説明

塗膜保護用粘着シート

【課題】コート層と複合フィルムとの間の接着性が良好であり、かつ耐候性も有する塗膜保護用粘着シートを提供すること。
【解決手段】塗膜保護用粘着シートは、基材層および粘着剤層を有する塗膜保護用粘着シートであって、基材層が、アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムの一方の面に、特定の構造を有するフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いてなるコート層を有する。このコート層は複合フィルムに架橋しており架橋点を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗膜保護用粘着シートに関し、特に、アクリル系ポリマー及びウレタンポリマーを含む複合フィルムを有する塗膜保護用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマーとウレタンポリマーの複合フィルムは、高強度と高破断伸びを両立できるフィルムとして知られており、特表2001−520127号公報には自動車等の表面保護フィルムとして、相互侵入高分子網目層(IPN層)、および、少なくとも1層のフルオロ含有ポリマー層を含む多層フィルムが開示されている。この多層フィルムのIPN層にはウレタンポリマーとアクリルポリマーのIPN複合体が用いられており、アクリルモノマーとアクリル架橋剤、および、ポリオールとポリイソシアネートとのウレタン架橋物先駆体の混合液を、基材上に塗布し、熱によりアクリルモノマーおよびウレタン先駆体であるポリオール/ポリイソシアネートを不干渉様式で、それぞれ重合、架橋させて得られる。
【0003】
この方法によれば、用いられる単量体の種類や組み合わせ、配合比等による制限(制約)が生じ難いという利点はあるが、ウレタン重合はアクリルのような連鎖反応に比べて遅い重付加反応であることから、生産性の面で課題があった。
【0004】
この生産性の課題の解決のために、IPN層を特開2003−96140号公報に開示されているような逐次合成と光重合を利用して得ようとすると、架橋ウレタンポリマーがアクリルモノマーおよび架橋剤の存在下で膨潤した状態となるため、シロップの粘度が著しく上昇してコーティングやキャスティングによる基材への塗布は極めて困難になるという問題が生じた。
【0005】
また、自動車等が走行する際に、粉塵、小石等がボディー塗装面に衝突することがあり、特に、道路状態の悪い路面や、寒冷地で除雪等のために岩塩、砂、砂利等が散布された路面等を走行する場合には塗装面が傷みやすく、塗装面の損傷部分から錆が発生するという問題がある。自動車業界においては、自動車ボディーの塗装面の損傷防止のために透明粘着テープが貼り付けられることがあり、この透明粘着テープの基材としてポリウレタン基材が使用されている(例えば、特開昭59−41376号公報、特開2005−272558号公報参照)。
【0006】
ところが、ポリウレタンは光反応により、共役構造を示す着色物質や窒素含有の着色物質が生成することが知られている。したがって、ポリウレタンを含有するフィルムは、初期は無色透明であるが、フィルムを屋外に放置すると、紫外線に晒されて黄変し、また、光沢感が消失して美観が低下することがある。
また、基材にフッ素系樹脂からなるコート層を設けた粘着シートも知られているが、基材とコート層との間の接着性が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2001−520127号公報
【特許文献2】特開2003−96140号公報
【特許文献3】特開昭59−41376号公報
【特許文献4】特開2005−272558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明はコート層と複合フィルムとの接着性に優れ、かつ、耐候性を備えている塗膜保護用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、基材層および粘着剤層を有する塗膜保護用粘着シートであって、前記基材層が、アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムの一方の面に、下記式(I)で表されるフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いてなるコート層を有することを特徴とする。
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Xはフッ素、塩素または臭素を表し、Rは水素またはC1〜C10のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキレン基を表す。なお、mおよびnは、それぞれ整数を表し、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量が1,000〜2,000,000となる範囲で選択される。)
【0012】
本発明においては、前記複合フィルムと前記コート層とが架橋されていて架橋点を有する構造であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、前記フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を溶媒に溶解させた後、イソシアネートを添加してなる溶液を用いてコート層を形成し、該コート層の上に前記複合フィルムを形成する塗布液を塗布して複合フィルムを形成することにより、前記架橋点を形成することができる。
【0014】
あるいは、水酸基含有アクリル系モノマーと多官能イソシアネートとを反応させてなる反応液に、前記フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を溶媒に溶解させた溶液を添加してなる混合物を用いてコート層を形成し、該コート層の上に前記複合フィルムを形成する塗布液を塗布して複合フィルムを形成することにより、前記架橋点を形成せしめることができる。
【0015】
本発明においては、前記複合フィルムが、アクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成した、アクリル系モノマーおよびウレタンポリマーを含有する溶液に、光重合開始剤を添加してなる複合フィルム形成用塗布液を用いて成ることが好ましい。
【0016】
本発明においては、前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸イソノニルからなる群から選ばれる少なくとも1種類との共重合体を少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0017】
本発明においては、前記塗膜保護用粘着シートが、輸送機械の外装塗膜面に貼着して使用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コート層と複合フィルムとの接着性に優れ、かつ、耐候性を備えている塗膜保護用粘着シートを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の塗膜保護用粘着シートは、基材層および粘着剤層を有し、この基材層は特定のコート層が設けられた複合フィルムを含む。
【0020】
本発明の複合フィルムは、(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとを含有する。この複合フィルム中の(メタ)アクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、(メタ)アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーの含有比率が1/99未満では、前駆体混合物の粘度が高くなり、作業性が悪化する場合があり、80/20を超えると、フィルムとしての柔軟性や強度が得られない場合がある。
【0021】
本発明において、(メタ)アクリル系ポリマーは、少なくとも(メタ)アクリル酸系モノマー、および、単官能(メタ)アクリル系モノマーを含むアクリル成分を用いてなることが好ましく、特に、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーを用いることが好ましい。さらに、本発明においては、(メタ)アクリル系ポリマーは、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーをさらに含むアクリル成分を用いてなることが好ましい。
【0022】
本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーとは、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中では特にアクリル酸が好ましい。この(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量は、後述する複合フィルム前駆体中、1重量%以上、15重量%以下であり、2重量%以上、10重量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が1重量%未満では、反応に長時間を要し、フィルム化することが非常に困難であり、また、フィルムの強度が十分でない問題が生じる場合がある。(メタ)アクリル酸系モノマーの含有量が15重量%を超える場合には、フィルムの吸水率が大きくなり、耐水性に問題が生じる場合がある。本発明において(メタ)アクリル酸系モノマーはウレタン成分、アクリル成分との相溶性に大きく影響するものであり、極めて重要な機能を有する必須構成要素である。
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。また、本発明において(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系モノマーのように、「(メタ)アクリル」と表示する場合には、メタアクリル、アクリルを総称する概念とする。また、「アクリル」と表示した場合でも、一般常識上問題がなければ、メタアクリルも含む概念とする。
【0023】
本発明において、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
【0024】
本発明においては、Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート、および、ジシクロペンタニルアクリレートからなる群のうち少なくとも1つを用いることが好ましく、アクリロイルモルホリン及び/又はイソボルニルアクリレート、あるいは、アクリロイルモルホリン及び/又はジシクロペンタニルアクリレートを用いることが更に好ましく、特にイソボルニルアクリレートを用いることが好ましい。
【0025】
Tgが0℃以上の単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、アクリル成分中、20重量%以上、99重量%以下であることが好ましく、30重量%以上、98重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が20重量%未満では、フィルムの強度が十分でないという問題が生じることがあり、99重量%を超えると、フィルムの剛性が上がりすぎて脆くなる場合がある。
【0026】
本発明において、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソブチル、2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルオロフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート等が挙げられる。これらは単独で、あるいは、2種以上を併用することができる。
本発明においては、Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチルを用いることが特に好ましい。
【0027】
Tgが0℃未満の単官能(メタ)アクリル系モノマーは含有されていなくても良い(含有量が0重量%)が、含有されている場合の含有量は、アクリル成分中、0重量%より多く、50重量%以下であることが好ましく、0重量%より多く、45重量%以下であることが更に好ましい。この単官能(メタ)アクリル系モノマーの含有量が50重量%を超える場合には、フィルムの強度が十分でない問題が生じることがある。
【0028】
(メタ)アクリル系モノマーは、ウレタンとの相溶性、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0029】
本発明においては、上記(メタ)アクリル系モノマーとともに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0030】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等を挙げることができ、特に好ましくは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである。
【0031】
多官能モノマーはアクリル系モノマー100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下含まれることができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0032】
ウレタンポリマーは、ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られる。ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0033】
低分子量のジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコールが挙げられる。
【0034】
また、高分子量のジオールとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を付加重合して得られるポリエーテルポリオール、あるいは上述の2価のアルコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2価の塩基酸との重縮合物からなるポリエステルポリオールや、アクリルポリオール、カーボネートポリオール、エポキシポリオール、カプロラクトンポリオール等が挙げられる。これらの中では、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリアルキレンカーボネートジオール(PCD)等が好ましく使用される。
【0035】
アクリルポリオールとしては水酸基を有するモノマーの共重合体の他、水酸基含有物とアクリル系モノマーとの共重合体等が挙げられる。エポキシポリオールとしてはアミン変性エポキシ樹脂等がある。
【0036】
本発明において、ウレタンポリマーは架橋構造を含まない。ウレタンポリマーの形成に使用されるジオールは、線状(リニア)のジオールであることが好ましい。但し、ウレタンポリマーに架橋構造を形成させないという条件を満たす限りにおいて、ジオールは側鎖状のジオールまたは分岐構造を含むジオールであっても良い。すなわち、本発明の複合フィルムを構成するウレタンポリマーは架橋構造を含まないものであり、したがって、IPN構造とは構造的に全く異なるものである。
【0037】
本発明においては、上記ジオールを、アクリル系モノマーへの溶解性、イソシアネートとの反応性等を考慮して、単独あるいは併用して使用することができる。強度を必要とする場合には、低分子量ジオールによるウレタンハードセグメント量を増加させると効果的である。伸びを重視する場合には、分子量の大きなジオールを単独で使用することが好ましい。また、ポリエーテルポリオールは、一般的に、安価で耐水性が良好であり、ポリエステルポリオールは、強度が高い。本発明においては、用途や目的に応じて、ポリオールの種類や量を自由に選択することができ、また、塗布する基材等の特性、イソシアネートとの反応性、アクリルとの相溶性などの観点からもポリオールの種類、分子量や使用量を適宜選択することができる。
【0038】
ジイソシアネートとしては芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネート、これらのジイソシアネートの二量体、三量体等が挙げられる。芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの二量体、三量体や、ポリフェニルメタンジイソシアネートが用いられる。三量体としては、イソシアヌレート型、ビューレット型、アロファネート型等が挙げられ、適宜、使用することができる。
【0039】
これらの中では、特に、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水素化TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素化MDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水素化PPDI)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ブタンジイソシアネート、2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好ましく使用される。ベンゼン環を含む芳香族系のジイソシアネートを使用すると、光反応によって共役構造を有する着色物質が生成しやすいため好ましくないからであり、本発明においては、ベンゼン環を含まない、難黄変型、無黄変型の脂肪族、脂環族系のジイソシアネートが好適に使用される。
【0040】
これらのジイソシアネート類は単独あるいは併用で使用することができる。複合フィルムが適用される(塗布等される)支持体等の特性、アクリル系モノマーへの溶解性、水酸基との反応性などの観点から、ジイソシアネートの種類、組合せ等を適宜選択すればよい。
【0041】
本発明においては、ウレタン系ポリマーが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、および、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種類のジイソシアネートを用いて形成されることが好ましく、水添キシレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0042】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのジオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、1.12以上、1.60以下であることがさらに好ましく、1.15以上、1.40以下であることが特に好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、ウレタンポリマーの分子量が大きくなりすぎて、複合フィルム前駆体(シロップ溶液)の粘度が大きくなり、後続のシート化工程で作業が困難になることがある。また、NCO/OH(当量比)が2.0を超えると、ウレタンポリマーの分子量が小さくなり、破断強度が低下しやすくなる。
【0043】
本発明においては、複合フィルムを形成するアクリル成分とウレタン成分との比率は、重量比で、アクリル成分/ウレタン成分が0.25以上、4.00以下であり、好ましくは0.429以上、2.333以下であり、特に好ましくは0.538以上、1.857以下である。アクリル成分/ウレタン成分が0.25未満では、シロップ溶液の粘度が大きくなり、後続のシート化工程で作業が困難になることがある。また、アクリル成分/ウレタン成分が4.00を超えると、複合フィルム中のウレタンポリマー量が25%未満となり、引張の破断強度が低下し、実用に耐えないことがある。
【0044】
上記ウレタンポリマーに対し、水酸基含有アクリルモノマーを添加してもよい。水酸基含有アクリルモノマーを添加することにより、ウレタンプレポリマーの分子末端に(メタ)アクリロイル基を導入することができ、(メタ)アクリル系モノマーとの共重合性が付与され、ウレタン成分とアクリル成分との相溶性が高まり、破断強度などのS−S特性の向上を図ることもできる。ここで使用される水酸基含有アクリルモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。水酸基含有アクリルモノマーの使用量は、ウレタンポリマー100重量部に対して、0.1〜10重量部であることが好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0045】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、光安定剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとジオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に添加してもよい。
【0046】
本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C7〜C9の側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]等が挙げられる。
【0047】
また、ヒドロキシフェニルトリアジン型紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物、2,4−ビス[2−ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
【0050】
商業的に入手可能なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、
2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN PS」、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 384−2」、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 109」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 900」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 928」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 1130」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN P」、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 326」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 328」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールとしてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 329」、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]としてチバ・ジャパン社製のTINUVIN 360」、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 213」、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 571」、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールとして住友化学社製の「Sumisorb 250」、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール]としてADEKA製の「ADKSTAB LA31」等が挙げられる。
【0051】
また、商業入手可能なヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応性生物としてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 405」、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUBIN 460」、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1577」、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 479」等が挙げられる。
【0052】
商業的に入手可能なベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、例えば、チバ・ジャパン社製の「CHIMASSORB 81」等が挙げられる。また、ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートとしてチバ・ジャパン社製の「TINIVIN 120」等が挙げられる。
【0053】
本発明においては、上記紫外線吸収剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用して用いることができる。
【0054】
紫外線吸収剤の総使用量は、複合フィルム前駆体100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量が0.1重量%以上であれば、劣化や着色を引き起こす紫外光の吸収が十分であり、4.0重量%以下であれば、紫外線吸収剤自体による着色を引き起こすことはない。
【0055】
本発明に用いられる光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)であることが好ましく、ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、下記式(II)で示されるものが好ましい。
【0056】
【化3】

【0057】
(式中、R11はアルキレン基、アルキル基、エーテル基であり、R12、R13、R14、R15、R16、R17は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシ基である。)
【0058】
商業的に入手可能なヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物である光安定剤として、「TINUVIN 622」(チバ・ジャパン社製)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの1対1の反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 119」(チバ・ジャパン社製)、ジブチルアミン・1,3−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物である光安定剤として「TINUVIN 2020」(チバ・ジャパン社製)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ})である光安定剤として、「TINUVIN 944」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 765」(チバ・ジャパン社製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートである光安定剤として「TINUVIN 770」(チバ・ジャパン社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 123」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートである光安定剤として「TINUVIN 144」(チバ・ジャパン社製)、シクロヘキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 152」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 292」(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0059】
本発明においては、上記ヒンダードアミン光安定剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用することができるが、これらヒンダードアミン光安定剤の総使用量は、複合フィルム前駆体100重量%に対して、0.1重量%以上、4.0重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以上、2.0重量%以下であることが更に好ましい。ヒンダードアミン光安定剤の使用量が0.1重量%以上であれば、劣化防止機能が十分発現し、4.0重量%以下であれば、光安定剤自体による着色を引き起こすことはない。
【0060】
本発明においては、塗工の粘度調整のため少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0061】
本発明において複合フィルムは、例えば、アクリル系モノマーを希釈剤として、このアクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとの反応を行ってウレタンポリマーを形成し、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとを主成分として含む混合物を支持体(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射して硬化させ、その後、支持体等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。あるいは、支持体等を剥離除去せずに、支持体等の上に複合フィルムが積層された形態で得ることもできる。
【0062】
具体的には、ジオールをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してジオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持体等に、あるいは、必要に応じて支持体等の剥離処理面に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることができる。この方法では、アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートをアクリル系モノマーに溶解させた後、ジオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0063】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基板シート等の上に塗布した混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0064】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0065】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0066】
また、紫外線等を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0067】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、特に制限なく使用することができるが、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤等を用いることができる。
【0068】
ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア651」等)等が挙げられる。
【0069】
α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「イルガキュア184」等)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「ダロキュア1173」等)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「イルガキュア2959」等)等が挙げられる。
【0070】
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「イルガキュア907」等)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「イルガキュア369」等)等が挙げられる。
【0071】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商業的に入手可能なものとしては、BASF社製の「ルシリンTPO」等)等が挙げられる。
【0072】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。
【0073】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。
【0074】
芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられ、光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。
【0075】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン等が挙げられ、ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジル等が挙げられる。
【0076】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0077】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0078】
本発明に係る基材層の厚みは、目的等に応じて、例えば被覆保護する対象物の種類や箇所等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、100μm以上であることが好ましく、150μm以上であることが更に好ましく、200μm以上であることが特に好ましい。また、厚みの上限値は1mm程度であることが好ましい。基材層を構成する複合フィルムの厚みは、例えば、自動車のボディーを保護するために用いられるチッピング用途の場合には、50〜800μm程度であることが好ましく、更に好ましくは100〜600μm程度であることが好ましい。また、航空機用途の場合には、50〜1,000μm程度、更に好ましくは200〜800μm程度である。また、自動二輪用途の場合には、好ましくは50〜800μm程度、更に好ましくは100〜600μm程度である。
【0079】
本発明の塗膜保護用粘着シートを構成する基材層は、複合フィルムの一方の面にコート層を有する。コート層は、フルオロエチレン単位とビニルエーテル単位とが交互に並んだフルオロエチレンビニルエーテル交互重合体であり、下記式(I)で表されるものが好ましい。
【0080】
【化4】

【0081】
式(I)中、Xはフッ素、塩素または臭素を表し、Rは水素またはC1〜C10のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキレン基を表す。なお、mおよびnは、それぞれ整数を表す。
【0082】
フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量は、1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000である。本発明において、上記式(I)中のmおよびnは、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量が1,000〜2,000,000となる範囲で選択される。
【0083】
フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量は、GPC法により測定することができる。GPC法の測定方法を以下に示す。すなわち、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を、THF溶液を用いて2.0g/Lとなるように調整した後、12時間静置する。その後、この溶液を0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、分析装置として東ソー(株)製の「HLC−8120GPC」を用い、下記測定条件の下、ろ液についてGPC測定を行う。
測定条件:
カラム TSKgel GMH−H(S)×2
カラムサイズ 7.8mmI.D.×300mm
溶離液 THF
流量 0.5mL/min
検出器 RI
カラム温度 40℃
注入量 100μL
【0084】
なお、基材層は、複合フィルムの一方の面にコート層を有し、他方の面に粘着剤層を有する構成とすることが好ましい。
コート層の厚みは、2〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜40μmであり、更に好ましくは8〜30μmである。コート層の厚みが2μm未満では、ピンホールなど、コート層が形成されない欠陥部位が発生しやすく、またコート層の特性が充分に発揮できない場合がある。また50μmを超えると、コート層の物性が複合フィルムの物性を低下させてしまう場合がある。
【0085】
本発明においては、コート層が複合フィルムと架橋されていて架橋点を有することが好ましい。架橋点を有する構造は、例えば、コート層を構成する成分と複合フィルムを構成する成分とが結合して架橋点を形成することにより得られる。例えば、コート層の形成に使用したイソシアネートに残存イソシアネート基が存在していれば、この残存イソシアネート基が、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物の水酸基と反応して架橋点を形成することができる。あるいは、コート層の形成に使用されるフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の水酸基が残存しているならば、複合フィルム用塗布液に存在しているイソシアネート基と反応して架橋点を形成することができる。したがって、本発明においては、複合フィルム用塗布液を塗布した時に、コート層には残存イソシアネート基あるいは残存水酸基が反応しうる状態で存在していることが必要である。また、コート層の架橋反応が完全に完了する前に複合フィルム用塗布液を塗布することが好ましい。
【0086】
このようにコート層と複合フィルムとが架橋構造を形成していれば優れた接着性を発揮することができるので、表面コート層は複合フィルムに対して優れた接着性を長期間保持し続けることができる。したがって、塗膜保護用粘着シートの位置決めのためにアプリケーションシートが貼付されたとしても、アプリケーションシートの剥離の際に表面コート層が剥がれたりすることがない。
【0087】
表面コート層と複合フィルムとが架橋構造を形成するためには、表面コート層はフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いて成ることが必要であり、かつ、複合フィルムとして上記構造を有することが必要である。
【0088】
本発明においては、表面コート層と複合フィルムとが架橋構造を形成することができさえすれば、いかなる方法によって形成しても良い。例えば、表面コート層を塗布、乾燥、硬化させた後、コート層表面が半硬化状態で複合フィルム用塗布液を塗布して架橋点を形成したり、あるいは、完全に表面が硬化した状態でも残存イソシアネート基が反応しうる状態であれば、この上に複合フィルム用塗布液を塗布して架橋点を形成することができる。コート層および複合フィルムの形成に使用される成分の種類や使用量等を考慮して適宜設計されることが好ましい。例えば、残存イソシアネート基が反応しうる状態であれば、24時間以内に複合フィルム用塗布液を塗布して光硬化反応させることにより架橋構造を形成することができる。また、残存イソシアネート基が反応しうる状態であって、5℃程度で保存されていれば、5日間以内に複合フィルム用塗布液を塗布して光硬化反応させることにより架橋構造を形成することができる。なお、イソシアネート架橋剤に、予め水酸基含有モノマーを反応させておけば、50℃で1週間以上保存した後でも残存イソシアネート基が反応しうる状態にすることができる。
【0089】
本発明においては、フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を溶媒に溶解させ、これに多官能イソシアネートを添加してコート層用塗布液を形成し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、剥離処理されたポリエチレンフィルム上にこの溶液を塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、ウレタンポリマーおよびアクリル系モノマーを含有する混合物(複合フィルム用塗布液)を塗布し、紫外線等を照射することにより、コート層が複合フィルムに架橋された(複合フィルムがコート層に架橋された)構造の積層体を得ることができる。
【0090】
あるいは、水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させた後、フルオロエチレンビニルエーテル交互重合体を添加し、この溶液を用いてコート層を形成する。例えば、この溶液を剥離処理されたPETフィルムの上に塗布し、乾燥させてコート層を形成する。このコート層の上に、アクリル系モノマーおよびウレタンポリマーを含有する複合フィルム用塗布液を塗布し、紫外線等を照射して硬化させることにより、コート層が複合フィルムに架橋された(複合フィルムがコート層に架橋された)構造の積層体を得ることができる。
【0091】
上記多官能イソシアネートは、イソシアネート基を分子内に2個以上有するものである。多官能イソシアネートとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイシシアネート、エチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の2官能イソシアネート、デスモジュールN3200(住化バイエルウレタン(株)製)、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製)、コロネートHL(日本ポリウレタン(株)製)、コロネートHX(日本ポリウレタン(株)製)、タケネートD−140N(三井化学ポリウレタン(株)製)、タケネートD−127(三井化学ポリウレタン(株)製)、タケネートD−110N(三井化学ポリウレタン(株)製)等の3官能イソシアネートなどが挙げられる。本発明においては、これらの多官能イソシアネートを単独で、または2種以上併用することができる。
【0092】
水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させる場合、水酸基含有モノマーの水酸基のモル数[OH]と、多官能イソシアネートのイソシアネート基のモル数[NCO]との比率([OH]/[NCO])は、0.05〜0.5、好ましくは、0.05〜0.4、さらに好ましくは、0.05〜0.3である。
【0093】
上記水酸基含有モノマーは、分子内に水酸基を1個以上有し、また、分子内に(メタ)アクリル基を1個以上有するものである。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノアクリレート、1,4−シクロへキサンジメタノールモノメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールアクリレートなどが挙げられる。本発明においては、これらの水酸基含有モノマーを単独で、または2種以上を併用することができる。
【0094】
本発明において基材層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、複合フィルムの片面(コート層を設けない側の面)に他のフィルムを積層することができる。他のフィルムを形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等のような熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が挙げられる。なお、上記コート層を設ける場合には、コート層を基材層の最外層の位置に配置することが好ましい。
【0095】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、基材層のコート層とは反対側の面に粘着剤層を有する。この粘着剤層を形成する粘着剤は、特に限定されず、アクリル系、ゴム系、シリコン系等、一般的なものを使用することができるが、低温での接着性や高温での保持性、コスト面等を考慮するとアクリル系の粘着剤が好ましい。
【0096】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸エステルを主体とするモノマー成分に、カルボキシル基やヒドロキシル基等の官能基を有するモノマー成分を共重合したアクリル系共重合体(2種類以上であっても良い)を含むアクリル系粘着剤を用いることができる。
【0097】
アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種または2種以上を用いることができる。
【0098】
上記アルキル(メタ)アクリレートに下記モノマー成分を共重合することができる。共重合可能なモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、フマル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基を含有するモノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシへキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、スチレンやスチレンの誘導体、酢酸ビニル等のモノマー等が挙げられる。これらのモノマーを必要に応じて、1種又は2種以上を、(メタ)アクリル酸エステルに共重合させて使用することができる。
【0099】
本発明に用いられる粘着剤は、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸イソノニルからなる群から選ばれる少なくとも1種類と、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類のカルボキシル基含有モノマーとを含むことが好ましい。すなわち、本発明に用いられる粘着剤は、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル等を主モノマーとし、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを共重合した共重合体を使用することができる。
【0100】
粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は20μm以上であることが好ましく、更に好ましくは30μm以上、特に好ましくは40μm以上である。但し、上限値は通常100μm程度であることが好ましい。
【0101】
本発明において、粘着剤層は、例えば、基材層に、溶剤系、エマルジョン系の粘着剤を直接塗布し、乾燥する方法、これらの粘着剤を剥離紙に塗布し、予め粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層を複合フィルムに貼り合わせる方法等を適用することができる。放射線硬化型粘着剤を基材層に塗布し、粘着剤層と、フィルムの両方に放射線を照射することにより、基材層と粘着剤層を同時に硬化させて、形成する方法も適用することができる。なお、この場合には、粘着剤層と基材層は、多層構成となるように塗布することもできる。
【0102】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、100%モジュラスが1.0MPa以上、10.0MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5MPa以上、8.0MPa以下であり、特に好ましくは2.0MPa以上、6.0MPa以下である。塗膜保護用粘着シートは、23℃における100%モジュラスが1.0MPa以上であれば、過度に柔軟性を発揮して撓み作業性が低下することがない。一方、100%モジュラスが10.0MPa以下であれば、過度の剛性を発揮して塗装面等の曲面への追従性が低下したり、浮きが発生するということがない。
【0103】
ここで、100%モジュラスとは、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(23℃)で引張試験を行い、応力−歪み曲線を求め、粘着シートの100%伸張時における単位面積当たりの応力を23℃における100%モジュラスと言う。
【0104】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、破断伸びが200%以上、1,000%以下であることが好ましく、更に好ましくは250%以上、800%以下であり、特に好ましくは300%以上、600%以下である。破断伸びが200%以上であれば、貼付時に粘着シートが十分に伸びるので貼り付け作業が低下することがない。また、破断伸びが1,000%以下であれば、貼付時に粘着シートが伸びすぎて貼り付け作業が低下することがない。
【0105】
ここで破断伸びとは、粘着シート(幅1cm、長さ13cm)を引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(23℃)で引張試験を行い、粘着シートが破断した時の伸びをチャック間距離(50mm)で除した値を言う。
【0106】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、破断強度が10MPa以上、100MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは15MPa以上、90MPa以下であり、特に好ましくは20MPa以上、80MPa以下である。破断強度が10MPa未満では、粘着シートが柔軟になりすぎて耐チッピング性が低下することがある。すなわち、小石等が衝突した際に、粘着シートの表面に傷が発生し、自動車塗膜の美観が損なわれることがある。また、破断強度が100MPaを超えると、粘着シートが剛直になり過ぎて、自動車塗膜等の曲面に追従できない場合があり、浮きが発生することがある。
【0107】
ここで破断強度とは、粘着シート(幅1cm×長さ13cm)を、引張速度200mm/min、チャック間距離50mm、室温(23℃)で引張試験を行い、粘着シートが破断したときの力を言う。
【0108】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、被着体の塗装面の色等をそのまま外観に反映させるためには透明であることが要求されるが、顔料等を使用して塗装面の色と同じ色で着色したり、別の色に着色したりして、塗装代替粘着シートとして使用してもよい。
【0109】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、塗膜保護用粘着シートの貼り付け作業を向上させるために、例えば貼付位置決め等のために、アプリケーションシートを使用することができる。
【0110】
本発明の塗膜保護用粘着シートの製造方法について以下に述べる。例えば、まず、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)の剥離処理面に表面コート層用の塗布液を塗布して表面コート層を形成した後、その上に複合フィルム用の塗布液を塗布し、その上に透明のセパレータ等をのせて、その上から紫外線等を照射して複合フィルムを形成しつつ架橋点も形成し、その後、セパレータを除去する。別途、剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の剥離処理面に粘着剤層用の塗布液を塗布して粘着剤層を形成する。その後、この粘着剤層を、複合フィルム面に重ねて、塗膜保護用粘着シートを得ることができる。なお、ここでは、剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体1)/表面コート層/複合フィルム/粘着剤層/剥離処理されたポリエステルフィルム(仮支持体2)の層構成となっているが、この仮支持体1および仮支持体2は、使用時に、すなわち粘着シートが貼付適用される際に剥離除去されるものであるので、本発明の塗膜保護用粘着シートの構成には特に含めてはいない。ただし、これらの仮支持体1、仮支持体2等を、必要に応じて適宜設けることは可能であるし、これらの構成は本発明の技術的範囲に属するものである。
【0111】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、高強度と高破断伸びを両立することができ、また、曲面に対する柔軟性に優れている。さらにまた、本発明の塗膜保護用粘着シートは、コート層が複合フィルムに強固に接着しており、例えば貼付作業時にアプリケーションシートを用いて位置決め等を行っても、コート層が剥がれたりすることがない。したがって輸送機械、例えば、自動二輪、自転車、鉄道車両、船舶、スノーモービル、ゴンドラ、リフト、エスカレーター、自動車、航空機等、特に自動車、航空機、自動二輪等の塗装面を保護するための保護用粘着シート等に好適である。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0113】
(測定方法および評価方法)
(1)耐候性(耐黄変性)の評価
塗膜保護用粘着シートを、白色塗装板(日本テストパネル社製、ダル鋼板「JIS−G3141」の白色アクリル焼付け)に、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り付け、23℃で24時間放置した後、サンシャインウェザー試験機(スガ試験機株式会社製)にて、1,000時間照射した。塗膜保護用粘着シートを目視で観察して変色(黄色)の有無を確認した。
【0114】
(2)耐溶剤性の評価
塗膜保護用粘着シートを、白色塗装板(日本テストパネル社製 ダル鋼板「JIS−G3141」の白色アクリル焼付け)に、2kgのローラーを1往復させて圧着して貼り付け、23℃で24時間放置後、ガソリン中に23℃で10分間浸漬して、変化を目視で観察した。
【0115】
(3)耐汚れ付着性の評価
塗膜保護用粘着シートを、白色塗装板(日本テストパネル社製のダル鋼板「JIS−G3141」の白色アクリル焼付け)に、2kgローラーを1往復させて圧着して貼り付け、23℃で24時間放置した後、飛び石試験機(スガ試験機株式会社製)を用いて、粘着シートに0.4MPaで直径が2〜5mmの石を当てた。その後、塗膜保護用粘着シート表面の汚れを布でふき取って汚れがふき取れたか否かを観察した。汚れがふき取れた場合には「付着無し」と表示し、汚れがふき取れなかった場合には「付着有り」と表示した。
【0116】
(4)投錨性の評価
塗膜保護用粘着シートを、白色塗装板(日本テストパネル社製のダル鋼板「JIS−G3141」の白色アクリル焼付け)に、ハンドローラーを用いて貼り付けた後、コート層表面にアプリケーションテープ(日東電工株式会社製の「SPV3620」)をハンドローラーを1往復させて圧着して貼り付けた。その後、温度23℃で72時間放置してから、高速剥離試験機((株)工研社製)を用いて、120°の角度で、50mm/minの引張速度でアプリケーションテープを剥がし、コート層の剥がれ状態を目視観察した。
【0117】
(5)透明性の評価
透明性の評価として、ヘーズメータを用いて、塗装保護用粘着シートのヘーズ値を測定した。すなわち、塗装保護用粘着シートを、ガラス板(松浪硝子工業(株)製 MICRO SLIDE GLASS、 サイズ:45mm×50mm、厚さ:1.2mm〜1.5mm、 Pre−Cleaned)に貼り付け後、ヘーズメーター((株)村上色彩技術研究所製のヘーズメーター「HM150型」)にて、ヘイズ(曇り価)を測定した。ヘーズ値が3.0以下であれば、透明性の評価において合格レベルである。
【0118】
(実施例1)
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、アクリロイルモルホリン(ACMO)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0119】
その後、光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE819」)を0.3部、紫外線吸収剤として、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチルオキシラン]との反応生成物と、1−メトキシ−2−プロパノールとからなる紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤として、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。但し、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0120】
《コート層用塗布液の作製》
フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる50%濃度溶解液(旭硝子(株)製の「LF600」)の100部に、硬化剤として、10.15部のイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製の「コロネートHX」)と、触媒として、3.5部のジブチル錫ラウリン酸(東京ファインケミカル株式会社製の「OL1」)のキシレン希釈液(固形分濃度が0.01%)と、希釈溶媒として、101部のトルエンとを添加して、コート層用塗布液(固形分率28%)を作製した。
【0121】
《基材層の作製》
得られたコート層用塗布液を、仮支持体1として剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)の上に塗布し、温度140℃で3分間乾燥および硬化させてフルオロエチレンビニルエーテル層を形成した。なお、粘着シートに形成された後のコート層の厚みは10μmであった。
【0122】
コート層形成後、すなわち硬化後、24時間以内に、このコート層の上に、作製した複合フィルム用塗布液を、硬化後の厚みが290μm(表面コート層の厚みも含めると300μm)と成るように塗布し、この上にセパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ねた。このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体1の上にコート層および複合フィルムを形成した。
【0123】
《粘着剤層の作製》
モノマー成分として、2−エチルヘキシルアクリレート90部およびアクリル酸10部を混合した混合物に、光重合開始剤として、商品名「イルガキュア 651」(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.05部と、商品名「イルガキュア 184」(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.05部とを配合した後、粘度が約15Pa・s(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)になるまで紫外線を照射して、一部が重合したアクリル組成物(UVシロップ)を作製した。
【0124】
得られたUVシロップの100部に対して、ヘキサンジオールジアクリレートを0.08部、ヒンダードフェノール型酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の商品名「イルガノックス1010」)を1部添加して粘着剤組成物を作製した。
【0125】
この粘着剤組成物を、仮支持体2として厚み38μmのポリエステルフィルムの剥離処理面に、最終製品としての厚みが50μmになるように塗布した。
この上に、セパレータとして剥離処理したPETフィルムを重ねて被覆し、次いで、PETフィルム面にメタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体2の上に粘着剤層を形成した。その後、140℃で3分間乾燥させて、未反応の残存アクリル系モノマーを乾燥させ、粘着剤層を作製した。
【0126】
《粘着シートの作製》
セパレータを除去し、得られた基材層のコート層側の面とは反対側の面に、粘着剤層が重なるように貼り合わせて塗膜保護用粘着シート(仮支持体1/コート層/複合フィルム/粘着剤層/仮支持体2の層構成)を作製した。
【0127】
《測定および評価》
得られた粘着シートについて、上記に示す評価方法に従い、耐候性、耐溶剤性、耐汚れ付着性、投錨性、透明性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0128】
(実施例2)
複合フィルム用塗布液を下記に示すものに変更した以外は実施例1と同様にして塗膜保護用粘着シートを作製した。
【0129】
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)(数平均分子量650、三菱化学(株)製)を36.4部とを投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の13.6部を滴下し、65℃で10時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。
【0130】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE819」)を0.3部、紫外線吸収剤として2,5−ヒドロキシフェニルとオキシラン1−メトキシ−2−プロパノール(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「TINUVIN 400」)を1.25部、および光安定剤としてデカン二酸ビスエステル、1,1−ジメチルエチルヒドロぺルオキシドとオクタンのヒンダードアミン光安定剤(チバスペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「TINUVIN 123」)を1.25部添加して、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーの混合物(複合フィルム用塗布液)を得た。なお、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
【0131】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0132】
(実施例3)
コート層用塗布液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして塗膜保護用粘着シートを作製した。
【0133】
《コート層用塗布液の作製》
4−ヒドロキシブチルアクリレート(日本化成株式会社製の「4HBA」)を0.7部、およびイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)製の「コロネートHX」)を11.2部混合し、反応させて反応液を得た。フルオロエチレンビニルエーテルのキシレンおよびトルエンによる50%濃度溶解液(旭硝子(株)製の「LF600」)の100部に、硬化剤として、得られた反応液の11.9部と、触媒として、3.5部のジブチル錫ラウリン酸(東京ファインケミカル株式会社製の「OL1」)のキシレン希釈液(固形分濃度が0.01%)と、希釈溶媒として、101部のトルエンとを添加して、コート層用塗布液(固形分率28%)を作製した。
【0134】
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0135】
(実施例4)
実施例1において、基材層の作製を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして複合フィルムを作製し、粘着シートを得た。
具体的には、実施例1と同様にしてコート層を形成した後、すなわち硬化後、24時間以内に、このコート層の上に、実施例1と同様にして作製した複合フィルム用塗布液を、硬化後の厚みが490μm(表面コート層の厚みも含めると500μm)と成るように塗布し、この上にセパレータとして剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを重ねた。このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、仮支持体1の上にコート層および複合フィルムを形成した。
次いで、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
得られた粘着シートについて実施例1と同様の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0136】
(比較例1)
コート層を設けなかった以外は実施例1と同様にして塗膜保護用粘着シートを作製した。得られた塗膜保護用粘着シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0137】
(比較例2)
コート層の作製を以下に示すように変更して、フルオロエチレンビニルエーテル層の替わりにポリビニリデンフロライド(PVDF)のコート層に変更した以外は実施例1と同様にして塗膜保護用粘着シートを作製した。
すなわち、コート層用塗布液としてポリビニリデンフロライド(PVDF)溶解液(クレハ(株)製の「L#1120」、PVDFを10%含有するN−メチル−2−ピロリドン溶液)を使用した。このPVDF溶解液を、仮支持体1として、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの上に塗布し、150℃で3分間乾燥させて、厚さ5μmのPVDF層(コート層)を作製した。
得られた塗膜保護用粘着シートについて実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1から明らかなように、コート層表面に反応性の残存基が存在している状態で複合フィルムを形成した実施例1〜4は、投錨性に非常に優れていることが分かった。特に、実施例3の塗膜保護用粘着シートは、投錨性が極めて優れたものであり、実施例1の塗膜保護用粘着シートよりも強固な投錨性を示すものであった。これは、コート層用塗布液の作製においてイソシアネート系架橋剤に予め水酸基含有モノマーを反応させており、このコート層用塗布液を複合フィルム層と架橋させていることによるものである。実施例3のコート層用塗布液を用いた場合には、コート層形成後、50℃で1週間経過した時点でも、投錨性を発現することが確認されている。なお、実施例1のコート層用塗布液を用いた場合には、50℃で1週間程度経過すると、投錨性を発現しなくなる。
また、本発明の構成要件を満たす実施例1〜4の粘着シートは、長時間紫外線にさらされても黄変することがなく、耐候性に優れており、かつ、耐溶剤性、耐汚れ付着性、透明性の全てにおいて優れていることが分かった。
【0140】
コート層を備えていない比較例1の粘着シートは、汚れ付着が発生することがわかった。また、コート層が本発明外のフッ素系樹脂からなるコート層である比較例2では、投錨性に問題があり、例えばアプリケーションシートを使用して位置決めを行った場合には、コート層の一部が剥離してしまう。
【0141】
また、実施例1〜4は、ウレタンポリマーおよびアクリル系ポリマーを含む複合フィルムを備えているので、強度、柔軟性等にも優れており、被着体、例えば自動車のボディー曲面に十分に追従することができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の塗膜保護用粘着シートは、曲面等への柔軟性が要求される粘着シートとして好適に使用することができる。また、本発明の塗膜保護用粘着シートは、コート層と複合フィルムとの接着性に優れているので、防汚性に優れており、例えば、屋外の天候、溶剤、ほこり、油脂および海洋環境などを含む有害環境にさらされる塗膜表面を保護するための粘着シートとして使用することができる。また、自動車の塗膜を保護するための粘着シートとしても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層および粘着剤層を有する塗膜保護用粘着シートであって、前記基材層が、アクリル系ポリマーおよびウレタンポリマーを含む複合フィルムの一方の面に、下記式(I)で表されるフルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を用いてなるコート層を有することを特徴とする塗膜保護用粘着シート。
【化1】

(式中、Xはフッ素、塩素または臭素を表し、Rは水素またはC1〜C10のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキル基を表し、RはC1〜C16のアルキレン基を表し、mおよびnは、それぞれ整数であり、フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体の重量平均分子量が1,000〜2,000,000となる範囲で選択される。)
【請求項2】
前記複合フィルムと前記コート層とが架橋されていて架橋点を有する構造であることを特徴とする請求項1に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項3】
前記フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を溶媒に溶解させた後、イソシアネートを添加してなる溶液を用いてコート層を形成し、該コート層の上に前記複合フィルムを形成する塗布液を塗布して複合フィルムを形成することにより、前記架橋点を形成することを特徴とする請求項2に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項4】
水酸基含有モノマーと多官能イソシアネートとを反応させてなる反応液に、前記フルオロエチレンビニルエーテル交互共重合体を溶媒に溶解させた溶液を添加してなる混合物を用いてコート層を形成し、該コート層の上に前記複合フィルムを形成する塗布液を塗布して複合フィルムを形成することにより、前記架橋点を形成せしめることを特徴とする請求項2に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項5】
前記複合フィルムが、アクリル系モノマー中でジオールとジイソシアネートとを反応させてウレタンポリマーを形成した、アクリル系モノマーおよびウレタンポリマーを含有する溶液に、光重合開始剤を添加してなる複合フィルム形成用塗布液を用いて成ることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層を形成する粘着剤が、アクリル酸2−エチルヘキシルおよびアクリル酸イソノニルからなる群から選ばれる少なくとも1種類と、アクリル酸およびメタクリル酸からなる群から選ばれる少なくとも1種類との共重合体を少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着シート。
【請求項7】
前記塗膜保護用粘着シートが、輸送機械の外装塗膜面に貼着して使用されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の塗膜保護用粘着シート。

【公開番号】特開2009−299053(P2009−299053A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117706(P2009−117706)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】