説明

塗装システム

【課題】塗料ポンプの制御を工夫し、制御データの最適化に要する時間を極力短縮する。
【解決手段】ロボット制御盤30は、制御用塗装パスデータに基づいて、ロボット31を制御する。これによって、制御用塗装パスデータに基づく塗装パスに沿って塗装機42が移動することになる。一方、吐出制御盤40は、制御用吐出制御データに基づいて、シリンダポンプ41を制御する。これによって、制御用吐出制御データに基づく塗料の吐出が塗装機42で実現される。ここで、ロボット制御盤30による制御開始からカウントされる時間情報に基づいて、吐出制御盤40がシリンダポンプ41を制御する。つまり、シリンダポンプ41の制御がタイマ制御とし、吐出制御データを、塗装パスデータから独立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ボディなどの塗装を行うための塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディ等のワークを塗装する場合、トンネル形に構成された塗装ブースで行われるのが一般的である。塗装ブースには、塗装機が配設され、コンベアにより移送可能にされたワークに対し、塗装機の塗料出口より、塗料が噴射される。このとき、塗装機は、通常、ロボットのアーム等に取り付けられており、所定の制御データにより、塗装ブース内を移動しながらワークに対して塗料を噴射する。
【0003】
したがって、このような制御データによって、塗装機の移動経路(塗装パス)、塗料の噴射タイミングおよび噴射量が異なり、ワークに付着する塗装膜厚が異なってくる。そのため、塗装に先立って制御データを最適化して所望の塗装膜厚を得るために、実際のワークを用いたトライアンドエラーが行われている。
【0004】
具体的に従来の塗装システムについて、図2に基づき、その流れを説明する。
【0005】
まず、最初に、ワーク形状情報および塗装機機能情報が入力される。ワーク形状情報は、例えば自動車ボディB(ワーク)のCADデータとして入力される。また、塗装機機能情報とは、塗装機固有の機能に関する情報であり、例えば、噴射命令が信号として送出されてから、実際に塗料が噴射されるまでのタイムラグなどである。
【0006】
次に作業者が塗装パスと吐出制御データとを作成する。塗装パスは、塗装機の移動経路であってCADデータから塗装面を複数の領域に分けて塗装順序を教示していく。吐出制御データは、塗料の噴射タイミングや噴射量を制御するためのデータであり、塗装パスに合わせて作成される。
【0007】
続いて、これらのデータがそれぞれ制御用のデータに変換されて入力される。この変換は、ロボットなどの仕様に合わせてなされるものである。そして、吐出制御盤が介在する構成もあるが、最終的には、ロボット制御盤によって、ロボットのアーム制御がなされると共に、塗料ポンプが制御されて、ワークに対する塗装が行われる。
【0008】
実際にワークが塗装されると、ワークの塗装膜厚を作業者が測定し、制御用塗装パスデータおよび制御用吐出制御データを修正する。そして、上述したような作業を繰り返すことによって制御データを最適化する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−264059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように従来の塗装システムでは、ロボット制御盤が塗料ポンプを制御する構成となっている。すなわち、アームを自在に動かすためロボット制御は6軸を制御して行われるが、塗料ポンプを便宜上ロボットの7軸目として考え、塗料ポンプを制御することがなされている。
【0010】
ロボット制御とポンプ制御との同期をとるという意味において、塗料ポンプをロボット制御における7軸目とすることは有効であるが、反面、次のような問題がある。
【0011】
それは、制御データの修正が困難になるということである。その理由は、ロボットのアーム制御を実現するための塗装パスデータに対し、塗料ポンプを制御するための吐出制御データが従属した関係となっているからである。具体的には、塗装パス上の所定のポイントで塗料ポンプを制御することになるため、吐出制御データは、少なくとも3次元のデータに関係付けられる。したがって、塗装パスデータが変更されて塗装パスが変わると、上述したポイントが変わってくるため、これに応じて吐出制御データまでも変更する必要があった。また、吐出タイミングなどの吐出制御データを変更する場合には、塗装パス上のポイントで指定する必要があった。そのため、制御データの修正に多大な工数を要する結果となっていた。
【0012】
なお、塗料ポンプの制御を7軸目とせず、塗料ポンプをロボット制御とは別に制御する構成も考えられるが、塗装パス上のポイントにおいて塗装ポンプを制御するという思想は異ならない。
【0013】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、塗料ポンプの制御を工夫し、制御データの最適化に要する時間を極力短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0015】
手段1.被塗装物に塗料を噴射して塗装を行う塗装機と、
該塗装機を移動させるロボットと、
塗装パスデータに基づき、塗装の経路である塗装パスに沿って塗装機を移動させるよう前記ロボットを制御するロボット制御手段と、
前記塗装機から塗料を噴射するためのポンプと、
吐出制御データに基づき、前記ポンプを制御して塗料を吐出させるポンプ制御手段とを備え、
前記吐出制御データを、前記ロボット制御との同期をとるための時間情報に関連付けることによって、前記塗装パスデータから独立させたことを特徴とする塗装システム。
【0016】
手段1に記載の塗装システムは、塗装機、ロボット、ロボット制御手段、ポンプ、ポンプ制御手段を備えるものである。ここで、ロボット制御手段が、塗装パスデータに基づき、ロボットを制御し、塗装経路である塗装パスに沿って塗装機を移動させる。一方、ポンプ制御手段が、吐出制御データに基づき、ポンプを制御して、塗装機から塗料を吐出させる。
【0017】
本発明では特に、吐出制御データを時間情報に関連付けることによって、塗装パスデータから独立させた。時間情報とは、ロボット制御との同期をとるためのものである。
【0018】
従来、吐出制御データは、塗装パス上の所定のポイントに関連付けられていた。したがって、塗装パスデータが変更されて塗装パスが変わると、上述したポイントが変わってくるため、これに応じて吐出制御データまでも変更する必要があった。また、吐出タイミングなどの吐出制御データを変更する場合には、塗装パス上のポイントで指定する必要があった。
【0019】
これに対して、本発明では、吐出制御データを時間情報に関連付けたため、塗装パス上のポイントを考慮する必要がない。つまり、1次元の時間情報のみに吐出制御データが関連付けられるのである。したがって、制御データの修正に要する工数を減少させることができ、制御データの最適化に要する時間を短縮することができる。
【0020】
手段2.手段1に記載の塗装システムにおいて、
前記時間情報は、前記ロボット制御の開始と共にカウントされるものであることを特徴とする塗装システム。
【0021】
上述した時間情報は、例えば手段2に示すように、ロボット制御の開始と共にカウントされるものとすることが考えられる。このようにすれば、ロボット制御の開始から所定時間経過後にポンプを制御するといういわゆるタイマ制御となり、吐出制御データの修正に塗装パス上のポイントを考慮する必要がないため、制御データの最適化に要する時間を短縮することができる。
【0022】
手段3.手段1又は2に記載の塗装システムにおいて、
コンピュータ上の膜厚シミュレーションを繰り返すことによって前記塗装パスデータおよび吐出制御データを作成するデータ作成手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【0023】
手段3によれば、データ作成手段を備えている。データ作成手段は、コンピュータ上の膜厚シミュレーションを繰り返すことによって塗装パスデータおよび吐出制御データを作成する。このように実際の塗装に先立ってコンピュータ上で仮想的なトライアンドエラーを行うようにすれば、制御データの最適化に要する時間を短縮することができる。
【0024】
手段4.手段3に記載の塗装システムにおいて、
前記データ作成手段は、作成すべき塗装パスに近似した塗装パスの情報である基本塗装パス情報を入力することによって塗装パスデータおよび吐出制御データを作成することを特徴とする塗装システム。
【0025】
具体的には手段4に示すように、作成すべき塗装パスに近似した塗装パスの情報である基本塗装パス情報を入力してやることによって、上述したデータ作成処理を実行することが考えられる。基本塗装パス情報としては、過去に作成された塗装パスデータのうちで最も今回の塗装パスに近いものを選択することが考えられる。このように基本塗装パス情報を入力すれば、膜厚シミュレーションによるトライアンドエラーの回数が少なくなる可能性が高く、制御データの最適化に要する時間を短縮できる可能性が高くなる。
【0026】
手段5.手段3又は4に記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータおよび前記吐出制御データに基づく前記被塗装物の塗装膜厚に基づき、前記データ作成手段が、前記塗装パスデータおよび前記吐出制御データを再度作成可能になっていることを特徴とする塗装システム。
【0027】
手段5によれば、塗装パスデータおよび吐出制御データに基づいて実際に塗装を行った結果としての被塗装物の塗装膜厚に基づいて、データ作成手段が、塗装パスデータおよび吐出制御データを再度作成可能であるため、所望の結果が得られなかったとしても、従来のような手作業による塗装パスの作成と異なり、制御データの再度の作成も簡単になる。
【0028】
なお、被塗装物の塗装膜厚の測定は、半自動的に行う技術も知られている。しかしながら、作業者の手によるところも大きい。したがって、次に示すような手法で制御データの作成又は補正を自動化することが考えられる。
【0029】
手段6.手段3乃至5のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータに基づく前記塗装機の実際の移動状態に基づき、前記データ作成手段は、前記塗装パスデータを再度作成可能になっていることを特徴とする塗装システム。
【0030】
手段6によれば、塗装機の実際の移動状態に基づき、データ作成手段は、塗装パスデータを再度作成可能となっている。したがって、塗装パスデータの再度の作成が極めて容易になる。
【0031】
手段7.手段1乃至6のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータに基づく前記塗装機の実際の移動状態に基づき、前記塗装パスデータを補正する塗装パスデータ補正手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【0032】
手段7によれば、塗装パスデータ補正手段を備えており、塗装機の実際の移動状態に基づき、塗装パスデータ補正手段が塗装パスデータを補正する。したがって、従来の手作業による補正とは異なり、塗装パスデータの自動補正が可能となる。
【0033】
手段8.手段6又は7に記載の塗装システムにおいて、
前記移動状態は、加速度センサを用いて測定されることを特徴とする塗装システム。
【0034】
塗装機の実際の移動状態はセンサなどによって取得できるが、例えば手段8に示すように、加速度センサを用いて測定することが考えられる。このようにすれば、簡単に塗装機の実際の移動状態を取得できる。
【0035】
手段9.手段1乃至8のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記吐出制御データに基づく前記塗装機の実際の吐出状態に基づき、前記吐出制御データを補正する吐出制御データ補正手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【0036】
手段9によれば、吐出制御データ補正手段を備えており、塗装機の実際の吐出状態に基づき、吐出制御データ補正手段が吐出制御データを補正する。したがって、従来の手作業による補正とは異なり、吐出制御データの自動補正が可能となる。
【0037】
手段10.手段9に記載の塗装システムにおいて、
前記吐出状態は、前記ポンプ制御手段による塗料の吐出命令がなされてから、前記被塗装物に塗料が付着するまでの時間情報を含んでいることを特徴とする塗装システム。
【0038】
塗装機の実際の吐出状態として様々な情報が考えられるが、例えば手段10に示すように、ポンプ制御手段による塗料の吐出命令がなされてから被塗装物に塗料が付着するまでの時間情報を含むものとすることが考えられる。このようにすれば、簡単に塗装機の吐出状態をデータとして表すことができる。
【0039】
手段11.手段1乃至10のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記ポンプとして、シリンダポンプを採用したことを特徴とする塗装システム。
【0040】
ポンプとしてギヤポンプを採用することが考えられるが、経年劣化のおそれがあった。このような劣化があると制御データの補正が必要となってくる。この点、手段11によれば、シリンダポンプを採用したため、経年劣化の可能性が小さく、劣化による制御データの補正を行う必要が少ないため有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態の塗装システムについて具体的に説明する。
【0042】
図1は、本実施形態の塗装システムを示す説明図である。塗装システムは、データ作成装置10、膜厚シミュレーション装置11、データ補正装置20、ロボット制御盤30、ロボット31、吐出制御盤40、シリンダポンプ41、および塗装機42を備えている。
【0043】
データ作成装置10、膜厚シミュレーション装置11、データ補正装置20は、いわゆるコンピュータシステムとして実現される。もちろん、それぞれを別体として構成する必要はなく、例えばデータ作成装置10およびデータ補正装置20の両機能を同一のコンピュータシステムで実現してもよい。
【0044】
ロボット31は、アーム32を有しており、このアーム32の先端部に塗装機42が取り付けられている。これによって、ロボット制御盤30は、ロボット31を制御して塗装パスに沿って塗装機42を移動させることが可能となる。
【0045】
塗装機42は、噴頭(例えばベル)43を有している。シリンダポンプ41は、塗装機42の噴頭43から塗料を噴射するためのポンプであり、このシリンダポンプ41は、吐出制御盤40により制御される。
【0046】
このような塗装システムによって、「被塗装物」としての自動車ボディBの塗装が行われる。
【0047】
次に、本実施形態における塗装システムの動作について説明する。
【0048】
まず、データ作成装置10には、ワーク形状情報、塗装機機能情報、基本塗装パス情報が入力される。ワーク形状情報は、自動車ボディBのCADデータとして入力される。また、塗装機機能情報は、塗装機固有の機能に関する情報であり、例えば、吐出制御盤40から吐出命令が信号として送出されてから、塗装機42の噴頭43から実際に塗料が吐出されるまでのタイムラグなどである。基本塗装パス情報は、過去に作成された塗装パスデータのうちで今回設定すべき塗装パスに最も近い塗装パスデータである。
【0049】
これらの情報入力がなされると、データ作成装置10は、膜厚シミュレーション装置11にてなされる膜厚シミュレーション結果を基に、塗装パスデータおよび吐出制御データを自動的に作成する。ここで自動作成される塗装パスデータおよび吐出制御データは、膜厚シミュレーション装置11における膜厚シミュレーションを繰り返し実行することによって、コンピュータ上の仮想的なトライアンドエラーを経て、コンピュータ上の理想的なデータとなる。すなわち、データ作成装置10は、図中に示したように、理想塗装パスデータおよび理想吐出制御データを出力する。
【0050】
次に、これらの塗装パスデータおよび吐出制御データは、データ補正装置20に入力される。ここでは、第1回目のデータ補正がなされることもあるが、通常はそのまま、塗装パスデータは制御用塗装パスデータとして、また、吐出制御データは制御用吐出制御データとして変換され、それぞれロボット制御盤30と吐出制御盤40とに出力される。
【0051】
ロボット制御盤30は、制御用塗装パスデータに基づいて、ロボット31を制御する。これによって、制御用塗装パスデータに基づく塗装パスに沿って塗装機42が移動することになる。一方、吐出制御盤40は、制御用吐出制御データに基づいて、シリンダポンプ41を制御する。これによって、制御用吐出制御データに基づく塗料の吐出が塗装機42で実現される。ここで本実施形態では、ロボット制御盤30による制御開始からカウントされる時間情報に基づいて、吐出制御盤40がシリンダポンプ41を制御する。つまり、シリンダポンプ41の制御がタイマ制御となっているのである。したがって、塗装パス上の所定のポイントでポンプを制御する構成と異なり、吐出制御データが、塗装パスデータから独立したものとなっている。
【0052】
このような構成の下、上述したデータ補正装置20は、実際の吐出状態データに基づき、吐出制御データを自動的に補正する。吐出状態データは、自動的に取得され、例えば、吐出制御盤40から吐出命令がシリンダポンプ41へ送出されてから、塗料が自動車ボディBに付着するまでの時間情報であることが考えられる。
【0053】
また、データ補正装置20は、実際の動き状態データに基づき、塗装パスデータを自動的に補正する。動き状態データは、加速度センサなどを用いて自動的に取得され、例えば、等速移動を指示した部分における加速度をもった移動情報や、直角に移動すべきコーナー部分における円弧状の移動情報である。
【0054】
さらにまた、場合によっては、データ作成装置10が、実際の動き状態データに基づき、塗装パスデータを再度作成する。例えば、塗装パスデータの補正では対応できないほど、取得された実際の動き状態データが実際の塗装パスとズレている場合である。
【0055】
また、データ作成装置10は、実際の塗装結果データに基づいて、必要があれば、塗装パスデータおよび吐出制御データを再度作成可能である。塗装結果データは、実際の自動車ボディBの塗装膜厚であり、近年半自動的に測定する技術も開発されている。ただし、作業者が測定してデータ作成装置10へ入力する構成を採用してもよい。
【0056】
なお、本実施形態におけるロボット制御盤30が「ロボット制御手段」に相当し、吐出制御盤40が「ポンプ制御手段」に相当する。また、データ作成装置10が「データ作成手段」に相当し、データ補正装置20が「塗装パスデータ補正手段」および「吐出制御データ補正手段」に相当する。
【0057】
次に、本実施形態の塗装システムが発揮する効果を説明する。
【0058】
本実施形態の塗装システムでは、ロボット制御盤30による制御開始からカウントされる時間情報に基づいて、吐出制御盤40がシリンダポンプ41を制御する。つまり、シリンダポンプ41の制御がタイマ制御となっており、塗装パス上の所定のポイントでポンプを制御する構成と異なり、吐出制御データが、塗装パスデータから独立したものとなっている。これによって、吐出制御データの修正に塗装パス上のポイントを考慮する必要がないため、所望の塗装膜厚を得るための制御データの最適化に要する時間を短縮することができる。
【0059】
また、本実施形態では、データ作成装置10が、膜厚シミュレーション装置11にてなされる膜厚シミュレーション結果を基に、塗装パスデータおよび吐出制御データを自動的に作成する。ここで自動作成される塗装パスデータおよび吐出制御データは、膜厚シミュレーション装置11における膜厚シミュレーションが繰り返し実行されることによって、コンピュータ上の仮想的なトライアンドエラーを経て、コンピュータ上の理想的なデータとなる。このように実際の塗装に先立ってコンピュータ上で仮想的なトライアンドエラーを行うようにすれば、制御データの最適化に要する時間を短縮することができる。
【0060】
このとき、データ作成装置10には、基本塗装パス情報が入力される。このように基本塗装パス情報を入力すれば、膜厚シミュレーション装置11を用いたトライアンドエラーの回数が少なくなる可能性が高く、制御データの最適化に要する時間を短縮できる可能性が高くなる。
【0061】
さらにまた、本実施形態では、データ補正装置20が、実際の吐出状態データに基づき、吐出制御データを自動的に補正する。また、データ補正装置20が、実際の動き状態データに基づき、塗装パスデータを自動的に補正する。したがって、従来の手作業による補正とは異なり、吐出制御データや塗装パスデータの自動補正が可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、データ作成装置10が、実際の動き状態データに基づき、必要があれば、塗装パスデータを再度作成する。また、データ作成装置10は、実際の塗装結果データに基づいて、必要があれば、塗装パスデータおよび吐出制御データを再度作成可能である。したがって、所望の結果が得られなかったとしても、従来のような手作業による塗装パスの作成と異なり、制御データの再度の作成も簡単になる。
【0063】
さらにまた、本実施形態では、ポンプとしてシリンダポンプ41を採用した。これによって、ギヤポンプを採用する構成と比較して、経年劣化の可能性が小さく、劣化による制御データの補正を行う必要が少ないため有利である。
【0064】
以上、本発明は、上記実施の形態には何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の形態で実施できることは言うまでもない。
【0065】
(a)上記実施形態は、実際の吐出状態データ、実際の動き状態データ、および、実際の塗装結果データという3つのデータで制御データを作成および補正するものであったが、これらのデータのうちの少なくとも1つを用いて制御データを作成又は補正する構成としてもよい。
【0066】
(b)上記実施形態は、自動車ボディBを被塗装物としていたが、もちろん、別の被塗装物の塗装に本システムを適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施形態の塗装システムを示す説明図である。
【図2】従来の塗装システムを示す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10…データ作成手段としてのデータ作成装置、20…塗装パスデータ補正手段および吐出制御データ補正手段としてのデータ補正装置、30…ロボット制御手段としてのロボット制御盤、31…ロボット、32…アーム、40…ポンプ制御手段としての吐出制御盤、41…シリンダポンプ、42…塗装機、43…噴頭、B…被塗装物としての自動車ボディ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物に塗料を噴射して塗装を行う塗装機と、
該塗装機を移動させるロボットと、
塗装パスデータに基づき、塗装の経路である塗装パスに沿って塗装機を移動させるよう前記ロボットを制御するロボット制御手段と、
前記塗装機から塗料を噴射するためのポンプと、
吐出制御データに基づき、前記ポンプを制御して塗料を吐出させるポンプ制御手段とを備え、
前記吐出制御データを、前記ロボット制御との同期をとるための時間情報に関連付けることによって、前記塗装パスデータから独立させたことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装システムにおいて、
前記時間情報は、前記ロボット制御の開始と共にカウントされるものであることを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の塗装システムにおいて、
コンピュータ上の膜厚シミュレーションを繰り返すことによって前記塗装パスデータおよび吐出制御データを作成するデータ作成手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項3に記載の塗装システムにおいて、
前記データ作成手段は、作成すべき塗装パスに近似した塗装パスの情報である基本塗装パス情報を入力することによって塗装パスデータおよび吐出制御データを作成することを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータおよび前記吐出制御データに基づく前記被塗装物の塗装膜厚に基づき、前記データ作成手段が、前記塗装パスデータおよび前記吐出制御データを再度作成可能になっていることを特徴とする塗装システム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータに基づく前記塗装機の実際の移動状態に基づき、前記データ作成手段は、前記塗装パスデータを再度作成可能になっていることを特徴とする塗装システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記塗装パスデータに基づく前記塗装機の実際の移動状態に基づき、前記塗装パスデータを補正する塗装パスデータ補正手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の塗装システムにおいて、
前記移動状態は、加速度センサを用いて測定されることを特徴とする塗装システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記吐出制御データに基づく前記塗装機の実際の吐出状態に基づき、前記吐出制御データを補正する吐出制御データ補正手段を備えていることを特徴とする塗装システム。
【請求項10】
請求項9に記載の塗装システムにおいて、
前記吐出状態は、前記ポンプ制御手段による塗料の吐出命令がなされてから、前記被塗装物に塗料が付着するまでの時間情報を含んでいることを特徴とする塗装システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の塗装システムにおいて、
前記ポンプとして、シリンダポンプを採用したことを特徴とする塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7107(P2006−7107A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188208(P2004−188208)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】