説明

堆肥化袋

【課題】堆肥化袋の反転させて吊り下げることを容易とし、完成した堆肥を容易且つ安全に取り出せるようにした堆肥化袋を提供する。
【解決手段】通気性素材からなる円筒状の胴部1と、この胴部1の底面を閉塞する底部10と、上記胴部1の上部開口を開閉可能に閉塞する上蓋8とからなり、上記胴部1の上端縁に上部吊下ロープ11を取り付けた堆肥化袋であって、上記胴部底面に袋を反転させて吊り下げ可能な反転用ロープ13を取り付けるという手段を採用した。このとき、上蓋8は透水性素材であってもよい。そして、反転用ロープ13は、胴部1の下端縁に二本の下部吊下ロープ12を交叉させて取り付け、その交叉部に反転用ロープ13を取り付けるという手段を採用し、さらに、先端に吊下リング14を形成した自由端が底部10の外周縁からはみ出す長さとするという手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落ち葉や芝刈りカス、剪定枝などの植物系有機物や、籾殻・切り藁などの農畜産廃棄物を原肥として発酵、堆肥化させる堆肥化袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、植物系有機物や農畜産廃棄物などを収集・堆積して、腐熟・発酵を待って堆肥化するため、通気性素材からなる筒状胴部の上下に開閉可能な上蓋と底蓋を設けてなる比較的大型の堆肥化袋が使用されている。そしてこの種の袋から堆肥を取り出す際には、袋を適宜な手段で吊り下げ、底蓋を開放するようにして取り出していた。
【0003】
しかしながら、通常屋外で使用されるこの種の堆肥化袋は、内部の原肥が良好に腐熟するまでに長時間を要するため、この間に原肥が沈降して袋胴部が中膨れ状ないし下膨れ状となって硬化し、いわゆるブリッジとなってしまい、その堆肥化袋の底部を全開しても、堆肥を取り出せないケースが見られた。
【0004】
そこで、本願出願人は、特許文献1に開示したように、堆肥化袋の胴部の下半部の少なくとも一ヶ所において、ファスナー等により縦方向に開閉可能とした堆肥化袋を提案している。このように胴部下半部の縦方向を開閉可能としたことにより、実質的に堆肥を取り出すことができる取出口の面積が大きくなり、硬化してブリッジとなった堆肥をそのまま取り出すことができるようになった。
【0005】
しかし、かかる構造の堆肥化袋の場合、原肥の沈降による内圧によって、胴部下半部のファスナー等により開閉可能とした部分に大きな力がかかり、ファスナー等が左右に裂けてしまうおそれがあったから、別途、ロープ等を結ぶなどして該部を補強する必要があったほか、胴部を縦方向に開く構造上、横から堆肥がこぼれ落ちるのを回避するため、開閉部の内部に折りひだ状のあて布を設ける必要があるなど、構造的に複雑なものとなっていた。
【0006】
このため、本願出願人は、特許文献2に示すように、通気性素材からなる円筒状の胴部と、その上部開口を開閉可能な上蓋と、上記胴部を延長して菊割り状とした底受け部材と、上記胴部の内側に縫着して胴部下面を閉塞する排出口部とからなる堆肥化袋において、上記胴部の菊割りが始まる部分の外周に弾性を有するフープを取付けた堆肥化袋を提案している。かかる構造の堆肥化袋は、フープがフレームとして機能し、胴部下縁の排出口が円状に開いた状態で広く維持されるため、該部で堆肥のブリッジが発生することがなく、堆肥は極めて容易に排出されることになる。
【0007】
【特許文献1】特開2001−220277号公報
【特許文献2】特開2002−316886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述したような堆肥化袋は、ブリッジが発生した堆肥であっても、袋を適宜な手段で吊り下げ、下向きの底部ないし排出口を開放して堆肥を放出することで容易に堆肥を取り出すことができるものであるが、その際、袋の底部には大きな重量がかかっているため、底蓋のファスナーを開いたり、緊締していた紐を解きほぐすのに非常な手間を要するとともに、開放時にかなりの重量の堆肥が一気に放出されることから、危険を伴う作業であった。
【0009】
そこで、本発明は、堆肥化袋から、完成した堆肥を容易且つ安全に取り出せるようにした堆肥化袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、通気性素材からなる円筒状の胴部と、この胴部の底面を閉塞する底部と、上記胴部の上部開口を開閉可能に閉塞する上蓋とからなり、上記胴部の上端縁に上部吊下ロープを取り付けた堆肥化袋であって、上記胴部底面に袋を反転させて吊り下げ可能な反転用ロープを取り付けるという手段を採用した。
【0011】
また、上記上蓋は、透水性素材からなるものであるという手段を採用した。
【0012】
また、かかる堆肥化袋において、胴部の下端縁に二本の下部吊下ロープを交叉させて取り付け、その交叉部に反転用ロープを取り付けるという手段を採用した。
【0013】
そして、この反転用ロープは、先端に吊下リングを形成した自由端が底部の外周縁からはみ出す長さとするという手段を採用した。
【0014】
また、胴部の上端縁及び下端縁の外周に幅広の帯布を縫着するという手段を採用した。
【0015】
そして、胴部の外周面の上記上下の帯布の中間に、さらに、適当間隔をおいて補強帯布を縫着するという手段を採用し、胴部の外周面の上下方向にも、さらに、所定の間隔をおいて補強帯布を縫着するという手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の堆肥化袋は、胴部底面に反転用ロープを取り付けて袋を反転させて吊り下げることができるようにしているので、上面開口部から容易に堆肥を排出させることができ、従来のように袋の下で開蓋作業をするという危険な作業を避けることができる。
【0017】
このとき、反転用ロープは、交叉させた下部吊下ロープの中央の交叉部に取り付けているので、袋を吊り下げる時の力が袋底部の中央に集中し、下部吊下ロープを介して袋周縁に均等に負荷されるので、袋を変形させることなく、安全且つ確実に袋を横倒しし、さらに反転させて吊り下げることが可能となる。また、反転用ロープの先端には吊下リングが設けられ、この吊下リングは袋底部の外周縁からはみ出して設けられているので、吊下リングを容易にクレーン等のフックに取り付けることができる。
【0018】
一方、胴部の上端縁及び下端縁の外周に幅広の帯布を縫着しているので、袋を設置する場合に円筒形状に起立して維持できる。また、下端縁の帯布は、雨のはね返りが袋内に侵入することを防止する雨よけとしても機能するものである。
【0019】
また、上記上下の帯布の中間に、さらに、適当間隔をおいて補強帯布を縫着し、胴部外周の上下方向に、さらに、複数の補強帯布を縫着したことにより、胴部の起立がより容易となるとともに、胴部のふくらみを規制して、ブリッジの発生を抑制できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る堆肥化袋の好ましい実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本発明の堆肥化袋の正面図、図2(A)は堆肥化袋の底面概略図、同図(B)は上面概略図である。図において、1は堆肥化袋の円筒状の胴部であって、通気性素材からなるものである。2は、上記胴部1の下縁近傍の外周に縫着した比較的幅広の帯布であって、雨が降った場合の雨のはね返りが袋内に侵入することを防止する雨よけとなるとともに、円筒状胴部1の底部の立ち上がりとしても機能するものである。3は、上記胴部1の上縁近傍の外周に縫着した幅広の帯布であって、上面開口部分を円筒形状に維持するために機能するものである。4、4は、上記胴部1の中間部分の外周に縫着した所定幅の補強帯布であって、上記同様、袋の胴部1を円筒形状に維持するために機能するもので、胴部のふくらみを規制して、ブリッジの発生を抑制する機能も有するものである。5、5は、上記胴部1の外周面に一定間隔をおいて上下方向に縫着した補強帯布で、胴部を起立させ、直立状に維持するために機能するものである。この補強帯布5のそれぞれの上下端部には、あて布6、6・・を介して、下述する吊下ロープを取り付ける取付環7、7・・を縫着している。取付環7は、ベルト状の布を二つ折りにしてリング状としたものである。
【0021】
8は、胴部1の上面開口を完全に閉塞する円盤状の上蓋で、周縁に設けたファスナー9によって開閉自在に設けられるものである。この上蓋8の素材は特に限定するものではないが、例えば、上面から雨等が侵入することを防止する場合には、不透水性又は難透水性の素材で構成したものを用いる。また、収容する原肥の材料によっては、雨等が浸透してもよく、その場合には透水性のものを用いることもある。10は、胴部1の底面を閉塞する底部で、胴部1の下端周縁に縫着したものである。なお、この底部10は、上記上蓋8と同様に、ファスナーで開閉自在に設けることもある。この底部10は、上記胴部1と同じ通気性素材によって構成する。
【0022】
11、11は上記胴部1の上端縁に上記取付環7・・を介して取り付けた上部吊下ロープで、袋の移動・運搬時にクレーンやショベルカー等のフックに吊り下げるためのものである。この上部吊下ロープ11は、図2(B)に示すように、胴部上端縁の少なくとも二箇所に取り付けて、安定した吊り下げが出来るようにしている。12、12は上記胴部1の下端縁に上記取付環7・・を介して取り付けた下部吊下ロープである。この下部吊下ロープ12、12は、図2(A)に示すように、3箇所の交叉部12a、12b、12cが中心部分に形成されるように二本のロープを二重に交叉させて取り付けている。そして、中央の交叉部12bには、その自由端が上記底部10の外周縁からはみ出す長さを有する反転用ロープ13を取り付けており、上記自由端にはクレーン等のフックを係着するための吊下リング14が形成されている。上記吊下ロープ12及び反転用ロープ13は、後述するように、堆肥化袋を上下反転させて吊下するためのものである。
【0023】
なお、上下の吊下ロープは、堆肥化袋をクレーン等で吊下できればよく、紐状のほか、ベルト状のものでもよく、特に形状を限定するものではない。また、ロープの取り付けも、上述した取付環を介するもののほか、ベルト状のものであれば、直接、袋に縫着するものであってもよい。
【0024】
次に、図3は、上記構成の堆肥化袋の胴部1の側面に、反転用ロープ13の係止具15を設けたものを提示している。これは、上述のように、先端に吊下リング14が形成された反転用ロープ13の自由端が袋底部10の外周縁からはみ出すようにして、クレーン等のフックを係着し易いようにしたものであるが、そのままでは、見栄えが悪く、また、反転用ロープ13の存在が作業の妨げとなる場合がある。そこで、胴部1の側面に反転用ロープを係止できる係止具15を設けてその先端を固定し、反転用ロープ13が不用意に作業の妨げとならないようにしたものである。具体的には、図(B)、(C)に図示したように、公知のバックル15aを介して分離可能な帯片15bを縫着し、帯片15bを吊下リング14に通してバックル15aを係止させることで、反転用ロープ13を胴部1の側面に固定できるようにしたものである。なお、上例では係止具の係止手段としてバックルを例示しているが、これに限定されるものではなく、面ファスナーやスナップボタン等公知の係止手段を採用することができ、例えば、2本の帯片を結び合わせるようにして、反転用ロープを固定するものであってもよい。
【0025】
続いて、上記構成の堆肥化袋の使用方法について説明する。まず、堆肥化袋を野外の適当場所に設置し、落ち葉や芝刈りカス、剪定枝などの植物系有機物を充填する。また、それらの乾燥度合いに応じて、必要な場合は加水する。その後、そのまま放置すれば、腐植(好気発酵)が進行し、数ヶ月で優良な堆肥を得ることが出来る。途中、自然重の沈下分は落ち葉等を追加投入する。
【0026】
できあがった堆肥は園芸農家等で土壌に混入して利用する。この場合、袋上面に吊下ロープが設けられているので、クレーン等を利用して運搬が容易である。また、袋から堆肥を取り出す場合、袋を反転させて吊り下げ、内容物を落下させるようにする。このとき、袋底面に下部吊下ロープ12及び反転用ロープ13が取り付けられており、反転用ロープ13の先端の吊下リング14は袋の底部10からはみ出すように設けられているので、この吊下リング14にクレーン等のフックを取り付けて引き上げれば、袋は容易に横転、反転し、吊り下げることができ、堆肥がその自重によって落下する。また、この場合、補強帯布4、5等によってブリッジの発生が抑制されているので、堆肥の落下が阻害されることもない。
【0027】
なお、反転用ロープ13は袋底面の下部吊下ロープ12の中央の交叉部12bに取り付けられているので、反転用ロープ13を引き上げる際、その力は袋底部の中央に集中し、吊下ロープを介して周縁に均等にかかることとなり、袋を変形させることなく横倒しすることが可能となって、更にそのまま反転して確実に吊り下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る堆肥化袋の一例を示す正面図である。
【図2】(A)は堆肥化袋の底面概略図、(B)は上面概略図である。
【図3】上記堆肥化袋の胴部側面に係止具を設けた例を示し、(A)は斜視図、(B)は係止具部分の拡大図、(C)はバックルの例を示すものである。
【符号の説明】
【0029】
1 胴部
2 帯布
3 帯布
4 補強帯布
5 補強帯布
8 上蓋
9 ファスナー
10 底部
11 上部吊下ロープ
12 下部吊下ロープ
13 反転用ロープ
14 吊下リング
15 係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性素材からなる円筒状の胴部と、この胴部の底面を閉塞する底部と、上記胴部の上部開口を開閉可能に閉塞する上蓋とからなり、上記胴部の上端縁に上部吊下ロープを取り付けた堆肥化袋であって、上記胴部底面に袋を反転させて吊り下げ可能な反転用ロープを取り付けたことを特徴とする堆肥化袋。
【請求項2】
上記上蓋は、透水性素材からなる請求項1記載の堆肥化袋。
【請求項3】
胴部の下端縁に二本の下部吊下ロープを交叉させて取り付け、その交叉部に反転用ロープを取り付けた請求項1または請求項2記載の堆肥化袋。
【請求項4】
反転用ロープは、先端に吊下リングを形成した自由端が底部の外周縁からはみ出す長さとした請求項1から請求項3のいずれか1項記載の堆肥化袋。
【請求項5】
胴部の上端縁及び下端縁の外周に幅広の帯布を縫着した請求項1から請求項4のいずれか1項記載の堆肥化袋。
【請求項6】
胴部の外周面の上記上下の帯布の中間に、さらに、適当間隔をおいて補強帯布を縫着した請求項5記載の堆肥化袋。
【請求項7】
胴部の外周面の上下方向に、さらに、所定の間隔をおいて補強帯布を縫着した請求項5または請求項6記載の堆肥化袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−189514(P2008−189514A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25228(P2007−25228)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000217251)田中産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】