説明

塗装システム

【課題】粘度の高い水系塗料を用いても中心部からボカシ部に徐々に塗装膜厚を滑らかに形成でき、大掛かりな設備やコストをかけることなく高効率で塗膜乾燥が行え、経験の浅い作業者であっても高品質な塗装を短時間で行い得る、補修のための塗装システムを提供する。
【解決手段】本塗装システムの一部の塗装ステップにおいて用いられるスプレーガン1は、引き金部34を掴んで把持部8側に引き寄せると、弁部16は弁座部15から離れ、弁部16が開き始める。弁部16にエアー制限部18が設けられているため、弁部16が開き始めて大きなエアー圧力が出されても圧力を適宜減圧するので、半クラッチ状態での塗装に極めて好都合である。
乾燥ステップでは、水系塗料の塗膜面から所定の距離を離してヒータ管を設置し、塗膜面に対し所定の波長域を含む熱量を発するヒータ管で、所定時間加熱し、その後、発熱を継続した状態で所定時間、ファンによる風を当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補修のための塗装システムに関し、より詳しくは、例えば、自動車の車体等の損傷部位を板金やパテにより修復した後に、特に、水系塗料を用いて補修するための塗装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な地球環境保護活動の高まりの中、環境負荷物質の削減が重要な課題となっている。自動車塗装ラインにおいては、塗料中に含まれる大気汚染の原因となっているVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)や塗装焼付け乾燥炉等でのエネルギー消費により地球温暖化の原因となるCOが多く排出されている。
これまで、一般的に国内では、自動車塗装における補修工程では、有機溶剤の塗料を使用して損傷部の補修を行っているのが実態であるが、上述したように、世界的な環境問題でもある上記VOC対策、PRTR法(Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出把握管理推進法)、消防法等の観点から自動車メーカの生産ラインのみならず、補修業界においても対策を講ずる必要性に迫られている。
このような背景から、使用材料も変遷がなされており、補修業界においては、キシレン・トルエンといった特定化学薬品の指定がなされた溶剤を削減すべく、それに代わる溶剤使用率の低いエコタイプの塗料が市場に投入されてきている。
【0003】
また、脱臭の問題、低溶剤の問題、上述したPRTR法問題、VOC対策の問題等々から、水性塗料が市場に投入され始めてきているので、補修業界、即ち、塗料のユーザ側においても、上記材料の変遷と共に、作業技術や作業環境の見直しが必要になってきている。
上記環境問題に対応するには、従来の有機溶剤稀釈型塗料(以下、単に、「有機溶剤型塗料」という)に代えて水稀釈型塗料(以下、単に「水系塗料」または「水性塗料」という)を用いることで塗装作業環境の改善および廃水処理負荷の低減が期待される。
しかしながら、水系塗料を用いることについては、種々の問題がある。
第1の水系塗料の問題として、スプレーガンで噴霧するときに、使用される塗料の粘度が、フォードカップ法で表すと、20〜50秒/Fcであるのに対し、従来の有機溶剤型塗料の粘度がフォードカップ法で表すと、10〜18秒/Fcカップであることから分るように、水系塗料は、高粘度タイプのものが主流である。そのため、通常使用されているスプレーガンでは、スプレーガンからの噴霧状態を均一にすることが難しく、塗装面において、オレンジピール的な肌となり、品質上の問題が起き易い。
【0004】
特に、ブロック塗装では、然程問題ない場合であっても、作業上必要不可欠であるボカシ塗装作業の際の肌の状態が悪くなり、ボカシ機能が働かず、修理車の非補修面と補修面の違いが目立ち易くなる。
第2の水系塗料の問題として、水系塗料は、高粘度であるがために塗装上の問題を生じるのであるが、こうした水系塗料を有機溶剤系塗料と同様に、粘度を低くして塗装作業性を高めるために水で稀釈された状態で塗料に供する試みもなされているが、有機溶剤系に比べて溶媒である水の蒸発速度が遅いので、自動車メーカの生産ラインでは塗装ブースと塗装乾燥炉との間に水を蒸発させるためのプレヒートゾーンのスペースを確保し、その設備を設けなければならないという別の問題が生じる。このようなプレヒートゾーンのスペースは、補修の現場において設けることは困難であり、自動車メーカにとっても、多くのエネルギーを消費することから水性塗料を導入できない、という問題があった。
【0005】
上述したような事情から、水系塗料の塗装時の空調の許容範囲を広げ、その後のプレヒート工程を大幅に削減し得る水系塗料の塗装方法および塗装装置が特許文献1(特開2003−251250号公報)に提案されている。
この特許文献1の塗装方法は、被塗装面に水性塗料を塗装ガンにて塗装する方法であって、該水性塗料の塗装直前から塗装終了時まで、被塗物および該被塗物に塗着する噴霧塗料粒子に対して熱線照射を行い、塗着塗料の固形分を制御する、というものである。
そして、上記特許文献1の塗装装置は、搬送される被塗物の搬送路に設けられた塗装ゾーンにおいて、塗装直前に被塗物を加熱する加熱装置と、被塗物に対して水性塗料を噴霧する塗装ガンを具備する塗装機と、被塗物面に塗着する噴霧塗料粒子に対して、熱線照射を行う熱線ヒータを具備し、特に、前記塗装機が、複数の塗装ガンが設置された水平部および垂直部塗装用のゲート状の塗装機であり、該ゲート状塗装機の前後に隣接して、熱線ヒータが設置されている。
【0006】
このように塗装直前、塗装時、塗装終了まで連続して熱線を照射すれば、塗膜中の水分が50%以上塗装ゾーンにおいて揮発可能であるから、塗装後のプレヒートゾーンを従来の半分以下に短縮することが可能であり、さらに、塗装中にも熱線が照射されるので、高湿度雰囲気条件でも塗着塗料粒子の固形分を上昇させることができ、ブースの空調を広げられ、結果としてブース空調に要するエネルギー使用量を削減することが可能である、としている。
ところで、上述した特許文献1の塗装方法および塗装装置は、自動車メーカの塗料ラインを想定したものであり、補修業界においては、適用は困難である。
即ち、特許文献1は、工場の塗装ラインに設置されるものであるが、補修用の塗装ガンに加熱装置を付加した場合には重量が大きく、塗装作業に耐えないばかりか250℃〜800℃に加熱される赤外線ランプ、遠赤外線ランプ、中赤外線ランプ、ハロゲンランプなどから発する輻射エネルギーを被塗物に照射することになるので、溶接作業者は、スプレーガンを手持ちで塗装作業を行うことは事実上不可能であり、仮に可能であったとしても作業環境としては劣悪とならざるを得ない。
また、上記スプレーガンを仮に手持ちできたとして、ブロック塗装はある程度可能であるとしても、曲面をなす部分のボカシ塗装作業は、至難の技である。
【0007】
【特許文献1】特開2003−251250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、粘性の高い水系塗料を用いても噴霧状態を均一にすることができ、特に、ブロック部とボカシ部の乾燥状態を同じにすることが容易で、中心部からボカシ部に徐々に塗装膜厚を滑らかに形成し得る塗装システムを提供することにあり、第2の目的とするところは、大掛かりな設備コストをかけることなく、また、大電力を消費することなく、高効率で塗膜の乾燥を迅速に行い得る塗装システムを提供することにある。
また、第3の目的とするところは、環境破壊の問題にも有効に寄与し得る塗装システムを提供することにある。
また、第4の目的とするところは、経験の浅い作業者であったとしても、技術難易度を極力簡易化あるいは標準化することで高品質で塗装時間の短縮化を図り得る塗装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載した発明は、上記の目的を達成するために、
水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後、前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、引続いて、塗装ステップと乾燥ステップを上記条件に準じた条件にて2回以上繰り返すことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載した発明は、上記の目的を達成するために、
水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段で所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、前記塗装ステップからフラッシュオフタイムが経過した後に、エアー圧力と噴出量を、前記所定値に対し、適宜調整して前記塗膜面に塗布する次回の塗装ステップと、前記次回の塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過した後に、前記距離と波長域と熱量を前記所定値に対し、適宜調整して、前記塗膜面を所定時間加熱し、その後、発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う次回の乾燥ステップと、
前記塗装ステップおよび前記乾燥ステップを2回以上繰り返すことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載した発明における前記塗装ステップおよび前記乾燥ステップは、プラサフ塗装、上塗り塗装、クリア塗装における塗装および乾燥に適用することを特徴としている。
請求項4に記載した発明における前記スプレーガンは、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエアー制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるように構成してなることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載した発明における前記スプレーガンは、引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定してなり、フォードカップ秒数が20〜45秒である高粘度の水系塗料の粒子が均一に噴霧され得るものを用いることを特徴としている。
請求項6に記載した発明における前記スプレーガンは、ニードル弁と塗料噴射ノズルが、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、粘度の大きな塗料におけるボカシ塗装作業に好適な構成とされていることを特徴としている。
請求項7に記載した発明における前記乾燥装置は、筐体の正面反射体および該正面反射体の両端に位置する一対の側面反射体からなる反射区画体の前方に配設した遠赤外線を発し得るヒータ管を発熱させ、該発熱及び放射スペクトル波長を塗膜に照射し、
前記ヒータ管の照射開始から所定時間の経過後に、送風手段から送風を行って、前記塗膜が前記発熱で達した所定温度よりも該塗膜の温度を略10℃から20℃程度冷却し、かつ当該温度を略一定の状態に保つようにしたことを特徴としている。
【0013】
請求項8に記載した発明における前記乾燥装置の発熱体は、前記送風手段による送風を行っている状態で塗膜面の温度が60℃〜70℃前後まで加熱するように設定され、前記乾燥ステップにおいて、前記発熱体と前記送風手段とは、所定秒数の間、発熱体のみを作動させ、その直後に前記発熱体と前記送風手段を、同時に所定秒数の間作動させるようにしたことを特徴としている。
請求項9に記載した発明における前記塗膜面に当てる送風手段による送風量は、1m×0.7mの面積当り、35〜50リットル/minであり、より好ましくは40〜44リットル/minであることを特徴としている。
請求項10に記載した発明における前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、前記水系塗料の溶剤である非イオン水またはアルコール系の溶剤が吸収し易い波長域の放射スペクトルを発するものであり、前記発熱体のみが作動するときは2.5μm〜4.0μmの中波長域を含む放射スペクトルを発し、
前記発熱体と前記送風手段とを同時に作動するときは、5.5μm〜11μmの長波長域を含む放射スペクトルを発するように設定してなることを特徴としている。
請求項11に記載した発明における前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、
銅管の中心部にニクロム線が収容され、前記銅管の表面にニッケルをコーティングしてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、
水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、引続いて、塗装ステップと乾燥ステップを上記条件に準じた条件にて2回以上繰り返すようにしているので、塗装の難しい粘性の高い水系塗料を用いても、噴霧状態を均一にすることができ、旧塗面と、被塗装面との境目をぼかす、ぼかし塗装が極めて行い易く、特に、ぼかし面の乾燥性や微細化を旧塗装面と同程度にすることができ、また、大掛かりな設備コストをかけることなく、且つ大電力を消費することなく、高い効率で塗膜の乾燥を行うことができ、さらには、経験の浅い作業者であっても補修の技術難易度を極力簡易化あるいは標準化することで、高品質で塗装時間の短縮化を図り得ると共に環境破壊の抑制に寄与し得る塗装システムを提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段で所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、前記塗装ステップからフラッシュオフタイムが経過した後に、エアー圧力と噴出量を、前記所定値に対し、適宜調整して前記塗膜面に塗布する次回の塗装ステップと、前記次回の塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過した後に、前記距離と波長域と熱量を前記所定値に対し、適宜調整して前記塗膜面を所定時間加熱し、その後、発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う次回の乾燥ステップと、
前記塗装ステップおよび前記乾燥ステップを2回以上繰り返すようにしているので、塗装の難しい粘性の高い水系塗料を用いても、噴霧状態を均一にすることができ、旧塗面と、被塗装面との境目をぼかす、ぼかし塗装が極めて行い易く、特に、ぼかし面の乾燥性や微細化を旧塗装面と同程度にすることができ、また、大掛かりな設備コストをかけることなく、且つ大電力を消費することなく、高い効率で塗膜の乾燥を2回以上繰り返し行うことができ、さらには、経験の浅い作業者であっても補修の技術難易度を極力簡易化あるいは標準化することで、高品質で塗装時間の短縮化を図り得ると共に環境破壊の抑制に寄与し得る塗装システムを提供することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明において、少なくとも前記スプレーガンおよび塗装装置における所定量を適宜調整するだけで、水系塗料を用いたプラサフ塗装、上塗り塗装、クリア塗装の塗装および乾燥に適用し得る塗装システムを提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記スプレーガンは、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエアー制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるように構成してなるので、空気圧調節手段の弁部を閉じた状態から全開に至るまでの中間段階の範囲が、従来より広く且つ緩やかな圧力変化をもたらすため、塗料調節手段により、いわゆる半クラッチ状態として塗料の輻射量を絞った状態に見合った圧力に調整することが可能となり、旧塗装面と被塗装面との境目をぼかす、ぼかし塗装が極めて行い易く、特に、ぼかし面の乾燥性や微細化を旧塗装面と同程度にし得る塗装システムを提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記スプレーガンは、引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定してなり、フォードカップ秒数が20〜45秒という高粘度の水系塗料であっても容易に噴霧状態を均一にすることが可能であり、高品質の塗膜を形成し易く、例えばボカシ塗装の際に被塗装面と旧塗装面との均一化が図られ、特に乾燥性をほぼ同一に
し得る塗装システムを提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記スプレーガンは、ニードル弁と塗料噴射ノズルが、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、粘度の大きな塗料におけるボカシ塗装作業に好適な構成とされているので、従来困難であった半クラッチ状態でのボカシ塗装が高度な技術を習得せずとも、容易に行い得る塗装システムを提供することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、前記乾燥装置は、筐体の正面反射体および該正面反射体の両端に位置する一対の側面反射体からなる反射区画体の前方に配設した所定の放射スペクトル波長を含む遠赤外線を発し得るヒータ管を発熱させて塗膜に照射し、
前記ヒータ管の塗膜面への照射開始から所定時間の経過後に、送風手段から送風を行って、前記塗膜が前記発熱で達した所定温度よりも該塗膜の温度を略10℃から20℃程度冷却し、かつ当該温度を略一定の状態に保つようにしたので、塗膜の乾燥時間を最も短くする環境を作り、乾燥の遅い水系塗料であっても、電力消費を抑えつつ早く塗膜を乾燥させ得る塗装システムを提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、前記乾燥装置の発熱体は、前記送風手段による送風を行っている状態で塗膜面の温度が60℃〜70℃前後まで加熱するように設定され、前記乾燥ステップにおいて、前記発熱体と前記送風手段とは、所定秒数の間、発熱体のみを作動させ、その直後に前記発熱体と前記送風手段を、同時に所定秒数の間作動させるようにしたので、発熱体の熱によって塗膜を暖めて水分、アルコール系溶剤の分子の動きを活発化させた後に、発熱体の背後から送風手段で所定の風量の風を当てることで、塗膜中の水分・溶剤の蒸発速度を最大限早めることが可能な塗装システムを提供することができる。
【0019】
請求項9に記載の発明によれば、前記塗膜面に当てる送風手段による送風量は、1m×0.7mの面積当り、35〜50リットル/minであり、より好ましくは40〜44リットル/minであるので、発熱体からの輻射熱を当てることにより、水分・溶剤の分子の活動を活発化させ、塗料中の分子同士の重合結合を迅速化させた後、送風手段により、所定量の風を当てることで水分や溶剤の塗膜からの蒸発速度を最大限早めることが可能な塗装システムを提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、前記水系塗料の溶剤である非イオン水またはアルコール系の溶剤が吸収し易い波長域の放射スペクトルを発するものであり、前記発熱体のみが作動するときは2.5μm〜4.0μmの中波長域を含む放射スペクトルを発し、
前記発熱体と前記送風手段とを同時に作動するときは、5.5μm〜11μmの長波長域を含む放射スペクトルを発するように設定してなるので、塗膜の吸収密度の良い中波長域の波長および長波長域の波長を発する乾燥装置により、少ない熱源エネルギーで効率の良い乾燥を行い得る塗装システムを提供することができる。
【0020】
請求項11に記載の発明によれば、前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、
銅管の中心部にニクロム線が収容され、前記銅管の表面にニッケルをコーティングしてなるので、高温の熱量を発し得ると共に当該高温状態へ至る立ち上りが早く、加えて、水分の蒸発に有効な2μm〜10μmの分光放射照度を発し、塗膜中の水分・溶剤の蒸発速度を最大限早めることが可能な塗装システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施の形態に係る補修のための塗装システムを説明する。
以下、本発明に係る塗装システムの一部を構成する塗装装置を実施の形態に基づき、図面を参照して詳しく説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る塗装装置の部分の正面中央縦断面図であり、図2は、図1の塗装装置に組み込まれている空気圧調節手段の部分の拡大縦断面図であり、図3は、空気圧調節手段の中の空気弁を示す正面図で、このうち(a)は、従来の空気弁、(b)は、本発明に係る空気弁、図4は、図1の塗装装置に組み込まれているニードル弁の先端側と噴射ノズルの部分の拡大縦断面図であり、図5は、図4のニードル弁の全体を拡大して示す正面図である。
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。尚、本発明の塗装装置は、一つの実施の形態であって、例えば遠隔制御を行う自動低圧スプレーガン本体に本発明を組み合わせたり、手動のスプレーガンに組み合わせたり等、様々な形態があるが、本実施の形態では、塗装装置をスプレーガンとして説明を行う。そのため、以下、本発明の塗装装置をスプレーガンと称する。
【0022】
先ず初めに、第1の実施の形態におけるスプレーガンの構成について説明する。本発明におけるスプレーガン1は、圧縮空気と塗料とを混合し、塗料を圧縮空気により噴霧化して被塗装面に塗布する装置である。
そして、この第1の実施の形態におけるスプレーガン1は、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路2および塗料を供給する塗料供給通路3が設けられたスプレーガン本体4と、このスプレーガン本体4に設けられた、塗料を噴射する噴射口5を有する塗料噴射ノズル6と、噴射口5を開閉し塗料の噴射量を調節するニードル弁7とを備えている。
さらに詳細に説明する。小型拳銃状に形成されたスプレーガン1は、スプレーガン1を把持する把持部8と、把持部8に連続して設けられ塗料および圧縮空気を噴射する噴射口5を有する銃身部9とに形成されている。
また、スプレーガン本体4内部には、把持部8の下部から噴射口5まで圧縮空気が通る圧縮空気供給通路2が設けられている。
【0023】
そして、把持部8の下部には、圧縮空気の供給元と接続する空気ニップル10が設けられている。さらに、この空気ニップル10から把持部8の上方へ向って圧縮空気供給通路2が設けられており、把持部8と銃身部9の境目付近には、把持部8に対してほぼ垂直に位置し圧縮空気供給通路2の開閉を行う空気圧調節手段11が設けられている。
この空気圧調節手段11は、スプレーガン本体4の圧縮空気供給通路2に直交するように穿設された有底状の装着穴12に装着されている。この空気圧調節手段11は、弁座本体14と、この弁座本体14のテーパ状に形成された弁座部15に当接離反する弁部16と、この弁部16の小径端側に細径の連結部17を介して連設されたコマ状(または円板状)を呈するエアー制限部18と、弁部16の大径端に連設されたばね受け19と、このばね受け19に一端が嵌装され、他端が装着穴12の内端に当接されたたコイルばね13とから、構成されている。
弁座本体14は、ねじ部20が装着穴12の開口端内周に形成された雌ねじ部に螺合されることによってスプレー本体4に装着される。
【0024】
この弁座本体14の弁座部15には、円錘台形状を呈する弁部16が当接したとき、空気の流動を止める弁作用を果たし図2中、弁棒21が右方に押されると、弁部16が弁座部15から離反し、圧縮空気供給通路2を開放する。
この弁部16の小径端部側には、細径の連結部17を介して大径とされたエアー制限部18が連設され、弁部16と共に装着穴12の軸方向に沿って移動する。
これら弁部16と連結部17とエアー制限部18、弁棒21およびばね受け19は、一体に形成されており、コイルばね13により図2において常時左方、即ち、弁部16で弁座部15を閉鎖する方向、換言すれば、圧縮空気供給通路を閉鎖する方向に付勢されている。
弁座本体14の中間部、即ち、エアー制限部18よりも左側とは、弁座部15を通過し、エアー制限部18の制御を受けた空気が吐出するように円形の穴が複数個、この場合4個の開口部22が穿設されている。
【0025】
また、弁座本体14の最奥部の外周には、環状溝23が形成され、この環状溝23にはOリング24が嵌合されており、これにより、弁部16が閉鎖されているときに、圧縮空気が、装着穴12側から、弁座本体14の外周と、スプレーガン本体4の内壁との間から下流の圧縮空気供給通路2へ洩れないようにしている。
弁座本体14の空気室25の内壁の直径は、6.8mmであるのに対し、エア制限部18の外径D1は、この本発明の効果確認のために、
D1A=6.4mm
D1B=6.5mm
D1C=6.6mm
D1D=6.7mm
の4種類の試作品を作製し、所定の確認試験を行った。他の部分の寸法は、図3(b)に示したとおりである。
【0026】
尚、弁部16に、樹脂などの弾性部材を用いることにより、弁部16が圧縮空気供給通路2を閉鎖した際、圧縮空気の出入りを確実に阻止することができる。
また、この空気圧調節手段11の上方(上段)には、塗料の噴射を調節するニードル弁7と塗料噴射ノズル6が配設されている。
このニードル弁7は、噴射口5側の一端に、先細に形成された先端部26を有し、他端に、ニードル弁7の動きを制御するニードル弁ガイド27を介したコイルばね28を有している。このコイルばね28は、噴射口5を閉鎖する方向に付勢されている。さらに、ニードル弁ガイド27の前方には、塗料漏れをシールするためのニードルパッキン29がパッキン調節ねじ30によって押えられている。パッキン調節ねじ30は、塗料漏れを防ぎ、且つニードル弁7がスムーズに作動する為に、適当な強さに締められてねじ込まれている。
また、ニードル弁7の中央付近には、塗料供給元に接続する塗料ジョイント31を付設した塗料案内路32が位置している。
【0027】
さらに、噴射口5側の前記ニードル弁ガイド27および弁棒21の端部は、銃身部9に回転中心33を有し、把持部8と略平行に設けられた引き金部34と当接している。そのため、引き金部34を把持部8側に引寄せると、空気圧調節手段11の弁座部15に設けられたコイルばね13と、ニードル弁7に設けられたコイルばね28とが圧縮される。
この空気圧調節手段11に設けられたコイルばね13が圧縮されると、空気圧調節手段11に設けられている弁部16がコイルばね13側へ移動する為、圧縮空気供給通路2を開放する。すると、銃身部9に設けられた圧縮空気供給通路2に従って圧縮空気は噴射口5まで供給される。
このとき、圧縮空気は、空気圧調節手段11の弁部16と便座本体14の弁座部15との隙間から弁座本体14の空気室25側へ流れ込もうとするが、弁部16と連続して設けられた円板状のエアー制限部18の外周縁と、空気室25の内周壁との間に形成された隙間に流動を制限される。その結果、弁部16と弁座部15との間隙が大きくなっても、エア制限部18により、流量が制限されて、圧縮空気供給通路2の下流部分の圧力、換言すれば噴射口5から吐出される空気圧が所定圧となるよう規制される。
【0028】
このようにして、ニードル弁7の端部に設けられたコイルばね28が圧縮されると、筒状のニードル弁ガイド27と共にニードル弁7がスライドする。
すると、噴射口5を閉鎖していたニードル弁7が噴射口5内部に引きこもる為、噴射口5が開放され塗料が噴出される。
尚、ニードル弁7に比べて弁部16の方が若干早く移動し、圧縮空気を噴射するように設計されているため、塗料噴射より、僅か先に圧縮空気が送られるようになっているが、圧縮空気の圧力の調節機能については、後に詳しく説明する。
次に、この第1の実施の形態のスプレーガン1の先端構造の詳細な説明を行う。図4は、スプレーガン1の先端を拡大した断面図であり、図5はスプレーガン1におけるニードル弁7の拡大正面図である。尚、説明の便宜を図る為、図1で説明した構成部品については同一符号を付して説明する。
先ず、図4に基づいてスプレーガン1の先端構造の説明を行う。スプレーガン1は、噴射口5に空気キャップ35が螺嵌されている。この空気キャップ35は、中心に設けられた貫通孔36の周辺に、ほぼ前方に向けて複数の小孔である37a〜37dが設けられており、さらに空気キャップ35の中心から離れた個所には、斜め内方に向けて穿設された複数の小孔37e〜37hが設けられている。この貫通孔36からは主に塗料が噴出され、周辺に設けられた小孔37a〜37dからは圧縮空気が噴射される。
【0029】
そして、塗料は噴出された圧縮空気により拡散される。このように、液体を噴霧して微粒子化することを霧化という。
また、貫通孔36の内部には、塗料噴射ノズル6が位置している。この塗料噴射ノズル6は、噴射口5から塗料噴射ノズル6内部に向うに従い小径に形成された第一テーパ部38と、この第一テーパ部38から更に内部へ向うに従い大径となる第二テーパ部39と、この第二テーパ部39から更に内部へ向うに従い大径となる第三テーパ部40とにより構成されている。
さらに、塗料噴射ノズル6の内部には、図5に示すような棒状の弁であるニードル弁7が挿通されている。このニードル弁7は、先細に形成された先端部26と先端部26に連続した同一径よりなる噴射量制限部41と、これに連続した開閉弁部42とにより構成されている。この噴射量制限部41は、噴射ノズル6の内部側に先端部26と連続し、一定の遊び量(1〜2mm)を付加した所定長さで同一径を有している。
【0030】
また、開閉弁部42は、第三テーパ部40よりも小さい角度のテーパ角を有し、噴射口5から塗料噴射ノズル6の内方に向うに従って大径に形成されている。
また、この第1の実施の形態における先端部26は、円錘状であり、先端部26を形成する、先端部26の母線の長さrを0.5mmとし、先端感度αを80〜85度とするとよい。特に、先端角度αを83度とすると塗料の噴射状態が極めて向上する。
また、図1に示すように、この第1の実施の形態におけるニードル弁は、互いにばね係数の異なる第一コイルばね28aと第二コイルばね28bとを組み合わせて構成されている。
尚、本実施の形態における第一コイルばね28aは第二コイルばね28bよりばね係数が低いものとする。但し、この第一コイルばね28aは、第二コイルばね28bよりもばね係数が高いコイルばねとしてもよいし、勿論その逆であってもよい。
【0031】
そして、第一コイルばね28aは、ニードル弁ガイド27と接触しており、第二コイルばね28bは一端が第一コイルばね28aに接続され、他端がガイド室43の内壁に当接されている。このガイド室43は、ニードル弁ガイド27の基端側と、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bとを収容するものである。
そして、図1の状態から、引き金部34をFという力で引くと、第一コイルばね28aは後方にスライドしたニードル弁ガイド27により押される。また、ニードル弁ガイド27のスライドに伴い、ガイド室43の内壁に当接した第二コイルばね28bにも力Fが伝達する。すると、この力Fがガイド室43の内壁に伝わり、その反力F′が第二コイルばね28bに作用する。したがって、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bの双方が圧縮される。この際、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bには、同一の力が作用するが、両コイルばねの弾性率が異なるため、引き金部34の最終段階に至るまでの操作においては、第一コイルばね28aと第二コイルばね28bの圧縮率(圧縮する長さ)は異なる。
【0032】
すなわち、本実施の形態におけるコイルばね28は、引き金部34を引いて主に第一コイルばね28aを圧縮する第一段階と、引き金部34を引いて第一コイルばね28aの圧縮と共にこの段階において主に第二コイルばね28bを圧縮する第二段階と、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28b双方を完全に圧縮する第三段階(最終段階)との三段階の操作段階を経ると考えることができる。
そのため、第一コイルばね28aを主に圧縮させた当初の段階では圧縮空気のみを噴射させ、その後、第一コイルばね28aに加え、第二コイルばね28bを途中まで圧縮させたときは圧縮空気量と塗料の量に規制を持たせ所定量を噴射させ、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bを最後まで圧縮させたときには圧縮空気量と塗料の量を最大にし噴射させる、というような操作を行うことが可能となる。
まさに、引き金部34の初期段階から中期段階の操作は、比較的小さい力でニードル弁7の微調整を容易に行える、所謂「半クラッチ状態」ということができ、この状態があることにより被塗装面と旧塗装面との境目をぼかす塗装を容易に行うことができるようになる。
【0033】
引き金部34を引くとそれに伴いニードル弁7がニードル弁ガイド27内へスライドし塗料噴射ノズル6の噴射口5が開放されるものである。
更に詳細に説明すると、引き金部34を操作することにより、上述したように空気圧調節手段11の弁部16が開放され圧縮空気が噴射されると略同時に、主に第一コイルばね28aが圧縮される。そのときニードル弁7は、スライドして塗料噴射ノズル6内に入り込む。
すると、これまでニードル弁7における開閉弁部42のテーパ部と塗料噴射ノズル6の第二テーパ部39との双方のテーパが適宜に嵌め合っていた状態がずれて、双方のテーパの間に僅かなクリアランスが生じる。このとき、ニードル弁7の噴射量制限部41は塗料噴射ノズル6の第一テーパ部38内に位置している。
このとき、ニードル弁7と第一コイルばね28aが上述した第1の状態であるとき、噴射口5からは圧縮空気が噴射され始まる。
さらに引き金部34を操作し続け、第二コイルばね28bも圧縮され始めると、ニードル弁7はさらに塗料噴射ノズル6内部にあるニードル弁ガイド27内部へスライドする。すると、噴射量制限部41と第二テーパ部39とのクリアランスはさらに広くなる。この状態のとき、噴射口5からは適宜な量の塗料と圧縮空気が噴射される。
【0034】
加えて、第一コイルばね28aおよび第二コイルばね28bが完全に圧縮された状態になると、ニードルの先端部26は、完全に塗料噴射ノズル6内部に収容された状態となる。
このとき噴射口5からは、圧縮空気および塗料、双方が最大量噴射される状態となる。
次に、上述した第1の実施の形態におけるスプレーガン1の噴射原理を動作説明と共に行う。
先ず、初めに、第1の実施の形態におけるスプレーガン1を利用してぼかし塗装を行う場合、作業者は、噴射口5を被塗装面に向け、把持部8を持って構える。このとき、噴射口5は、旧塗装面(中心部)と被塗装面との境目に位置させる。そして、引き金部34を把持部8側へ、コイルばね13および28の付勢力に抗して引寄せると、先ず、引き金部34が空気圧調節手段11の弁棒21に当接し、その若干の遅れをもってニードル弁ガイド27に当接する。
そして、先ず、引き金部34に、空気圧調節手段11の弁棒21が当接したときを境に弁棒21→エア制限部18→連結部17を順次介して弁部16が内部(図2では右方側)に移動する。すると弁部16と弁座部15との接触状態が離れ、両者の間にできた間隙を介して、図中、下方から送られてきた圧縮空気は、空気室25側に流出する。このとき、空気室25の内周壁と、エア制限部18の外周面との間が規制されているため、エアコンプレッサから送出され本スプレーガン1の圧縮空気供給通路2に導入された圧力は、所定量減圧され、開口部22を介して、下流の圧縮空気供給通路2へと送出される。
【0035】
圧縮空気は、弁部16が開口直後(半クラッチ状態)には、制限された圧力が安定して供給される。
一方、ニードル弁ガイド27が引き金部34に当接したときを境にニードル弁7がスライドし、内部へ進入する。
すなわち、噴射口5を閉鎖していたニードル弁7が銃身部9内に引き籠もる。
それに伴い、閉鎖されていた噴射口5が開放される。
また、塗料案内路32内の塗料が噴射口5から噴出される。このとき、前述したように、減圧された圧縮空気の方が僅かに先に噴射されるため、塗料は、初めから適正な量の圧縮空気にて霧化される。
しかも、本実施の形態の空気圧調節手段11のエア制限部18の作用により、弁部16の開口動作の直後からぼかし塗装に適する圧力まで低減させ且つ引き金部34の引き寄せ動作に応じて緩やかに圧力を上昇させることができるため、これが塗料調節手段による塗料供給とのバランスが良好となるのである。
【0036】
即ち、塗料噴射ノズル6およびニードル弁7は、塗料噴射ノズル6の第二テーパ部とニードル弁7の噴射量制限部41とは、同一の傾斜面(テーパ面)ではないが、噴射量制限部41の外径は、同一径であるため、ニードル弁7が塗料噴射ノズル6内部へ引き籠まれても、第二テーパ部39と、噴射量制限部41との間隙は、略一定となる。
そのため、空気キャップ35に設けられた小孔37a、37b、37c、37dおよび小孔37e、37f、37g、37hから夫々供給される圧縮空気は、噴射量制限部41によって、上記した圧縮空気の流量に見合った分の塗料を噴出することができる。
すると、従来のように、噴射直後において塗料が完全に霧化されず、大きな粒子のまま噴射されてしまうといった虞がなくなる。
【0037】
本発明は、上述の第1の実施の形態に限らず、次のように変形することもできる。
即ち、第1の実施の形態のスプレーガン1は、空気圧調節手段11が、塗料調節手段とは、上下2段の位置に配置されているが、空気圧調節手段が、塗料調節手段と同一軸上にあり、ニードル弁と圧縮空気供給通路を開閉あるいは調節する手段とを、一体的に構成することもできる。
ところで、本発明者が実験したところによれば、従来のエアスプレーガンにおいては、ニードル調節ノブ71を全閉から2回転した場合において、トランスホーマの圧力が0.35Mpaのとき、半クラッチ状態ではその圧力が0.22Mpaに減少し、弁部の全開状態では0.18と約半分に減少してしまう。これに対し、本発明に係るアスプレーガンにおいては、トランスホーマの圧力が0.35Mpのとき、半クラッチ状態では0.3Mpaとなり、弁部の全開状態では、0.25にとどまり、トランスホーマの圧力に対し0.1Mpaの開きしかなく、半クラッチと弁部の全開までの差が滑らかに0.05の減少で推移していることが分った。
【0038】
一方、従来のエアスプレーガンでは、トランスホーマの圧力から半クラッチ状態とすると、0.13Mpa低下し、半クラッチ状態から全開状態となると、0.04Mpaに低下してしまう。
このようなことから、従来のエアスプレーガンにおいては、引き金部の半クラッチ状態の幅が狭く、引き金部を離す過程で、急激にエア圧力が低下してしまうことを示しており、換言すれば、半クラッチ状態を維持することの難しさを物語っていることにほかならない。
逆に、第1の実施の形態によるエアスプレーガンによれば、いわゆる半クラッチ状態でのエアー圧力を広範囲に亘り、微妙な変化をさせることが、極めて容易に行うことができる。
また、従来のスプレーガンでは、ニードル弁調節ノブを3/4(0.75)回転開けたところで塗料(溶剤)を70g噴出させるのに115秒かかっていたものが、1.5回転開けたところで51秒、2回転開けたところで39秒といった具合であり、ここで急激に塗料噴出量が増大している。
【0039】
つまり、従来のエアスプレーガンでは、塗料の噴出量は、最初は少なく、ある点を越えると急に増大するという、特性があり、見方を変えれば、全開状態から半開状態として噴出量を減らしていくと急に噴出量が減少してしまうことになる。
これに対し、本発明の第1の実施形態によれば、全開状態から半開状態として噴出量を減らしていくと徐々に噴出量が減っていくことが確認された。
また、従来のスプレーガンは、塗料噴出量の格差があり過ぎ、噴出量を調節できる間隔が余りにも短いので、半クラッチ操作が極めてやりにくいということが実験により明らかとなった。
そのため、従来のエアスプレーガンにおいて、中心部からボカシ部分にかけてボカシ塗装を行おうとすると、塗布膜厚が急に傾斜してしまうことになる。
上手にグラデーションを描くように塗布することがボカシのテクニックの1つである。
このような塗膜形態を実現するためには、塗料の噴出量がニードル弁調節ノブを開ける度合いに応じて全開まで滑らかに推移するようにすることがボカシ操作がやりやすいということになる。
【0040】
上述した第1の実施の形態は、ニードル弁調節ノブの1回転から全開に至るまで、滑らかな形で塗料が噴出されており、このような状態であれば半クラッチ操作が容易になることを意味している。
一般に、エアスプレーガンでボカシ塗装をする場合、中心部とボカシ部は、連続したガン操作の流れで行われており、これは避けられない作業である。
このような連続したガン操作をしながら、中心部とボカシ部の塗膜の乾燥性が同一条件になるようにすることが必要である。
本発明者は、この課題を解決するためボカシ部における半クラッチ状態でのエアー圧力と中心部のエアー圧力の差を作り出し、中心部よりボカシ部のエアー圧力を下げることにより塗膜の乾燥性を遅くすることを着想した。
しかし、ボカシ際は、塗膜が薄く滑らかにすることが必要であり、塗膜は同一条件(エア圧力)で同じ状態で塗布すると乾燥性が早くなるため、従来のエアスプレーガンでは、その作業を同一の条件下で、演出(再現)することは不可能である。
これに対し、本発明においては、上記条件を満足するように、スプレーガン操作を同一の流れの中で連続してエアー圧力を低下させる機能、つまり半クラッチ状態でのエアー圧力の連続した低下機能をつくり出したものである。
【0041】
以上が、本発明に係る塗装システムの塗装ステップに用いられるスプレーガン(塗装装置)の一例についての構成および作用を示したものである。
次に、本発明に係る塗装システムの乾燥ステップに用いられる乾燥装置の実施の形態につき説明する。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る塗装システムの一部を構成する乾燥装置の概略の構成を示す説明図、図7は、図6に示す乾燥装置のヒータ管の構成を示す説明図、図8は、第2の実施の形態に係る乾燥装置の筐体、反射区画体およびヒータ管等主要部の構成を示す正面図、図9は、図8に示す乾燥装置の主要部の構成を上方より見た模式的断面図、図10は、図8に示す乾燥装置の筐体、反射区画体およびヒータ管等主要部の構成を側方より見た模式的断面図、図11は、第2の実施の形態に係る筐体を移動スタンドに取付けた状態を示す背面図である。
【0042】
図6〜図11を参照して、本発明の塗装システムに用いられる塗膜の乾燥装置の一実施の形態について説明する。
110は、正面形状が長方形状を呈する筐体で、側方より見て、前方に拡大する台形部110aと長方形状を呈する矩形部110bとからなる。この筐体110の内部には、複数(3つ)の反射区画体112を収容するための前方に拡開した奥行きを有するカバー部材114と、カバー部材114内の所定位置に対し図示しない固定片により互いに所定間隔を空けて通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118を構成しつつ固定された複数の反射区画体112とを備える。116は、この通気空間118の出口近傍に設けられた整流板であり、吹出し空気の流れを整流する機能を果たす。
複数の反射区画体112は、各々中央正面反射体123と、上面反射体124と、下面反射体126と、(以下、これら3つの反射体を総称して「正面反射体122」という)正面反射体122の両端に位置する一対の側面反射体128から構成されている。上面反射体124、下面反射体126および一対の側面反射体128は、前方に向けて広がる方向に傾斜し、ヒータ管Hが発する熱および放射スペクトル波長を前方側に反射し得るように構成されている。一対の側面反射体128には、詳しく図示しないが互いに対照的に同位置となる位置に挿通開口が穿設されている。そして、この一対の側面反射体128の一対の挿通開口(図示省略)には、ヒータ管Hの両端の端子部Cが挿通され、一対の挿通開口の外側の通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118に突出されている。
【0043】
ヒータ管Hの端子部Cは、図9に示すように、外側の通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118に突出することで、後述する軸流ファン(送風手段)34からの送風を受けて冷却されるものである。ヒータ管Hは、両端の端子部Cが冷却されることで最大能力の発熱を継続することが可能であり、その発熱温度を、例えば遠赤外線を発する600℃以上に高めることができる。
また、各反射区画体(この例の場合、3つ)112の背面側に、各反射区画体112の外側面側の通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118に送風を供給し、各ヒータ管Hの端子部Cを冷却しながら筐体110の前方の塗膜(図示省略:例えば車両に塗布された塗膜)に送風を与えるための送風基点域となる各反射区画体112の背面面積を含むとともに所定の奥行きを有する広面積の送風用空間136が形成されている。送風基点域である広面積の送風用空間136の後側、即ち背面側には、図9および図10に示すように、複数の軸流ファン134がモータ138とともに固定されている。各モータ138の後側には、複数の吸気孔142が形成されたフィルタ抑え板144が設けられており、フィルタ受け146により除塵用のフィルタ(図9および図10参照)152が固定されている。各モータ138と除塵用のフィルタ152との間にも吸気空間154が形成されている。
【0044】
筐体110の背面には、図11に示すように、図示しない水平軸に対し回動可能である第1回動体162が取付けられており、この第1回動体162は、取手164の一方向の回動により固定状態が解除され筐体110が水平軸回りに回動自在となり、取手164の逆方向の回動により筐体110の水平軸回りの向きが固定される。また、筐体110の背面には、図示しない垂直軸に対し回動可能である第2回動体166が取り付けられており、この第2回動体166は、取手168の一方向の回動により固定状態が解除され筐体110が垂直軸回りに回動自在となり、取手168の逆方向の回動により筐体110の垂直軸回りの向きが固定される。
図11に示すように、第2回動体166は、筐体110の背面に固定された支軸と嵌合して回動可能に連結され、この第2の回動体166には、平行な二つのアーム72の一端側が連結固定されている。各アーム172の他方の先端側は、移動スタンド174の支柱176の回動軸に連結されている。また、各アーム172の中間位置には、支持アーム173の上端が回動可能な状態で連結されており、その支持アーム173の下端が支柱176に形成された摺動溝に沿って、上下摺動可能なように嵌合されている。これにより、筐体110が上下可能な状態となり、所要の高さ位置に設定する場合は、支持アーム173の下端部が摺動しないように、例えばロックねじで固定するように構成されている。上述の支柱176は、その下端が、移動スタンド174のベース部材175に固定されている。
【0045】
ベース部材175の下側には、4つのキャスタ177が設けられ、移動スタンド174全体を床上に移動自在となるよう構成されている。このキャスタ177には、ブレーキ機能が設けられており、乾燥装置の位置を決定した後に、ブレーキを掛け、当該位置を保持し得るようになっている。
尚、上述したように、筐体110は、第1,第2回動体162,166、アーム172、支持アーム173を任意に回動させることで、図11に示す姿勢の他、様々な向きに設定することが可能である。その上、移動スタンド174には、キャスタ177が備えられているので、例えば、塗装工場の床面上を、自由に移動させることができ、キャスタ177にブレーキを掛けることで、塗膜に対する位置を固定させることができる。
ところで、次に、塗膜に適する条件を効率よく設定し得る乾燥装置について、説明する。図12に示すように、CPU(中央演算処理装置)よりなる制御部100を有し、この制御部100には、ヒータ管Hの発熱開始後の所定時間(例えば塗膜が100℃〜130℃程度の温度に達する時間)の経過を計時する計時部192と、筐体110と塗膜との間の距離を入力する入力手段としてのテンキー(デジタルスイッチまたはボリュームでもよい)194と、軸流ファン134の単位時間あたりの回転数を調整する回転数調整部196が接続されている。
【0046】
特に回転数調整部196は、制御部100の演算結果を受けて軸流ファン134の回転数を制御し筐体110前方の塗膜位置(例えば、40〜70cm離れた位置)において1.0〜3.0m/s、望ましくは1.2m/s以上の風速となる送風が得られるように軸流ファン134の回転数を調整すべくモータ138に最適な電力を供給する。
また、乾燥においては、単に風速だけでなく、風量も重要なファクタとなる。即ち、風量は、塗装面が1m×0.7mとしたとき、35〜50リットル/分、より好ましくは、40〜44リットル/分が必要であり、面積が異なる場合には、その面積を考慮して風量を変えるようにする。
制御部100は、筐体110と塗膜との間の距離の入力値およびヒータ管Hの発熱部132の温度(例えば、1.1KWの容量または5.6KWの容量によって、設定温度は異なる)に応じて、塗膜が例えば100℃〜130℃に達する時間を、制御部100に備えられたROMのテーブル等に記録された距離と塗膜温度との関係を記録した一覧データの中から対応するデータに基づいて所定時間に亘り吸収波長域の熱を塗面に当てる。その後、ヒータ管Hを発熱した状態で、軸流ファン134の回転開始の計時時間を設定するとともに、その計時時間を計時する。また、制御部100は、所定時間に亘り、ヒータ管Hのみを通電駆動し、その後、軸流ファン134を回転駆動するモータ138を起動させた後、計時部192が塗膜の乾燥時間を計時し乾燥時間に至るとヒータ管Hの発熱を終了させる。
【0047】
次に、この第2の実施の形態の塗膜の乾燥装置の動作について説明する。まず作業者が筐体110の前面と塗膜(例えば車両に塗布した塗膜)との間の距離をあらかじめ指定された距離、例えば冬場であれば40cm、夏場であれば70cmの距離に設定するか、使用するヒータHの容量に応じて、例えば、1.1KWの容量の場合は、10〜20cmの範囲とし、5.6KWの容量の場合は、45〜70cmの範囲として、スケール等を用いて測定して設定し、この測定値をテンキー94により入力する。続いて、各ヒータ管Hの電源入力のスイッチ(図示省略)を操作してヒータ管Hを発熱させる。ヒータ管Hの発熱においては、例えば最大能力の600℃の温度が得られるように最大の電力を供給する。また、同時に計時部192が計時を開始する。かくて、ヒータ管Hの発熱で塗膜に最適な放射スペクトル波長を与えながら塗膜の温度が、例えば100℃に達し、さらに所定の時間が経過すると、計時部192が制御部100にカウントアップ信号を与え、制御部100が回転数調整部196に対し起動開始を告げる出力を与える。この結果、回転数調整部196が軸流ファン134を駆動するモータ138に対し、塗膜位置において例えば1.2m/s以上の風速の送風を与え得る電力の供給をするよう指令し、モータ138を起動させる。モータ138の起動で軸流ファン134の回転に伴って所定の風速の風が図9に示すように、各反射区画体142の外側の通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118を通りヒータ管Hの端子部Cを冷却しながら塗膜に、例えば1.2m/s以上の送風が与えられる。
【0048】
このため塗膜は、例えば60℃〜70℃程度の温度に低下しかつ当該温度に保たれ、塗膜には最適な乾燥条件が整い、より短時間の乾燥が可能となる。そして、塗膜が乾燥に至る時間経過を計時部192が計時すると、制御部100の制御により、回転数調整部196に起動終了を告げる出力が与えられる。この結果、回転数調整部196は、ヒータ管Hへの電力供給を停止し、その後モータ138に対する電力供給を停止し軸流ファン134の回転を停止させる。
尚、本実施の形態においては、ヒータ管Hと塗膜との間の距離を入力手段としてのテンキー194の操作で入力しているが、本装置には、必ずしも入力手段としてのテンキー194を備える必要はなく、この距離は作業者が移動スタンド174とともに筐体(ヒータ管Hを含む)110を移動させることで随時任意に設定してもよい。
本実施の形態においては、ヒータ管Hの両端の端子部Cを、通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間隙)118内に突出させ、軸流ファン134からの送風で冷却するようにしたため、ヒータ管Hの発熱部132は最大能力で発熱を継続し、かつ最適な放射スペクトル波長の遠赤外線の照射を継続することが可能となり塗膜の乾燥時間をより一層短縮することが可能となる。
【0049】
また、計時部192の計時により塗膜の温度が、例えば100℃に達した時点で軸流ファン134を回転させ、塗膜に1.2m/s以上の送風または1m×0.7mの面積においては、35〜50リットル/時の風量を当てることで、塗膜の温度を60℃〜70℃に低下させ、かつ当該温度を10°以内の範囲に保つように構成したため、この点からも最適な環境条件を提供することができ、より一層乾燥時間を短縮させることが可能となる。
図13は、水の赤外線吸収スペクトルを、図14は、キシレンの赤外線吸収スペクトルを、図15は、トルエンの赤外線吸収スペクトルを、それぞれ表わす特性図である。
これらの赤外線吸収スペクトルの特性図には、透過率の低い波長、換言すれば、吸収率が高い波長(吸収ピーク波長)が存在していることが分る。
これは、物質に赤外線を照射すると、それを構成している分子が光のエネルギーを吸収し、量子化された振動あるいは回転の状態が変化するため、ある物質を透過(あるいは物質で反射)させた赤外線には、照射した赤外線よりも、分子の運動の状態の遷移に使われたエネルギー分だけ弱いものとなる、と解されている。
【0050】
そこで、本発明者は、この赤外線の吸収スペクトルに着目し、水系塗料の溶剤として水(イオン水)を用いた場合図13にて分るように、3μm近傍および6μm近傍に大きな吸収ピーク波長が存在するので、このような波長を含み且つより広い領域の波長帯(例えば、2.5乃至11μm)の熱放射をなす発熱体を用いることを着眼した。
即ち、従来は、ヒータ管において熱量(温度)が大きければ大きい程、乾燥に結びつくという考えがあったが、そのようにすると電力エネルギーの消費が徒らに増大してしまうことになる。
また、図14および図15の溶剤であるキシレンの赤外線吸収スペクトルおよびトルエンの赤外線吸収スペクトルから分るように、3.5μm近傍および7.5μm近傍に吸収ピーク波長が存在する。
従って、発熱体としてのヒータ管の発光スペクトルが上記吸収スペクトルの吸収ピークを含むように、ヒータ管を設計すればよいことが究明できた。
尚、遠赤外光を発するヒータ管のコーティング別、温度上昇特性を測定したところ、次の表1のような結果が得られた。
【0051】
【表1】

【0052】
これらのヒータ管の共通するところは、銅管内にニクロム線を収容してなるところである。
この表1の測定結果によれば、「コーティングなし」のものが、温度の立ち上りが早く且つ温度も最高に達したが、分光放射特性のピーク値は短波長のところにあり、3μm以上の長波長域では放射照度が低レベルであるので、乾燥特性に劣ることになる。それに次いで、「Ni」のコーティングを施したものが分光放射特性もよく、これらのコーティングのうちでは、最適なものであることが分った。さらには、「アルミナ・酸化鉄」のコーティングを施したものがそれに続いて高い温度が得られたが、所定の熱量が得られるまでに多くの時間がかかり、乾燥に効率的な熱量を確保することができない。
ヒータ管そのものの熱量的な容量アップを図ることにより、有効波長域を伸ばすことは可能である。
しかしながら、熱量アップを図ると、寿命が短縮化するという問題がある。
【0053】
そこで、本発明者は、ヒータ管の端子部分が熱で劣化するという新たな原因を究明した。
即ち、この新たな原因の究明に基きヒータの端子部分を冷却することにより上記問題を解決し、最大限の有効波長域をもったヒータ管を製作することを実現したのである。このことにより、熱量の容量向上が可能となり、例えば現状ではMAX容量が1.4KW〜1.6KWのものを更に1.7KW〜1.8KWに容量のアップが可能となり、かつヒータ管の有効波長域(有効発熱域)が800mmであるものが850mm〜900mmまで長くすることができた。また、ヒータ管の表面温度が500℃前後であったものが100℃前後アップして600℃前後にすることが可能となった。そのため、ヒータ管の相対放射密度のアップにより相対放射照射度密度を大きく増大させることを可能とした。以上の結果として、ヒータ管のスペックを、容量1.7KW〜1.8KW、表面温度550℃〜600℃、有効長(有効発熱長)850mm〜900mm、ヒータ密度5.5前後にそれぞれすることを可能にする。このため乾燥装置として最大限の機能をもったヒータ管を製作することが可能となる。
図16は、第3の実施の形態に係る筐体、ヒータ管等乾燥装置の主要部の構成を示す正面図である。
この乾燥装置のヒータ管の表面温度を図16に示すように、縦方向にA〜Cの3区画、横方向に1〜5の5区画に分けて測定した結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
この結果によると、最高温度は、B−3区画(中央部)の660℃、最低温度は、C−5の区画(右下端)およびB−1区画(左中央部)の630℃、平均温度は、641℃であり、ほぼ均斉のとれた放熱温度分布といえる。
次に、本件発明者が開発した乾燥装置を構成する基礎データとなった赤外乾燥用ヒータは、定格200V、消費電力800W、管径12.5mm、管長380mmの仕様を有し、発熱部は、銅管中にニクロム線が収容され、該銅管の表面に100μmのニッケルでコーティングされており、以下、これを「標準品」と称し、この標準品は、測定試料名としては、No.3と称することとする。
本発明者は、この標準品No.3のほかに下記の[表3]に示す試料につき、各種測定を行った。
【0056】
【表3】

【0057】
上記表3の中で、No.1の試料は、内部にニクロム線が収容されたガラス管の周囲に、石英でコーティングしたものである。
No.2の試料は、発熱部はカーボンで、カーボンを収容するガラス管に石英をコーティングしたものである。No.3の試料は、本発明に係る標準品のヒータ管であり、ニクロム線を収容する銅管の表面に、ニッケルをコーティングしたものである。No.4の試料は、発熱部はニクロム線で、ガラス管の表面に石英粉をコーティングしたものである。No.5の試料は、発熱部として、セラミック管の内部にニクロム線を収容したものである。3−120μの試料は、No.3の試料において、ニッケルのコーティング膜の厚さを120μに増やしたものであり、3−80μの試料は、No.3の試料において、ニッケルのコーティング膜の厚さを80μに増やしたものである。
【0058】
(1)先ず、標準となる試料No.3のヒータ管について、3.0μm〜8.0μmの範囲の分光放射照度を、電圧200V、電力780Wを通電し、ヒータ管から600mm離れた位置において、日本分光モノクロメータ(CT25GTM)を用いて測定した結果を、図17に示す。
図17において、横軸は、波長(μm)を、縦軸は、放射照度(μW/cm/nm)を表している。この図17から分るように、放射は、水の吸収ピーク波長が存在する3μm近傍に、ピークがあり、波長8μmではピーク値の20%程度になるが、その間の変化はなだらかで極端な凹凸は、見られない。特に、水の次に大きな吸収スペクトルのピーク6μm付近においては、ピーク値の45%程度であるので、水分の最も効率的な乾燥を行うことができる。
次に、標準の試料No.3の赤外乾燥用ヒータを用いて、印加電力を、定格の約80%である650Wおよび定格の約60%である500Wに低下させて点灯したときの分光放射照度を、定格出力(200V,800W)の電力で点灯したときに対する比で表した放射照度相対値(定格値の場合を1.00とする)の特性曲線を図18に示す。
【0059】
尚、このときの赤外乾燥用ヒータの管の温度は、定格電力の800Wを印加したときが、650℃、650Wを印加したときが597℃、500Wを印加したときが543℃となる。650Wでの放射照度は、3.1μm付近、500Wでは、3.4μm付近と若干変るが、水分の吸収ピーク波長と殆どずれていないので、乾燥の効率性には影響がない。
次に、表3に示した各種赤外線乾燥ヒータの分光放射照度の上記標準となる試料No3に対する相対放射照度特性を図19に示す。
即ち、図19は、試料No.1,No.2,No.4,No.5を、それぞれの定格電圧で点灯したときの分光放射照度を、標準試料No.3(200V,800W)を定格電圧で点灯したときの距離600mm離れた位置における分光放射照度と比較した結果をグラフに表したものである。
この図19によれば、試料No.2を除くすべての試料の分光放射照度は、測定の全波長域で標準試料No.3よりも低いレベルとなっている。試料No.2も波長4.2μmより長波長では放射照度が標準試料No.3よりも低くなる。
【0060】
試料No.1の放射照度は、波長3μmから5μmの範囲では、標準試料No.3の70%内外であるが、波長5μm以上の波長域では増加して、波長7μm附近では90%程度になる。一方、試料No.2の放射照度は、4.5μm以下では急激に増加して、波長3μmでは、標準試料No.3の2倍以上となっている。これは、カーボン発熱体の放射が石英管を透過することによるものと考えられる。
【0061】
また、試料No.4の放射照度は、波長3μmから5.5μmでは、標準試料No.3の50%以下で、波長5.5μm以上では増加するが、波長7μm附近では70%程度である。試料No.4は、タングステンフィラメントの電球であるため、放射の大半が波長20μm以下に集中して、この波長域の放射の主体は、二重管の外管からのものと推定される。試料No.5の放射照度は、波長3μmでは、標準試料No.3の30%以下であるが、5.5μmでは、標準試料No.3の80%程度まで増加して、波長7μm以上では90%程度に達する。しかし、試料No.5の立ち上がりは、非常に悪く、放射照度が最大になるまで20分以上かかるので、乾燥装置には適さない。
このように、図19の各種赤外乾燥用ヒータについて、標準試料No.3に対する相対放射照度特性を測定したところによれば、標準試料No.3であれば、水系塗料中の分子の動きを活発にさせ、塗料中の分子同士の重合結合を早くさせることができる。
また、試料No.2によっても3.0μm〜4.2μmの領域においては、標準試料No.3よりはるかに大きな分光放射照度を発するが、乾燥に有効とされる4.5μm以上の長波長の領域の放射照度が低いため、乾燥の効率が悪く、実用性がないことが判明した。
【0062】
なお、放射照度(密度)を濃くして、塗膜に対しての放射エネルギーを高めるということは、乾燥機(ヒータ)の塗膜における放射相対照度の密度を高めてやることであり、例えば、ヒータと塗膜面との距離を近づけていけば、その照度密度を上げることができ、あるいは、ヒータの容量を上げてやることである。しかしながら、現実には、ヒータと塗装面との距離を近づけると、塗装面の温度が100℃以上に上がり、自動車に塗着されている樹脂・接着剤または鋼板の伸び等が生じトラブルの発生の要因となる。また、ヒータの容量(ワット数)を増やすことで密度を上げる、ということは工場における電気容量の増設となり、電気設備等に、かなり経費増が考えられ、できる限り電気容量を増やさずに、また距離をあまり近づけないで、乾燥の効率を上げることができることが望ましい。
そこで、本発明者は、赤外乾燥用ヒータと被乾燥面との間隔毎の放射密度の関係を測定した結果を、下記の表4にて示す。この表4は、標準試料No.3のヒータと被乾燥面との間の距離を600mmとしたときの放射密度を、1.00とした相対値を示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4に示すような距離対相対照度を予め実測しておくことで、距離が変わってもその相対照度が簡単に換算できる。例えば、試料No.3の距離が500mmに近づいたら、相対照度は、1.41倍となる。
次に、水系塗料の乾燥の要因(効率化)を探るべく、ウエスを水で湿らせて、自動車のボディの表面に展張し、上記ウエスの表面から70cm離れた位置にヒータ(乾燥装置)を設置した状態で、以下の測定を行った。
この測定の目的は、風を使用した塗料の乾燥性の裏付けとして、水分の蒸発の推移と、溶剤またはイオン水の蒸発とを関連させることにより、本発明システムにおいて、水性塗料に対し、いかに適したヒータであるかを立証するものである。
測定(検証)方法としては、目の小さなウエス(布)を使用し、水で濡らした状態とヒータを使用した状態の重さと、乾燥状態の触手で乾燥性を判断する。
【0065】
具体的条件としては、
(1) ヒータは予め通電し、所定温度に立ち上げておく。
(2) ヒータとウエス間の距離は、70cmとする。
(3) ウエスを乾燥させるパターンとして
1)「パターン1」:ヒータのみ通電するパターン
2)「パターン2」:ヒータから熱を照射開始してから30秒後に、ファンにより送風するパターン。
【0066】
3)「パターン3」:ヒータから熱を照射開始してから、45秒後にファンにより送風するパターン
4)「パターン4」:ヒータから熱を照射開始してから60秒後によりファンにより送風するパターン
5)「パターン5」:ヒータから熱を照射してから90秒後にファンにより送風するパターン
に分けて測定した。
先ず、表5に、外気温24℃、湿度65〜70%の環境下で、上記5つのパターンにより7分間乾燥したときの乾燥前後における水分の蒸発量と蒸発率の実測結果を示す。
【0067】
【表5】

【0068】
上記表5に基づいて、パターン別の蒸発率をグラフ化したものを、図20に示す。
上記表5および図20から分ることは、蒸発率が最も良いのがパターン3、次いで良いのがパターン4である。即ち、所定熱量に達したフルパワーのヒータの熱だけをウエス面上に45秒間照射し、その後、直ちにヒータの熱を照射したまま、所定の風量と風速の風をファンにより送風したパターンがウエスの乾燥のためには、最も良いという結果が得られた、ということである。また、パターン4、即ち、所定熱量に達したヒータの熱だけをウエス面上に60秒間照射し、その後直ちに所定の風量と風速の風をファンによりウエス面に向けて、送風した場合でも、良好な結果が得られた。パターン5、即ち、ヒータのみの熱をウエス面上に照射後90秒後に送風を開始した場合の蒸発率がパターン3およびパターン4よりも低いのは、ヒータのみの場合と同様に、ウエスの心部あるいは背面側に水分が残留するためではないかと推測される。
次に、上述したようにウエスの乾燥状態を解明すべく、ウエスの表面温度を測定したところ、表6に示すような結果が得られた。
【0069】
【表6】

【0070】
そして、上記表6をグラフ化したものを図21に示す。
図21によれば、パターン1のヒータのみの熱を直接ウエスに照射した場合が最も高温となり、次いで、パターン3の45秒後に風を当てた場合が、高温となる。
ここで用いられているヒータの熱量分布は、フルパワーで使用した場合、60cm離れた面で、1分〜2分で65℃〜75℃まで上昇し、6分〜7分では、120℃〜130℃まで上る能力を持ち合わせているが、水で湿らせたウエスの場合、水分の温度上昇は、大分緩やかになり、ファンにより風を当てると、一旦、6分前後まで温度が下がり、7分経過後から徐々に上がり始めることがよみとれる。
上述のようにして、ウエスの蒸発量と、表面温度について検証したが、さらに本発明者は自動車のドア(鋼板)表面に展張したウエスを剥がして水分の残量状態を確認した。
【0071】
先ず、図22に示すように、上記パターン1、即ち、ヒータのみを駆動してウエス上に熱を照射した状態(a)からウエスを剥がしてドア表面を露出した状態(b)で観察すると、その露出部分の約80%の面積部分に水分が残っていたことが確認された。
これに対し、図23に示すように、パターン3、即ち、ヒータによる熱照射の45秒後からファンによる送風を与えた状態(a)からウエスを剥がしてドア表面を露出した状態(b)で観察したところ、その露出部分に対し約5%の面積部分しか水分が残っていなかったことが確認された。
上述したところから、ヒータの熱だけを加え乾燥させようとしても所定の時間内では、74%程度しか蒸発しないが、熱と風の合理的な組み合わせをすることにより、約90%を蒸発させることができることが分る。
また、乾燥状態を被塗物(この場合ウエス)の重さだけでは、本来の水分の蒸発状態を把握することはできず、水分の蒸発は表面だけなのか、それとも内部あるいは背面でも行われているのかを、上述したように観察することによって望ましい乾燥条件を導き出すことができた。
【0072】
つまり、実際の塗装時における状態と照らし合わせてみると、鋼板に塗装した状態で水分は、表面に飛散する水分と塗膜の中の残分として残っている状態がある。その残分が飛散しない限りは、乾燥しない、ということであり、この塗膜中における水分のこもり現象に対処する必要があるが、本発明者は、熱と風の合理的な併用により飛躍的に蒸発時間を短縮し、良好な乾燥状態を得ることを実現した。
次に、本発明者は、「水性サフ」を塗装後、上述のような乾燥システムで所定時間乾燥した塗装物を、自然乾燥した場合の重量変化を測定した。
【0073】
【表7】

【0074】
上記表7は、パターン1〜パターン6による乾燥条件で乾燥させた、被塗物を、さらに16℃〜18℃で16時間自然乾燥した後の重量の変化と膜厚を測定した結果である。この表7からは、「システム30」「システム45」および「システム60」の重量の経時変化が0〜0.01と殆どないため、自然乾燥に入る前に既に、完全に乾燥状態となっていたことを意味し、理想的な乾燥システムであることが実証された。ここでシステム30、45および60とは、上述したように、予めヒータのフルパワーにおける熱を30秒間、45秒間および60秒間に亘り塗膜面に照射し、その後直ちにファンによる風を加えて熱風を照射したことを意味する。
尚、表7において「パターン1」の「熱風」とは、最初からヒータとファンを同時に作動させる状態をいい、「パターン2」の「熱のみ」とは、ヒータの熱を照射するだけの状態をいい、「パターン3」の「風のみ」とは、ファンにより風を当てるだけの状態をいう。
【0075】
表7から分るように、単にヒータの熱のみを与える場合や、単に風を当てるだけの場合は、勿論のこと、単に最初から熱風を当てるだけの場合(パターン1の場合)は、水分が多く残留することが明らかとなり、その後、16時間に亘り自然乾燥しても、水分が残留してしまうことから、乾燥手段としては適合していないことが実証された。
次に、上述のように検証した塗装方法および乾燥方法を踏まえて、水系塗料を用いた標準的な塗装・乾燥手順を具体的に説明する。
先ず、塗装・乾燥手順の説明に先立って、自動車の車体の塗装の構成について図24を用いて簡単に説明する。
図24において、自動車の車体205が事故により損傷し、嵌没部201が生じたものとすると、その嵌没部201は、裏側(図24において右側)を叩いて押し出すか、裏側からたたき出し作業ができないか困難な場合は、表側から引出し具を用いて引出す。
【0076】
このような板金作業を行っても、原形通りにはならないので、嵌没部201を、ダブルアクションサンダー等を使用し素地と旧塗膜の段差をなくすべくフェーザーエッジ出し研磨を行った後に、パテ202を塗布し、乾燥後ダブルアクションサンダー、手研ぎペーパー等で研磨し、損傷前の鋼板表面の形状になるように研磨する。
本発明に係る塗装システムは、上述したパテ処理後のサーフェーサ203および上塗り塗装204までの修理工程の中で、水系塗料の材料を全て使用して、以下のように補修を行うシステムである。
A.プラサフ塗装のステップ
プラサフ(中塗り)は、防錆・密着・シーラー効果のために塗布するもので、一般的に塗装回数としては、2〜3回行うのが標準作業となっており、塗装膜厚は、一般的にトータルで60〜80ミクロン程度である。
【0077】
(1)1回目塗装の要領
例えば、口径が1.4mm、エアー圧力が0.1〜0.25Mpa、吐出量がニードル弁全閉状態から3〜4.5回転戻した状態の特殊スプレーガン(第1の実施の形態または同様の機能を有するスプレーガン)を用いて塗料膜厚10〜20ミクロンの塗装をする。
次いで、熱量、波長、風量、風速が上述のような所定の範囲に含まれる特殊乾燥機を使用して、1回目の塗装終了後、次のような乾燥作業を行う。
即ち、乾燥装置としては、発熱体から60〜70cm離れた位置における風速が0.8〜2.0m/min、風量が1m×0.7mの面積当り35〜50リットル/minとなる送風が得られるファンを用いるものとする。
発熱体(ヒータ管)としては、例えば銅管内にニクロム線が封入され、該銅管の表面に、80μm〜120μmのニッケルをコーティングしたものであって、所定時間内に60cm〜70cm離れた塗膜が100℃〜130℃に上昇する能力を持つものが用いられる。そして、ヒータ管の表面温度は、例えば、表2に示したような均斉のとれた放熱温度分布となるものが望ましい。
【0078】
そして、具体的には、先ず、ヒータ管のみ30秒〜45秒間、塗膜面を照射し、塗膜面が70℃〜80℃に達した状態で、直ちにファンを45秒〜90秒間通電駆動する。すると、塗膜面は、一旦、50℃〜60℃に温度が下がるが、その後温度が10℃〜20℃上昇し、ほぼ一定温度に保持される。
尚、乾燥時間は、塗装膜厚と外気温と湿度の関係で変更設定する。
ヒータの放射熱量は、ヒータから塗膜面までの距離で操作するが、例えば、ヒータの定格容量が1.1KWの場合は、10cm〜20cm、ヒータの定格容量が5.6KWの場合は、45cm〜70cmに設定するが、上述したように、塗装膜厚、外気温度、湿度などに応じ調整をする。
【0079】
(2)2回目の塗装の要領
1回目の塗装終了後、所定のフラッシュオフタイム経過後、2回目の塗装作業に入る。
2回目の塗装においても、スプレーガンについては1回目と同様に行うものとするが、塗装膜厚は、20〜30ミクロンと1回目より塗装膜厚が厚いので、ウエット気味とし、色味隠蔽に注意して塗装する。
乾燥ステップにおいては、最初ヒータ管のみ45秒〜60秒通電駆動し、その後ヒータ管も通電した状態で60秒〜120秒ファンにより送風する。
すると、この間は、塗膜表面が60℃〜70℃に下がり、その状態をほぼ維持する。
【0080】
(3)3回目の塗装の要領
2回目のフラッシュオフによるあら熱を取ってから、3回目の塗装に入る。
スプレーガンによる塗装要領は、上述したと同様であるが、塗装膜厚は、20〜30ミクロンとする。
この工程で、プラサフが終了するので、フラッシュオフとセッティングを兼ねた作業となる。
乾燥工程では、45秒〜60秒間ヒータ管からの熱量を照射し、その後5分〜8分間ファンにより所定の風量、風速の風を上記ヒータ管の熱と共に塗装面に照射する。
上記乾燥時間は、ヒータの定格容量で多少の調整が必要であり、大型ヒータ(5.6KW)で、5分〜6分、小型ヒータ(1.1KW)では8分前後の時間が必要である。
ここで、プラサフの研磨は、耐水ペーパー800〜1000を使用し、特にプラサフのボカシ際は、丁寧に水研ぎをする必要がある。
【0081】
B.上塗り(カラーベース)塗装のステップ
カラーベース塗装は、水系の塗料を使用して隠蔽するまで塗り重ねる。
塗料・塗装の種別(例えば、メタリック・パール塗装、3コートパール塗装、ソリットエナメル等)により塗装回数、塗装方法を変える必要がある。塗装間のフラッシュオフは、下記の要領を参考として行う。
(1)1回目塗装の要領
上述した特殊スプレーガンにより、例えば、塗装面積10cmからドア1枚程度の塗装を想定した場合、ノズル口径1.4mm、エアー圧力0.1MPa〜0.25MPa、吐出量3〜4.5回転戻し(全閉からの戻し量)に設定して、塗装する。
乾燥ステップにおいては、ヒータの熱量のみを、30秒〜45秒塗膜面に照射し、次いで、所定の風量・風速の風を塗膜面に上記ヒータの熱量と共に45秒〜60秒照射する。熱量の調整は、定格容量や温度、湿度に応じてヒータと塗膜面との距離で定める。例えば、ヒータの定格容量が1.1KWの場合、上記距離は、10cm〜20cm、定格容量が5.6KWの場合、45cm〜70cmの範囲に設定する。
【0082】
風速は、1.5〜2.0m/秒とするのが望ましく、風量としては、塗膜面積が1m×0.7mに対しては、35〜50リットル/分、望ましくは40〜44リットル/分が適当であり、塗装面積の大小に応じて、比例した風量に変更する。
ヒータ管については、上述したように、2μm〜10μmの範囲において分光放射照度を持つものを用いる。
(2)2回目の塗装の要領
2回目の塗装は、1回目のフラッシュオフによるあら熱をとってから、ウエット気味に、且つ色味隠蔽に注意して行う。
塗装膜厚は、3〜5ミクロンとする。スプレーガンの要領は、1回目と同様である。フラッシュオフ工程も1回目と同様に行うが、1回目より塗膜が厚くなっているので、乾燥工程は、多少多めにとることが望ましい。
皮膜の艶が消える状態が、次の工程に移る目安とする。
乾燥作業は、ヒータのみの照射時間は、45〜60秒、これに風を加えて行う照射時間は、60秒〜90秒が目安である。
【0083】
(3)3回目〜4回目の塗装の要領
塗装膜厚は、いずれも3〜5ミクロンとする。スプレーガンの要領は、1回目と同様である。乾燥作業は、いずれも、ヒータのみの照射時間は、45〜60秒、これに風を加えて行う照射時間は、60分〜90分が目安である。
(4)セッティングの要領
カラーベース塗装作業終了後、最終上塗りクリア作業までの間、連続作業を行うカラーベース作業終了後連続してノンセッティング状態で連続作業を行う。即ち、カラーベース作業終了後、連続して所定の風(風量・風速)、所定の波長を含む分光放射照度と熱を塗膜面に照射して、水分やアルコール系の溶剤をある程度蒸発させることでセッティング終了となる。
即ち、先ず、ヒータ管の熱のみを45〜60秒塗膜面に照射し、次いで、所定の風量・風速の風を上記ヒータ管の熱量と共に3分〜5分のセッティング作業を行う。
【0084】
C.クリア塗装のステップ
1回目の塗装
水系塗料タイプのクリヤを使用し、ハーフコート、即ち、全体的に艶が出る程度の塗り方で塗装する。
スプレーガンによる塗装は、例えば、塗装面積10cmから自動車のドア1枚程度の塗装を想定した場合、ノズル口径1.4mm、エアー圧力0.1MPa〜0.25MPa、吐出量として、ノズル全閉から4〜5回転戻し、に設定して、塗装膜厚が、10〜20ミクロンとなるように塗装する。
乾燥の要領は、上述したところと同様であるが、塗装膜厚が厚くなった分、乾燥に時間をかける。
例えば、ヒータ管の熱のみを60〜90秒塗膜面に照射し、次いで、所定の風量、風速の風をヒータ管の熱と共に、90秒〜180秒照射する。
【0085】
(2)2回目〜3回目の塗装の要領
1回目のフラッシュオフによるあら熱をとってから、1回目と同様の要領で塗装する。クリア塗装2回目(または3回目)は、最終仕上げとなるので、塗装終了後ゴミ・ブツ等が発生しないように注意を払いながら乾燥作業を行う。
乾燥の要領としては、上述したところと同様であるが、乾燥時間は、より長くかけるものとし、例えば、ヒータ管の熱のみを2分〜3分間塗装面に照射し、次いで、所定の風量、風速の風をヒータ管の熱と共に、15分〜18分照射する。
【0086】
以上、各塗料メーカの水系塗料を使用して塗装・乾燥作業を行う場合の標準的な要領(マニュアル)を示すものである。このような標準的なマニュアルを構築することで、経験の浅い作業者であったとしても、高品質で塗装時間の短縮化を実現することができる。
また、水系塗料を使用した場合の調色作業も複雑で多くの経験を積まないと所望の色が出せない、という問題はある。ここでは、その問題の対応については、省略することとする。
【0087】
尚、本発明は、上述し且つ図示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
例えば、スプレーガンは、第1の実施の形態のものに限らず、本発明に要求される機能を充足するものであれば、市販されているもの、あるいは今後販売されるであろうものを用いてもよい。
また、本発明は、塗装ステップと乾燥ステップからなるものであるが、例えば、両ステップを分けて、単独にても発明としては成立するものである。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係る塗装システムは、塗装および乾燥が有機溶剤型塗料に比べて、極めて難しい水系塗料でありながら、塗装や乾燥に際し最適な条件を提供することが可能であり、例えば、実施の形態にて説明した自動車の表面への塗装ステップおよび乾燥ステップに限らず、あらゆる機器乃至は部材の補修における塗装・乾燥の処理に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の塗装システムの一部を構成する塗装装置の第1の実施の形態の正面中央縦断面図である。
【図2】図1の塗装装置に組み込まれている空気圧調節手段の部分の拡大縦断面図である。
【図3】空気圧調節手段の中の空気弁を示す正面図で、このうち(a)は、従来の空気弁、(b)は、本発明に係る空気弁の外観構成を示すそれぞれ正面図である。
【図4】図1の塗装装置に組み込まれているニードル弁の先端側と噴射ノズルの部分の拡大縦断面図である。
【図5】図4のニードル弁の全体を拡大して示す正面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る塗膜の乾燥装置の概略的構成を説明する説明図である。
【図7】第2の実施の形態に係るヒータ管の構成を説明する説明図である。
【図8】第2の実施の形態に係る筐体、反射区画体およびヒータ管等主要部の構成を示す正面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る筐体、反射区画体およびヒータ管等主要部の構成を上方より見た模式的断面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る筐体、反射区画体およびヒータ管の等主要部の構成を側方より見た模式的断面図である。
【図11】第2の実施の形態に係る筐体を移動スタンドに取付けた状態を示す背面図である。
【図12】第2の実施の形態に係る塗膜の乾燥装置に備えられた電気系の構成を説明するブロック図である。
【図13】水の赤外線吸収スペクトルを表わす特性図である。
【図14】キシレンの赤外線吸収スペクトルを表す特性図である。
【図15】トルエンの赤外線吸収スペクトルを表す特性図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態に係る筐体、ヒータ管等乾燥装置の主要部の構成を示す正面図である。
【図17】本発明に係る乾燥装置に好適なヒータ管として本発明者が、創案し且つ試作した標準的なヒータ管(試料No.3)の3.0μm〜8.0μmの範囲の分光放射照度を示す分光放射照度特性図である。
【図18】標準の試料No.3の赤外乾燥用ヒータを用いて、印加電力を定格の80%である650Wおよび定格の60%である500Wに低下させて点灯したときの分光放射照度を、定格出力(200V、800W)の電力で点灯したときに対する放射照度相対値(定格値の場合を、1.00とする)の特性図である。
【図19】ヒータ管に各種のコーティングを施してなるヒータ管(No.1,No.2,No.4,No.5)と、標準試料No.3を定格電力で点灯したときの距離600mm離れた位置における分光放射照度とを比較した結果をグラフ化した分光放射特性図である。
【図20】パターン別水分蒸発率比較特性図である。
【図21】ウエスの表面温度推移のグラフである。
【図22】ヒータのみを駆動してウエス上に熱を照射した状態(a)からウエスを剥がしてドア表面を露出した状態(b)を示す説明図である。
【図23】ヒータによる熱照射の45秒後からファンによる送風を与えた状態(a)からウエスを剥がしてドア表面を露出した状態(b)を示す説明図である。
【図24】本発明に係る塗装システムの工程を説明するための自動車の補修部分の断面構成を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 スプレーガン
2 圧縮空気供給通路
3 塗料供給通路
4 スプレーガン本体
5 噴射口
6 塗料噴射ノズル
7 ニードル弁
8 把持部
9 銃身部
10 空気ニップル
11 空気圧調節手段
12 装着穴
13 コイルばね
14 弁座本体
15 弁座部
16 弁部
17 連結部
18 エアー制限部
19 ばね受け
20 ねじ部
21 弁棒
22 開口部
23 環状溝
24 Oリング
25 空気室
26 先端部
27 ニードル弁ガイド
28 コイルばね
28a 第一コイルばね
28b 第二コイルばね
29 ニードルパッキン
30 パッキン調節ねじ
31 塗料ジョイント
32 塗料案内路
33 回転中心
34 引き金部
35 空気キャップ
36 貫通孔
37a、37b、37c、37d 小孔
37e、37f、37g、37h 小孔
38 第一テーパ部
39 第二テーパ部
40 第三テーパ部
41 噴射量制限部
42 開閉弁部
43 ガイド室
H ヒータ管
C 端子部
100 制御部
110 筐体
112 反射区画体
114 カバー部材
116 整流板
118 通気空間(所要の送風用空間乃至送風用間)
122 正面反射体
123 正面中央反射体
124 上面反射体
126 下面反射体
128 側面反射体
132 発熱部
134 軸流ファン
136 送風用空間
138 モータ
142 吸気孔
144 フィルタ抑え板
146 フィルタ受け
152 フィルタ
154 吸気空間
162 第1回導体
164 取手
166 第2回動体
168 取手
172 アーム
173 支持アーム
174 移動スタンド
175 ベース部材
176 支柱
177 キャスタ
192 計時部
194 テンキー
196 回転数調整部
201 損傷した嵌没部
202 パテ
203 サーフェーサ
204 上塗り塗装
205 自動車の車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、引続いて、塗装ステップと乾燥ステップを上記条件に準じた条件にて2回以上繰り返すことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
水系塗料を用いた補修のための塗装システムであって、
圧縮空気と高粘度の水系塗料を混合し、塗料を噴霧化して被塗布面にスプレーガンを用いて所定のエアー圧力と所定の噴出量で被塗装面に塗布する塗装ステップと、
前記塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過してから、反射体と、前記反射体の前方に配設された発熱体と、前記発熱体の後方に配設された送風手段とを備えた塗膜の乾燥装置を前記水系塗料が塗布された塗膜面から所定の距離を離隔して配置し、前記塗膜面に対し、所定の波長城を含む熱量を発する前記発熱体で所定時間加熱し、その後前記発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段で所定時間にわたり、前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う乾燥ステップと、前記塗装ステップからフラッシュオフタイムが経過した後に、エアー圧力と噴出量を、前記所定値に対し、適宜調整して前記塗膜面に塗布する次回の塗装ステップと、前記次回の塗装ステップから所定のセッティングタイムおよびフラッシュオフタイムが経過した後に、前記距離と波長域と熱量を前記所定値に対し、適宜調整して、前記塗膜面を所定時間加熱し、その後、発熱体の発熱を継続した状態で前記送風手段により前記塗膜面に所定の風量の風を当てて乾燥を行う次回の乾燥ステップと、
前記塗装ステップおよび前記乾燥ステップを2回以上繰り返すことを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
前記塗装ステップおよび前記乾燥ステップは、プラサフ塗装、上塗り塗装、クリア塗装における塗装および乾燥に適用することを特徴とする請求項1または2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記スプレーガンは、圧縮空気を供給する圧縮空気供給通路および塗料を供給する塗料供給通路が設けられた塗装装置本体と、
前記塗装装置本体に設けられ、塗料を噴霧する噴射口を有する塗料噴射ノズルと、
前記圧縮空気供給通路を開閉し且つ、圧縮空気圧を調節する空気圧調節手段と、
前記噴射口を開閉し塗料の噴射量を調節する塗料調節手段と、
を備え、
前記空気圧調節手段は、前記圧縮空気供給通路の断面積を零から所定量に亘り連続的に変化可能な弁部と、前記圧縮空気供給通路の断面積を所定量減少させて減圧させるエアー制限部とからなり、前記塗料調節手段と、前記空気調節手段とを連動して作動させるように構成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項5】
前記スプレーガンは、引き金部を途中まで引き寄せ、前記空気圧調節手段および前記塗料調節手段を共に半開状態としたとき、前記塗料の噴出量と、前記圧縮空気供給通路の圧力とを適合させるように前記塗料調節手段と前記空気圧調節手段とを設定してなり、フォードカップ秒数が20〜45秒である高粘度の水系塗料の粒子が均一に噴霧され得るものを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項6】
前記スプレーガンは、ニードル弁と塗料噴射ノズルが、少なくとも前記引き金部による移動ストロークのほぼ前半の移動段階では、塗料の噴射量が連続的に変化し、残りの移動段階では塗料の噴射量がほぼ同一か微小な変化となるように設定し、粘度の大きな塗料におけるボカシ塗装作業に好適な構成とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項7】
前記乾燥装置は、筐体の正面反射体および該正面反射体の両端に位置する一対の側面反射体からなる反射区画体の前方に配設した遠赤外線を発し得るヒータ管を発熱させ、該発熱及び放射スペクトル波長を塗膜に照射し、
前記ヒータ管の発熱開始から所定時間の経過後に、送風手段から送風を行って、前記塗膜が前記発熱で達した所定温度よりも該塗膜の温度を略10℃から20℃程度冷却し、かつ当該低下温度を一定に保つようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の塗装システム。
【請求項8】
前記乾燥装置の発熱体は、前記送風手段による送風を行っている状態で塗膜面の温度が60℃〜70℃前後まで加熱するように設定され、前記乾燥ステップにおいて、前記発熱体と前記送風手段とは、所定秒数の間、発熱体のみを作動させ、その直後に前記発熱体と前記送風手段を、同時に所定秒数の間作動させるようにしたことを特徴とする請求項1、2および7のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項9】
前記塗膜面に当てる送風手段による送風量は、1m×0.7mの面積当り、35〜50リットル/minであり、より好ましくは40〜44リットル/minであることを特徴とする請求項1、2、7および8のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項10】
前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、前記水系塗料の溶剤である非イオン水またはアルコール系の溶剤が吸収し易い波長域の放射スペクトルを発するものであり、前記発熱体のみが作動するときは2.5μm〜4.0μmの中波長域を含む放射スペクトルを発し、
前記発熱体と前記送風手段とを同時に作動するときは、5.5μm〜11μmの長波長域を含む放射スペクトルを発するように設定してなることを特徴とする請求項1、2、7〜9のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項11】
前記乾燥ステップに用いられる乾燥装置の発熱体は、
銅管の中心部にニクロム線が収容され、前記銅管の表面にニッケルをコーティングしてなることを特徴とする請求項1、2、7〜10のいずれか1項に記載の補修のための塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−43870(P2008−43870A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221337(P2006−221337)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(305021786)株式会社ウエノコーポレーション (6)
【Fターム(参考)】