説明

塗料および油汚れ用洗浄剤

【課題】塗料及び油汚れ等の石鹸では落ちないような特殊な汚れには、専用の洗剤を必要としたが、塗料を溶解または剥離しやすい溶剤は、脱脂力も強いため、手に付着した塗料を落とすとき、皮膚の皮脂まで塗料と一緒に洗浄され、手荒れが発生しやすかった。従って、溶剤の選定や手荒れ防止剤の配合等で手荒れを最小限にくい止め、かつ人体に対して安全な原料を使用した塗料及び油汚れ用の洗浄剤の開発が強く望まれていた。
【解決手段】溶剤、界面活性剤及び研磨材からなる塗料及び油汚れ用洗浄剤であって、手荒れ防止剤、増粘剤、中和剤及び精製水を配合することができる。溶剤はアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤及び窒素系溶剤が好ましく、界面活性剤は非イオン系界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安全性が高く、皮膚に対して温和な作用を呈し、しかも塗料および油汚れに対する優れた洗浄力を有する塗料および油汚れ用洗浄剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】通常の手洗いには、洗剤として一般に石鹸を使用してきたが、塗料および油汚れなどの石鹸では落ちないような特殊な汚れには、専用の洗剤を必要とした。また、従来の塗料用手洗い洗剤は、多孔質粉末に溶剤、界面活性剤を吸着させた粉末状のものと、流動性のあるゲル状のものであった。しかし、塗料を溶解または剥離しやすい溶剤は、一般に脱脂力も強いために、手に付着した塗料を落とすとき、皮膚の皮脂まで塗料と一緒に洗浄されてしまい、手荒れが発生しやすかった。また、手洗い用洗剤ではないが、ラッカーシンナーで洗う場合もあり、手荒れが激しかった。さらに、ラッカーや他の塗料用手洗い洗剤は、人体に対してあまり良くない原料を使うことが多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のような状況にあって、溶剤の選定や手荒れ防止剤の配合などで手荒れを最小限にくい止め、かつ人体に対して安全な原料を使用した塗料および油汚れ用の洗浄剤の開発が、自動車の整備士や工場における機械や装置の整備担当者および修理担当者達にとって、強く望まれていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、化粧品にも用いることができる原料を使用し、塗料のみならず油汚れにも使用できる塗料および油汚れ用の洗浄剤を提供するにいたった。すなわち、溶剤、界面活性剤および研磨材、からなることを特徴とする塗料および油汚れ用洗浄剤であって、手荒れ防止剤、増粘剤、中和剤および精製水、から選ばれた1種または2種以上を含有することが好ましい。このとき溶剤が、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤および窒素系溶剤、から選ばれた1種または2種以上であることが好ましい。また、界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることが好ましく、非イオン系界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのいずれか1種または2種であることが特に好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明にいう塗料とは、物体の表面を保護し、美化することを主な目的とし、被塗装物の表面で薄い層となり、常温自然乾燥、加熱焼き付け乾燥、紫外線または電子線照射などによって、重合または縮合などの化学反応により硬化させ、緻密なしかも連続した塗膜を形成するものである。塗料の種類としては、油性塗料、水性塗料、合成樹脂塗料、酒精塗料などをあげることができる。
【0006】本発明にいう油汚れとは、鉱物油、植物油、動物油脂などを機械または装置などにおいて、潤滑油またはグリースとして使用した場合、使用に伴って機械または装置などの接触部分が磨耗し、その磨耗部分が潤滑油またはグリースの中に混入し、汚染されるが、機械または装置などを清掃または分解した際に、汚染された潤滑油またはグリースが皮膚などの身体に付着し、洗浄する必要がある状態をいい、石鹸もしくはパーライト洗剤などの洗剤を用いて洗浄するのが一般的である。
【0007】本発明にいう溶剤とは、塗料を剥離し、溶解する作用をもつものであって、アルコール系溶剤として、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコールなどを、エーテル系溶剤として、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルなどを、エステル系溶剤として、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸セチル、酢酸フェニルエチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールミリスチルエーテル、酢酸ポリオキシエチレンポリプロピレンイソセチルエーテル、酢酸ポリオキシエチレンモノオキシプロピレンセチルエーテル、酢酸ポリオキシエチレンモノオキシプロピレン−2−ヘキシルデシルエーテル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどを、グリコール系溶剤として、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどを、ケトン系溶剤として、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどを、炭化水素系溶剤として、トルエン、キシレン、テレビン油、流動パラフィンなどを、窒素系溶剤として、N−メチルピロリドンを、例示することができる。本発明においては、溶剤を20〜70重量%配合するのが好ましく、20重量%未満であれば、塗料の剥離効果および溶解効果が得られず、70重量%を越えると手荒れが生じる。
【0008】本発明にいう界面活性剤とは、通常洗剤に用いる界面活性剤であれば、特に限定されないが、本発明を実施するためには非イオン界面活性剤が好ましい。非イオン界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミドなどの脂肪酸アマイド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル、ミリスチン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン(5及び15)グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、トリステアリン酸デカグリセリル、トリオレイン酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(3及び10及び20及び40及び50及び60)ひまし油、ポリオキシエチレン(5及び10及び20及び30及び40及び50及び60及び80及び100)硬化ひまし油、その他ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。本発明においては、界面活性剤を5〜20重量%配合するのが好ましく、5重量%未満であれば、洗浄効果が得られず、20重量%を越えてもその効果は増加するものではなく、手荒れを助長するものである。
【0009】本発明にいう研磨材とは、粒状の物体をいい、皮膚のしわに入った汚れの洗浄に効果があり、その材質は特に限定されないが、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、アルモンド核仁末、アンズ核粒、エポキシ処理アルミニウム末、活性白土、ガラス末、軽石粉末、クルミ核粒、珪酸、ケイソウ土、ゼオライト、タルク、窒化ホウ素、酸化チタン、ポリエチレン末、マイカ、モモ核粒、卵殻末などを例示することができる。本発明においては、研磨材を10〜50重量%配合するのが好ましく、10重量%未満であれば、塗料の剥離効果が得られず、50重量%を越えてもその効果は増加するものではない。
【0010】本発明にいう手荒れ防止剤とは、通常手荒れを防止する効果のある物質であれば、特に限定されないが、オレイルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、ラノリンアルコールなどの高級アルコール、デカオレイン酸デカグリセリルなどの多価アルコール脂肪酸エステル、ヒアルロン酸、フィトグリコーゲンなどの多糖類、酢酸トコフェロール、レシチン、レシチン誘導体、スクワラン、ホホバ油、マカデミアナッツ油、アボガド油、オリーブ油、シア脂、ひまわり油、ラノリンなどの油脂、アロエエキス、オレンジエキス、カッコンエキス、米ぬかエキス、タイソウエキス、トマトエキス、ヘチマエキスなどのエキス、を例示することができる。本発明においては、手荒れ防止剤を0.1〜5.0重量%配合するのが好ましく、0.1重量%未満であれば、手荒れ防止の効果が得られず、5.0重量%を越えてもその効果は増加するものではない。
【0011】本発明でいう増粘剤とは、水溶液の粘度を高め、粉体の分散性を良くする作用をもつ化合物であれば、特に限定されないが、水溶性高分子化合物がその反応性のうえからも好ましい。水溶性高分子化合物としては、カルボキシビニルポリマーなどを例示することができる。本発明においては、増粘剤を0.1〜2.0重量%配合するのが好ましく、0.1重量%未満であれば、洗浄剤の安定効果が得られず、2.0重量%を越えてもその効果は増加するものではない。
【0012】本発明でいう中和剤とは、アセチルモノエタノールアミド、アンモニア水、モルホリン、ジエタノールアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ステアリルジメチルアミン、テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、N−ラウリルジエタノールアミンなどを例示することができる。本発明においては、中和剤はカルボキシビニルポリマー(酸性)などの水溶性高分子化合物を中和するために使用するので、配合した水溶性高分子化合物の量によって配合量を変え、最終製品である洗浄剤を中性にする必要がある。従って、中和剤は通常0.1〜2.0重量%配合する。
【0013】本発明にいう精製水とは、常水を蒸留するかまたはイオン交換樹脂を通して精製した水であって、本発明においては配合上必ずしも必要ではないが、50重量%を越えると各配合成分の濃度が低下し、洗浄剤として不適当である。
【0014】
【実施例】本発明による塗料および油汚れ用洗浄剤は、溶剤、界面活性剤、研磨剤および精製水、からなり、その配合比は、目的により任意に選ぶことができる。通常、溶剤を20〜70重量%、界面活性剤を5〜20重量%、研磨剤を10〜50重量%、を混合したものであり、必要に応じて精製水を加える。さらに、本洗浄剤の安定性を保持するために、増粘剤を0.1〜2.0重量%、中和剤を0.1〜2.0重量%添加することができる。また、本洗浄剤の商品価値を高めるために、手荒れ防止剤を0.1〜5.0重量%、その他染料や香料などを添加することができる。次に実施例に基づき、本発明を具体的に説明するが、本発明の趣旨はこれに限定されるものではない。
【0015】(実施例1)酢酸エチル40.0g、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート10.0g、アボガド油(日光ケミカルズ株式会社)2.0g、カルボキシビニルポリマー0.3gを200ml容のビーカーに入れ、プロペラの付いた攪拌機でよく混合した。これに精製水12.4gを添加し、さらに1時間攪拌した。その後、卵殻末(太陽化学株式会社製)35.0gとステアリルジメチルアミン0.3gを添加し、約30分間攪拌を続けることにより、塗料および油汚れ用の洗浄剤100.0gを得た。
【0016】(実施例2)N−メチルピロリドン50.0g、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル20.0g、ステアリルアルコール1.0g、カルボキシビニルポリマー0.5gを200ml容のビーカーに入れ、プロペラの付いた攪拌機でよく混合した。これに精製水8.0gを添加し、さらに1時間攪拌した。その後、アンズ核粒(岩瀬コスファ社製)20.0gとステアリルジメチルアミン0.5gを添加し、約30分間攪拌を続けることにより、塗料および油汚れ用の洗浄剤100.0gを得た。
【0017】(比較例1)エチレングリコールエチルエーテル15.0g、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル3.0g、アロエエキス6.0g、カルボキシビニルポリマー0.05gを200ml容のビーカーに入れ、プロペラの付いた攪拌機でよく混合した。これに精製水70.9gを添加し、さらに1時間攪拌した。その後、ケイソウ土(日本タルク株式会社製)5.0gとステアリルジメチルアミン0.05gを添加し、約30分間攪拌を続けることにより、塗料および油汚れ用の洗浄剤100.0gを得た。
【0018】(試験例1)アクリルラッカー(鈴木油脂工業株式会社製、補修用塗料)は直接手の平に均一になるように吹き付け、アクリルウレタン樹脂塗料(アクリルペイント株式会社製、ロックエース)は主剤90gと硬化剤10gをビーカーに入れ、よく攪拌した後、筆で手の甲に均一になるように塗布し、タール(株式会社二和田商店製)およびモーターオイル(日石三菱株式会社製、コウモレックス)はそれぞれ筆で手の平に均一になるように塗布し、約20℃の室温で3時間自然乾燥させた。次に実施例1、実施例2および比較例1により得られた洗浄剤を用いて、擦りながら洗浄し、水で洗い流した。それらの洗浄効果は、表1に示した通り、実施例1および実施例2により得られた洗浄剤は、塗料および油汚れに対して、十分な洗浄力を有したが、比較例1により得られた洗浄剤は、殆ど洗浄効果が認められなかった。
【0019】
【表1】


【0020】
【発明の効果】通常の手洗いには、洗剤として一般に石鹸およびパーライト洗剤を使用してきたが、塗料およびひどい油汚れなど、石鹸では落ちないような特殊な汚れには、専用の洗剤を必要とした。しかし、塗料を溶解または剥離しやすい溶剤は、一般に脱脂力も強いために、手に付着した塗料を落とすときに皮膚の皮脂まで塗料と一緒に洗浄されてしまい、手荒れが生じやすかった。
【0021】本発明の洗浄剤は、溶剤をはじめ、界面活性剤、研磨材、増粘剤、中和剤などいずれの原料も化粧品に使用し得るものを用い、しかも手荒れ防止剤を配合するなどして、手荒れを最小限にくい止め、かつ塗料および油汚れを容易に除去することのできる洗浄力の強い洗浄剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】溶剤、界面活性剤および研磨材、からなることを特徴とする塗料および油汚れ用洗浄剤。
【請求項2】手荒れ防止剤、増粘剤、中和剤および精製水、から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗料および油汚れ用洗浄剤。
【請求項3】請求項1または2のいずれかに記載の溶剤が、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤、炭化水素系溶剤および窒素系溶剤、から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする塗料および油汚れ用洗浄剤。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれか1項に記載の界面活性剤が、非イオン系界面活性剤であることを特徴とする塗料および油汚れ用洗浄剤。
【請求項5】請求項4に記載の非イオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのいずれか1種または2種であることを特徴とする塗料および油汚れ用洗浄剤。

【公開番号】特開2001−240896(P2001−240896A)
【公開日】平成13年9月4日(2001.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−50422(P2000−50422)
【出願日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(391034891)鈴木油脂工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】