塗布具
【課題】液体が各吐出口からそれぞれ吐出した際の当該吐出口付近に生じる目詰まりを防止することができる塗布具を提供すること。
【解決手段】塗布具１は、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をそれぞれ供給する第１のシリンジ２および第２のシリンジ３と、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をそれぞれ吐出する第１の吐出口４２１および第２の吐出口４２２と、第１の吐出口４２１および第２の吐出口４２２へそれぞれ第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２を送る第１の流路４４および第２の流路４５と、第１の流路４４および第２の流路４５にそれぞれ設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４４１および４５１と、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させる拡張部４６１とを有している。拡張部４６１は、液体吐出状態よりも吐出停止状態で、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ、その容積が大となるように変形させるよう作動する。
【解決手段】塗布具１は、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をそれぞれ供給する第１のシリンジ２および第２のシリンジ３と、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をそれぞれ吐出する第１の吐出口４２１および第２の吐出口４２２と、第１の吐出口４２１および第２の吐出口４２２へそれぞれ第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２を送る第１の流路４４および第２の流路４５と、第１の流路４４および第２の流路４５にそれぞれ設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４４１および４５１と、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させる拡張部４６１とを有している。拡張部４６１は、液体吐出状態よりも吐出停止状態で、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ、その容積が大となるように変形させるよう作動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、塗布具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、２種以上の液体を混合して患部等に噴射し、癒着防止材や生体組織接着材などを形成する方法が知られており、そのための塗布具が開発されている。
【０００３】
このような塗布具は、混合すると凝固する成分同士、例えばトロンビンを含有する溶液とフィブリノーゲンを含有する溶液を互いに分別した状態で、患部付近まで送り、患部で混合しながら塗布するという構成によるものである。
【０００４】
従来の塗布具としては、異なる種類の液体をそれぞれ含有する２つのシリンジからそれぞれ流路が並んだ状態で設置され、両流路の先端、すなわち、各吐出口からそれぞれ液体が噴出し、混合される構成のものがある（例えば、特許文献１参照）。液体を噴出するには、各シリンジの押し子（プランジャ）をそれぞれ押圧操作することにより、それを行うことができる。
【０００５】
各シリンジの押し子の押圧操作後には、液体の吐出は停止するが、流路内の残圧によって、各吐出口から液体が外方に向かって突出した状態となる。この状態では、液体同士が混合することとなり、よって、これら液体同士が凝固してしまう。その結果、各吐出口に目詰まりが生じる。そして、この目詰まりが生じた状態の塗布具で再び塗布を行なおうとしても、前記凝固した液体が各吐出口からの液体の吐出を妨害し、再塗布を行なうことができないという問題があった。
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２８２３６８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明の目的は、液体を各吐出口からそれぞれ吐出した際の当該吐出口付近に生じる目詰まりを防止することができる塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
このような目的は、下記（１）〜（１６）の本発明により達成される。
（１） 液組成が異なる２種の液体をそれぞれ別個に供給する供給手段と、
前記２種の液体を吐出する吐出口と、
前記供給手段から前記吐出口へそれぞれ液体を送る２本の液体移送路と、
前記２本の液体移送路のうちの少なくとも一方に設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部と、
前記容積増減部を変形させる変形手段とを有し、
前記変形手段は、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で、前記容積増減部をその容積が大となるように変形させるよう作動することを特徴とする塗布具。
【０００９】
（２） 前記変形手段の作動により、前記容積増減部が設けられた前記液体移送路を通過した液体の先端が、前記吐出口よりも後端側に引き込まれる上記（１）に記載の塗布具。
【００１０】
（３） 前記容積増減部は、前記液体移送路の途中で、該液体移送路の一部を構成する流路形成部である上記（１）または（２）に記載の塗布具。
【００１１】
（４） 前記流路形成部は、自然状態で、その内径が当該流路形成部の前後の前記液体移送路の内径と同じかまたはそれより大きいものである上記（３）に記載の塗布具。
【００１２】
（５） 前記容積が減少したときでも前記流路形成部材内の液体の流通を確保する流路確保手段を有する上記（３）または（４）に記載の塗布具。
【００１３】
（６） 前記流路確保手段は、前記流路形成部材内に挿通され、前記液体移送路に連通する硬質な管体で構成され、該管体には、その管壁に開口し、前記流路形成部材の内部と連通する少なくとも１つの側孔が形成されている上記（５）に記載の塗布具。
【００１４】
（７） 前記管体は、網状の管体で構成されている上記（６）に記載の塗布具。
（８） 前記管体は、前記流路形成部材の容積が減少して、該流路形成部材の内面によって押圧された際、内径が実質的に減少しない程度の剛性を有する上記（６）または（７）に記載の塗布具。
【００１５】
（９） 前記容積増減部は、前記液体移送路の途中から分岐した分岐部を介して設けられている上記（１）または（２）に記載の塗布具。
【００１６】
（１０） 前記容積増減部は、前記変形手段の作動に応じて拡張・収縮するバルーンで構成されている上記（１）ないし（９）のいずれかに記載の塗布具。
【００１７】
（１１） ガスを供給するガス供給手段に接続され、その接続状態で前記ガス供給手段からのガスが通過するガス流路と、該ガスが噴出するガス噴出口とを有する上記（１）ないし（１０）のいずれかに記載の塗布具。
【００１８】
（１２） 前記変形手段は、ガスの供給に連動して作動する上記（１１）に記載の塗布具。
【００１９】
（１３） 前記変形手段は、前記ガス流路の途中に設けられ、ガスの流量に応じて拡張・収縮する拡張部で構成され、該拡張部が拡張した際に前記容積増減部を圧迫し、収縮した際に前記容積増減部に対する圧迫が解除される上記（１１）または（１２）に記載の塗布具。
【００２０】
（１４） 前記容積増減部および前記ガス流路は、それぞれ、弾性を有するチューブで構成されており、
前記容積増減部および前記ガス流路を外方から一括して保持するリングを有する上記（１３）に記載の塗布具。
【００２１】
（１５） 前記変形手段は、前記ガス流路に設けられ、ガスが一時的に貯留される加圧室で構成され、該加圧室内に前記容積増減部が位置しており、
前記加圧室内の圧力が上昇することにより前記容積増減部が圧迫され、前記圧力の上昇が下降に転ずることにより前記容積増減部に対する圧迫が解除される上記（１１）または（１２）に記載の塗布具。
【００２２】
（１６） 前記容積増減部に対して、該容積増減部が主に変形する方向を規制する規制手段を有する上記（１）ないし（１５）のいずれかに記載の塗布具。
【発明の効果】
【００２３】
本発明によれば、容積増減部の容積が、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で大となるため、その停止時状態で、液体の先端が各吐出口よりも後端側に引き込まれる。これにより、液体を吐出した際に、各吐出口付近で液体同士が混合して固化するのを防止することができる。これにより、液体吐出後の各吐出口付近に生じる目詰まりを防止することができる。また、この目詰まりが生じていない状態の塗布具を再度使用することができる。
【００２４】
また、塗布具がガス流路をさらに有し、そのガス流路の途中に、容積増減部を変形させる変形手段が設けられている場合には、変形手段をガスの供給で作動するものとすることができる。これにより、ガスを、２種の液体を塗布する際にこれら液体同士を混合するのに用いるのに限定されず、変形手段の作動にも用いることができる。すなわち、ガスを有効に利用することができる。
【００２５】
また、合流部を有する場合には、２種の液体同士を均一に、より確実に混合することができ、よって、そのような液体を患部に好適に塗布することができる。
【００２６】
また、流路確保手段が、少なくとも１つの側孔が形成された硬質な管体で構成されている場合には、流路形成部材の容積が減少して収縮したとしても、当該管体によって、流路形成部材のそれ以上の収縮が規制される。これにより、流路形成部材内の液体の流通が確実に確保され、よって、当該液体の塗布が確実に行なわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２７】
以下、本発明の塗布具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
＜第１実施形態＞
図１および図２は、それぞれ、本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図、図３および図４は、それぞれ、図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（図３はガス流路が遮断された状態を示し、図４はガス流路が開放された状態を示す）、図５〜図９は、それぞれ、図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）、図３０は、図１に示す塗布具に装填される第１のシリンジ（第２のシリンジも同様）の部分縦断面図である。なお、説明の都合上、図１、図２および図５〜図９中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」といい、図３０中の下側を「先端」、上側を「後端」という。また、図１〜図４中、上側を「上」といい、下側を「下」という。
【００２８】
本発明の塗布具１は、液組成が異なる２種の液体（第１の液体Ｌ１、第２の液体Ｌ２）を混合しながら塗布するものである（図７参照）。図１および図２に示すように、この塗布具１は、第１の液体Ｌ１を収納する第１のシリンジ（供給手段）２と、第２の液体Ｌ２を収納する第２のシリンジ（供給手段）３とをそれぞれ装填して用いられる。
【００２９】
まず、塗布具１の構成について説明する前に、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の構成について説明する。第１のシリンジ２と第２のシリンジ３とは、ほぼ同様の構成であるため、代表的に第１のシリンジ２について説明する。
【００３０】
図３０に示すように、本実施形態における第１のシリンジ２は、外筒（シリンジ外筒）２１と、外筒２１内で摺動し得るガスケット２４と、ガスケット２４を外筒２１の長手方向（軸方向）に沿って移動操作する押し子（プランジャロッド）２６とを備えている。ガスケット２４は、押し子２６の先端に連結されている。
【００３１】
外筒２１は、有底筒状の部材で構成され、先端側底部の中央部には、外筒２１の胴部に対し縮径した縮径部（口部）２２が一体的に突出形成されている。
【００３２】
外筒２１の後端外周には、フランジ２３が一体的に形成されている。
また、外筒２１の外周面には、液量を示す目盛りが付されている。
【００３３】
外筒２１の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−（４−メチルペンテン−１）、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド（例えば、ナイロン６、ナイロン６・６、ナイロン６・１０、ナイロン１２）のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であり、かつ水蒸気透過性が低い点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂が好ましい。なお、外筒２１の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【００３４】
このような外筒２１内には、弾性材料で構成されたガスケット２４が収納されて（挿入されて）いる。ガスケット２４の外周部には、複数（２つ）のリング状の突部が全周にわたって形成されており、これらの突部が外筒２１の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【００３５】
また、ガスケット２４には、その後端面に開放する中空部２５が形成されている。この中空部２５は、後述する押し子２６のヘッド部２８が螺入（嵌入）される。中空部２５の内面には、雌ネジが形成されている。
【００３６】
ガスケット２４の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【００３７】
押し子２６は、横断面が十文字状をなす棒状の本体部２７を有している。
本体部２７の先端側には、ガスケット２４の中空部２５内に挿入され、ガスケット２４と連結されるヘッド部（連結部）２８が形成されている。ヘッド部２８の外周には、中空部２５の内面の雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されている。この雄ネジを雌ネジと螺合することにより、ガスケット２４と押し子２６とが連結される。なお、ガスケット２４と押し子２６は、螺合による連結に限らず、例えば凹凸嵌合等により連結された構成、接着、融着等により固着された構成、一体成形された構成であってもよい。
【００３８】
また、本体部２７の後端側には、円盤状のフランジ２９が形成されている。
また、押し子２６の構成材料としては、前述した外筒２１の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【００３９】
第１のシリンジ２は、塗布具１に装填される以前に、外筒２１とガスケット２４とで囲まれた空間（貯液空間）２０に、第１の液体Ｌ１が充填される。
【００４０】
第２のシリンジ３も、第１のシリンジ２と同様に、外筒２１と、外筒２１内で摺動し得るガスケット２４と、ガスケット２４を移動操作する押し子２６とで構成され、空間２０に第２の液体Ｌ２が充填される。各部の構成は同様であるため、その説明は省略する。
【００４１】
第１のシリンジ２に充填される第１の液体Ｌ１と、第２のシリンジ３に充填される第２の液体Ｌ２とは、それらの組成（成分）が異なるものである。
【００４２】
本発明においては、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とは、塗布具１の用途、使用目的、症例等に応じて適宜選定される。例えば、生体組織接着材の投与に使用する場合、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のうちの一方は、トロンビンを含有する液体（溶液等）、他方はフィブリノーゲンを含有する液体（溶液等）とすることができる。
【００４３】
また、癒着防止材の投与に使用する場合、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のうちの一方は、スクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリンを含有する液体（溶液等）、他方は、リン酸水素二ナトリウムを含有する液体（溶液等）とすることができる。
【００４４】
このような組み合わせの第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、それらを混合すると、変質、すなわち、ゲル化（固化）する。ゲル化することにより、例えば、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合したもの（以下、「混合液」という）が、塗布された生体組織（目的部位）に確実に留まることができる。また、混合液が目的部位に確実に留まるため、当該目的部位において、生体組織接着材や癒着防止材としての機能を確実に発揮することができる。
【００４５】
なお、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の種類および組み合わせは、上述したものに限定されないことは、言うまでもない。
【００４６】
このような構成の第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の各押し子２６をそれぞれ押圧操作することより、後述するノズル４の第１の流路４４に第１の液体Ｌ１を、第２の流路４５に第２の液体Ｌ２を容易かつ確実に供給することができる。また、各押し子２６の押圧操作は、塗布具１の操作者（使用者）により手動で行なわれる。このため、操作者は、混合液の塗布を自身の任意のタイミングで行なうことができる。
【００４７】
第１の液体Ｌ１が充填された第１のシリンジ２と、第２の液体Ｌ２が充填された第２のシリンジ３とが装填される塗布具１は、塗布具本体７と、ノズル４と、操作部８、開閉手段（弁機構）９と、ボンベ（ガス供給手段）３００に接続されたチューブ（ガス流路）１０を有している（図１参照）。
【００４８】
塗布具１を構成する各部について説明する前に、ボンベ３００について説明する。
ボンベ３００は、その内部空間に高圧の（圧縮された）無菌ガスＧ（以下、単に「ガスＧ」と言う）が充填されており、当該ガスＧを塗布具１（ノズル４）に供給することができる。このボンベ３００には、塗布具１に対するガスＧの供給／供給停止を制御する開閉自在なバルブ（コック）３０１が設置されている。塗布具１を使用するときには、バルブ３０１を開状態にする。
【００４９】
図１および図２に示すように、塗布具本体７は、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を並べて（並列に）固定するものである。この塗布具本体７は、基部７１と、基部７１の先端に設けられた前板（第１の係合部）７２と、基部７１の後端に設けられた後板（第２の係合部）７３と、基部７１の後板７３付近に設けられた指掛け部７５１および７５２とを有している。
【００５０】
基部７１は、その上部に、横断面がほぼ半円弧状をなす凹部７１１および７１２が並列に設けられている。凹部７１１には、第１のシリンジ２の外筒２１が収納され、凹部７１２には、第２のシリンジ３の外筒２１が収納される。
【００５１】
基部７１の先端には、前板７２が設けられている。この前板７２には、凹部７１１および７１２のそれぞれに対応する位置に、溝７２１および７２２が形成されている。第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を装填するとき、溝７２１には、第１のシリンジ２の縮径部２２が挿入され、溝７２２には、第２のシリンジ３の縮径部２２が挿入される。
【００５２】
基部７１の後端には、後板７３が設けられている。この後板７３には、凹部７１１および７１２のそれぞれに対応する位置に、凹部７３１および７３２が形成されている。第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を装填するとき、凹部７３１には、第１のシリンジ２のフランジ２３（基端部）が係合し（挿入され）、凹部７３２には、第２のシリンジ３のフランジ２３（基端部）が係合する。
【００５３】
このように、塗布具本体７では、前板７２に各縮径部２２が係合するとともに、後板７３に各フランジ２３が係合することにより、第１のシリンジ２と第２のシリンジ３とを確実に並列に固定することができる。
【００５４】
基部７１の後板７３付近には、指掛け部７５１および７５２が設けられている。指掛け部７５１および７５２には、それぞれ、塗布具１を使用するときに使用者の指を掛けることができる。指掛け部７５１は、上方に突出した板片で構成され、指掛け部７５２は、下方に突出した板片で構成されている。また、各指掛け部７５１および７５２は、それぞれ、先端方向に臨む面が円弧状（湾曲凹状）をなすものである。
【００５５】
塗布具本体７は、当該塗布具本体７を構成する各部が一体的に形成されたものであってもよいし、各部がそれぞれ別体で構成されこれらを接合したものであってもよい。
【００５６】
塗布具本体７の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば金型成形により塗布具本体７を容易に製造することができる。
【００５７】
塗布具本体７の後端側には、操作部８が塗布具本体７に対してその長手方向に移動可能に設置されている。この操作部８は、第１のシリンジ２の押し子２６と第２のシリンジ３の押し子２６とを先端方向（図１、図２および図４中の矢印Ｃ方向）へ押圧操作する部位である。操作部８は、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９同士を連結する連結部８１と、連結部８１の後端側に位置する押圧部８２と、連結部８１から先端方向に向かって延在するレール部８３とを有している。
【００５８】
連結部８１には、上方へ向かって開放する凹部８１１および８１２がそれぞれ設けられている。凹部８１１は、第１のシリンジ２の押し子２６のフランジ２９に対応した形状をなしており、当該フランジ２９が係合する（図２参照）。また、凹部８１２は、第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９に対応した形状をなしており、当該フランジ２９が係合する（図２参照）。
【００５９】
このような構成の連結部８１により、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９同士を確実に連結、固定することができ、よって、これらの押し子２６を一括して矢印Ｃ方向に移動させることができる。
【００６０】
また、連結部８１には、凹部８１１と凹部８１２との間に、筒状をなす筒状部８１３が設けられている。この筒状部８１３は、その軸線が図１中（図２も同様）上下方向と平行となるように設けられている。また、筒状部８１３には、開閉手段９のほとんどが収納されている。
【００６１】
連結部８１の筒状部８１３の外周部には、長尺状をなすレール部８３が先端方向に向かって突出形成されている。このレール部８３は、塗布具本体７の基部７１に設けられ、長尺状をなすガイド７１３に挿入される。操作部８の矢印Ｃ方向への押圧操作によりレール部８３がガイド７１３に案内されることとなり、よって、前記押圧操作を円滑に行うことができる。
【００６２】
連結部８１の筒状部８１３の後端側には、板状をなす押圧部８２が筒状部８１３に対して塗布具本体７の長手方向に移動可能に設置されている。
【００６３】
この押圧部８２は、塗布具１を使用する、すなわち、混合液を患部等に塗布するとき、使用者によって押圧される部位である。塗布具１を使用するとき、例えば指掛け部７５１に人差し指を掛け、指掛け部７５２に中指を掛け、押圧部８２に親指を掛けることができる。これにより、塗布具１を安定して確実に把持することができる。また、操作部８（押圧部８２）の押圧操作を円滑かつ確実に行うことができ、よって、塗布具１の操作性が向上する。
【００６４】
また、押圧部８２は、後述する開閉手段９の第２の接続部９２に連結されている。
操作部８の構成材料としては、特に限定されず、例えば、塗布具本体７についての説明で挙げたような材料を用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば金型成形により操作部８を容易に製造することができる。
【００６５】
前述したように、操作部８の筒状部８１３には、開閉手段９が設置されている。開閉手段９は、ボンベ３００からノズル４に至るガスＧの流れを遮断／開放するものである。この開閉手段９を介して、すなわち、開閉手段９の作動により、第１のチューブ１０１と第２のチューブ１０２とが遮断（図３参照）／連通（図４参照）する。
【００６６】
図３および図４に示すように、開閉手段９は、第１のチューブ１０１に接続された第１の接続部９１と、第２のチューブ１０２に接続された第２の接続部９２と、第１の接続部９１内に収納され、開閉自在な弁部９３とを有している。
【００６７】
第１の接続部９１は、管状をなすものである。この第１の接続部９１の内腔部には、下流側に位置し、弁部９３が収納される収納部９１２が設けられている。また、第１の接続部９１の内腔部には、収納部９１２の上流側の内径より縮径した縮径部９１３が設けられており、当該縮径部９１３と収納部９１２との境界に内径が急峻に変化した段差部９１１が形成されている。
【００６８】
第２の接続部９２は、管状をなすものである。前述したように、第２の接続部９２は、操作部８の押圧部８２に連結されている。第２の接続部９２は、下端部９２１が弁部９３のシール部材９４に支持されており、当該シール部材９４を介して第１の接続部９１の下流側に設置されている。この第２の接続部９２は、第１の接続部９１に対して、軸線同士が一致する第１の姿勢（図３に示す状態）と、下端部９２１を支点として軸線が押圧部８２（操作部８）の矢印Ｃ方向（操作方向）に傾倒する第２の姿勢（図４に示す状態）とに変位可能に設置されている。
【００６９】
弁部９３は、弾性材料で構成されたシール部材９４と、シール部材９４より上流側に位置するフランジ部９５と、フランジ部９５をシール部材９４側に付勢する付勢部９６とを有している。
【００７０】
シール部材９４は、その形状がリンク状をなすものである。このシール部材９４は、その内周部９４１が第２の接続部９２の下端部９２１の外周部９２２に密着している。また、シール部材９４の外周部９４２は、第１の接続部９１の収納部９１２の内周部９１４に密着している。このようなシール部材９４により、当該シール部材９４を介して、第１の接続部９１と第２の接続部９２とが気密に連結される。
【００７１】
フランジ部９５は、その外径が第２の接続部９２の外径より拡径したものである。このフランジ部９５は、第２の接続部９２の下端面に、間隙９７を介して、対向配置されている。
【００７２】
付勢部９６は、本実施形態では圧縮コイルバネで構成されたものであり、それが圧縮された状態で、上端部９６１がフランジ部９５に当接し、下端部９６２が第１の接続部９１の段差部９１１に当接している。これにより、フランジ部９５を確実にシール部材９４側に付勢することができる。
【００７３】
このような構成の弁部９３では、フランジ部９５は、第２の接続部９２が第１の姿勢のとき、すなわち、第２の接続部９２に外力が付与されていないとき、付勢部９６に付勢されてシール部材９４に気密に密着する（図３参照）。これにより、弁部９３は閉状態となる。
【００７４】
また、操作部８の押圧部８２による矢印Ｃ方向へ押圧力が第２の接続部９２に作用すると、当該第２の接続部９２は、第１の姿勢から第２の姿勢へ変位する。このとき、フランジ部９５は、付勢部９６の付勢力に抗して変位することなり、これにより、フランジ部９５の周縁部９５１の一部（または全部）がシール部材９４から離間して、当該シール部材９４との間に間隙９８が生じる（図４参照）。これにより、ガスＧは間隙９８を介して第１の接続部９１から第２の接続部９２に流れ込む、すなわち、弁部９３は開状態となる。
【００７５】
以上のような構成の開閉手段９では、操作部８による押圧操作に連動して、弁部９３が確実に開／閉することができる。これにより、弁部９３が閉状態のとき、ボンベ３００からノズル４に至るガスＧの流れを確実に遮断することができ、弁部９３が開状態のとき、当該ガスＧの流れを確実に開放することができる。
【００７６】
なお、第１の接続部９１、第２の接続部９２、フランジ部９５および付勢部９６の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【００７７】
また、シール部材９４の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料を用いることができる。
【００７８】
塗布具本体７の前板７２には、ノズル４が設置されている。このノズル４は、チューブ１０を通過したガスＧ（気体）と、第１のシリンジ２の縮径部２２を通過した第１の液体Ｌ１と、第２のシリンジ３の縮径部２２を通過した第２の液体Ｌ２とを吐出するものである。図１に示すように、ノズル４は、ノズル本体４１と、ノズル本体４１の先端側に位置するノズルヘッド４２と、ノズル本体４１とノズルヘッド４２とを接続する接続部４３とを有している。
【００７９】
ノズル本体４１は、例えば金属材料や樹脂材料で構成され、外形形状がブロック状をなすものである。このノズル本体４１は、先端および基端に開口する中空部を有している。このようなノズル本体４１は、その基端開口部４１１が塗布具本体７の前板７２に係合する。これにより、ノズル４が塗布具本体７に固定される。
【００８０】
図５〜図９に示すように、ノズルヘッド４２は、外形形状が円柱状をなすものである。このノズルヘッド４２には、その内部に中空部４２５が形成されている。中空部４２５は、先端壁部４２４に開口する、隣接した一対の開口部を有している。各開口部は、それぞれ、ガスＧを吐出する第３の吐出口（気体吐出口（ガス噴出口））４２３として機能する。
【００８１】
ノズルヘッド４２の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ノズル本体４１の構成材料と同一のものを用いることができる。
【００８２】
図１に示すように、接続部４３は、長尺な管状体で構成され、ノズル本体４１の先端開口部４１２とノズルヘッド４２の基端とを接続している。この接続部４３は、硬質材料で構成されているものでも、軟質材料、弾性材料等で構成され、可撓性を有するものでもよい。接続部４３の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−（４−メチルペンテン−１）、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド（例えば、ナイロン６、ナイロン６・６、ナイロン６・１０、ナイロン１２）のような各種の軟質または硬質樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または銅系合金等の各種金属材料、各種ガラス、アルミナ、シリカ等の各種セラミックスが挙げられる。
【００８３】
また、接続部４３は、それを挿通する、後述の３本のチューブを保護する保護部材（被覆部材）としても機能する。
【００８４】
ノズル本体４１および接続部４３には、３本のチューブが挿通している。これら３本のチューブには、第１の液体Ｌ１をノズルヘッド４２側へ送る第１の流路（液体移送路）４４を画成するものと、第２の液体Ｌ２をノズルヘッド４２側へ送る第２の流路（液体移送路）４５を画成するものと、ボンベ３００からのガスＧをノズルヘッド４２側へ送る第３の流路（ガス流路）４６を画成するものとがある。また、各チューブは、それぞれ、軟質の樹脂材料（弾性材料）で構成されている。この軟質の樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエステル、シリコン等が挙げられ、これらの中でも、特にポリブタジエンを用いるのが好ましい。各チューブの構成材料にポリブタジエンを用いた場合、適度な可撓性、耐薬品性、および薬品の吸着防止性に優れる。
【００８５】
このようなチューブで画成された第１の流路４４、第２の流路４５および第３の流路４６の基端部は、それぞれ、第１のシリンジ２の縮径部２２、第２のシリンジ３の縮径部２２およびチューブ１０の第２のチューブ１０２と液密（気密）に接続されている。
【００８６】
また、第１の流路４４は、ノズルヘッド４２を挿通しており、その先端が先端壁部４２４に開口している。この先端壁部４２４に開口した開口部が第１の液体Ｌ１を吐出する第１の吐出口４２１として機能する。第１の吐出口４２１は、２つの第３の吐出口４２３のうちの一方（図５中下側）の第３の吐出口４２３と同心的に配置されている。第１の液体Ｌ１は、第１のシリンジ２の縮径部２２、第１の流路４４を順に経て、第１の吐出口４２１から吐出する（噴出する）。
【００８７】
第２の流路４５も第１の流路４４と同様に、ノズルヘッド４２を挿通しており、その先端が先端壁部４２４に開口している。この先端壁部４２４に開口した開口部が第２の液体Ｌ２を吐出する第２の吐出口４２２として機能する。第２の吐出口４２２は、２つの第３の吐出口４２３のうちの他方（図５中上側）の第３の吐出口４２３と同心的に配置されている。第２の液体Ｌ２は、第２のシリンジ３の縮径部２２、第２の流路４５を順に経て、第２の吐出口４２２から吐出する（噴出する）。
【００８８】
図５（図６〜図９も同様）に示すように、第１の吐出口４２１と第２の吐出口４２２との大きさは、互いに同等となっている。また、これらの第１の吐出口４２１と第２の吐出口４２２の外周部にそれぞれ配置された２つの第３の吐出口４２３同士も、大きさが互いに同等となっている。
【００８９】
第３の流路４６は、その先端がノズルヘッド４２の基端部に挿入され、中空部４２５に開口している。ガスＧは、弁部９３（開閉手段９）が開状態のとき、ボンベ３００からチューブ１０、第３の流路４６、中空部４２５を順に経て、各第３の吐出口４２３からそれぞれ噴出する。
【００９０】
なお、チューブ１０は、開閉手段９を介して上流側（ボンベ３００側）に位置する第１のチューブ１０１と、下流側（ノズル４側）に位置する第２のチューブ１０２とで構成されている。チューブ１０（第１のチューブ１０１および第２のチューブ１０２）の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、第１の流路４４、第２の流路４５および第３の流路４６を画成するチューブと同様の材料を用いることができる。
【００９１】
このような構成のノズル４では、操作部８を操作した際、各第３の吐出口４２３からガスＧが高速に吐出する。この高速に吐出したガスＧに、第１の吐出口４２１から吐出した第１の液体Ｌ１と、第２の吐出口４２２から吐出した第２の液体Ｌ２とが巻き込まれる（混合する）。このとき、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、それぞれ、霧状となって噴出する。これにより、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが確実に混合され、患部に塗布される。
【００９２】
さて、図５〜図９に示すように、第１の流路４４の途中には、第１のシリンジ２の近傍に、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４４１が設けられている。この容積増減部４４１は、第１の流路４４の途中で、当該第１の流路４４の一部を構成する「流路形成部（流路形成部材）」と言うことができる。例えば容積増減部４４１が第１の流路４４と一体的に形成されている場合には、ノズル４の製造が容易となる。また、一体形成の場合、自然状態で、容積増減部４４１（流路形成部）の内径を、その前後の第１の流路４４の内径と同じとすることができる。これにより、ノズル４の製造がより容易となる。なお、「自然状態」とは、外力が付与されていない状態、すなわち、第３の流路４６の内部にガスＧが供給されておらず、後述する拡張部４６１によって押圧されていない状態を言う。
【００９３】
また、第２の流路４５の途中にも、第１の流路４４とほぼ同様に、第２のシリンジ３の近傍に、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４５１が設けられている。この容積増減部４５１は、第２の流路４５の途中で、当該第２の流路４５の一部を構成する「流路形成部（流路形成部材）」と言うことができる。例えば容積増減部４５１が第１の流路４５と一体的に形成されている場合には、ノズル４の製造が容易となる。また、一体形成の場合、自然状態で、容積増減部４５１（流路形成部）の内径を、その前後の第２の流路４５の内径と同じとすることができる。これにより、ノズル４の製造がより容易となる。
【００９４】
また、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、第３の流路４６を介して、対称的な位置に配置さている。
【００９５】
また、第３の流路４６の途中には、ガスＧの流量（供給量）に応じて拡張・収縮する拡張部（バルーン）４６１が設けられている。この拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１とそれぞれ対応する位置に配置されている。すなわち、拡張部４６１は、容積増減部４４１と容積増減部４５１との間に配置されている。このような位置に配置された拡張部４６１は、それを構成するチューブの周辺（前後）の部位よりも厚さ（管壁）が薄く設定されている。これにより、拡張部４６１内にガスＧが供給される（流入する）ことにより確実に拡張し、ガスＧの供給が停止することにより確実に収縮する。拡張部４６１は、その拡張・収縮により、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ、容積が増減するように押圧して変形させる変形手段として機能するものである。
【００９６】
図５、図９に示すように、拡張部４６１は、自然状態では、外径がその前後の流路４６の外径よりも若干拡径している、すなわち、最も収縮している。また、この状態では、拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ押圧しない程度に当接していてもよいし、容積増減部４４１および４５１からそれぞれ離間していてもよい。図５および図９に示す構成では、拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ押圧しない程度に当接している。このとき、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ容積が最大となっている。
【００９７】
また、図６〜図８に示すように、第３の流路４６にガスが供給された際、拡張部４６１は、その内部にもガスが供給されて拡張する（膨張する）。この拡張した拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１の弾性力に抗して、これらの容積増減部４４１および４５１を圧迫する（押圧する）。これにより、容積増減部４４１および４５１のそれぞれの容積が減少する。なお、拡張した拡張部４６１の容積増減部４４１に対する押圧の程度は、容積増減部４４１の内周面同士が密着しない程度とされる（容積増減部４５１についても同様）。
【００９８】
また、拡張した拡張部４６１が再度収縮した際には、容積増減部４４１および４５１のそれぞれに対する圧迫が解除される。これにより、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ、自身の弾性により復元する（図９参照）。
【００９９】
また、ノズル４は、容積増減部４４１および４５１、拡張部４６１を外方から一括して保持するリング（バンド）４７を有している。このリング４７は、例えばプラスチック材料で構成された帯体を巻回することにより形成されている。リング４７により、容積増減部４４１と容積増減部４５１と拡張部４６１との位置関係が、拡張部４６１の拡張・収縮に関わらず、規制される。これにより、拡張部４６１が拡張した際、当該拡張した拡張部によって、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ確実に押圧される。
【０１００】
このように、塗布具１では、拡張部４６１の拡張・収縮により、容積増減部４４１および４５１の各容積が確実に変化する。
【０１０１】
次に、使用可能状態となった、すなわち、第１の液体Ｌ１が充填された第１のシリンジ２と、第２の液体Ｌ２が充填された第２のシリンジ３とが装填され、かつボンベ３００に接続された状態の塗布具１の作動状態について説明する。
【０１０２】
第１のシリンジ２および第２のシリンジ３には、それぞれ、患部に塗布するのに必要な（十分な）程度の液量の第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が充填されている。また、ボンベ３００は、バルブ３０１が開状態となっており、塗布具１に対してガスＧを供給可能となっている。
【０１０３】
また、塗布具１では、シール部材９４にフランジ部９５を押し付ける付勢部９６の力（付勢力）に抗して、シール部材９４とフランジ部９５との間に間隙９８を生じさせる力、すなわち、第２の接続部９２を第１の姿勢から第２の姿勢へ傾倒させる矢印Ｃ方向への押圧力は、第１のシリンジ２の押し子２６と第２のシリンジ３の押し子２６とを先端方向に移動させる力より大きくなるように設定されている。このような設定を行う方法としては、例えば、付勢部９６のバネ定数、各液体の粘度、各外筒２１の内径等の諸条件を適宜設定することより可能となる。
【０１０４】
このような塗布具１に対して、まず、例えば塗布具本体７の指掛け部７５１に人差し指を掛け、指掛け部７５２に中指を掛け、操作部８の押圧部８２に親指を掛ける。このとき、第１の流路４４には第１の液体Ｌ１が供給されておらず、第２の流路４５にも第２の液体Ｌ２が供給されておらず、第３の流路４６にもガスＧが供給されていない（図５参照）。このため、ノズル４からは、ガスＧ、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、吐出されていない。また、拡張部４６１が拡張していないため、それによる容積増減部４４１および４５１への圧迫もなされていない。
【０１０５】
次に、この状態で、親指で押圧部８２を押圧操作すると、まず、第２の接続部９２が傾倒して、シール部材９４とフランジ部９５との間に間隙９８が生じ、この間隙９８を介してガスＧが流通する（図４参照）。これにより、ガスＧが第２のチューブ１０２を介して第３の流路４６に供給され、よって、ノズル４の各第３の吐出口４２３からガスＧが噴出される（図６参照）。また、このとき、拡張部４６１が拡張するため、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ圧迫される。拡張部４６１の拡張は、当該拡張部４６１へのガスＧの供給が停止するまで維持される。
【０１０６】
また、親指による押圧部８２に対する押圧操作は、操作部８全体、すなわち、各押し子２６を先端方向に移動するまでには至っていない。このため、第１の流路４４および第２の流路４５には、未だ第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が供給されていない。
【０１０７】
さらに、押圧部８２を押圧すると、第２の接続部９２の傾倒が限界となり、親指からの押圧力が押圧部８２を介して連結部８１に伝達される。これにより、連結部８１（操作部８全体）が移動し始め、よって、第１のシリンジ２から第１の液体Ｌ１が押し出されるとともに、第２のシリンジ３からも第２の液体Ｌ２が押し出される。この押し出された第１の液体Ｌ１は、拡張部４６１で圧迫されたままの容積増減部４４１を通過し、さらに先端方向へ、すなわち、第１の吐出口４２１に至り、そこから噴出する（図７参照）。また、第２の液体Ｌ２は、第１の液体Ｌ１とほぼ同様に、拡張部４６１で圧迫されたままの容積増減部４５１を通過し、第２の吐出口４２２に至り、そこから噴出する（図７参照）。
【０１０８】
噴出された第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、前述したようにガスＧの作用により、それぞれ霧状になり、互いに混合して患部に塗布される。
【０１０９】
患部に対する所定量の塗布が完了した後、親指の押圧部８２（操作部８）に対する押圧力を緩めていくと、まず、操作部８全体の移動が停止する。これにより、各押し子２６の移動が停止し、よって、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の噴出がそれぞれ停止する（図８参照）。このとき、押圧部８２の押圧による第２の接続部９２の第２の姿勢が維持されているため、ガスＧは、まだ噴出されている（図８参照）。
【０１１０】
さらに、親指の押圧部８２に対する押圧力を緩めていくと、遂には、押圧部８２を押圧していた親指が当該押圧部８２から離間する。これにより、第２の接続部９２に対する押圧力が解除されて、第２の接続部９２が第１の姿勢に戻る。これにより、シール部材９４とフランジ部９５との間の間隙９８がなくなる、すなわち、シール部材９４とフランジ部９５の周縁部９５１の全周とが互いに密着する（図３参照）。このとき、第３の流路４６へのガスＧの供給が停止し、よって、ガスＧの各第３の吐出口４２３からの噴出も停止する（図９参照）。
【０１１１】
また、第３の流路４６へのガスＧの供給が停止した際には、拡張部４６１が収縮する（図９参照）。これにより、拡張部４６１の容積増減部４４１および４５１に対する圧迫が解除され、容積増減部４４１および４５１の各容積が、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が吐出している状態のそれよりも大となる（増加する）。この容積が大となることにより、第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも後端側に引き込まれ、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２も第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる（図９参照）。
【０１１２】
このように第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１と第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２とが引き込まれることにより、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近で、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合して固化するのを防止することができる。これにより、塗布具１の使用後、すなわち、塗布後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。そして、この目詰まりが生じていない状態の塗布具１を再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１１３】
また、塗布具１では、前述したように、拡張部４６１が、ガスＧの供給に連動して作動する、すなわち、拡張・収縮する。これにより、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させるための部位を別部材（別機構）で設けるのを省略することができ、よって、塗布具１を簡単な構成のものとすることができる。
【０１１４】
また、塗布具１では、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をノズル４から吐出／吐出停止するときの、ノズル４に対するガスＧの供給／供給停止のタイミングを最適に設定することができる。換言すれば、塗布具１は、ノズル４からは、ガスＧが、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２より容易かつ確実に先立って吐出されるよう構成されている。
【０１１５】
これにより、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のみが患部に噴出され塗布されるのを防止することができる。また、先立って噴出されたガスＧにより、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２がそれぞれ確実に霧状となって噴出され、よって、これらの液体同士が確実に混合する。
【０１１６】
また、塗布具１では、ガスＧは、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２より遅れて噴出が停止するよう構成されている。これにより、各液体の噴出が停止することで当該各液体が各吐出口に残留した（付着した）場合、これらの残留した液体をガスＧが吹き飛ばすことができる。よって、各吐出口付近において第１の液体と第２の液体とが反応することにより生じる不都合（例えば、凝固による各吐出口の目詰まり）をより確実に防止することができる。
【０１１７】
＜第２実施形態＞
図１０および図１１は、それぞれ、本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１０は液体が吐出している状態を示し、図１１は液体の吐出が停止した状態を示す））、図１２は、図１０中のＢ−Ｂ線断面図、図１３は、図１１中のＣ−Ｃ線断面図である。
【０１１８】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第２実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１１９】
本実施形態は、変形手段の構成が異なること以外は前記第１実施形態と同様である。
図１０および図１１に示す塗布具１Ａでは、第３の流路４６の途中に、加圧室（貯留室）４６２が設けられている。第３の流路４６を画成するチューブは、加圧室４６２内で切断されており、各切断部（開口部）４６３、４６４が加圧室４６２内に開口している。これにより、一方（図１０中右側）の切断部４６３からガスＧが流入し、そのガスＧは、加圧室４６２内で一時的に貯留され、その後、他方（図１０中左側）の切断部４６４から流出する。ガスＧが加圧室４６２内で貯留されることにより、当該加圧室４６２内の圧力が上昇する。
【０１２０】
また、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ、加圧室４６２内に位置して（挿通して）いる。加圧室４６２は、筒状をなすものであり、その両端がゴムパッキン４６５を介して、容積増減部４４１および４５１と液密に接続されている。
【０１２１】
このような構成の塗布具１Ａでは、前述したように加圧室４６２内の圧力が上昇することにより、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ圧迫される（図１０、図１２参照）。また、加圧室４６２へのガスＧの供給が停止して（減少して）当該加圧室４６２内の圧力の上昇が下降に転ずることにより、容積増減部４４１および４５１に対する圧迫がそれぞれ解除される（図１１、図１３参照）。
【０１２２】
従って、加圧室４６２は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させる変形手段として機能するものであると言うことができる。
【０１２３】
なお、図１２に示すように、圧力が上昇した加圧室４６２内の圧力の程度は、容積増減部４４１の内周面同士が密着しない程度とされる（容積増減部４５１についても同様）。
【０１２４】
図１０および図１１（図１２および図１３も同様）に示すように、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の吐出が停止している状態（図１１や図１３に示す状態）の容積増減部４４１および４５１の各容積は、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が吐出している状態（図１０や図１２に示す状態）のそれよりも大となる。これにより、第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも後端側に引き込まれ、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２も第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる。よって、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近で、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合して固化するのを防止することができる。その結果、塗布具１Ａの使用後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。
【０１２５】
なお、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、図１０、図１１に示す構成ではノズル４の長手方向の同じ位置に配置さているが、これに限定されず、例えば、ノズル４の長手方向の異なる位置（ズレた位置）に配置されていてもよい。
【０１２６】
＜第３実施形態＞
図１４および図１５は、それぞれ、本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１４は液体が吐出している状態を示し、図１５は液体の吐出が停止した状態を示す））である。
【０１２７】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第３実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１２８】
本実施形態は、塗布具が流路確保手段をさらに有すること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１２９】
図１４および図１５に示す塗布具１Ｂは、流路確保手段としての２本のスペーサ５１を有している。各スペーサ５１は、例えば金属材料で構成されたワイヤ（長尺体）であり、容積増減部４４１および４５１内にそれぞれ挿通している。なお、各スペーサ５１は、それぞれ、容積増減部４４１および４５１内に図示しない固定部により固定されている。また、各スペーサ５１の横断面形状は、図示の構成では円形であるが、これに限定されず、例えば、楕円形、長円形、多角形であってもよい。
【０１３０】
２本のスペーサ５１は、同様の機能を有しているため、容積増減部４４１を挿通するスペーサ５１について代表的に説明する。
【０１３１】
スペーサ５１は、加圧室４６２内の圧力の上昇により容積増減部４４１が圧迫されてその容積が減少した際に、容積増減部４４１の内周面同士の接触を阻止することができる（図１４参照）。これにより、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができ、よって、第１の液体Ｌ１が第１の吐出口４２１から確実に噴出する。
【０１３２】
例えば容積増減部４４１の内周面同士が接触する程度に加圧室４６２内の圧力が上昇した場合でも、スペーサ５１によって、内周面同士の間に間隙を確実に形成することができる。このように、容積増減部４４が過剰に圧迫された（容積が過剰に減少した）場合でも、当該容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができる。
【０１３３】
また、吐出状態でも容積増減部４４１の内周面同士の接触が阻止されているため、吐出停止後に、容積増減部４４１の内周面同士が迅速に離間する、すなわち、容積増減部４４１が迅速に復元することができる(図１５参照)。
【０１３４】
＜第４実施形態＞
図１６および図１７は、それぞれ、本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１６は液体が吐出している状態を示し、図１７は液体の吐出が停止した状態を示す））である。
【０１３５】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第４実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１３６】
本実施形態は、流路確保手段の構成が異なること以外は前記第３実施形態と同様である。
【０１３７】
図１６および図１７に示す塗布具１Ｃでは、容積増減部４４１および４５１の内周面にそれぞれ２本の溝４８１、４８２が形成されている。
【０１３８】
容積増減部４４１および４５１では、溝４８１および４８２が果たす機能は同等であるため、以下、容積増減部４４１側の溝４８１および４８２について代表的に説明する。
【０１３９】
溝４８１および４８２は、それぞれ、容積増減部４４１の長手方向に沿って形成されている。また、図１７に示すように、溝４８１と溝４８２とは、第１の液体Ｌ１の吐出が停止している状態では、互いに対向している。
【０１４０】
図１６に示すように、容積増減部４４１の容積が減少している状態では、溝４８１および４８２は、それぞれ、内周面のこれらを除く部位に接触しない。これにより、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができ、よって、第１の液体Ｌ１が第１の吐出口４２１から確実に噴出する。
【０１４１】
このように、溝４８１および４８２は、それぞれ、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保する流路確保手段としての機能を有している。
【０１４２】
また、容積増減部４４１の管壁には、その厚さが最小となる易変形部（規制手段）４９が周方向に沿って等間隔に２箇所形成されている。２つの易変形部４９は、それぞれ、容積増減部４４１の周方向の溝４８１と溝４８２との間に配置されている。
【０１４３】
このような各易変形部４９は、容積増減部４４が圧迫された際、その容積増減部４４１の各易変形部４９を除く部位よりも優先的に変形する。これにより、容積増減部４４が圧迫された際、当該容積増減部４４が主に変形する方向を規制することができ、よって、溝４８１と溝４８２とが接近することとなる。これにより、容積増減部４４１が圧迫された際に、当該容積増減部４４を通過する第１の液体Ｌ１の圧力損失を防止または抑制することができる。
【０１４４】
溝の形成数は、本実施形態では２本であるが、これに限定されず、例えば、１本または３本以上であってもよい。
【０１４５】
＜第５実施形態＞
図１８は、本発明の塗布具（第５実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図である。
【０１４６】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第５実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１４７】
本実施形態は、変形手段の設置位置が異なること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１４８】
図１８に示す塗布具１Ｄでは、加圧室４６２内を第２の流路４５のみが挿通している。この第２の流路４５の加圧室４６２内を挿通している部位が容積増減部４５１となっている。容積増減部４５１は、加圧室４６２の圧力の変化により、容積が増減するように変形することができる。これにより、前記第２実施形態と同様に、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２が第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる。
【０１４９】
塗布具１Ｄでは、たとえ吐出停止状態で第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも外方に突出していても、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２が第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれているため、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合するのが防止される。これにより、塗布具１Ｄの使用後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。
【０１５０】
＜第６実施形態＞
図１９〜図２１は、それぞれ、本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図１９〜図２１中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１５１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第６実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１５２】
本実施形態は、容積増減部の形状が異なることと、塗布具が合流部をさらに有すること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１５３】
図１９〜図２１に示す塗布具１Ｅでは、前述したようなノズル本体４１とノズルヘッド４２とを接続する接続部４３が省略され、第３の流路４６が前記接続部４３として機能しており、当該第３の流路４６内に第１の流路４４および第２の流路４５が挿通している。
【０１５４】
また、塗布具１Ｅ（ノズル４）は、第１の流路４４を流下した（通過した）第１の液体Ｌ１と、第２の流路４５を流下した第２の液体Ｌ２とが合流する合流部５２を有している。
【０１５５】
合流部５２は、第１の流路４４および第２の液体Ｌ２にそれぞれ連通するチューブで構成されている。このチューブの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、第１の流路４４や第２の流路４５を構成するチューブと同様の材料を用いることができる。
【０１５６】
また、合流部５２は、その途中に、内径が先端方向に向かって漸減したテーパ部５２１を有している。このテーパ部５２１を介して、合流部５２は、先端側の内径が小さい小径部５２２と、基端側の内径が大きい大径部５２３とに分けることができる。
【０１５７】
小径部５２２の先端開口は、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合したもの）が吐出する混合液吐出口５２４として機能する（図２０参照）。また、小径部５２２の先端部は、ノズルヘッド４２の先端壁部４２４に１つ設けられた開口部（第３の吐出口４２３）の内側に、当該開口部と同心的に配置されている。これにより、操作部８を操作して第３の吐出口４２３からガスＧが高速に吐出すると、この高速に吐出したガスＧに、混合液吐出口５２４から吐出した混合液が巻き込まれる（混合する）。このとき、混合液が霧状となって噴出する。
【０１５８】
このような構成の塗布具１Ｅにより、第１の液体Ｌ１と第２の液体とが合流部５２で合流されて均一かつ確実に混合して、混合液となる。また、この混合液は、前述したように霧化して噴出されることとなる。
【０１５９】
また、第１の流路４４の途中には容積増減部４４１が設けられており、第２の流路４５の途中には容積増減部４５１が設けられている。容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、同様の機能を有しているため、容積増減部４４１について代表的に説明する。
【０１６０】
容積増減部４４１は、自然状態で内径がその前後の第１の流路４４の内径より大きいものである（図１９、図２１参照）。この容積増減部４４１は、第３の流路４６内のガスＧの圧力の変動によって、拡張・収縮するバルーンで構成されたものである。塗布具１Ｅでは、ガスＧが第３の流路４６内で貯留されることにより、当該第３の流路４６内の圧力が上昇する。従って、塗布具１Ｅでは、第３の流路４６がそのほぼ全体に渡って加圧室となっていると言うこともできる。
【０１６１】
図１９〜図２１に示すように、混合液（第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２）の吐出が停止している状態（図１９に示す状態）の容積増減部４４１および４５１の各容積は、混合液が吐出している状態（図２０に示す状態）のそれよりも大となる。これにより、混合液は、合流部５２よりも後端側、すなわち、容積増減部４４１および４５１内に引き込まれる。容積増減部４４１内に引き込まれた混合液は、第１の流路４４（容積増減部４４１）内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈され、容積増減部４５１内に引き込まれた混合液は、第２の流路４５（容積増減部４５１）内の第２の液体Ｌ２によって、固化しない程度に十分に希釈される。これにより、塗布具１Ｅ内に残留した混合液が固化するのを確実に防止することができ、よって、塗布具１Ｅを再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１６２】
なお、塗布具１Ｅでは、混合液を容積増減部４４１（容積増減部４５１も同様）内に引き込むには、当該容積増減部４４１の収縮から拡張に変形する際に増加する変化量（容積）を適宜設定することにより、それを確実に行なうことができる。
【０１６３】
また、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、ノズル４の長手方向の異なる位置に配置されている。これにより、拡張した容積増減部４４１と拡張した容積増減部４５１との干渉を防止することができる。なお、図１９（図２０、図２１も同様）に示す構成では、容積増減部４４１が容積増減部４５１よりも先端側に位置している。
【０１６４】
また、容積増減部４４１（容積増減部４５１も同様）を構成するバルーンの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【０１６５】
＜第７実施形態＞
図２２は、本発明の塗布具（第７実施形態）の容積増減部付近の概略部分縦断面図である。なお、説明の都合上、図２２中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１６６】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第７実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１６７】
本実施形態は、容積増減部の設置状態が異なること以外は前記第６実施形態と同様である。
【０１６８】
図２２に示す塗布具１Ｆでは、容積増減部４４１は、第１の流路４４の途中から分岐した分岐部４４２を介して設けられており、容積増減部４５１は、第２の流路４５の途中から分岐した分岐部４５２を介して設けられている。各容積増減部４４１、４５１は、それぞれ、第３の流路４６内のガスＧの圧力の変動によって、拡張したり、収縮したり（図２２中二点鎖線で示す部分参照）するバルーンで構成されたものである。
【０１６９】
混合液の吐出が停止している状態の容積増減部４４１および４５１（図２２中実線で示す部分参照）の各容積は、混合液が吐出している状態のそれ（図２２中二点鎖線で示す部分参照）よりも大となる。これにより、前記第６実施形態と同様に、混合液には、第１の流路４４内に引き込まれるものと、第２の流路４５に引き込まれるものに分けられ、混合液は、各流路内で十分希釈される。これにより、塗布具１Ｆ内に残留した混合液が固化するのを確実に防止することができ、よって、塗布具１Ｆを再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１７０】
＜第８実施形態＞
図２３〜図２５は、それぞれ、本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図２３〜図２５中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１７１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第８実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１７２】
本実施形態は、塗布具が流路確保手段をさらに有すること以外は前記第６実施形態と同様である。
【０１７３】
図２３〜図２５に示すように、塗布具１Ｇでは、容積増減部４４１には、硬質管（硬質な管体）４４３が挿通されており、容積増減部４５１には、硬質管４５３が挿通さている。
【０１７４】
硬質管４４３は、その先端部が第１の流路４４の硬質管４４３よりも下流側（図中左側）の部分に接続されており、後端部が第１の流路４４の硬質管４４３よりも上流側（図中右側）の部分に接続されている。これにより、硬質管４４３は、第１の流路４４と連通する。また、硬質管４４３には、その長手方向の中央部に、管壁に円形状に開口した１つの側孔４４４が形成されている。この側孔４４４を介して、硬質管４４３の内部と容積増減部４４１の内部とが連通する。
【０１７５】
硬質管４５３は、その先端部が第２の流路４５の硬質管４５３よりも下流側（図中左側）の部分に接続されており、後端部が第２の流路４５の硬質管４５３よりも上流側（図中右側）の部分に接続されている。これにより、硬質管４５３は、第２の流路４５と連通する。また、硬質管４５３には、その長手方向の中央部に、管壁に円形状に開口した１つの側孔４５４が形成されている。この側孔４５４を介して、硬質管４４３の内部と容積増減部４５１の内部とが連通する。
【０１７６】
硬質管４４３と硬質管４５３とは、それらの機能がほぼ同一であるため、以下、硬質管４４３を代表的に説明する。
【０１７７】
図２３に示す状態から操作部８を操作して、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２との混合液）を吐出した際には、前述したように容積増減部４４１が圧縮されて（容積増減部４４１の容積が減少して）収縮する。このとき、容積増減部４４１の内周面によって硬質管４４３の外周面が押圧されるが、容積増減部４４１のそれ以上の収縮は、硬質管４４３で規制される（阻止される）（図２４参照）。これにより、容積増減部４４１（硬質管４４３）内の第１の液体Ｌ１の流通が確実に確保される。よって、第１の液体Ｌ１が混合液吐出口５２４（合流部５２）に向かって円滑に流れ、混合液の塗布が確実に行なわれる。このように、硬質管４４３は、容積増減部４４１の容積が減少したときでも容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保する流路確保手段として機能するものである。
【０１７８】
また、前述したように、混合液の塗布後には、混合液は、合流部５２よりも後端側、すなわち、容積増減部４４１（硬質管４４３）内に引き込まれる（図２５参照）。容積増減部４４１内に引き込まれた混合液は、第１の流路４４（容積増減部４４１）内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈される。また、混合液は、容積増減部４４１（硬質管４４３）内に引き込まれて、収納されるため、逆流して、混合液吐出口５２４から漏出するのが防止される。
【０１７９】
このような硬質管４４３（硬質管４５３も同様）は、容積増減部４４１が圧縮されてその内周面によって硬質管４４３の外周面が押圧されたとしても、当該硬質管４４３の内径が実質的に減少しない程度の剛性となっている。これにより、流路確保手段としての機能をより確実に発揮することができる。ここで、「内径が実質的に減少しない程度」とは、内径の減少率が１０％以下のことを言う。
【０１８０】
また、このような剛性を有する硬質管４４３の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやアルミニウム合金等のような金属材料、各種硬質プラスチック等が挙げられる。
【０１８１】
図２３〜図２５に示すように、硬質管４４３の側孔４４４の縁部には、当該縁部（硬質管４４３の外周面）から突出したリング状のリップ部（リブ）４４６が形成されている。また、これと同様に、硬質管４５３の側孔４５４の縁部にも、当該縁部（硬質管４５３の外周面）から突出したリング状のリップ部（リブ）４５６が形成されている。
【０１８２】
リップ部４４６（リップ部４５６も同様）により、容積増減部４４１が収縮した際、当該容積増減部４４１の内周面が硬質管４４３の外周面の側孔４４４の近傍に密着するのを防止することができる（図２４参照）。これにより、容積増減部４４１が収縮した状態から拡張した状態へ変形する（変化する）際、その変形が円滑に行なわれる。このように、リップ部４４６（リップ部４５６も同様）は、容積増減部４４１が収縮した際に当該容積増減部４４１の内周面が硬質管４４３の外周面に密着するのを防止する密着防止手段として機能する。
【０１８３】
＜第９実施形態＞
図２６は、本発明の塗布具（第９実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【０１８４】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第９実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１８５】
本実施形態は、硬質管の構成が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
図２６に示す塗布具１Ｈでは、硬質管４４３は、網状の管体、すなわち、多数の側孔４４４を有する管体で構成されている（硬質管４５３についても同様の構成となっている）。これにより、硬質管４４３の内部と容積増減部４４１の内部とを行き来する（出入りする）第１の液体Ｌ１の流通性が優れる（硬質管４５３についても同様）。これにより、容積増減部４４１内に第１の液体Ｌ１が残留する、すなわち、容積増減部４４１内に残液が生じるのを防止することができる。
【０１８６】
＜第１０実施形態＞
図２７は、本発明の塗布具（第１０実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【０１８７】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第１０実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１８８】
本実施形態は、硬質管の構成が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
図２７に示す塗布具１ｉの硬質管４４３では、側孔４４４は、スリットであり、このスリットが螺旋状をなしている（硬質管４５３の側孔４５４についても同様の構成となっている）。これにより、例えば、ノズル４の接続部４３を曲げて使用する場合、硬質管４４３が容易に曲がり、よって、塗布具１ｉの操作性が向上する（硬質管４５３についても同様）。
【０１８９】
なお、側孔４４４は、１本の螺旋状のスリットに限定されず、例えば、硬質管４４３の周方向に沿ったＣ字状をなし、硬質管４４３の長手方向に沿って複数配置されたものであってもよい。
【０１９０】
＜第１１実施形態＞
図２８および図２９は、それぞれ、本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図２８および図２９中の左下側を「先端」、右上側を「後端（基端）」といい、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。
【０１９１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第１１実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１９２】
本実施形態は、硬質管の側孔の位置が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
【０１９３】
なお、本実施形態では、硬質管４４３と硬質管４５３とは、それらの構成がほぼ同一であるため、以下、硬質管４４３を代表的に説明する。
【０１９４】
図２８および図２９に示す塗布具１Ｊの硬質管４４３では、側孔４４４が容積増減部４４１の基端部近傍、すなわち、前記第８実施形態の硬質管４４３の側孔４４４よりも上流側（基端側）に配置されている。
【０１９５】
塗布具１Ｊ（塗布具１〜１ｉについても同様）は、一般的に用いられる際には、ノズル４の先端（ノズルヘッド４２）を下方に向け（図２８（ａ）に示す状態）、この状態で操作部８を操作して、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２との混合液）を吐出する（図２８（ｂ）に示す状態）。そして、混合液の吐出が停止すると、前述したように、混合液は、合流部５２よりも後端側に引き込まれる。この引き込まれた混合液には、硬質管４４３内から側孔４４４を介して容積増減部４４１内に流入するもの（Ｌ１＋Ｌ２）と、第１の流路４４（硬質管４４３）内に留まるものとがある（図２９（ｃ）参照）。第１の流路４４内に留まった混合液は、第１の流路４４内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈される。また、容積増減部４４１内に流入した混合液（Ｌ１＋Ｌ２）は、側孔４４４よりも十分に上方に位置する、すなわち、側孔４４４から十分に遠位にある。
【０１９６】
そして、再度塗布具１Ｊを用いる際には、前記と同様にノズル４の先端を下方に向けて用いる（図２９（ｄ）参照）。このとき、容積増減部４４１内に流入した混合液は、前述したように側孔４４４よりも十分に上方に位置しているため、当該混合液が硬質管４４３内に逆流するのが確実に防止される。これにより、容積増減部４４１内に収納された混合液が吐出されるのが確実に防止される。
【０１９７】
なお、図２８、図２９に示すように、側孔４４４（側孔４５４も同様）は、塗布具１Ｊを把持して使用するときに上方に向かって開口するような位置に形成されているのが好ましい。これにより、容積増減部４４１内に流入した混合液から側孔４４４をできる限り遠ざけることができる。よって、再度塗布具１Ｊを用いる際に、容積増減部４４１内に収納された混合液が吐出されるのがより確実に防止される。
【０１９８】
以上、本発明の塗布具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、塗布具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【０１９９】
また、本発明の塗布具は、前記各実施形態のうちの、任意の２以上の構成（特徴）を組み合わせたものであってもよい。
【０２００】
また、前記第１実施形態、前記第３実施形態〜第５実施形態に、前記第６実施形態のような合流部が設けられていてもよい。
【０２０１】
また、前記第１実施形態〜第５実施形態の容積増減部が、それぞれ、前記第６実施形態の容積増減部のようにバルーンで構成されたものであってもよい。
【０２０２】
また、前記第１実施形態〜第５実施形態の容積増減部を、それぞれ、前記第７実施形態のような、分岐部を介して設けられた容積増減部に置換してもよい。
【０２０３】
また、容積増減部より先端側の流路の内面は、疎水性を有するのが好ましい。疎水性を有することにより、液体が当該流路内からはじかれ、その流路内に残留するのが抑制または防止される。内面に疎水性を担持させるには、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、またはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂で構成された材料を内面に付与する方法が挙げられる。一方、容積増減部より先端側の流路の内面が親水性を有する場合には、当該流路の内面に液体が付着し（残留し）易くなり、ノズルが鉛直下方に向かって傾斜した状態が長時間維持されると、前記付着した液体が流下してノズルの先端に溜まり、ノズルの目詰まり、さらには、ノズルから外側へ液体が漏れ出るおそれもある。
【図面の簡単な説明】
【０２０４】
【図１】本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図である。
【図２】本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図である。
【図３】図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（ガス流路が遮断された状態を示す図）である。
【図４】図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（ガス流路が開放された状態を示す図）である。
【図５】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図６】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図７】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図８】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図９】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図１０】本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１１】本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１２】図１０中のＢ−Ｂ線断面図である。
【図１３】図１１中のＣ−Ｃ線断面図である。
【図１４】本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１５】本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１６】本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１７】本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１８】本発明の塗布具（第５実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図である。
【図１９】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２０】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２１】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２２】本発明の塗布具（第７実施形態）の容積増減部付近の概略部分縦断面図である。
【図２３】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２４】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２５】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２６】本発明の塗布具（第９実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【図２７】本発明の塗布具（第１０実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【図２８】本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２９】本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図３０】図１に示す塗布具に装填される第１のシリンジ（第２のシリンジも同様）の部分縦断面図である。
【符号の説明】
【０２０５】
１、１Ａ、１Ｂ、１Ｃ、１Ｄ、１Ｅ、１Ｆ、１Ｇ、１Ｈ、１ｉ、１Ｊ 塗布具
２ 第１のシリンジ（供給手段）
２０ 空間
２１ 外筒
２２ 縮径部（口部）
２３ フランジ
２４ ガスケット
２５ 中空部
２６ 押し子
２７ 本体部
２８ ヘッド部
２９ フランジ
３ 第２のシリンジ（供給手段）
４ ノズル
４１ ノズル本体
４１１ 基端開口部
４１２ 先端開口部
４２ ノズルヘッド
４２１ 第１の吐出口
４２２ 第２の吐出口
４２３ 第３の吐出口（気体吐出口）
４２４ 先端壁部
４２５ 中空部
４３ 接続部
４４ 第１の流路（液体移送路）
４４１ 容積増減部
４４２ 分岐部
４４３ 硬質管（硬質な管体）
４４４ 側孔
４４６ リップ部（リブ）
４５ 第２の流路（液体移送路）
４５１ 容積増減部
４５２ 分岐部
４５３ 硬質管（硬質な管体）
４５４ 側孔
４５６ リップ部（リブ）
４６ 第３の流路（ガス流路）
４６１ 拡張部（バルーン）
４６２ 加圧室（貯留室）
４６３、４６４ 切断部（開口部）
４６５ ゴムパッキン
４７ リング
４８１、４８２ 溝
４９ 易変形部（規制手段）
５１ スペーサ
５２ 合流部
５２１ テーパ部
５２２ 小径部
５２３ 大径部
５２４ 混合液吐出口
７ 塗布具本体
７１ 基部
７１１、７１２ 凹部
７１３ ガイド
７２ 前板（第１の係合部）
７２１、７２２ 溝
７３ 後板（第２の係合部）
７３１、７３２ 凹部
７５１、７５２ 指掛け部
８ 操作部
８１ 連結部
８１１、８１２ 凹部
８１３ 筒状部
８２ 押圧部
８３ レール部
９ 開閉手段（弁機構）
９１ 第１の接続部
９１１ 段差部
９１２ 収納部
９１３ 縮径部
９１４ 内周部
９２ 第２の接続部
９２１ 下端部
９２２ 外周部
９３ 弁部
９４ シール部材
９４１ 内周部
９４２ 外周部
９５ フランジ部
９５１ 周縁部
９６ 付勢部
９６１ 上端部
９６２ 下端部
９７、９８ 間隙
１０ チューブ（ガス流路）
１０１ 第１のチューブ
１０２ 第２のチューブ
３００ ボンベ（ガス供給手段）
３０１ バルブ
Ｌ１ 第１の液体
Ｌ２ 第２の液体
Ｐ１、Ｐ２ 先端
Ｇ ガス（無菌ガス）
【技術分野】
【０００１】
本発明は、塗布具に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、２種以上の液体を混合して患部等に噴射し、癒着防止材や生体組織接着材などを形成する方法が知られており、そのための塗布具が開発されている。
【０００３】
このような塗布具は、混合すると凝固する成分同士、例えばトロンビンを含有する溶液とフィブリノーゲンを含有する溶液を互いに分別した状態で、患部付近まで送り、患部で混合しながら塗布するという構成によるものである。
【０００４】
従来の塗布具としては、異なる種類の液体をそれぞれ含有する２つのシリンジからそれぞれ流路が並んだ状態で設置され、両流路の先端、すなわち、各吐出口からそれぞれ液体が噴出し、混合される構成のものがある（例えば、特許文献１参照）。液体を噴出するには、各シリンジの押し子（プランジャ）をそれぞれ押圧操作することにより、それを行うことができる。
【０００５】
各シリンジの押し子の押圧操作後には、液体の吐出は停止するが、流路内の残圧によって、各吐出口から液体が外方に向かって突出した状態となる。この状態では、液体同士が混合することとなり、よって、これら液体同士が凝固してしまう。その結果、各吐出口に目詰まりが生じる。そして、この目詰まりが生じた状態の塗布具で再び塗布を行なおうとしても、前記凝固した液体が各吐出口からの液体の吐出を妨害し、再塗布を行なうことができないという問題があった。
【０００６】
【特許文献１】特開２００２−２８２３６８号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明の目的は、液体を各吐出口からそれぞれ吐出した際の当該吐出口付近に生じる目詰まりを防止することができる塗布具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
このような目的は、下記（１）〜（１６）の本発明により達成される。
（１） 液組成が異なる２種の液体をそれぞれ別個に供給する供給手段と、
前記２種の液体を吐出する吐出口と、
前記供給手段から前記吐出口へそれぞれ液体を送る２本の液体移送路と、
前記２本の液体移送路のうちの少なくとも一方に設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部と、
前記容積増減部を変形させる変形手段とを有し、
前記変形手段は、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で、前記容積増減部をその容積が大となるように変形させるよう作動することを特徴とする塗布具。
【０００９】
（２） 前記変形手段の作動により、前記容積増減部が設けられた前記液体移送路を通過した液体の先端が、前記吐出口よりも後端側に引き込まれる上記（１）に記載の塗布具。
【００１０】
（３） 前記容積増減部は、前記液体移送路の途中で、該液体移送路の一部を構成する流路形成部である上記（１）または（２）に記載の塗布具。
【００１１】
（４） 前記流路形成部は、自然状態で、その内径が当該流路形成部の前後の前記液体移送路の内径と同じかまたはそれより大きいものである上記（３）に記載の塗布具。
【００１２】
（５） 前記容積が減少したときでも前記流路形成部材内の液体の流通を確保する流路確保手段を有する上記（３）または（４）に記載の塗布具。
【００１３】
（６） 前記流路確保手段は、前記流路形成部材内に挿通され、前記液体移送路に連通する硬質な管体で構成され、該管体には、その管壁に開口し、前記流路形成部材の内部と連通する少なくとも１つの側孔が形成されている上記（５）に記載の塗布具。
【００１４】
（７） 前記管体は、網状の管体で構成されている上記（６）に記載の塗布具。
（８） 前記管体は、前記流路形成部材の容積が減少して、該流路形成部材の内面によって押圧された際、内径が実質的に減少しない程度の剛性を有する上記（６）または（７）に記載の塗布具。
【００１５】
（９） 前記容積増減部は、前記液体移送路の途中から分岐した分岐部を介して設けられている上記（１）または（２）に記載の塗布具。
【００１６】
（１０） 前記容積増減部は、前記変形手段の作動に応じて拡張・収縮するバルーンで構成されている上記（１）ないし（９）のいずれかに記載の塗布具。
【００１７】
（１１） ガスを供給するガス供給手段に接続され、その接続状態で前記ガス供給手段からのガスが通過するガス流路と、該ガスが噴出するガス噴出口とを有する上記（１）ないし（１０）のいずれかに記載の塗布具。
【００１８】
（１２） 前記変形手段は、ガスの供給に連動して作動する上記（１１）に記載の塗布具。
【００１９】
（１３） 前記変形手段は、前記ガス流路の途中に設けられ、ガスの流量に応じて拡張・収縮する拡張部で構成され、該拡張部が拡張した際に前記容積増減部を圧迫し、収縮した際に前記容積増減部に対する圧迫が解除される上記（１１）または（１２）に記載の塗布具。
【００２０】
（１４） 前記容積増減部および前記ガス流路は、それぞれ、弾性を有するチューブで構成されており、
前記容積増減部および前記ガス流路を外方から一括して保持するリングを有する上記（１３）に記載の塗布具。
【００２１】
（１５） 前記変形手段は、前記ガス流路に設けられ、ガスが一時的に貯留される加圧室で構成され、該加圧室内に前記容積増減部が位置しており、
前記加圧室内の圧力が上昇することにより前記容積増減部が圧迫され、前記圧力の上昇が下降に転ずることにより前記容積増減部に対する圧迫が解除される上記（１１）または（１２）に記載の塗布具。
【００２２】
（１６） 前記容積増減部に対して、該容積増減部が主に変形する方向を規制する規制手段を有する上記（１）ないし（１５）のいずれかに記載の塗布具。
【発明の効果】
【００２３】
本発明によれば、容積増減部の容積が、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で大となるため、その停止時状態で、液体の先端が各吐出口よりも後端側に引き込まれる。これにより、液体を吐出した際に、各吐出口付近で液体同士が混合して固化するのを防止することができる。これにより、液体吐出後の各吐出口付近に生じる目詰まりを防止することができる。また、この目詰まりが生じていない状態の塗布具を再度使用することができる。
【００２４】
また、塗布具がガス流路をさらに有し、そのガス流路の途中に、容積増減部を変形させる変形手段が設けられている場合には、変形手段をガスの供給で作動するものとすることができる。これにより、ガスを、２種の液体を塗布する際にこれら液体同士を混合するのに用いるのに限定されず、変形手段の作動にも用いることができる。すなわち、ガスを有効に利用することができる。
【００２５】
また、合流部を有する場合には、２種の液体同士を均一に、より確実に混合することができ、よって、そのような液体を患部に好適に塗布することができる。
【００２６】
また、流路確保手段が、少なくとも１つの側孔が形成された硬質な管体で構成されている場合には、流路形成部材の容積が減少して収縮したとしても、当該管体によって、流路形成部材のそれ以上の収縮が規制される。これにより、流路形成部材内の液体の流通が確実に確保され、よって、当該液体の塗布が確実に行なわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２７】
以下、本発明の塗布具を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
＜第１実施形態＞
図１および図２は、それぞれ、本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図、図３および図４は、それぞれ、図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（図３はガス流路が遮断された状態を示し、図４はガス流路が開放された状態を示す）、図５〜図９は、それぞれ、図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）、図３０は、図１に示す塗布具に装填される第１のシリンジ（第２のシリンジも同様）の部分縦断面図である。なお、説明の都合上、図１、図２および図５〜図９中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」といい、図３０中の下側を「先端」、上側を「後端」という。また、図１〜図４中、上側を「上」といい、下側を「下」という。
【００２８】
本発明の塗布具１は、液組成が異なる２種の液体（第１の液体Ｌ１、第２の液体Ｌ２）を混合しながら塗布するものである（図７参照）。図１および図２に示すように、この塗布具１は、第１の液体Ｌ１を収納する第１のシリンジ（供給手段）２と、第２の液体Ｌ２を収納する第２のシリンジ（供給手段）３とをそれぞれ装填して用いられる。
【００２９】
まず、塗布具１の構成について説明する前に、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の構成について説明する。第１のシリンジ２と第２のシリンジ３とは、ほぼ同様の構成であるため、代表的に第１のシリンジ２について説明する。
【００３０】
図３０に示すように、本実施形態における第１のシリンジ２は、外筒（シリンジ外筒）２１と、外筒２１内で摺動し得るガスケット２４と、ガスケット２４を外筒２１の長手方向（軸方向）に沿って移動操作する押し子（プランジャロッド）２６とを備えている。ガスケット２４は、押し子２６の先端に連結されている。
【００３１】
外筒２１は、有底筒状の部材で構成され、先端側底部の中央部には、外筒２１の胴部に対し縮径した縮径部（口部）２２が一体的に突出形成されている。
【００３２】
外筒２１の後端外周には、フランジ２３が一体的に形成されている。
また、外筒２１の外周面には、液量を示す目盛りが付されている。
【００３３】
外筒２１の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−（４−メチルペンテン−１）、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド（例えば、ナイロン６、ナイロン６・６、ナイロン６・１０、ナイロン１２）のような各種樹脂が挙げられるが、その中でも、成形が容易であり、かつ水蒸気透過性が低い点で、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂が好ましい。なお、外筒２１の構成材料は、内部の視認性を確保するために、実質的に透明であるのが好ましい。
【００３４】
このような外筒２１内には、弾性材料で構成されたガスケット２４が収納されて（挿入されて）いる。ガスケット２４の外周部には、複数（２つ）のリング状の突部が全周にわたって形成されており、これらの突部が外筒２１の内周面に密着しつつ摺動することで、液密性をより確実に保持するとともに、摺動性の向上が図れる。
【００３５】
また、ガスケット２４には、その後端面に開放する中空部２５が形成されている。この中空部２５は、後述する押し子２６のヘッド部２８が螺入（嵌入）される。中空部２５の内面には、雌ネジが形成されている。
【００３６】
ガスケット２４の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【００３７】
押し子２６は、横断面が十文字状をなす棒状の本体部２７を有している。
本体部２７の先端側には、ガスケット２４の中空部２５内に挿入され、ガスケット２４と連結されるヘッド部（連結部）２８が形成されている。ヘッド部２８の外周には、中空部２５の内面の雌ネジと螺合し得る雄ネジが形成されている。この雄ネジを雌ネジと螺合することにより、ガスケット２４と押し子２６とが連結される。なお、ガスケット２４と押し子２６は、螺合による連結に限らず、例えば凹凸嵌合等により連結された構成、接着、融着等により固着された構成、一体成形された構成であってもよい。
【００３８】
また、本体部２７の後端側には、円盤状のフランジ２９が形成されている。
また、押し子２６の構成材料としては、前述した外筒２１の構成材料として例示したものと同様のものを用いることができる。
【００３９】
第１のシリンジ２は、塗布具１に装填される以前に、外筒２１とガスケット２４とで囲まれた空間（貯液空間）２０に、第１の液体Ｌ１が充填される。
【００４０】
第２のシリンジ３も、第１のシリンジ２と同様に、外筒２１と、外筒２１内で摺動し得るガスケット２４と、ガスケット２４を移動操作する押し子２６とで構成され、空間２０に第２の液体Ｌ２が充填される。各部の構成は同様であるため、その説明は省略する。
【００４１】
第１のシリンジ２に充填される第１の液体Ｌ１と、第２のシリンジ３に充填される第２の液体Ｌ２とは、それらの組成（成分）が異なるものである。
【００４２】
本発明においては、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とは、塗布具１の用途、使用目的、症例等に応じて適宜選定される。例えば、生体組織接着材の投与に使用する場合、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のうちの一方は、トロンビンを含有する液体（溶液等）、他方はフィブリノーゲンを含有する液体（溶液等）とすることができる。
【００４３】
また、癒着防止材の投与に使用する場合、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のうちの一方は、スクシンイミジル基で修飾したカルボキシメチルデキストリンを含有する液体（溶液等）、他方は、リン酸水素二ナトリウムを含有する液体（溶液等）とすることができる。
【００４４】
このような組み合わせの第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、それらを混合すると、変質、すなわち、ゲル化（固化）する。ゲル化することにより、例えば、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合したもの（以下、「混合液」という）が、塗布された生体組織（目的部位）に確実に留まることができる。また、混合液が目的部位に確実に留まるため、当該目的部位において、生体組織接着材や癒着防止材としての機能を確実に発揮することができる。
【００４５】
なお、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の種類および組み合わせは、上述したものに限定されないことは、言うまでもない。
【００４６】
このような構成の第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の各押し子２６をそれぞれ押圧操作することより、後述するノズル４の第１の流路４４に第１の液体Ｌ１を、第２の流路４５に第２の液体Ｌ２を容易かつ確実に供給することができる。また、各押し子２６の押圧操作は、塗布具１の操作者（使用者）により手動で行なわれる。このため、操作者は、混合液の塗布を自身の任意のタイミングで行なうことができる。
【００４７】
第１の液体Ｌ１が充填された第１のシリンジ２と、第２の液体Ｌ２が充填された第２のシリンジ３とが装填される塗布具１は、塗布具本体７と、ノズル４と、操作部８、開閉手段（弁機構）９と、ボンベ（ガス供給手段）３００に接続されたチューブ（ガス流路）１０を有している（図１参照）。
【００４８】
塗布具１を構成する各部について説明する前に、ボンベ３００について説明する。
ボンベ３００は、その内部空間に高圧の（圧縮された）無菌ガスＧ（以下、単に「ガスＧ」と言う）が充填されており、当該ガスＧを塗布具１（ノズル４）に供給することができる。このボンベ３００には、塗布具１に対するガスＧの供給／供給停止を制御する開閉自在なバルブ（コック）３０１が設置されている。塗布具１を使用するときには、バルブ３０１を開状態にする。
【００４９】
図１および図２に示すように、塗布具本体７は、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を並べて（並列に）固定するものである。この塗布具本体７は、基部７１と、基部７１の先端に設けられた前板（第１の係合部）７２と、基部７１の後端に設けられた後板（第２の係合部）７３と、基部７１の後板７３付近に設けられた指掛け部７５１および７５２とを有している。
【００５０】
基部７１は、その上部に、横断面がほぼ半円弧状をなす凹部７１１および７１２が並列に設けられている。凹部７１１には、第１のシリンジ２の外筒２１が収納され、凹部７１２には、第２のシリンジ３の外筒２１が収納される。
【００５１】
基部７１の先端には、前板７２が設けられている。この前板７２には、凹部７１１および７１２のそれぞれに対応する位置に、溝７２１および７２２が形成されている。第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を装填するとき、溝７２１には、第１のシリンジ２の縮径部２２が挿入され、溝７２２には、第２のシリンジ３の縮径部２２が挿入される。
【００５２】
基部７１の後端には、後板７３が設けられている。この後板７３には、凹部７１１および７１２のそれぞれに対応する位置に、凹部７３１および７３２が形成されている。第１のシリンジ２および第２のシリンジ３を装填するとき、凹部７３１には、第１のシリンジ２のフランジ２３（基端部）が係合し（挿入され）、凹部７３２には、第２のシリンジ３のフランジ２３（基端部）が係合する。
【００５３】
このように、塗布具本体７では、前板７２に各縮径部２２が係合するとともに、後板７３に各フランジ２３が係合することにより、第１のシリンジ２と第２のシリンジ３とを確実に並列に固定することができる。
【００５４】
基部７１の後板７３付近には、指掛け部７５１および７５２が設けられている。指掛け部７５１および７５２には、それぞれ、塗布具１を使用するときに使用者の指を掛けることができる。指掛け部７５１は、上方に突出した板片で構成され、指掛け部７５２は、下方に突出した板片で構成されている。また、各指掛け部７５１および７５２は、それぞれ、先端方向に臨む面が円弧状（湾曲凹状）をなすものである。
【００５５】
塗布具本体７は、当該塗布具本体７を構成する各部が一体的に形成されたものであってもよいし、各部がそれぞれ別体で構成されこれらを接合したものであってもよい。
【００５６】
塗布具本体７の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば金型成形により塗布具本体７を容易に製造することができる。
【００５７】
塗布具本体７の後端側には、操作部８が塗布具本体７に対してその長手方向に移動可能に設置されている。この操作部８は、第１のシリンジ２の押し子２６と第２のシリンジ３の押し子２６とを先端方向（図１、図２および図４中の矢印Ｃ方向）へ押圧操作する部位である。操作部８は、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９同士を連結する連結部８１と、連結部８１の後端側に位置する押圧部８２と、連結部８１から先端方向に向かって延在するレール部８３とを有している。
【００５８】
連結部８１には、上方へ向かって開放する凹部８１１および８１２がそれぞれ設けられている。凹部８１１は、第１のシリンジ２の押し子２６のフランジ２９に対応した形状をなしており、当該フランジ２９が係合する（図２参照）。また、凹部８１２は、第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９に対応した形状をなしており、当該フランジ２９が係合する（図２参照）。
【００５９】
このような構成の連結部８１により、第１のシリンジ２および第２のシリンジ３の押し子２６のフランジ２９同士を確実に連結、固定することができ、よって、これらの押し子２６を一括して矢印Ｃ方向に移動させることができる。
【００６０】
また、連結部８１には、凹部８１１と凹部８１２との間に、筒状をなす筒状部８１３が設けられている。この筒状部８１３は、その軸線が図１中（図２も同様）上下方向と平行となるように設けられている。また、筒状部８１３には、開閉手段９のほとんどが収納されている。
【００６１】
連結部８１の筒状部８１３の外周部には、長尺状をなすレール部８３が先端方向に向かって突出形成されている。このレール部８３は、塗布具本体７の基部７１に設けられ、長尺状をなすガイド７１３に挿入される。操作部８の矢印Ｃ方向への押圧操作によりレール部８３がガイド７１３に案内されることとなり、よって、前記押圧操作を円滑に行うことができる。
【００６２】
連結部８１の筒状部８１３の後端側には、板状をなす押圧部８２が筒状部８１３に対して塗布具本体７の長手方向に移動可能に設置されている。
【００６３】
この押圧部８２は、塗布具１を使用する、すなわち、混合液を患部等に塗布するとき、使用者によって押圧される部位である。塗布具１を使用するとき、例えば指掛け部７５１に人差し指を掛け、指掛け部７５２に中指を掛け、押圧部８２に親指を掛けることができる。これにより、塗布具１を安定して確実に把持することができる。また、操作部８（押圧部８２）の押圧操作を円滑かつ確実に行うことができ、よって、塗布具１の操作性が向上する。
【００６４】
また、押圧部８２は、後述する開閉手段９の第２の接続部９２に連結されている。
操作部８の構成材料としては、特に限定されず、例えば、塗布具本体７についての説明で挙げたような材料を用いることができる。このような材料を用いた場合、例えば金型成形により操作部８を容易に製造することができる。
【００６５】
前述したように、操作部８の筒状部８１３には、開閉手段９が設置されている。開閉手段９は、ボンベ３００からノズル４に至るガスＧの流れを遮断／開放するものである。この開閉手段９を介して、すなわち、開閉手段９の作動により、第１のチューブ１０１と第２のチューブ１０２とが遮断（図３参照）／連通（図４参照）する。
【００６６】
図３および図４に示すように、開閉手段９は、第１のチューブ１０１に接続された第１の接続部９１と、第２のチューブ１０２に接続された第２の接続部９２と、第１の接続部９１内に収納され、開閉自在な弁部９３とを有している。
【００６７】
第１の接続部９１は、管状をなすものである。この第１の接続部９１の内腔部には、下流側に位置し、弁部９３が収納される収納部９１２が設けられている。また、第１の接続部９１の内腔部には、収納部９１２の上流側の内径より縮径した縮径部９１３が設けられており、当該縮径部９１３と収納部９１２との境界に内径が急峻に変化した段差部９１１が形成されている。
【００６８】
第２の接続部９２は、管状をなすものである。前述したように、第２の接続部９２は、操作部８の押圧部８２に連結されている。第２の接続部９２は、下端部９２１が弁部９３のシール部材９４に支持されており、当該シール部材９４を介して第１の接続部９１の下流側に設置されている。この第２の接続部９２は、第１の接続部９１に対して、軸線同士が一致する第１の姿勢（図３に示す状態）と、下端部９２１を支点として軸線が押圧部８２（操作部８）の矢印Ｃ方向（操作方向）に傾倒する第２の姿勢（図４に示す状態）とに変位可能に設置されている。
【００６９】
弁部９３は、弾性材料で構成されたシール部材９４と、シール部材９４より上流側に位置するフランジ部９５と、フランジ部９５をシール部材９４側に付勢する付勢部９６とを有している。
【００７０】
シール部材９４は、その形状がリンク状をなすものである。このシール部材９４は、その内周部９４１が第２の接続部９２の下端部９２１の外周部９２２に密着している。また、シール部材９４の外周部９４２は、第１の接続部９１の収納部９１２の内周部９１４に密着している。このようなシール部材９４により、当該シール部材９４を介して、第１の接続部９１と第２の接続部９２とが気密に連結される。
【００７１】
フランジ部９５は、その外径が第２の接続部９２の外径より拡径したものである。このフランジ部９５は、第２の接続部９２の下端面に、間隙９７を介して、対向配置されている。
【００７２】
付勢部９６は、本実施形態では圧縮コイルバネで構成されたものであり、それが圧縮された状態で、上端部９６１がフランジ部９５に当接し、下端部９６２が第１の接続部９１の段差部９１１に当接している。これにより、フランジ部９５を確実にシール部材９４側に付勢することができる。
【００７３】
このような構成の弁部９３では、フランジ部９５は、第２の接続部９２が第１の姿勢のとき、すなわち、第２の接続部９２に外力が付与されていないとき、付勢部９６に付勢されてシール部材９４に気密に密着する（図３参照）。これにより、弁部９３は閉状態となる。
【００７４】
また、操作部８の押圧部８２による矢印Ｃ方向へ押圧力が第２の接続部９２に作用すると、当該第２の接続部９２は、第１の姿勢から第２の姿勢へ変位する。このとき、フランジ部９５は、付勢部９６の付勢力に抗して変位することなり、これにより、フランジ部９５の周縁部９５１の一部（または全部）がシール部材９４から離間して、当該シール部材９４との間に間隙９８が生じる（図４参照）。これにより、ガスＧは間隙９８を介して第１の接続部９１から第２の接続部９２に流れ込む、すなわち、弁部９３は開状態となる。
【００７５】
以上のような構成の開閉手段９では、操作部８による押圧操作に連動して、弁部９３が確実に開／閉することができる。これにより、弁部９３が閉状態のとき、ボンベ３００からノズル４に至るガスＧの流れを確実に遮断することができ、弁部９３が開状態のとき、当該ガスＧの流れを確実に開放することができる。
【００７６】
なお、第１の接続部９１、第２の接続部９２、フランジ部９５および付勢部９６の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【００７７】
また、シール部材９４の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料を用いることができる。
【００７８】
塗布具本体７の前板７２には、ノズル４が設置されている。このノズル４は、チューブ１０を通過したガスＧ（気体）と、第１のシリンジ２の縮径部２２を通過した第１の液体Ｌ１と、第２のシリンジ３の縮径部２２を通過した第２の液体Ｌ２とを吐出するものである。図１に示すように、ノズル４は、ノズル本体４１と、ノズル本体４１の先端側に位置するノズルヘッド４２と、ノズル本体４１とノズルヘッド４２とを接続する接続部４３とを有している。
【００７９】
ノズル本体４１は、例えば金属材料や樹脂材料で構成され、外形形状がブロック状をなすものである。このノズル本体４１は、先端および基端に開口する中空部を有している。このようなノズル本体４１は、その基端開口部４１１が塗布具本体７の前板７２に係合する。これにより、ノズル４が塗布具本体７に固定される。
【００８０】
図５〜図９に示すように、ノズルヘッド４２は、外形形状が円柱状をなすものである。このノズルヘッド４２には、その内部に中空部４２５が形成されている。中空部４２５は、先端壁部４２４に開口する、隣接した一対の開口部を有している。各開口部は、それぞれ、ガスＧを吐出する第３の吐出口（気体吐出口（ガス噴出口））４２３として機能する。
【００８１】
ノズルヘッド４２の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ノズル本体４１の構成材料と同一のものを用いることができる。
【００８２】
図１に示すように、接続部４３は、長尺な管状体で構成され、ノズル本体４１の先端開口部４１２とノズルヘッド４２の基端とを接続している。この接続部４３は、硬質材料で構成されているものでも、軟質材料、弾性材料等で構成され、可撓性を有するものでもよい。接続部４３の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−（４−メチルペンテン−１）、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド（例えば、ナイロン６、ナイロン６・６、ナイロン６・１０、ナイロン１２）のような各種の軟質または硬質樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、ステンレス鋼、アルミニウム、銅または銅系合金等の各種金属材料、各種ガラス、アルミナ、シリカ等の各種セラミックスが挙げられる。
【００８３】
また、接続部４３は、それを挿通する、後述の３本のチューブを保護する保護部材（被覆部材）としても機能する。
【００８４】
ノズル本体４１および接続部４３には、３本のチューブが挿通している。これら３本のチューブには、第１の液体Ｌ１をノズルヘッド４２側へ送る第１の流路（液体移送路）４４を画成するものと、第２の液体Ｌ２をノズルヘッド４２側へ送る第２の流路（液体移送路）４５を画成するものと、ボンベ３００からのガスＧをノズルヘッド４２側へ送る第３の流路（ガス流路）４６を画成するものとがある。また、各チューブは、それぞれ、軟質の樹脂材料（弾性材料）で構成されている。この軟質の樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリエステル、シリコン等が挙げられ、これらの中でも、特にポリブタジエンを用いるのが好ましい。各チューブの構成材料にポリブタジエンを用いた場合、適度な可撓性、耐薬品性、および薬品の吸着防止性に優れる。
【００８５】
このようなチューブで画成された第１の流路４４、第２の流路４５および第３の流路４６の基端部は、それぞれ、第１のシリンジ２の縮径部２２、第２のシリンジ３の縮径部２２およびチューブ１０の第２のチューブ１０２と液密（気密）に接続されている。
【００８６】
また、第１の流路４４は、ノズルヘッド４２を挿通しており、その先端が先端壁部４２４に開口している。この先端壁部４２４に開口した開口部が第１の液体Ｌ１を吐出する第１の吐出口４２１として機能する。第１の吐出口４２１は、２つの第３の吐出口４２３のうちの一方（図５中下側）の第３の吐出口４２３と同心的に配置されている。第１の液体Ｌ１は、第１のシリンジ２の縮径部２２、第１の流路４４を順に経て、第１の吐出口４２１から吐出する（噴出する）。
【００８７】
第２の流路４５も第１の流路４４と同様に、ノズルヘッド４２を挿通しており、その先端が先端壁部４２４に開口している。この先端壁部４２４に開口した開口部が第２の液体Ｌ２を吐出する第２の吐出口４２２として機能する。第２の吐出口４２２は、２つの第３の吐出口４２３のうちの他方（図５中上側）の第３の吐出口４２３と同心的に配置されている。第２の液体Ｌ２は、第２のシリンジ３の縮径部２２、第２の流路４５を順に経て、第２の吐出口４２２から吐出する（噴出する）。
【００８８】
図５（図６〜図９も同様）に示すように、第１の吐出口４２１と第２の吐出口４２２との大きさは、互いに同等となっている。また、これらの第１の吐出口４２１と第２の吐出口４２２の外周部にそれぞれ配置された２つの第３の吐出口４２３同士も、大きさが互いに同等となっている。
【００８９】
第３の流路４６は、その先端がノズルヘッド４２の基端部に挿入され、中空部４２５に開口している。ガスＧは、弁部９３（開閉手段９）が開状態のとき、ボンベ３００からチューブ１０、第３の流路４６、中空部４２５を順に経て、各第３の吐出口４２３からそれぞれ噴出する。
【００９０】
なお、チューブ１０は、開閉手段９を介して上流側（ボンベ３００側）に位置する第１のチューブ１０１と、下流側（ノズル４側）に位置する第２のチューブ１０２とで構成されている。チューブ１０（第１のチューブ１０１および第２のチューブ１０２）の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、第１の流路４４、第２の流路４５および第３の流路４６を画成するチューブと同様の材料を用いることができる。
【００９１】
このような構成のノズル４では、操作部８を操作した際、各第３の吐出口４２３からガスＧが高速に吐出する。この高速に吐出したガスＧに、第１の吐出口４２１から吐出した第１の液体Ｌ１と、第２の吐出口４２２から吐出した第２の液体Ｌ２とが巻き込まれる（混合する）。このとき、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、それぞれ、霧状となって噴出する。これにより、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが確実に混合され、患部に塗布される。
【００９２】
さて、図５〜図９に示すように、第１の流路４４の途中には、第１のシリンジ２の近傍に、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４４１が設けられている。この容積増減部４４１は、第１の流路４４の途中で、当該第１の流路４４の一部を構成する「流路形成部（流路形成部材）」と言うことができる。例えば容積増減部４４１が第１の流路４４と一体的に形成されている場合には、ノズル４の製造が容易となる。また、一体形成の場合、自然状態で、容積増減部４４１（流路形成部）の内径を、その前後の第１の流路４４の内径と同じとすることができる。これにより、ノズル４の製造がより容易となる。なお、「自然状態」とは、外力が付与されていない状態、すなわち、第３の流路４６の内部にガスＧが供給されておらず、後述する拡張部４６１によって押圧されていない状態を言う。
【００９３】
また、第２の流路４５の途中にも、第１の流路４４とほぼ同様に、第２のシリンジ３の近傍に、内部の容積が増減するように変形する容積増減部４５１が設けられている。この容積増減部４５１は、第２の流路４５の途中で、当該第２の流路４５の一部を構成する「流路形成部（流路形成部材）」と言うことができる。例えば容積増減部４５１が第１の流路４５と一体的に形成されている場合には、ノズル４の製造が容易となる。また、一体形成の場合、自然状態で、容積増減部４５１（流路形成部）の内径を、その前後の第２の流路４５の内径と同じとすることができる。これにより、ノズル４の製造がより容易となる。
【００９４】
また、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、第３の流路４６を介して、対称的な位置に配置さている。
【００９５】
また、第３の流路４６の途中には、ガスＧの流量（供給量）に応じて拡張・収縮する拡張部（バルーン）４６１が設けられている。この拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１とそれぞれ対応する位置に配置されている。すなわち、拡張部４６１は、容積増減部４４１と容積増減部４５１との間に配置されている。このような位置に配置された拡張部４６１は、それを構成するチューブの周辺（前後）の部位よりも厚さ（管壁）が薄く設定されている。これにより、拡張部４６１内にガスＧが供給される（流入する）ことにより確実に拡張し、ガスＧの供給が停止することにより確実に収縮する。拡張部４６１は、その拡張・収縮により、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ、容積が増減するように押圧して変形させる変形手段として機能するものである。
【００９６】
図５、図９に示すように、拡張部４６１は、自然状態では、外径がその前後の流路４６の外径よりも若干拡径している、すなわち、最も収縮している。また、この状態では、拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ押圧しない程度に当接していてもよいし、容積増減部４４１および４５１からそれぞれ離間していてもよい。図５および図９に示す構成では、拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ押圧しない程度に当接している。このとき、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ容積が最大となっている。
【００９７】
また、図６〜図８に示すように、第３の流路４６にガスが供給された際、拡張部４６１は、その内部にもガスが供給されて拡張する（膨張する）。この拡張した拡張部４６１は、容積増減部４４１および４５１の弾性力に抗して、これらの容積増減部４４１および４５１を圧迫する（押圧する）。これにより、容積増減部４４１および４５１のそれぞれの容積が減少する。なお、拡張した拡張部４６１の容積増減部４４１に対する押圧の程度は、容積増減部４４１の内周面同士が密着しない程度とされる（容積増減部４５１についても同様）。
【００９８】
また、拡張した拡張部４６１が再度収縮した際には、容積増減部４４１および４５１のそれぞれに対する圧迫が解除される。これにより、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ、自身の弾性により復元する（図９参照）。
【００９９】
また、ノズル４は、容積増減部４４１および４５１、拡張部４６１を外方から一括して保持するリング（バンド）４７を有している。このリング４７は、例えばプラスチック材料で構成された帯体を巻回することにより形成されている。リング４７により、容積増減部４４１と容積増減部４５１と拡張部４６１との位置関係が、拡張部４６１の拡張・収縮に関わらず、規制される。これにより、拡張部４６１が拡張した際、当該拡張した拡張部によって、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ確実に押圧される。
【０１００】
このように、塗布具１では、拡張部４６１の拡張・収縮により、容積増減部４４１および４５１の各容積が確実に変化する。
【０１０１】
次に、使用可能状態となった、すなわち、第１の液体Ｌ１が充填された第１のシリンジ２と、第２の液体Ｌ２が充填された第２のシリンジ３とが装填され、かつボンベ３００に接続された状態の塗布具１の作動状態について説明する。
【０１０２】
第１のシリンジ２および第２のシリンジ３には、それぞれ、患部に塗布するのに必要な（十分な）程度の液量の第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が充填されている。また、ボンベ３００は、バルブ３０１が開状態となっており、塗布具１に対してガスＧを供給可能となっている。
【０１０３】
また、塗布具１では、シール部材９４にフランジ部９５を押し付ける付勢部９６の力（付勢力）に抗して、シール部材９４とフランジ部９５との間に間隙９８を生じさせる力、すなわち、第２の接続部９２を第１の姿勢から第２の姿勢へ傾倒させる矢印Ｃ方向への押圧力は、第１のシリンジ２の押し子２６と第２のシリンジ３の押し子２６とを先端方向に移動させる力より大きくなるように設定されている。このような設定を行う方法としては、例えば、付勢部９６のバネ定数、各液体の粘度、各外筒２１の内径等の諸条件を適宜設定することより可能となる。
【０１０４】
このような塗布具１に対して、まず、例えば塗布具本体７の指掛け部７５１に人差し指を掛け、指掛け部７５２に中指を掛け、操作部８の押圧部８２に親指を掛ける。このとき、第１の流路４４には第１の液体Ｌ１が供給されておらず、第２の流路４５にも第２の液体Ｌ２が供給されておらず、第３の流路４６にもガスＧが供給されていない（図５参照）。このため、ノズル４からは、ガスＧ、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、吐出されていない。また、拡張部４６１が拡張していないため、それによる容積増減部４４１および４５１への圧迫もなされていない。
【０１０５】
次に、この状態で、親指で押圧部８２を押圧操作すると、まず、第２の接続部９２が傾倒して、シール部材９４とフランジ部９５との間に間隙９８が生じ、この間隙９８を介してガスＧが流通する（図４参照）。これにより、ガスＧが第２のチューブ１０２を介して第３の流路４６に供給され、よって、ノズル４の各第３の吐出口４２３からガスＧが噴出される（図６参照）。また、このとき、拡張部４６１が拡張するため、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ圧迫される。拡張部４６１の拡張は、当該拡張部４６１へのガスＧの供給が停止するまで維持される。
【０１０６】
また、親指による押圧部８２に対する押圧操作は、操作部８全体、すなわち、各押し子２６を先端方向に移動するまでには至っていない。このため、第１の流路４４および第２の流路４５には、未だ第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が供給されていない。
【０１０７】
さらに、押圧部８２を押圧すると、第２の接続部９２の傾倒が限界となり、親指からの押圧力が押圧部８２を介して連結部８１に伝達される。これにより、連結部８１（操作部８全体）が移動し始め、よって、第１のシリンジ２から第１の液体Ｌ１が押し出されるとともに、第２のシリンジ３からも第２の液体Ｌ２が押し出される。この押し出された第１の液体Ｌ１は、拡張部４６１で圧迫されたままの容積増減部４４１を通過し、さらに先端方向へ、すなわち、第１の吐出口４２１に至り、そこから噴出する（図７参照）。また、第２の液体Ｌ２は、第１の液体Ｌ１とほぼ同様に、拡張部４６１で圧迫されたままの容積増減部４５１を通過し、第２の吐出口４２２に至り、そこから噴出する（図７参照）。
【０１０８】
噴出された第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２は、前述したようにガスＧの作用により、それぞれ霧状になり、互いに混合して患部に塗布される。
【０１０９】
患部に対する所定量の塗布が完了した後、親指の押圧部８２（操作部８）に対する押圧力を緩めていくと、まず、操作部８全体の移動が停止する。これにより、各押し子２６の移動が停止し、よって、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の噴出がそれぞれ停止する（図８参照）。このとき、押圧部８２の押圧による第２の接続部９２の第２の姿勢が維持されているため、ガスＧは、まだ噴出されている（図８参照）。
【０１１０】
さらに、親指の押圧部８２に対する押圧力を緩めていくと、遂には、押圧部８２を押圧していた親指が当該押圧部８２から離間する。これにより、第２の接続部９２に対する押圧力が解除されて、第２の接続部９２が第１の姿勢に戻る。これにより、シール部材９４とフランジ部９５との間の間隙９８がなくなる、すなわち、シール部材９４とフランジ部９５の周縁部９５１の全周とが互いに密着する（図３参照）。このとき、第３の流路４６へのガスＧの供給が停止し、よって、ガスＧの各第３の吐出口４２３からの噴出も停止する（図９参照）。
【０１１１】
また、第３の流路４６へのガスＧの供給が停止した際には、拡張部４６１が収縮する（図９参照）。これにより、拡張部４６１の容積増減部４４１および４５１に対する圧迫が解除され、容積増減部４４１および４５１の各容積が、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が吐出している状態のそれよりも大となる（増加する）。この容積が大となることにより、第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも後端側に引き込まれ、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２も第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる（図９参照）。
【０１１２】
このように第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１と第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２とが引き込まれることにより、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近で、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合して固化するのを防止することができる。これにより、塗布具１の使用後、すなわち、塗布後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。そして、この目詰まりが生じていない状態の塗布具１を再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１１３】
また、塗布具１では、前述したように、拡張部４６１が、ガスＧの供給に連動して作動する、すなわち、拡張・収縮する。これにより、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させるための部位を別部材（別機構）で設けるのを省略することができ、よって、塗布具１を簡単な構成のものとすることができる。
【０１１４】
また、塗布具１では、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２をノズル４から吐出／吐出停止するときの、ノズル４に対するガスＧの供給／供給停止のタイミングを最適に設定することができる。換言すれば、塗布具１は、ノズル４からは、ガスＧが、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２より容易かつ確実に先立って吐出されるよう構成されている。
【０１１５】
これにより、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２のみが患部に噴出され塗布されるのを防止することができる。また、先立って噴出されたガスＧにより、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２がそれぞれ確実に霧状となって噴出され、よって、これらの液体同士が確実に混合する。
【０１１６】
また、塗布具１では、ガスＧは、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２より遅れて噴出が停止するよう構成されている。これにより、各液体の噴出が停止することで当該各液体が各吐出口に残留した（付着した）場合、これらの残留した液体をガスＧが吹き飛ばすことができる。よって、各吐出口付近において第１の液体と第２の液体とが反応することにより生じる不都合（例えば、凝固による各吐出口の目詰まり）をより確実に防止することができる。
【０１１７】
＜第２実施形態＞
図１０および図１１は、それぞれ、本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１０は液体が吐出している状態を示し、図１１は液体の吐出が停止した状態を示す））、図１２は、図１０中のＢ−Ｂ線断面図、図１３は、図１１中のＣ−Ｃ線断面図である。
【０１１８】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第２実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１１９】
本実施形態は、変形手段の構成が異なること以外は前記第１実施形態と同様である。
図１０および図１１に示す塗布具１Ａでは、第３の流路４６の途中に、加圧室（貯留室）４６２が設けられている。第３の流路４６を画成するチューブは、加圧室４６２内で切断されており、各切断部（開口部）４６３、４６４が加圧室４６２内に開口している。これにより、一方（図１０中右側）の切断部４６３からガスＧが流入し、そのガスＧは、加圧室４６２内で一時的に貯留され、その後、他方（図１０中左側）の切断部４６４から流出する。ガスＧが加圧室４６２内で貯留されることにより、当該加圧室４６２内の圧力が上昇する。
【０１２０】
また、容積増減部４４１および４５１は、それぞれ、加圧室４６２内に位置して（挿通して）いる。加圧室４６２は、筒状をなすものであり、その両端がゴムパッキン４６５を介して、容積増減部４４１および４５１と液密に接続されている。
【０１２１】
このような構成の塗布具１Ａでは、前述したように加圧室４６２内の圧力が上昇することにより、容積増減部４４１および４５１がそれぞれ圧迫される（図１０、図１２参照）。また、加圧室４６２へのガスＧの供給が停止して（減少して）当該加圧室４６２内の圧力の上昇が下降に転ずることにより、容積増減部４４１および４５１に対する圧迫がそれぞれ解除される（図１１、図１３参照）。
【０１２２】
従って、加圧室４６２は、容積増減部４４１および４５１をそれぞれ変形させる変形手段として機能するものであると言うことができる。
【０１２３】
なお、図１２に示すように、圧力が上昇した加圧室４６２内の圧力の程度は、容積増減部４４１の内周面同士が密着しない程度とされる（容積増減部４５１についても同様）。
【０１２４】
図１０および図１１（図１２および図１３も同様）に示すように、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２の吐出が停止している状態（図１１や図１３に示す状態）の容積増減部４４１および４５１の各容積は、第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２が吐出している状態（図１０や図１２に示す状態）のそれよりも大となる。これにより、第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも後端側に引き込まれ、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２も第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる。よって、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近で、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合して固化するのを防止することができる。その結果、塗布具１Ａの使用後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。
【０１２５】
なお、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、図１０、図１１に示す構成ではノズル４の長手方向の同じ位置に配置さているが、これに限定されず、例えば、ノズル４の長手方向の異なる位置（ズレた位置）に配置されていてもよい。
【０１２６】
＜第３実施形態＞
図１４および図１５は、それぞれ、本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１４は液体が吐出している状態を示し、図１５は液体の吐出が停止した状態を示す））である。
【０１２７】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第３実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１２８】
本実施形態は、塗布具が流路確保手段をさらに有すること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１２９】
図１４および図１５に示す塗布具１Ｂは、流路確保手段としての２本のスペーサ５１を有している。各スペーサ５１は、例えば金属材料で構成されたワイヤ（長尺体）であり、容積増減部４４１および４５１内にそれぞれ挿通している。なお、各スペーサ５１は、それぞれ、容積増減部４４１および４５１内に図示しない固定部により固定されている。また、各スペーサ５１の横断面形状は、図示の構成では円形であるが、これに限定されず、例えば、楕円形、長円形、多角形であってもよい。
【０１３０】
２本のスペーサ５１は、同様の機能を有しているため、容積増減部４４１を挿通するスペーサ５１について代表的に説明する。
【０１３１】
スペーサ５１は、加圧室４６２内の圧力の上昇により容積増減部４４１が圧迫されてその容積が減少した際に、容積増減部４４１の内周面同士の接触を阻止することができる（図１４参照）。これにより、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができ、よって、第１の液体Ｌ１が第１の吐出口４２１から確実に噴出する。
【０１３２】
例えば容積増減部４４１の内周面同士が接触する程度に加圧室４６２内の圧力が上昇した場合でも、スペーサ５１によって、内周面同士の間に間隙を確実に形成することができる。このように、容積増減部４４が過剰に圧迫された（容積が過剰に減少した）場合でも、当該容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができる。
【０１３３】
また、吐出状態でも容積増減部４４１の内周面同士の接触が阻止されているため、吐出停止後に、容積増減部４４１の内周面同士が迅速に離間する、すなわち、容積増減部４４１が迅速に復元することができる(図１５参照)。
【０１３４】
＜第４実施形態＞
図１６および図１７は、それぞれ、本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（塗布状態の経時的変化を示す図（図１６は液体が吐出している状態を示し、図１７は液体の吐出が停止した状態を示す））である。
【０１３５】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第４実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１３６】
本実施形態は、流路確保手段の構成が異なること以外は前記第３実施形態と同様である。
【０１３７】
図１６および図１７に示す塗布具１Ｃでは、容積増減部４４１および４５１の内周面にそれぞれ２本の溝４８１、４８２が形成されている。
【０１３８】
容積増減部４４１および４５１では、溝４８１および４８２が果たす機能は同等であるため、以下、容積増減部４４１側の溝４８１および４８２について代表的に説明する。
【０１３９】
溝４８１および４８２は、それぞれ、容積増減部４４１の長手方向に沿って形成されている。また、図１７に示すように、溝４８１と溝４８２とは、第１の液体Ｌ１の吐出が停止している状態では、互いに対向している。
【０１４０】
図１６に示すように、容積増減部４４１の容積が減少している状態では、溝４８１および４８２は、それぞれ、内周面のこれらを除く部位に接触しない。これにより、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保することができ、よって、第１の液体Ｌ１が第１の吐出口４２１から確実に噴出する。
【０１４１】
このように、溝４８１および４８２は、それぞれ、容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保する流路確保手段としての機能を有している。
【０１４２】
また、容積増減部４４１の管壁には、その厚さが最小となる易変形部（規制手段）４９が周方向に沿って等間隔に２箇所形成されている。２つの易変形部４９は、それぞれ、容積増減部４４１の周方向の溝４８１と溝４８２との間に配置されている。
【０１４３】
このような各易変形部４９は、容積増減部４４が圧迫された際、その容積増減部４４１の各易変形部４９を除く部位よりも優先的に変形する。これにより、容積増減部４４が圧迫された際、当該容積増減部４４が主に変形する方向を規制することができ、よって、溝４８１と溝４８２とが接近することとなる。これにより、容積増減部４４１が圧迫された際に、当該容積増減部４４を通過する第１の液体Ｌ１の圧力損失を防止または抑制することができる。
【０１４４】
溝の形成数は、本実施形態では２本であるが、これに限定されず、例えば、１本または３本以上であってもよい。
【０１４５】
＜第５実施形態＞
図１８は、本発明の塗布具（第５実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図である。
【０１４６】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第５実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１４７】
本実施形態は、変形手段の設置位置が異なること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１４８】
図１８に示す塗布具１Ｄでは、加圧室４６２内を第２の流路４５のみが挿通している。この第２の流路４５の加圧室４６２内を挿通している部位が容積増減部４５１となっている。容積増減部４５１は、加圧室４６２の圧力の変化により、容積が増減するように変形することができる。これにより、前記第２実施形態と同様に、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２が第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれる。
【０１４９】
塗布具１Ｄでは、たとえ吐出停止状態で第１の液体Ｌ１の先端Ｐ１が第１の吐出口４２１よりも外方に突出していても、第２の液体Ｌ２の先端Ｐ２が第２の吐出口４２２よりも後端側に引き込まれているため、第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合するのが防止される。これにより、塗布具１Ｄの使用後の、第１の吐出口４２１や第２の吐出口４２２付近に生じる目詰まりを確実に防止することができる。
【０１５０】
＜第６実施形態＞
図１９〜図２１は、それぞれ、本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図１９〜図２１中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１５１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第６実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１５２】
本実施形態は、容積増減部の形状が異なることと、塗布具が合流部をさらに有すること以外は前記第２実施形態と同様である。
【０１５３】
図１９〜図２１に示す塗布具１Ｅでは、前述したようなノズル本体４１とノズルヘッド４２とを接続する接続部４３が省略され、第３の流路４６が前記接続部４３として機能しており、当該第３の流路４６内に第１の流路４４および第２の流路４５が挿通している。
【０１５４】
また、塗布具１Ｅ（ノズル４）は、第１の流路４４を流下した（通過した）第１の液体Ｌ１と、第２の流路４５を流下した第２の液体Ｌ２とが合流する合流部５２を有している。
【０１５５】
合流部５２は、第１の流路４４および第２の液体Ｌ２にそれぞれ連通するチューブで構成されている。このチューブの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、第１の流路４４や第２の流路４５を構成するチューブと同様の材料を用いることができる。
【０１５６】
また、合流部５２は、その途中に、内径が先端方向に向かって漸減したテーパ部５２１を有している。このテーパ部５２１を介して、合流部５２は、先端側の内径が小さい小径部５２２と、基端側の内径が大きい大径部５２３とに分けることができる。
【０１５７】
小径部５２２の先端開口は、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２とが混合したもの）が吐出する混合液吐出口５２４として機能する（図２０参照）。また、小径部５２２の先端部は、ノズルヘッド４２の先端壁部４２４に１つ設けられた開口部（第３の吐出口４２３）の内側に、当該開口部と同心的に配置されている。これにより、操作部８を操作して第３の吐出口４２３からガスＧが高速に吐出すると、この高速に吐出したガスＧに、混合液吐出口５２４から吐出した混合液が巻き込まれる（混合する）。このとき、混合液が霧状となって噴出する。
【０１５８】
このような構成の塗布具１Ｅにより、第１の液体Ｌ１と第２の液体とが合流部５２で合流されて均一かつ確実に混合して、混合液となる。また、この混合液は、前述したように霧化して噴出されることとなる。
【０１５９】
また、第１の流路４４の途中には容積増減部４４１が設けられており、第２の流路４５の途中には容積増減部４５１が設けられている。容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、同様の機能を有しているため、容積増減部４４１について代表的に説明する。
【０１６０】
容積増減部４４１は、自然状態で内径がその前後の第１の流路４４の内径より大きいものである（図１９、図２１参照）。この容積増減部４４１は、第３の流路４６内のガスＧの圧力の変動によって、拡張・収縮するバルーンで構成されたものである。塗布具１Ｅでは、ガスＧが第３の流路４６内で貯留されることにより、当該第３の流路４６内の圧力が上昇する。従って、塗布具１Ｅでは、第３の流路４６がそのほぼ全体に渡って加圧室となっていると言うこともできる。
【０１６１】
図１９〜図２１に示すように、混合液（第１の液体Ｌ１および第２の液体Ｌ２）の吐出が停止している状態（図１９に示す状態）の容積増減部４４１および４５１の各容積は、混合液が吐出している状態（図２０に示す状態）のそれよりも大となる。これにより、混合液は、合流部５２よりも後端側、すなわち、容積増減部４４１および４５１内に引き込まれる。容積増減部４４１内に引き込まれた混合液は、第１の流路４４（容積増減部４４１）内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈され、容積増減部４５１内に引き込まれた混合液は、第２の流路４５（容積増減部４５１）内の第２の液体Ｌ２によって、固化しない程度に十分に希釈される。これにより、塗布具１Ｅ内に残留した混合液が固化するのを確実に防止することができ、よって、塗布具１Ｅを再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１６２】
なお、塗布具１Ｅでは、混合液を容積増減部４４１（容積増減部４５１も同様）内に引き込むには、当該容積増減部４４１の収縮から拡張に変形する際に増加する変化量（容積）を適宜設定することにより、それを確実に行なうことができる。
【０１６３】
また、容積増減部４４１と容積増減部４５１とは、ノズル４の長手方向の異なる位置に配置されている。これにより、拡張した容積増減部４４１と拡張した容積増減部４５１との干渉を防止することができる。なお、図１９（図２０、図２１も同様）に示す構成では、容積増減部４４１が容積増減部４５１よりも先端側に位置している。
【０１６４】
また、容積増減部４４１（容積増減部４５１も同様）を構成するバルーンの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムのような各種ゴム材料や、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、オレフィン系、スチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの混合物等の弾性材料が挙げられる。
【０１６５】
＜第７実施形態＞
図２２は、本発明の塗布具（第７実施形態）の容積増減部付近の概略部分縦断面図である。なお、説明の都合上、図２２中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１６６】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第７実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１６７】
本実施形態は、容積増減部の設置状態が異なること以外は前記第６実施形態と同様である。
【０１６８】
図２２に示す塗布具１Ｆでは、容積増減部４４１は、第１の流路４４の途中から分岐した分岐部４４２を介して設けられており、容積増減部４５１は、第２の流路４５の途中から分岐した分岐部４５２を介して設けられている。各容積増減部４４１、４５１は、それぞれ、第３の流路４６内のガスＧの圧力の変動によって、拡張したり、収縮したり（図２２中二点鎖線で示す部分参照）するバルーンで構成されたものである。
【０１６９】
混合液の吐出が停止している状態の容積増減部４４１および４５１（図２２中実線で示す部分参照）の各容積は、混合液が吐出している状態のそれ（図２２中二点鎖線で示す部分参照）よりも大となる。これにより、前記第６実施形態と同様に、混合液には、第１の流路４４内に引き込まれるものと、第２の流路４５に引き込まれるものに分けられ、混合液は、各流路内で十分希釈される。これにより、塗布具１Ｆ内に残留した混合液が固化するのを確実に防止することができ、よって、塗布具１Ｆを再度、患部への塗布に用いることができる。
【０１７０】
＜第８実施形態＞
図２３〜図２５は、それぞれ、本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図２３〜図２５中の左側を「先端」、右側を「後端（基端）」という。
【０１７１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第８実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１７２】
本実施形態は、塗布具が流路確保手段をさらに有すること以外は前記第６実施形態と同様である。
【０１７３】
図２３〜図２５に示すように、塗布具１Ｇでは、容積増減部４４１には、硬質管（硬質な管体）４４３が挿通されており、容積増減部４５１には、硬質管４５３が挿通さている。
【０１７４】
硬質管４４３は、その先端部が第１の流路４４の硬質管４４３よりも下流側（図中左側）の部分に接続されており、後端部が第１の流路４４の硬質管４４３よりも上流側（図中右側）の部分に接続されている。これにより、硬質管４４３は、第１の流路４４と連通する。また、硬質管４４３には、その長手方向の中央部に、管壁に円形状に開口した１つの側孔４４４が形成されている。この側孔４４４を介して、硬質管４４３の内部と容積増減部４４１の内部とが連通する。
【０１７５】
硬質管４５３は、その先端部が第２の流路４５の硬質管４５３よりも下流側（図中左側）の部分に接続されており、後端部が第２の流路４５の硬質管４５３よりも上流側（図中右側）の部分に接続されている。これにより、硬質管４５３は、第２の流路４５と連通する。また、硬質管４５３には、その長手方向の中央部に、管壁に円形状に開口した１つの側孔４５４が形成されている。この側孔４５４を介して、硬質管４４３の内部と容積増減部４５１の内部とが連通する。
【０１７６】
硬質管４４３と硬質管４５３とは、それらの機能がほぼ同一であるため、以下、硬質管４４３を代表的に説明する。
【０１７７】
図２３に示す状態から操作部８を操作して、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２との混合液）を吐出した際には、前述したように容積増減部４４１が圧縮されて（容積増減部４４１の容積が減少して）収縮する。このとき、容積増減部４４１の内周面によって硬質管４４３の外周面が押圧されるが、容積増減部４４１のそれ以上の収縮は、硬質管４４３で規制される（阻止される）（図２４参照）。これにより、容積増減部４４１（硬質管４４３）内の第１の液体Ｌ１の流通が確実に確保される。よって、第１の液体Ｌ１が混合液吐出口５２４（合流部５２）に向かって円滑に流れ、混合液の塗布が確実に行なわれる。このように、硬質管４４３は、容積増減部４４１の容積が減少したときでも容積増減部４４１内の第１の液体Ｌ１の流通を確保する流路確保手段として機能するものである。
【０１７８】
また、前述したように、混合液の塗布後には、混合液は、合流部５２よりも後端側、すなわち、容積増減部４４１（硬質管４４３）内に引き込まれる（図２５参照）。容積増減部４４１内に引き込まれた混合液は、第１の流路４４（容積増減部４４１）内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈される。また、混合液は、容積増減部４４１（硬質管４４３）内に引き込まれて、収納されるため、逆流して、混合液吐出口５２４から漏出するのが防止される。
【０１７９】
このような硬質管４４３（硬質管４５３も同様）は、容積増減部４４１が圧縮されてその内周面によって硬質管４４３の外周面が押圧されたとしても、当該硬質管４４３の内径が実質的に減少しない程度の剛性となっている。これにより、流路確保手段としての機能をより確実に発揮することができる。ここで、「内径が実質的に減少しない程度」とは、内径の減少率が１０％以下のことを言う。
【０１８０】
また、このような剛性を有する硬質管４４３の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムやアルミニウム合金等のような金属材料、各種硬質プラスチック等が挙げられる。
【０１８１】
図２３〜図２５に示すように、硬質管４４３の側孔４４４の縁部には、当該縁部（硬質管４４３の外周面）から突出したリング状のリップ部（リブ）４４６が形成されている。また、これと同様に、硬質管４５３の側孔４５４の縁部にも、当該縁部（硬質管４５３の外周面）から突出したリング状のリップ部（リブ）４５６が形成されている。
【０１８２】
リップ部４４６（リップ部４５６も同様）により、容積増減部４４１が収縮した際、当該容積増減部４４１の内周面が硬質管４４３の外周面の側孔４４４の近傍に密着するのを防止することができる（図２４参照）。これにより、容積増減部４４１が収縮した状態から拡張した状態へ変形する（変化する）際、その変形が円滑に行なわれる。このように、リップ部４４６（リップ部４５６も同様）は、容積増減部４４１が収縮した際に当該容積増減部４４１の内周面が硬質管４４３の外周面に密着するのを防止する密着防止手段として機能する。
【０１８３】
＜第９実施形態＞
図２６は、本発明の塗布具（第９実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【０１８４】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第９実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１８５】
本実施形態は、硬質管の構成が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
図２６に示す塗布具１Ｈでは、硬質管４４３は、網状の管体、すなわち、多数の側孔４４４を有する管体で構成されている（硬質管４５３についても同様の構成となっている）。これにより、硬質管４４３の内部と容積増減部４４１の内部とを行き来する（出入りする）第１の液体Ｌ１の流通性が優れる（硬質管４５３についても同様）。これにより、容積増減部４４１内に第１の液体Ｌ１が残留する、すなわち、容積増減部４４１内に残液が生じるのを防止することができる。
【０１８６】
＜第１０実施形態＞
図２７は、本発明の塗布具（第１０実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【０１８７】
以下、この図を参照して本発明の塗布具の第１０実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１８８】
本実施形態は、硬質管の構成が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
図２７に示す塗布具１ｉの硬質管４４３では、側孔４４４は、スリットであり、このスリットが螺旋状をなしている（硬質管４５３の側孔４５４についても同様の構成となっている）。これにより、例えば、ノズル４の接続部４３を曲げて使用する場合、硬質管４４３が容易に曲がり、よって、塗布具１ｉの操作性が向上する（硬質管４５３についても同様）。
【０１８９】
なお、側孔４４４は、１本の螺旋状のスリットに限定されず、例えば、硬質管４４３の周方向に沿ったＣ字状をなし、硬質管４４３の長手方向に沿って複数配置されたものであってもよい。
【０１９０】
＜第１１実施形態＞
図２８および図２９は、それぞれ、本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。なお、説明の都合上、図２８および図２９中の左下側を「先端」、右上側を「後端（基端）」といい、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」という。
【０１９１】
以下、これらの図を参照して本発明の塗布具の第１１実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【０１９２】
本実施形態は、硬質管の側孔の位置が異なること以外は前記第８実施形態と同様である。
【０１９３】
なお、本実施形態では、硬質管４４３と硬質管４５３とは、それらの構成がほぼ同一であるため、以下、硬質管４４３を代表的に説明する。
【０１９４】
図２８および図２９に示す塗布具１Ｊの硬質管４４３では、側孔４４４が容積増減部４４１の基端部近傍、すなわち、前記第８実施形態の硬質管４４３の側孔４４４よりも上流側（基端側）に配置されている。
【０１９５】
塗布具１Ｊ（塗布具１〜１ｉについても同様）は、一般的に用いられる際には、ノズル４の先端（ノズルヘッド４２）を下方に向け（図２８（ａ）に示す状態）、この状態で操作部８を操作して、混合液（第１の液体Ｌ１と第２の液体Ｌ２との混合液）を吐出する（図２８（ｂ）に示す状態）。そして、混合液の吐出が停止すると、前述したように、混合液は、合流部５２よりも後端側に引き込まれる。この引き込まれた混合液には、硬質管４４３内から側孔４４４を介して容積増減部４４１内に流入するもの（Ｌ１＋Ｌ２）と、第１の流路４４（硬質管４４３）内に留まるものとがある（図２９（ｃ）参照）。第１の流路４４内に留まった混合液は、第１の流路４４内の第１の液体Ｌ１によって、固化しない程度に十分に希釈される。また、容積増減部４４１内に流入した混合液（Ｌ１＋Ｌ２）は、側孔４４４よりも十分に上方に位置する、すなわち、側孔４４４から十分に遠位にある。
【０１９６】
そして、再度塗布具１Ｊを用いる際には、前記と同様にノズル４の先端を下方に向けて用いる（図２９（ｄ）参照）。このとき、容積増減部４４１内に流入した混合液は、前述したように側孔４４４よりも十分に上方に位置しているため、当該混合液が硬質管４４３内に逆流するのが確実に防止される。これにより、容積増減部４４１内に収納された混合液が吐出されるのが確実に防止される。
【０１９７】
なお、図２８、図２９に示すように、側孔４４４（側孔４５４も同様）は、塗布具１Ｊを把持して使用するときに上方に向かって開口するような位置に形成されているのが好ましい。これにより、容積増減部４４１内に流入した混合液から側孔４４４をできる限り遠ざけることができる。よって、再度塗布具１Ｊを用いる際に、容積増減部４４１内に収納された混合液が吐出されるのがより確実に防止される。
【０１９８】
以上、本発明の塗布具を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、塗布具を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【０１９９】
また、本発明の塗布具は、前記各実施形態のうちの、任意の２以上の構成（特徴）を組み合わせたものであってもよい。
【０２００】
また、前記第１実施形態、前記第３実施形態〜第５実施形態に、前記第６実施形態のような合流部が設けられていてもよい。
【０２０１】
また、前記第１実施形態〜第５実施形態の容積増減部が、それぞれ、前記第６実施形態の容積増減部のようにバルーンで構成されたものであってもよい。
【０２０２】
また、前記第１実施形態〜第５実施形態の容積増減部を、それぞれ、前記第７実施形態のような、分岐部を介して設けられた容積増減部に置換してもよい。
【０２０３】
また、容積増減部より先端側の流路の内面は、疎水性を有するのが好ましい。疎水性を有することにより、液体が当該流路内からはじかれ、その流路内に残留するのが抑制または防止される。内面に疎水性を担持させるには、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、またはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂で構成された材料を内面に付与する方法が挙げられる。一方、容積増減部より先端側の流路の内面が親水性を有する場合には、当該流路の内面に液体が付着し（残留し）易くなり、ノズルが鉛直下方に向かって傾斜した状態が長時間維持されると、前記付着した液体が流下してノズルの先端に溜まり、ノズルの目詰まり、さらには、ノズルから外側へ液体が漏れ出るおそれもある。
【図面の簡単な説明】
【０２０４】
【図１】本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図である。
【図２】本発明の塗布具の第１実施形態を示す斜視図である。
【図３】図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（ガス流路が遮断された状態を示す図）である。
【図４】図１に示す塗布具における開閉手段のＡ−Ａ線断面図（ガス流路が開放された状態を示す図）である。
【図５】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図６】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図７】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図８】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図９】図１に示す塗布具のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図１０】本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１１】本発明の塗布具（第２実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１２】図１０中のＢ−Ｂ線断面図である。
【図１３】図１１中のＣ−Ｃ線断面図である。
【図１４】本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１５】本発明の塗布具（第３実施形態）のノズルの横断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１６】本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（液体が吐出している状態を示す図）である。
【図１７】本発明の塗布具（第４実施形態）のノズルの横断面図（液体の吐出が停止した状態を示す図）である。
【図１８】本発明の塗布具（第５実施形態）のノズルおよびシリンジの概略部分縦断面図である。
【図１９】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２０】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２１】本発明の塗布具（第６実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２２】本発明の塗布具（第７実施形態）の容積増減部付近の概略部分縦断面図である。
【図２３】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２４】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２５】本発明の塗布具（第８実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２６】本発明の塗布具（第９実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【図２７】本発明の塗布具（第１０実施形態）の流路確保手段を構成する硬質管の斜視図である。
【図２８】本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図２９】本発明の塗布具（第１１実施形態）のノズルの概略部分縦断面図（塗布状態の経時的変化を示す図）である。
【図３０】図１に示す塗布具に装填される第１のシリンジ（第２のシリンジも同様）の部分縦断面図である。
【符号の説明】
【０２０５】
１、１Ａ、１Ｂ、１Ｃ、１Ｄ、１Ｅ、１Ｆ、１Ｇ、１Ｈ、１ｉ、１Ｊ 塗布具
２ 第１のシリンジ（供給手段）
２０ 空間
２１ 外筒
２２ 縮径部（口部）
２３ フランジ
２４ ガスケット
２５ 中空部
２６ 押し子
２７ 本体部
２８ ヘッド部
２９ フランジ
３ 第２のシリンジ（供給手段）
４ ノズル
４１ ノズル本体
４１１ 基端開口部
４１２ 先端開口部
４２ ノズルヘッド
４２１ 第１の吐出口
４２２ 第２の吐出口
４２３ 第３の吐出口（気体吐出口）
４２４ 先端壁部
４２５ 中空部
４３ 接続部
４４ 第１の流路（液体移送路）
４４１ 容積増減部
４４２ 分岐部
４４３ 硬質管（硬質な管体）
４４４ 側孔
４４６ リップ部（リブ）
４５ 第２の流路（液体移送路）
４５１ 容積増減部
４５２ 分岐部
４５３ 硬質管（硬質な管体）
４５４ 側孔
４５６ リップ部（リブ）
４６ 第３の流路（ガス流路）
４６１ 拡張部（バルーン）
４６２ 加圧室（貯留室）
４６３、４６４ 切断部（開口部）
４６５ ゴムパッキン
４７ リング
４８１、４８２ 溝
４９ 易変形部（規制手段）
５１ スペーサ
５２ 合流部
５２１ テーパ部
５２２ 小径部
５２３ 大径部
５２４ 混合液吐出口
７ 塗布具本体
７１ 基部
７１１、７１２ 凹部
７１３ ガイド
７２ 前板（第１の係合部）
７２１、７２２ 溝
７３ 後板（第２の係合部）
７３１、７３２ 凹部
７５１、７５２ 指掛け部
８ 操作部
８１ 連結部
８１１、８１２ 凹部
８１３ 筒状部
８２ 押圧部
８３ レール部
９ 開閉手段（弁機構）
９１ 第１の接続部
９１１ 段差部
９１２ 収納部
９１３ 縮径部
９１４ 内周部
９２ 第２の接続部
９２１ 下端部
９２２ 外周部
９３ 弁部
９４ シール部材
９４１ 内周部
９４２ 外周部
９５ フランジ部
９５１ 周縁部
９６ 付勢部
９６１ 上端部
９６２ 下端部
９７、９８ 間隙
１０ チューブ（ガス流路）
１０１ 第１のチューブ
１０２ 第２のチューブ
３００ ボンベ（ガス供給手段）
３０１ バルブ
Ｌ１ 第１の液体
Ｌ２ 第２の液体
Ｐ１、Ｐ２ 先端
Ｇ ガス（無菌ガス）
【特許請求の範囲】
【請求項１】
液組成が異なる２種の液体をそれぞれ別個に供給する供給手段と、
前記２種の液体を吐出する吐出口と、
前記供給手段から前記吐出口へそれぞれ液体を送る２本の液体移送路と、
前記２本の液体移送路のうちの少なくとも一方に設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部と、
前記容積増減部を変形させる変形手段とを有し、
前記変形手段は、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で、前記容積増減部をその容積が大となるように変形させるよう作動することを特徴とする塗布具。
【請求項２】
前記変形手段の作動により、前記容積増減部が設けられた前記液体移送路を通過した液体の先端が、前記吐出口よりも後端側に引き込まれる請求項１に記載の塗布具。
【請求項３】
前記容積増減部は、前記液体移送路の途中で、該液体移送路の一部を構成する流路形成部である請求項１または２に記載の塗布具。
【請求項４】
前記流路形成部は、自然状態で、その内径が当該流路形成部の前後の前記液体移送路の内径と同じかまたはそれより大きいものである請求項３に記載の塗布具。
【請求項５】
前記容積が減少したときでも前記流路形成部材内の液体の流通を確保する流路確保手段を有する請求項３または４に記載の塗布具。
【請求項６】
前記流路確保手段は、前記流路形成部材内に挿通され、前記液体移送路に連通する硬質な管体で構成され、該管体には、その管壁に開口し、前記流路形成部材の内部と連通する少なくとも１つの側孔が形成されている請求項５に記載の塗布具。
【請求項７】
前記管体は、網状の管体で構成されている請求項６に記載の塗布具。
【請求項８】
前記管体は、前記流路形成部材の容積が減少して、該流路形成部材の内面によって押圧された際、内径が実質的に減少しない程度の剛性を有する請求項６または７に記載の塗布具。
【請求項９】
前記容積増減部は、前記液体移送路の途中から分岐した分岐部を介して設けられている請求項１または２に記載の塗布具。
【請求項１０】
前記容積増減部は、前記変形手段の作動に応じて拡張・収縮するバルーンで構成されている請求項１ないし９のいずれかに記載の塗布具。
【請求項１１】
ガスを供給するガス供給手段に接続され、その接続状態で前記ガス供給手段からのガスが通過するガス流路と、該ガスが噴出するガス噴出口とを有する請求項１ないし１０のいずれかに記載の塗布具。
【請求項１２】
前記変形手段は、ガスの供給に連動して作動する請求項１１に記載の塗布具。
【請求項１３】
前記変形手段は、前記ガス流路の途中に設けられ、ガスの流量に応じて拡張・収縮する拡張部で構成され、該拡張部が拡張した際に前記容積増減部を圧迫し、収縮した際に前記容積増減部に対する圧迫が解除される請求項１１または１２に記載の塗布具。
【請求項１４】
前記容積増減部および前記ガス流路は、それぞれ、弾性を有するチューブで構成されており、
前記容積増減部および前記ガス流路を外方から一括して保持するリングを有する請求項１３に記載の塗布具。
【請求項１５】
前記変形手段は、前記ガス流路に設けられ、ガスが一時的に貯留される加圧室で構成され、該加圧室内に前記容積増減部が位置しており、
前記加圧室内の圧力が上昇することにより前記容積増減部が圧迫され、前記圧力の上昇が下降に転ずることにより前記容積増減部に対する圧迫が解除される請求項１１または１２に記載の塗布具。
【請求項１６】
前記容積増減部に対して、該容積増減部が主に変形する方向を規制する規制手段を有する請求項１ないし１５のいずれかに記載の塗布具。
【請求項１】
液組成が異なる２種の液体をそれぞれ別個に供給する供給手段と、
前記２種の液体を吐出する吐出口と、
前記供給手段から前記吐出口へそれぞれ液体を送る２本の液体移送路と、
前記２本の液体移送路のうちの少なくとも一方に設けられ、内部の容積が増減するように変形する容積増減部と、
前記容積増減部を変形させる変形手段とを有し、
前記変形手段は、液体が吐出している状態よりもその吐出が停止した状態で、前記容積増減部をその容積が大となるように変形させるよう作動することを特徴とする塗布具。
【請求項２】
前記変形手段の作動により、前記容積増減部が設けられた前記液体移送路を通過した液体の先端が、前記吐出口よりも後端側に引き込まれる請求項１に記載の塗布具。
【請求項３】
前記容積増減部は、前記液体移送路の途中で、該液体移送路の一部を構成する流路形成部である請求項１または２に記載の塗布具。
【請求項４】
前記流路形成部は、自然状態で、その内径が当該流路形成部の前後の前記液体移送路の内径と同じかまたはそれより大きいものである請求項３に記載の塗布具。
【請求項５】
前記容積が減少したときでも前記流路形成部材内の液体の流通を確保する流路確保手段を有する請求項３または４に記載の塗布具。
【請求項６】
前記流路確保手段は、前記流路形成部材内に挿通され、前記液体移送路に連通する硬質な管体で構成され、該管体には、その管壁に開口し、前記流路形成部材の内部と連通する少なくとも１つの側孔が形成されている請求項５に記載の塗布具。
【請求項７】
前記管体は、網状の管体で構成されている請求項６に記載の塗布具。
【請求項８】
前記管体は、前記流路形成部材の容積が減少して、該流路形成部材の内面によって押圧された際、内径が実質的に減少しない程度の剛性を有する請求項６または７に記載の塗布具。
【請求項９】
前記容積増減部は、前記液体移送路の途中から分岐した分岐部を介して設けられている請求項１または２に記載の塗布具。
【請求項１０】
前記容積増減部は、前記変形手段の作動に応じて拡張・収縮するバルーンで構成されている請求項１ないし９のいずれかに記載の塗布具。
【請求項１１】
ガスを供給するガス供給手段に接続され、その接続状態で前記ガス供給手段からのガスが通過するガス流路と、該ガスが噴出するガス噴出口とを有する請求項１ないし１０のいずれかに記載の塗布具。
【請求項１２】
前記変形手段は、ガスの供給に連動して作動する請求項１１に記載の塗布具。
【請求項１３】
前記変形手段は、前記ガス流路の途中に設けられ、ガスの流量に応じて拡張・収縮する拡張部で構成され、該拡張部が拡張した際に前記容積増減部を圧迫し、収縮した際に前記容積増減部に対する圧迫が解除される請求項１１または１２に記載の塗布具。
【請求項１４】
前記容積増減部および前記ガス流路は、それぞれ、弾性を有するチューブで構成されており、
前記容積増減部および前記ガス流路を外方から一括して保持するリングを有する請求項１３に記載の塗布具。
【請求項１５】
前記変形手段は、前記ガス流路に設けられ、ガスが一時的に貯留される加圧室で構成され、該加圧室内に前記容積増減部が位置しており、
前記加圧室内の圧力が上昇することにより前記容積増減部が圧迫され、前記圧力の上昇が下降に転ずることにより前記容積増減部に対する圧迫が解除される請求項１１または１２に記載の塗布具。
【請求項１６】
前記容積増減部に対して、該容積増減部が主に変形する方向を規制する規制手段を有する請求項１ないし１５のいずれかに記載の塗布具。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【図２８】
【図２９】
【図３０】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図１５】
【図１６】
【図１７】
【図１８】
【図１９】
【図２０】
【図２１】
【図２２】
【図２３】
【図２４】
【図２５】
【図２６】
【図２７】
【図２８】
【図２９】
【図３０】
【公開番号】特開２００９−１１８０５（Ｐ２００９−１１８０５Ａ）
【公開日】平成２１年１月２２日（２００９．１．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２７１７６２（Ｐ２００７−２７１７６２）
【出願日】平成１９年１０月１８日（２００７．１０．１８）
【出願人】（０００１０９５４３）テルモ株式会社 (2,232)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１月２２日（２００９．１．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１０月１８日（２００７．１０．１８）
【出願人】（０００１０９５４３）テルモ株式会社 (2,232)
【Ｆターム（参考）】
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