説明

塗布装置及び塗布方法

【課題】塗布対象領域に対する液体の塗布を良好に行うこと。
【解決手段】塗布装置100は、キャリッジ105をレール103に沿って移動させ、ノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121に液体120を塗布する際に、配置調整部110を作動させて、レール103固有の歪みに起因するキャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すことができるので、基板121に対してノズルヘッド106を主走査方向へ直線的に移動させることができる。そして、主走査方向に延在するバンク13に沿うように、ノズルヘッド106を主走査方向に移動させることで、塗布対象領域R3に対してずれたりすることなく、液体120を好適に塗布することを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EL(Electro Luminescence)パネルに用いられるEL素子の製造プロセスにおけるEL材料層を成膜する工程において、ガラス基板上に設けられた透明電極(陽極)を囲むように形成された隔壁間の溝に、ノズルを通じてEL材料液を流し込んで塗布するノズルプリント方式の技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、塗布したEL材料液を乾燥させて成膜したEL材料層の上に対向電極(陰極)を設けることでEL素子が製造され、このEL材料液が塗布された塗布領域がELパネルの発光領域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−75640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の場合、EL材料液を吐出するノズルは、ガイド部材に沿って移動する保持部材に備えられているので、ガイド部材に歪みがあると保持部材が移動する際に振動が生じてしまい、例えば隔壁間の溝内に設けられた塗布対象領域に対してノズルの位置がぶれてしまうことがある。そして、塗布対象領域に対する適正な位置からずれたノズルからEL材料液が塗布されてしまうと、EL材料層の成膜不良が発生してしまうことがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題は、塗布対象領域に対する液体の塗布を良好に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明の一の態様は、塗布装置であって、
液体を吐出するノズル孔を有する吐出部と、
第1の方向に沿って延在された、前記液体を塗布する塗布対象領域を有する基板が載置される支持台と、
前記吐出部が前記基板に対して前記第1の方向に沿って移動する際に前記第1の方向と直交する第2の方向への前記吐出部の変位を検出する変位検出部と、
前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させる配置調整部と、
前記変位検出部により検出された前記変位に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させる制御部と、
を備えることを特徴としている。
好ましくは、前記制御部は、前記ノズル孔から前記液体を吐出させながら前記吐出部を前記基板に対して前記第1の方向に沿って移動させて前記基板の前記塗布対象領域に前記液体を塗布する際に、前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させる。
また、好ましくは、前記変位検出部は、前記吐出部の前記変位に対応する振動強度を検出し、前記制御部は、前記配置調整部を制御して、前記第2の方向における前記検出された前記振動強度と大きさが同じで逆位相の方向に前記吐出部を移動させること、または、前記第2の方向における前記検出された前記振動強度と大きさが同じで同じ方向に前記支持台を移動させること、によって、前記基板に対する前記吐出部の前記変位を打ち消す。
また、好ましくは、前記基板の前記塗布対象領域を撮像する撮像部を備え、前記制御部は、前記配置調整部を制御して、前記撮像部により撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記吐出部の前記ノズル孔を、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させる。
また、好ましくは、前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記塗布対象領域の前記第2の方向の少なくとも一方の縁に沿った、前記第1の方向に延在する基準線の、前記第2の方向の歪み量を抽出し、抽出した前記基準線の前記歪み量に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させる。
また、好ましくは、前記制御部は、前記塗布対象領域の前記第2の方向の両側の縁に沿った2つの前記基準線を抽出し、該2つの基準線から、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央に沿った、前記第1の方向に延在する中心線を抽出し、抽出した前記中心線に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記ノズル孔の位置を前記中央線の位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させる。
また、好ましくは、前記撮像部は、前記吐出部とともに移動可能に備えられている。
また、好ましくは、前記制御部は、前記変位検出部が検出した前記変位に関する変位データを記憶するメモリを備え、該制御部は、前記メモリに記憶された前記変位データに基づいて、前記配置調整部を制御する。
【0007】
また、本発明の他の態様は、塗布方法であって、
支持台に、第1の方向に沿って延在された塗布対象領域を有する基板を載置する載置ステップと、
前記基板に対して、液体を吐出するノズル孔を有する吐出部を前記第1の方向に沿って移動させて、前記吐出部が前記1の方向に沿って移動する際の前記第1の方向と直交する第2の方向への前記吐出部の変位を検出するステップと、
前記吐出部を前記塗布対象領域に沿って移動させて、前記基板の前記塗布対象領域へ前記液体を塗布するステップと、
を含み、
前記液体を塗布するステップは、前記吐出部を前記第1の方向に沿って移動させるとともに、前記変位検出ステップによって検出された前記第2の方向における前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させるステップを含むことを特徴としている。
好ましくは、前記吐出部の変位を検出するステップは、前記吐出部を前記第1の方向に複数回往復移動させて、前記吐出部が前記1の方向に沿って移動する際の前記第2の方向への前記吐出部の変位量の平均値を前記変位として検出するステップを含む。
また、好ましくは、前記基板の前記塗布対象領域を撮像するステップと、前記撮像するステップにより撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記吐出部の前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、を含む。
また、好ましくは、前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように移動させるステップは、前記塗布対象領域の、前記第2の方向の少なくとも一方の縁に沿った、前記第1の方向に延在する基準線を抽出するステップと、前記抽出された前記基準線における前記第2の方向の歪み量に基づいて、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、を含む。
また、好ましくは、前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように移動させるステップは、前記塗布対象領域の前記第2の方向の両側の縁に沿った2つの前記基準線を抽出し、該2つの基準線から、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央に沿った、前記第1の方向に延在する中心線を抽出するステップと、前記吐出部の前記ノズル孔を前記中央線に沿った位置に移動させるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布対象領域に対する液体の塗布を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】塗布装置を示す概略図である。
【図2】ノズルヘッドを示す断面図である。
【図3】待機位置の密閉キャップ等の脱泡部を示す断面図である。
【図4】ノズルヘッドおよび配置調整部を示す下面図である。
【図5】ノズルヘッドの変位を打ち消す配置調整部の作動を示す説明図である。
【図6】ノズルヘッドの変位を打ち消す配置調整部の作動を示す説明図である。
【図7】塗布装置のノズルヘッドの移動に伴う液体の塗布パターンを示す説明図である。
【図8】塗布装置の変形例を示す概略図である。
【図9】撮像部によるバンクの歪みの検出に関する説明図(a)と、撮像部の設置位置の変形例(b)(c)である。
【図10】ELパネルの画素の配置構成を示す平面図である。
【図11】ELパネルの概略構成を示す平面図である。
【図12】ELパネルの1画素に相当する回路を示した回路図である。
【図13】ELパネルの1画素を示した平面図である。
【図14】図12のXIII−XIII線に沿った面の矢視断面図である。
【図15】ELパネルのバンク間に露出する画素電極を示す断面図である。
【図16】表示パネルにELパネルが適用された携帯電話機の一例を示す正面図である。
【図17】表示パネルにELパネルが適用されたデジタルカメラの一例を示す正面側斜視図(a)と、後面側斜視図(b)である。
【図18】表示パネルにELパネルが適用されたパーソナルコンピュータの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
塗布装置は、例えば、発光パネルである有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルの有機層(例えば、正孔注入層、発光層、電子注入層等)、有機トランジスタの有機層、液晶ディスプレイのカラーフィルタの有機発色層(例えば、有機材料を含むRGBの発色層、有機材料を含むブラックマトリックス等)、各種電子デバイスの有機導電層(例えば、有機材料を含む導電性配線等)、その他の有機層、あるいは溶液中に金属微粒子等の無機材料を分散、または溶解させた材料を含む機能層を形成するために用いられるものである。
【0012】
〔1〕塗布装置の構成
塗布装置100は、図1に示すように、液体120が貯留される液体タンク108と、液体120を吐出するノズルを有するノズルヘッド(吐出部)106と、液体タンク108からノズルヘッド106にまで配管された供給管107と、液体タンク108内の液体120を、供給管107を通じてノズルヘッド106に送り出す供給器116と、液体120を塗布する対象物である基板121が載置される支持台としてのワークテーブル101と、ワークテーブル101上の基板121に対してノズルヘッド106を所定の方向(第1の方向)に移動させるノズル移動部としてのキャリッジ105と、ワークテーブル101をノズルヘッド106の移動方向と交差する方向に移動させる移動装置102と、ノズルヘッド106が移動することに伴うノズルヘッド106の変位を検出する変位検出部111と、ノズルヘッド106を走査方向と交差する方向(第2の方向)に移動させて基板121に対するノズルヘッド106の配置を調整する配置調整部110と、装置の各部を制御する制御部119等を備えている。このノズルヘッド106の移動方向を主走査方向とする。
【0013】
図1に示すように、移動装置102上にワークテーブル101が搭載されており、そのワークテーブル101上に基板121が載置される。
移動装置102は、ワークテーブル101及びそれに載置された基板121を直線方向に移動させるものである。例えば、移動装置102は、ワークテーブル101を案内するレールと、レールに沿ってワークテーブル101を駆動する駆動機構とを有する。
この移動装置102は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102を間欠的に駆動し、移動装置102がワークテーブル101及び基板121を間欠的に移動させる。つまり、移動装置102は、制御部119の制御によって、ワークテーブル101及び基板121の移動及び停止を繰り返すように動作する。
このワークテーブル101の移動方向を副走査方向とする。
【0014】
ワークテーブル101の上方には、案内部としてのレール103が機枠104に支持されて設けられている。このレール103は、上から見て、ワークテーブル101の移動方向に対して直交する向きに設けられている。レール103には、キャリッジ105が搭載されており、そのキャリッジ105にノズルヘッド106が搭載されている。キャリッジ105及びノズルヘッド106は、レール103に沿って案内され、レール103に沿って移動可能に設けられている。
キャリッジ105は、ワークテーブル101の移動方向と直交する主走査方向にノズルヘッド106を往復移動させるものである。例えば、キャリッジ105には、モータ等の駆動源が内蔵されており、キャリッジ105はそのモータ駆動によりレール103に沿って移動する。
このキャリッジ105は、制御部119によって制御される。制御部119が移動装置102の間欠的な停止に合わせてキャリッジ105を駆動し、移動装置102の停止中にキャリッジ105が移動する。
【0015】
ノズルヘッド106は、その先端が下に向くようにしてキャリッジ105に搭載されている。
図2に示すように、このノズルヘッド106においては、略円筒状のノズルヘッド本体部161の上端に設けられた注入口162に供給管107が接続されている。ノズルヘッド本体部161の下端に底面165が設けられ、底面165の中央に開口166が形成されている。
ノズルヘッド本体部161の内部には、液体120が溜まる空間163が形成されており、その空間163の下部にノズルプレート167が配設され、開口166がノズルプレート167によって閉塞されている。そのノズルプレート167の中央であって開口166に対応する位置に微小なノズル孔(ノズル)168が形成されている。ノズル孔168の径は、10〜20μmである。このノズル孔168から液体120が吐出される。
また、ノズルヘッド本体部161内の中程には、液体中のパーティクルを除くためのフィルタ164が配設されている。このフィルタ164によって、空間163が注入口162側と開口166側に仕切られている。
【0016】
ノズルヘッド106の側面には、ノズルヘッド106がレール103に沿って主走査方向(例えば、X軸方向、第1の方向)に移動することに伴う、その主走査方向と直交する副走査方向(例えば、Y軸方向、第2の方向)へのノズルヘッド106の変位を検出する変位検出部111が備えられている。
変位検出部111は、例えば、ピエゾ素子を用いたフォースセンサ、ジャイロセンサなどであり、ノズルヘッド106がレール103に沿って主走査方向に移動する際に、主走査方向と直交する副走査方向へノズルヘッド106がぶれたときの、ノズルヘッド106の副走査方向の変位を検出する。
ノズルヘッド106は、レール103に沿って直線的に移動することが好ましいのであるが、レール103に凹凸などの歪みがある場合、そのレール103固有の歪みに応じてキャリッジ105の移動に軋みやがたつきが生じることがある。変位検出部111は、そのキャリッジ105の軋みやがたつきがノズルヘッド106に伝達されてノズルヘッド106が振動したときに、その振動に伴うノズルヘッド106の変位を検出するようになっている。
この変位検出部111は、制御部119によって制御される。
【0017】
また、ノズルヘッド106は、配置調整部110を介してキャリッジ105に搭載されている。
配置調整部110は、図2に示すように、例えば、キャリッジ105に固定される上面部110aと、ノズルヘッド106が取り付けられる下面部110cと、上面部110aと下面部110cとを副走査方向に相対的に移動させる伸縮部110bを備えている。
配置調整部110は、例えば、精密リニアステージ、ピエゾステージ、静電ステージなどであり、所定の駆動信号が入力されることに伴い、伸縮部110bが主走査方向(X軸方向)と直交する水平方向(Y軸方向)に伸縮することによって、下面部110cに配設されたノズルヘッド106を主走査方向(X軸方向)と直交する副走査方向(Y軸方向)に移動させる。そして、配置調整部110は、ノズルヘッド106がキャリッジ105によって主走査方向に移動される際に、ノズルヘッド106を副走査方向に移動させて、基板121に対するノズルヘッド106の配置を調整する。
特に、配置調整部110は、変位検出部111により検出されたノズルヘッド106の変位に応じて、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消す方向に、ノズルヘッド106を移動させるようになっている。
この配置調整部110は、制御部119によって制御される。
【0018】
供給管107は、ノズルヘッド106から液体タンク108にかけて配管されており、供給管107の一端がノズルヘッド106に接続され、供給管107の他端が液体タンク108に接続されている。
供給管107としては、液体タンク108内に貯留された液体120に対して耐性のある材料からなるチューブを用いる。具体的には、供給管107は、シリコーン樹脂からなるチューブである。供給管107の内径は1〜7mmである。供給管107の内径は、液体タンク108からノズルヘッド106にかけて一様であってもよいし、不均一であってもよい。例えば、供給管107の内径は、液体タンク108寄りの部分で大きく(例えば、約7mm)、ノズルヘッド106寄りの部分で小さい(例えば、約1mm)。
【0019】
液体タンク108内には、液体120が貯留されている。液体120は、例えば、有機系の液体、水性タイプの液体、エマルジョンタイプの液体などがある。液体120は、塗布装置100の用途に応じて適宜選択される。
この液体タンク108には、供給器116が設けられている。この供給器116は、液体タンク108内の液体120を、供給管107を通じてノズルヘッド106に送り出すものであり、より好ましくは、送り出す液体120の圧力を一定に保った状態で液体120を供給管107に圧送するものである。
供給器116は、例えば、ポンプであり、具体的には、ピストン式圧送ポンプ又はガス式圧送ポンプである。ピストン式圧送ポンプとは、シリンジ状の液体タンク108内に可動式ピストンが収容され、可動式ピストンがモータ、エアシリンダ又はソレノイド等の駆動源によって押し込まれることで、液体タンク108内の液体120を供給管107に押し出すものである。ガス式圧送ポンプとは、密閉された液体タンク108内にガス(主に不活性ガス(例えば、窒素ガス))を送り込んで液体タンク108内の液面を加圧して、液体タンク108内の液体120を供給管107に押し出すものである。勿論、ピストン式圧送ポンプ、ガス式圧送ポンプ以外の種類のポンプを供給器116に用いてもよい。
この供給器116は、制御部119によって制御される。制御部119がキャリッジ105の移動に合わせて供給器116を駆動し、供給器116がキャリッジ105の移動中に供給動作をする。
【0020】
供給管107の中途部には、マスフローコントローラ109が設けられている。マスフローコントローラ109は、供給管107を流れる液体120の流量を計測したり、供給管107を流れる液体120の流量を制御したりする。マスフローコントローラ109によって計測された流量は、制御部119に出力される。
また、制御部119は、マスフローコントローラ109による流量を設定する(以下、設定された流量を設定流量という。)。マスフローコントローラ109が、供給管107を流れる液体120の流量をその設定流量に維持するよう定流量制御をする。
【0021】
ワークテーブル101の近傍であって、レール103の下方であるノズルヘッド106の待機位置に、密閉キャップ150が配設されている。
図3に示すように、密閉キャップ150にはドレイン管151の一端が取り付けられている。密閉キャップ150でノズルヘッド106の下端を塞ぐことによって、ノズルヘッド106のノズル孔168がドレイン管151に通じる。そのドレイン管151の他端が冷却トラップ130に接続されている。
冷却トラップ130は、外容器131と、外容器131内の冷媒133と、外容器131の内側に収容されて冷媒133に浸けられた密閉容器132等を備えている。この密閉容器132の上面を貫通して、ドレイン管151の他端が備えられている。また、バキュームポンプ(減圧装置)140に一端が接続された吸引管152の他端が密閉容器132の上面を貫通して備えられている。密閉容器132内において、吸引管152の端部がドレイン管151の端部よりも高い位置にある。
そして、ノズルヘッド106が基板121に液体120を塗布しない待機状態にあるときや、ノズルヘッド106内に滞留する気泡を除去する際に、ノズルヘッド106が密閉キャップ150と連結するように、キャリッジ105によってノズルヘッド106が密閉キャップ150に移動される。
この密閉キャップ150とノズルヘッド106の下端が密着した状態でバキュームポンプ140が作動して吸引を行うことにより、液体タンク108内の液体120をノズルヘッド106側に引き寄せたり、ノズルヘッド106から垂れ流される液体120を冷却トラップ130で受けたりすることができる。また、バキュームポンプ140が吸引を行うことにより、ノズルヘッド106内に滞留する気泡を吸い出して除去することができる。
【0022】
次に、変位検出部111により検出されたノズルヘッド106の副走査方向への変位に応じて、配置調整部110がノズルヘッド106を移動させることによって、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消す処理について説明する。
【0023】
ノズルヘッド106は、レール103に沿って主走査方向へ直線的に移動することが好ましく、基板121における液体121を塗布するべき塗布対象領域の走査方向に直交する幅方向の概ね中央の位置に液体120を吐出して、塗布することが好ましいのであるが、そのレール103固有の歪みに応じてキャリッジ105の移動に軋みやがたつきが生じることがある。そのキャリッジ105の軋みやがたつきがノズルヘッド106に伝達されることでノズルヘッド106が振動してしまい、ノズルヘッド106が副走査方向へずれる変位が生じてしまうことがある。
ノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121に液体120を塗布する際に、ノズルヘッド106が副走査方向へずれる変位が生じてしまうと、基板121の塗布対象領域の幅方向に対する液体120の塗布量が不均一になったり、塗布領域に対応する位置からノズルヘッド106がずれて、塗布対象領域からずれた箇所に液体121が塗布されてしまったりすることがある。
そのようなトラブルを防ぎ、液体120の塗布を適正に行うために、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消す必要がある。
【0024】
前述した変位検出部111は、検出したノズルヘッド106の変位に対応する振動強度を電気信号に変換し、検出した変位の大きさや向きを表す変位量信号を制御部119に出力する。
例えば、図4に示すように、キャリッジ105をレール103に沿ってX軸方向に移動させて、ノズルヘッド106をレール103に沿う主走査方向に1往復させる際に、変位検出部111は、ノズルヘッド106が主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)へぶれることによって生じる振動の振動強度を検出し、振動強度に関する変位量信号の波形データを制御部119がメモリ118に記憶する。変位検出部111は、キャリッジ105がレール103に沿って複数回往復して検出した変位の平均値をとるようにしてもよい。
なお、変位量信号の値がプラスである場合、例えば、ノズルヘッド106の進行方向右向きの変位を表し、変位量信号の値がマイナスである場合、例えば、ノズルヘッド106の進行方向左向きの変位を表す。
この変位検出部111によって検出された振動強度はレール103の凹凸などに由来するレール103固有の歪みも表す。つまり、レール103の歪みが大きい程、変位検出部111によって検出される振動が大きくなるので、振動強度および変位量信号とレール103の歪みは相関関係を持つ。そして、レール103固有の歪みに相関する振動強度およびこれに対応する変位量信号は、レール103の長さ方向に対して対応付けることができる
【0025】
制御部119は、変位検出部111によって検出されて、メモリ118に記憶された振動強度に関する変位量信号に応じて、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消す方向にノズルヘッド106を移動させるための駆動信号を生成する。例えば、制御部119は、変位量信号と同じレベルの大きさであって正負が逆となる駆動信号を生成する。つまり、駆動信号は、変位量信号を逆位相に変換した信号である。この生成した駆動信号に関する波形データもメモリ118に記憶される。
制御部119は、生成した駆動信号を配置調整部110に出力して、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消すように、配置調整部110を作動させる処理を実行する。
【0026】
具体的には、キャリッジ105の移動に応じて、制御部119が駆動信号を出力して配置調整部110を作動させることによって、図5に示すように、レール103の歪みなどによりキャリッジ105が図中Y軸方向の上方向にぶれて、ノズルヘッド106が図中の上方向に変位してしまう位置において、配置調整部110が図中Y軸方向の下方向への作動を行うことで、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消す。同様に、レール103の歪みなどにより、キャリッジ105が図中Y軸方向の下方向にぶれて、ノズルヘッド106が図中の下方向に変位してしまう位置において、配置調整部110が図中Y軸方向の上方向への作動を行うことで、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消す。
【0027】
そして、制御部119が、キャリッジ105がノズルヘッド106を主走査方向に移動させる過程で、制御部119が駆動信号に基づいて配置調整部110を連続的に作動することによって、図6に示すように、レール103固有の歪みに伴うノズルヘッド106の変位を、配置調整部110の作動によって打ち消すことができ、基板121に対してノズルヘッド106を直線的に移動させることが可能になる。
【0028】
また、制御部119が、変位検出部111によって検出された振動強度に対応した変位量信号に応じて駆動信号を生成し、その駆動信号に基づいてキャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消す処理は、配置調整部110を作動させることに限らない。
例えば、移動装置102を配置調整部として機能させて、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消す処理を行うことが可能である。
この場合、制御部119は、変位検出部111によって検出されて、メモリ118に記憶された振動強度に対応する変位量信号に応じて、その変位量信号と同じレベルの大きさであって正負が同じ駆動信号を生成する。つまり、この駆動信号は、変位量信号と同位相の信号である。
制御部119は、その駆動信号を移動装置102に出力して、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消すように、移動装置102を作動させる処理を実行する。そして、ノズルヘッド106の変位と同じ変位量で同じ方向(副走査方向)にワークテーブル101を移動させるように移動装置102を作動させる。こうして、ワークテーブル101をノズルヘッド106の変位に合わせて副走査方向へ移動させることで、ワークテーブル101上の基板121がノズルヘッド106の変位に同調することになるので、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の変位を打ち消すことができる。
【0029】
なお、制御部119が変位量信号に応じて駆動信号を生成し、その駆動信号を配置調整部110に出力する機能は、論理回路により実現してもよいし、プログラムの実行によって実現してもよい。
【0030】
なお、上記したキャリッジ105に搭載されているノズルヘッド106は1つであったが、複数のノズルヘッド106がキャリッジ105に搭載されていてもよい。この場合、これらのノズルヘッド106は、副走査方向に沿って配列された状態でキャリッジ105に搭載されている。また、キャリッジ105に複数のノズルヘッド106が搭載されている場合、供給管107、液体タンク108、マスフローコントローラ109は、それぞれのノズルヘッド106に対して設けられている。
〔2〕塗布装置の動作及び塗布方法
以下、塗布装置100の動作及びこの塗布装置100を用いた塗布方法等について説明する。
【0031】
まず、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120を吐出しない状態で、制御部119がキャリッジ105を作動させて、ノズルヘッド106とともにキャリッジ105をレール103に沿って主走査方向に1往復させる。ノズルヘッド106がレール103に沿って1往復する際に、変位検出部111は、ノズルヘッド106が主走査方向に移動することに伴う副走査方向へのノズルヘッド106の変位を検出する。変位検出部111は、レール103固有の歪みに起因する副走査方向へのノズルヘッド106の変位を検出し、検出したノズルヘッド106の変位に関する振動強度および変位量信号を制御部119に出力して、振動強度および変位量信号に対応する波形データをメモリ118に格納する。また、制御部119は、振動強度および変位量信号に応じた駆動信号を生成して、その駆動信号に関する波形データをメモリ118に格納する。なお、上記においてはキャリッジ105をレール103に沿って主走査方向に1往復させるとしたが、これに限らず、キャリッジ105をレール103に沿って主走査方向に複数回往復させ、変位検出部111は、複数回の往復によって検出した変位の平均値をとるようにしてもよい。
【0032】
次いで、液体タンク108内に液体120を充填する。液体タンク108が取り替え式の場合には、液体120が充填された液体タンク108を供給管107に組み付け、液体タンク108に供給器116を組み付ける。なお、この時点では、供給管107は空の状態であり、液体120が供給管107内に充填されていない。
【0033】
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させて、ノズルヘッド106を待機位置に移動させ、ノズルヘッド106の下端を密閉キャップ150で塞ぐ。そして、制御部119が、バキュームポンプ140を作動させて、供給管107およびノズルヘッド106内の減圧を行いつつ、供給器116を作動させることにより、液体タンク108内の液体120を供給管107内に送り出し、ノズルヘッド106内にまで送給する。
更に、制御部119が、マスフローコントローラ109の設定流量を設定し、ノズルヘッド106から吐出する液体120の量を調整する。
【0034】
次に、基板121をワークテーブル101の上に載置する。
この基板121は、図7に示すように、基板121から切り出されてELパネル(1)となる部分が配されている領域であり、液体120を塗布すべき塗布対象領域であるパネル領域R1と、パネル領域R1間であって液体120を塗布しなくてもよい非対象領域であるマージン領域R2とが、交互に複数並ぶ形体をとっている。
【0035】
次に、制御部119が、供給器116及びキャリッジ105を作動させる。なお、液体タンク108内の液体120を供給管107内に送り出す供給器116は、引き続き作動することになる。
【0036】
制御部119がキャリッジ105を作動させて、キャリッジ105とともにノズルヘッド106が主走査方向に移動する。その際、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120がノズルヘッド106へと送り出され、供給管107を流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。そのため、キャリッジ105の移動中において、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、吐出された液体120が基板121上に線状に塗布され、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、副走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。その後、移動装置102が停止する。
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させて、キャリッジ105とともにノズルヘッド106が主走査方向を逆方向に移動する。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、制御部119がキャリッジ105を停止する。
次に、制御部119が移動装置102を制御して、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に所定距離だけ移動される。この際も、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そのため、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0037】
以後、制御部119がキャリッジ105と移動装置102の制御、および供給器116とマスフローコントローラ109の制御を繰り返す。それにより、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されながらキャリッジ105が移動範囲の端から端まで移動することが繰り返されるとともに、キャリッジ105が端に移動した際に移動装置102によってワークテーブル101及び基板121が所定距離だけ副走査方向に移動される。その結果、図7に示すように、ノズルヘッド106から吐出された液体120によって、葛折り状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0038】
ところで、制御部119は、キャリッジ105、移動装置102、供給器116、マスフローコントローラ109等の制御を繰り返して、基板121上に液体120の塗布を行っている際に、予め生成した駆動信号を配置調整部110に出力している。
つまり、制御部119がキャリッジ105を作動させ、キャリッジ105とともにノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121に液体120を塗布する際に、制御部119は駆動信号に基づき、配置調整部110を作動させている。
そして、駆動信号に基づき作動する配置調整部110が、ノズルヘッド106を副走査方向へ移動させる配置の調整を行い、レール103固有の歪みに起因するキャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消している。配置調整部110が、キャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すことで、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消している。
こうしてキャリッジ105がノズルヘッド106を主走査方向に移動させる際に、配置調整部110が作動することによって、ノズルヘッド106の副走査方向への変位が打ち消されて、基板121に対してノズルヘッド106が主走査方向へ直線的に移動することが可能になる。
副走査方向への変位が打ち消されたノズルヘッド106が基板121に対し相対的に主走査方向へ直線的に移動することで、ノズルヘッド106から吐出された液体120が基板121上に直線的に塗布されて、主走査方向に沿った直線状の有機層パターンが基板121上に形成されている。
【0039】
また、制御部119は、液体120の塗布を行って移動中のノズルヘッド106の現在位置を把握している。これは、基板121のサイズ、キャリッジ105と移動装置102の移動範囲および移動速度に基づいて、制御部119が所定の演算処理を行うことによって、基板121に対するノズルヘッド106の現在位置を特定することが可能になっている。また、制御部119は、その現在位置から所定時間後にノズルヘッド106が位置する箇所を同様の演算処理を行うことによって予測することが可能になっている。
そして、制御部119は、ノズルヘッド106が基板121のマージン領域R2に対応する位置にあるときに、ノズルヘッド106を待機位置の密着キャップ150に移動させて、ノズルヘッド106から液体120が吐出不能となる前にそのノズルヘッド106内の気泡を除去したり、液体タンク108内に液体120を充填したりする。こうすることで、基板121のパネル領域R1で液体120が途切れてしまうことがない。
【0040】
このように、塗布装置100は、キャリッジ105をレール103に沿って移動させ、ノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121に液体120を塗布する際に、配置調整部110を作動させて、レール103固有の歪みに起因するキャリッジ105のぶれに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すことができる。
塗布装置100は、配置調整部110を作動させてノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すことによって、基板121に対してノズルヘッド106を主走査方向へ直線的に移動させることが可能になる。
そして、塗布装置100は、ノズルヘッド106を基板121に対し相対的に主走査方向へ直線的に移動させて、ノズルヘッド106から吐出する液体120を基板121に好適に塗布することができる。具体的には、基板121(基板10)において、主走査方向に延在する後述する隔壁であるバンク13に沿うように、ノズルヘッド106を主走査方向に直線的に移動させて、液体120がバンク13を副走査方向に乗り越えたり、バンク13間に位置する塗布対象領域からずれたりすることなく、液体120を好適に塗布することができる。
【0041】
〔3〕塗布装置の変形例
〔3−1〕構成
図8は、図1に示された塗布装置100の構成を一部変更した装置の変形例である。
この塗布装置100Aにおいては、ワークテーブル101上に載置される基板121の上面を撮像可能とする撮像部112がキャリッジ105に配設されている。
【0042】
撮像部112は、例えば、CCDなどの撮像素子を備えており、キャリッジ105の移動に伴いノズルヘッド106とともに主走査方向へ移動しつつ、基板121の上面を撮像する。撮像部112は、主走査方向に沿って基板121における液体120が塗布される塗布対象領域R3(図9(a)参照)が含まれる範囲を撮像する。
撮像部112は、基板121における液体120が塗布される塗布対象領域R3に対応する位置を撮像する。また、撮像部112は、主走査方向に延在する隔壁であって、基板121における液体120が塗布される塗布対象領域R3を挟む隔壁であるバンク13(後述)を撮像する。例えば、撮像部112は、基板121に設けられた指標などを基準にして、基板121の特徴点である塗布対象領域R3や隔壁(バンク13)を撮像する。撮像部112が撮像した基板121の撮像データは、制御部119に出力される。
この撮像部112は、制御部119によって制御される。
【0043】
配置調整部110は、変位検出部111により検出されたノズルヘッド106の副走査方向への変位に応じて、基板121に対するノズルヘッド106の変位を打ち消す方向にノズルヘッド106を移動させるように、駆動信号に基づき作動することに加えて、撮像部112により撮像された基板121の特徴点に基づいて、ノズルヘッド106を基板121の塗布対象領域R3に対応する位置、具体的には、塗布対象領域R3の走査方向に直交する幅方向の略中央位置にノズルヘッド106のノズル孔168が位置するように、ノズルヘッド106を副走査方向へ移動させてノズルヘッド106の配置を調整するように作動する。
【0044】
制御部119は、レール103に沿ってキャリッジ105を移動させて撮像部112を主走査方向に移動させつつ、撮像部112に基板121の塗布対象領域R3が含まれる範囲を撮像させる。撮像部112が撮像した基板121の撮像データは、レール103に沿って移動するキャリッジ105の配置に対応付けられる。
制御部119は、撮像部112により撮像された基板121の撮像データに対して所定の画像認識処理を施して、基板121の特徴点であるバンク13を抽出し、そのバンク13の側壁に沿う基準線を抽出し、パンク13に挟まれた塗布領域の中心線を求める。
なお、図9(a)に示すように、基板121(基板10)に形成されているバンク13が設計通りであれば、抽出された基準線は所定位置で主走査方向に直線的に延在している。一方、設計通りに形成されていないバンク13であり、そのバンク13の副走査方向の幅が一様に太かったり、一様に細かったりする場合には、抽出された基準線は副走査方向にずれた位置で主走査方向に直線的に延在している。また、設計通りに形成されず歪んだ形状に形成されたバンク13の場合には、抽出された基準線は副走査方向にずれて曲がるなど不規則的に延在している。
制御部119は、抽出したバンク13の基準線に基づき、ノズルヘッド106を基板121上のバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に位置合わせするために、配置調整部110が、ノズルヘッド106の配置を副走査方向に移動させる配置調整量データを作成する。この配置調整量データは、抽出したバンク13の基準線における主走査方向と直交する副走査方向へのずれや歪みに対応するデータであり、レール103に沿うキャリッジ105の配置に対応付けられている。つまり、レール103に沿い移動するノズルヘッド106の主走査方向の配置に応じて、ノズルヘッド106を塗布対象領域R3に対応する位置に位置合わせするための副走査方向への移動量が配置調整量データにより規定されている。作成された配置調整量データはメモリ118に記憶される。
【0045】
そして、制御部119は、撮像部112の撮像データに基づき作成された配置調整量データに応じて配置調整部110を作動させることで、ノズルヘッド106を副走査方向へ移動させて、そのノズルヘッド106をバンク13から水平方向に所定量離した塗布対象領域R3側に対応する位置に配して、ノズルヘッド106のノズル孔168をバンク13間の略中央に対応する位置に配する。
こうして制御部119が、配置調整量データに基づき配置調整部110を作動させて、ノズルヘッド106のノズル孔168をバンク13間の略中央に対応する位置に配し、ノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に配することで、主走査方向に移動するノズルヘッド106から吐出する液体120を塗布対象領域R3に、幅方向に均等に塗布することが可能になる。
【0046】
また、制御部119が、配置調整量データに基づいて、ノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に配する処理は、配置調整部110を作動させることに限らない。
例えば、移動装置102を配置調整部として機能させて、配置調整量データに基づき、移動装置102がワークテーブル101を副走査方向に移動させることで、ワークテーブル101に載置された基板121をノズルヘッド106に対して移動させる調整を行い、ノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に配する処理を行うことが可能である。
【0047】
なお、実際には、制御部119は、駆動信号に応じたノズルヘッド106の移動量と、配置調整量データに応じたノズルヘッド106の移動量とを加減して得られる移動量に応じて、配置調整部110を作動させて、ノズルヘッド106を副走査方向へ移動させる。つまり、制御部119は、キャリッジ105が主走査方向へ移動することに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すことと、基板121に形成されたバンク13の形状に応じてノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に配することを、ともに行うようにノズルヘッド106を副走査方向へ移動させる。
上記したことを除いて、塗布装置100Aは塗布装置100と同様の構成を備えて同様に動作する。
【0048】
〔3−2〕動作
この塗布装置100Aの動作について説明する。
なお、ここでは、基板121に形成されたバンク13の形状に応じてノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に配するための配置調整部110の作動に関して説明する。
このバンク13の形状に応じてノズルヘッド106の配置を調整するための配置調整部110の作動と合わせて、前述したキャリッジ105が主走査方向へ移動することに伴うノズルヘッド106の副走査方向への変位を打ち消すための配置調整部110の作動も行われるが、ノズルヘッド106の変位を打ち消すための配置調整部110の作動については説明を省略する。(塗布装置100に関して説明した動作と同様の動作についてはその説明を省略する。)
【0049】
まず、基板121をワークテーブル101上に載置する。この際、基板121に形成されたバンク13が、主走査方向(X軸方向)に延在する向きに基板121をセットする。
次に、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120を吐出しない状態で、制御部119がキャリッジ105を作動させて、ノズルヘッド106と撮像部112とともにキャリッジ105をレール103に沿って主走査方向に1往復させる。撮像部112がレール103に沿って1往復する際に、撮像部112は、次の工程でノズルヘッド106から吐出される液体120が基板121に塗布される範囲にあたる、基板121の塗布対象領域R3およびバンク13を撮像する。そして、制御部119が、撮像部112により撮像された撮像データに基づいてバンク13に関する基準線を抽出し、制御部119がその基準線に基づき、ノズルヘッド106の配置を副走査方向に移動させる配置調整量データを作成する。この配置調整量データはメモリ118に格納される。
なお、撮像部112とともにノズルヘッド106がレール103に沿って1往復する際に、前述した変位検出部111が、ノズルヘッド106の変位を検出し、その変位に関する振動強度および変位量信号を制御部119に出力して、振動強度および変位量信号に対応する波形データがメモリ118に格納される。また、液体タンク108には液体120が充填されて、その液体タンク108内の液体120が供給管107内に送り出されてノズルヘッド106にまで送給される。
【0050】
次いで、制御部119がキャリッジ105を作動させて、キャリッジ105とともにノズルヘッド106が主走査方向に移動する。その際、供給器116が作動しているので、液体タンク108内の液体120がノズルヘッド106へと送り出され、供給管107を流れる液体120の流量がマスフローコントローラ109によって一定の設定流量に制御される。そのため、キャリッジ105の移動中において、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そして、吐出された液体120が基板121上に線状に塗布され、主走査方向に沿った線状の有機層パターンが基板121上に形成される。
【0051】
ところで、制御部119がキャリッジ105等を作動させ、ノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121上に液体120の塗布を行う際、制御部119は、予め作成した配置調整量データに基づき、配置調整部110を作動させて、ノズルヘッド106を副走査方向へ移動させ、ノズルヘッド106のノズル孔168をバンク13間の略中央に対応する位置に配する処理を実行している。
つまり、キャリッジ105の移動に伴い主走査方向に移動するノズルヘッド106の配置が、バンク13間の略中央に対応する位置に配されるので、ノズルヘッド106がバンク13間の略中央に沿った配置で移動することとなり、バンク13間の塗布対象領域R3にノズルヘッド106から吐出される液体120が好適に、幅方向に均等に塗布されるようになる。
【0052】
また、ノズルヘッド106がバンク13間の塗布対象領域R3に液体120を塗布しつつ、キャリッジ105が主走査方向に移動する際、撮像部112は、現在液体120が塗布されている最中の塗布対象領域R3に隣接する次の塗布対象領域R3およびバンク13を撮像している。そして、制御部119は、次の塗布対象領域R3のバンク13に関する基準線を抽出し、その基準線に基づく配置調整量データを作成するようになっている。
つまり、制御部119は、キャリッジ105を移動させてノズルヘッド106から吐出される液体120を塗布対象領域R3に塗布する際に、これからノズルヘッド106が進む先の塗布対象領域R3およびバンク13を撮像部112に撮像させてバンク13に関する基準線を抽出するなどし、その撮像した範囲の塗布対象領域R3にノズルヘッド106が達して液体120を塗布する場合に、ノズルヘッド106をその塗布対象領域R3に対応する位置に配するための配置調整量データを予め作成するようになっている。
なお、撮像部112の撮像範囲は、現在ノズルヘッド106が液体120を塗布している最中の塗布対象領域R3の次のラインの塗布対象領域R3およびバンク13であることに限らず、数ライン先の塗布対象領域R3およびバンク13を撮像するようにしてもよい。
【0053】
このように、塗布装置100Aは、ノズルヘッド106を主走査方向に移動させて基板121に液体120を塗布する際に、撮像部112により撮像したバンク13の配置や形状に応じて配置調整部110を作動させて、ノズルヘッド106の副走査方向への配置を調整することで、ノズルヘッド106をバンク13間の略中央に対応する配置に移動させ、そのノズルヘッド106のノズル孔168を塗布対象領域R3に対応する配置に調整することができる。
塗布装置100Aは、配置調整部110を作動させてノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する配置に調整することによって、レール103に沿って移動するノズルヘッド106のノズル孔168がバンク13間の略中央に沿った配置で移動することとなり、バンク13間の塗布対象領域R3にノズルヘッド106から吐出される液体120を好適に塗布することができる。具体的には、基板121(基板10)において、主走査方向に延在するバンク13に沿うようにノズルヘッド106を移動させて、そのバンク13間に位置する塗布対象領域R3からずれることなく、幅方向に均等に液体120を好適に塗布することができる。
【0054】
なお、塗布装置100Aにおいて、キャリッジ105が主走査方向に移動して、ノズルヘッド106がバンク13間の塗布対象領域R3に液体120を塗布しつつ、撮像部112が基板121を撮像する範囲は、これからノズルヘッド106が向かう先の塗布対象領域R3やバンク13であることに限らず、ノズルヘッド106の下方に位置して現在液体120の塗布が行われている最中の塗布対象領域R3やバンク13であってもよい。
【0055】
例えば、撮像部112がキャリッジ105に配設され、ノズルヘッド106が配置調整部110によって副走査方向に移動可能に備えられている場合、まず、ノズルヘッド106から吐出された液体120が基板121に塗布される位置が、撮像部112の撮像中心となるように撮像部112の撮像範囲を調節する。
制御部119は、例えば、撮像部112により撮像された基板121の撮像データに対し所定の画像認識処理を施して、基板121の特徴点であるバンク13を抽出し、そのバンク13間の中心線を求める。
そして、制御部119は、キャリッジ105を移動させてノズルヘッド106から吐出される液体120を主走査方向に延在するバンク13に沿って塗布対象領域R3に塗布する際、その塗布対象領域R3の両側のバンク13を撮像部112に撮像させて、そのバンク13間の中心線を求める。
制御部119が抽出した撮像データにおける中心線が、例えば、右にずれた場合、バンク13間の塗布対象領域R3が撮像部112(キャリッジ105)に対して右にずれているので、制御部119が配置調整部110を作動させて、中心線がずれた量に相当する移動量でノズルヘッド106を進行方向右側に移動させる。同様に、制御部119が抽出した撮像データにおける中心線が、例えば、左にずれた場合、バンク13間の塗布対象領域R3が撮像部112(キャリッジ105)に対して左にずれているので、制御部119が配置調整部110を作動させて、中心線がずれた量に相当する移動量でノズルヘッド106を進行方向左側に移動させる。
つまり、ノズルヘッド106から液体120の塗布が行われている最中の塗布対象領域R3やバンク13を撮像部112で撮像することによって、制御部119がその塗布対象領域R3やバンク13の副走査方向へのずれを瞬時に判断して配置調整部110を作動させて、ノズルヘッド106を副走査方向に移動させて、ノズルヘッド106が塗布対象領域R3に対応する配置となるように調整する。
このような撮像部112と配置調整部110の作動によっても、ノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に調整して、ノズルヘッド106のノズル孔168をバンク13間の略中央に沿った配置で移動させることができ、バンク13間の塗布対象領域R3にノズルヘッド106から吐出される液体120を好適に、幅方向に均等に塗布することができる。
【0056】
また、例えば、ノズルヘッド106と撮像部112が配置調整部110によって副走査方向に移動可能に備えられており、配置調整部110の作動によってノズルヘッド106と撮像部112が一体的に副走査方向に移動する場合、例えば、撮像部112の撮像中心がノズルヘッド106の配置に対応するように装置に組み付ける。
制御部119は、例えば、撮像部112により撮像された基板121の撮像データに対し所定の画像認識処理を施して、基板121の特徴点であるバンク13を抽出し、そのバンク13間の中心線を抽出する。
そして、制御部119が抽出した撮像データにおける中心線が、常に撮像視野の中心となるように制御部119が配置調整部110を作動させることで、常にノズルヘッド106をバンク13間の略中央側の塗布対象領域R3に対応する位置に配することができる。
つまり、ノズルヘッド106から液体120の塗布が行われている最中の塗布対象領域R3やバンク13を撮像部112で撮像しつつ、その撮像中心がバンク13間の略中央側の塗布対象領域R3となるように制御部119が配置調整部110を作動させることで、その撮像中心に対応するノズルヘッド106を塗布対象領域R3に対応する配置に調整する。
このような撮像部112と配置調整部110の作動によっても、ノズルヘッド106をバンク13間の塗布対象領域R3に対応する位置に調整して、ノズルヘッド106のノズル孔168をバンク13間の略中央に沿った配置で移動させることができ、バンク13間の塗布対象領域R3にノズルヘッド106から吐出される液体120を好適に塗布することができる。
ここで、撮像部112は図9(b)に示すように、ノズルヘッド106の主走査方向の延長線上に設けられていてもよい。この場合、塗布と同時に塗布対象領域R3の中心線を求めることができ、これによって制御部119のメモリ119の容量を削減する効果がある。更に、図9(c)に示すよう、ノズルヘッド106の主走査方向の前後に撮像部112が設けられていてもよい。この場合、主走査方向の双方向での塗布においても塗布対象領域R3の中心線を求めるが可能となる。
【0057】
〔4〕塗布装置を用いて製造される有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル(ELパネル)の構成
塗布装置100、100Aを用いて製造されるELパネル1について、図10〜図14を用いて説明する。
なお、ELパネル1は、大きな基板121に対して複数形成されたELパネル1(図7参照)が個々に切り出されたものである。そして、ELパネル1における基板10は、大きな基板121が分割されてなる、1つ分のELパネル1に相当する小さな基板である。
【0058】
図10は、発光パネルであるELパネル1における複数の画素Pの配置構成を示す平面図である。図11は、ELパネル1の概略構成を示す平面図である。図12は、アクティブマトリクス駆動方式で動作するELパネル1の1画素に相当する回路を示した回路図である。図13は、ELパネル1の1画素Pに相当する平面図であり、図14は、図13のXIV−XIV線に沿った面の矢視断面図である。
【0059】
図10、図11に示すように、ELパネル1には、R(赤),G(緑),B(青)をそれぞれ発光する複数の画素Pが所定のパターンでマトリクス状に配置されている。
このELパネル1には、複数の走査線2が行方向に沿って互いに略平行となるよう配列され、複数の信号線3が平面視して走査線2と略直交するよう列方向に沿って互いに略平行となるよう配列されている。また、隣り合う走査線2の間において電圧供給線4が走査線2に沿って設けられている。そして、これら各走査線2と隣接する二本の信号線3と各電圧供給線4とによって囲われる範囲が、画素Pに相当する。ここでは、R(赤)を発光する複数の画素P,G(緑)を発光する複数の画素P、B(青)を発光する複数の画素Pが、それぞれ信号線3の配列方向に沿って並んで配列され、且つ走査線2の配列方向に沿ってR(赤)を発光する画素P,G(緑)を発光する画素P,B(青)を発光する画素Pの順に配列されている。
【0060】
また、ELパネル1には、信号線3に沿う方向に延在する隔壁であるバンク13が設けられている。このバンク13によって挟まれた範囲に所定のキャリア輸送層(後述する正孔注入層8b、発光層8c)が設けられて、画素Pの発光領域となる。つまり、このバンク13が、R(赤),G(緑),B(青)の各色毎に画素Pを仕切っている。なお、キャリア輸送層とは、電圧が印加されることによって正孔又は電子を輸送する層である。
【0061】
図11、図12に示すように、ELパネル1には、走査線2と、走査線2と直交する信号線3と、走査線2に沿う電圧供給線4とが設けられており、このELパネル1の1画素Pにつき、薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ5と、薄膜トランジスタである駆動トランジスタ6と、キャパシタ7と、EL素子8とが設けられている。
【0062】
各画素Pにおいては、スイッチトランジスタ5のゲートが走査線2に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの一方が信号線3に接続され、スイッチトランジスタ5のドレインとソースのうちの他方がキャパシタ7の一方の電極及び駆動トランジスタ6のゲートに接続されている。駆動トランジスタ6のソースとドレインのうちの一方が電圧供給線4に接続され、駆動トランジスタ6のソースとドレインのうち他方がキャパシタ7の他方の電極及びEL素子8のアノードに接続されている。なお、全ての画素PのEL素子8のカソードは、一定電圧Vcomに保たれている(例えば、接地されている)。
【0063】
また、このELパネル1の周囲において各走査線2が走査ドライバに接続されている。また各電圧供給線4が、一定電圧源又は適宜電圧信号を出力するドライバに接続されている。また各信号線3が、データドライバに接続されている。これらドライバによってELパネル1がアクティブマトリクス駆動方式で駆動される。電圧供給線4には、一定電圧源又はドライバによって所定の電力が供給される。
【0064】
次に、ELパネル1と、その画素Pの回路構造について、図13、図14を用いて説明する。
図13に示すように、スイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6は、信号線3に沿うように配列されている。キャパシタ7は、スイッチトランジスタ5の近傍に配置されている。EL素子8は、駆動トランジスタ6の近傍に配置されている。また、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、キャパシタ7及びEL素子8が、走査線2と電圧供給線4の間に配置されている。
【0065】
駆動トランジスタ6は、図14に示すように、ゲート電極6a、半導体膜6b、チャネル保護膜6d、不純物半導体膜6f,6g、ドレイン電極6h、ソース電極6i等を有するものである。
また、スイッチトランジスタ5は、以下に詳述する駆動トランジスタ6と同様の薄膜トランジスタであって、ゲート電極5a、半導体膜、チャネル保護膜、不純物半導体膜、ドレイン電極5h、ソース電極5i等を有するものであるので、その詳細については省略する。
図13、図14に示すように、基板10上の一面にゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11が成膜されており、その層間絶縁膜11の上に層間絶縁膜12が成膜されている。信号線3は層間絶縁膜11と基板10との間に形成され、走査線2及び電圧供給線4は層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。
【0066】
ゲート電極6aは、基板10と層間絶縁膜11の間に形成されている。このゲート電極6aは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。また、ゲート電極6aの上には、絶縁性の層間絶縁膜11が成膜されている。ゲート電極6aが、その層間絶縁膜11によって被覆されている。
層間絶縁膜11は、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。この層間絶縁膜11上であってゲート電極6aに対応する位置には、真性な半導体膜6bが形成されている。半導体膜6bは、層間絶縁膜11を挟んでゲート電極6aと相対している。
半導体膜6bは、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンからなる。この半導体膜6bにチャネルが形成される。また、半導体膜6bの中央部上には、絶縁性のチャネル保護膜6dが形成されている。このチャネル保護膜6dは、例えば、シリコン窒化物又はシリコン酸化物からなる。
また、半導体膜6bの一端部の上には、不純物半導体膜6fが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。半導体膜6bの他端部の上には、不純物半導体膜6gが一部チャネル保護膜6dに重なるようにして形成されている。そして、不純物半導体膜6f,6gは、それぞれ半導体膜6bの両端側に互いに離間して形成されている。なお、不純物半導体膜6f,6gはn型半導体であるが、これに限らず、p型半導体であってもよい。
不純物半導体膜6fの上には、ドレイン電極6hが形成されている。不純物半導体膜6gの上には、ソース電極6iが形成されている。ドレイン電極6h,ソース電極6iは、例えば、Cr膜、Al膜、Cr/Al積層膜、AlTi合金膜又はAlTiNd合金膜からなる。
チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iの上には、保護膜となる絶縁性の層間絶縁膜12が成膜されている。チャネル保護膜6d、ドレイン電極6h及びソース電極6iが、層間絶縁膜12によって被覆されている。そして、駆動トランジスタ6は、層間絶縁膜12によって覆われるようになっている。層間絶縁膜12は、例えば、厚さが100nm〜200nm窒化シリコン又は酸化シリコンからなる。
【0067】
キャパシタ7は、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間に接続されている。図14に示すように、キャパシタ7の一方の電極7aが基板10と層間絶縁膜11との間に形成されている。キャパシタ7の他方の電極7bが、層間絶縁膜11と層間絶縁膜12との間に形成されている。そして、電極7aと電極7bが誘電体である層間絶縁膜11を挟んで相対している。これにより、キャパシタ7が構成されている。
【0068】
なお、信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aは、基板10に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで一括して形成されたものである。
また、走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iは、層間絶縁膜11に一面に成膜された導電膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法等によって形状加工することで形成されたものである。
【0069】
また、層間絶縁膜11には、ゲート電極5aと走査線2とが重なる領域に、コンタクトホール11aが形成されている。ドレイン電極5hと信号線3とが重なる領域に、コンタクトホール11bが形成されている。ゲート電極6aとソース電極5iとが重なる領域に、コンタクトホール11cが形成されている。それらコンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cがそれぞれ埋め込まれている。
コンタクトプラグ20aによってスイッチトランジスタ5のゲート電極5aと走査線2が電気的に導通する。コンタクトプラグ20bによってスイッチトランジスタ5のドレイン電極5hと信号線3が電気的に導通する。コンタクトプラグ20cによってスイッチトランジスタ5のソース電極5iとキャパシタ7の電極7aが電気的に導通するとともに、スイッチトランジスタ5のソース電極5iと駆動トランジスタ6のゲート電極6aが電気的に導通する。
これらコンタクトプラグ20a〜20cを介することなく、走査線2が直接ゲート電極5aと接触し、ドレイン電極5hが信号線3と接触し、ソース電極5iがゲート電極6aと接触してもよい。
また、駆動トランジスタ6のゲート電極6aが、キャパシタ7の電極7aに一体に連なっている。駆動トランジスタ6のドレイン電極6hが、電圧供給線4に一体に連なっている。駆動トランジスタ6のソース電極6iが、キャパシタ7の電極7bに一体に連なっている。
【0070】
画素電極8aは、層間絶縁膜11を介して基板10上に設けられており、画素電極8aは、画素Pごとに独立して形成されている。この画素電極8aは透明電極であって、例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In23)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)からなる。画素電極8aは一部、駆動トランジスタ6のソース電極6iに重なり、画素電極8aとソース電極6iが接続している。
そして、図13、図14に示すように、層間絶縁膜12が、走査線2、信号線3、電圧供給線4、スイッチトランジスタ5、駆動トランジスタ6、画素電極8aの周縁部、キャパシタ7の電極7b及び層間絶縁膜11を覆うように形成されている。
層間絶縁膜12には、各画素電極8aの中央部が露出するように開口部12aが形成されている。この層間絶縁膜12は、平面視して格子状に形成されている。
【0071】
バンク13は、図13、図14に示すように、信号線3に沿う方向に延在しているとともに、互いに平行に設けられている。そのため、これらバンク13は、縞状を成している。また、バンク13は、層間絶縁膜12を介してスイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6を覆う位置に形成されている。
このバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に位置し、対向する側壁13a間に画素電極8aの中央側が露出するようになっている。
そして、バンク13は、後述する正孔注入層8bや発光層8cを湿式法により形成するに際して、正孔注入層8bや発光層8cとなる材料が溶媒に溶解または分散された液状体が隣接する画素Pに滲み出ないようにする隔壁として機能する。
【0072】
EL素子8は、図13、図14に示すように、アノードとなる第一電極としての画素電極8aと、画素電極8aの上に形成された化合物膜である正孔注入層8bと、正孔注入層8bの上に形成された化合物膜である発光層8cと、発光層8cの上に形成された第二電極としての対向電極8dとを備えている。対向電極8dは全画素Pに共通の単一電極であって、全画素Pに連続して形成されている。
【0073】
正孔注入層8bは、例えば、導電性高分子であるPEDOT(poly(ethylenedioxy)thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)及びドーパントであるPSS(polystyrene sulfonate;ポリスチレンスルホン酸)からなるキャリア輸送層である。正孔注入層8bは、画素電極8aから発光層8cに向けて正孔を注入する層である。
発光層8cは、画素P毎にR(赤),G(緑),B(青)のいずれかを発光する材料を含む。発光層8cは、例えば、ポリフルオレン系発光材料やポリフェニレンビニレン系発光材料からなるキャリア輸送層である。発光層8cは、対向電極8dから供給される電子と、正孔注入層8bから注入される正孔との再結合に伴い発光する層である。このため、R(赤)を発光する画素P、G(緑)を発光する画素P、B(青)を発光する画素Pは互いに発光層8cの発光材料が異なる。画素PのR(赤),G(緑),B(青)のパターンは、縦方向に同色画素が配列されるストライプパターンである。
【0074】
対向電極8dは、画素電極8aよりも仕事関数の低い材料で形成されている。対向電極8dは、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
この対向電極8dは、全ての画素Pに共通した電極であり、発光層8cなどの化合物膜とともにバンク13を被覆している。
【0075】
また、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間においてバンク13に沿う方向に帯状に設けられているとともに、バンク13に沿う方向に連続して設けられている。そのため、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に沿う方向には、画素Pごとに区切られていない。つまり、正孔注入層8b及び発光層8cは、隣り合うバンク13の間において配列された複数の画素電極8aに共通して設けられている。一方、正孔注入層8b及び発光層8cは、バンク13に直交する方向には、バンク13によって区切られている。
そして、層間絶縁膜12の開口部12a内におけるバンク13の側壁13a間において、キャリア輸送層としての正孔注入層8b及び発光層8cが、画素電極8a上に積層されている(図14参照)。つまり、画素電極8aと対向電極8dの間に電圧が印加されたら、正孔注入層8b及び発光層8cは画素電極8aに重なる部分においてキャリア輸送層として機能し、その部分の発光層8cにおいて発光する。
具体的には、層間絶縁膜12の上に設けられたバンク13の側壁13aは、層間絶縁膜12の開口部12aより内側に形成されている。
そして、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた画素電極8a上に、正孔注入層8bとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第1のキャリア輸送層である正孔注入層8bとなる。
さらに、開口部12aに囲まれて側壁13aで挟まれた正孔注入層8b上に、発光層8cとなる材料が含有される液状体を塗布し、基板10ごと加熱してその液状体を乾燥させ成膜させた化合物膜が、第2のキャリア輸送層である発光層8cとなる。
なお、この発光層8cとバンク13を被覆するように対向電極8dが設けられている(図14参照)。
【0076】
そして、このELパネル1においては、画素電極8a、基板10及び層間絶縁膜11が透明であり、発光層8cから発した光が画素電極8a、層間絶縁膜11及び基板10を透過して出射する。そのため、基板10の裏面が表示面となる。
なお、基板10側ではなく、反対側が表示面となってもよい。この場合、対向電極8dを透明電極とし、画素電極8aを反射電極として、発光層8cから発した光が対向電極8dを透過して出射するようにする。
【0077】
このELパネル1は、次のように駆動されて発光する。
全ての電圧供給線4に所定レベルの電圧が印加された状態で、走査ドライバによって走査線2に順次電圧が印加されることで、これら走査線2が順次選択される。
各走査線2が選択されている時に、データドライバによって階調に応じたレベルの電圧が全ての信号線3に印加されると、その選択されている走査線2に対応するスイッチトランジスタ5がオンになっていることから、その階調に応じたレベルの電圧が駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加される。
この駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧に応じて、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6iとの間の電位差が定まって、駆動トランジスタ6におけるドレイン−ソース電流の大きさが定まり、EL素子8がそのドレイン−ソース電流に応じた明るさで発光する。
その後、その走査線2の選択が解除されると、スイッチトランジスタ5がオフとなるので、駆動トランジスタ6のゲート電極6aに印加された電圧にしたがった電荷がキャパシタ7に蓄えられ、駆動トランジスタ6のゲート電極6aとソース電極6i間の電位差は保持される。
このため、駆動トランジスタ6は選択時と同じ電流値のドレイン−ソース電流を流し続け、EL素子8の輝度を維持するようになっている。
【0078】
〔5〕塗布装置を用いた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネル(ELパネル)の製造方法
次に、ELパネル1の製造方法について説明する。
【0079】
〔5−1〕塗布装置を使用する前の工程(主に、トランジスタ製造工程)
まず、基板10となる基板121上にゲートメタル層をスパッタリングで堆積させる。そして、そのゲートメタル層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によりパターニングする。これによって、そのゲートメタル層から信号線3、キャパシタ7の電極7a、スイッチトランジスタ5のゲート電極5a及び駆動トランジスタ6のゲート電極6aを形成する。
次いで、プラズマCVDによって窒化シリコン等のゲート絶縁膜となる層間絶縁膜11を堆積する。ELパネル1の一辺に位置する走査ドライバに接続するための各走査線2の外部接続端子(例えば、走査線2の端部)上において開口するコンタクトホール(図示せず)を層間絶縁膜11に形成する。
次いで、半導体膜6b(5b)となるアモルファスシリコン等の半導体層、チャネル保護膜6d(5d)となる窒化シリコン等の絶縁層を連続して堆積する。その後、その絶縁層をフォトリソグラフィー及びエッチング等によってパターニングする。これにより、その絶縁膜からチャネル保護膜6d(5d)を形成する。
その後、不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)となる不純物層を堆積した後、フォトリソグラフィー及びエッチング等によって不純物層及び半導体層を連続してパターニングする。これにより、その不純物層から不純物半導体膜6f,6g(5f,5g)を形成するとともに、その半導体層から半導体膜6b(5b)を形成する。
そして、フォトリソグラフィー及びエッチングによってコンタクトホール11a〜11cを形成する。次いで、コンタクトホール11a〜11c内にコンタクトプラグ20a〜20cを形成する。この工程は省略されてもよい。
スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iとなるソース・ドレインメタル層を堆積し、そのソース・ドレインメタル層をパターニングする。これにより、そのソース・ドレインメタル層から走査線2、電圧供給線4、キャパシタ7の電極7b、スイッチトランジスタ5のドレイン電極5h,ソース電極5i及び駆動トランジスタ6のドレイン電極6h,ソース電極6iを形成する。こうしてスイッチトランジスタ5及び駆動トランジスタ6が形成される。その後、ITO膜を堆積した後、そのITO膜をパターニングすることによって、そのITO膜から画素電極8aを形成する。
【0080】
そして、スイッチトランジスタ5や駆動トランジスタ6等を覆うように、気相成長法により絶縁膜を成膜する。その後、その絶縁膜をフォトリソグラフィー及びエッチングでパターニングする。これにより、その絶縁膜に複数の開口部12aを形成して、層間絶縁膜12を形成する。開口部12aの形成位置は各画素電極8aの中央部上とし、各開口部12a内において、画素電極8aの中央部を露出される。また、これら開口部12aとともに、図示しない走査線2の外部接続端子、ELパネル1の一辺に位置するデータドライバに接続するための各信号線3の外部接続端子(例えば、信号線3の端部)及び電圧供給線4の外部接続端子(例えば、電圧供給線4の端部)上において開口する複数のコンタクトホールを形成する。
【0081】
次いで、ポリイミド等の感光性樹脂を堆積後にその感光性樹脂を露光して、互いに平行な縞状のバンク13を形成する。この際、バンク13の側壁13aが画素電極8a上に位置するように、バンク13を形成する。なお、このバンク13は、上記外部接続端子を開口するコンタクトホール(図示せず)を露出している。
【0082】
以上の工程により、図15に示すように、各画素電極8aは層間絶縁膜12のそれぞれの開口部12a内において露出する。また、縞状のバンク13間の凹部内において複数の画素電極8aが露出しているとともに、これら画素電極8aがバンク13に沿って配列される。
【0083】
〔5−2〕塗布装置を使用する塗布工程
バンク13間の画素電極8a上にキャリア輸送層となる液体を塗布するために、塗布装置100(100A)を4台分セッティングする。
そして、1台目の塗布装置100(100A)の液体タンク108には、正孔注入層8bとなる材料の液体120が充填されている。2台目の塗布装置100(100A)の液体タンク108には、赤の発光層8cとなる材料の液体120が充填されている。3台目の塗布装置100(100A)の液体タンク108には、緑の発光層8cとなる材料の液体120が充填されている。4台目の塗布装置100(100A)の液体タンク108には、青の発光層8cとなる材料の液体120が充填されている。
【0084】
次いで、前工程において、バンク13まで形成されている基板121を、1台目の塗布装置100(100A)のワークテーブル101上に載置する。この際、バンク13が延在する方向が主走査方向に沿うようにして、基板121をワークテーブル101上に載置する。
そして、制御部119の制御によって、マスフローコントローラ109の設定流量が設定される。
【0085】
次に、制御部119によって供給器116及びキャリッジ105が作動され、キャリッジ105が移動範囲の一方の端から主走査方向に移動するとともに、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出される。そして、吐出された液体120が、隣り合うバンク13の間に塗布される。これにより、帯状の正孔注入層8bがその隣り合うバンク13の間に形成され、その隣り合うバンク13の間に配列された画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われる。
キャリッジ105が移動範囲の反対の端まで移動したら、キャリッジ105が制御部119によって停止される。そして、制御部119が移動装置102を制御し、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に1画素分だけ移動されて、その後、移動装置102が制御部119によって停止される。
【0086】
次に、制御部119がキャリッジ105を作動させる。これにより、キャリッジ105が逆方向に移動するとともに、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されて、帯状の正孔注入層8bが形成される。
キャリッジ105が移動範囲の一方の端まで移動したら、キャリッジ105が制御部119によって停止される。そして、制御部119が移動装置102を制御し、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって副走査方向に1画素分だけ移動されて、その後、移動装置102が制御部119によって停止される。
【0087】
以後、制御部119がキャリッジ105と移動装置102の制御、および供給器116とマスフローコントローラ109の制御を繰り返す。それにより、ノズルヘッド106のノズル孔168から液体120が連続的に吐出されながらキャリッジ105が移動範囲の端から端まで移動することが繰り返されるとともに、キャリッジ105が端に移動した際に移動装置102によってワークテーブル101及び基板121が所定距離だけ副走査方向に移動される。その結果、ノズルヘッド106から吐出された液体120が基板121上に葛折り状のパターンで塗布される(図7参照)。
そして、基板121上の全ての画素電極8aが正孔注入層8bによって覆われる。
【0088】
次に、正孔注入層8bの乾燥後、基板121を2台目の塗布装置100(100A)のワークテーブル101上に載置する。そして、2台目の塗布装置100(100A)が同様の塗布を行うことによって、帯状の赤の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。そして、主走査方向の3列毎に、赤の発光層8cが形成される。
【0089】
次に、基板121を3台目の塗布装置100(100A)のワークテーブル101上に載置する。そして、3台目の塗布装置100(100A)が同様の塗布を行うことによって、帯状の緑の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。そして、主走査方向の3列毎に、緑の発光層8cが形成される。
【0090】
次に、基板121を4台目の塗布装置100(100A)のワークテーブル101上に載置する。そして、4台目の塗布装置100(100A)が同様の塗布を行うことによって、帯状の青の発光層8cが正孔注入層8b上に形成される。ここで、ワークテーブル101及び基板121が移動装置102によって間欠的に副走査方向に移動されるが、その移動距離は3画素分である。そして、主走査方向の3列毎に、青の発光層8cが形成される。
【0091】
このようにして、全ての正孔注入層8b上に発光層8cが形成される。
【0092】
〔5−3〕塗布装置を使用した後の工程
続いて、発光層8cが形成された基板121上に対向電極8dを成膜し、対向電極8dによって発光層8c及びバンク13を被覆する。
そして、基板121を基板10ごとに切り分けて、ELパネル1が完成する。
【0093】
以上のように、塗布装置100(100A)を使用して製造されたELパネル1は、各種電子機器の表示パネルとして用いられる。
例えば、図16に示す、携帯電話機200の表示パネル1aや、図17(a)(b)に示す、デジタルカメラ300の表示パネル1bや、図18に示す、パーソナルコンピュータ400の表示パネル1cに、ELパネル1を適用することができる。
【0094】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
100、100A 塗布装置
101 ワークテーブル
102 移動装置(配置調整部)
105 キャリッジ(ノズル移動部)
106 ノズルヘッド(吐出部)
168 ノズル孔
107 供給管
108 液体タンク
110 配置調整部
111 変位検出部
112 撮像部
116 供給器
118 メモリ
119 制御部
120 液体
121 基板
130 冷却トラップ
140 バキュームポンプ(減圧装置)
150 密閉キャップ
13 バンク(隔壁)
R1 パネル領域
R2 マージン領域
R3 塗布対象領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル孔を有する吐出部と、
第1の方向に沿って延在された、前記液体を塗布する塗布対象領域を有する基板が載置される支持台と、
前記吐出部が前記基板に対して前記第1の方向に沿って移動する際に前記第1の方向と直交する第2の方向への前記吐出部の変位を検出する変位検出部と、
前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させる配置調整部と、
前記変位検出部により検出された前記変位に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させる制御部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ノズル孔から前記液体を吐出させながら前記吐出部を前記基板に対して前記第1の方向に沿って移動させて前記基板の前記塗布対象領域に前記液体を塗布する際に、前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記変位検出部は、前記吐出部の前記変位に対応する振動強度を検出し、
前記制御部は、前記配置調整部を制御して、前記第2の方向における前記検出された前記振動強度と大きさが同じで逆位相の方向に前記吐出部を移動させること、または、前記第2の方向における前記検出された前記振動強度と大きさが同じで同じ方向に前記支持台を移動させること、によって、前記基板に対する前記吐出部の前記変位を打ち消すことを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記基板の前記塗布対象領域を撮像する撮像部を備え、
前記制御部は、前記配置調整部を制御して、前記撮像部により撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記吐出部の前記ノズル孔を、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記撮像部により撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記塗布対象領域の前記第2の方向の少なくとも一方の縁に沿った、前記第1の方向に延在する基準線の、前記第2の方向の歪み量を抽出し、抽出した前記基準線の前記歪み量に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させることを特徴とする請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記塗布対象領域の前記第2の方向の両側の縁に沿った2つの前記基準線を抽出し、該2つの基準線から、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央に沿った、前記第1の方向に延在する中心線を抽出し、抽出した前記中心線に基づいて前記配置調整部を制御して、前記吐出部の前記ノズル孔の位置を前記中央線の位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させることを特徴とする請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記吐出部とともに移動可能に備えられていることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記変位検出部が検出した前記変位に関する変位データを記憶するメモリを備え、該制御部は、前記メモリに記憶された前記変位データに基づいて、前記配置調整部を制御することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の塗布装置。
【請求項9】
支持台に、第1の方向に沿って延在された塗布対象領域を有する基板を載置する載置ステップと、
前記基板に対して、液体を吐出するノズル孔を有する吐出部を前記第1の方向に沿って移動させて、前記吐出部が前記1の方向に沿って移動する際の前記第1の方向と直交する第2の方向への前記吐出部の変位を検出するステップと、
前記吐出部を前記塗布対象領域に沿って移動させて、前記基板の前記塗布対象領域へ前記液体を塗布するステップと、
を含み、
前記液体を塗布するステップは、前記吐出部を前記第1の方向に沿って移動させるとともに、前記変位検出ステップによって検出された前記第2の方向における前記変位を打ち消す方向に、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を移動させるステップを含むことを特徴とする塗布方法。
【請求項10】
前記吐出部の変位を検出するステップは、前記吐出部を前記第1の方向に複数回往復移動させて、前記吐出部が前記1の方向に沿って移動する際の前記第2の方向への前記吐出部の変位量の平均値を前記変位として検出するステップを含むことを特徴とする請求項9に記載の塗布方法。
【請求項11】
前記基板の前記塗布対象領域を撮像するステップと、
前記撮像するステップにより撮像された前記塗布対象領域の画像に基づいて、前記吐出部の前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項9又は10に記載の塗布方法。
【請求項12】
前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように移動させるステップは、
前記塗布対象領域の、前記第2の方向の少なくとも一方の縁に沿った、前記第1の方向に延在する基準線を抽出するステップと、
前記抽出された前記基準線における前記第2の方向の歪み量に基づいて、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の塗布方法。
【請求項13】
前記ノズル孔を前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央位置に近づけるように移動させるステップは、
前記塗布対象領域の前記第2の方向の両側の縁に沿った2つの前記基準線を抽出し、該2つの基準線から、前記塗布対象領域の前記第2の方向の幅の中央に沿った、前記第1の方向に延在する中心線を抽出するステップと、
前記吐出部の前記ノズル孔を前記中央線に沿った位置に移動させるように、前記吐出部と前記支持台の何れか一方を前記第2の方向に移動させるステップと、
を含むことを特徴とする請求項11に記載の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−45850(P2011−45850A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197696(P2009−197696)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】