説明

塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロス

【課題】 洗車後の初期艶や艶の持続性を、添加剤としての改艶成分によって改善した塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスを提供する。
【解決手段】 トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分を、界面活性剤で乳化させてなる塗膜洗浄剤において、添加剤として、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマー又はワックスエマルジョンから選ばれる改艶成分を含有する。補助剤として、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョン、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョン、水溶性溶剤、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンから選ばれる皮膜改質成分を含有していてもよい。塗膜洗浄剤を不織布でなるクロスに含浸させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の塗装されたボディを拭き上げて洗浄することなどに用いられ、汚れ除去作用や撥水性を付与する作用、艶出し作用を発揮する塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスに関する。特に、洗浄後初期の艶に優れ、しかも、初期の艶の持続性を改善ささせることのできる塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、洗車することによって自動車ボディの塗膜の汚れを除去し、撥水性を付与して艶出し作用を発揮する塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスを先に提案した(特許文献1参照)。この特許文献1によって提案されている塗膜洗浄用ウェットクロスは、下記一般式(1)で表わされるトリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分を、界面活性剤で乳化分散させることによって得られる塗膜洗浄剤を不織布に含浸させてなる。
【0003】
(CHSiO1/2・〔SiO………(1)
式中X=1〜3、Y=0.5〜8である。
【0004】
そして、特許文献1によって提案されている塗膜洗浄用ウェットクロスを用いて洗車を行うと、塗膜の洗浄、撥水、光沢皮膜の処理に要する水、労力、時間が少なくなって、洗車後の水分拭き取り、ワックス塗布やワックス拭き上けなどに費やされる負担も軽減されるという実益が得られた。
【特許文献1】特許第3482517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1によって提案されている塗膜洗浄用ウェットクロスで洗浄処理した自動車車体の塗膜に付与される艶は、そのクロスに含浸されている塗膜洗浄剤に含まれるジメチルポリシロキサン(たとえばシリコーンオイル)によって得られる艶であり、そのジメチルポリシロキサンは、塗膜に対する定着性がそれほど高くないために雨に当たったり後の洗車によって比較的流し去られてしまいやすいということが知見された。また、定着しているトリメチルシロキシケイ酸も艶出し作用を発揮するけれども、このトリメチルシロキシケイ酸による艶はそれほど顕著に現れないということも知見された。
【0006】
この点を改善するためには、ジメチルポリシロキサンの配合量を単純に増やすことも考えられ、そのようにすると、洗浄直後の初期の艶やその艶の耐久性が改善されるけれども、自動車車体の塗膜上でジメチルポリシロキサンの濃淡むらが生じやすくなって均一皮膜によるきれいな艶が得られにくいという問題のあることが判った。しかも、ジメチルポリシロキサンが発揮する初期の艶は、固形ワックスを塗布した場合に得られるクリアー感のある艶に比べると、赤っぽい艶になって艶品質の点で問題のあることが判った。
【0007】
一方、自動車車体の塗膜洗浄剤に、汚れた塗膜面を拭き上げて綺麗な面を形成させることが要求される点を勘案すると、特許文献1に記載されている塗膜洗浄剤に含まれるトリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分は必須の成分である。これは、下地である塗膜面(塗装面)が十分な撥水状態になっていないと、クロスに含まれる水分が塗膜面に大きな水滴となって残り、それによって過剰の洗浄剤が残留してしまう原因になるからである。
【0008】
これに対し、塗膜面が十分な撥水状態になっていると、水滴が細かくなり、塗膜面上に過剰の洗浄剤が残留しにくくなって、塗膜面が均一に仕上がりやすいということが判っている。
【0009】
本発明は以上の状況の下でなされたものである。すなわち、本発明は、特許文献1によって提案されている塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスが持っている性質、つまり、塗膜面に良好な撥水性を付与することのできる性質をそのまま保持させた上で、初期艶の品質についての問題点や艶の持続性についての問題点を改善することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る塗膜洗浄剤は、トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分を、界面活性剤で乳化させてなる塗膜洗浄剤において、添加剤として、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマー又はワックスエマルジョンから選ばれる改艶成分を含有する、というものである。
【0011】
この発明において、トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分は、下地である塗膜面(塗装面)が十分な撥水状態に保つことに役立つ。
【0012】
トリメチルシロキシケイ酸は不揮発性油剤成分に溶かしたものを使用することができ、不揮発性油剤成分として、ジメチルポリシロキサンまたはその変性体または鉱物油があげられる。トリメチルシロキシケイ酸の溶液は繊維に含浸させても硬化せずに繊維表面にとどまると共に、塗膜面に密着し均一な撥水性皮膜を形成する性能を有している。
【0013】
界面活性剤は、撥水性成分を水に分散させてエマルジョンにするための乳化剤として役立つ。この界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系のいずれの界面活性剤であってもよく、たとえば、アニオン系では脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等、カチオン系では第四級アンモニウム塩等、ノニオン系ではポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどがある。界面活性剤の配合量は、処理液中に0.05〜10重量部好ましくは0.1〜5重量部あればよく、0.05重量部より少ないと撥水性成分を十分に乳化できず分離してしまって安定性が悪くなるおそれあり、10重量部を超えると乳化性は問題ないが塗膜に対する撥水性が悪くなるおそれが生じる。
【0014】
撥水性成分を界面活性剤で乳化させてなる塗膜洗浄剤としては、一般に工業用又は化粧品用として市販されている物を使用しても良く、これらを使用すれば十分な乳化設備がなくても水に混ぜるだけで済むために効率がよいという利点がある。
【0015】
本発明に係る塗膜洗浄剤では、改艶成分としての添加剤が、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマー又はワックスエマルジョンから選ばれる。アクリルシリコーンワックスエマルジョンは、アクリレーツ、アルキル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチコンなどという組成表示名称を持つ。この改艶成分は、上記した撥水性成分を界面活性剤で乳化させてなるエマルジョンと組み合わせることによって優れた初期艶を発揮し、初期艶を向上させることに役立ち、また、初期艶の光沢性も高めるので、特許文献1によって提案されている塗膜洗浄剤に含有されているジメチルポリシロキサン(シリャーンオイル)によって得られる赤っぽい艶とは違って、固形ワックスのようなクリアーな光沢が得られて艶品質の向上にも役立つ。
【0016】
添加剤としての改艶成分には、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーだけを選択しても、ワックスエマルジョンだけを選択しても、それら二者の両方を選択してもよく、二者の両方を選択すると、どちらか一方だけを選択した場合よりも、初期艶や艶の持続性を高め得ることが判っている。
【0017】
添加剤としての改艶成分にアクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーだけを選択する場合には、そのアクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーの有効成分の含有量を0.01〜1.0wt%とすることが望ましい。含有量が0.01wt%未満であると十分な艶出し効果が得られず、1.0wt%を越えると十分な艶出し効果が得られるとしても、塗膜面に過剰に付着して艶に濃淡むらが生じやすくなる。含有量が0.01〜1.0wt%の範囲に定められていると、十分な艶出し効果が得られ、かつ、艶の濃淡むらを生じにくい。
【0018】
添加剤としての改艶成分にワックスエマルジョンだけを選択する場合には、そのワックスエマルジョンの有効成分の含有量を0.01〜1.0wt%とすることが望ましい。ワックスエマルジョンは、初期艶と艶の持続性を向上させることに役立ち、特に、洗浄時での艶の耐久性を高めることに役立つ。ワックスエマルジョンの具体例としては、カルナバワックスのエマルジョンやその他のワックスを用いることが可能である。ワックスエマルジョンの有効成分の含有量は0.01〜1.0wt%とすることが望ましい。含有量が0.01wt%未満であると十分な艶出し効果や満足のいく艶の持続性が得られにくく、1.0wt%を越えると十分な艶出し効果が得られるとしても、塗膜面に過剰に付着して艶に濃淡むらが生じやすくなったり、固形分が過剰になって皮膜を一様に延ばすことができくなるおそれがある。含有量が0.01〜1.0wt%の範囲に定められていると、十分な艶出し効果が得られ、艶の濃淡むらを生じにくく、固形分が過剰になることが抑えられて皮膜を一様に延ばしやすくなる。
【0019】
上記のように、添加剤としての改艶成分に、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーとワックスエマルジョンとの両方を選択すると、初期艶や艶の持続性を高め得ることが判っている。また、両者の合計配合量を増やせば増やすほど艶が顕著に現れることが判っている。しかし、配合量が多くなりすぎると艶の濃淡むらが顕著に現れる。そこで、両方を選択する場合には、それぞれの有効成分の配合比率を1:1〜2とし、両方の有効成分を合わせた含有量を0.02〜1.0wt%とすることが望ましい。配合比率と配合量をこのように定めると、十分な初期艶や艶の持続性が発揮され、濃淡むらが目立たなくなって高い艶品質が得られる。また、ワックスエマルジョンリッチの状態、すなわちワックスエマルジョンの配合量をやゝ多めにして配合比率を1:1〜2に保つことが、艶の均一性と持続性などのバランスを保つ上で好ましい。言い換えると、ワックスエマルジョンリッチの状態で配合比率を1:1〜2に保つと、初期艶が早期に損なわれてしまって艶の持続性や均一性が損なわれてしまうといった事態を回避しやすくなる。
尚、「特許請求の範囲」及び本明細書に記載の「有効成分」とは、成分中の溶剤を除いた、残りの成分を示しており、成分中の有効濃度分を示している。
【0020】
本発明に係る塗膜洗浄剤は、皮膜の均一化を促す機能を備える補助剤を添加したものであってもよい。
【0021】
補助剤としては、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョン、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョン、水溶性溶剤、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンから選ばれる皮膜改質成分を含有するものを用いることができる。また、上掲の皮膜改質成分は、それぞれを単独で、あるいは、他の種類の皮膜改質成分と共に選択して用いることが可能である。
【0022】
有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョンには、ワックスパウダーを用い得ることは勿論、シリコーンパウダーを用いることも可能である。補助剤として有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョンを添加することにより、パウダーの吸収能によって塗膜面に対する定着量を調整することが可能になるだけでなく、潤滑性が向上してクロスを用いて洗浄作業を行うときの滑り性が向上し、作業を楽に行うことができるようになるという利点がある。加えて、滑り性の向上が傷付き防止性を高めのことに役立つ。
【0023】
補助剤としての皮膜改質成分に、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョンを単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択した場合には、その有効成分の含有量を0.05〜2.0wt%とすることが望ましい。含有量が0.05wt%未満であると定着量を調整する効果が発揮されなくなり、2.0wt%を越えると、均一の皮膜が得られたとしても艶出し成分を吸収しすぎて初期艶の品質が低下する。含有量が0.05〜2.0wt%であると、定着量を調整することが容易であり、均一の皮膜が得られて初期艶の品質が低下を招かない。
【0024】
アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョンは、初期艶と艶の持続性を向上させるためのワックス分を可塑化して延ばしやすくすることに役立つ。ワックス分の配合量を増やすほど初期艶の艶の持続性が高まるけれども、ワックス分が固形物であるために過剰に配合すると成分が延びにくくなり艶むらが発生しやすくなるけれども、このアルキル変性シリコーンオイルのエマルジョンを配合することによってワックス分が過剰気味であっても延ばしやすくなるという作用を発揮する。
【0025】
補助剤としての皮膜改質成分に、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョンを単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択した場合には、その有効成分の含有量を0.01〜1.0wt%とすることが望ましい。含有量が0.01wt%未満であるとワックス分の可塑化効果が発揮されなくなってワックス分を均一に延ばしにくなる。特に、冬場のように塗膜面(塗装板面)が冷たいときに延ばしにくくなる。なお、夏場のように塗膜面の温度が高くワックス分自体が熱で可塑化されているときには変化はない。1.0wt%を越えると、十分にワックス分を可塑化することが可能になるけれども、塗膜面に過剰に成分が付着して艶に濃淡むらが生じやすい。含有量が0.01〜1.0wt%であると、ワックス分を均一に延び、濃淡むらが生じにい。
【0026】
水溶性溶剤にはグリコール類、具体的にはプロピレングリコールを使用することができる。この成分を配合すると、皮膜成分が均一に延びやすくなる。この成分は水に比べて蒸発速度が遅いので、塗膜面が熱くて水分が蒸発しやすい状態でも、塗膜面に残って成分を延ばしやすくする作用を発揮する。
【0027】
補助剤としての皮膜改質成分に、グリコール類でなる水溶性溶剤を単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択した場合には、その有効成分の含有量を0.1〜3.0wt%とすることが望ましい。0.1wt%未満であると、皮膜成分を均一に延ばすことができなくなり、3.0wt%よりも多くすると、艶の成分の定着が阻害されて艶の持続性が低下する。含有量が0.1〜3.0wt%であると、皮膜成分が均一に延び、艶の持続性の低下が起こらない。
【0028】
ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンには、拭き上げ時の滑り性を向上させて作業性を改善したり、定着成分を綺麗に仕上げる作用を発揮する。
【0029】
補助剤としての皮膜改質成分に、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンを単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択した場合には、有効成分の含有量を0.01〜2.0wt%とすることが望ましい。含有量が0.01wt%未満であると、十分な滑り性の向上や艶の成分を均一にする作用を発揮させ得ない。2.0wt%を越えると、塗膜面に過剰に成分が付着して艶に濃淡むらが生じる。含有量が0.01〜2.0wt%であると、滑り性や艶の成分を均一にする作用が十分に発揮さ、艶に濃淡むらが生じにくくなる。
【0030】
補助剤としての皮膜改質成分の皮膜改質性能に及ぼす重要度は、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョン、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョン、水溶性溶剤、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンの順に低くなるけれども、基本的にはどの成分も必要である。
【0031】
本発明に係る塗膜洗浄用ウェットクロスは、上記した塗膜洗浄剤を織布又は不織布でなるクロスに含浸させてなる。クロスは天然繊維又は合成繊維を単独又は混紡した繊維で作った織物であっても、フェルト、不織布といった化学雑巾の基布になる物なら何でもよい。コストや汎用性から見ると不織布がもっとも好ましい。使用する繊維としては、天然系では綿、絹、麻、ウール、合成系ではポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アルキル、ナイロン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レーヨンなどがある。
【0032】
クロスを不織布とした場合には、塗膜洗浄剤の含浸量を不織布重量の1.8〜4.0倍とすることが適切であり、好ましくは2.0〜3.0倍、さらに好ましくは2.0〜2.5倍である。含浸量が1.8倍未満であると、艶出しに必要な成分が十分に塗膜面上に乗らなくなって十分な艶出し作用が得られない。含浸量が4.0倍を越えると、拭き上げ作業をしたときに過剰な液が塗膜面上に残りやすくなり、拭きむらが生じやすい。また、クロスの吸収性能が飽和状態に近付くので、汚れの除去性も低下する。含浸量が1.8〜4.0倍、好ましくは2.0〜3.0倍、さらに好ましくは2.0〜2.5倍であると、艶出しに必要な成分が十分に塗膜面上に乗るようになって十分な艶出し作用が得られ、過剰な液が塗膜面上に残りにくく、汚れの除去性の低下も抑えられる。2.0〜2.5倍にした場合にこの作用が顕著に発揮される。
【0033】
クロスを構成している不織布は、親水性繊維でなる中心層とその中心層を挟む外層としての疎水性マイクロファイバー繊維とで3層構造を形成していることが望ましい。また、マイクロファイバー繊維はポリプロピレンとポリエチレンとの混繊維でなるものであってもよい。マイクロファイバー繊維には、繊維の細さが0.3デニール未満の超極細繊維を単独又は通常の繊維と組み合わせたものを使用することが望ましく、そのようなマイクロファイバー繊維は、水や汚れをよく吸収して塗膜面を磨く作用を発揮し、傷付きを防ぐことにも有益である。クロスがこの構成を有していると、特許文献1によって提案されている塗膜洗浄剤よりも有効成分量が多く含まれているとしても、塗膜面に付着する有効成分量が抑制されるからである。
【0034】
本発明に係る塗膜洗浄用ウェットクロスは、ウエット状態で使用するため外部に出したままだと乾燥して使用できなくなる。このため一般に市販されているウエットティッシュのように水分の蒸発を防ぐ容器、たとえばプラスティック容器や、ピロー包装(ポリエチレンやポリエステルなどの樹脂やアルミ箔やアルミの蒸着フィルムなどで構成される包装フィルムを使用して包装フィルムの縦の中央部を張り合わせ上下端を熱接着した包装)に入れることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る塗膜洗浄剤及び塗膜洗浄用ウェットクロスは、トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分を、界面活性剤で乳化させてなる塗膜洗浄剤において、添加剤として、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマー又はワックスエマルジョンから選ばれる改艶成分を含有する。そのため、洗車、水滴の拭き取り、ワックスの塗布、乾燥、拭き上げと言った一連の作業を自動車のボディを拭き上げるという簡単な作業を行うだけで行うことができるだけでなく、特に、初期艶や艶の持続性が添加剤としての改艶成分によって改善されるという効果が奏される。
【0036】
また、補助剤として、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョン、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョン、水溶性溶剤、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンから選ばれる皮膜改質成分を含有させることが可能であるので、そうすることにより、皮膜の延ばしやすさが改善されたり、艶むらの発生が抑えられたりするという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、実施例、比較例によって本発明を説明する。使用した成分は以下のものである。
【0038】
(1)シリコーン樹脂エマルジョンA
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサンに溶解させてエマルジョン化したもの(有効濃度40wt%、使用したジメチルポリシロキサン粘度350cst、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルポリシロキサンの混合比率30:70)。
(2)シリコーン樹脂エマルジョンB
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサンに溶解させてエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%、使用したジメチルポリシロキサン粘度6cst、トリメチルシロキシケイ酸とジメチルポリシロキサンの混合比率50:50)。
(3)シリコーン樹脂エマルジョンC
トリメチルシロキシケイ酸をシクロペンタシロキサンに溶解させてエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%、使用したシクロペンタシロキサン粘度4cst、トリメチルシロキシケイ酸とシクロペンタシロキサンの混合比率50:50)。
(4)アクリルワックスシリコーンエマルジョンA
ワックス状のアクリル変性シリコーン(融点25〜30℃)をエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(5)アクリルワックスシリコーンエマルジョンB
ワックス状のアクリル変性シリコーン(融点45〜55℃)をエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(6)ワックスエマルジョンA
カルナバワックスをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(7)ワックスエマルジョンB
ポリエチレンワックス(分子量約500)をエマルジョン化したもの(有効濃度35wt%)。
(8)ワックスパウダーの水分散体
ポリエチレンワックスパウダーの水分散体(有効濃度32wt%)。
(9)シリコーンゴムパウダーの水分散体
球状のシリコーンゴムパウダーの水分散体(有効濃度32wt%)。
(10)アルキル変性シリコーンエマルジョン
粘度1300cst、ジメチルポリシロキサンの側鎖にアルキル基を付けたもの(有効濃度30wt%)。
(11)ジメチルシリコーンエマルジョンA
粘度3000cstのジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(12)ジメチルシリコーンエマルジョンB
粘度10cstのジメチルポリシロキサンをエマルジョン化したもの(有効濃度30wt%)。
(13)水溶性溶剤
プロピレングリコール。
【0039】
〔実施例1〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 5.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
イオン交換水 94.00wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を94.0wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。30×30cmにカットしたポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
尚、上記の各成分の割合は、有効成分の割合を示すものではない。有効成分の割合は、各成分の有効濃度に基づいて、上記各成分の割合から算出される割合である。以下の実施例及び比較例に付いても同様である。
【0040】
〔実施例2〕
シリコーン樹脂エマルジョンB 5.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンB 0.30wt%
ワックスエマルジョンB 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 1.00wt%
イオン交換水 93.20wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を93.2wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例1で用いたものと同様の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0041】
〔実施例3〕
シリコーン樹脂エマルジョンB 3.00wt%
シリコーン樹脂エマルジョンC 1.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 0.50wt%
シリコーンゴムパウダーの水分散体 2.00wt%
イオン交換水 92.50wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を92.5wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例1で用いたものと同様の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0042】
〔実施例4〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 3.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンB 0.50wt%
ワックスエマルジョンB 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 0.50wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 1.00wt%
ワックスパウダーの水分散体 2.00wt%
イオン交換水 92.50wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を92.5wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。30×30cmにカットした中心層がレーヨン、外層がポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0043】
〔実施例5〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 2.00wt%
シリコーン樹脂エマルジョンB 1.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンB 1.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 1.50wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
シリコーンゴムパウダーの水分散体 2.00wt%
プロピレングリコール 1.00wt%
イオン交換水 92.50wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を92.5wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。30×30cmにカットした中心層がパルプ、外層がポリエチレン/ポリエステルのマイクロファイバーで構成された3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0044】
〔実施例6〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 3.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンB 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 0.50wt%
シリコーンゴムパウダーの水分散体 2.00wt%
プロピレングリコール 1.00wt%
イオン交換水 91.50wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を91.5wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例4で用いたものと同様の3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0045】
〔実施例7〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 2.00wt%
シリコーン樹脂エマルジョンC 1.50wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 0.50wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 0.50wt%
ワックスパウダーの水分散体 0.50wt%
イオン交換水 94.50wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を94.5wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例4で用いたものと同様の3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0046】
〔実施例8〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 3.00wt%
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンA 0.50wt%
ワックスエマルジョンB 0.50wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 0.50wt%
シリコーンゴムパウダーの水分散体 2.00wt%
プロピレングリコール 1.00wt%
イオン交換水 91.00wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を91.0wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例4で用いたものと同様の3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して4.0重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0047】
〔比較例1〕
シリコーン樹脂エマルジョンA 5.00wt%
イオン交換水 95.00wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を95.0wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例1で用いたものと同様の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0048】
〔比較例2〕
アクリルワックスシリコーンエマルジョンA 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンB 3.00wt%
イオン交換水 96.00wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を94.0wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例1で用いたものと同様の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0049】
〔比較例3〕
ワックスエマルジョンB 1.00wt%
アルキル変性シリコーンエマルジョン 1.00wt%
ジメチルシリコーンエマルジョンA 3.00wt%
イオン交換水 95.00wt%
100.00wt%
上記の如く、イオン交換水以外の成分を95.0wt%のイオン交換水に溶解又は分散させて含浸液を調整した。実施例4で用いたものと同様の3層構造の不織布(目付け量70g/m2 )に不織布重量に対して2.5重量倍に相当する含浸液を均一に含浸させてサンプルを得た。
【0050】
〔試験方法〕
作成した処理布(ウェットクロス)を使用して初期艶、皮膜の均一性、艶の耐久性、皮膜の撥水性について調べた。評価試験は以下のように行った。試験用として平成17年型トヨタマークIIブリット黒色塗装車のボンネット部分を使用した。クリーナワックスをかけて汚れを除去し、さらに残っているワックスの被膜部分を脂肪族系溶剤で除去して試験面を形成させた。この試験面を12区画に(1区画は約25×40cm四方)分けた後、それぞれのサンプルを使用して拭き上げた。なお、1区画だけ空試験として無処理で残した。試験結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
評価項目の表記の説明は次の通りである。
【0053】
・処理直後の艶
拭き上げ直後の艶を目視によって確認した。
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0054】
・皮膜の均一性
拭き上げた後の仕上がり(むらや除去しきれていない汚れの有無など)を目視によって確認した。
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0055】
・処理直後の撥水状態
試験面に水をかけて水玉の状態を目視によって判定した。
◎ 水玉になってよくはじく。
○ はじきはあるが、水玉が変形している。
△ やゝはじきが悪い。
× ほとんどはじかない。
【0056】
・艶の持続性
艶の持続について、屋外暴露1か月経過後の艶の持続性を目視によって判定した。
◎ 大変良い
○ 良い
△ 普通
× 悪い
【0057】
・撥水の持続性
撥水の持続について、1か月経過後の水玉の状態を目視で判定した。
◎ 水玉になってよくはじく。
○ はじきはあるが、水玉が変形している。
△ やゝはじきが悪い。
× ほとんどはじかない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチルシロキシケイ酸をジメチルポリシロキサン又はその変性体に溶かして得られる撥水性成分を、界面活性剤で乳化させてなる塗膜洗浄剤において、
添加剤として、アクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマー又はワックスエマルジョンから選ばれる改艶成分を含有することを特徴とする塗膜洗浄剤。
【請求項2】
補助剤として、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョン、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョン、水溶性溶剤、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンから選ばれる皮膜改質成分を含有する請求項1に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項3】
添加剤としての改艶成分に、上記二者のうちからアクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーだけが選択され、そのアクリルシリコーンワックスエマルジョンコポリマーの有効成分の含有量が0.01〜1.0wt%である請求項1に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項4】
添加剤としての改艶成分に上記二者のうちからワックスエマルジョンだけが選択され、そのワックスエマルジョンの有効成分の含有量が0.01〜1.0wt%である請求項1に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項5】
添加剤としての改艶成分に上記二者の両方が選択され、それぞれの有効成分の配合比率が1:1〜2で、両方の有効成分を合わせた含有量が0.02〜1.0wt%である請求項1に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項6】
ワックスエマルジョンリッチの状態で上記配合比率を保っている請求項5に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項7】
補助剤としての皮膜改質成分に、有機系パウダーのエマルジョン又はディスパージョンが単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択されていて、その有効成分の含有量が0.05〜2.0wt%である請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項8】
補助剤としての皮膜改質成分に、アルキル変性シリコーンオイルのエマルジョンが単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択されていて、その有効成分の含有量が0.01〜1.0wt%である請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項9】
補助剤としての皮膜改質成分に、グリコール類でなる水溶性溶剤が単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択されていて、その有効成分の含有量が0.1〜3.0wt%である請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項10】
補助剤としての皮膜改質成分に、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンが単独又は他の種類の上記皮膜改質成分と共に選択されていて、その有効成分の含有量が0.01〜2.0wt%である請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載した塗膜洗浄剤。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した塗膜洗浄剤を織布又は不織布でなるクロスに含浸させてなることを特徴とする塗膜洗浄用ウェットクロス。
【請求項12】
上記クロスが不織布でなり、上記塗膜洗浄剤の含浸量が不織布重量の1.8〜4.0倍である請求項11に記載した塗膜洗浄用ウェットクロス。
【請求項13】
上記クロスが不織布でなり、上記塗膜洗浄剤の含浸量が不織布重量の2.0〜2.5倍である請求項11に記載した塗膜洗浄用ウェットクロス。
【請求項14】
上記クロスを構成している不織布が、親水性繊維でなる中心層とその中心層を挟む外層としての疎水性マイクロファイバー繊維とで3層構造を形成している請求項11ないし請求項13のいずれか1項に記載した塗膜洗浄用ウェットクロス。
【請求項15】
上記マイクロファイバー繊維がポリプロピレンとポリエチレンとの混繊維でなる請求項14に記載した塗膜洗浄用ウェットクロス。

【公開番号】特開2008−163207(P2008−163207A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354847(P2006−354847)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】