説明

塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法

【課題】得られるパターンにおいて、さらに良好なラインエッジラフネス(LER)を実現することができる塩、この塩を含有するレジスト組成物及びパターン形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】1,3−ジケトンのアニオンと、有機カチオンとからなる塩、該塩、酸発生剤及び樹脂を含有するレジスト組成物、(1)該レジスト組成物を基板上に塗布する工程、(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、(4)露光後の組成物層を加熱する工程、(5)加熱後の組成物層を、現像装置を用いて現像する工程を含むレジストパターンの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物に含有される塩、レジスト組成物及びレジストパターンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂として、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル及びp−ヒドロキシスチレンに由来する構造単位を含む重合体と、酸発生剤として、トリフェニルスルホニウム2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート及びビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタンを含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−107708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレジスト組成物では、得られるパターンのラインエッジラフネス(LER)が必ずしも満足できるものではない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]1,3−ジケトンのアニオンと、有機カチオンとからなる塩。
【0006】
[2]式(A)で表される[1]記載の塩。

[式(A)中、
及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜36の芳香族炭化水素基を表す。また、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。該脂肪族炭化水素基及び環に含まれる1以上のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
Z’は、有機カチオンを表す。
【0007】
[3]Z’が、式(IXz)で表されるカチオンである[2]記載の塩。

[式(IXz)中、
、P及びPは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜12の環式炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素に含まれる水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数4〜36の脂環式炭化素基で置換されていてもよい。]
【0008】
[4]R及びRが炭素数1〜4のアルキル基である[2]又は[3]記載の塩。
【0009】
[5][1]〜[4]記載の塩、酸発生剤及び樹脂を含有するレジスト組成物。
【0010】
[6](1)上記[5]記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を、現像装置を用いて現像する工程を含むパターン形成方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塩によれば、該塩を含有するレジスト組成物から優れたラインエッジラフネス(LER)を有するパターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、特に断りのない限り、同様の置換基を有するいずれの化学構造式も、炭素数を適宜選択しながら、後述する具体的な各置換基を適用することができる。直鎖状、分岐状又は環状いずれかをとることができるものは、特記ない限りそのいずれをも含み、また、同一の基において、直鎖状、分岐状及び/又は環状の部分構造が混在していてもよい。さらに、各置換基は、結合部位によって一価又は二価の置換基となり得る。立体異性体が存在する場合は、それらの立体異性体の全てを包含する。
「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「CH2=CH−CO−」又は「CH2=C(CH3)−CO−」の構造を有するモノマーの少なくとも1種を意味する。同様に「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」とは、それぞれ「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも1種」並びに「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0013】
本発明の塩は、1,3−ジケトンのアニオンと、有機カチオンとからなる塩である。
このような塩としては、例えば、式(A)で表される塩(以下「塩(A)」という場合がある)が好ましい。

[式(A)中、
及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜36の芳香族炭化水素基を表す。また、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。該脂肪族炭化水素基及び環に含まれる1以上のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
Z’は、有機カチオンを表す。]
【0014】
塩(A)は、通常、式(A−1)で表される塩及び式(A−2)で表される塩の混合物である。

[式(A−1)及び式(A−2)中、
、R、R及びZ'は、上記と同じ意味を表す。]
【0015】
脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチルル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基等が挙げられる。
【0016】
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントニル基等のアリール基等が挙げられる。
【0017】
脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基に置換されていてもよい置換基としては、例えば、水酸基又は炭素数6〜12のアリール基等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
【0018】
脂肪族炭化水素基のメチレン基が酸素原子又はカルボニル基で置換された基としては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0019】
、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成する場合、塩(A)としては例えば以下の塩が挙げられる。

環に含まれるメチレン基が、酸素原子又はカルボニル基で置換されている場合、塩(A)としては、例えば以下の塩が挙げられる。

【0020】
また、環に置換されていてもよい置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。
【0021】
塩(A)は、R及びRが炭素数1〜4のアルキル基、Rが水素原子であるものが好ましい。
【0022】
塩(A)におけるアニオンとしては、下記に示すものが例示される。


【0023】

【0024】
式(A)で表される塩におけるZ’で表される有機カチオンとしては、例えば、式(IXz)、式(IXb)、式(IXc)又は式(IXd)などのカチオン等が挙げられる。
【0025】

式(IXz)中、
、P及びPは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜12の環式炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基及び該芳香族炭化水素に含まれる水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数4〜36の脂環式炭化素で置換されていてもよい。
式(IXb)中、
及びPは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
【0026】
式(IXc)中、
及びPは、それぞれ独立に、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
は、水素原子を表し、Pは、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜12のシクロアルキル基で置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表すか、PとPとが一緒になって、炭素数3〜12の環を形成してもよい。
【0027】
式(IXd)中、
10〜P21は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す。
Eは、硫黄原子又は酸素原子を表す。
mは、0又は1を表す。]
【0028】
脂環式炭化水素基としては、飽和及び不飽和の単環式及び多環式の炭化水素基(ただし、芳香族炭化水素は除く)が挙げられる。なかでも飽和炭化水素が好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等のシクロアルキル基;アダマンチル基、イソボルニル基、デカヒドロナフチル基及びメチルノルボルニル基並びに下記に示す基などが挙げられる。

アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子が挙げられる。
環式炭化水素基としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素のいずれをも含む。
シクロアルキル基としては、上述した脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。
とPとが互いに結合して形成する環としては、硫黄原子を少なくとも1つ含有する複素環が挙げられる。例えば、−S(P)(P)基としては、以下で表される基等が挙げられる。

なかでも、テトラヒドロチオフェニウム基が好ましい。
【0029】
とPとが互いに結合して環を形成する場合、−CH(P)−CO−P基としては、以下の基などが挙げられる。

ここで、*は硫黄原子との結合手を示す。
【0030】
前記の式(IXa)で表されるカチオンの中でも、例えば、式(IXaa)で表されるカチオンが好ましい。

[式(IXaa)中、
〜Pは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表すか、互いに結合して環を形成してもよく、該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシドキシ基又は炭素数2〜4のアシル基で置換されていてもよい。
、x及びxは1〜5の整数である。]
【0031】
、P及びPが互いに結合して環を形成する環は、飽和又は不飽和環、芳香環のいずれでもよい。好ましくは脂環式炭化水素環である。
アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、トリチル、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル等が挙げられる。」
また、ここでの脂環式炭化水素基としては、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキル基及びイソボルニル基などが好ましい。
【0032】
式(IXa)で表されるカチオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。


【0033】

【0034】

【0035】

【0036】
前記式(IXb)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0037】

【0038】
前記式(IXc)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0039】

【0040】
前記式(IXd)で表されるカチオンの具体例としては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0041】

【0042】

【0043】

【0044】

【0045】
上述したアニオン及びカチオンは、任意に組合せることができる。
【0046】
塩(A)としては、例えば、下記に示す塩が例示される。

【0047】

【0048】

【0049】

【0050】
塩(A)の製造方法としては、例えば、下記の反応式で表される製造方法が挙げられる。


[式中、R、R、R及びZ’は、上記と同じ意味を表す。
Tは、アルカリ金属を表す。]
【0051】
アルカリ金属としては、ナトリウム及びカリウム等が挙げられ、ナトリウムが好ましい。式(A−a)で表される化合物としては、例えば、アセチルアセトン等が挙げられる。
【0052】
まず、式(A−a)で表される化合物を水酸化アルカリ金属と反応させることにより、式(A−b)で表される化合物を得る。この反応は、溶媒中で行うことが好ましく、溶媒としては水及びメタノールの混合溶媒が好ましい。
【0053】
次いで、得られた式(A−b)で表される化合物を、Z’Jと反応させることにより、塩(A)を得ることができる。Jはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0054】
本発明のレジスト組成物は、上述した塩(A)と、酸発生剤と、樹脂とを含有する。
上述した塩(A)は、単独で用いてもよいし、2以上を組み合わせて用いてもよい。
酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
酸発生剤は、本発明のレジスト組成物において、露光により酸を発生し、樹脂中の基であって酸に不安定な基に対して触媒的に作用して開裂させ、樹脂をアルカリ水溶液に可溶なものとする役割を果たす。この酸発生剤によって、本発明のレジスト組成物は、化学増幅型レジスト組成物、特に、ポジ型レジスト組成物として有用である。
【0055】
このような酸発生剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネート等を挙げることができる。
【0056】
また、これらの活性光線又は放射線照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物を使用してもよい。
【0057】
これらのなかでも、酸発生剤としては、フッ素原子を含むものが好ましい。
例えば、酸発生剤として、式(I)で表される塩が具体的に例示される。


[式(I)中、
及びQは、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基を表す。
は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜17の飽和炭化水素基を表し、該飽和炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
は、炭素数1〜36の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜36の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜36の芳香族炭化水素基であり、該脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。
は、有機カチオンを表す。]
【0058】
ペルフルオロアルキル基としては、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−n−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基などが挙げられる。なかでも、ペルフルオロメチル基が好ましい。
【0059】
飽和炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基を含む2価の基が挙げられる。
アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基、ドデカン−1,12−ジイル基、トリデカン−1,13−ジイル基、テトラデカン−1,14−ジイル基、ペンタデカン−1,15−ジイル基、ヘキサデカン−1,16−ジイル基、ヘプタデカン−1,17−ジイル基、メチリデン基、エチリデン基、プロピリデン基、2−プロピリデン基等の直鎖状アルキレン基;
直鎖状アルキレン基に、アルキル基(特に、炭素数1〜4のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等)の側鎖を有した分岐状アルキレン基、例えば、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,2−プロピレン基、1−メチル−1,4−ブチレン基、2−メチル−1,4−ブチレン基等の分岐状アルキレン基等が挙げられる。
シクロアルキレン基を含む2価の基としては、上述した脂環式炭化水素の2価の基に加え、例えば、式(X−A)〜式(X−C)で表される基が挙げられる。



[式(X−A)〜式(X−C)中、
1A及びX1Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。ただし、式(X−A)〜式(X−C)で表される基の炭素数は1〜17である。]
1A及びX1Bにおける置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基等が挙げられる。
【0060】
式(I)で表される塩(以下、塩(I)と記載することがある)のアニオンにおいて、Q1およびQ2は、それぞれ独立にフッ素原子または−CFであることが好ましく、両方ともフッ素原子がより好ましい。
【0061】
における置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基等が挙げられる。
【0062】
としては、具体的には、下記の基が挙げられる。

【0063】
は、−CO−O−X10−、−CO−O−X11−CO−O−、−X11−O−CO−、−X11−O−X12−であることが適しており、−CO−O−X10−、−CO−O−X11−CO−O−が好ましい。ただし、X10、X11及びX12は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜15のアルキレン基を表す。
【0064】
は、置換基を有してもよい炭素数4〜36の脂環式炭化水素基が適している。
また、Yの脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基に置換されていてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基が挙げられる。
【0065】
式(I)で表される塩のアニオンとしては、以下の式(IA)、式(IB)、式(IC)、式(ID)等が挙げられる。なかでも、式(IA)及び式(IB)で表されるアニオン等が適している。
【0066】

[式(IA)、式(IB)、式(IC)及び式(ID)中、
、Q及びYは、式(I)における定義と同じである。
10、X11及びX12は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1〜15のアルキレン基を表す。]
【0067】
は、式(Y1)で表される基が好ましい。

[式(Y1)中、
環W’は、炭素数3〜36の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜21のアラルキル基、グリシジルオキシ基又は炭素数2〜4のアシル基を表す。
xは、0〜8の整数を表す。xが2以上の場合、複数のRは、同一でも異なってもよい。
は、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表すか、環W’に含まれる炭素原子と互いに結合して環を形成していてもよい。]
【0068】
xは、好ましくは0〜6の整数、より好ましくは0〜4の整数を表す。
環W’として、式(W1)〜式(W26)などが挙げられる。なかでも、式(W1)〜式(W19)で表される基などが好ましく、より好ましくは式(W12)、式(W15)、式(W16)及び式(W19)で表される基である。
【0069】

【0070】
としては、さらに、環W’に含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された基(ただし、該環W’に含まれるメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)及び水酸基又は水酸基を含む基で置換された基(ただし、ラクトン構造を有するものを除く)並びに環W’に含まれる隣接する2つのメチレン基が酸素原子とカルボニル基とで置換されたラクトン構造を有する基及び環W’に含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有する基、環W’に含まれる水素原子が芳香族炭化水素基又は芳香環を有する基で置換された基、環W’に含まれる1つのメチレン基が酸素原子で置換されたエーテル構造を有する基などが挙げられる。
【0071】
環W’に含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された(該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子で置換されていてもよい。)Yとしては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0072】
環W’に含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたY(ただし、ラクトン構造を有さない。)としては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0073】
環W’に含まれる隣接する2つのメチレン基がカルボニル基と酸素原子とで置換されたラクトン構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0074】
環W’に含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0075】
環W’に含まれる水素原子が芳香族炭化水素基又は芳香環を有する基で置換されたYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0076】
環W’に含まれる1つのメチレン基が酸素原子で置換されたエーテル構造を有するYとしては、例えば、以下の基が挙げられる。

【0077】
式(IA)中、環W’に含まれる水素原子が炭化水素基のみで置換された(該炭化水素基に含まれるメチレン基は酸素原子で置換されていてもよい。)アニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0078】

【0079】

【0080】
式(IA)中、環W’に含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたアニオン(ただし、ラクトン構造を有さない。)としては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0081】

【0082】

【0083】

【0084】
式(IA)中、環W’に含まれる隣接する2つのメチレン基が酸素原子とカルボニル基とで置換されたラクトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0085】

【0086】
式(IA)中、環W’に含まれるメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0087】

【0088】
式(IA)中、環W’に含まれる水素原子が芳香族炭化水素基又は芳香環を有する基で置換されたアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0089】

【0090】
式(IA)中、環W’に含まれるメチレン基が酸素原子で置換されたエーテル構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0091】

【0092】
式(IB)中、環W’に含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された(環W’に含まれるメチレン基は酸素原子で置換されていてもよい。)アニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0093】

【0094】

【0095】
式(IB)中、環W’に含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0096】

【0097】
式(IB)中、環W’に含まれる隣接する2つのメチレン基が酸素原子とカルボニル基とで置換されたラクトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0098】

【0099】
式(IB)中、環W’に含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0100】

【0101】
式(IB)中、環W’に含まれる水素原子が芳香族炭化水素基で置換されたアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0102】

【0103】
式(IC)中、環W’に含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された(環W’に含まれるメチレン基は酸素原子で置換されていてもよい。)アニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0104】

【0105】
式(IC)中、環W’に含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0106】

【0107】
式(IC)中、環W’に含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0108】

【0109】
式(ID)中、環W’に含まれる水素原子が置換されていないか又は炭化水素基のみで置換された(環W’に含まれるメチレン基は酸素原子で置換されていてもよい。)アニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0110】

【0111】
式(ID)中、環W’に含まれる水素原子が水酸基又は水酸基を含む基で置換されたアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0112】

【0113】
式(ID)中、環W’に含まれる1つのメチレン基がカルボニル基で置換されたケトン構造を有するアニオンとしては、例えば、下記のもの等が挙げられる。
【0114】

【0115】
式(I)で表される塩におけるZとしては、式(A)におけるZ'で例示されたカチオン等から適宜選択して使用することができる。
【0116】
上述したアニオン及びカチオンは、任意に組合せることができる。
例えば、式(I)で表される塩としては、式(Xa)〜式(Xi)で表される化合物が挙げられる。

【0117】
[式(Xa)〜(Xi)中、
25、P26及びP27は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4の脂肪族炭化水素基又は炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表す。
28及びP29は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基又は炭素数4〜36の脂環式炭化水素基を表すか、あるいはP28とP29とが一緒になってSを含んで炭素数2〜6の環を形成してもよい。
30は、炭素数1〜12の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜36の脂環式炭化水素基又は置換されていてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表すか、あるいはP30とP31とが一緒になって炭素数3〜12の環を形成してもよい。ここで、該環に含まれるメチレン基は、任意に、酸素原子、硫黄原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。
及びQは、上記と同義である。
13は、単結合またはメチレン基を表す。]
【0118】
28とP29とが一緒になって形成する環としては、テトラヒドロチオフェニウム基などが挙げられる。
30とP31とが一緒になって形成する環としては、上述した式(W13)〜式(W15)の基などが挙げられる。
【0119】
上記の組合せのうち、以下の塩が好ましい。

式(I)で表される酸発生剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
式(I)で表される酸発生剤は、例えば、特開2008−209917号公報に記載される製造方法によって製造することができる。
【0121】
本発明のレジスト組成物における樹脂は、例えば、酸に不安定な基を有し、アルカリ水溶液に不溶又は難溶な樹脂であり、酸と作用した樹脂はアルカリ水溶液で溶解し得る樹脂であることが適している。
【0122】
酸に不安定な基としては、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子であるアルキルエステルを有する基、脂環式エステルなどのカルボン酸エステルを有する基、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子であるラクトン環を有する基などが挙げられる。
ここで、4級炭素原子とは、水素原子以外の置換基と結合していて水素とは結合していない炭素原子を意味し、酸に不安定な基としては、エーテル結合の酸素原子に隣接する炭素原子が3つの炭素原子と結合した4級炭素原子であることが好ましい。
【0123】
酸に不安定な基の1種であるカルボン酸エステルを有する基を−COORのRエステルとして例示(−COO−C(CH33 をtert−ブチルエステルという形式で称する)すると、
tert−ブチルエステルに代表される酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子であるアルキルエステル;
メトキシメチルエステル、エトキシメチルエステル、1−エトキシエチルエステル、1−イソブトキシエチルエステル、1−イソプロポキシエチルエステル、1−エトキシプロピルエステル、1−(2−メトキシエトキシ)エチルエステル、1−(2−アセトキシエトキシ)エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンチルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、1−〔2−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)エトキシ〕エチルエステル、テトラヒドロ−2−フリルエステル及びテトラヒドロ−2−ピラニルエステルなどのアセタール型エステル;
イソボルニルエステル及び1−アルキルシクロアルキルエステル、2−アルキル−2−アダマンチルエステル、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルエステルなどの酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子である脂環式エステルなどが挙げられる。
【0124】
このようなカルボン酸エステルを有する基としては、(メタ)アクリル酸エステル、ノルボルネンカルボン酸エステル、トリシクロデセンカルボン酸エステル、テトラシクロデセンカルボン酸エステルを有する基が挙げられる。
【0125】
樹脂は、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合とを有するモノマーを付加重合して製造することができる。
かかるモノマーとしては、酸に不安定な基として、2−アルキル−2−アダマンチル基、1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル基などのような脂環式構造などの嵩高い基を含むモノマーが、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0126】
具体的な嵩高い基を含むモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、(メタ)アクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−アルキル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルなどが挙げられる。
【0127】
とりわけ(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルをモノマーとして用いた場合は、得られるレジストの解像度が優れる傾向があることから好ましい。
【0128】
具体的には、(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、アクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル、アクリル酸2−n−ブチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。α−クロロアクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルとしては、例えば、α−クロロアクリル酸2−メチル−2−アダマンチル、α−クロロアクリル酸2−エチル−2−アダマンチルなどが挙げられる。
【0129】
これらの中でも(メタ)アクリル酸2−エチル−2−アダマンチル又は(メタ)アクリル酸2−イソプロピル−2−アダマンチルを用いた場合、得られるレジストの感度が優れ、耐熱性にも優れる傾向があることから好ましい。
【0130】
(メタ)アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルは、通常、2−アルキル−2−アダマンタノール又はその金属塩とアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとの反応により製造できる。
【0131】
樹脂は、酸に安定なモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。ここで、酸に安定なモノマーに由来する構造とは、本発明の酸発生剤によって開裂しない構造を意味する。
具体的には、アクリル酸やメタクリル酸のような遊離のカルボン酸基を有するモノマーに由来する繰り返し単位、無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物に由来する繰り返し単位、2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリロニトリルに由来する繰り返し単位、酸素原子に隣接する炭素原子が2級炭素原子または3級炭素原子のアルキルエステル、1−アダマンチルエステルである(メタ)アクリル酸エステル類に由来する繰り返し単位、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよい(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンに由来する繰り返し単位などを挙げることができる。なお、1−アダマンチルエステルは、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子であるが、酸に安定な基であり、1−アダマンチルエステルには水酸基などが結合していてもよい。
【0132】
具体的な酸に安定なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチル、α−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、式(a)で示される繰り返し単位を与えるモノマー、式(b)で示される繰り返し単位を与えるモノマー、ヒドロキシスチレン、ノルボルネンなどの分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物、無水マレイン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸などが例示される。
【0133】
なかでも、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3,5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルに由来する繰り返し単位、式(a)で示される繰り返し単位、式(b)で示される繰り返し単位のいずれかを含む樹脂から得られるレジストは、基板への接着性及びレジストの解像性が向上する傾向にあることから好ましい。
【0134】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R3及びR4は、互いに独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はハロゲン原子を表し、i及びjは、1〜3の整数を表す。iが2または3のときには、R3は互いに異なる基であってもよく、jが2または3のときには、R4は互いに異なる基であってもよい。)
【0135】
(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシ−1−アダマンチル、(メタ)アクリル酸3、5−ジヒドロキシ−1−アダマンチルなどのモノマーは、市販されている。例えば、対応するヒドロキシアダマンタンを(メタ)アクリル酸又はそのハライドと反応させることにより、製造することもできる。
【0136】
また、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンなどのモノマーは、ラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ブロモ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させるか、又はラクトン環がアルキル基で置換されていてもよいα−もしくはβ−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンにアクリル酸ハライドもしくはメタクリル酸ハライドを反応させることにより製造できる。
【0137】
式(a)、式(b)で示される繰り返し単位を与えるモノマーは、例えば、次のような水酸基を有する脂環式ラクトンの(メタ)アクリル酸エステル、それらの混合物等が挙げられる。これらのエステルは、例えば、対応する水酸基を有する脂環式ラクトンと(メタ)アクリル酸類との反応により製造することができる(例えば、特開2000−26446号公報参照)。
【0138】

【0139】
ここで、(メタ)アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトンとしては、例えば、α−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−β,β−ジメチル−γ−ブチロラクトン、α−アクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−アクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイロキシ−α−メチル−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0140】
KrFエキシマレーザ露光、EUV露光の場合は、樹脂の繰り返し単位として、p−又はm−ヒドロキシスチレンなどのスチレン系モノマーに由来する繰り返し単位を用いても充分な透過率を得ることができる。このような共重合樹脂を得る場合は、該当する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとアセトキシスチレン及びスチレンをラジカル重合した後、酸によって脱アセチルすることによって得ることができる。
スチレン系モノマーに由来する繰り返し単位を与えるモノマーとしては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0141】

【0142】
以上のモノマーのうち、4−ヒドロキシスチレン又は4−ヒドロキシ−α−メチルスチレンが特に好ましい。
【0143】
また、2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位を含む樹脂は、その主鎖に直接脂環式骨格を有するために頑丈な構造となり、ドライエッチング耐性に優れるという特性を示す。2−ノルボルネンに由来する繰り返し単位は、例えば対応する2−ノルボルネンの他に無水マレイン酸や無水イタコン酸のような脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物を併用したラジカル重合により主鎖へ導入し得る。したがって、ノルボルネン構造の二重結合が開いて形成されるものは式(c)で表すことができ、無水マレイン酸無水物及び無水イタコン酸無水物の二重結合が開いて形成されるものはそれぞれ式(d)及び式(e)で表すことができる。
【0144】

【0145】
ここで、式(c)中のR5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、カルボキシル基、シアノ基もしくは−COOU(Uはアルコール残基である)を表すか、あるいは、R5及びR6が結合して、−C(=O)OC(=O)−で示されるカルボン酸無水物残基を表す。
5及びR6が基−COOUである場合は、カルボキシル基がエステル基となったものであり、Uに相当するアルコール残基としては、例えば、置換されていてもよい炭素数1〜8程度のアルキル基、2−オキソオキソラン−3−又は−4−イル基などを挙げることができる。ここで、該アルキル基は、水酸基や脂環式炭化水素残基などが置換基として結合していてもよい。
5及びR6がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられ、水酸基が結合したアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基などが挙げられる。
【0146】
このように、酸に安定な繰り返し単位を与えるモノマーである、式(c)で示されるノルボネン構造の具体例としては、次のような化合物を挙げることができる。
2−ノルボルネン、
2−ヒドロキシ−5−ノルボルネン、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、
5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−ヒドロキシ−1−エチル、
5−ノルボルネン−2−メタノール、
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物。
【0147】
なお、式(c)中のR5及びR6の−COOUのUが、酸素原子に隣接する炭素原子が4級炭素原子である脂環式エステルなどの酸に不安定な基であれば、ノルボルネン構造を有するといえども、酸に不安定な基を有する繰り返し単位である。ノルボルネン構造と酸に不安定な基を含むモノマーとしては、例えば、5−ノルボルネン−2−カルボン酸−t−ブチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−シクロヘキシル−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチルシクロヘキシル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−メチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸2−エチル−2−アダマンチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−メチルシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−1−メチルエチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−メチル−1−(4−オキソシクロヘキシル)エチル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチルなどが例示される。
【0148】
さらに、酸に安定な基として、式(b1)で表される繰り返し単位及びフッ素原子を含有する繰り返し単位を含有してもよい。
【0149】

[式(b1)中、
は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表す。
ARは、炭素数1〜30の炭化水素基を表し、該炭化水素基に含まれる水素原子の少なくとも1個以上がフッ素原子に置換されている。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は−N(Rc')−で置換されていてもよく、該炭化水素基に含まれる水素原子は、水酸基又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基で置換されていてもよい。
c'は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。]
【0150】
式(b1)で表される繰り返し単位を与えるモノマーとしては、具体的には、以下のモノマーを挙げることができる。
【0151】

【0152】

【0153】
樹脂は、パターニング露光用の放射線の種類、酸に不安定な基の種類などによっても変動するが、通常、樹脂における酸に不安定な基を有するモノマーに由来する繰り返し単位の含有量を10〜80モル%の範囲に調整する。
【0154】
酸に不安定な基を有するモノマーに由来する繰り返し単位として、特に、メタクリル酸2−アルキル−2−アダマンチル、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルメタクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキル、アクリル酸2−アルキル−2−アダマンチルメタアクリル酸1−(1−アダマンチル)−1−アルキルアルキルに由来する繰り返し単位を含む場合は、該繰り返し単位が樹脂を構成する全繰り返し単位のうち15モル%以上となると、樹脂が脂環基を有するために頑丈な構造となり、与えるレジストのドライエッチング耐性の面で有利である。
【0155】
分子内にオレフィン性二重結合を有する脂環式化合物及び脂肪族不飽和ジカルボン酸無水物をモノマーとする場合には、これらは付加重合しにくい傾向があるので、この点を考慮し、これらは過剰に使用することが好ましい。
【0156】
用いられるモノマーとしてはオレフィン性二重結合が同じでも酸に不安定な基が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基が同じでもオレフィン性二重結合が異なるモノマーを併用してもよいし、酸に不安定な基とオレフィン性二重結合との組合せが異なるモノマーを併用してもよい。
【0157】
樹脂(B)の重量平均分子量は、好ましくは2,500以上100,000以下であり、より好ましくは2,700以上50,000以下であり、さらに好ましくは3,000以上40,000以下である。
【0158】
上述した式(A)の塩、酸発生剤及び樹脂を含有するレジスト組成物には、塩基性化合物、好ましくは、塩基性含窒素有機化合物、より好ましくはアミン又はアンモニウム塩を含有させる。塩基性化合物をクエンチャーとして添加することにより、露光後の引き置きに伴う酸の失活による性能劣化を改良することができる。
【0159】
クエンチャーに用いられる塩基性化合物の具体的な例としては、以下の各式で示されるようなものが挙げられる。

【0160】
式中、R11、R12及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。更に、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個の炭素数を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に1〜4個の炭素数を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0161】
13及びR14は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有し、該アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。又は、R13とR14とが結合して芳香環を形成していてもよい。
さらに、該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個程度の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0162】
15は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はニトロ基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有し、該アルコキシ基は、好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
さらに、該アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、又は1〜6個程度の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0163】
16は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有する。さらに該アルキル基又はシクロアルキル基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基、で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0164】
18、R19及びR20は、それぞれ独立にアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。該アルキル基は、好ましくは1〜6個程度の炭素原子を有し、該シクロアルキル基は、好ましくは5〜10個程度の炭素原子を有し、該アリール基は、好ましくは6〜10個程度の炭素原子を有する。さらに、該アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基上の水素原子の少なくとも1個は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、アミノ基、1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基で置換されていてもよい。該アミノ基上の水素原子の少なくとも1個は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基で置換されていてもよい。
【0165】
Wは、アルキレン基、カルボニル基、イミノ基、スルフィド基又はジスルフィド基を表す。該アルキレン基は、好ましくは2〜6程度の炭素原子を有する。
また、R11〜R20において、直鎖構造と分岐構造の両方をとり得るものについては、そのいずれでもよい。
【0166】
このような化合物として、具体的には、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、アニリン、2−,3−又は4−メチルアニリン、4−ニトロアニリン、ジイソプロピルアニリン、1−又は2−ナフチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、N−メチルアニリン、ピペリジン、ジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、メチルジブチルアミン、メチルジペンチルアミン、メチルジヘキシルアミン、メチルジシクロヘキシルアミン、メチルジヘプチルアミン、メチルジオクチルアミン、メチルジノニルアミン、メチルジデシルアミン、エチルジブチルアミン、エチルジペンチルアミン、エチルジヘキシルアミン、エチルジヘプチルアミン、エチルジオクチルアミン、エチルジノニルアミン、エチルジデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリス〔2−(2−メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、イミダゾール、ピリジン、4−メチルピリジン、4−メチルイミダゾール、ビピリジン、2,2’−ジピリジルアミン、ジ−2−ピリジルケトン、1,2−ジ(2−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン、1,2−ビス(2−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、1,2−ビス(4−ピリジルオキシ)エタン、4,4’−ジピリジルスルフィド、4,4’−ジピリジルジスルフィド、1,2−ビス(4−ピリジル)エチレン、2,2′−ジピコリルアミン、3,3′−ジピコリルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトライソプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−n−オクチルアンモニウムヒドロキシド、フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、3−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称:コリン)などを挙げることができる。なかでも、ジイソプロピルアニリンが好ましい。
【0167】
さらには、特開平11−52575号公報に開示されているような、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物をクエンチャーとすることもできる。
【0168】
本発明のレジスト組成物は、その全固形分量を基準に、樹脂を80〜99.9重量%程度、式(A)の塩を0.01〜1重量%程度、酸発生剤を0.1〜30重量%程度の範囲で含有することが好ましく、0.1〜20重量%程度の範囲で含有することがより好ましい。
また、化学増幅型レジスト組成物としてクエンチャーである塩基性化合物を用いる場合は、レジスト組成物の全固形分量を基準に、0.01〜1重量%程度の範囲で含有するのが好ましい。
レジスト組成物としては、さらに、必要に応じて、増感剤、溶解抑止剤、他の樹脂、界面活性剤、安定剤、染料など、各種の添加物を少量含有してもよい。
【0169】
本発明のレジスト組成物は、通常、上記の各成分が溶剤に溶解された状態でレジスト液組成物とされ、シリコンウェハなどの基体上に、スピンコーティングなどの通常工業的に用いられている方法によって塗布される。ここで用いる溶剤は、各成分を溶解し、適当な乾燥速度を有し、溶剤が蒸発した後に均一で平滑な塗膜を与えるものであればよく、この分野で通常工業的に用いられている溶剤が使用できる。
【0170】
例えば、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなグリコールエーテルエステル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルのようなグリコールエーテル類、乳酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル及びピルビン酸エチルのようなエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン及びシクロヘキサノンのようなケトン類、γ−ブチロラクトンのような環状エステル類などを挙げることができる。これらの溶剤は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0171】
本発明のレジストパターンの製造方法は、
(1)上述した本発明のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を、現像装置を用いて現像する工程を含む。
【0172】
レジスト組成物の基体上への塗布は、スピンコーターなど、通常、用いられる装置によって行うことができる。
【0173】
溶剤の除去は、例えば、ホットプレート等の加熱装置を用いて溶剤を蒸発させることにより行われるか、あるいは減圧装置を用いて行われ、溶剤が除去された組成物層が形成される。この場合の温度は、例えば、50〜200℃程度が例示される。また、圧力は、1〜1.0×10Pa程度が例示される。
【0174】
得られた組成物層は、露光機を用いて露光する。この露光は、液浸露光機を用いて行ってもよい。この際、通常、求められるパターンに相当するマスクを介して露光が行われる。露光光源としては、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F2レーザ(波長157nm)のような紫外域のレーザ光を放射するもの、固体レーザ光源(YAG又は半導体レーザ等)からのレーザ光を波長変換して遠紫外域または真空紫外域の高調波レーザ光を放射するもの等、種々のものを用いることができる。
【0175】
露光後の組成物層は、脱保護基反応を促進するための加熱処理が行われる。加熱温度としては、通常50〜200℃程度、好ましくは70〜150℃程度である。
加熱後の組成物層を、現像装置を用いて、通常、アルカリ現像液を利用して現像する。ここで用いられるアルカリ現像液は、この分野で用いられる各種のアルカリ性水溶液であればよい。例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドや(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド(通称コリン)の水溶液等が挙げられる。
現像後、超純水でリンスし、基板及びパターン上に残った水を除去することが好ましい。
【0176】
本発明の塩を含むレジスト組成物は、良好なラインエッジラフネス(LER)を示すため、ArFやKrFなどのエキシマレーザーリソグラフィ、ArF液浸露光リソグラフィ、EUV露光リソグラフィ及びEB露光リソグラフィに好適な化学増幅型フォトレジスト組成として用いることができ、特にEUV露光リソグラフィ及びEB露光リソグラフィに好適な化学増幅型フォトレジスト組成として用いることができる。また、液浸露光のほか、ドライ露光などにも用いることができる。さらに、ダブルイメージング用にも用いることができ、工業的に有用である。
【実施例】
【0177】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
実施例及び比較例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり質量基準である。また重量平均分子量は、ポリスチレンを標準品として、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8120GPC型、カラムは”TSKgel Multipore HXL−M”3本、溶媒はテトラヒドロフラン)により求めた値である。
【0178】
カラム:TSKgel Multipore HXL-M x 3 + guardcolumn(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μl
分子量標準:標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0179】
また、化合物の構造はNMR(日本電子製GX−270型又はEX−270型)、質量分析(LCはAgilent製1100型、MASSはAgilent製LC/MSD型又はLC/MSD TOF型)で確認した。
【0180】
実施例1:塩A1の合成

銀アセチルアセトナート0.50部及びアセトニトリル5.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、トリフェニルスルホニウムクロライド0.78部を仕込み、23℃で1時間攪拌し、ろ過した。得られた濾液を30℃以下で濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル3.28部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。γ−ブチロラクトン6.00部を添加し、23℃で10分間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテルを乾燥留去することにより、塩A1(式(A1−1−1)で表される塩及び式(A1−2−1)で表される塩の混合物)0.29部を含有したγ−ブチロラクトン溶液(固形分5%)を得た。

【0181】
MS(ESI(+)Spectrum):M 263.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 99.0
1H−NMR(ジメチルスルホキシド−d6、内部標準物質テトラメチルシラン):δ(ppm)1.77(bs,6H)、4.51(bs,1H)、7.70−7.90(m,15H)
【0182】
実施例2:塩A2の合成


銀アセチルアセトナート0.50部及びアセトニトリル5.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、ジフェニルヨードニウムクロライド0.83部を仕込み、23℃で1時間攪拌し、ろ過した。得られた濾液を30℃以下で濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル4.58部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。γ−ブチロラクトン10.00部を添加し、23℃で10分間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテルを乾燥留去することにより、塩A2(式(A2−1−1)で表される塩及び式(A2−2−1)で表される塩の混合物)0.32部を含有したγ−ブチロラクトン溶液(固形分5%)を得た。


【0183】
MS(ESI(+)Spectrum):M 281.0
MS(ESI(−)Spectrum):M 99.0
【0184】
実施例3:塩A3の合成



銀アセチルアセトナート0.50部及びアセトニトリル5.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、1−(2−オキソ−2−フェニルエチル)テトラヒドロチオフェニウム ブロミド0.75部を仕込み、23℃で1時間攪拌し、ろ過した。得られた濾液を30℃以下で濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル3.35部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。γ−ブチロラクトン5.80部を添加し、23℃で10分間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテルを乾燥留去することにより、塩A3(式(A3−1−1)で表される塩及び式(A3−2−1)で表される塩の混合物)0.24部を含有したγ−ブチロラクトン溶液(固形分5%)を得た。

【0185】
MS(ESI(+)Spectrum):M 207.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 99.0
【0186】
実施例4:塩A4の合成



銀アセチルアセトナート0.50部及びアセトニトリル5.00部を仕込み、23℃で30分間攪拌した。その後、トリトリルスルホニウムクロライド0.89部を仕込み、23℃で1時間攪拌し、ろ過した。得られた濾液を30℃以下で濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル5.00部を加えて攪拌し、上澄液を除去した。γ−ブチロラクトン8.50部を添加し、23℃で10分間攪拌した。tert−ブチルメチルエーテルを乾燥留去することにより、塩A4(式(A4−1−1)で表される塩及び式(A4−2−1)で表される塩の混合物)0.42部を含有したγ−ブチロラクトン溶液(固形分5%)を得た。


【0187】
MS(ESI(+)Spectrum):M 305.1
MS(ESI(−)Spectrum):M 99.0
【0188】
[樹脂B1の合成]
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル39.7g(0.16モル)とp−アセトキシスチレン103.8g(0.64モル)とをイソプロパノール265gに溶解して、溶液を窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。溶液に、ラジカル開始剤としてジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)11.05g(0.048モル)をイソプロパノール22.11gに溶解した液を滴下した。得られた反応液を12時間加熱還流した。冷却後、反応液を大量のメタノールに注いで重合物を沈殿ろ過した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−アセトキシスチレンとの共重合体は250g(メタノール含有)であった。
【0189】
得られた共重合体250gと4−ジメチルアミノピリジン10.3g(0.084モル)とをメタノール202gに加えて20時間加熱還流した。冷却後、反応液を氷酢酸7.6g(0.126モル)で中和して、大量の水に注いで沈殿させた。析出した重合物をろ別し、アセトンに溶解させた。その後、大量の水に注いで沈殿させる操作を3回繰り返して精製した。得られたメタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンの共重合体は95.9gであった。重量平均分子量は約8.6×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約20:80(C13NMR測定)であった。この樹脂を樹脂B1とする。
【0190】
[樹脂B2の合成]
メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチル及びp−アセトキシスチレンの使用量を59.6g(0.24モル)及び90.8g(0.56モル)に変更したこと以外は、樹脂B1の合成と同様の操作を行って、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンとの共重合体102.8gを得た。重量平均分子量は約8.2×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約30:70(C13NMR測定)であった。この樹脂を樹脂B2とする。
【0191】
[樹脂B3の合成]
ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の使用量を44.20g(0.192モル)に変更したこと以外は、樹脂B2の合成と同様の操作を行って、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンとの共重合体82.4gを得た。重量平均分子量は約3.0×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約20:80(C13NMR測定)であった。この樹脂を樹脂B3とする。
【0192】
[樹脂B4の合成]
ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の使用量を44.20g(0.192モル)に変更したこと以外は、樹脂B2の合成と同様の操作を行って、メタクリル酸2−エチル−2−アダマンチルとp−ヒドロキシスチレンとの共重合体93.6gを得た。重量平均分子量は約3.0×10(GPCポリスチレン換算)であり、共重合比は約30:70(C13NMR測定)であった。この樹脂を樹脂B4とする。
【0193】
実施例2〜6及び比較例
以下の表1の各成分を混合して溶解し、さらに孔径0.2μmのフッ素樹脂製フィルターで濾過して、レジスト組成物を調製した。
【0194】
【表1】

【0195】
<酸発生剤>
酸発生剤IA1

酸発生剤X1
トリフェニルスルホニウム2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホネート
酸発生剤X2
ビス(シクロヘキシルスルホニウム)ジアゾメタン
【0196】
<塩基性化合物:クエンチャー>
クエンチャーQ1:2,6−ジイソプロピルアニリン
クエンチャーQ2:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
<溶剤>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 100.0部
γ−ブチロラクトン 5.0部
【0197】
(電子線用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理した上で、上記のレジスト組成物を乾燥後の膜厚が0.06μmとなるようにスピンコートした。レジスト組成物塗布後、ダイレクトホットプレート上にて、表1のPB欄に示す温度で60秒間プリベークした。
このようにしてレジスト膜を形成したそれぞれのウェハに、電子線描画機〔(株)日立製作所製の「HL−800D 50keV」を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて表1のPEB欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0198】
ラインエッジラフネス評価(LER):リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、側壁の凹凸の触れ幅が7nm以下であるものを○、7nmを超えるものを×とした。これらの結果を表2に示す。
【0199】
【表2】

【0200】
(EUV用レジスト組成物としての評価)
シリコンウェハを、ダイレクトホットプレート上にて、ヘキサメチルジシラザンを用いて90℃で60秒処理し、上記のレジスト液を乾燥後の膜厚が0.05μmとなるようにスピンコートした。
レジスト液塗布後、ダイレクトホットプレート上にて、表1のPB欄に示す温度で60秒間プリベークした。こうしてレジスト膜を形成したそれぞれのウェハに、EUV露光機を用い、露光量を段階的に変化させてラインアンドスペースパターンを露光した。露光後は、ホットプレート上にて表1のPEB欄に示す温度で60秒間ポストエキスポジャーベークを行い、さらに2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で60秒間のパドル現像を行った。
【0201】
ラインエッジラフネス評価(LER):リソグラフィプロセス後のレジストパターンの壁面を走査型電子顕微鏡で観察し、側壁の凹凸の触れ幅が7nm以下であるものを○、7nmを超えるものを×とした。
これらの結果を表3に示す。
【0202】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明の塩によれば、該塩を含有するレジスト組成物から優れたラインエッジラフネス(LER)を有するパターンを形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ジケトンのアニオンと、有機カチオンとからなる塩。
【請求項2】
式(A)で表される請求項1記載の塩。

[式(A)中、
及びRは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜36の芳香族炭化水素基を表す。
また、R、R及びRのうち少なくとも2つが互いに結合して環を形成していてもよい。該脂肪族炭化水素基及び環に含まれる1以上のメチレン基は酸素原子又はカルボニル基で置換されていてもよい。該環は置換基を有していてもよい。
Z’は、有機カチオンを表す。
【請求項3】
Z’が、式(IXz)で表されるカチオンである請求項2記載の塩。

[式(IXz)中、
、P及びPは、それぞれ独立に、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数3〜30の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、該アルキル基に含まれる水素原子は、水酸基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数3〜12の環式炭化水素基で置換されていてもよく、該脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素に含まれる水素原子は、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基又は炭素数4〜36の脂環式炭化素基で置換されていてもよい。]
【請求項4】
及びRが炭素数1〜4のアルキル基である請求項2又は3記載の塩。
【請求項5】
請求項1〜4記載の塩、酸発生剤及び樹脂を含有するレジスト組成物。
【請求項6】
(1)請求項5記載のレジスト組成物を基板上に塗布する工程、
(2)塗布後の組成物から溶剤を除去して組成物層を形成する工程、
(3)組成物層に露光機を用いて露光する工程、
(4)露光後の組成物層を加熱する工程、
(5)加熱後の組成物層を、現像装置を用いて現像する工程を含むレジストパターンの製造方法。

【公開番号】特開2011−46696(P2011−46696A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169151(P2010−169151)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】