説明

塗布具

【課題】本発明は、塗布液の粘性に拘わらず、略定量的に塗布液を吐出させ得る塗布具を提供するものである。
【解決手段】塗布具は、ユーザーが内軸の後端部12bをノックすることによって内軸12が外軸10に対して前進して後述するバルブ機構14を作動させ、塗布液を外軸の先端部10aに設けた塗布体16に供給するものであり、弁座体30および弁棒体38同士が相対移動することによって、弁棒体38の先方側のピストン部38aが前記弁座体30内の先方側液密部32bに摺接する第1の状態と、弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの前記弁座体30内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体38の後方側のピストン部38bが弁座体30内の後方側液密部34bに摺接する第3の状態を取り得るように形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインキ、化粧料、液体医薬品、接着剤等の塗布液をインキタンク等の液体収容部内に直接的に収容しその塗布液を対象物に塗布(筆記も含む)する直液式の塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
塗布具は、液体収容部内に直接的に収容されたインキ、化粧料等の塗布液を塗布体によって対象物に塗布するものである。
【0003】
従来この種の塗布具には、液体収容空間から塗布体に供給する・供給しないを弁部材によって切換えるバルブ装置を有したものがある。
【0004】
この種のバルブ装置では、弁部材の開口に応じて塗布液が吐出されるが、弁部材を開口させる際のノック操作時間等の長短や、外気と液体収容部内との圧力差に大小によって塗布体に供給される塗布液に過不足が生じ、塗布液が塗布体から垂れ落ちたり、かすれたりする等の問題が生じる。
【0005】
従来の技術、例えば、実開昭63−176580号公報(特許文献1)や、実開平5−33872号公報およびその明細書全文(特許文献2参照)に開示されたバルブ装置では、弁棒の前端部に設けたピストン部と、外筒の内部において後端寄りの位置に設けた整流筒部とによって外筒の内部空間を隔離し、弁が開いたときにその隔離された内部空間内のほぼ一定量の液状体が吐出されるようにして、塗布体に供給される液状体を適量に調整している。
【0006】
しかしながら、前記従来の技術では、収容空間内の空気の体積膨張により、塗布液が過剰に供給されることはないが、塗布液の粘性により、空気置換性が悪くなり、従来技術では、塗布液を定量供給は図れるがスムーズに供給できないという問題がある。
【特許文献1】実開昭63−176580号公報
【特許文献2】実開平5−33872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題に鑑みて、塗布液の粘性に拘わらず、略定量的に塗布液を吐出させ得る塗布具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は塗布具に係り、塗布液を収容する液体収容空間と塗布体との連通路途上に、弁座体および弁棒体が軸方向に相対移動することによって塗布液の塗布体に向けての供給を許容・制止するバルブ機構を有する塗布具において、
バルブ機構の弁座体は、軸方向の両端部に開口がある略筒体であって、内部の先方側および後方側に弁棒に摺接する液密部が形成され、前記後方側開口が液体収容空間に面し、かつ、先方側開口が塗布体側に面して設けられ、
前記弁棒体の外周部に、前記弁座体内の先方側液密部に液密状態で摺接する先方側のピストン部が、前記弁座体内の後方側液密部に液密状態で摺接する後方側のピストン部がそれぞれ設けられると共に、該外周部と前記弁座内面との間に塗布液を流通する空間が設けられ、
前記弁座体内の先方側液密部および後方側液密部の間の距離よりも弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の間の距離を短く設定して、弁座体および弁棒体同士が相対移動することによって、弁棒体の先方側のピストン部が前記弁座体内の先方側液密部に摺接する第1の状態と、弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の前記弁座体内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体の後方側のピストン部が弁座体内の後方側液密部に摺接する第3の状態とを取り得るように形成したことを特徴とする塗布具である。
【0009】
本発明において、前記第1の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して先方側端の位置から後方に第1の距離未満移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部に密接しながら摺接し、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部から離れて、収容空間側を加圧し、
前記第2の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して後方に前記第1の距離以上であって第2の距離未満移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部を離れ、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部から離れて、弁座体内部を通してその先方側開口と後方側開口が連通し、
前記第3の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して後方側に前記第2の距離以上移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部を離れ、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部に密接しながら摺接して塗布体へ塗布液を誘導するようになっており、
弁棒体および弁座体が軸方向に相対移動する際には、前記第2の状態になる距離は、第1の状態および第3の状態になる距離よりも小さく、液体収容空間内の圧力を塗布液のボタ落ちなく外部に抜ける距離になっていることが好適である。
【0010】
また、本発明において、塗布具のバルブ機構は、弁座体および弁棒体間にスプリング部材を介装しており、スプリング部材は弁棒体が弁座体に対して先方側端に位置するように付勢していることが好適である。
【0011】
また、本発明において、弁座体先方側開口には、当該先方側開口を塗布体に連通する管路が設けられ、この管路内には、塗布液を塗布体に向けて誘導する誘導棒体が挿入されていることが好適である。
【0012】
また、本発明において、誘導棒体と管路内面との間の間隙は、塗布液を誘導させる寸法になっていることが好適である。
【0013】
また、本発明において、誘導棒体は、塗布液に対して濡れ性のよい材質にしたことが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1〜6記載の塗布具によれば、バルブ機構を、前記弁座体内の先方側液密部および後方側液密部の間の距離よりも弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の間の距離を短く設定して、弁座体および弁棒体同士が相対移動することによって、弁棒体の先方側のピストン部が前記弁座体内の先方側液密部に摺接する第1の状態と、弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の前記弁座体内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体の後方側のピストン部が弁座体内の後方側液密部に摺接する第3の状態を取り得るように形成したので、先方側を下方にむけてバルブ機構を操作して弁座体および弁棒体を相対移動する際には、第1の状態で、先方側のピストン部によって塗布体側を閉じて塗布液が弁座内面との間の空間に流れ込み、次いで、第2の状態で、該弁座内面との間の空間を通して液体収容空間を塗布体から大気に連通し、さらに、第3の状態で、後方側のピストン部によって塗布体側を閉じて弁座内面との間の塗布液が塗布体に流れるというポンピング動作を行う構造になっている。
【0015】
したがって、バルブ機構の操作によって第1の状態で液体収容空間内を加圧して第2の状態で液体収容空間の圧力を抜き、第3の状態で塗布体に塗布体液を流しだすので、空気置換性が極めて良好である。
【0016】
よって、温度上昇等によって液体収容空間内の空気等が体積膨張していても、液体収容空間の圧力が高まりすぎても、塗布液の不意の吐出によるボタオチが生じることがない。
【0017】
なお、塗布具のバルブ機構は、弁座体および弁棒体間にスプリング部材を介装しており、スプリング部材によって弁棒体が弁座体に対して先方側端に位置するように付勢していれば、塗布具を押圧操作して第1の状態から第2の状態を経由して第3の状態にした後に押圧力を解除すれば、逆に第3の状態から第2の状態を経由して第1の状態に戻り使い易い。
【0018】
また、弁座体先方側開口には、当該先方側開口を塗布体に連通する管路が設けられ、この管路内には、塗布液を塗布体に向けて誘導する誘導棒体が挿入されていれば、誘導棒体で塗布液をスムーズに塗布体に送ることができる。
【0019】
また、誘導棒体と管路内面との間の間隙は、塗布液を誘導させる寸法になっていることがよりスムーズに塗布液を誘導できる。
【0020】
また、誘導棒を、塗布液に対して濡れ性のよい材質にすれば、さらにスムーズに塗布液を誘導できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1〜図6は発明を実施する形態の一例の説明図であって、図1(a)、(b)、(c)は実施形態に係る塗布具の外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図、図2(a)〜(d)は塗布具のバルブ機構の各作動行程説明図、図3は図1の塗布具のバルブ機構における弁座体の後側弁部材の説明図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)は先方側視図、(d)は後方側視図、(e)は上側に傾けた先方側斜視図、(f)は下側に傾けた先方側斜視図、図4(a)〜(d)は実施形態に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図である。図5(a)〜(d)は実施形態の変形例1に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図、図6(a)〜(d)は変形例2に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図である。
【0023】
実施形態の塗布具は、後端部10bの開放された概略円筒状の外軸10内に進退動可能にタンク状の内軸12が配置されていて、ユーザーが内軸12後端部12bをノックすることによって内軸が外軸10に対して前進して後述するバルブ機構14を作動させ、塗布液を外軸10先端部10aに設けた塗布体16に供給するようになっている。
【0024】
外軸10先端部10aは、段状に細径になっており、その先端部10a前面に、インク導入管(バルブ機構14から塗布体16側に塗布液を流通させる管路)18の椀状の先端部18a外周(フランジ状に拡がっている)を当接させている。そのインク導入管18の先端部18aには、シールリング20を介して塗布体16後部を挿入している。中空で先細い筒状の先軸22の中空部に前記塗布体16中央部からシールリング20および前記インク導入管18の先端部18aを通した状態で、該先軸22を前記外軸先端部10aに外嵌することによって、塗布体16、シールリング20およびインク導入管先端部18aを外軸10に固定するようになっている。なお、外軸先端部10aには、塗布体16を覆って保護するキャップ24が着脱可能に外嵌するようになっており、キャップ24は、内側のインナーキャップ24aがスプリング24bによって先軸22を押圧するように付勢している。
【0025】
前記内軸12は、後端部12bが閉鎖されて内部が塗布体16を収容する液体収容空間12cになっており(撹拌ボール12dを収容する場合がある)、一方、前端部(内軸の先端部)12aに前記バルブ機構14を内装した状態で内先軸26によって固定している。詳しくは、内軸12の先方側を細くした前端部12aにバルブ機構14を内装した状態で、インク導入管18の後端部18bをバルブ機構14に摺動自在に繋ぎ、バルブ機構14前端部にパッキング28を介装して内先軸26を内軸前端部12aに螺合等によって固定している。
【0026】
ここで、前記バルブ機構14は、塗布液を収容する前記液体収容空間12cと塗布体16との連通路途上に、弁座体30および弁棒体38が軸方向に相対移動することによって塗布液の塗布体16に向けての供給を許容・制止するものである。
【0027】
バルブ機構14の弁座体30は、軸方向の両端部に開口がある略筒体であって、内部の先方側(先側弁部材32)および後方側(後側弁部材34)に弁棒に摺接する液密部が形成され、前記後方側開口が液体収容空間12cに面し、かつ、先方側開口が塗布体16側に面して設けられる。
また、図1、図3に示すように、弁座体30の後側弁部材34の内壁部には、長手方向の略中心から後方側にかけて、内壁部から径中心方向に突出した弁棒体38をガイドするガイド柱34cがリブ状に形成されている。このガイド柱34cは、外軸10が落下した際に、衝撃によって弁棒体38が傾き先側弁部材32の端面に乗り上げ、ノック不良になることを防ぐことができる。
【0028】
具体的には、先側弁部材32は、先方端にフランジ32aが拡径し後方側内周面が先方側内周面より拡径した全体が略筒形状を呈しており、この後方側内周面が先方側液密部32bに相当する。また、後側弁部材34は先方端にフランジ34aが拡径し後方側端が段状に縮径して開口した略筒形状を呈しており、この縮径部内周面が後方側液密部34bに相当する。先側弁部材32を後側弁部材34内に先方側から同心状に挿入し重畳した状態でフランジ32a、34aを重ねて、さらにパッキング28を先方に重ねた状態で、内先軸26で覆って内軸前端部12aに螺合して固定する。なお、後側弁部材34の後方側端の縮径部の前面が後述するスプリング部材36を受ける部分になっている。
【0029】
前記弁棒体38は、前記先側弁部材32および後側弁部材34の中空内に進退動可能に収容されている。
【0030】
弁棒体38の外周部に、前記弁座体30内の先側弁部材32先方側液密部32bに液密状態で摺接する先方側のピストン部38aが、前記弁座体30内の後側弁部材34の後方側液密部34bに液密状態で摺接する後方側のピストン部38bがそれぞれ設けられると共に、該弁棒体38のほぼ中央部の外周部と前記弁座体30内面との間に塗布液を流通する空間40が設けられる。具体的には、弁棒体38の先方側のピストン部38aは、拡径した傘状のフランジが可撓性を有した形成されたものである。また、後方側のピストン部38bは、後方窄まりに平滑外周面に形成されており、弁棒体38が後方に移動するときに、後側弁部材34の開口を細径の後端部が通過したあとに太径の中央部が後側弁部材34の後方側液密部34bに密着して摺接するようになっているものである。
【0031】
上記のようにバルブ機構14は、弁座体30および弁棒体38間にスプリング部材36を介装しており、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aを後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。したがって、内軸12の後端をノックして押圧力を加えないと、図1に示すようにスプリング部材36によって先方側のピストン部38aが先方側液密部32b先端に内接して位置する。なお、外軸10内の環状突起42に内先軸26が当接して内軸12がそれ以上後方に移動して抜けてしまうのを防止している。
【0032】
また、弁座体30の先方側開口(先側弁部材32の先端側開口)には、当該先方側開口を塗布体16に連通するインク導入管(管路)18の後端部18bが挿入されて設けられ、このインク導入管18内には、塗布液を塗布体16に向けて誘導する誘導棒体44が挿入されている。
【0033】
誘導棒体44とインク導入管18内面との間の間隙は、塗布液を誘導させる寸法になっている。誘導棒体44のインク導入管18との位置関係に関して、実施形態では、図4に示すように、誘導棒体44がインク導入管18の径方向中心に位置するように導入管18先端部18a側内部に複数条突出形成したリブ46によって誘導棒体44を支持して径方向のガタツキを無くしている。また、誘導棒体44先端部は、塗布体16の後部内に挿入している。
【0034】
誘導棒体44とインク導入管18の構成は、図4に示すもの以外に、図5の変形例1に示すように、誘導棒体44をインク導入管18の径方向中心からずらして位置させてリブ46によって支持する構成にすることができる。ずらし方で、誘導棒体44をよりインク導入管18内面に近づけて塗布液の誘導を補助することができる。
【0035】
また、図6の変形例2に示すように、誘導棒体44をインク導入管18の径方向に位置が自在にずれた位置(ずれp)になるように、上記のリブ46の形成を行わないように構成することができる。誘導棒体44はインク導入管18内でその内径範囲で自由に位置や傾きをとれるので、塗布具を振るなどすると、誘導棒体44をインク導入管18内面に近づけたり遠くしたりして塗布液の誘導を適宜に促すことが可能になる。
【0036】
なお、塗布具の各部材質としては、塗布体16にアクリル、ポリエステル、ポリアセタール(POM)、内軸および外軸10にポリプロピレン(PP)、ポリブチレンナフタレート(PBT)、ナイロン(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、先軸22、キャップ24、インナーキャップ24a、および内先軸26にポリブチルテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、パッキング28にEPDM、シリコン、NBR、IIR、フッ素、シールリングに低密度ポリエチレン(LDPE、LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、弁座体30の先側弁部材32、後側弁部材34、弁棒体38に高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE、LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、キャップ24のスプリング24bとスプリング部材36にステンレススチール(SUS)を用いることができる。
【0037】
また、誘導棒体44は、塗布液に対して濡れ性のよい材質例えばステンレススチール(SUS)等の金属、または、ポリアセタール(POM)等の樹脂、ポリエステルやアクリル等の繊維束芯、または焼結体、ポリアセタール(POM)等の軸方向に液通路を有する合成樹脂成形芯としたことが好適である。
【0038】
次に、実施形態の塗布具のバルブ機構14についてさらに詳細に説明する。
【0039】
バルブ機構14では、前記弁座体30内の先方側液密部32bおよび後方側液密部34bの間の距離よりも弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの間の距離を短く設定している。つまり、弁座体30および弁棒体38同士が相対移動することによって、弁棒体38の先方側のピストン部38aが前記弁座体30内の先方側液密部32bに摺接する第1の状態と、弁棒体38の先方側のピストン部38aおよび後方側のピストン部38bの前記弁座体30内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体38の後方側のピストン部38bが弁座体30内の後方側液密部34bに摺接する第3の状態とを取り得るように形成したものである。
【0040】
バルブ機構14の作動を図2にしたがって説明する。
【0041】
ユーザーが内軸後端部12bをノックしない通常状態(非ノック時)では、図2(a)に示すように、スプリング部材36は弁棒体38の先方側のピストン部38aに後方から当設していて、弁座体30に対して先方側端に位置するように付勢している。
【0042】
内軸後端部12bのノックを開始した状態では、まず図2(b)に示すように、まず、前記第1の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して先方側端の位置から後方に第1の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接し、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、液体収容空間12c側を加圧する状態になる。この際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れているが、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bに密接しながら摺接しているので、液体収容空間12cの内圧が上昇しても塗布液は吹き出さない状態である。
【0043】
さらに、内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(c)に示すように、前記第2の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方に前記第1の距離以上であって第2の距離未満移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れる。その際、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bから離れていて、弁座体30内部を通してその先方側開口と後方側開口が連通する状態になる。このように大気と連通するため、内圧が上昇している場合は、塗布液が塗布体側に流出しようとするが、押圧操作上、この状態になるタイミングは一瞬であり、塗布液の吹き出しはない。また、液体収容空間12cの空気置換性が向上する。また、塗布液が誘導棒体44を伝わって塗布体16側に流出する。
【0044】
続けて内軸後端部12bのノックを継続していった状態では、図2(d)に示すように、前記第3の状態のように、前記弁棒体38が弁座体30に対して後方側に前記第2の距離以上移動したときであり、弁棒体38先方側のピストン部38aが弁座体30の先方側液密部32bを離れ、かつ、弁棒体38後方側のピストン部38bが弁座体30の後方側液密部34bに密接しながら摺接して塗布体16へ塗布液を誘導するようになっている。この場合、塗布液の流通する空間40は、液体収容空間と完全に遮断されるため、バルブ機構14内に溜まった塗布液がインク導入管18内をスムーズに伝わって塗布体16側に流出する。
【0045】
この場合、弁棒体38および弁座体30が軸方向に相対移動する際には、前記第2の状態になる距離は、第1の状態および第3の状態になる距離よりもはるかに小さく、液体収容空間12c内の圧力を塗布液のボタ落ちなく外部に抜ける少しの距離(一瞬で通過する距離)になっている。先方側を下方にむけてバルブ機構14を操作して弁座体30および弁棒体38を相対移動する際には、第1の状態で、先方側のピストン部38aによって塗布体16側を閉じて塗布液が弁座内面との間の空間に流れ込み、次いで、第2の状態で、該弁座内面との間の空間を通して液体収容空間12cを塗布体16から大気に連通し、さらに、第3の状態で、後方側のピストン部38bによって塗布体16側を閉じて弁座内面との間の塗布液が塗布体16に流れるというポンピング動作を行う構造になっている。
【0046】
したがって、バルブ機構14の操作によって第1の状態で液体収容空間12c内を加圧して第2の状態で液体収容空間12cの圧力を抜き、第3の状態で塗布体16に塗布体16液を流しだすので、空気置換性が極めて良好である。
【0047】
よって、温度上昇等によって液体収容空間12c内の空気等が体積膨張していても、液体収容空間12cの圧力が高まりすぎても、塗布液の不意の吐出によるボタオチが生じることがない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の塗布具は、インキ、化粧料、液体医薬品、接着剤等の塗布液をインキタンク等の液体収容部内に直接的に収容しその塗布液を対象物に塗布する直液式の筆記具、化粧料製品、医薬品塗布具、接着剤塗布具等の塗布具に採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)、(b)、(c)は実施形態に係る塗布具の外観図、縦断面図、C−C線に沿う横断面図ある。
【図2】(a)〜(d)は図1の塗布具のバルブ機構の各作動行程説明図である。
【図3】図1の塗布具のバルブ機構における弁座体の後側弁部材の説明図であって、(a)は外観図、(b)は縦断面図、(c)は先方側視図、(d)は後方側視図、(e)は上側に傾けた先方側斜視図、(f)は下側に傾けた先方側斜視図である。
【図4】(a)〜(d)は実施形態に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図である。
【図5】(a)〜(d)は実施形態の変形例1に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図である。
【図6】(a)〜(d)は変形例2に係る塗布具に連通する管路および誘導棒体の断面説明図、後方側斜視図、先方側視図、先方側斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 外軸
10a 外軸の先端部
10b 外軸の後端部
12 内軸
12a 内軸の前端部
12b 内軸の後端部
12c 液体収容空間
12d 撹拌ボール
14 バルブ機構
16 塗布体
18 インク導入管
18a インク導入管の先端部
18b インク導入管の後端部
20 シールリング
22 先軸
24 キャップ
24a インナーキャップ
24b キャップ内のスプリング
26 内先軸
28 パッキング
30 弁座体
32 先側弁部材
32a 先側弁部材のフランジ
32b 先方側液密部
34 後側弁部材
34a 後側弁部材のフランジ
34b 後方側液密部
34c ガイド柱
36 スプリング部材
38 弁棒体
38a 先方側のピストン部
38b 後方側のピストン部
40 空間
42 環状突起
44 誘導棒体
46 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液を収容する液体収容空間と塗布体との連通路途上に、弁座体および弁棒体が軸方向に相対移動することによって塗布液の塗布体に向けての供給を許容・制止するバルブ機構を有する塗布具において、
バルブ機構の弁座体は、軸方向の両端部に開口がある略筒体であって、内部の先方側および後方側に弁棒に摺接する液密部が形成され、前記後方側開口が液体収容空間に面し、かつ、先方側開口が塗布体側に面して設けられ、
前記弁棒体の外周部に、前記弁座体内の先方側液密部に液密状態で摺接する先方側のピストン部が、前記弁座体内の後方側液密部に液密状態で摺接する後方側のピストン部がそれぞれ設けられると共に、該外周部と前記弁座体内面との間に塗布液を流通する空間が設けられ、
前記弁座体内の先方側液密部および後方側液密部の間の距離よりも弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の間の距離を短く設定して、弁座体および弁棒体同士が相対移動することによって、弁棒体の先方側のピストン部が前記弁座体内の先方側液密部に摺接する第1の状態と、弁棒体の先方側のピストン部および後方側のピストン部の前記弁座体内の双方の液密部に摺接しない第2の状態と、弁棒体の後方側のピストン部が弁座体内の後方側液密部に摺接する第3の状態とを取り得るように形成したことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記第1の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して先方側端の位置から後方に第1の距離未満移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部に密接しながら摺接し、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部から離れて、収容空間側を加圧し、
前記第2の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して後方に前記第1の距離以上であって第2の距離未満移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部を離れ、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部から離れて、弁座体内部を通してその先方側開口と後方側開口が連通し、
前記第3の状態では、前記弁棒体が弁座体に対して後方側に前記第2の距離以上移動したときに、弁棒体先方側ピストン部が弁座体の先方側液密部を離れ、かつ、弁棒体後方側ピストン部が弁座体の後方側液密部に密接しながら摺接して塗布体へ塗布液を誘導するようになっており、
弁棒体および弁座体が軸方向に相対移動する際には、前記第2の状態になる距離は、第1の状態および第3の状態になる距離よりも小さく、液体収容空間内の圧力を塗布液のボタ落ちなく外部に抜ける距離になっていることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
塗布具のバルブ機構は、弁座体および弁棒体間にスプリング部材を介装しており、スプリング部材は弁棒体が弁座体に対して先方側端に位置するように付勢していることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布具。
【請求項4】
弁座体先方側開口には、当該先方側開口を塗布体に連通する管路が設けられ、この管路内には、塗布液を塗布体に向けて誘導する誘導棒体が挿入されていることを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の塗布具。
【請求項5】
誘導棒体と管路内面との間の間隙は、塗布液を誘導させる寸法になっていることを特徴とする請求項4に記載の塗布具。
【請求項6】
誘導棒体は、塗布液に対して濡れ性のよい材質にしたことを特徴とする請求項4または5に記載の塗布具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−160928(P2009−160928A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313900(P2008−313900)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】