説明

塗布膜付き金属帯板

【課題】 金属帯板から塗布膜が剥離し難い塗布膜付き金属帯板を提供する。
【解決手段】 金属帯板3の長手方向に連続して延びる塗布膜5を、塗布膜5の長手方向LDと直交する幅方向WDの両縁部5A,5Bが、金属帯板3の幅方向の両縁部3A,3Bよりも内側に位置するように金属帯板3の表面に形成する。塗布膜5の両縁部5A,5Bは、それぞれ幅方向WDに凸となる凸部25と幅方向WDに凹となる凹部27とが長手方向に交互に現れる凹凸状縁部29から構成され、凹凸状縁部29の凸部25の極大点と凹部27の極小点との間の距離の平均値が3μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法を有し、隣りあう2つの凸部25,25の極大点間の距離の平均値が10μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯板の長手方向に沿って連続して延びる塗布膜が金属帯板の表面に形成されてなる塗布膜付き金属帯板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2008−6348号公報(特許文献1)には、フローコータの塗料吐き出し口からカーテン状に落下する塗料を、移動する金属帯板の表面に塗布して塗布膜を形成する技術が開示されている。また特開平8−252502号公報(特許文献2)には、アプリケータロールを含む3つのロールを組み合わせたロールコータ方式により、アプリケータロールを回転させながら移動する金属帯板に塗料を転写して金属帯板の表面に塗布膜を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−6348号公報
【特許文献2】特開平8−252502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のフローコータまたはロールコータを用いて製造した塗布膜付き金属帯板では、塗布膜の幅寸法、膜の材質、金属帯板の表面特性等によっては、形成した塗布膜が金属帯板の表面から剥離することもあった。
【0005】
本発明の目的は、金属帯板から塗布膜が剥離し難い塗布膜付き金属帯板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が改良の対象とする塗布膜付き金属帯板は、金属帯板の表面にこの金属帯板の長手方向に連続して延びる塗布膜を印刷して形成する。塗布膜は、塗布膜の長手方向と直交する幅方向の両縁部が、金属帯板の幅方向の両縁部よりも内側に位置するように金属帯板上に形成されている。すなわち、塗布膜は、金属帯板の両端部の表面が露出するように金属帯板上に形成されている。
【0007】
塗布膜の両縁部は、それぞれ金属帯板の幅方向に向かって凸となる凸部と金属帯板の幅方向に向かって凹となる凹部とが長手方向に交互に現れる凹凸状縁部から構成される。この凹凸状縁部は、金属帯板の長手方向に向かって不規則に蛇行しながら延びて、金属帯板の表面の露出部と塗布膜との境界線を構成する。
【0008】
本発明の塗布膜付き金属帯板では、塗布膜の両端部を構成する凹凸状縁部の凸部の極大点と凹部の極小点との間の帯板幅方向の距離の平均値が、3μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法になるように塗布膜を形成する。凸部の極大点は、凸部の頂点を構成し、凹部の極小点は、凹部の底点を構成する。凹凸状縁部の凸部の極大点と凹部の極小点との間の距離の平均値は、例えば凸部と凹部の数がいずれもn個(nは2以上の整数、以下同じ)の場合に、n−1番目の凸部の極大点とこの凸部に連続するn番目の凹部の極小点との間の距離の合計をnで除した値を示す。
【0009】
また塗布膜の両端部を構成する凹凸状縁部は、隣りあう2つの凸部の極大点間の帯板長手方向の距離の平均値が10μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法にするのが好ましい。隣りあう2つの凸部の極大点間の距離の平均値は、例えば凸部がn個の場合に、n−1番目の凸部の極大点とn番目の凸部の極大点と間の距離の合計をn−1で除した値を示す。
【0010】
塗布膜の両縁部をこのような寸法にすると、塗布膜が金属帯板の表面から剥離しにくい塗布膜付き金属帯板を得ることができる。特に、凹凸状縁部の凸部の極大点と凹部の極小点との間の距離の平均値が3μm以下の場合で、しかも隣り合う凸部の極大点間の距離の平均値が100μm以上になると高い耐剥離性が得られず、凹凸状縁部の凸部の極大点と凹部の極小点との間の距離の平均値が100μm以上の場合は、金属帯板に対する塗布膜の寸法精度が低下する。なお、本発明のように印刷により塗布膜を金属帯板上に形成する方法では、隣り合う凸部の極大点間の距離の平均値が10μm以下の寸法を有する塗布膜の両端部を形成することは不可能である。
【0011】
なお本発明で用いることができる典型的な金属帯板は、鋼板、ステンレス板、銅板または銅合金板等をロール上に巻き取り可能に帯状に加工した金属板である。また典型的な塗布膜は、金属帯板に印刷された熱硬化性の絶縁樹脂塗料が硬化することにより形成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本発明の塗布膜付き金属帯板の使用態様を示す図であり、(B)は切断した塗布膜付き金属帯板の断片を用いて製造した電装部品を示す図である。
【図2】(A)は本発明の塗布膜付き金属帯板の実施の形態の一部を示す図であり、(B)は(A)の破線部に沿って塗布膜付き金属帯板を切断した図である。
【図3】本実施の形態の塗布膜付き金属帯板の製造工程の概略を示す図である。
【図4】(A)は本例の塗布膜付き金属帯板の表面の一部を撮影した光学顕微鏡写真であり、(B)は従来の塗布膜付き金属帯板の表面の一部を撮影した光学顕微鏡写真である。
【図5】凹凸間距離の平均値及び凸凸間距離の平均値を算出する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の塗布膜付き金属帯板の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1(A)は、本発明の塗布膜付き金属帯板を用いて形成されたシールドケース101の使用態様を示す図であり、図1(B)は、シールドケース101の底面を上にした概略斜視図である。また図2(A)は、本発明の実施の形態の塗布膜付き金属帯板の一部を示す図であり、図2(B)は、図2の破線部に沿って塗布膜付き金属帯板を切断した図である。図3は、本実施の形態の塗布膜付き金属帯板を製造する装置の概略図である。図1に示すように、シールドケース101は、内面に絶縁樹脂層102を備えている。この絶縁樹脂膜102は、シールドケース101の内部に配置される電子部品とシールドケースとの短絡を防止するものである。シールドケース101は、回路基板103の上に形成された配線パターン104上に半田付け接続されている。このようなシールドケース101を製造する際に、図2に示す塗布膜付き金属帯板が使用される。
【0014】
図2に示す本実施の形態の塗布膜付き金属帯板1は、金属帯板3と金属帯板3の表面に形成された塗布膜5とから構成されている。金属帯板3には、長尺状のステンレス板(SUS304−H材、厚み0.2mm、幅38mm)を用いる。金属帯板としては、このようなステンレス板の代わりに、鋼板、銅板または銅合金板等の金属板を用いることができる。塗布膜5には、熱硬化性の絶縁樹脂塗料(エポキシ系プレコート用塗料)を用いる。
【0015】
塗布膜付き金属帯板1は、以下の工程により製造する。図3に示すように、クリーンルーム7内で、予め洗浄された金属帯板3が巻き取られた巻き出しロール9から金属帯板3を引き出す。引き出された金属帯板3は、入側ブライドル11(ゴミ取り部13を含む)を通過させて金属帯板3に加わる張力を制御し、金属帯板3の幅方向への揺れ幅を小さくする。印刷部15は、通過する金属帯板3の表面に熱硬化性の絶縁樹脂塗料を印刷する。印刷部15では、筒状の金属箔メッシュをスクリーンとするロータリスクリーン印刷技術を用いて絶縁樹脂塗料を金属帯板3上に塗布(または塗装)する。絶縁樹脂塗料の塗布量は、後述する乾燥後の塗布膜5の幅寸法が7.8mmになるように制御されている。なお、入側ブライドル11と印刷部15との間には、図示しない端部位置制御装置即ちEPC(Edge Position Control)装置が設置されている。このEPC装置により、金属帯板の幅方向の位置を検出し、検出値に基づくフィードバック制御により入側ブライドル11を制御することにより、金属帯板に対する塗布膜の形成位置(塗料の印刷位置)の精度が維持される。
【0016】
絶縁樹脂塗料が印刷された金属帯板3は、乾燥炉17で加熱され、塗布膜5が乾燥する。乾燥炉17では、加熱温度250℃〜280℃で50sec〜60sec加熱する乾燥条件となっている。乾燥炉17を通過した金属帯板3は、乾燥炉17に隣接する冷却部19を通過して金属帯板3が冷却される。金属帯板3が冷却部19を通過した段階で、金属帯板3の長手方向LDに連続して延びる塗布膜5を備えた塗布膜付き金属帯板1が完成する。塗布膜5が形成された金属帯板3は出側ブライドル21を通って巻き取りロール23に巻き取られる。このようにして形成された、塗布膜5の厚みは、印刷部15で使用するスクリーンの厚みとメッシュの大きさ、及び、乾燥による揮発溶剤の量により定まる。例えば、目標の厚みが6μmの場合には、±2μmまでが許容範囲となる。
【0017】
なお、本例の塗布膜付き金属帯板1では、1枚の金属帯板3に対して1本の塗布膜5が形成されている。しかしながら、1枚の金属帯板に対して複数本の塗布膜を幅方向に間隔をあけて形成しても好い。また、複数本の塗布膜が形成される金属帯板の表面に予め分割溝を設けておき、塗布膜付き金属帯板の加工時に、この溝に沿って塗布膜付き金属帯板を分割してもよい。
【0018】
図2に示すように、製造した塗布膜付き金属帯板1は、塗布膜5の長手方向LDと直交する幅方向WDの両縁部5A,5Bが、金属帯板3の幅方向WDの両縁部3A,3Bよりも内側に位置するように金属帯板3上に形成される。言い換えると、塗布膜5は、金属帯板3の両端部3A,3Bの表面に露出部Eを構成するように金属帯板3上に形成される。
【0019】
そして、図4(A)に示すように、塗布膜5の両縁部5A,5Bは、複数の凸部25と複数の凹部27とが長手方向に交互に並んで形成される凹凸状縁部29により構成されている。この凹凸状縁部29は、金属帯板3の幅方向WDに向かって凸となる凸部25と金属帯板3の幅方向WDに向かって凹となる凹部27とが長手方向LDに向かって交互に現れるように構成されている。凸部25は、金属帯板3の両端部3A,3B側に凸部25の頂点が位置するように形成される。一方、凹部27は、金属帯板3の両端部3A,3Bの中間に位置する中心部3C側に凹部27の底点が位置するように形成される。図4(A)に示すように凹凸状縁部29は、金属帯板3の長手方向LDに不規則に蛇行しながら延びて、金属帯板3の表面の露出部Eと塗布膜5との境界線を構成している。
【0020】
このような構造の塗布膜付き金属帯板1は、図2(A)に示す2本の波線BL1,BL2に沿って切断すると、図2(B)に示す塗布膜付き金属帯板1の断片Fとなる。この断片Fをプレス加工して図1に示すようなシールドケースが形成される。
【0021】
以下、本実施の形態の塗布膜付き金属帯板1の凹凸状縁部29の構造と塗布膜付き金属帯板1の性能について説明する。本実施の形態では、塗布膜5の両端部5A,5Bを構成する凹凸状縁部29の構造を二種類の評価方法に基づく測定結果により特定する。具体的には、第1の評価方法として、実施例と比較例において、凹凸状縁部29の凸部25の極大点(凸部25の頂点)と凹部27の極小点(凹部27の底点)との間の距離D1〜Dn(nは2以上の整数)の平均値(以下、凹凸間距離の平均値という)を対比する。本実施の形態では、塗布膜5の端部5Aを光学顕微鏡で200倍に拡大して撮影した顕微鏡写真[図4(A)]上で、金属帯板3の長手方向LDに沿って測った任意の距離範囲(5cmの単位長さ範囲)で凸部と凹部の数を目視で数えて、数えた凸部と凹部の数を用いて凹凸間距離の平均値を算出した。本実施の形態では、単位長さ範囲あたり、凸部、凹部ともに6個となった。凹凸間距離の平均値は、図5に示すように、1番目の凸部251の極大点MA1と1番目の凹部271の極小点MI1との幅方向WDの距離D1、2番目の凸部252の極大点MA2と2番目の凹部272の極小点MI2との幅方向WDの距離D2、3番目の凸部253の極大点MA3と3番目の凹部273の極小点MI3との幅方向WDの距離D3、・・・、n−1番目の凸部25n−1の極大点MAn−1とn−1番目の凹部27n−1の極小点MIn−1との幅方向WDの距離Dn−1及びn番目の凸部25nの極大点MAnとn番目の凹部27nの極小点MInとの幅方向WDの距離Dnの合計値をnで除した(D1+D2+D3+・・・+Dn−1+Dn)/nとして算出した。
【0022】
また、第2の評価方法として、実施例と比較例において、凹凸状縁部29の隣りあう2つの凸部の極大点間の距離の平均値(以下、凸凸間距離の平均値という)を対比する。第2の評価方法でも、第1の評価方法と同じ条件で、凸部と凹部の数を目視で数えて、数えた凸部と凹部の数を用いて凸凸間距離の平均値を算出する。本実施の形態では、単位長さあたりの凸部は上述のとおり6個であった。隣りあう凸部間の距離の平均値は、図4(B)に示すように、1番目の凸部251の極大点MA1と2番目の凸部252の極大点MA2との長手方向LDの距離I1、2番目の凸部252の極大点MA2と3番目の凸部253の極大点MA3との長手方向LDの距離I2、・・・、及びn−1番目の凸部25n−1の極大点MAn−1とn番目の凸部25nの極大点MAnとの長手方向LDの距離In−1の合計値をn−1で除した(I1+I2+・・・+In−1)/n−1として算出した。
【0023】
これら第1及び第2の評価方法では、ともに以下のスクラッチ試験を行った。具体的には、塗布膜付き金属帯板1を、煮沸前と煮沸後の状態で、ダイヤモンド圧子を0.1N〜10Nの一定荷重をかけながら、塗布膜付き金属帯板1上の幅方向WDに移動させ、ダイヤモンド圧子が金属帯板3の露出部3Aから塗布膜5に移動するときに塗布膜5の剥離が生じる最小荷重を剥離開始荷重として塗布膜付き金属帯板1の耐剥離性を評価した。スクラッチ試験は、圧子先端半径が200μmのダイヤモンド圧子を1.00mm/sのスクラッチ速度で行った。スクラッチ試験は、各実施例及び比較例ごとに5回ずつ行い、5回のスクラッチ試験で得られた剥離開始荷重の平均値を算出した。なお、煮沸後の状態で行うスクラッチ試験では、環境劣化を考慮した塗布膜付き金属帯板1の耐剥離性を評価する。この場合の煮沸条件は、大気雰囲気中で加熱した蒸留水(水温97±2℃)に塗布膜付き金属帯板1を6h間浸漬する条件とした。
【0024】
塗布膜付き金属帯板1の耐剥離性の評価は、算出した凹凸間距離の平均値に対して、剥離開始荷重が4.0N以上であれば剥離性が良いものと判定し、4.0より小さければ剥離性が悪いものと判定した。そして煮沸前及び煮沸後ともに剥離開始荷重が4.0N以上のときは○(良好)、煮沸前及び煮沸後ともに剥離開始荷重が4.0Nより小さいときは×(不良)、煮沸前の剥離開始荷重のみが4.0N以上のときは△(やや不良)と評価した。
【表1】

【0025】
表1は、上述の第1の評価方法により、比較例1〜4及び実施例1〜6について、塗布膜の耐剥離性を評価した結果を示すものである。表1によれば、図4(B)に示す従来のフローコータ及びロールコータを用いた塗布膜付き金属帯板(比較例1及び比較例2)では、塗布膜の耐剥離性は×(不良)となった。これに対して、図(A)に示す本例の塗布膜付き金属帯板では、凹凸間距離の平均値が3.0μmより大きい条件(実施例1〜実施例6)のときに耐剥離性が○(良好)となった。なお、塗布膜付き金属帯板の塗布膜の凹凸間距離の平均値が3.0μm以下の条件(比較例3)では、耐剥離性が△(やや不良)となった。すなわち、本例の塗布膜付き金属帯板では、塗布膜の凹凸間距離の平均値が3.0μmより大きい値になるように塗布膜の両縁部の寸法を制御すると、塗布膜が金属帯板の表面から剥離しにくい塗布膜付き金属帯板を得ることができることを表1は示している。なお、凹凸間距離の平均値が100.0μm以上の条件(比較例4)は、耐剥離性は○(良好)であるものの、金属帯板に対する塗布膜の寸法精度が低下した。そのため、本例では、凹凸間距離の平均値の最適範囲を、3.0μmより大きくかつ100.0μmより小さい値とした。
【表2】

【0026】
表2は、上述の第2の評価方法により、比較例11〜13及び実施例11〜16について、塗布膜の耐剥離性を評価した結果を示すものである。なお、比較例11及び比較例12は、上述の比較例1及び2と同一である。表2によれば、従来のフローコータ及びロールコータを用いた塗布膜付き金属帯板(実施例11及び実施例12)では、塗布膜の耐剥離性は×(不良)となった。これに対して、本例の塗布膜付き金属帯板では、凸凸間距離の平均値が100μmより小さい条件(実施例11〜実施例16)ときに耐剥離性は○(良好)となった。なお、塗布膜付き金属帯板の塗布膜の凸凸間距離の平均値が100μm以上の条件(比較例13)では、耐剥離性が△(やや不良)となった。すなわち、本例の塗布膜付き金属帯板では、塗布膜の凸凸間距離の平均値が100μmより小さい値になるように塗布膜の両縁部の寸法を制御することによっても、塗布膜が金属帯板の表面から剥離しにくい塗布膜付き金属帯板を得ることができることを表2は示している。なお、本例のようにロータリスクリーン印刷技術を用いて金属帯板3上に塗布膜5を印刷する方法では、塗布膜の凸凸間距離の平均値(隣り合う凸部の極大点間の距離の平均値)が10μm以下の寸法になるように制御することはできない。したがって、本例では、凸凸間距離の平均値の最適範囲を、10.0μmより大きくかつ100.0μmより小さい値とした。
【0027】
これらの結果は、図4(A)及び図4(B)の顕微鏡写真からも概ね理解することができる。すなわち、図4(A)に示す本例の塗布膜付き金属帯板1では、塗布膜5の幅方向の端部が、金属帯板3の幅方向に向かって凸となる凸部25と金属帯板の幅方向に向かって凹となる凹部27とが長手方向に交互に現れる凹凸状縁部29を形成し、金属帯板3の長手方向に不規則に蛇行しながら延びる金属帯板3の表面の露出部Eと塗布膜との境界線を構成している。これに対して、図4(B)に示す従来の塗布膜付き金属帯板2では、本例のような形状寸法を示す凹凸状縁部は形成されていない。金属帯板4の表面の露出部と塗布膜6との間に金属帯板4の長手方向に緩やかに蛇行して延びているもののほぼ直線状の境界線を構成している。本例の塗布膜付き金属帯板1と従来の塗布膜付き金属帯板2との耐剥離性の差は、この塗布膜の端部(または両端部)の形状の相違によるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、塗布膜の両端部の寸法を、凹凸状縁部の凸部の極大点と凹部の極小点との間の距離の平均値が3μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法にし、隣りあう2つの凸部の極大点間の距離の平均値が10μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法にすることにより、塗布膜が金属帯板の表面からさらに剥離しにくい塗布膜付き金属帯板を得ることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 塗布膜付き金属帯板
3 金属帯板
3A,3B 金属帯板の両端部
5 塗布膜
5A,3B 塗布膜の両端部
25 凸部
27 凹部
29 凹凸状縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯板の表面に該金属帯板の長手方向に連続して延びる塗布膜が印刷により形成されており、前記塗布膜の前記長手方向と直交する幅方向の両縁部が、前記金属帯板の前記幅方向の両縁部よりも内側に位置するように前記塗布膜が形成されている塗布膜付き金属帯板であって、
前記塗布膜の前記両縁部は、それぞれ前記幅方向に凸となる凸部と前記幅方向に凹となる凹部とが前記長手方向に交互に現れる凹凸状縁部からなり、
前記凹凸状縁部の前記凸部の極大点と前記凹部の極小点との間の距離の平均値が、3μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法を有し、
隣りあう2つの前記凸部の前記極大点間の距離の平均値が10μmより大きくかつ100μmよりも小さい寸法を有する塗布膜付き金属帯板。
【請求項2】
前記金属帯板は、鋼板、ステンレス板、銅板または銅合金板であり、前記塗布膜が熱硬化性の絶縁樹脂塗料により形成されている請求項1に記載の塗布膜付き金属帯板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−31172(P2011−31172A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179923(P2009−179923)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(592197706)株式会社特殊金属エクセル (9)
【Fターム(参考)】