説明

塗装鋼板の連続処理装置

【課題】ラジアントチューブ炉の鋼板入口からラジアントチューブ炉深部への外気の侵入を抑制してラジアントチューブ炉の熱効率を向上すると共に鋼板への疵の発生を回避することが可能な塗装鋼板の連続処理装置を提供する。
【解決手段】塗装された鋼板11が供給されて鋼板11の塗装膜を乾燥する横型カテナリー式のラジアントチューブ炉12と、ラジアントチューブ炉12の鋼板出口部13に直結し、ラジアントチューブ炉12から排出された鋼板11を受入れて乾燥後の塗装膜を鋼板11に焼付ける直火式加熱炉14とを備えた塗装鋼板の連続処理装置10において、ラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の直上流側に、直火式加熱炉14で発生した燃焼排ガスを排気する第1の排気手段16を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装鋼板の連続処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、塗装膜の乾燥と焼付けを行う塗装鋼板の連続処理装置では、塗装膜を乾燥する乾燥炉には、塗布直後の塗装膜に疵を付けることがなく、塗装膜中の溶媒の突沸を防止しながら溶媒を蒸発させる低温度域での温度制御が可能な横型カテナリー式のラジアントチューブ炉を使用し、乾燥炉の後段に設けられ塗装膜を鋼板に焼付ける焼付け炉には、直火式加熱炉を使用することができる。
ここで、予熱炉と予熱炉の後段に設けられた直火式加熱炉とを有する鋼板の連続焼鈍装置において、直火式加熱炉で生成した燃焼排ガスを予熱炉に供給して予熱炉内の鋼板を加熱することで予熱炉の燃料原単位を低減させ予熱炉の熱効率の向上させるために、予熱炉と直火式加熱炉を連続的に配置し、直火式加熱炉の上流側(燃焼排ガスの流れに対しては下流側)と予熱炉の下流側(燃焼排ガスの流れに対しては上流側)との間に直火式加熱炉で生成した燃焼排ガスを予熱炉に供給する排ガス供給用導管を、予熱炉の上流側(燃焼排ガスの流れに対しては下流側)に燃焼排ガスを排出する煙突に連通するガス排出用導管をそれぞれ設け、更に、排ガス供給用導管の途中とガス排出用導管の途中をダンパを備えたバイパス管で接続することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスを速やかに排出してバーナを効率的に作動させるために、予熱炉を直火式加熱炉に直結し、予熱炉の鋼板出口近傍の直火式加熱炉に近い部分(予熱炉の下流側)と直火式加熱炉を燃焼排ガス煙道で接続し、予熱炉の鋼板入口近くに排出口を設けることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−158182号公報
【特許文献2】特開平11−12658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2の発明は、連続焼鈍設備に対するものであり、塗装鋼板の乾燥及び焼付けに対するものではない。このため、特許文献1、2の発明では、予熱炉入側がシールロールでシールされ、予熱炉入側からの外気の侵入を遮断することができる。しかし、塗装鋼板の連続処理装置の乾燥炉(例えば、ラジアントチューブ炉あるいは熱風吹付炉等)では、塗装後の塗装膜が乾燥する迄は、鋼板(塗装膜)に触れることができない。このため、乾燥炉、例えば、ラジアントチューブ炉の鋼板入口にシールロールを設けて鋼板入口からの外気の侵入を遮断することができず、ラジアントチューブ炉の鋼板入口から外気がラジアントチューブ炉内に侵入しラジアントチューブ炉の熱効率が低下するという問題が発生する。このため、ラジアントチューブ炉の鋼板入口の扉を塗装鋼板の通過に障害が発生しない限界まで閉じることが必要になるが、扉を限界まで閉じておくと、塗装鋼板の搬送用に加えている張力に変動が生じた場合、塗装鋼板が振動し、扉に衝突して塗装膜に疵が付いたり、鋼板が破断するという問題が発生する。また、直下式加熱炉自体に、煙突と連通する連結管を設けた場合、連結管内に設けたダンパを閉じても直下式加熱炉と煙突との連通を完全に遮断することができないため、煙突のドラフト効果により直下式加熱炉及びラジアントチューブ炉内のガスが吸引される。この場合、直下式加熱炉で発生する燃焼排ガス量を、連結管のダンパを閉じた際の煙突のドラフト効果により吸引されるガス量以下に抑えると、ラジアントチューブ炉の鋼板入口を介してラジアントチューブ炉内に外気が吸い込まれることとなる。更に、直下式加熱炉からドラフト効果で排気される燃焼排ガス分については、その熱量を有効利用できず、ラジアントチューブ炉の熱効率が低下するという問題もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、ラジアントチューブ炉の鋼板入口からラジアントチューブ炉深部への外気の侵入を抑制してラジアントチューブ炉の熱効率を向上すると共に鋼板への疵の発生を回避することが可能な塗装鋼板の連続処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置は、塗装された鋼板が供給されて該鋼板の塗装膜を乾燥する横型カテナリー式のラジアントチューブ炉と、該ラジアントチューブ炉の鋼板出口部に直結し、該ラジアントチューブ炉から排出された前記鋼板を受入れて乾燥後の前記塗装膜を該鋼板に焼付ける直火式加熱炉とを備えた塗装鋼板の連続処理装置において、
前記ラジアントチューブ炉の鋼板入口の直上流側に、前記直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスを排気する第1の排気手段を設けている。
【0007】
本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置において、前記ラジアントチューブ炉の前記鋼板入口の直下流側に、前記第1の排気手段と連通し該鋼板入口から侵入した外気を吸引するダクトを設けることが好ましい。
【0008】
本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置において、前記直火式加熱炉の鋼板出口部に該鋼板出口部に連通し該鋼板出口部内の燃焼排ガスを排気する第2の排気手段を設け、該第2の排気手段と該鋼板出口部との連通部の直上流側の該鋼板出口部の部位に前記鋼板を通過させ該直火式加熱炉内の燃焼排ガスの流出を抑制する仕切りを設けることが好ましい。
また、本発明にかかる塗装鋼板の連続処理装置において、該塗装鋼板の連続処理装置を水溶性の塗装膜の乾燥及び焼付け装置とすることができる。
ここで、前記水溶性の塗装膜は方向性珪素鋼板の絶縁皮膜であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置においては、ラジアントチューブ炉の鋼板入口の直上流側に、直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスを排気する第1の排気手段を設けたので、直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスを直火式加熱炉自体に連通する煙突を介して排気する場合、あるいは直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスをラジアントチューブ炉の鋼板入口より下流側のラジアントチューブ炉の部位と連通する煙突を介して排気する場合に比べて、ラジアントチューブ炉の鋼板入口を通過させて外部に排出させる燃焼排ガス流量を増加できる。このため、従来は、ラジアントチューブ炉の深部に外気が侵入するのを抑制するため鋼板入口の扉を鋼板の通過が可能となる下限開口度まで閉じていたが、本発明では、ラジアントチューブ炉の鋼板入口を通過する燃焼ガス流量が増加した分だけ、扉の開口度を下限開口度より増加ができる。その結果、鋼板搬送のために鋼板に加えている張力に変動が生じて鋼板のカテナリー(パスライン)が変動しても、鋼板が鋼板入口に設けた扉に接触するのを防止できる。
【0010】
ラジアントチューブ炉内を通過して第1の排気手段で排出される燃焼排ガスの流れで鋼板が加熱でき、ラジアントチューブ炉の燃料原単位が低減してラジアントチューブ炉の熱効率が向上することは言うまでもない。
また、直火式加熱炉自体に、煙突と連通する連結管を設けた場合、連結管のダンパを閉じても煙突のドラフト効果により吸引されるガス量以下に直火式加熱炉の燃焼排ガス量を抑えることができない問題があったが、本発明では、直火式加熱炉自体には第1の排気手段と連通する連結管が設けられていないため、この問題は当然発生しない。更に、直火式加熱炉自体から第1の排気手段に連通する連結管への燃焼排ガスの排気がないため、その燃焼排ガスの熱量をラジアンとチューブ炉において有効利用し、ラジアントチューブ炉の熱効率を上げることは言うまでもない。
【0011】
本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置において、ラジアントチューブ炉の鋼板入口の直下流側に、第1の排気手段と連通し鋼板入口から侵入した外気を吸引するダクトを設ける場合、ラジアントチューブ炉の鋼板入口からラジアントチューブ炉内に外気が侵入してもダクトを介して第1の排気手段で排気することができ、ラジアントチューブ炉の深部にまで外気が侵入し難い。
【0012】
本発明に係る塗装鋼板の連続処理装置において、直火式加熱炉の鋼板出口部に第2の排気手段及び仕切りを設ける場合、直火式加熱炉の後段に燃焼排ガスが流れ出すのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明による方向性珪素鋼板の絶縁皮膜の乾燥及び焼付け装置に適用される一実施の形態に係る塗装鋼板の連続処理装置の説明図、図2は同塗装鋼板の連続処理装置の作用の説明図である。
【0014】
図1に示すように、本発明による方向性珪素鋼板の絶縁皮膜の乾燥及び焼付け装置に適用される一実施の形態に係る塗装鋼板の連続処理装置10は、塗装された鋼板11が供給されて鋼板11の塗装膜を乾燥する横型カテナリー式のラジアントチューブ炉12と、ラジアントチューブ炉12の鋼板出口部13に直結し、ラジアントチューブ炉12から排出された鋼板11を受入れて乾燥後の塗装膜を鋼板11に焼付ける、例えば、横型カテナリー式の直火式加熱炉14とを備え、ラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の直上流側に、直火式加熱炉14で発生しラジアントチューブ炉12内に流入した燃焼排ガスを排気する第1の排気手段16を設けている。以下、詳細に説明する。
【0015】
ラジアントチューブ炉12は、水平方向に搬送される鋼板11を上下方向から把持して鋼板11に塗装膜を塗布するコーターロール17の下流側に設けられている。そして、ラジアントチューブ炉12は、塗装膜が塗布された鋼板11が通過する鋼板入口15が上流側端部に設けられ、塗装膜が塗布された鋼板11を加熱して塗装膜を乾燥させる図示しないラジアントチューブ及びコーターロール17と平行に配置されコーターロール17と対となって鋼板11を支える支持ロール18とを内部に備えた乾燥処理部19と、乾燥処理部19の後段に連接して設けられ、ラジアントチューブ炉12から排出する塗装膜が塗布された鋼板11のパスラインの高さ位置を決める排出ロール20(支持ロール18と平行に配置されている)を内部に備えた鋼板出口部13とを有している。ここで、鋼板入口15の開口部が形成されている乾燥処理部19の上流側端部には、上流側端部の外側面上をそれぞれ上下方向に摺動して開口部を覆う対となる上、下仕切り部材21、22を有する扉23が設けられている。
【0016】
第1の排気手段16は、鋼板入口15の直上流側(手前側)の上方に吸引口が設けられてラジアントチューブ炉12内の燃焼排ガスを鋼板入口15を介してラジアントチューブ炉12外に吸引する燃焼排ガス排出ダクト24と、燃焼排ガス排出ダクト24に接続する第1の煙突25とを有している。そして、ラジアントチューブ炉12の乾燥処理部19の天井で鋼板入口15の直下流側の部位には、第1の排気手段16の第1の煙突25と基部が連通し、先部に鋼板入口15からラジアントチューブ炉12内に侵入した外気を吸引する吸引口が形成されたダクト26が設けられている。ここで、燃焼排ガス排出ダクト24内には第1のダンパ27、ダクト26内には第2のダンパ28がそれぞれ設けられ、燃焼排ガス排出ダクト24の吸引口の縁部にはフード29が取付けられている。
【0017】
直火式加熱炉14は、ラジアントチューブ炉12の鋼板出口部13と接続し、鋼板出口部13から排出され塗装膜の乾燥が終了した鋼板11を受入れる鋼板入口30を上流側端部に備え、乾燥後の塗装膜を加熱して鋼板11に焼付ける図示しないバーナ及び排出ロール20と平行に配置され排出ロール20と対となって鋼板11を支える支持ロール31とを内部に備えた焼付け処理部32と、焼付け処理部32の後段に連接して設けられ、直火式加熱炉14から排出する塗装膜が焼付けされた鋼板11のパスラインの高さ位置を決める排出ロール34(支持ロール31と平行に配置されている)を内部に備えた鋼板出口部35とを有している。
【0018】
また、直火式加熱炉14の鋼板出口部35の中間部には、鋼板出口部35に連通し鋼板出口部35内の燃焼排ガスを排気する第2の排気手段36が設けられ、鋼板出口部35の中間部より上流側(第2の排気手段36と鋼板出口部35との連通部の直上流側)の鋼板出口部35の部位には、塗装膜が焼付けられた鋼板11を通過させ直火式加熱炉14内の燃焼排ガスの流出を抑制する上下対となる仕切り壁37、38を備えた仕切り39が設けられている。ここで、第2の排気手段36は、鋼板出口部35の天井の中間部に接続されて鋼板出口部35内の燃焼排ガスを排気する排ガス排出ダクト40と、排ガス排出ダクト40に接続する第2の煙突41とを有している。そして、排ガス排出ダクト40には第3のダンパ42が設けられている。これによって、直火式加熱炉14の後段に燃焼排ガスが流出するのを防止できる。
【0019】
続いて、本発明の一実施の形態に係る塗装鋼板の連続処理装置10の作用について説明する。
図2に示すように、ラジアントチューブ炉12内が600〜1000℃に、直火式加熱炉14内が800〜1200℃となるように、ラジアントチューブ炉12のラジアントチューブ及び直火式加熱炉14のバーナを使用する場合、第1の排気手段16の燃焼排ガス排出ダクト24の第1のダンパ27、ダクト26の第2のダンパ28、及び第2の排気手段36の排ガス排出ダクト40の第3のダンパ42をそれぞれ開にすると、直火式加熱炉14の鋼板出口部35には燃焼排ガスの流出を抑制する仕切り39が設けられているので、第1の煙突25のドラフト効果により直火式加熱炉14で発生した燃焼排ガスの大半は、直火式加熱炉14からラジアントチューブ炉12内に流入し、ラジアントチューブ炉12の上流側(鋼板入口15)に向けて流れる。
【0020】
このため、ラジアントチューブ炉12内を通過する塗装膜が塗布された鋼板11は、ラジアントチューブ炉12内に流入した燃焼排ガスにより加熱され、ラジアントチューブ炉12の燃料原単位が低減してラジアントチューブ炉12の熱効率が向上する。そして、ラジアントチューブ炉12の上流側に移動した燃焼排ガスの一部は、ダクト26内に進入し第1の煙突25から排出される。
【0021】
また、ラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の直上流側(外側)の上方には、第1の煙突25と連通している燃焼排ガス排出ダクト24の吸引口が配置されているので、第1の煙突25のドラフト効果により燃焼排ガスの残部は燃焼排ガス排出ダクト24で吸引されて第1の煙突25から排出される。例えば、直火式加熱炉自体から250Nm/hrの流量で燃焼排ガスを排出し、ラジアントチューブ炉の鋼板入口の下部から800Nm/hrの流量で外気が流入し、ラジアントチューブ炉の鋼板入口の上部から550Nm/hrの流量で外気が流出していた従来の塗装鋼板の連続処理装置と比べ、本発明ではラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の下部から800Nm/hrの流量で外気が流入し、ラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の上部より800Nm/hrの流量で外気が流出した場合、例えば、ラジアントチューブ炉12の炉幅が1.5mであると、鋼板入口15の開口部高さ(上仕切り部材21の下端面と下仕切り部材22の上端面との距離)を340mmから390mm(15%)に拡げることが可能になった。なお、直火式加熱炉14で発生した燃焼排ガスの一部は、仕切り39を介して直火式加熱炉14の鋼板出口部35内にも漏れ出すが、鋼板出口部35内に漏れ出した燃焼排ガスは第2の煙突41のドラフト効果により排ガス排出ダクト40で吸引されて第2の煙突41から排出される。このため、直火式加熱炉14の後段(炉内ロール43側)に燃焼排ガスが流出することが防止できる。
【0022】
直火式加熱炉14の燃焼負荷が低下し、燃焼排ガスの発生量が減少しても、塗装鋼板の連続処理装置10においては、直火式加熱炉14自体に煙突と連通する連結管を設けておらず、直火式加熱炉14の上流側に隣接するラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の前後に第1の煙突25に連通する燃焼排ガス排出ダクト24及びダクト26を設けている。このため、直火式加熱炉14の燃焼負荷低下時においてもラジアントチューブ炉12内には下流側から上流側に向かう燃焼排ガスの流れが存在している。この流れによって外気が更にラジアントチューブ炉12の深部に向けて侵入するのが抑制され、侵入した外気は燃焼排ガスと共にダクト26で吸引されて第1の煙突25から排出される。
【0023】
このため、直火式加熱炉自体に煙突と連通する連結管を設けている従来技術では、ラジアントチューブ炉12の深部に向けて外気が侵入するのを抑制するため、鋼板入口から燃焼排ガスを流出させることが可能となる燃焼排ガス量の発生を確保する必要があり直火式加熱炉の燃焼負荷を低下することができなかったが、塗装鋼板の連続処理装置10では、直火式加熱炉14の燃焼負荷を低下させてもラジアントチューブ炉12内の下流側から上流側に向かう燃焼排ガスの流れでラジアントチューブ炉12内に侵入した外気が更にラジアントチューブ炉12の深部に向けて侵入するのが抑制されるので、直火式加熱炉14の燃焼負荷を低下することが可能になる。その結果、直火式加熱炉14における上限温度の制約が厳しい鋼板11の処理を行うことが可能になる。
水溶性の塗装膜の乾燥及び焼付けに本実施の形態の塗装鋼板の連続処理装置を適用する場合、塗装膜中の溶媒が突沸し易い水溶性の塗装膜であっても、溶媒の突沸を防止でき、色むらの発生を抑えた品質の高い塗装膜を備えた塗装鋼板を得ることができる。
また、方向性珪素鋼板の絶縁皮膜の乾燥及び焼付けに本実施の形態の塗装鋼板の連続処理装置を適用する場合、ラジアントチューブ炉12の鋼板入口15の扉23に方向性珪素鋼板が接触することがなく、方向性珪素鋼板と扉23との接触により絶縁皮膜に疵が入り絶縁が破壊されるのを防止でき、均一な特性の絶縁皮膜を確保できる。
【0024】
以上、本発明を具体化した実施の形態では、図1、図2に示すように、ラジアントチューブ炉12の鋼板出口部13に上、下内面の間隔が狭まった領域を設けて、ラジアントチューブ炉12と直火式加熱炉14との間に境のある実施の形態を示したが、鋼板出口部13に上、下内面の間隔が狭まった領域を設けず、ラジアントチューブ炉12と直火式加熱炉14との間に境が存在しない実施の形態も本発明に含まれる。また、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による方向性珪素鋼板の絶縁皮膜の乾燥及び焼付け装置に適用される一実施の形態に係る塗装鋼板の連続処理装置の説明図である。
【図2】同塗装鋼板の連続処理装置の作用の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
10:塗装鋼板の連続処理装置、11:鋼板、12:ラジアントチューブ炉、13:鋼板出口部、14:直火式加熱炉、15:鋼板入口、16:第1の排気手段、17:コーターロール、18:支持ロール、19:乾燥処理部、20:排出ロール、21:上仕切り部材、22:下仕切り部材、23:扉、24:燃焼排ガス排出ダクト、25:第1の煙突、26:ダクト、27:第1のダンパ、28:第2のダンパ、29:フード、30:鋼板入口、31:支持ロール、32;焼付け処理部、34:排出ロール、35:鋼板出口部、36:第2の排気手段、37、38:仕切り壁、39:仕切り、40:排ガス排出ダクト、41:第2の煙突、42:第3のダンパ、43:炉内ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装された鋼板が供給されて該鋼板の塗装膜を乾燥する横型カテナリー式のラジアントチューブ炉と、該ラジアントチューブ炉の鋼板出口部に直結し、該ラジアントチューブ炉から排出された前記鋼板を受入れて乾燥後の前記塗装膜を該鋼板に焼付ける直火式加熱炉とを備えた塗装鋼板の連続処理装置において、
前記ラジアントチューブ炉の鋼板入口の直上流側に、前記直火式加熱炉で発生した燃焼排ガスを排気する第1の排気手段を設けたことを特徴とする塗装鋼板の連続処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の塗装鋼板の連続処理装置において、前記ラジアントチューブ炉の前記鋼板入口の直下流側に、前記第1の排気手段と連通し該鋼板入口から侵入した外気を吸引するダクトを設けたことを特徴とする塗装鋼板の連続処理装置。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の塗装鋼板の連続処理装置において、前記直火式加熱炉の鋼板出口部に該鋼板出口部に連通し該鋼板出口部内の燃焼排ガスを排気する第2の排気手段を設け、該第2の排気手段と該鋼板出口部との連通部の直上流側の該鋼板出口部の部位に前記鋼板を通過させ該直火式加熱炉内の燃焼排ガスの流出を抑制する仕切りを設けたことを特徴とする塗装鋼板の連続処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装鋼板の連続処理装置において、該塗装鋼板の連続処理装置を水溶性の塗装膜の乾燥及び焼付け装置とすることを特徴とする塗装鋼板の連続処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の塗装鋼板の連続処理装置において、前記水溶性の塗装膜は方向性珪素鋼板の絶縁皮膜であることを特徴とする塗装鋼板の連続処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−111922(P2010−111922A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285820(P2008−285820)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】