説明

塗工装置

【課題】2液硬化型の無溶剤型の接着剤を用いてラミネート製品を製作する際に、準備作業を容易に行うことができ、しかも塗工面を平滑にする。
【解決手段】ウェブ2が搬送される搬送ライン10に臨ませて設けられ、一対のスリット状出口6a、6bを有するとともに各出口6a、6bに個々にそれぞれ連通する一対の入口7a、7bを有する1つのダイコーター5と、一対の入口の一方7aに、接着剤を形成するための第1液8を供給する第1供給手段40と、一対の入口の他方7bに、第1液8に接触することにより接着剤を形成するための第2液9を供給する第2供給手段60とを具備し、ダイコーター5は、一対の出口6a、6bが互いに分離し、かつ、一対の出口6a、6bが搬送ライン10におけるウェブ搬送方向Aに隣接するように配置され、第1液8と第2液9とを出口6a、6bから排出した直後に相接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型であって無溶剤型の接着剤を用い、基材であるシート状のウェブどうしを貼り合わせてラミネート製品を製作する塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の塗工用ロールを用いてラミネートウェブに無溶剤型接着剤を塗工する方法(例えば特許文献1参照)や、無溶剤型接着剤の第1成分を第1のダイコーターでフィルムに塗工し、無溶剤型接着剤の第2成分を第2のダイコーターでフィルムに塗工して複合フィルムを製造する方法(例えば特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−61874号公報
【特許文献2】特開2001−164229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の方法による場合には、図8に示すように、2液硬化型であって無溶剤型の接着剤を構成する2液、例えばタンク113から主剤を、タンク114から硬化剤を別々にダム110へ供給して両者を接触させ、その接触により形成される接着剤を一対の第1ロール101と第2ロール102との間に与え、更にその片方の第2ロール102から別の第3ロール103へと与え、その別の第3ロール103に当接する第4ロール104との間を送られる基材105に供給し、その接着剤を有する基材105を、一対のロールからなるラミネート部109に送るとともに、このラミネート部109に別のラインで送られるもう一つの基材106と前記接着剤を有する基材105とをラミネート部109で圧着し、両基材を貼り合わせてなるラミネート製品107が作製される。この貼り合わせに用いる接着剤は、主剤と硬化剤とが別々のときには硬化しないが、両者を接触させた後に所定時間が経過することで硬化して接着を可能とするものである。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による方法による場合は、以下のような問題があった。つまり、第3ロール103と第4ロール104との間に送られた基材105に接着剤を塗工する際に、塗工液が基材105側と第3ロール103側とに引き裂かれることに起因して塗工面がゆず肌状になることが避けられなかった。特に、耐熱性を上げるために分子量の高い接着剤を用いた場合、塗工粘度が上がることにより、ゆず肌がより顕著に表れる。また、その状態で転写速度を上げると、貼り合わせ後にオレンジピールが発生してしまうという不具合があった。更に、塗工面が荒れることを防止するために接着剤の粘度を下げると、初期タック力が下がってトンネリング等の接着不良が発生してしまうという問題があった。更にまた、ラミネート製品の巾サイズを変更するなどのために装置を停止したときに、ダム110においては2液が接触しているためにダム内部の通路で接着剤が固まり、そのためラミネート製品の巾サイズの変更等の準備作業に長時間を要するという問題もあった。
【0006】
また、上記特許文献1に開示されたロールコート方式で塗工を行う場合には、塗工液の粘度が低いとロールによる塗工液の持ち上げることができず、ウェブに塗工される液量を充分に確保することが困難であるため、例えば液粘度が500Pas(cps)以下の塗工液を使用することができないという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2の方法による場合には、以下のような問題があった。即ち、第1成分からなる1層目をフィルムに塗布した後、第2成分からなる2層目をフィルムに塗布するまでの間に、1層目の外表面(2液接触面)が、一旦空気に曝されるため空気の巻き込みが起こる虞がある。また、2層目の塗工層を薄塗りするためにダイリップを塗面に近づけると2層目のリップで1層目の塗工液を掻き落とすことがあり、このように塗工液を掻き落とされると、塗工面が荒れるという問題もある。更に、一般的にラミネート製品の塗工装置は、頻繁に塗工巾を変更する必要があるため、2つのダイコーターヘッドを有する場合には、両ダイコーターヘッドをそれぞれ取り替えてその塗工巾を変更するサイズ替え作業を行う必要があり、その準備作業に長時間を要するという難点があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術による課題を解決すべくなされたもので、2液硬化型の無溶剤型の接着剤を用いてラミネート製品を製作する際に、準備作業を簡単に行うことができ、しかも塗工面を平滑にすることができる塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗工装置は、2液硬化型であって無溶剤型の接着剤を用い、基材であるシート状のウェブどうしを貼り合わせてラミネート製品を製作するラミネーターにおける塗工装置であって、前記ウェブの一方が搬送される搬送ラインに臨ませて設けられ、一対のスリット状出口を有するとともに各出口に個々にそれぞれ連通する一対の入口を有する1つのダイコーターと、前記一対の入口の一方に、前記接着剤を形成するための第1液を供給する第1供給手段と、前記一対の入口の他方に、前記第1液に接触することにより前記接着剤を形成するための第2液を供給する第2供給手段とを具備し、前記ダイコーターは、前記一対の出口が互いに分離し、かつ、一対の出口が前記搬送ラインにおけるウェブ搬送方向に隣接するように配置され、前記第1液と第2液とを前記出口から供給した直後に相接触させることを特徴とする。
【0010】
本発明による場合には、搬送ラインを搬送されるウェブに対し、ダイコーターの2つの出口からそれぞれ第1液と第2液とが別々に供給される。そして、搬送方向の上流側の出口から供給された液の上に、搬送方向の下流側の出口から供給された液が重ねられて両液が接触し、この接触に伴って形成される接着剤が塗工されたウェブに対し、別のウェブが貼り合わされ、これによりラミネート製品が作製される。このようにダイコーターの2つの入口から各出口までの間、第1液と第2液とを別々に供給するように構成したため、サイズ替え等のために一旦作業を停止しても、ダイコーターの内部およびこれに第1液及び第2液を別々に供給する第1供給手段及び第2供給手段においては、両液が接触していないので、固まった接着剤が内部に存在することがなく、塗工巾の変更時等における準備作業を簡単に行うことが可能である。また、ダイコーターの2つの出口からウェブに液を塗工する方式であるため、図8の従来例のように、塗工液がウェブとロールとにより引き裂かれることがなく、塗工面を平滑にすることができる。更には、オレンジピールの発生も防止することができる。
【0011】
この塗工装置において、前記第1液及び前記第2液のうち供給量の多い液の供給に前記搬送方向の上流側の出口を用い、供給量の少ない液の供給に下流側の出口を用いる構成とすることができる。この構成による場合には、ウェブに対し、先に供給量が多く厚肉の第1液の層を形成し、その後に供給量が少なく薄肉の第2液の層を形成することができ、これによりエアの巻き込みを抑制することができる。つまり、ウェブの搬送方向上流側の出口側で厚肉の第1液の層を形成して、ダイコーターとウェブとの搬送方向上流側の隙間を塞ぐことにより、前記第2液層の形成時に空気の巻き込みが生じ難くすることができる。
【0012】
この塗工装置において、前記第1液及び前記第2液のうち粘度が高い液の供給に前記搬送方向の上流側の出口を用い、粘度が低い方の供給に下流側の出口を用いる構成とすることができる。この構成による場合には、ウェブに対し、先に粘度が高い第1液の層を形成することで1層目が安定した状態になり、その後に粘度が低い第2液の層を容易かつ適正に積層して形成することができる。
【0013】
この塗工装置において、前記第1液及び前記第2液のうち粘度が低い液の供給に前記搬送方向の上流側の出口を用い、粘度が高い液の供給に下流側の出口を用いる構成とすることができる。この構成による場合には、ウェブに対する塗工液の濡れ性を良くすることができる。ここで、濡れ性とは、塗工液をウェブ全体に均一に塗工する際における塗工のし易さを表し、一般的に粘度の低い塗工液の方が粘度の高い塗工液よりも濡れ性がよい。そのため、2層の塗工層を形成する場合には、ウェブに接触する側に(先に)低粘度の液を塗工する方が、ウェブに対する塗工液の濡れ性を向上させることが可能になる。
【0014】
この塗工装置において、前記搬送方向の上流側に配設される出口の上流側に、バキュームチャンバーを配設した構成とすることができる。この構成による場合には、バキュームチャンバーによりウェブへ塗工した液にエアが混入するのを抑制することができる。
【0015】
この塗工装置において、前記第1液を供給する前記出口および前記第2液を供給する前記出口における各ダイエッジが共に100μm以下の曲率半径に形成された構成とすることが好ましい。この構成による場合には、ダイエッジが比較的シャープであるため、塗工面が平滑になって気泡の混入を防止することができる。特に、通気性の無いまたは少ないウェブをラミネートする場合に有効である。また、シャープに形成されたダイエッジが、ダイコーターからウェブが離れる箇所に位置するので、接着剤のきれが良くなって、接着剤がダイコーター側に流れることが抑制される。
【0016】
更に、前記ダイエッジの曲率半径としては、30μm以上が好ましい。その理由は、塗工上では何も問題はないものの、曲率半径を小さくし過ぎると加工時にダイエッジが欠け易くなるなどの問題が発生するからである。
【0017】
この塗工装置において、前記第1供給手段及び前記第2供給手段のそれぞれに液温度を調整する温度調整手段を設けた構成とすることができる。この構成による場合には、第1液と第2液の各粘度が異なるときに、一方の液温または両方の液温を調整することで両液の粘度を同じ程度に揃えることができ、これにより両液の接触に伴う混合を容易にすることができるという利点がある。
【0018】
この塗工装置において、前記ダイコーターは、各出口におけるスリット長手方向の両端部にスリット長さを調整する調整手段を備え、各調整手段は、該当出口に繋がるスリットおよびこのスリットに繋がる液溜まりを利用するもので、前記スリット長手方向にスライド可能であって、前記スリットを移動するスリット移動部および前記液溜まりの一部を移動する液溜まり移動部を有するスリット長さ調整片と、前記液溜まりの残り空間を前記スリット長手方向に移動し前記スリット長さ調整片を固定する固定片とを有し、前記固定片は、前記スリット長手方向の外側から内側へ向けて押し込むことで、前記スリット長さ調整片における前記液溜まり移動部を前記液溜まりに押し付けるテーパー状の押付面を有する構成とすることができる。
【0019】
この構成による場合には、スリット長さ(塗工巾)を調整する際、固定片をスリット長手方向の内側から外側へ向かう引き抜き方向へ移動させることで、テーパー状の固定片がスリット長さ調整片の液溜まり移動部を液溜まりに押し付ける力を解除し、スリット長さ調整片の固定が弛められる。その後、スリット長さ調整片をスリット長手方向に沿ってスライドさせ、所定位置にスリット長さ調整片が移動した後に、固定片をスリット長手方向の外側から内側へ向けて押し込む。これに伴って固定片のテーパー状押付面がスリット長さ調整片をスリット側へ押すことにより、固定片がスリット長さ調整片の液溜まり移動部を液溜まりに押し付け、スリット長さ調整片を固定することができる。したがって、スリット状出口の両側においてスリット長さ調整片をそれぞれ所定位置に固定することにより、スリット長さを簡単に調整することが可能になる。また、このようにスリット長手方向に固定片及びスリット長さ調整片が移動するものの、固定片及びスリット長さ調整片の液溜まり移動部が液溜まりによりスライド可能に抜け防止されているので、作業性が大幅に向上する。なお、スリット長さ調整片にも、固定片の押付面とは逆向きのテーパー状の被押付面を形成しておくことで、スリット長さ調整片と固定片との接合面の隙間を小さくすることができ、これによりシール性を向上させ得る。
【0020】
この塗工装置において、前記ウェブに塗工された前記第1液からなる層と前記第2液からなる層との合計の層厚を、0.7μm以上5μm以下にすることが好ましい。即ち、このように合計の層厚を0.7μm以上することで、2つのウェブの貼り合わせに要する接着力を確保することが可能になる。一方、合計の層厚を5μm以下することにより、ウェブ上に印刷が施されることにより形成された凹凸を吸収し得る状態で、余分な層厚を削減しつつ接着を行うことができる。
【0021】
この塗工装置において、前記ウェブの搬送ラインにゴムロールからなるバックアップロールを設けるとともに、その周面に、少なくとも上記両出口のうち搬送方向下流側の出口の下流側部に位置するダイヘッドの先端面部を当接させた状態で設置してもよい。この構成によれば、バックアップロールの真円度が不正確であっても、このバックアップロールを弾性変形させることにより、その回転時にダイヘッドの先端面部とバックアップロールの周面と間に大きな隙間が形成されたり、ダイヘッドの先端面部がバックアップロールの周面に強固に圧接されて塗工液の膜厚が不足したりするという事態の発生を効果的に防止することができるため、前記ウェブに塗布される塗工液の膜厚を均一に設定することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による場合には、ダイコーターの2つの出口から各入口までが各々第1液と第2液とを別々に分けて供給するように構成されているので、塗工巾を変更するために一旦作業を停止しても、ダイコーターの内部およびこれに第1液及び第2液を別々に供給する第1供給手段及び第2供給手段においては、両液が接触していないので固まった接着剤が内部に存在せず、準備作業を簡単に行うことが可能である。また、ダイコーターの2つの出口からウェブに液を塗工する方式であるため、図7の従来例のように塗工液がウェブとロールとにより引き裂かれるのを防止して、塗工面を平滑にすることができる。更には、オレンジピールの発生も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塗工装置を示す模式図である。
【図2】図1の塗工装置における要部を示す図である。
【図3】図2の塗工装置におけるダイコーターの近傍部分を示す図である。
【図4】図3のダイコーターにおけるダイヘッドを拡大して示す図である。
【図5】ダイコーターに備わったスリット長さを調整する調整手段を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る塗工装置を示す図3相当図である。
【図7】図6の塗工装置におけるダイコーターの先端部形状を示す拡大図である。
【図8】特許文献1の技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る塗工装置を有するラミネーターを示す模式図であり、図2はそのラミネーターに設けられた塗工装置を示す図である。
【0025】
このラミネーター80は、2液硬化型であって無溶剤型の接着剤を用い、基材であるシート状のウェブどうしを貼り合わせてラミネート製品を製作するものである。具体的には、第1ウェブ2を搬送する第1搬送ライン10と、第2ウェブ3を搬送する第2搬送ライン20と、第1搬送ライン10を搬送される第1ウェブ2と第2搬送ライン20を搬送される第2ウェブ3とが接着剤により貼り合わせられたラミネート製品4を搬送する第3搬送ライン30と、前記第1搬送ライン10に臨ませて設けられ、一対のスリット状出口6a、6bを有するとともに各出口6a、6bに個々にそれぞれ連通する一対の入口7a、7bを有する1つのダイコーター5と、接着剤を形成するための第1液8をダイコーター5に供給する第1供給手段40と、同じく前記第1液8に接触させることにより前記接着剤を形成するための第2液9をダイコーター5に供給する第2供給手段60とを具備する。ここで、ダイコーター5と第1供給手段40と第2供給手段60とは、本実施形態に係る塗工装置1を構成する。
【0026】
第1搬送ライン10は、第1ウェブ2が巻回された繰り出しロール11が2個セットされる巻出部12と、巻出部12の一方の繰り出しロール11から繰り出された第1ウェブ2を、ダイコーター5を経て第3搬送ライン30へ案内する複数のローラ13とを有する。ダイコーター5に対応する位置には、ダイコーター5との間で第1ウェブ2を挟むバックアップロール13aが設けられている。
【0027】
第2搬送ライン20は、第2ウェブ3が巻回された繰り出しロール21が2個セットされる巻出部22と、巻出部22の一方の繰り出しロール21から繰り出された第2ウェブ3を第3搬送ライン30へ案内する複数のローラ23とを有する。また、第1搬送ライン10と第2搬送ライン20の終端には、複数(図示例では3つ)のロールを有するラミネート部24が設けられていて、このラミネート部24により第1ウェブ2と第2ウェブ3が貼り合わされる。
【0028】
第3搬送ライン30は、貼り合わされたラミネート製品4を案内する複数のローラ31と、これら複数のローラ31を経たラミネート製品4を巻取る巻取部32とを有する。
【0029】
第1供給手段40は、第1液8を貯留するタンク41と、両端がタンク41及び入口7aに接続された配管42と、配管42の途中に設けられたポンプ43とを有する。
【0030】
第2供給手段60は、第2液9を貯留するタンク61と、両端がタンク61及び入口7bに接続された配管62と、配管62の途中に設けられたポンプ63とを有する。
【0031】
ダイコーター5は、一対のスリット状出口6a、6bを有するとともに各出口6a、6bにそれぞれ連通する一対の入口7a、7bを有し、入口7aは出口6aに、入口7bは出口6bに連通している。入口7aには第1液8が導入され、その第1液8は出口6aから導出されてバックアップロール13aとの間の第1ウェブ2の部分に塗工される。一方、入口7bには第2液9が導入され、その第2液9は出口6bから導出されて前記第1ウェブ2の部分に塗工される。
【0032】
第1液8および第2液9には、例えばポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール等のようなポリオールを有するポリオール化合物、または例えばイソシアネート化合物が該当する。更には、第1液8および第2液9の少なくとも一方に、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、燐酸類および燐酸エステル類などの接着促進剤を含むこともある。第1の実施例としては、第1液8に温度が40℃(粘度が4400Pas)のイソシアネート化合物を用い、第2液9に温度が20℃(粘度が3150Pas)のポリオール化合物を用いた。また、第2の実施例としては、第1液8に脂肪酸ポリイソシアネートを用いた。その粘度は、70℃で1420Pas、80℃で780Pas、90℃で480Pasである。一方、第2液9にはポリエステルポリウレタンポリオールを用いた。その粘度は、70℃で3800Pas、80℃で1600Pas、90℃で840Pasである。
【0033】
また、ダイコーター5には、液温を調整するための温度調整手段が設けられている。温度調整手段は、具体的には、ダイコーター5の外表面(側面)に開口した複数(図示例では3つ)の給水口51a、51b、51cと、同数の排水口52a、52b、52cと、図示しない3系統の内部通路と、各給水口51a〜51cに温水を、配管53a、53b、53cを介して供給し、前記内部通路を経た後に各排水口52a〜52cから配管54a、54b、54cを介して戻す温水循環機55a、55b、55cとを有する。上記3系統の内部通路は、それぞれダイコーター5の内部に設けられた通路であって、ダイコーター5の側面に共に設けた給水口51a等と排水口52a等とを連通するものであり、給水口51a等からダイコーター5の内部に入った温水が、その後、後述するスリット長手方向Bに沿って複数回、例えば2回往復して排水口52a等から排出されるように構成されている。上記温水循環機55a〜55cは、それぞれ温水の温度を所望の温度に加熱するヒーター(図示せず)を有する。
【0034】
このような構成の温度調整手段によるダイコーター5での液温の調整は、以下のようになっている。例えば、入口7aの近くに設けた給水口51aと同様の排水口52aとこれらに対して温水を循環させる温水循環機55aとを含む第1系統は、入口7aに供給された第1液8の温度を調整する。また、入口7bの近くに設けた給水口51bと同様の排水口52bとこれらに対して温水を循環させる温水循環機55bとを含む第2系統は、入口7bに供給された第2液9の温度を調整する。入口7aと入口7bの間の中間位置近くに設けた給水口51cと同様の排水口52cとこれらに対して温水を循環させる温水循環機55cとを含む第3系統は、入口7bに供給された第2液9の温度を調整する。なお、第3系統は、第2液9の温度に代えて、第1液8の温度を調整するように構成してもよい。また、この例では、第1〜第3系統の3つを備えた構成としているが、任意の数の系統を備えた構成としてもよい。
【0035】
また、ダイコーター5におけるウェブ搬送方向Aの上流側には、バキュームチャンバー59が設けられている。このバキュームチャンバー59は、ダイコーター5の出口6a、6bの周囲を包囲するとともにその内側を減圧することにより、各出口6a、6bから導出される第1液8および第2液9への空気の巻き込みを抑制する。図2中の66は、真空引き用のポンプである。
【0036】
図3はダイコーター5の近傍部分を示す図であり、図4はダイヘッド5aを拡大して示す図である。なお、図3においては、バキュームチャンバー59を省略して表している。ダイコーター5のダイヘッド5aには、前記一対の出口6a、6bが互いに分離した状態で設けられている。そして、この一対の出口6a、6bは、第1搬送ライン10における第1ウェブ2の搬送方向Aに隣接するように配置され、第1液8と第2液9とを各出口6a、6bから導出した直後に相接触させるようになっている。
【0037】
また、ダイヘッド5aには、搬送方向Aの上流側の出口6aに関連するダイエッジ56aと、同じく搬送方向Aの下流側の出口6bに関連するダイエッジ56bとが設けられ、各ダイエッジ56a、56bは、比較的シャープに形成されている。具体的には、ダイエッジ56a、56bは、共に曲率半径が100μm以下、本実施形態では60μmに設定されている。なお、ダイエッジ56aは下流側の出口6bの上流側の縁であり、ダイエッジ56bはダイヘッド5aの下流端の縁である。
【0038】
このようにダイエッジ56a、56bの曲率半径を規定する理由は、塗工面を平滑にするとともに、接着剤の塗工部に対する気泡の混入を防止するためである。特に、通気性の無いまたは少ないウェブをラミネートする場合にあっては、気泡の混入を防止することができるので有効になる。更には、ダイエッジ56a、56bの曲率半径としては、30μm以上が好ましい。その理由は、曲率半径が小さくても塗工上では何も問題はないものの、曲率半径を小さくし過ぎると加工時にダイエッジが欠け易くなるなどの問題が発生するからである。
【0039】
なお、ダイエッジ56a、56bの欠けが発生するのを抑制するためには、ダイヘッド5aの材質として、硬質金属材、例えばSUS420J−2を用いることが好ましい。また、ダイエッジ56a、56bの部分は、熱処理を行って硬度を上げている。更に、ダイヘッド5aのリップ長L1を35mm程度にし、また出口6aに繋がるスリットの幅L2と、出口6bに繋がるスリットの幅L3とをそれぞれ200μmとすることにより、液流れのムラが発生するのを抑制して塗工面を平滑にするようにしている。
【0040】
また、ウェブ搬送方向Aの上流側に位置するダイヘッド5aの上流側先端部50(図4参照)については、第1ウェブ2に皺を発生し難くさせるために滑らかな曲面に形成する。また、第1ウェブ2を滑り易くさせるために鏡面に仕上げている。更に、ダイコーター5には、後述するスリット長さ(塗工巾)を調整する調整手段が設けられている。
【0041】
このように構成された本実施形態の塗工装置1にあっては、第1搬送ライン10に沿って搬送される第1ウェブ2に対し、ダイコーター5の2つの出口6a、6bから導出されたそれぞれ第1液8と第2液9とが別々に供給される。そして、ウェブ搬送方向Aの上流側に位置する出口6aから第1ウェブ2に供給された第1液8の上に、ウェブ搬送方向Aの下流側に位置する出口6bから導出された第2液9が重ねられて両液8、9が塗工された第1ウェブ2に対し、第2搬送ライン20を搬送される第2ウェブ3が貼り合わされ、これにより作製されたラミネート製品4が第3搬送ライン30に沿って搬送される。
【0042】
上記のようにダイコーター5の2つの入口7a、7bから各出口6a、6bまで、各々第1液8と第2液9とを別々に分けて供給するように構成されているので、サイズ替え等のために一旦作業を停止しても、ダイコーター5の内部およびこれに第1液8及び第2液9を別々に供給する第1供給手段40及び第2供給手段60内には、両液8、9が接触して固まった状態となった接着剤が存在せず、上記サイズ替え等の準備作業を簡単に行うことができる。また、ダイコーター5の2つの出口6a、6bからウェブ2に液8、9を塗工する方式であるため、図6の従来例のように塗工液がウェブとロールとにより引き裂かれることがなく、塗工面を平滑にすることができる。更には、オレンジピールの発生も防止することができる。
【0043】
また、本実施形態の塗工装置1において、前記ウェブ搬送方向Aの上流側に位置する出口6aから供給される第1液8の供給量を、ウェブ搬送方向Aの下流側に位置する出口6bから供給され第2液9の供給量よりも多くすることで、第1ウェブ2に対し、先に供給量が多い厚肉の第1液8の層(1層目)を形成し、その後に供給量が少ない薄肉の第2液9の層(2層目)を形成することができ、これにより、接着剤の塗工部に対するエアの巻き込みを抑制することができる。つまり、第1ウェブ2の搬送方向A上流側に位置する出口6a側で厚肉の第1液8の層を形成することで、ダイコーター5と第1ウェブ2との搬送方向上流側の隙間を塞ぐことにより、前記第2液層の形成時に空気の巻き込みが生じ難くすることができる。このとき、第1液8の排出量と第2液9の排出量との比は、前記第1の実施例で用いる塗工液の構成では、5:2程度が望ましい。また、前記第2の実施例で用いる塗工液の構成では、2:1程度が望ましい。
【0044】
なお、第1液8の層(1層目)と第2液9の層(2層目)との合計の層厚は、0.7μm以上5μm以下が好ましい。即ち、このように合計の層厚を0.7μm以上すると、2つのウェブの貼り合わせに要する接着力を確保することが可能になる。一方、合計の層厚を5μm以下にすることにより、ウェブ上に印刷が施されることにより形成された凹凸を吸収し得る状態で、余分な層厚を削減しつつ接着を行うことができる。更には、合計の層厚は、1.2μm以上3μm以下が望ましい。つまり、合計の層厚を3μm以下にすると、前記印刷が施されていない一般的なウェブに生じている凹凸を吸収して接着を行うことができ、一方、1.2μm以上にすると、接着ムラを防止することが可能となる。
【0045】
そして、この場合においては、第1液8の粘度が第2液9の粘度よりも高いとき、粘度が高い方の第1液8をウェブ搬送方向Aの上流側に位置する出口6aから排出し、粘度が低い方の第2液9を下流側の出口6bから排出することが好ましい。その理由は、先に粘度が高い第1液8の層を形成することで1層目が安定した状態になり、その後に粘度が低い第2液9の層を形成する際に、この2層を容易かつ適正に積層することができるからである。但し、第1ウェブ2に対する塗工液の濡れ性に問題がある場合には、低粘度の塗工液を先に塗工することによって、濡れ性を改善することができる。つまり、先に第1液8を第1ウェブ2に対して円滑な拡がりを持って塗工することにより第2塗工液9の塗工性を向上させることができ、結果として第1搬送ライン10のライン速度を上げることが可能になる。
【0046】
また、上記のように第1ウェブ2に対して第1液8および第2液9を直接的に供給するダイコーター方式によれば、ロールコート方式で塗工を行う場合のように、液粘度が500Pas(cps)以下の塗工液を使用できないという問題はなく、例えば500Pas(cps)以下の塗工液であっても使用できるという利点がある。
【0047】
更に、第1液8の粘度と第2液9の粘度とが異なる場合において、両液8、9の粘度を同じレベルに揃えたいときには、ダイコーター5に設けた温度調整手段により、第1液8および第2液9のうちの少なくとも一方を温めて用いればよい。なお、このように両者8、9の粘度を揃えた場合には、第1液8と第2液9との接触に伴う混合を容易化できる等の利点がある。前記第2の実施例の塗工液においては、第1液8である脂肪酸ポリイソシアネートの温度が70℃で粘度が1420Pasであるため、第2液9のポリエステルポリウレタンポリオールを85℃程度に温度調整することにより、その粘度を前記第1液8の粘度に近づけることができる。
【0048】
更にまた、出口6aよりも搬送方向Aの上流側に配設されたバキュームチャンバー59を作動させてダイコーター5内の空気を真空引きすることにより、第1ウェブ2へ塗工した液8、9へのエアの混入を抑制することができる。
【0049】
図5(a)はスリット長さを調整する調整手段を模式的に示す正面図、(b)はその側面図である。この調整手段70は、ダイコーター5における各出口6a、6bのスリット長手方向Bの両端部にそれぞれ設けられている。なお、図5(a)中の二点鎖線は、液流れを示す。
【0050】
各調整手段70は、スリット長さ調整片71(右下がりのハッチング部分)と固定片72(右上がりのハッチング部分)とを有する。これらスリット長さ調整片71と固定片72とは、ダイコーター5の内部に予め形成された液通路73の内部をスライド可能に設けられている。上記液通路73は、その溝がスリット深さ方向Cで異なっており、出口6a(6b)に繋がる一定幅のスリット73aと、その内奥側にあって前記スリット73aに繋がった概略円形の空洞からなる液溜まり73bとを有する。この液溜まり73bは、スリット長手方向Bにおけるスリット73aの各位置での液流れを均一化させるためのものである。
【0051】
スリット長さ調整片71は、前記スリット73a内をスリット長手方向Bに沿って移動するスリット移動部71aと、前記液溜まり73bの一部(スリット73a寄りの部分)を移動する断面円弧状の液溜まり移動部71bとを有する。液溜まり移動部71bにおける液溜まり73bの内奥側には、平坦な被押付面71cが形成されており、その被押付面71cは、スリット長手方向Bの内側よりも外側の方が出口6a(6b)に近くなるように傾斜したテーパー状に形成されている。スリット移動部71aは、スリット73aと略等しい幅寸法を有している。液溜まり移動部71bは、液溜まり73bの一部(スリット73a寄りの部分)とほぼ同一の断面形状を有し、出口6a(6b)側へ抜け落ちを防止するために、スリット移動部71aよりも幅広に形成されている。
【0052】
固定片72は、液溜まり73bの内部空洞から液溜まり移動部71bを除く残り空間内を移動するもので、円の一部が欠落した断面形状に形成されている。また、固定片72の端部には、スリット長さ調整片71の傾斜した被押付面71cに対向する平坦な押付面72aが設けられ、この押付面72aは、前記被押付面71cに対応して外下がりに傾斜したテーパー状に形成されている。よって、固定片72は、スリット長手方向Bの外側から内側へ向けて押し込まれることで、前記押付面72aを介してスリット長さ調整片71の被押付面71cをスリット73a側へ押し、スリット長さ調整片71の液溜まり移動部71bを液溜まり73bへ押し付けて所定位置に固定し、このスリット長さ調整片71の内側端部により塗工巾を規制するように構成されている。
【0053】
したがって、このように構成された調整手段70において、スリット長さ(塗工巾)を調整する際には、固定片72をスリット長手方向Bの内側から外側へ向かう引き抜き方向へ移動させることで、固定片72のテーパー状の押付面72aが被押付面71cから離れ、これによりスリット長さ調整片71の液溜まり移動部71bを液溜まり73bに押し付ける力が解除され、スリット長さ調整片71の移動が可能となる。その後、スリット長さ調整片71をスリット長手方向Bに沿ってスライドさせ、所定位置にスリット長さ調整片71を移動させた後に、固定片72をスリット長手方向Bの外側から内側に押し込む。このようにして固定片72のテーパー状の押付面72aをスリット長さ調整片71の被押付面71cに圧接させることにより、液溜まり移動部71bが液溜まり73bに押し付けられてスリット長さ調整片71が固定される。よって、スリット長さを簡単に調整することが可能となる。
【0054】
また、このようにスリット長手方向Bに固定片72及びスリット長さ調整片71が移動するものの、固定片72及びスリット長さ調整片71の液溜まり移動部71bが液溜まり73bによりスライド可能に抜け防止されているので、作業性が大幅に向上する。更に、スリット長さ調整片71の被押付面71cと、固定片72の押付面72aとを、逆向きのテーパー状に形成しているので、シール性を向上させ得る。なお、固定片72の押付面72aだけをテーパー状に形成してもよく、その場合にあってもスリット長さ調整片71を固定することができる。
【0055】
上記第1実施形態におけるバックアップロール13aとしては、スチール製パイプ材等を主体とした金属ロールまたは外周面に合成ゴム材層が設けられたゴムロール等が使用可能であるが、金属ロールからなるバックアップロール13aを用いた場合には、その真円度を高精度に確保することができるため、バックアップロール13aが振動することに起因した塗工ムラが生じるのを効果的に抑制することができる。
【0056】
一方、弾力性に富んだゴムロールをバックアップロール13aとして用いた場合には、上記第1ウェブ2を介してバックアップロール13aの周面にダイヘッド5aの先端部を当接させた状態で塗工を行うように構成することにより、第1液8および第2塗工液9を第1ウェブ2に対して均一に塗工できるという利点がある。
【0057】
図6および図7は、本発明の第2実施形態に係る塗工装置を示している。この第2実施形態に係る塗工装置では、第1搬送ライン10にゴムロールからなるバックアップロール13aを設けるとともに、その周面にダイヘッド5aの先端面部を当接させた状態で設置するように構成されている。
【0058】
上記ウェブ搬送方向Aの上流側に位置するダイヘッド5aの上流側先端部50を除く各エッジは、アールのないシャープな形状を有している。そして、上記ダイヘッド5aの上流側先端部50には、第1液8の供給通路となる出口6aの上流側エッジ50aは、曲率半径が30〜100μmの範囲内に設定されたアール状に形成されている。
【0059】
上記出口6aの上流側エッジ50aと、ウェブ搬送方向Aの上流側に位置するダイヘッド5aの上流側先端部50の下流側部分との間、つまり上記上流側エッジ50aの上流側部には、その上流端とのバックアップロール13aとの隙間57aが25μ程度に設定されるとともに、その下流端とバックアップロール13aとの隙間57bが16μm程度に設定され、かつその長さ57Lが0.5mm程度に設定された直線状の先端面部57が設けられている。
【0060】
また、第1液8の供給通路となる出口6aの下流側エッジ58aと、第2液8の供給通路となる出口6bの上流側エッジ58bとの間には、その上流端とバックアップロール13aとの隙間64aが23μ程度に設定されるとともに、その下流端とバックアップロール13aとの隙間64bが19μm程度に設定され、かつ長さ64Lが0.5mm程度に設定された直線状の第1先端面部64と、その下流端とバックアップロール13aとの隙間65bが14μm程度に設定され、かつ長さ65Lが0.5mm程度に設定された直線状の第2先端面部65とが設けられている。
【0061】
さらに、第2液9の供給通路となる出口6bの下流側エッジ65aと、ダイヘッド5a搬送方向下流側に位置するダイエッジ56bとの間には、その上流端とバックアップロール13aとの隙間66aが22μ程度に設定されるとともに、その下流端とバックアップロール13aとの隙間が略0に設定され、かつ長さ66Lが0.5mm程度に設定された直線状の第1先端面部66と、その上流端から下流端(ダイエッジ56b)に至る長さ67Lの範囲とバックアップロール13aとの間隔が0に設定され、かつ上記長さ67Lが0.5mm程度に設定された直線状の第2先端面部67とが設けられている。
【0062】
また、ダイヘッド5aに形成された出口6aおよび出口6bに繋がるスリットには、200μm程度の溝幅を有する太幅の上流側部68a、69aと、20μm程度の溝幅を有する細幅の下流側部68b、69bとがそれぞれ設けられている。
【0063】
上記第2実施形態のようにゴムロールからなるバックアップロール13aを第1搬送ライン10に設けるとともに、上記ダイヘッド5aの搬送方向下流側に設けられた第2先端面部67、つまり上記両出口6a、6bのうち搬送方向下流側出口(第2液の供給通路となる出口)6bの下流側部に位置するダイヘッドの先端面部とバックアップロール13aとの間隔を0に設定して、少なくとも上記第2先端面部67をバックアップロール13aの周面に圧接させるように構成した第2実施形態に係る塗工装置では、バックアップロール13aの真円度を高精度に確保することができない場合であっても、ダイヘッド5aとバックアップロール13aとの間を通って搬送される第1ウェブ2に塗布される塗工液の膜厚を効果的に均一化できるという利点がある。
【0064】
即ち、バックアップロール13aとして弾力性に富んだゴムロールを用いるとともに、ダイヘッド5aの第2先端面部67をバックアップロール13aの周面に圧接させるように構成した場合には、バックアップロール13aの真円度が不正確であっても、このバックアップロール13aを弾性変形させることにより、その回転時にダイヘッド5aの先端面部とバックアップロール13aの周面と間に大きな隙間が形成されたり、ダイヘッド5aの先端面部がバックアップロール13aの周面に強固に圧接されて塗工液の膜厚が不足したりするという事態の発生を効果的に防止することができるため、第1ウェブ2に塗布される塗工液の膜厚を均一に設定することができる。
【0065】
また、バックアップロール13aとして弾力性に富んだゴムロールを用いた上記第2実施形態において、上記ダイヘッド5aの搬送方向上流に位置する上流側先端部50を除く各エッジ58a、58b、65a、56bを、アールのないシャープ形状に形成した場合には、ダイヘッド5aの先端面部とバックアップロール13aの周面との間に余分な隙間が形成されるのを防止することができる。したがって、塗工液の膜厚が不必要に増大するのを抑制して薄膜の塗工液層を第1ウェブ2上に形成することができるという利点がある。なお、上記アールのないシャープ形状に形成されたダイヘッド5aの各エッジが58a、58b、65a、56b、上記ゴムロールからなるバックアップロール13aの周面に当接することに起因した損傷が生じることはない。
【0066】
また、上記第2実施形態に示すようにダイヘッド5aに形成された出口6aおよび出口6bに繋がるスリットに、200μm程度の溝幅を有する太幅の上流側部68a、69aと、20μm程度の溝幅を有する細幅の下流側部68b、69bとをそれぞれ設けた場合には、上記出口6aおよび出口6bから第1ウェブ2に供給される第1液8および第2液9の供給量を充分に確保しつつ、上記下流側部68b、69bから一度に大量の第1液8および第2液9が導出されるのを抑制して、第1ウェブ2上に形成される塗工液層の膜厚を効果的に薄膜化することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 塗工装置
2 第1ウェブ
3 第2ウェブ
4 ラミネート製品
5 ダイコーター
6、6a、6b 出口
7、7a、7b 入口
8 第1液
9 第2液
40 第1供給手段
59 バキュームチャンバー
60 第2供給手段
56a、56b ダイエッジ
70 調整手段
71 スリット長さ調整片
72 固定片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液硬化型であって無溶剤型の接着剤を用い、基材であるシート状のウェブどうしを貼り合わせてラミネート製品を製作するラミネーターにおける塗工装置であって、
前記ウェブの一方が搬送される搬送ラインに臨ませて設けられ、一対のスリット状出口を有するとともに各出口に個々にそれぞれ連通する一対の入口を有する1つのダイコーターと、
前記一対の入口の一方に、前記接着剤を形成するための第1液を供給する第1供給手段と、
前記一対の入口の他方に、前記第1液に接触することにより前記接着剤を形成するための第2液を供給する第2供給手段とを具備し、
前記ダイコーターは、前記一対の出口が互いに分離し、かつ、一対の出口が前記搬送ラインにおけるウェブ搬送方向に隣接するように配置され、前記第1液と第2液とを前記出口から排出した直後に相接触させることを特徴とする塗工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記第1液及び前記第2液のうち排出量の多い方の排出に前記搬送方向の上流側の出口を用い、排出量の少ない方の排出に下流側の出口を用いることを特徴とする塗工装置。
【請求項3】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記第1液及び前記第2液のうち粘度が高い方の排出に前記搬送方向の上流側の出口を用い、粘度が低い方の排出に下流側の出口を用いることを特徴とする塗工装置。
【請求項4】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記第1液及び前記第2液のうち粘度が低い方の排出に前記搬送方向の上流側の出口を用い、粘度が高い方の排出に下流側の出口を用いることを特徴とする塗工装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つに記載の塗工装置において、
前記搬送方向の上流側に配設される出口の上流側に、バキュームチャンバーが配設されることを特徴とする塗工装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の塗工装置において、
前記第1液を排出する前記出口および前記第2液を排出する前記出口における各ダイエッジが共に100μm以下の曲率半径に形成されていることを特徴とする塗工装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の塗工装置において、
前記第1供給手段及び前記第2供給手段のそれぞれに液温度を調整する温度調整手段が設けられていることを特徴とする塗工装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の塗工装置において、
前記ダイコーターは、各出口におけるスリット長手方向の両端部にスリット長さを調整する調整手段を備え、
各調整手段は、該当出口に繋がるスリットおよびこのスリットに繋がる液溜まりを利用するもので、前記スリット長手方向にスライド可能であって、前記スリットを移動するスリット移動部および前記液溜まりの一部を移動する液溜まり移動部を有するスリット長さ調整片と、前記液溜まりの残り空間を前記スリット長手方向に移動し前記スリット長さ調整片を固定する固定片とを有し、
前記固定片は、前記スリット長手方向の外側から内側へ向けて押し込むことで、前記スリット長さ調整片における前記液溜まり移動部を前記液溜まりに押し付けるテーパー状の押付面を有することを特徴とする塗工装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の塗工装置において、
前記ウェブに塗工された前記第1液からなる層と前記第2液からなる層との合計の層厚を、0.7μm以上5μm以下にすることを特徴とする塗工装置。
【請求項10】
請求項1に記載の塗工装置において、
前記ウェブの搬送ラインにゴムロールからなるバックアップロールを設けるとともに、その周面に、少なくとも上記両出口のうち搬送方向下流側の出口の下流側部に位置するダイヘッドの先端面部を当接させた状態で設置したことを特徴とする塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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