。
【0099】
次いで、検索・抽出工程S7で、検索抽出部16が、図6を参照して、記憶部17に記憶されているパターン間隔の幅δ1〜δ6の組(識別情報)の中から、受信したパターン間隔の幅δ1〜δ6と一致するパターン間隔の幅δ1〜δ6の組(識別情報)を検索し、その組に関連付けられている基板番号を抽出する。例えば上記の数字の組(89.9、90.1、89.9、89.8、89.9、90.1)が送信されると、図6に示すパターン間隔の幅δ1〜δ6の組のなかから、上記の数字の組と一致する基板番号4のパターン間隔の幅δ1〜δ6の組(識別情報)が検索され、その基板番号4が抽出される。
【0100】
そして、測定工程S6で測定された基板は、抽出工程7で抽出された基板番号4が付与された基板であると識別され、その旨を例えば基板番号を表示して通知する。
【0101】
次いで、次の基板について、間隔測定工程S6及び検索・抽出工程S7がなされる。この間隔測定工程S6及び検索・抽出工程S7は、識別が必要とされた全ての基板について順次行なわれる。
【0102】
上記の間隔測定工程S6及び検索・抽出工程S7において、識別情報として記憶されている所定位置x1〜x6の間隔δ1〜δ6の一部の間隔についてのみ、測定し、検索することもできる。
【0103】
例えば、図6を参照して、基板番号が1〜4の基板の識別が必要になり、これらはプロセス情報及び回路情報によっては識別不能である場合であっても、これらの基板の間隔の幅δ1〜δ3の組が互いに重複しない。このため、所定位置x1〜x3の間隔の幅δ1〜δ3のみを測定し、この間隔の幅δ1〜δ3のみで検索しても正しく基板を識別することができる。この所定位置x1〜x3の間隔は、図3を参照して、同一行に隣接するパターンA、B、Cの(左側の)間隔であり、間隔測定装置24での測定位置の設定が基板のx軸方向の移動のみでなされ、y軸方向の移動がない。このため、設定が容易かつ迅速に行なわれる。
【0104】
また、パターンD、E、Fの形状が不明瞭で間隔の幅δ4〜δ6の精密な測定が困難である場合、上記と同様に明瞭なパターンA、B、Cの間隔の幅δ1〜δ3のみを測定し、検索することで基板の識別を行なうことができる。このため、識別の確実性が向上する。(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、ステップ間隔に予め所与のずれを付与してパターンを露光し、そのパターン間隔のずれ量を基板識別情報とする基板識別方法に関する。
【0105】
図7は本発明の第2実施形態基板識別装置構成図であり、本第2実施形態の基板識別方法に用いられた装置の概要を表している。
【0106】
図7を参照して、本基板識別装置は、第1実施形態の基板識別装置と同様に、ステッパ22、基板処理装置23及びシステムコントローラ21を含む半導体製造システムと、間隔測定装置24、記憶部17及び制御部30を含む識別システムとから構成される。これら各装置及びその動作は、以下の点を除き第1実施形態の基板識別装置と同様である。
【0107】
本第2実施形態の基板識別装置の制御装置30は、位置情報保持部12及び検索・抽出部16に加えて、識別情報とずれ量の関係表11、識別情報作成部13、ずれ量作成部14及び比較値作成部15を有する。
【0108】
識別情報作成部13は、予め準備された識別情報の中から、システムコントローラ21から送信される各基板番号ごとに一つの識別情報を選択し、付与する。ずれ量作成部14は、予めパターン間隔のずれ量の組を複数組作成し、一つの識別情報に対して一組のパターン間隔のずれ量を割り振る。そして、識別情報とずれ量の関係表11は、生成されたずれ量の組と識別情報とを対応させて保持する。本第2実施形態では、識別情報とずれ量の関係表11には、1個の識別情報(R1、・・・、Rn)と1組のずれ量(Δ1、・・・、Δn)とが一対一に対応付けられている。ここでΔ1、・・・、Δnは、後述するように、位置x1、・・・、xnにおけるパターン間隔のずれ量を表している。即ち、位置xiの間隔xiのずれ量はΔiである。
【0109】
比較値作成部15は、測定された一組のパターン間隔のずれ量(1枚の被識別基板内で測定された一組のずれ量)に基づき、被識別基板の識別情報を再現し、これを比較値として出力する。この再現は、測定された一組のずれ量(Δ1、・・・、Δn)を、識別情報とずれ量の関係表11と照合して一致する識別情報(R1、・・・、Rn)を比較値として抽出することでなされる。
【0110】
検索・抽出部16は、比較値と一致する識別情報を記憶部17から検索し、検索された識別番号を有する基板番号を抽出する。
【0111】
本第2実施形態のステッパは、ずれ量が入力され、所与のステップ間隔(予め定められた一定間隔)にずれ量を加えたステップ間隔でステップアンドリピート露光を行なう。
【0112】
以下本第2実施形態例の基板識別工程を説明する。
【0113】
図8は本発明の第2実施形態工程図であり、露光工程、基板処理工程及び基板識別工程を含む基板識別工程のシーケンスを表している。
【0114】
先ず、基板の準備工程S21では、基板処理に投入される半導体基板1を準備する。システムコントローラ21は、第1実施形態と同様に、基板1ごとに基板番号を付与し、その基板1の回路情報及びプロセス情報を制御部10へ送信する。制御部10は、回路情報及びプロセス情報を基板番号に関連付けて記憶部17へ記憶する。
【0115】
次いで、識別情報作成工程S41では、識別情報作成部13が、予め必要な個数の識別情報を作成しておき、その中から識別情報を選択して各基板番号に割り振る。この基板番号と識別情報は記憶部17に送信され、記憶部17に基板番号に対応した識別情報が、回路情報及びプロセス情報とともに記憶される。
【0116】
上述した基板の準備工程S21に先立ち、ずれ量作成部14は、ずれ量の組を複数組作成する。このずれ量の組の一組を構成するずれ量の個数は、位置情報保持部12に保持されている位置情報が表示するパターン間隔の個数と同じか、又はそれより小さい個数とする。
【0117】
そして、ずれ量作成部14は、識別情報作成部13が作成した識別情報の一つに一つのずれ量の組を割り振り、その結果を、識別情報とずれ量の関係表11として保持する。
【0118】
位置情報は、第1実施形態と同様に、予め定められた所定のパターン間隔の位置を表しており、例えば、基板1上に配置されたパターン群の中の位置座標として表示される。本第2実施形態では、第1実施形態と同様に、位置情報としてパターンを特定する表示を用いた。所定位置の座標位置は、この特定されたパターンの位置と、パターン内に形成されたマーカの位置とから算出される。即ち、パターンを特定する表示から導出されるパターンの位置ベクトルに、パターンからマーカに至る位置ベクトル(このベクトルは予め与えられた1個の一定のベクトルである)を加えてパターン間隔の位置ベクトルとする。この位置情報は、露光工程S22及びずれ量作成工程S43に先立ち、予め位置情報保持部12に保持され、さらに、記憶部に記憶される。
【0119】
以下に、上述した識別情報、ずれ量及び基板番号の関係を詳細に説明する。なお以下、説明を明確にするため、所定位置xiのパターン間隔を間隔xiと表記し、間隔xiの幅を幅δi、幅δiの所与の幅からのずれ量をずれ量Δiと表記する。なお、iは自然数を表す。
【0120】
図9は本発明の第2実施形態の識別情報と基板番号の割り振りを説明する図であり、2個のずれ量Δ1、Δ2と、基板番号1〜25との関係を表している。
【0121】
本第2実施形態では、離散値からなるずれ量Δiの最小離散間隔Δを0.5μm、ずれ量Δiの最大値を±2μmとし、2個のずれ量Δ1、Δ2のそれぞれが5レベルの離散値を採り得るように設定した。即ち、ずれ量Δ1、Δ2は、2Δ=1.0μm、Δ=0.5μm、0μm、−Δ=−0.5μm、−2Δ=−1.0μmからなる5レベルの離散値の何れかをとる。
【0122】
識別情報は、離散値からなる2個のずれ量Δ1、Δ2の組(Δ1、Δ2)ごとに一つの識別情報が付与される。なお、識別情報が付与されないずれ量Δ1、Δ2の組があっても差し支えない。この識別情報は、重複しなければいかなる形式の情報であっても差し支えない。例えば、識別情報として、ずれ量Δ1、Δ2の組を最小離散間隔Δで規格化した値を用いることができる。即ち、ずれ量Δ1、Δ2の組が(iΔ、jΔ)と表わされる(単位はμm)とき、識別情報を(i、j)と表現する(i、jは整数)。この表現は、識別情報からずれ量Δ1、Δ2を、式や図表を用いることなく、容易に算出することができるという利点がある。
【0123】
本第2実施形態では、ずれ量の組(Δ1、Δ2)ごとに、1つの基板番号と1つの識別情報が対応付けられる。例えば、図9において、ずれ量の組(2Δ、−2Δ)、即ち識別情報(2、−2)に対して基板番号1が割り振られ、ずれ量の組(Δ、2Δ)、即ち識別情報(1、2)に対して基板番号24が割り振られる。なお、このようにして作成された識別情報(i、j)とずれ量(iΔ、jΔ)は、上述したように、識別情報とずれ量との関係表11に送信され、保持される。
【0124】
なお、ずれ量の組(x1、x2)をそのまま識別情報として用いてもよい。この場合、識別情報とずれ量の関係表31は不要である。さらに、基板番号を識別情報として用いてもよい。この場合、識別情報の作成は不要である。
【0125】
このようにn個の間隔x1〜xnのずれ量Δ1〜Δnからなる組において、ずれ量Δ1〜Δnがα個のレベルの離散値をとり得るとき、これらの組はαn 個の組合せをとることができる。従って、αn 個の基板に対して異なる識別情報を割り振ることができる。例えば2個のずれ量Δ1、Δ2からなり、5個の離散レベルを有する本第2の実施形態例では、n=2、α=5であり、52 =25個の識別情報が作成でき、その結果25枚の基板1に対応させることができる。より多数の基板の識別が必要ならば、ずれ量の個数n又は離散レベルαを増やすことで容易に対処することができる。
【0126】
次いで、記憶部に記憶する工程S42では、記憶部17に送信された位置情報を基板番号に関連付けて記憶する。さらに、基板番号に関連付けて識別情報、回路情報及びプロセス情報を記憶する。
【0127】
図10は本発明の第2実施形態記憶データ構造図であり、記憶部17に記憶された基板番号に関連するデータ及び位置情報のデータの構造を表している。なお、図10(a)は基板番号に関連するデータの構造を、図10(a)は位置情報のデータを表している。
【0128】
図10(a)を参照して、記憶部17には、1つの基板番号に対して、識別情報R1〜Rn、プロセス情報及び回路情報が関連する一連のデータとして基板番号ごとに記憶される。この識別情報R1〜Rnは、パターン間隔位置x1〜xnのずれ量Δ1〜Δnにそれぞれ対応している。一方、位置情報は、n個のパターン間隔位置x1〜xnのそれぞれの右に位置するn個のパターンの表示と、これとは別に、パターンからマーカに至る1個のベクトル(図示していない。)とから構成される。
【0129】
図11は本発明の第2実施形態記憶データ構成図であり、2個の間隔x1、x2の幅δ1、δ2を用いたとき(n=2の場合)の、記憶部17に記憶された全ての基板番号についてのデータを表している。なお、図11は、図9に示す割り振りに従って作成されたデータを表している。
【0130】
図11を参照して、記憶部17には、基板処理工程に投入された基板の基板番号と、その記憶番号に対応付けられた識別情報(R1、R2)とが配置されて記憶されている。さらに、その基板のプロセス情報及び回路情報が基板番号に関連付けて配置されている。なお、回路情報PA、PB、PCはそれぞれ異なる回路からなる半導体装置の種類を表している。これらのうち、プロセス情報は、後述する基板処理工程のなかでその基板が処理されている工程を表し、システムコントローラにより工程の進行とともに順次書き換えられる。
【0131】
次いで、再び図8を参照して、基板1は露光工程S22に送られる。
【0132】
露光工程S22では、まず、ずれ量作成工程S43でパターン間隔のずれ量を作成する。ずれ量作成工程S43では、露光される基板の基板番号及び位置情報を取得し、図10を参照して、その基板番号に対応する識別情報(R1、・・・、Rn)を取得する。
【0133】
次いで、識別情報(R1、・・・、Rn)を識別情報とずれ量の関係表31に照合して、識別情報(R1、・・・、Rn)に対応するずれ量の組(Δ1、・・・、Δn)を読み出す。次いで、ずれ量の組(Δ1、・・・、Δn)の各要素Δiが、位置情報が表示する所定位置xiのパターン間隔のずれ量Δiであるとして、所定位置xi及びずれ量Δiをステッパ22へ送信する。なお、位置情報に表示されていないパターン間隔のずれ量は零とされる。
【0134】
露光工程S22では、基板1はステッパ22に搬送され露光される。ステッパ22は、ずれ量作成工程S43で作成されたずれ量を、予めシステムコンローラが設定した所与のステップ間隔(一定値である。)に加算したステップ間隔でパターン3を露光する。
【0135】
図12は本発明の第2実施形態パターン配置図であり、半導体基板1上に露光されたパターン配置を表している。図13は本発明の第2実施形態パターン平面図であり、図12のパターンA、B、Xを含む行の一部を拡大して表している。
【0136】
図12を参照して、直径300mmの半導体基板1上に、矩形のパターン3を90μmの間隔5を設けて行列状に露光した。パターン3は、第1実施形態と同様に、1パターン3内に3行2列に配置された6個の10mm角の正方形の回路パターン2を含み、さらにパターン3の左右に、図4を参照して、間隔測定用のマーカ4R、4Lを有する。
【0137】
図12を参照して、パターン3の中から位置情報によりパターンA、B、Xが指定される。このとき、図13を参照して、パターンA、B、Xの左のパターン間隔5−1、5−2、5−3の幅は、予め定められた所与の間隔の幅90μmにずれ量を加算した間隔δ1、δ2、δad距離とされ、その他のパターン間隔3は所与の間隔の幅90μmとされる。
【0138】
図13を参照して、パターンA、Bの左の間隔5−1、5−2は、90μmの一定のパターン間隔に、それぞれ図9に示す間隔x1、x2のずれ量Δ1、Δ2を加算した値、例えば基板番号17の基板では間隔x1のずれ量Δ1=−Δ及び間隔x2のずれ量Δ2=+Δを加算した値となる。即ち、基板番号17の基板のパターン間隔5−1、5−2の距離(幅)δ1及びδ2は、δ1=所定間隔−Δ及びδ2=所定間隔+Δである。ここで、所定間隔は90μmである。
【0139】
パターンXは、修正用ずれ量を有する修正用間隔5−3を形成するために設けられる。この修正用間隔の距離(幅)δadは修正用ずれ量Δadを有す。そして、この修正用ずれ量Δad及びパターン間隔5−1、5−2のずれ量の総和、Δad+Δ1+Δ2が0となるように修正用ずれ量Δadは設定される。
【0140】
このように修正用ずれ量Δadを設定すると、パターンXは、ずれ量が零のパターン位置、即ち所定の位置に配置される。従って、パターンA、B以外の全てのパターン3は、ずれ量がない所定位置に配置される。これにより、基板1外周の近傍に配置されるパターン3は常に所定位置に配置され、パターンA、Bの移動があっても移動しない。このため、基板外周のパターンの移動に起因して、このパターンから生じた欠陥が基板上に延在するという問題は回避される。
【0141】
このパターンXを複数配置し、複数の修正用間隔を設けてもよい。このとき、修正用間隔の修正用ずれ量の総和とパターン間隔5−1、5−2のずれ量の総和との和が零になるように設定する。なお、パターンXは離れていても、パターンA、Bの間に設けてもよい。なお、修正用間隔の位置を表示する修正用間隔の位置情報は、位置情報と同様のデータ構造を有し、位置情報とともに位置情報保持部32に保持される。
【0142】
次いで、図8を参照して、基板1はパターン形成工程S23へ送られ、基板処理工程が開始する。この基板処理工程はいわゆるウエーハ工程であり、基板処理装置23内部で行なわれる。システムコントローラ21は、各基板1の処理工程を管理し、その収容位置を監視する。そして、ある基板1の各処理工程が開始されると同時に、記憶部17にアクセスし、その基板1の基板番号に対応するプロセス情報を書き換える。
【0143】
基板処理工程に異常が発生しないときは、このまま基板処理が進行して半導体装置が形成された基板が製造される。そして、基板1が処理装置23から搬出されると、システムコントローラ21は、その基板1の基板番号及びそれに関連する情報を消去する。
【0144】
次に、基板処理工程で異常が発生した場合を説明する。
【0145】
図8を参照して、システルコントローラ21は、異常発生を認知すると、まず、基板1の現在置かれている場所、処理工程及び回路情報等を調査し、管理を逸脱した基板1を抽出し、抽出した基板1に対して基板識別工程を開始する。
【0146】
基板識別工程では、まず、回路識別工程24で、基板1に形成されつつある回路の種類を調べ、これを回路情報と比較する。この工程24は、目視あるいは通常のパターン識別装置、その他の識別装置を用いてなされる。その結果、識別された基板1を除き、残りの回路情報からは識別不能な基板1について、次の間隔の測定工程S25を行なう。
【0147】
次いでなされる間隔の測定工程S25では、位置情報が指示する間隔5−1、5−2及び修正用間隔5−3の位置情報が指示するパターン間隔5−1〜5−3の幅を測定する。測定された間隔の幅の組(δ1、δ2、δad)は、比較値作成部15に送信される。このパターン間隔の測定は、第1実施形態と同様の装置により、間隔測定用のマーカ4を用いて測定された。
【0148】
次いで、比較値作成工程S44では、比較値作成部15が受信した測定値、即ちパターン間隔の幅の組(δ1、δ2、δad)から、所定間隔90μmを減算して間隔5−1〜5−3それぞれのずれ量Δ1、Δ2、Δ3を算出する。これらのずれ量は、必ず離散距離の最小値Δの整数倍となっているから、多少の誤差が生じても容易にΔの整数倍の値に丸めることで誤差が修正される。
【0149】
次いで、比較値作成部35は、算出されたずれ量Δ1、Δ2を、識別情報とずれ量の関係表11に照合して、一致するずれ量の組(Δ1、Δ2)に対応する識別情報を抽出する。例えば、ずれ量の組(Δ1、Δ2)が(−Δ、+Δ)であると、(−1、+1)と表示される識別情報(R1、R2)が抽出される。比較値作成部15は、この抽出された識別情報(R1、R2)を比較値として検索・抽出部16へ送信する。
【0150】
次いで、検索・抽出工程S45では、検索・抽出部16、記憶部17を検索して、送信された比較値と一致する識別情報を検索する。次いで、この識別情報に対応する基板番号が抽出される。そして、この基板識別工程で識別中の基板は、その基板番号を有する基板1であると識別される。
【0151】
例えば、比較値が(−1、+1)であるとき、これと同一表記がされる識別情報(−1、+1)が記憶部17中から検索され、図11を参照して、対応する基板番号7が抽出される。このように、記憶部17を検索するキーが、識別情報と同一表示のデジタル値からなる比較値であるため、検索、抽出は確実かつ容易である。
【0152】
上述した第2実施形態では、2箇所の間隔x1、x2にずれ量を付加したが、これを一般にn個の間隔x1〜xnに拡張して、適用することができる。
【0153】
図14は本発明の第2実施形態第1変形例パターン平面図であり、一行に含まれ、互いに隣接するn個のパターン3間の間隔5−1、・・・、5−nにずれ量を付加した場合のパターンを表している。
【0154】
図14を参照して、一般に、位置情報が示す所定位置x1、・・・、xnの間隔x1、・・・、xnの幅δ1、・・・、δnは、第2実施形態と同様に、δi=所定間隔+Δi(iは自然数)と表される。そして、修正用ずれ量δadを有する修正用間隔5adを、同一行のパターン3行の中に設ける。
【0155】
この第1変形例は、間隔x1、・・・、xnがn個ある他は、第2実施形態と同様である。例えはデータ構造は図5(a)及び図5(b)に示す第2実施形態のデータ構造と同様である。また、ずれ量はΔ1〜Δnの組からなり、比較値も識別情報と同じくn個の数の組(R1、・・・、Rn)からなる。従って、比較値をキーとする識別情報の検索では、n個の数の組が一致する識別情報が検索される。
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、第2実施形態における間隔の幅として、x軸方向の間隔の幅に加えてy軸方向の間隔の幅をも識別用として用いる基板識別方法に関する。
【0156】
図15は本発明の第3実施形態パターン配置図であり、基板上のパターン配置を表している。図16は本発明の第3実施形態パターン平面図であり、図16の一部を拡大したものである。
【0157】
図15を参照して、本第3実施形態では、半導体基板1上にパターン3を行列状に露光する。パターン間隔は、ずれ量が零のときは行及び列方向の間隔はともに同一幅、例えば90μmである。これらは、第2実施形態と同様である。
【0158】
上記パターン3から、複数の行、例えはパターンA、Bを含む行及びパターンC、Dを含む行を選択し、これらの行の紙面上側のパターン間隔y1、y2の幅δ’1、δ’2にそれぞれずれ量Δ’1、Δ’2を付与する。ここで、間隔y1、y2は、位置情報y1、y2により指定される所定の行間隔である。
【0159】
図16を参照して、パターンA、Bは、第2実施形態と同様に、その左側のパターン間隔δ1、δ2が、その基板の識別情報に従い定められるずれ量分増減するように露光される。また、パターンC、Dも同様に配置される。従って、パターンA〜Dの左側のパターン間隔の幅の組(δ1、δ2、δ3、δ4)は、識別情報の一部を表現している。
【0160】
本第3実施形態では、さらに、パターンA、Bを含む行の上側のパターン間隔5−11の幅δ’1、及びパターンC、Dを含む行の上側のパターン間隔5−12の幅δ’2を、上記パターンA〜Dの左側のパターン間隔の幅δ1、δ2、δ3、δ4と同様に、識別情報に従い定められるずれ量分増減して露光する。従って、識別情報を、6個の数からなるパターン間隔の幅の組(δ1、δ2、δ3、δ4、δ’1、δ’2)のそれぞれに対応させることができる。パターン間隔の幅δ1〜δ’2は、それぞれ+2Δ〜−2Δまでの5個の離散値を採り得るから、この6個の数からなる組により、56 個の基板に異なる識別情報を付与することができる。
【0161】
パターンX及びパターンX’は、その左側のパターン間隔5−3及びその上側のパターン間隔5−13が、それぞれ行方向(x軸方向)及び列方向(y軸方向)のずれ量を補正する修正用ずれを与えるように配置される。即ち、行方向の修正用間隔の幅δad1、δad2を、−δad1=δ1+δ2、−δad2=δ3+δ4とし、列方向の修正用間隔の幅δ’ad1を、−δ’ad1=δ’1+δ’2とする。これにより、パターンA〜D以外のパターン3は、全てずれ量が零の所定の位置に配列される。
【0162】
図17は本発明の第3実施記憶データ構造図であり、記憶部17に記憶された識別情報のデータ構造を表している。
【0163】
図17を参照して、識別情報は行方向のn個のずれ量に関連する数値R1〜Rnと、列方向のm個のずれ量(即ちm個の行のずれ量)に関連する数値R’1〜R’mとから構成され、一つの基板番号に対応して記憶さている。さらに、位置情報保持部32には、位置情報として、これらの各座標位置を表すデータが、識別情報の各数値R1〜Rn、R’1〜R’mに対応させて保持される。これらのデータは、列方向の間隔、即ち隣接する行の間隔が加わる他は、第2実施形態と同様にして利用される。
【0164】
本第三実施形態の識別情報、ずれ量及び比較値は、これらの間の関係及びデータ表現は全て第2実施形態と同様である。
【0165】
上述した数値R1〜Rn、R’1〜R’mからなる識別情報は、各ずれ量がα段階の離散値をとる場合、αn+m 個の値を採り得る。この値は、n、mが2〜3としても、通常の処理装置に投入される基板の数に比べて十分大きく、通常の管理には十分である。さらに、多量の識別情報を必要とする場合は、列方向のずれ量を、各パターンごとに識別情報に従って与えることもできる。例えば、図15に示すパターンA〜Dのそれぞれのパターン位置を識別情報に基づいて独立して左右及び上下に移動する。これにより、n個のパターン3を移動させる場合、α2N個の異なる識別情報に対応することができる。
【0166】
上記の本明細書には、以下の付記記載の発明が開示されている。
(付記1)ステッパを用いたステップアンドリピート露光により、基板上に複数パターンを配置し露光する露光工程後になされる基板処理工程の開始後に、前記基板を識別する工程を有する基板識別方法において、
前記基板上の所定位置を挟み互いに隣接して形成された第1及び第2の前記パターンの間隔の幅を測定し、前記第1及び第2のパターンの間隔の幅の測定値を識別情報として前記基板に関連付けて記憶部に記憶する工程と、
その後、識別されるべき基板上に、前記所定位置を挟み互いに隣接して形成された第3及び第4の前記パターンの間隔を測定し、前記第3及び第4のパターンの間隔の幅の測定値を比較値として出力する工程と、
前記記憶部を検索して、前記比較値と一致する前記識別情報に関連付けられた基板を抽出する工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
(付記2)前記ステッパを用いたステップアンドリピート露光は、ステップ間隔に予め作定された揺らぎを加えて露光することを特徴とする付記1記載の基板識別方法。
(付記3)ステッパを用いたステップアンドリピート露光により、基板上に複数パターンを所与の幅の間隔を設けて配置するように露光する露光工程後になされる基板処理工程の開始後に、前記基板を識別する工程を有する基板識別方法において、
前記基板の識別情報を前記基板に関連付けて記憶部に記憶する工程と、
予め作成された識別情報とずれ量の関係に基づき、前記基板の識別情報に対応するずれ量を作成する工程と、
前記基板上の所定位置を挟み互いに隣接して形成されるべき第1及び第2の前記パターンの間の間隔の幅が、前記所与の幅の間隔より前記ずれ量だけずれるように前記第1及び第2のバターンを露光する工程と、
その後、識別すべき基板上の前記所定位置を挟み互いに隣接して形成された第3及び第4の前記パターンの間隔の幅の、前記所与の幅からのずれ量を測定する工程と、
識別情報とずれ量の前記関係に基づき、測定された前記所与の幅からのずれ量に対応する識別情報を比較値として作成する工程と、
前記記憶部を検索して、前記比較値と一致する前記識別情報に関連付けられた基板を抽出する工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
(付記4)前記パターンは行列状に配置されることを特徴とする付記1〜3の何れかに記載の基板識別方法。
(付記5)前記第1パターンは前記基板上に散点状に配置されることを特徴とする付記1〜4の何れかに記載の基板識別方法。
(付記6)前記パターンは行列状に配置され、
前記第1及び第2のパターンは、一つの行又は一つの列内に配列され、
前記一つの行又は一つの列内で互いに隣接する前記パターンの間隔のうちの少なくとも一つを、前記所与の幅の間隔に修正用ずれ量を加えた幅を有する修正用間隔とし、
前記所定のずれ量と前記修正用ずれ量との総和が零になるように、前記修正用間隔の幅を設定したことを特徴とする付記3記載の基板識別方法。
(付記7)前記第2のパターンは、前記第1のパターンの左又は右に位置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の基板識別方法。
(付記8)前記第2のパターンは、前記第1のパターンの上又は下、及び左又は右に位置することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の基板識別方法。
(付記9)互いに隣接する前記パターンの間に、前記パターンと同時に露光される前記パターン間の間隔測定用のマーカを有することを特徴とする付記1〜8の何れかに記載の基板識別方法。
(付記10)前記ずれ量は、離散値からなることを特徴とする付記3、6又は9記載の基板識別方法。
(付記11)前記識別情報は、前記ずれ量を前記離散値の最小間隔で規格化した数値から構成されることを特徴とする付記10記載の基板識別方法。
(付記12)基板の識別情報を生成し、前記基板と関連付けて保持する記憶部と、
前記識別情報に基づき所定のずれ量を作成し、前記所定のずれ量を予め与えられたステップ幅に加えたステップ間隔を作成するステップ間隔作成部と、
前記ステップ間隔で前記パターンをステップアンドリピート露光するステッパとを有することを特徴とする基板識別装置。
(付記13)前記識別情報は、離散値からなる前記ずれ量を前記離散値の最小間隔で規格化した数値として作成する識別情報作成部を備えたことを特徴とする付記13記載の基板識別装置。
(付記14)基板上に第1チップと第2チップを形成する工程と、
前記基板上における前記第1チップと第2チップの間隔を記憶する工程と、
前記記憶された間隔を前記基板の識別情報として、前記基板の識別を行なう工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明を、同一装置又は同一システムに複数の基板が投入される半導体装置又は液晶パネルの基板処理工程に適用することで、基板が混在した場合でも確実に基板識別をすることができるので、半導体装置又は液晶パネルの製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の第1実施形態基板識別装置構成図
【図2】本発明の第1実施形態工程図
【図3】本発明の第1実施形態パターン配置図
【図4】本発明の第1実施形態パターン平面図
【図5】本発明の第1実施形態記憶データ構造図
【図6】本発明の第1実施形態記憶データ構成図
【図7】本発明の第2実施形態基板識別装置構成図
【図8】本発明の第2実施形態工程図
【図9】本発明の第2実施形態の識別情報と基板番号の割り振りを説明する図
【図10】本発明の第2実施形態記憶データ構造図
【図11】本発明の第2実施形態記憶データ構成図
【図12】本発明の第2実施形態パターン配置図
【図13】本発明の第2実施形態パターン平面図
【図14】本発明の第2実施形態第1変形例パターン平面図
【図15】本発明の第3実施形態パターン配置図
【図16】本発明の第3実施形態パターン平面図
【図17】本発明の第3実施記憶データ構造図
【符号の説明】
【0169】
1 基板
2、2’、2’−4〜2’−6、2”−3、2”−6、2”’−1〜2”’−3、2””−1、2””−4 回路パターン
3、3’、3”、3”’、3”” バターン
4、4L、4R、4U、4’D、4’R、4”’L、4”D、4””U マーカ
5、5−1〜5−n、5ad 間隔
10、30 制御部
11 識別情報とずれ量の関係表
12 位置情報保持部
13 識別情報作成部
14 ずれ量作成部
15 比較値作成部
16 検索・抽出部
17 記憶部
21 システムコントローラ21
22 ステッパ
23 基板処理装置
24 間隔測定装置
25、38 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッパを用いたステップアンドリピート露光により、基板上に複数パターンを露光する露光工程後に、前記基板を識別する工程を有する基板識別方法において、
前記基板上の所定位置を挟み互いに隣接して形成された第1及び第2の前記パターンの間隔の幅を測定し、前記第1及び第2のパターンの間隔の幅の測定値を識別情報として前記基板に関連付けて記憶部に記憶する工程と、
その後、識別されるべき基板における前記所定位置に対応する位置を挟み互いに隣接して形成された第3及び第4の前記パターンの間隔を測定し、前記第3及び第4のパターンの間隔の幅の測定値を比較値として出力する工程と、
前記記憶部を検索して、前記比較値と一致する前記識別情報に関連付けられた基板を抽出する工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
【請求項2】
ステッパを用いたステップアンドリピート露光により、基板上に複数パターンを露光する露光工程後に、前記基板を識別する工程を有する基板識別方法において、
前記基板の識別情報を前記基板に関連付けて記憶部に記憶する工程と、
予め作成された識別情報とずれ量の関係に基づき、前記基板の識別情報に対応するずれ量を作成する工程と、
前記基板上の所定位置を挟み互いに隣接して形成されるべき第1及び第2の前記パターンの間の間隔の幅が、前記所与の幅の間隔より前記ずれ量だけずれるように前記第1及び第2のパターンを露光する工程と、
その後、識別すべき基板における前記所定位置に対応する位置を挟み互いに隣接して形成された第3及び第4の前記パターンの間隔の幅の、前記所与の幅からのずれ量を測定する工程と、
識別情報とずれ量の前記関係に基づき、測定された前記所与の幅からのずれ量に対応する識別情報を比較値として作成する工程と、
前記記憶部を検索して、前記比較値と一致する前記識別情報に関連付けられた基板を抽出する工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
【請求項3】
前記パターンは行列状に配置され、
前記第1及び第2のパターンは、一つの行又は一つの列内に配列され、
前記一つの行又は一つの列内で互いに隣接する前記パターンの間隔のうちの少なくとも一つを、前記所与の幅の間隔に修正用ずれ量を加えた幅を有する修正用間隔とし、
前記所定のずれ量と前記修正用ずれ量との総和が零になるように、前記修正用間隔の幅を設定したことを特徴とする請求項2記載の基板識別方法。
【請求項4】
基板上に第1チップと第2チップを形成する工程と、
前記基板上における前記第1チップと第2チップの間隔を記憶する工程と、
前記記憶された間隔を前記基板の識別情報として、前記基板の識別を行なう工程とを有することを特徴とする基板識別方法。
【請求項5】
基板の識別情報を生成し、前記基板と関連付けて保持する記憶部と、
前記識別情報に基づき所定のずれ量を作成し、前記所定のずれ量を予め与えられたステップ幅に加えたステップ間隔を作成するステップ間隔作成部と、
前記ステップ間隔で前記パターンをステップアンドリピート露光するステッパとを有することを特徴とする基板識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−311440(P2008−311440A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157994(P2007−157994)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】